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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147644
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】冷凍された寿司の解凍ツール
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20231005BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20231005BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20231005BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D81/34 V
B65D85/50 140
A23L3/365 A
A23L7/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055279
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】522128778
【氏名又は名称】株式会社ちかなり
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】近成善行
【テーマコード(参考)】
3E013
3E035
4B022
4B023
【Fターム(参考)】
3E013BA28
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BD02
3E013BD13
3E013BD20
3E013BE01
3E013BF57
3E013BF73
3E013BF76
3E013BG13
3E035AA10
3E035BA02
3E035BB01
3E035BC02
3E035BD10
3E035CA01
4B022LA01
4B022LB02
4B022LJ01
4B022LJ06
4B022LQ07
4B022LT11
4B023LE17
4B023LP13
4B023LP19
4B023LP20
4B023LT60
(57)【要約】
【課題】複数の冷凍された寿司を、そのシャリとネタが適温になるとうに解凍する。
【解決手段】
寿司一個分のシャリを収容するプラスチック容器18が複数設けられ、これらの複数の容器18の開口の部分が同一平面上に並ぶように容器18が配列され、上記の平面上でセパレータ24によって全ての容器18の開口の縁22が連結される。セパレータ24は、容器18の開口上に配置されたネタが、隣接する開口上の別のネタと接することがないように全ての容器18の間隔を保持する。セパレータ24と全てのネタを覆い、セパレータ24との間にネタを挟んでその移動を阻止する蓋30が設けられる。セパレータ24はマイクロ波を遮断する遮蔽体32とプラスチックシート34とを重ね合わせたもので、遮蔽体32とプラスチックシート34とは分離することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寿司一個分のシャリを収容するプラスチック容器が複数設けられ、
これらの複数の容器の開口の部分が同一平面上に並ぶように容器が配列され、
上記の平面上でセパレータによって全ての容器の開口の縁が連結され、
上記のセパレータは、上記の容器の開口上に配置されたネタが、隣接する開口上の別のネタと接することがないように全ての容器の間隔を保持し、
上記のセパレータと全てのネタを覆い、セパレータとの間にネタを挟んでその移動を阻止する蓋が設けられ、
上記のセパレータはマイクロ波を遮断する遮蔽体とプラスチックシートとを重ね合わせたものであることを特徴とする冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項2】
上記のセパレータは円形であって、容器を円周方向に配列したことを特徴とする請求項1に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項3】
上記の蓋と容器とは解凍のためのマイクロ波を透過させるプラスチックから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項4】
上記のセパレータは、シャリが配置される領域とネタが配置される領域の境界面に位置しており、
上記のセパレータを構成するプラスチックシートは、上記の全ての容器と連続一体化されており、
上記の遮蔽体は、プラスチックシートのシャリが配置される領域側に密着し、かつ、遮蔽体とプラスチックシートとは分離することができ、
上記の遮蔽体は、全ての容器を貫通させる複数の窓を有する金属板であることを特徴とする請求項2または3に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項5】
上記の容器にはシャリが入り込まない凹部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項6】
上記の遮蔽体は、その厚みが0.1mm以上1mm以下のアルミニウム板であることを特徴とする請求項4または5に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【請求項7】
上記の遮蔽体は、その厚みが0.02mmmm以上0.1mm未満のアルミニウム薄膜で、プラスチックシートと一体化されていることを特徴とする請求項3に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャリとネタとが冷凍された寿司を並べて電子レンジでまとめて解凍をすることができる冷凍された寿司の解凍ツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍された寿司を並べてまとめて解凍をするツールは、特許文献1~7に示すように各種紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1993-184314号公報
【特許文献2】特開1993-219906号公報
【特許文献3】特開1997-327280号公報
【特許文献4】特開1999-290206号公報
【特許文献5】特開2004-136975号公報
【特許文献6】特開2007-137493号公報
【特許文献7】国際公開WO2005/7532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍寿司は電子レンジから出してそのまま皿に盛り付けられる状態まで解凍されることが望ましい。このためにはシャリもネタも食べ頃の最適な温度に暖められる必要がある。シャリがほどよく暖められたときにネタまで暖まり過ぎてしまってはならない。そこで、従来はネタを覆う蓋や容器に、電子レンジのマイクロ波の入射を弱めたり遮断したりする素材を使用して、シャリとネタの暖まりかたに差を付けるようにしていた。
【0005】
さらに、こうしてネタの温度上昇を抑える一方で、マイクロ波の照射により暖まったシャリから伝わる熱によってネタが適度に解凍されるようにしていた。しかしながら、ネタのシャリに接している面と反対側の面に温度差が生じて食感を悪くすることがある。
【0006】
また、シャリと比較してサイズの大きなネタはシャリと接する面積が狭く、他の寿司のネタと比べて全体の解凍が遅れるという問題もあった。即ち、複数の冷凍された寿司を、そのシャリとネタ全体が均一に適温になるように解凍できるツールのさらなる開発が求められていた。本発明はこうした従来の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0008】
<構成1>
寿司一個分のシャリを収容するプラスチック容器が複数設けられ、
これらの複数の容器の開口の部分が同一平面上に並ぶように容器が配列され、
上記の平面上でセパレータによって全ての容器の開口の縁が連結され、
上記のセパレータは、上記の容器の開口上に配置されたネタが、隣接する開口上の別のネタと接することがないように全ての容器の間隔を保持し、
上記のセパレータと全てのネタを覆い、セパレータとの間にネタを挟んでその移動を阻止する蓋が設けられ、
上記のセパレータはマイクロ波を遮断する遮蔽体とプラスチックシートとを重ね合わせたものであることを特徴とする冷凍された寿司の解凍ツール。
【0009】
<構成2>
上記のセパレータは円形であって、容器を円周方向に配列したことを特徴とする構成1に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【0010】
<構成3>
上記の蓋と容器とは解凍のためのマイクロ波を透過させるプラスチックから構成されていることを特徴とする構成2に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【0011】
<構成4>
上記のセパレータは、シャリが配置される領域とネタが配置される領域の境界面に位置しており、
上記のセパレータを構成するプラスチックシートは、上記の全ての容器と連続一体化されており、
上記の遮蔽体は、プラスチックシートのシャリが配置される領域側に密着し、かつ、遮蔽体とプラスチックシートとは分離することができ、
上記の遮蔽体は、全ての容器を貫通させる複数の窓を有する金属板であることを特徴とする構成2または3に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【0012】
<構成5>
上記の容器にはシャリが入り込まない凹部が設けられていることを特徴とする構成4に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【0013】
<構成6>
上記の遮蔽体は、その厚みが0.1mm以上1mm以下のアルミニウム板であることを特徴とする構成4または5に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【0014】
<構成7>
上記の遮蔽体は、その厚みが0.02mmmm以上0.1mm未満のアルミニウム薄膜で、プラスチックシートと一体化されていることを特徴とする構成3に記載の冷凍された寿司の解凍ツール。
【発明の効果】
【0015】
マイクロ波を遮断するセパレータ24が、シャリ16が配置される領域とネタ28が配置される領域の境界面に位置していると、電子レンジ内のマイクロ波44が、ネタ28に直接照射されるのを阻止し、回り込みした少量のマイクロ波だけでネタ28を解凍できる。
【0016】
セパレータ24の形状を円形にして、容器18を円周方向に配列すると、全ての容器の寿司を均一に解凍できる。さらに、セパレータ24の形状が円形だと遮蔽体32の周囲にエッジが無く、電荷の集中が防止され発火の心配が無い。
【0017】
セパレータ24をマイクロ波を遮断する遮蔽体32とプラスチックシート34とを重ね合わせたものとし、プラスチックシート34を全ての容器18と連続一体化させ、遮蔽体32とプラスチックシート34とを分離することができると、配膳に使用したり洗浄をしたりするプラスチック容器18側と遮蔽体32とを別体にして、消耗品的なプラスチック容器18側のコストを節約でき、金属を含む廃棄物を出さないですむ。
【0018】
蓋30を解凍のためのマイクロ波を透過させるプラスチックにすると、電子レンジの庫内で回り込みしたマイクロ波が適度にネタ28に照射されるので、ネタ28の全体を均一に解凍できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本発明のツールの主要部平面図、(b)は蓋の側面図、(c)はツール主要部のA-A断面図、(d)は図2に示した遮蔽体のB-B断面図である。
図2】(a)は遮蔽体の平面図である。(b)は図1の(a)に示した容器のC-C横断面図である。(c)はその変形例のC-C横断面図である。
図3】冷凍寿司の解凍手順説明図である。
図4】本発明のツールの全体の実施例分解斜視図である。
図5】(a)と(b)とはそれぞれ異なる状態での電子レンジの庫内側面図である。
図6】比較例の電子レンジの庫内側面図である。
【0020】
図1(a)や(c)に示すように、この冷凍寿司の解凍ツールには、それぞれ寿司一個分のシャリを収容するための複数のプラスチック容器18が設けられている。この実施例では、12個の複数の容器18の開口20が円周方向に軸対称に同一平面上に並ぶように配列されている。
【0021】
上記の全ての容器18の開口20の縁22は、上記の平面上でセパレータ24によって連結されている。セパレータ24はマイクロ波44を遮断する遮蔽体32とプラスチックシート34とを重ね合わせたものである。
【0022】
全ての容器18とプラスチックシート34は、例えば、厚みが0.7mmのポリエステル樹脂を一体成形したものである。図1(b)に示した蓋30と(c)に示した容器18とプラスチックシート34は、マイクロ波をよく透過させる材料から構成される。
【0023】
図1(d)に示す遮蔽体32は、厚みが0.5mmのアルミニウム板である。図2にその平面図を示した。遮蔽体32は、マイクロ波を遮断する材料から構成される。この遮蔽体32は、遮蔽体32とプラスチックシート34とを密着させるときに、図1に示した全ての容器18を貫通させるための複数の窓36を有している。図2に示したとおりである。
【0024】
セパレータ24は円形をしており、その直径は、例えば、一般的な電子レンジのターンテーブルとほぼ同じサイズに選定されている。電子レンジの庫内でその内壁に衝突しない程度の広い面積を占めるようにサイズを選定するとよい。面積を広くするのは、いちどに解凍できる寿司の数をより多くするためである。
【0025】
図1(a)から(d)に示すように、このツールは、容器18とセパレータ24(32,34)と蓋30とを組み合わせて使用する。なお、図2(c)に示す変形例では、容器18の下面に溝状の凹部19を設けた。シャリ16を容器18から簡単に取り出すには、図2の(b)に示すようにシャリ16を小さめにして容器18との間に隙間を設けておかなければならない、しかし、容器18にシャリ16がはまり込まないような凹部19を設けておくと、ここに空隙があるので、シャリ16を容器18から取り出し易くなる。これで、容器一杯の大きさのシャリを収めることができる。
【0026】
図3を用いてこのツールの使用方法を説明する。図3の(a)と(b)に示すように、始めに全ての容器18にそれぞれ寿司1個分の冷凍シャリ16を収容する。セパレータ24の一面には全ての容器18の開口20が並んで見える。これらの開口20にはシャリ16の一部が露出して見える。
【0027】
ここで、図3(c)に示すように、これらのシャリ16の露出面を覆いシャリ16に接するようにネタ28が配置される。全て同じネタを配置してもよいし、それぞれ種類もサイズも異なるネタを配置してもよい。
【0028】
セパレータ24は、容器18の開口20上に配置されたネタ28が、隣接する開口20上の別のネタ28と接することがないように全ての容器18の間隔を保持している。同時に、セパレータ24は、容器18の開口20の周囲に張り出したネタ28を、その形状を保つように支えている。
【0029】
最後に、図3(d)に示すように、セパレータ24と全てのネタ28を覆うように蓋30を乗せる。この蓋30とセパレータ24との間にネタ28を挟んでその移動を阻止する。蓋30には、ネタ28を軽く押さえることが出来るような空隙を形成する凹凸が、各所に設けられている。また、その両端部にはクランプ31が一体化されている。クランプ31は、ツール全体を一体化するためのクリップ状のもので、例えば、蓋30と一体に成型されたものでもよい。
【0030】
図4には、容器18とプラスチックシート24(34)とが一体化されたものと、これと分離された遮蔽体24(32)と、蓋30の斜視図を示した。この容器18にシャリ16をいれてその上にネタ28を乗せてから、蓋30で押さえる。その後遮蔽体32を下側から差し込んで、遮蔽体32とプラスチックシート34とを密着させてクランプ31で止める。窓36はこのときに全ての容器18を貫通させるためのものである。
【0031】
図1(a)に示すように、セパレータ24を円形にしてシャリ16の容器18を円周方向に配列すると、容器18の間に扇型の隙間ができる。この隙間からマイクロ波44がネタ28に直接照射されないように、図2に示したように遮蔽体32の形状を定めた。
【0032】
遮蔽体32は、1枚あるいは数枚あればよい。家庭用ならば1枚、業務用ならば電子レンジの台数分あればよい。プラスチックシート34と容器18を一体化したものは多数準備して、解凍前から解凍後の盛り付けまで通しで使用できる。
【0033】
セパレータ24を構成するプラスチックシート34と複数の容器18とが一体化されていれば、容器18に収容されたシャリ16と容器18の開口20上に配置されたネタ28とをその状態を崩すことなく盛り付け等の作業工程に移すことができる。
【0034】
容器18は寿司の取り出しや洗浄時に破損することもあるから、消耗品である。これをプラスチックのみで作ればツール全体のコストを削減できる。金属ゴミも発生させない。遮蔽体32は解凍用にのみ使用すればよく、丈夫だから繰り返し使用できる。アルミニウム板は他の部分に比べて高価だから、こうしてコスト削減ができる。
【0035】
(使用例)
図4で説明をした要領で、図3(d)に示す状態にツールを組み立ててから、このツールを電子レンジ38に入れる。図5(a)は、容器18を上にして蓋30を下にした状態で、電子レンジ38のターンテーブル40にこのツールを乗せたところを示している。
【0036】
破線の矢印はマイクロ波44の照射方向を示している。図5(a)に示すように、マイクロ波44は電子レンジ38の上部から容器18に向かって照射され、シャリ16を加熱解凍する。セパレータ24は、シャリ16が配置される領域とネタ28が配置される領域の境界面に位置している。
【0037】
セパレータ24を構成する遮蔽体32は、マイクロ波44をほぼ完全に遮断する。電子レンジ38の上部から照射されるマイクロ波44は、シャリ16とセパレータ24とで遮断されるから、ネタ28に直接照射されることがない。
【0038】
しかし、電子レンジ38の内壁39で反射したマイクロ波44は、図のようにセパレータ24の周囲から回り込んでネタ28全体に均一に照射される。蓋30がマイクロ波44を通過させる材料だから、ここではマイクロ波44が遮断されない。
【0039】
セパレータ24の外径を適切に選定しておくと、マイクロ波44のネタ28側への回り込み量を最適化できる。ネタ28へのマイクロ波44の照射量は、シャリ16に照射される量よりも十分に小さくなるので、ネタ28の温度上昇が抑えられ適切な温度に解凍される。
【0040】
また、図5の(a)に示すように、セパレータ24に衝突して反射したマイクロ波44はその周囲のシャリ16に照射されるから、シャリ16がより効率的に加熱される。
【0041】
さらに、例えば、厚みが0.1~1mm程度のアルミニウムのような電気良導体板を遮蔽体32に使用すると、熱伝導性が良いから、マイクロ波44の照射によって発熱することがなく、ヒートシンクとしての機能を発揮する。従って、シャリ16が配置された領域からネタ28が配置された領域への 輻射熱を効果的に遮断することができる。
【0042】
シャリ16の温度が適温まで上昇すると熱伝導によってシャリ16からネタ28に熱が伝わる。この熱によってもネタ28が適当な温度まで解凍される。この作用は上記の特許文献にも詳しく記載されている。
【0043】
図5(b)では、シャリ16が下側に位置し、ネタ28が上側に位置するようにツールを配置した。これはテーブルが回転しない構造の電子レンジ38を使用する例である。支持台42の下側から、シャリ16を収容した容器18に向かってマイクロ波44が照射される。
【0044】
この場合にも、マイクロ波44がセパレータ24によって全て反射されるから、マイクロ波44は直接ネタ28に照射されない。一方、電子レンジ38の内壁39で反射したマイクロ波44はセパレータ24の周りから回り込んでネタ28全体に均一に照射される。この場合にもネタ28に照射されるマイクロ波44の量がシャリに照射される量に比べて十分に低く抑えられる。
【0045】
このツールにより解凍された寿司をそのまま盛り付けて食べられるようにするには、全てのシャリ16が適温に暖められ、全てのネタ28全体に均一に適度に解凍されていることが必要である。
【0046】
そのためには全体に均一にマイクロ波44が照射されることが望ましいから、セパレータ24を円形にして、ターンテーブル40で回転させるか、あるいは、回転するマイクロ波44の照射を受けるようにした。蓋30はマイクロ波44を通過させる素材にしたので、大きなネタ28にも均一にマイクロ波44が照射される。
【0047】
(実験例)
実際に、シャリ16を15グラム、ネタ28は平均15グラム、容器18とプラスチックフィルム34の厚さを0.7mmとし、遮蔽体32に厚さ0.5mmのアルミニウム板を使用し、セパレータ24を半径25cmのものとし、 家庭用電子レンジで解凍を行ってみた。
【0048】
出力500wで120秒加熱して解凍をした結果、全ての容器18で、シャリ16を摂氏49度、ネタ28は摂氏8.2度にすることができた。ネタ28の周辺や表裏面の温度差をほぼ無視できるほどに小さくすることができた。その後、ネタ28の温度が適温になるまで待ってから盛り付けをする。
【0049】
比較のために、図6に示した従来の構造のツールで冷凍した寿司の解凍を行った。このツールでは、マイクロ波44を遮蔽するために、アルミニウム箔が貼り付けられたラミネートフィルム46を使用した。このラミネートフィルム46をターンテーブル40の上に敷いて、その上にプラスチック容器に収めたシャリ16とネタ28を配置した。
【0050】
この場合には、マイクロ波44はシャリ16を納めた容器に照射されて、シャリ16を解凍するが、ネタ28の下側からは照射されない。従って、解凍されて温度が上昇したシャリ16からの伝熱によってネタ28が解凍される。
【0051】
しかし、並べられた容器の隙間からは、マイクロ波の一部が直接ネタ28に向けて照射される。従って、ネタ28の周囲が部分的に温度が高くなり、下面は温度が低いといった温度ムラが生じた。
【0052】
各特許文献に例示されたような、四角いケースに平行にシャリを並べた冷凍寿司を解凍する場合と比較をすると、本発明のツールとの違いが極めて大きいことが分かった。
【0053】
(材料の変形例)
【0054】
上記のように、電気良導体板にマイクロ波44を照射すると自由電子が飛び出しやすくなり、電子レンジの内壁との間で放電を生じる恐れがある。マイクロ波44の電力が大きく負荷が小さいような場合には放電し易い。
【0055】
しかしながら。寿司14を解凍する場合に照射するマイクロ波44の電力は十分に小さく、しかも寿司14のシャリ16に大部分の電力が吸収されるので、十分な対策をすれば放電を防ぐことができる。
【0056】
セパレータ24を構成する遮蔽体32を実施例のように全体として円形のものにすれば電界の集中するエッジが存在しないため確実に放電の発生を防ぐことができる。セパレータの縁全体を絶縁体で覆えばさらに確実である。また、容器を連結するセパレータと分離して遮蔽体32を使用するので、その強度を考慮すると、その厚みは0.1mm以上あることが好ましい。また、1mmを越えるものはコスト面から好ましくない。この範囲の厚みの遮蔽体が最も実用的である。
【0057】
電子レンジに使用されるマイクロ波44の周波数は約2.5GHz付近である。アルミニウムや金銀銅などの非磁性体の良導電性金属にはマイクロ波44を効果的に遮断するの性質がある。コスト上の問題からアルミニウムが最も適する。例えばアルミニウム板にこのマイクロ波44を照射した場合には、マイクロ波44は約1.7μmの深さまでしか進入できないと言われている。大部分のマイクロ波44は反射される。
【0058】
従って、理論的にはセパレータに薄いアルミニウムのフィルムを使用しても構わない。全体を円形にするとある程度放電が抑止できる。調理用のアルミホイルは厚みが0.02mm程度のものが一般的である。あまり厚みが薄いものはピンホールが多くなり、マイクロ波の遮蔽効果が低くなる。厚みが0.01mm以上0.1mm未満程度のアルミニウム箔をプラスチックフィルムで完全に密閉して放電を防止できるような構造ならば、採用が可能ということができる。
【0059】
寿司14のシャリ16を入れる容器18は、電子レンジで加熱されることを考慮すると、耐熱温度が摂氏140度以上のポリエステル樹脂を成型したものが適する。しかし、冷凍した寿司14の解凍だから、摂氏100度を越えることはなく、ポリエチレンやポリスチレンを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
12 冷凍寿司解凍ツール
16 シャリ
18 容器
19 凹部
20 開口
22 縁
24 セパレータ
28 ネタ
30 蓋
1 クランプ
32 遮蔽体
34 プラスチックシート
36 窓
38 電子レンジ
39 内壁
40 ターンテーブル
42 支持台
44 マイクロ波
46 ラミネートフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6