(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147635
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20231005BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20231005BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20231005BHJP
B04C 5/081 20060101ALI20231005BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D53/18 150
B01D53/14 200
B01D45/12
B04C5/081
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055263
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川浦 智規
【テーマコード(参考)】
4D020
4D031
4D053
4G146
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA02
4D020BA08
4D020BB03
4D020CB27
4D020CC04
4D020CD02
4D020CD10
4D031AC04
4D031BA01
4D031BA07
4D031BA10
4D031EA01
4D053AA01
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD05
4D053CA01
4D053CC04
4D053DA10
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC29
4G146JC36
4G146JC39
4G146JD03
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】 動力源を用いることなく空気中の二酸化炭素を分離及び回収することができる二酸化炭素回収装置を提供すること。
【解決手段】 二酸化炭素回収装置1はトラックTRに搭載される。また、二酸化炭素回収装置1は、空気がトラックTRの前進走行により生じる走行風として導入される導入空間S1及び反応空間S2が形成される反応部2aと、導入空間S1内に配置され、導入空間S1に導入された空気を攪拌するためのガイドベーン32と、導入空間S1内に配置され、二酸化炭素を吸収する機能を有する二酸化炭素吸収液40を導入空間S1に噴霧するノズル31と、反応空間S2に連通し、導入空間S1及び反応空間S2に導入される空気の風圧によって、反応空間S2から送り込まれた気体と液体との混合物を気体と液体に分離する分離空間S3が形成される気液分離部2bと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される二酸化炭素回収装置であって、
空気が前記移動体の移動により生じる走行風として導入される第一空間が形成される反応部と、
前記第一空間内に配置され、前記第一空間に導入された空気を攪拌するための攪拌部材と、
前記第一空間内に配置され、二酸化炭素を吸収する機能を有する二酸化炭素吸収液を前記第一空間に噴霧するノズルと、
前記第一空間に連通し、前記第一空間に導入される空気の風圧によって、前記第一空間から送り込まれた気体と液体との混合物を気体と液体に分離する第二空間が形成される気液分離部と、
を含む、二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記第二空間は、前記第一空間に導入される空気の風圧によって前記第二空間内に旋回流を生じさせることによって前記混合物を気体と液体に遠心分離することができるように、略円錐台形状または略円錐形状に形成されている、二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記第二空間の中心軸線は、鉛直軸線に対して70°以下の傾斜角をもって傾斜している、二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記攪拌部材と前記ノズルが一体的に形成されている、二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の二酸化炭素を回収することができるように構成された二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、固体粒子を触媒とする気液固反応系において、固体触媒粒子を内部で循環させながら、反応及び固体触媒粒子の分離を行うことができるように構成された反応器を開示する。この反応器によれば、上昇管及び液降下管を有する反応槽内にハイドロサイクロンを設置し、ハイドロサイクロンにて固体触媒粒子が分離される。分離された固体触媒粒子はハイドロサイクロンのアンダーフロー口から排出され、再び上昇管を経由して液降下管を循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
空気(大気)中の二酸化炭素を回収するために、例えば水酸化カルシウム水溶液を用いる場合、水酸化カルシウムと空気中の二酸化炭素が反応して固体状の炭酸カルシウムが生成される。このような反応も気液固反応であり、上記特許文献1に記載の反応器を用いて二酸化炭素(炭酸カルシウム)を分離及び回収することが可能と考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載の反応器は、ハイドロサイクロン内で旋回流を形成するための動力源(例えばブロワー)が必要であるという問題を有する。
【0005】
そこで、本発明は、動力源を用いることなく空気中の二酸化炭素を分離及び回収することができる二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動体(TR)に搭載される二酸化炭素回収装置(1)であって、空気が移動体の移動により生じる走行風として導入される第一空間(S1,S2)が形成される反応部(2a)と、第一空間内に配置され、第一空間に導入された空気を攪拌するための攪拌部材(32)と、第一空間内に配置され、二酸化炭素を吸収する機能を有する二酸化炭素吸収液(40)を第一空間に噴霧するノズル(31)と、第一空間に連通し、第一空間に導入される空気の風圧によって、第一空間から送り込まれた気体と液体との混合物を気体と液体に分離する第二空間(S3)が形成される気液分離部(2b)と、を含む、二酸化炭素回収装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、反応部の第一空間に導入された空気が攪拌部材により攪拌されるとともにノズルから噴霧された二酸化炭素吸収液に接触することにより、空気中の二酸化炭素が二酸化炭素吸収液に吸収される。その後、気体(空気)と液体(二酸化炭素吸収液)との混合物が気液分離部の第二空間に導入される。ここで、気体と液体との混合物は、第一空間に導入される空気の風圧によって、第二空間に送り込まれるとともに気液分離が行われる。このように、移動体の移動により生じる空気の風圧を利用することで、動力源を用いることなく、二酸化炭素吸収液に吸収された二酸化炭素を気体から分離し、回収することができる。さらに、第一空間内に攪拌部材を配置することにより、第一空間に導入された空気を攪拌して、空気中の二酸化炭素と二酸化炭素吸収液との反応を促進することができる。
【0008】
第二空間は、第一空間に導入される空気の風圧によって第二空間内に旋回流を生じさせることによって混合物を気体と液体に遠心分離することができるように、略円錐台形状または略円錐形状に形成されている、というように構成することもできる。これによれば、第一空間に導入される空気の風圧により第二空間に送り込まれた気体と液体との混合物は、第二空間を周方向に流れることにより旋回流を形成する。こうして形成された旋回流により、第二空間にて気体と液体との混合物が気体と液体とに遠心分離される。このため二酸化炭素吸収液に吸収された二酸化炭素を気体から容易に分離することができる。
【0009】
この場合、第二空間の中心軸線(L)は、鉛直軸線(L0)に対して70°以下の傾斜角θをもって傾斜している、というように構成することもできる。これによれば、二酸化炭素回収装置の高さ寸法を低減することができ、移動体への搭載性を向上させることができる。なお、傾斜角θが70°を超えると、第二空間から液体成分を取り出すことが困難となる。よって、傾斜角θは70°以下であるのが良い。
【0010】
また、攪拌部材とノズルが一体的に形成されているように構成することもできる。これによれば、攪拌部材とノズルが別体で構成される場合と比較して、二酸化炭素回収装置をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置が搭載された移動体としてのトラックの概略側面図である。
【
図2】
図2は、二酸化炭素回収装置の概略縦断面図である。
【
図3】
図3は、二酸化炭素回収装置がトラックのキャビンの下方部分に搭載された例を示すトラックの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1が搭載された移動体としてのトラックTRの概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態において、二酸化炭素回収装置1は、トラックTRのキャビンCと荷台Dとの間であって、キャビンCの上部に設けられるエアデフレクターADの下方部に搭載される。
【0013】
図2は、二酸化炭素回収装置1の概略縦断面図である。この二酸化炭素回収装置1は、空気中(大気中)の二酸化炭素を回収することができるように構成される。
図2に示すように、二酸化炭素回収装置1は、本体容器2と、吸収液供給ユニット3とを有する。
【0014】
本体容器2は、空気中の二酸化炭素を吸収する反応が起きる部分である反応部2aと、気体と液体とを分離する部分である気液分離部2bとを備えるように構成される。反応部2aは、空気導入容器部21と、反応容器部22とを有するように構成され、気液分離部2bは、分離容器部23と、気体排出通路部24と、液体排出通路部25と、を有するように構成される。
【0015】
空気導入容器部21は円筒状に構成され、両端が開口している。この空気導入容器部21は、
図1に示すように、トラックTRのキャビンCのルーフC1とエアデフレクターADとの間に設けられ、軸方向が水平方向に略一致し、一方の端部21a(
図2参照)が前方に開口するように設置される。このためトラックTRが走行すると、空気(大気)が上記一方の端部21aから空気導入容器部21の内部の空間である導入空間S1に導入される。また、導入空間S1内には、入口フィルタ211が設けられる。この入口フィルタ211により、導入空間S1に導入される空気から異物が除去される。
【0016】
反応容器部22は空気導入容器部21と同軸の円筒状に構成されており、一方の端部22aが空気導入容器部21の後側の端部である他方の端部21bに接続される。また、反応容器部22の外径及び内径は空気導入容器部21の外径及び内径よりも大きい。従って、空気導入容器部21と反応容器部22とにより、反応部2aが段付円筒形状に構成される。空気導入容器部21の他方の端部21bは、反応容器部22内の空間である反応空間S2に開口している。よって、導入空間S1と反応空間S2は互いに連通している。導入空間S1と反応空間S2が、本発明の第一空間を構成する。
【0017】
分離容器部23は、略円錐台形状の外形の内部空間である分離空間S3を有するように、略円錐台形状に構成される。分離容器部23は、円板状の上壁部231と、円筒状の円筒壁部232と、円錐状の円錐壁部233とを有する。上壁部231の周縁に円筒壁部232の一方の端縁が接続される。円筒壁部232はその一方の端縁から斜め下方に延在し、他方の端縁が円錐壁部233の大径縁部に接続される。円錐壁部233は斜め下方に向かうほど先細りに構成される。このように分離容器部23が構成されることにより、分離空間S3は、下に凸の略円錐台形状に形成される。分離空間S3が本発明の第二空間を構成する。
【0018】
分離容器部23の上方部分が、連通部26を介して反応容器部22の他方の端部22bに接続される。このため反応空間S2は連通部26内の空間を通じて分離空間S3に連通している。なお、連通部26を省略して反応空間S2と分離空間S3とが直接連通するように構成されていても良い。
【0019】
図1及び
図2に示すように、分離空間S3(分離容器部23)は、中心軸線Lを中心とて、概ね回転対称形状に形成される。分離空間S3の中心軸線Lは、鉛直軸線L0に対して所定の傾斜角θをもって傾斜している。傾斜角θは0°よりも大きく70°以下である。なお、二酸化炭素回収装置1の鉛直方向における寸法(高さ寸法)を小さくするといった観点からは、傾斜角θは、70°に近い角度であると良い。
【0020】
気体排出通路部24は、両端が開口した略円筒形状を呈しており、
図2に示すように分離容器部23の上壁部231の中心部分を貫通して分離空間S3の上側から分離空間S3内に部分的に侵入するように構成される。従って、気体排出通路部24内の気体排出空間S4は、分離空間S3内に開口した一方の端部にて分離空間S3に連通する。また、気体排出通路部24の他方の端部側は分離容器部23から上方に突き出ており、その他方の端部は大気開放される。従って、分離空間S3は、気体排出通路部24内の気体排出空間S4を通じて外部に連通する。この気体排出空間S4に、異物を除去するための出口フィルター241が設けられる。
【0021】
液体排出通路部25は
図2に示すように分離容器部23の下方に位置し、その一方の端部が分離容器部23の円錐壁部233の先端部(下端部)に接続される。液体排出通路部25内の空間(液体排出空間S5)は、円錐壁部233との接続部分にて分離空間S3の下端部に連通する。液体排出通路部25の他方の端部は、図示しない回収容器に接続されていても良いし、固液分離装置に接続されていても良い。
【0022】
また、
図2に示すように、吸収液供給ユニット3は、ノズル31と、攪拌部材としてのガイドベーン32と、吸収液通路33と、ポンプ34と、吸収液貯留タンク35とを有する。
【0023】
ノズル31は、内部空間を有する円筒状に形成され、その先端部分(
図2において上端部分)が空気導入容器部21の側壁を貫通して導入空間S1内に侵入するように配置される。また、ノズル31の先端部分には、反応空間S2側に向かって開口した複数の微細孔が形成される。この微細孔を介してノズル31の内部空間が導入空間S1に連通する。また、ノズル31の後端部(
図2において下端部)は吸収液通路33の一方の端部に接続されており、その接続部分にてノズル31の内部空間と吸収液通路33の内部空間が連通する。吸収液通路33の他方の端部は、内部空間を有する容器状の吸収液貯留タンク35の下端部に接続されており、その接続部分にて吸収液貯留タンク35の内部空間と吸収液通路33の内部空間が連通する。
【0024】
吸収液貯留タンク35の内部に二酸化炭素吸収液40が貯留される。二酸化炭素吸収液40は、二酸化炭素を吸収する機能を有し、本実施形態では水酸化カルシウム水溶液である。水酸化カルシウム水溶液は、二酸化炭素に接触すると、固体状の炭酸カルシウムを生成する。このような反応により、二酸化炭素吸収液40は二酸化炭素を吸収するように構成される。
【0025】
吸収液通路33の途中にポンプ34が介装される。ポンプ34は、駆動することにより、吸収液貯留タンク35内の二酸化炭素吸収液40を吸引するとともに、吸引した二酸化炭素吸収液40をノズル31に向けて圧送することができるように構成される。
【0026】
ガイドベーン32は導入空間S1内に配置される。ガイドベーン32は導入空間S1にてノズル31の先端部分の周囲に取り付けられており、ノズル31と一体的に形成されている。このガイドベーン32は、導入空間S1を流れる空気の気流を乱すように構成される。例えば、扇風機の羽根の形状のガイドベーンを用いることができる。ガイドベーン32は、導入空間S1の径方向に一様に広がるように、導入空間S1内に設けられていると良い。
【0027】
上記構成の二酸化炭素回収装置1を搭載したトラックTRが前進走行すると、空気(大気)が走行風として、空気導入容器部21の一方の端部21aから導入空間S1内に導入される。導入空間S1内に導入された空気は、入口フィルタ211を通過することにより清浄化される。さらに、導入空間S1内に導入された空気の気流は、ノズル31の先端に取り付けられたガイドベーン32により乱される。つまり、導入空間S1内に導入された空気はガイドベーン32により攪拌される。
【0028】
また、トラックTRが前進走行するタイミングに合わせてポンプ34が駆動する。ポンプ34は、例えばトラックTRの走行速度が所定速度(例えば40km/h)を超えると駆動するように構成されていても良い。ポンプ34が駆動すると、吸収液貯留タンク35内の二酸化炭素吸収液40が吸収液通路33を通じてノズル31に圧送される。よって、ノズル31の先端部分に形成された複数の微細孔から二酸化炭素吸収液40が導入空間S1内に噴霧される。導入空間S1内に噴霧された粒状の二酸化炭素吸収液40は、導入空間S1内で攪拌された空気と混ざり合いながら反応空間S2に導入される。
【0029】
反応空間S2に導入された粒状の二酸化炭素吸収液40は、共に反応空間S2に導入された空気中の二酸化炭素を吸収する。この場合において、反応空間S2に導入された空気は、導入空間S1内に設けられたガイドベーン32により攪拌されているので、反応空間S2にて粒状の二酸化炭素吸収液40と接触する機会が増加する。このため効率的に、空気中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液40に接触させることができ、その結果、効率的に、二酸化炭素吸収液40が空気中の二酸化炭素を吸収する反応(二酸化炭素吸収反応)を反応空間S2内で起こすことができる。二酸化炭素吸収反応により二酸化炭素吸収液40に吸収された二酸化炭素は、例えば炭酸カルシウムのような固体化合物を構成する。このような固体化合物は、二酸化炭素吸収液40の液滴中に浮遊物として存在する。
【0030】
また、反応空間S2に導入された気体(空気)と液体(二酸化炭素吸収液)との混合物は、さらに反応空間S2から連通部26内の空間を経て分離空間S3の上方部分に導入される。ここで、導入空間S1及び反応空間S2には、トラックTRの前進走行により空気が走行風として導入されるので、これらの空間(S1,S2)に導入される空気の風圧(走行風の風圧)によって、上記混合物が分離空間S3に送り込まれるとともに、分離空間S3内で混合物が分離容器部23の円筒壁部232の内壁面及び円錐壁部233の内壁面に沿って周方向に流れることによって、旋回流F(
図2参照)が形成される。
【0031】
この旋回流Fの形成によって、混合物のうち質量の大きい液体成分(固体成分を含む液体)が分離容器部23の円筒壁部232の内壁面及び円錐壁部233の内壁面に付着し、壁伝いに流下する。こうして壁伝いに流下した液体成分は、分離空間S3の下方に液溜まりを形成する。この液溜まりを形成する液体成分は、分離空間S3の下端部に連通した液体排出通路部25内の液体排出空間S5を流れて二酸化炭素回収装置1から排出される。二酸化炭素回収装置1から排出された液体成分中の固体成分を回収することで、二酸化炭素を回収することができる。一方、混合物のうち質量の小さい気体は、他方の端部が大気開放されている気体排出通路部24の一方端から気体排出空間S4に進入し、出口フィルター241を通過した後に気体排出通路部24の他方の端部から外部に放出される。このようにして、空気の風圧を利用することで、ブロア等の動力源を用いることなく、分離空間S3にて気体と液体の混合物が気体と液体とに分離される。すなわち、気液分離部2bは、トラックTRの前進走行に伴って反応部2aに導入される空気の風圧によって気体と液体との混合物を気体と液体とに分離する分離空間S3が形成されるように構成される。
【0032】
このように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、移動体であるトラックTRに搭載される。また、トラックTRに搭載された二酸化炭素回収装置1は、空気(大気)がトラックTRの前進走行により生じる走行風として導入される導入空間S1及び反応空間S2が形成される反応部2aと、導入空間S1内に配置され、導入空間S1に導入された空気を攪拌するためのガイドベーン32と、導入空間S1内に配置され、二酸化炭素を吸収する機能を有する二酸化炭素吸収液40を導入空間S1に噴霧するノズル31と、反応空間S2に連通し、導入空間S1及び反応空間S2に導入される空気の風圧によって、反応空間S2から送り込まれた気体と液体との混合物を気体と液体に分離する分離空間S3が形成される気液分離部2bと、を含む。
【0033】
本実施形態によれば、トラックTRの前進走行により生じる空気の風圧(導入空間S1及び反応空間S2に導入される空気の風圧)を利用することで、ブロア等の動力源を用いることなく、二酸化炭素吸収液40に吸収された二酸化炭素を気体から分離し、回収することができる。さらに、導入空間S1内にガイドベーン32を配置することにより、導入空間S1に導入された空気を攪拌して、空気中の二酸化炭素と二酸化炭素吸収液との反応(二酸化炭素吸収反応)を促進することができる。
【0034】
また、分離空間S3は、導入空間S1及び反応空間S2に導入される空気の風圧によって分離空間S3内に旋回流を生じさせることによって混合物を気体と液体に遠心分離することができるように、略円錐台形状に形成されている。このため空気の風圧により分離空間S3に送り込まれた気体と液体との混合物は、分離空間S3を周方向に流れることにより旋回流を形成する。こうして形成された旋回流により、気体と液体との混合物が気体と液体とに遠心分離される。このため二酸化炭素吸収液40に吸収された二酸化炭素を気体から容易に分離することができる。
【0035】
また、分離空間S3の中心軸線Lは、鉛直軸線L0に対して70°以下の傾斜角θをもって傾斜している。このため、二酸化炭素回収装置の高さ寸法を低減することができ、トラックTRへの搭載性を向上させることができる。なお、傾斜角θが70°を超えると、分離空間S3の下部に液溜まりが形成され難くなり、そのため分離空間S3にて分離された液体成分を液体排出通路部25に十分に導くことができない。よって、傾斜角θは0°よりも大きく70°以下であるのが良い。
【0036】
また、
図2に示すようにガイドベーン32とノズル31が一体的に形成されているため、二酸化炭素回収装置1をよりコンパクトに構成することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、二酸化炭素回収装置1がトラックTRに搭載される例について説明したが、トラック以外の移動体、例えば、車両、電車、船舶等に、本発明に係る二酸化炭素回収装置を搭載することができる。また、上記実施形態では、二酸化炭素回収装置1は、トラックTRのキャビンCと荷台Dとの間であって、キャビンCの上部に設けられるエアデフレクターADの下方部に搭載される例について説明したが、それ以外の部分に搭載されていてもよい。例えば、
図3に示すように、二酸化炭素回収装置1’は、トラックTRのキャビンCの下方部分(例えばラジエタグリル後部)に搭載されていても良い。この場合、傾斜角θを70°以下の範囲でより大きくすることにより二酸化炭素回収装置1’の高さ寸法をより低減することができ、それにより二酸化炭素回収装置1のキャビンCの下方部への搭載性を向上させることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、反応部2aに形成される空間(第一空間)を導入空間S1と反応空間S2とに分けて構成する例について説明したが、反応部2a内の空間は一つの空間であっても良い。すなわち一つの同一空間が導入空間S1と反応空間S2とを兼ねていても良い。また、上記実施形態では、分離空間S3が略円錐台形状である例について説明したが、分離空間S3を略円錐形状に形成しても良い。さらに、上記実施形態では、二酸化炭素吸収液として水酸化カルシウム水溶液を例示したが、それ以外の二酸化炭素吸収液を用いても良い。また、上記実施形態では、二酸化炭素と反応して固体化合物(例えば炭酸カルシウム)を生成する二酸化炭素吸収液を例示したが、固体化合物を生成しない二酸化炭素吸収液を用いても良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,1’…二酸化炭素回収装置、2…本体容器、2a…反応部、2b…気液分離部、21…空気導入容器部、22…反応容器部、23…分離容器部、231…上壁部、232…円筒壁部、233…円錐壁部、24…気体排出通路部、25…液体排出通路部、3…吸収液供給ユニット、31…ノズル、32…ガイドベーン(攪拌部材)、33…吸収液通路、34…ポンプ、35…吸収液貯留タンク、40…二酸化炭素吸収液、F…旋回流、S1…導入空間(第一空間)、S2…反応空間(第一空間)、S3…分離空間(第二空間)、θ…傾斜角、TR…トラック(移動体)