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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147631
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20231005BHJP
   B04C 5/26 20060101ALI20231005BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20231005BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D53/18 150
B01D53/18 ZAB
B04C5/26
B04C5/04
B01D53/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055259
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川浦 智規
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D053
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002BA16
4D002CA01
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA12
4D002EA05
4D002EA13
4D002EA14
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB06
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA02
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC06
4D020CB01
4D020CB27
4D020CC12
4D020CC20
4D020CD01
4D020CD02
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB05
4D020DB15
4D053AA01
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA06
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CC04
4D053DA10
(57)【要約】
【課題】 、移動体に搭載することができ、且つ二酸化炭素を容易に回収することができるように構成された、二酸化炭素回収システムを提供すること。
【解決手段】 二酸化炭素回収システム(100)は、空気が移動体の移動により生じる走行風として導入される接触空間(S1,S2)を有し、接触空間内にて、接触空間に導入された空気が、二酸化炭素と反応して固体化合物を生成する二酸化炭素吸収液に接触することにより、空気中の二酸化炭素と二酸化炭素吸収液が反応するように構成された二酸化炭素吸収器(1)と、接触空間に二酸化炭素吸収液を供給する吸収液供給装置(2)と、二酸化炭素吸収器から排出された固体化合物及び二酸化炭素吸収液を含む成分を、固体成分と液体成分とに分離する固液分離器(3)と、固液分離器にて分離された固体成分を収容する回収器(4)と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される二酸化炭素回収システムであって、
空気が前記移動体の移動により生じる走行風として導入される接触空間を有し、前記接触空間内にて、前記接触空間に導入された空気が、二酸化炭素と反応して固体化合物を生成する二酸化炭素吸収液に接触することにより、空気中の二酸化炭素と前記二酸化炭素吸収液が反応するように構成された二酸化炭素吸収器と、
前記接触空間に前記二酸化炭素吸収液を供給する吸収液供給装置と、
前記二酸化炭素吸収器から排出された前記固体化合物及び前記二酸化炭素吸収液を含む成分を、固体成分と液体成分とに分離する固液分離器と、
前記固液分離器にて分離された前記固体成分を収容する回収器と、
を含む、二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記回収器は、収容した前記固体成分が前記移動体の移動により生じる走行風に接触することができるように構成されている、二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記吸収液供給装置は、
前記固液分離器により分離された液体成分としての二酸化炭素吸収液を貯留することができるように構成されたバッファタンクと、
前記バッファタンクと前記接触空間とを接続する供給流路部と、を備える、
二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記吸収液供給装置は、
前記バッファタンク内に貯留されている二酸化炭素吸収液の貯留量を検出するセンサと、
補給用の二酸化炭素吸収液が充填された補給タンクと、
前記補給タンクと前記バッファタンクとを接続する補給路と、
前記補給路に介装され、駆動することにより前記補給タンク内の二酸化炭素吸収液を前記バッファタンク内に補給することができるように構成された補給用ポンプと、
前記センサにより検出された二酸化炭素吸収液の貯留量が予め定められた下限量未満であるときに前記補給用ポンプが駆動するように前記補給用ポンプを制御する制御装置と、
を備える、二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記固液分離器は、前記走行風を利用した遠心分離により、前記二酸化炭素吸収器から排出された前記成分を固体成分と液体成分とに分離するように構成される、二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、空気中の二酸化炭素を回収することができるように構成された、二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二酸化炭素等のガスを吸着可能な車載空気清浄機用フィルタユニットを開示する。特許文献1に開示の車載空気清浄機用フィルタユニットは、中空層を挟んだ二重シェルで形成された断熱構造を有する筐体と、筐体内に配設される複数のフィルタブロックとを備える。複数のフィルタブロックは、筐体内にて、2つのフィルタブロックの対を複数構成する。対となる2つのフィルタブロックは、互いの一端が接合され互いの他端が離間するように、V字型に配設される。そして、複数のフィルタブロックの対が筐体内にて同一方向に整列されるとともに、対となる2つのフィルタブロックの互いの他端側から空気が導入され、互いの一端側から空気が流出される。
【0003】
特許文献1に開示の複数のフィルタブロックのそれぞれは、枠体と、ハニカム構造の隔壁と、ガス吸着材とを備える。枠体はフィルタブロックの外郭を形成する。この枠体の内部にハニカム構造の隔壁が配設され、この隔壁により枠体内部が複数のセルに区画される。そして、ガス吸着材は、隔壁により区画されたセル内に収容される。セル内に収容されたガス吸着材は、フィルタブロックを通過した空気から二酸化炭素及び水分を吸着することにより、これらを捕捉する。
【0004】
特許文献2は、車両の内燃機関の排気ガスから二酸化炭素を回収することができるように構成された二酸化炭素回収装置を開示する。特許文献2に開示の二酸化炭素回収装置によれば、内燃機関の排気ガスは、圧縮され、熱交換器により低温化された後に、膜分離モジュールを通過する。この膜分離モジュールにより二酸化炭素が分離されるとともに二酸化炭素吸収液に吸収される。二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液は熱交換器に導入されて加熱されることにより、二酸化炭素を放出する。放出された二酸化炭素はコンプレッサで圧縮された後に、圧力容器に保管される。
【0005】
非特許文献1は、空気中の二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収システムを開示する。非特許文献1に開示の二酸化炭素回収システムによれば、空気中の二酸化炭素が水酸化カリウム(KOH)水溶液と空気接触器内で接触することにより、炭酸カリウム(KCO)が生成される。炭酸カリウムを含む水酸化カリウム水溶液をペレット反応器に導入して、水酸化カルシウム(Ca(OH))と反応させることにより、炭酸カルシウム(CaCO)と水酸化カリウムが生成される。これにより二酸化炭素が炭酸カルシウムに固定され、生成した水酸化カリウムはリサイクルされる。また、生成した炭酸カルシウムは酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)に熱分解される。熱分解により生成した酸化カルシウムは水と反応させて水酸化カルシウムとなり、ペレット反応器に供給される。一方、熱分解により生成した二酸化炭素は、圧縮機で圧縮して液体二酸化炭素として貯留設備にて貯留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-203242号公報
【特許文献2】特許第6267375号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「二酸化炭素のDirect Air Capture(DAC)法のコストと評価」(低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション製作立案のための提案書)、[online]、令和2年2月、国立研究開発法人化学技術振興機構 低炭素社会戦略センター、[令和4年3月15日検索]、インターネット<URL:https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2019-pp-07.pdf>
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に開示の車載空気清浄機用フィルタユニットにて吸着した二酸化炭素は、フィルタブロックを加熱して再生することにより車外に放出されることになる。そのため吸着した二酸化炭素を様々な用途に利活用するために回収することができない。また、特許文献2に開示の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を気体として保管するための密閉容器を備えるので装置が大型化し、移動体への搭載性に課題が残る。また、二酸化炭素を気体として保管しているので、回収した二酸化炭素を取り扱い難いという問題、及び、二酸化炭素は窒息性ガスであるので漏れ対策が必要となって、装置のコストアップを招くという問題を有する。また、非特許文献1に開示の二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を分離し、回収し、液化して貯蔵するまでのプロセスを連続的に行い得るように大型の定置型システムとして設計されており、移動体に搭載することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、移動体に搭載することができ、且つ二酸化炭素を容易に回収することができるように構成された、二酸化炭素回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、移動体に搭載される二酸化炭素回収システム(100)であって、空気が移動体の移動により生じる走行風として導入される接触空間(S1,S2)を有し、接触空間内にて、接触空間に導入された空気が、二酸化炭素と反応して固体化合物を生成する二酸化炭素吸収液に接触することにより、空気中の二酸化炭素と二酸化炭素吸収液が反応するように構成された二酸化炭素吸収器(1)と、接触空間に二酸化炭素吸収液を供給する吸収液供給装置(2)と、二酸化炭素吸収器から排出された固体化合物及び二酸化炭素吸収液を含む成分を、固体成分と液体成分とに分離する固液分離器(3)と、固液分離器にて分離された固体成分を収容する回収器(4)と、を含む、二酸化炭素回収システムを提供する。
【0011】
本発明によれば、移動体の移動により生じる走行風として二酸化炭素吸収器の接触空間に導入された空気が接触空間内で二酸化炭素吸収液と接触することにより、空気中の二酸化炭素が二酸化炭素吸収液と反応して固体化合物が生成される。これにより二酸化炭素が固体化合物内に固定される。この固体化合物は、二酸化炭素吸収器から排出され、固液分離器にて液体成分から分離された後に、回収器に収容される。
【0012】
このように、本発明に係る二酸化炭素回収システムによれば、二酸化炭素は固体化合物に固定された状態で回収されるので、回収する二酸化炭素の容積を小さくすることができる。また、二酸化炭素を気体として保管するために必要な大型の密閉容器を必要とせず、且つ、気体の二酸化炭素を液化して貯蔵するための装置も必要ない。このため二酸化炭素回収システムのコンパクト化(ダウンサイジング)を図ることができ、移動体に搭載することが可能となる。加えて、二酸化炭素が固体化合物に固定されているので安全かつ容易に二酸化炭素を回収することができる。
【0013】
回収器は、収容した固体成分が移動体の移動により生じる走行風に接触することができるように構成することもできる。この場合、回収器は、移動体のうち移動体の移動により生じる走行風が通過する部分に設けられていると良い。また、回収器は、走行風が内部を通過するように構成されていると良い。例えば、回収器は、その壁面に走行風が通過する貫通孔が形成されているように構成することもでき、或いは、筐体をメッシュ状に構成することもできる。
【0014】
固液分離器にて分離された固体化合物を含む固体成分には液体(例えば二酸化炭素吸収液)が含まれている場合が多い。この場合、固体成分は例えばスラリー状(或いは脱水ケーキ状)となっていて、取り扱い性(ハンドリング性)が悪く、且つ、液体を含む分だけ重い。これに対し、上記構成によれば、回収器に収容した固体成分が移動体の走行により生じる走行風に接触することにより、固体成分中の水分が蒸発する。こうして固体成分を乾燥させることで、固体成分が軽くなるとともに持ち運びしやすくなり、固体成分に含まれる固体化合物に固定した二酸化炭素の取り扱い性をより向上させることができる。
【0015】
吸収液供給装置は、固液分離器により分離された液体成分としての二酸化炭素吸収液を貯留することができるように構成されたバッファタンク(21)と、バッファタンクと接触空間とを接続する供給流路部(22)と、を備える、ように構成することもできる。これによれば、固液分離器にて分離されてバッファタンク内に貯留された二酸化炭素吸収液を供給流路部を通じて接触空間に供給することにより、固液分離器にて分離された二酸化炭素吸収液を再利用することができる。
【0016】
この場合、吸収液供給装置はさらに、バッファタンク内に貯留されている二酸化炭素吸収液の貯留量を検出するセンサ(23)と、補給用の二酸化炭素吸収液が充填された補給タンク(24)と、補給タンクとバッファタンクとを接続する補給路(25)と、補給路に介装され、駆動することにより補給タンク内の二酸化炭素吸収液をバッファタンク内に補給することができるように構成された補給用ポンプ(P2)と、センサにより検出された二酸化炭素吸収液の貯留量が予め定められた下限量未満であるときに補給用ポンプが駆動するように補給用ポンプを制御する制御装置(26)と、を備えるように構成することもできる。これによれば、バッファタンク内の二酸化炭素吸収液の貯留量が低下したときに、自動的に二酸化炭素吸収液を補給することができる。
【0017】
また、固液分離器は、走行風を利用した遠心分離により、二酸化炭素吸収器から排出された成分を固体成分と液体成分とに分離するように構成することもできる。これによれば、固液分離器にて移動体の走行により生じる走行風を利用することにより、動力源を用いることなく固体成分と液体成分とを分離することができる。このため二酸化炭素回収システムをよりコンパクト且つ安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係る二酸化炭素回収システムが搭載された移動体としてのトラックの概略側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る二酸化炭素回収システムの全体構成を示す概略図である。
図3図3は、二酸化炭素吸収器の概略縦断面図が示された、本実施形態に係る二酸化炭素回収システムを示す図である。
図4図4は、変形例に係る二酸化炭素回収システムが搭載された移動体としてのトラックの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム100が搭載された移動体としてのトラックTRの概略側面図である。図1に示すように、本実施形態において、二酸化炭素回収システム100は、主に、トラックTRのキャビンCと荷台Dとの間、及び荷台Dの前方部分に設けられる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム100の全体構成を示す概略図である。図1及び図2に示すように、二酸化炭素回収システム100は、二酸化炭素吸収器1と、吸収液供給装置2と、固液分離器3と、回収箱4とを備える。
【0021】
二酸化炭素吸収器1は、図1に示すように、トラックTRのキャビンCと荷台Dとの間、及び、キャビンCの上部に設けられたエアデフレクターADとキャビンルーフC1との間、に設けられる。二酸化炭素吸収器1は、空気中の二酸化炭素と後述する二酸化炭素吸収液とを反応させるとともに、反応後の混合物を気体成分と液体成分とに分離することができるように構成される。図3は、二酸化炭素吸収器1の概略縦断面図が示された、二酸化炭素回収システム100を示す図である。
【0022】
図3に示すように、二酸化炭素吸収器1は、反応部1aと、気液分離部1bとを備えるように構成される。反応部1aは、空気導入容器部11と、反応容器部12とを有するように構成され、気液分離部1bは、分離容器部13と、気体排出通路部14と、液体排出通路部15と、を有するように構成される。
【0023】
空気導入容器部11は円筒状に構成され、両端が開口している。この空気導入容器部11は、図1に示すように、トラックTRのキャビンCのキャビンルーフC1とエアデフレクターADとの間に設けられ、軸方向が水平方向に略一致し、一方の端部11a(図3参照)が前方に開口するように設置される。また、導入空間S1内には、図3に示すように入口フィルタ111が設けられる。
【0024】
また、図3からわかるように、反応容器部12は空気導入容器部11と同軸の円筒状に構成されており、一方の端部12aが空気導入容器部11の後側の端部である他方の端部11bに接続される。また、反応容器部12の外径及び内径は空気導入容器部11の外径及び内径よりも大きい。従って、空気導入容器部11と反応容器部12とにより、反応部1aが段付円筒形状に構成される。空気導入容器部11の他方の端部11bは、反応容器部12内の空間である反応空間S2に開口している。よって、導入空間S1と反応空間S2は互いに連通している。導入空間S1と反応空間S2が、本発明の接触空間を構成する。この接触空間では、後述するように、その内部に導入された空気と二酸化炭素吸収液とが接触する。
【0025】
分離容器部13は、略円錐台形状の外形の内部空間である分離空間S3を有するように、略円錐台形状に構成される。分離容器部13は、円板状の上壁部131と、円筒状の円筒壁部132と、円錐状の円錐壁部133とを有する。上壁部131の周縁に円筒壁部132の一方の端縁が接続される。円筒壁部132はその一方の端縁から鉛直下方に延在し、他方の端縁が円錐壁部133の大径縁部に接続される。円錐壁部133は鉛直下方に向かうほど先細りに構成される。このように分離容器部13が構成されることにより、分離空間S3は、下に凸の略円錐台形状に形成される。なお、分離容器部13は、分離空間S3が円錐形状になるように、円錐状に形成されていても良い。
【0026】
分離容器部13の円筒壁部132の上方部分が、連通部16を介して反応容器部12の他方の端部12bに接続される。このため反応空間S2は連通部16内の空間を通じて分離空間S3に連通している。なお、連通部16を省略して反応空間S2と分離空間S3とが直接連通するように構成されていても良い。
【0027】
気体排出通路部14は、両端が開口した略円筒形状を呈しており、図3に示すように分離容器部13の上壁部131の中心部分を貫通して分離空間S3の上側から分離空間S3内に部分的に侵入するように構成される。従って、気体排出通路部14内の気体排出空間S4は、気体排出通路部14の両端のうち分離空間S3内に開口した一方の端部にて分離空間S3に連通する。また、気体排出通路部14の他方の端部側は分離容器部13から上方に突き出ており、その他方の端部は大気開放される。従って、分離空間S3は、気体排出通路部14内の気体排出空間S4を通じて外部に連通する。この気体排出空間S4に、異物を除去するための出口フィルター141が設けられる。
【0028】
液体排出通路部15は図3に示すように分離容器部13の下方に位置し、その一方の端部が分離容器部13の円錐壁部133の先端部(下端部)に接続される。液体排出通路部15内の空間(液体排出空間S5)は、円錐壁部133の先端部との接続部分にて分離空間S3の下端部に連通する。液体排出通路部15の他方の端部は固液分離器3に接続される。
【0029】
固液分離器3として周知の固液分離器を用いることができる。本実施形態においては、上記した二酸化炭素吸収器1の分離容器部13のように円錐台形状に形成されるサイクロン式の固液分離器が採用される。固液分離器3は、液体排出通路部15を経由して二酸化炭素吸収器1から排出された成分を、遠心分離によって、固体成分と液体成分とに分離する機能を有するように構成される。この固液分離器3は、固体回収通路31を通じて回収箱4に接続されており、固液分離器3にて分離された固体成分は回収箱4に収容される。また、固液分離器3は、液体回収通路32を通じて後述する吸収液供給装置2のバッファタンク21に接続されており、固液分離器3にて分離された液体成分はバッファタンク21に供給される。
【0030】
吸収液供給装置2は、図1に示すように、主にトラックTRの荷台Dの前方部分に設置される。吸収液供給装置2は、バッファタンク21と、供給流路部22と、レベルセンサ23と、補給タンク24と、補給路25と、制御装置26と、電磁弁27と、供給用ポンプP1と、補給用ポンプP2とを有する。
【0031】
バッファタンク21は、固液分離器3にて分離された液体成分を貯留することができるように容器状に形成される。ここで、固液分離器3にて分離される液体成分は、二酸化炭素吸収液である。従ってバッファタンク21は二酸化炭素吸収液を貯留することができるように形成される。二酸化炭素吸収液は、二酸化炭素を吸収して固体化合物を生成する機能を有し、本実施形態では水酸化カルシウム水溶液である。水酸化カルシウム水溶液は、空気に接触すると、空気中の二酸化炭素と反応して固体化合物である炭酸カルシウムを生成する。この反応により二酸化炭素は生成された炭酸カルシウムに固定される。つまり、水酸化カルシウム水溶液は、二酸化炭素を吸収するとともに、二酸化炭素を固定した固体化合物(炭酸カルシウム)を生成する。
【0032】
供給流路部22は、図3に示すように、供給管221とノズル222とを備えて構成される。供給管221は長尺状の管状部材であり、一方の端部にバッファタンク21が接続され、他方の端部にノズル222が接続される。ノズル222は、内部空間を有する円筒状に形成され、その先端部分(図3において上端部分)が空気導入容器部11の側壁を貫通して導入空間S1内に侵入するように配置される。また、ノズル222の先端部分には、反応空間S2側に向かって開口した複数の微細孔が形成される。この微細孔を介してノズル222の内部空間が導入空間S1に連通する。従って、供給管221及びノズル222を有する供給流路部22は、バッファタンク21と導入空間S1とを接続する。
【0033】
供給管221の途中に供給用ポンプP1が介装される。供給用ポンプP1は、駆動することにより、バッファタンク21内の二酸化炭素吸収液が供給管221を経てノズル222に供給されるように構成される。供給用ポンプP1は制御装置26に電気的に接続されており、制御装置26によって駆動状態が制御される。
【0034】
バッファタンク21にレベルセンサ23が取り付けられる。レベルセンサ23は、バッファタンク21の内部に貯留されている二酸化炭素吸収液の液面高さを検出する。レベルセンサ23は制御装置26に電気的に接続されており、検出した液面高さに関する情報を表す信号を制御装置26に出力する。
【0035】
補給タンク24は、予め二酸化炭素吸収液が充填されている容器である。この補給タンク24とバッファタンク21は、長尺状の管状部材である補給路25により接続される。また、補給路25の途中に、常閉型の電磁弁27及び補給用ポンプP2が介装される。補給用ポンプP2は、駆動することにより、補給タンク24内の二酸化炭素吸収液を補給路25を経由してバッファタンク21内に補給することができるように構成される。電磁弁27及び補給用ポンプP2は制御装置26に電気的に接続されており、制御装置26によって、電磁弁27の開閉状態及び補給用ポンプP2の駆動状態が制御される。
【0036】
制御装置26は、上記したように、レベルセンサ23、電磁弁27、供給用ポンプP1、及び補給用ポンプP2に電気的に接続されている。制御装置26は、レベルセンサ23からの信号を入力する。また、制御装置26は、電磁弁27に開作動信号を、供給用ポンプP1及び補給用ポンプP2に駆動信号を、それぞれ出力することができるように構成される。
【0037】
また、図3からわかるように、ガイドベーン51が導入空間S1内に配置される。ガイドベーン51は導入空間S1にてノズル222の先端部分の周囲に取り付けられており、ノズル222と一体的に形成されている。このガイドベーン51は、導入空間S1を流れる空気の気流を乱すように構成される。例えば、扇風機の羽根の形状のガイドベーンを用いることができる。ガイドベーン51は、導入空間S1の径方向に一様に広がるように、導入空間S1内に設けられていると良い。
【0038】
上記したように、本実施形態においては図1に示すように、二酸化炭素吸収器1の空気導入容器部11は、トラックTRのキャビンルーフC1とエアデフレクターADとの間に設けられ、その一方の端部11aが前方に開口するように設置される。また、トラックTRのキャビンルーフC1とエアデフレクターADとの間には、トラックTRの前進走行中に走行風が吹き込む。従って、トラックTRが前進走行すると、空気(大気)が走行風として、二酸化炭素吸収器1の空気導入容器部11内に導入される。
【0039】
また、図1からわかるように、二酸化炭素吸収器1、固液分離器3、及び回収箱4は、トラックTRのキャビンCと荷台Dとの間に設けられ、二酸化炭素吸収器1の下方に固液分離器3が、固液分離器3の下方に回収箱4が、それぞれ配置される。回収箱4が設置されている部分には、トラックTRが前進走行した場合にトラックTRの前部に設けられるラジエタグリルを通過した走行風が吹き込む。したがって、回収箱4は、走行風に晒されることになる。また、回収箱4は、その筐体が例えば金属メッシュにより構成されていて、走行風が内部を通過することができるように構成される。
【0040】
上記構成の二酸化炭素回収システム100において、バッファタンク21内には予め二酸化炭素吸収液が所定の液面高さまで貯留されている。また、補給タンク24内にも二酸化炭素吸収液が充填されている。このような二酸化炭素回収システム100を搭載したトラックTRが前進走行すると、キャビンルーフC1とエアデフレクターADとの間に空気(大気)が走行風として流れ込む。こうしてキャビンルーフC1とエアデフレクターADとの間に流れ込んだ走行風としての空気は、二酸化炭素吸収器1の空気導入容器部11の一方の端部11aから導入空間S1内に導入される。導入空間S1内に導入された空気は、入口フィルタ111を通過することにより清浄化される。さらに、導入空間S1内に導入された空気の気流は、ノズル222の先端に取り付けられたガイドベーン51により乱される。これにより、導入空間S1内に導入された空気がガイドベーン51により攪拌される。
【0041】
また、トラックTRが前進走行するタイミングに合わせて制御装置26が供給用ポンプP1に駆動信号を出力する。制御装置26は、例えばトラックTRの走行速度が所定速度(例えば40km/h)を超えると供給用ポンプP1に駆動信号を出力しても良い。制御装置26が供給用ポンプP1に駆動信号を出力すると、供給用ポンプP1が駆動し、バッファタンク21内の二酸化炭素吸収液が供給流路部22の供給管221を流れてノズル222に圧送される。ノズル222に圧送された二酸化炭素吸収液はノズル222の先端部分に形成された複数の微細孔から導入空間S1内に噴霧される。導入空間S1内に噴霧された粒状の二酸化炭素吸収液は、導入空間S1内で攪拌された空気と接触して混ざり合いながら反応空間S2に導入される。
【0042】
反応空間S2に導入された粒状の二酸化炭素吸収液は、共に反応空間S2に導入された空気と接触し、空気中の二酸化炭素と反応して固体化合物(炭酸カルシウム)を生成する。この場合において、反応空間S2に導入された空気は、導入空間S1内に設けられたガイドベーン51により攪拌されているので、反応空間S2にて粒状の二酸化炭素吸収液と接触する機会が増加する。このため効率的に、空気中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液に接触させることができ、その結果、効率的に、反応を起こすことができる。上記の反応により二酸化炭素吸収液に吸収された二酸化炭素は、固体化合物としての炭酸カルシウムを構成する成分となる。つまり、二酸化炭素が固体状の炭酸カルシウムに固定される。このような固体化合物は、二酸化炭素吸収液の液滴中に浮遊物として存在する。
【0043】
また、反応空間S2に導入された気体(空気)と液体(固体化合物を含む二酸化炭素吸収液)との混合物は、さらに反応空間S2から連通部16内の空間を経て分離空間S3の上方部分に導入される。ここで、導入空間S1及び反応空間S2には、トラックTRの前進走行により空気が走行風として導入されるので、これらの空間(S1,S2)に導入される空気の風圧(走行風の風圧)によって、上記混合物が分離空間S3に送り込まれるとともに、分離空間S3内で混合物が分離容器部13の円筒壁部132の内壁面及び円錐壁部133の内壁面に沿って周方向に流れることによって、旋回流F(図3参照)が形成される。
【0044】
この旋回流Fの形成によって、混合物のうち質量の大きい液体成分(固体化合物を含む二酸化炭素吸収液)が分離容器部13の円筒壁部132の内壁面及び円錐壁部133の内壁面に付着し、壁伝いに流下する。こうして壁伝いに流下した液体成分は、分離空間S3の下方に液溜まりを形成する。この液溜まりを形成する液体成分は、分離空間S3の下端部に連通した液体排出通路部15内の液体排出空間S5を流れて二酸化炭素吸収器1から排出され、次いで固液分離器3に導入される。一方、混合物のうち質量の小さい気体成分は、他方の端部が大気開放されている気体排出通路部14の一方端から気体排出空間S4に進入し、出口フィルター141を通過した後に気体排出通路部14の他方の端部から外部に放出される。このようにして、走行風の風圧を利用することで、ブロア等の動力源を用いることなく、分離空間S3にて気体と液体の混合物が気体成分と液体成分とに分離される。
【0045】
二酸化炭素吸収器1から排出されて固液分離器3に導入された固体化合物及び二酸化炭素吸収を含む成分は、固液分離器3にて、固体成分と液体成分とに分離される。ここで、固液分離器3は液体排出通路部15を介して二酸化炭素吸収器1に接続されているので、二酸化炭素吸収器1に導入された走行風をさらに固液分離器3にも導入することができる。そして、この走行風を利用した遠心分離により、固液分離器3にて固体成分と液体成分とを分離することができる。
【0046】
固液分離器3にて分離された固体成分は、固体回収通路31を経由して回収箱4に収容される。回収箱4に収容された固体成分は、固体化合物である炭酸カルシウムを含んでいる。この炭酸カルシウムは空気中の二酸化炭素を固定している。よって、回収箱4内の固体成分を回収することにより、空気中の二酸化炭素を回収したことになる。なお、回収した炭酸カルシウムは様々な用途に利活用される。
【0047】
固液分離器3にて分離された液体成分、すなわち二酸化炭素吸収液は、液体回収通路32を経由してバッファタンク21に供給される。そして、バッファタンク21から供給管221及びノズル222を経て再び導入空間S1内に噴霧される。このようにして、二酸化炭素吸収液が再利用される。
【0048】
上記のようにして固液分離器3にて分離された液体成分である二酸化炭素吸収液はバッファタンク21に供給されて再利用されるが、ノズル222から噴霧された二酸化炭素吸収液の全てがバッファタンク21に戻るわけではない。固液分離器3にて分離された固体成分にも二酸化炭素吸収液が含まれているからである。従って、固液分離器3からバッファタンク21に戻される二酸化炭素吸収液の量は、バッファタンク21からノズル222を経て導入空間S1に噴霧される二酸化炭素吸収液の量よりも少ない。このため、バッファタンク21内の二酸化炭素吸収液は徐々に減少する。このようなバッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の減少は、バッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の液面高さの減少としてレベルセンサ23により検知される。そして、制御装置26は、レベルセンサ23から入力した情報によってバッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の液面高さが所定の下限高さ未満となったと判断すると(すなわちバッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の貯留量が予め定められた下限量未満であると判断すると)、電磁弁27に開作動信号を出力するとともに、補給用ポンプP2に駆動信号を出力する。これにより、電磁弁27が開いて補給路25が開通するとともに、補給用ポンプP2が駆動して補給タンク24から補給路25を通じて二酸化炭素吸収液がバッファタンク21に補給される。所定時間補給用ポンプP2を駆動させた後、或いはレベルセンサ23により検知される液面高さが所定の高さに達した後、制御装置26は補給用ポンプP2に駆動停止信号を出力するとともに、電磁弁27に閉作動信号を出力する。これにより、補給用ポンプP2の駆動が停止して補給タンク24からバッファタンク21への二酸化炭素吸収液の補給が停止されるとともに、電磁弁27が閉じて補給路25が閉鎖される。
【0049】
本実施形態に係る二酸化炭素回収システム100は上記のように作動することにより、トラックTRの走行中に空気(大気)中の二酸化炭素を吸収するととともに、吸収した二酸化炭素を固体化合物である炭酸カルシウムに固定する。そして、二酸化炭素を固定した炭酸カルシウムを回収箱4に収容することにより、二酸化炭素を回収することができる。
【0050】
また、固液分離器3にて分離された固体成分は、上述したように多くの二酸化炭素吸収液を含んでいる。従って、回収箱4に収容される固体成分は、初期にはスラリー状(脱水ケーキ状)である。ここで、回収箱4は、トラックTRの走行中に走行風に吹き付けられ、且つ、吹き付けられた走行風が内部を通過するように構成されている。このため、回収箱4の内部のスラリー状の固体成分が走行風に吹き付けられることによって固体成分から水分が蒸発する。これにより固体成分が乾燥し、固体成分から水分が除去されて固体成分が軽くなるとともに持ち運びしやすくなる。よって、回収した二酸化炭素の取り扱い性が向上する。
【0051】
このように、本実施形態に係る二酸化炭素回収システム100は、移動体としてのトラックTRに搭載され、二酸化炭素吸収器1と、吸収液供給装置2と、固液分離器3と、回収箱4とを備える。二酸化炭素吸収器1は、空気がトラックTRの前進走行により生じる走行風として導入される接触空間(導入空間S1,反応空間S2)を有し、接触空間内にて、接触空間に導入された空気が、二酸化炭素と反応して固体化合物(炭酸カルシウム)を生成する二酸化炭素吸収液(水酸化カルシウム水溶液)に接触することにより、空気中の二酸化炭素と二酸化炭素吸収液が反応するように構成される。吸収液供給装置2は、二酸化炭素吸収器1の接触空間(導入空間S1)に二酸化炭素吸収液を供給する。固液分離器3は、二酸化炭素吸収器1から排出された固体化合物及び二酸化炭素吸収液を含む成分を、固体成分と液体成分とに分離する。そして、回収箱4は、固液分離器3にて分離された固体成分を収容する。
【0052】
本実施形態に係る二酸化炭素回収システム100によれば、二酸化炭素は固体化合物(炭酸カルシウム)に固定された状態で回収されるので、二酸化炭素を気体として回収する場合と比べて、回収する二酸化炭素の容積を小さくすることができる。また、二酸化炭素を気体として保管するために必要な大型の密閉容器、及び気体の二酸化炭素を液化して貯蔵するための装置を必要としない。さらに、本実施形態においては、トラックTRの前進走行により生じる走行風を利用して空気を二酸化炭素吸収器1の導入空間S1に導入するので、導入空間S1に空気を導入するための専用のブロワ等の動力源を必要としない。このため二酸化炭素回収システム100のコンパクト化(ダウンサイジング)を図ることができ、トラック等の移動体に搭載することが可能となる。加えて、二酸化炭素が固体化合物に固定されているので安全かつ容易に二酸化炭素を回収することができる。
【0053】
また、回収箱4は、トラックTRの走行により生じる走行風が通過する位置に設けられており、且つ、その走行風が内部を通過するように、例えば筐体がメッシュ状に形成されている。このため、回収箱4内の固体成分が走行風に接触することによって、固体化合物を含む固体成分から水分が蒸発する。こうして固体成分を乾燥させることで固体成分が軽くなるとともに持ち運びしやすくなり、それ故に、固体成分に含まれる固体化合物に固定された二酸化炭素の取り扱い性をより向上させることができる。
【0054】
また、吸収液供給装置2は、固液分離器3により分離された液体成分としての二酸化炭素吸収液を貯留することができるように構成されたバッファタンク21と、バッファタンク21と導入空間S1とを接続する供給流路部22と、を備える。このため、固液分離器3にて分離されてバッファタンク21内に貯留された二酸化炭素吸収液を供給流路部22を通じて導入空間S1に供給することにより、一度使用された二酸化炭素吸収液を再利用することができる。
【0055】
また、吸収液供給装置2はさらに、バッファタンク21内に貯留されている二酸化炭素吸収液の貯留量を検出するレベルセンサ23と、補給用の二酸化炭素吸収液が充填された補給タンク24と、補給タンク24とバッファタンク21とを接続する補給路25と、補給路25に介装され、駆動することにより補給タンク24内の二酸化炭素吸収液をバッファタンク21内に補給することができるように構成された補給用ポンプP2と、レベルセンサ23により検出されたバッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の液面高さが予め定められた所定の下限高さ未満であるときに補給用ポンプP2が駆動するように補給用ポンプP2を制御する制御装置26と、を備える。このため、バッファタンク21内の二酸化炭素吸収液の貯留量が低下したときに、自動的に二酸化炭素吸収液を補給することができる。
【0056】
また、固液分離器3は、トラックTRの走行風を利用した遠心分離により、二酸化炭素吸収器1から排出された成分を固体成分と液体成分とに分離するように構成される。このためブロワなどの動力源を用いることなく固体成分と液体成分とを分離することができ、二酸化炭素回収システム100をよりコンパクト且つ安価に構成することができる。
【0057】
(変形例)
図4は、変形例に係る二酸化炭素回収システム100’が搭載されたトラックTRの概略側面図である。この二酸化炭素回収システム100’は、各構成の配置及び姿勢を除き、基本的には上記実施形態に係る二酸化炭素回収システム100と同一の構成を備える。従って、二酸化炭素回収システム100と同一の構成には同一の符号を付す。
【0058】
図4に示すように、二酸化炭素回収システム100’は、トラックTRのキャビンCの下方部分及び荷台Dの前方部分に配設される。キャビンCの下方部分には、主に、二酸化炭素吸収器1、固液分離器3、回収箱4が配設され、荷台Dの前方部分には、吸収液供給装置2が配設される。
【0059】
二酸化炭素吸収器1は、本例においても上記実施形態に係る二酸化炭素吸収器1と同様の構造の反応部1a及び気液分離部1bを有する。ただし、反応部1aの軸方向は水平方向に平行である一方、円錐台形状の気液分離部1bは、その中心軸Lが鉛直軸に対して所定の角度傾斜するように、斜めに配置されている。また、固液分離器3は、本例においても上記実施形態に係る固液分離器3と同様に円錐台形状に形成されているが、本例に係る固液分離器3は、その中心軸が鉛直軸に対して所定の角度傾斜するように、斜めに配置されている。二酸化炭素回収システム100’のそれ以外の構造は上記実施形態に係る二酸化炭素回収システム100の対応する構造と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0060】
本例に係る二酸化炭素回収システム100’において、トラックTRが前進走行すると、トラックTRのフロントグリルを経由した走行風として空気が二酸化炭素吸収器1の反応部1a内の空間(接触空間)に導入される。この接触空間にて空気中の二酸化炭素が二酸化炭素吸収液に吸収される。また、二酸化炭素吸収液に吸収された二酸化炭素は固体化合物としての炭酸カルシウムに固定されて、回収箱4に収容される。この回収箱4内の固体化合物を含む固体成分は、トラックTRのフロントグリルを経由した走行風に接触する。これにより固体成分が乾燥する。このため固体化合物に固定された二酸化炭素の取り扱い性が向上するとともに、容易に回収できる。
【0061】
また、本例においては、上記したように二酸化炭素吸収器1の気液分離部1b及び固液分離器3が斜めに配置されているために、これらの高さ寸法を低減することができる。このため二酸化炭素回収システム100’のトラックTRへの搭載性を向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、二酸化炭素回収システム100がトラックTRに搭載される例について説明したが、トラック以外の移動体、例えば、車両、電車、船舶等に、本発明に係る二酸化炭素回収システムを搭載することができる。また、上記実施形態では、二酸化炭素吸収器1は、導入空間S1に導入された空気がノズル222から噴霧された二酸化炭素吸収液に接触するように構成されているが、二酸化炭素吸収器1の構造はこのような例に限定されない。例えば、二酸化炭素吸収液が充填された容器内に、移動体の移動により生じた走行風としての空気をバブリングするような構造の二酸化炭素吸収器を採用することができる。また、上記実施形態では、二酸化炭素吸収液として水酸化カルシウム水溶液を例示したが、二酸化炭素と反応して固体化合物を生成する二酸化炭素吸収液であれば、水酸化カルシウム水溶液以外の二酸化炭素吸収液を用いても良い。また、上記実施形態では、二酸化炭素吸収器1に導入された空気の風圧を利用して固液分離器3にて固液分離がなされる例について説明したが、固液分離器3には、二酸化炭素吸収器1に導入される空気とは別に、移動体の移動により生じる走行風としての空気が独立して導入されるように構成しても良い。また、固液分離器3として、上記実施形態で例示したサイクロン式の固液分離器に代えて、例えばフィルター等を用いた固液分離器を採用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…二酸化炭素吸収器、1a…反応部、11…空気導入容器部、12…反応容器部、1b…気液分離部、13…分離容器部、14…気体排出通路部、15…液体排出通路部、2…吸収液供給装置、21…バッファタンク、22…供給流路部、221…供給管、222…ノズル、23…レベルセンサ、24…補給タンク、25…補給路、26…制御装置、27…電磁弁、3…固液分離器、31…固体回収通路、32…液体回収通路、4…回収箱(回収器)、51…ガイドベーン、100,100’…二酸化炭素回収システム、P1…供給用ポンプ、P2…補給用ポンプ、S1…導入空間(接触空間)、S2…反応空間(接触空間)、S3…分離空間、S4…気体排出空間、S5…液体排出空間、TR…トラック(移動体)
図1
図2
図3
図4