(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147645
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電力増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/32 20060101AFI20231005BHJP
H03F 3/213 20060101ALI20231005BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/213
H03F1/02 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055280
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 健一
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA41
5J500AC21
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5J500NH07
5J500NH08
5J500NH09
5J500NH15
5J500RG01
5J500WU08
(57)【要約】
【課題】出力信号の品質劣化を抑制する。
【解決手段】電力増幅回路は、平衡信号の一方である第1信号が入力されるベース又はゲートと、前記第1信号を増幅した第1増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第1増幅トランジスタと、前記平衡信号の他方である第2信号が入力されるベース又はゲートと、前記第2信号を増幅した第2増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、前記接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第2増幅トランジスタと、前記第2増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第1増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第1可変容量部と、前記第1増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第2増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第2可変容量部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡信号の一方である第1信号が入力されるベース又はゲートと、前記第1信号を増幅した第1増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第1増幅トランジスタと、
前記平衡信号の他方である第2信号が入力されるベース又はゲートと、前記第2信号を増幅した第2増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、前記接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第2増幅トランジスタと、
前記第2増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第1増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第1可変容量部と、
前記第1増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第2増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第2可変容量部と、を備える、
電力増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅回路であって、
前記第1可変容量部は、
直列に接続された第1キャパシタ及び第1スイッチを含み、
前記第2可変容量部は、
直列に接続された第2キャパシタ及び第2スイッチを含む、
電力増幅回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電力増幅回路であって、
前記第1可変容量部は、
直列に接続された第3キャパシタ及び第3スイッチであって、前記第1キャパシタ及び前記第1スイッチと並列に接続された前記第3キャパシタ及び前記第3スイッチをさらに含み、
前記第2可変容量部は、
直列に接続された第4キャパシタ及び第4スイッチであって、前記第2キャパシタ及び前記第2スイッチと並列に接続された前記第4キャパシタ及び前記第4スイッチをさらに含む、
電力増幅回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記第1増幅信号及び前記第2増幅信号に基づく第3信号の大きさと第1所定値との大小関係に基づいて前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部を制御する第1制御回路をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電力増幅回路であって、
前記第1制御回路は、
前記第3信号の振幅に基づく第1電圧を生成する検波回路と、
前記第1電圧と前記第1所定値との比較結果に基づくレベルの第4信号を前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部へ出力する第1比較回路と、を含む、
電力増幅回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記第1増幅トランジスタ及び前記第2増幅トランジスタに供給される電源電圧の大きさに基づいて前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部を制御する第2制御回路をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電力増幅回路であって、
前記第2制御回路は、
前記電源電圧と第2所定値との比較結果に基づくレベルの第5信号を前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部へ出力する第2比較回路を含む、
電力増幅回路。
【請求項8】
請求項7に記載の電力増幅回路であって、
前記第2制御回路は、
前記電源電圧と、前記第2所定値と異なる第3所定値との比較結果に基づくレベルの第6信号を前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部へ出力する第3比較回路をさらに含む、
電力増幅回路。
【請求項9】
請求項5に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記第1増幅トランジスタ及び前記第2増幅トランジスタに供給される電源電圧と第2所定値との比較結果に基づくレベルの第5信号を出力する第2比較回路と、
前記第4信号のレベル及び前記第5信号のレベルに基づいて前記第1可変容量部及び前記第2可変容量部を制御する第3制御回路と、をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記第1増幅トランジスタ及び前記第2増幅トランジスタの前段には、第3増幅トランジスタが設けられる、
電力増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
差動対によって増幅された平衡信号を、バランによってシングルエンド信号に変換して出力する電力増幅システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力増幅システムでは、電力増幅システムの出力電力が増大した場合、出力信号の位相が進むことがある。このような場合、出力信号の品質が劣化するため、出力信号の劣化を抑制する技術が求められる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、出力信号の品質劣化を抑制することが可能な電力増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電力増幅回路は、平衡信号の一方である第1信号が入力されるベース又はゲートと、前記第1信号を増幅した第1増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第1増幅トランジスタと、前記平衡信号の他方である第2信号が入力されるベース又はゲートと、前記第2信号を増幅した第2増幅信号が出力されるコレクタ又はドレインと、前記接地に電気的に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第2増幅トランジスタと、前記第2増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第1増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第1可変容量部と、前記第1増幅トランジスタの前記コレクタ又は前記ドレインと前記第2増幅トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に電気的に接続された第2可変容量部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力信号の品質劣化を抑制することが可能な電力増幅回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電力増幅回路101の回路図である。
【
図2】
図2は、整合回路40、41及び42、増幅器50、差動対55並びにバイアス供給回路201の詳細な回路図である。
【
図3】
図3は、出力信号RFoutの電力に対する増幅トランジスタ52c及び53cにおける出力位相の変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、出力信号RFoutの電力に対するNR ACLR(New Radio Adjacent Channel Leakage Ratio)の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、電源電圧Vcc2ごとの、出力信号RFoutの電力に対する増幅トランジスタ52c及び53cにおける出力位相の変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、電力増幅回路102の回路図である。
【
図7】
図7は、整合回路41及び42並びに差動対56の詳細な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を極力省略する。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る電力増幅回路101について説明する。
図1は、電力増幅回路101の回路図である。
図1に示すように、電力増幅回路101は、入力端子31に供給される入力信号RFinを増幅して、出力信号RFoutをアンテナ47に出力する2段の増幅回路である。入力信号RFinは、例えばRF(Radio Frequency)信号である。
【0011】
電力増幅回路101は、整合回路40、41及び42と、スイッチ回路43及び44と、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ回路45と、カプラー46と、増幅器50と、差動対55と、バイアス供給回路201と、制御回路401(第1制御回路)と、を備える。
【0012】
本実施形態では、整合回路40及び41、増幅器50並びに差動対55は、パワーアンプ集積回路21に形成される。バイアス供給回路201及び制御回路401は、パワーアンプ制御集積回路22に形成される。
【0013】
図2は、整合回路40、41及び42、増幅器50、差動対55並びにバイアス供給回路201の詳細な回路図である。
図2に示すように、整合回路40は、入力端子31の前段に設けられた回路と増幅器50との間のインピーダンスを整合する。
【0014】
本実施形態では、整合回路40は、キャパシタ40a及び40bと、インダクタ40cと、を含む。キャパシタ40aは、入力端子31に接続された第1端と、第2端と、を有する。キャパシタ40bは、キャパシタ40aの第2端に接続された第1端と、第2端と、を有する。インダクタ40cは、キャパシタ40aの第2端に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。
【0015】
増幅器50は、入力端子31から整合回路40を通じて入力端子50aに供給される入力信号RFinを増幅して、増幅信号RF1を出力端子50bから出力する。本実施形態では、増幅器50は、入力端子50aと、出力端子50bと、増幅トランジスタ50c(第3増幅トランジスタ)と、キャパシタ50dと、抵抗素子50eと、を含む。
【0016】
本実施形態では、増幅トランジスタなどのトランジスタは、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT : Heterojunction Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタによって構成される。なお、当該トランジスタは、電界効果トランジスタ(MOSFET : Metal-oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)等の他のトランジスタによって構成されていてもよい。その場合、ベース、コレクタ、及びエミッタを、それぞれ、ゲート、ドレイン、及びソースに読み替えればよい。
【0017】
増幅トランジスタ50cは、出力端子50bに接続されたコレクタと、キャパシタ50dを通じて入力端子50aに接続され、かつ、抵抗素子50eを通じてバイアス供給回路201に接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0018】
整合回路41は、増幅器50と差動対55との間のインピーダンスを整合する。また、整合回路41は、シングルエンド信号である増幅信号RF1を、平衡信号である増幅信号RFp2(第1信号)及びRFm2(第2信号)に変換するバランである。
【0019】
本実施形態では、整合回路41は、インダクタ41a及び41bを含む。インダクタ41aは、増幅器50における出力端子50bに接続された第1端と、増幅トランジスタ50cを動作させるための電源電圧Vcc1を供給する電源電圧供給端子181に接続された第2端と、を有する。インダクタ41bは、増幅信号RFp2を出力する第1端と、増幅信号RFm2を出力する第2端と、を有し、インダクタ41aと電磁界的に結合する。
【0020】
差動対55は、増幅器52及び53と、可変容量部61(第1可変容量部)及び66(第2可変容量部)と、を含む。増幅器52及び53は、整合回路41から供給される増幅信号RFp2及びRFm2をそれぞれ増幅する。
【0021】
本実施形態では、増幅器52は、入力端子52aと、出力端子52bと、増幅トランジスタ52c(第1増幅トランジスタ)と、キャパシタ52dと、抵抗素子52eと、を含む。増幅器53は、入力端子53aと、出力端子53bと、増幅トランジスタ53c(第2増幅トランジスタ)と、キャパシタ53dと、抵抗素子53eと、を含む。
【0022】
増幅器52におけるキャパシタ52dは、入力端子52aを通じてインダクタ41bの第1端に接続された第1端と、第2端と、を有する。出力端子52bには、例えば、インダクタ(図示しない)を通じて増幅トランジスタ52cの電源電圧Vcc2が供給される。例えば、電力増幅回路101においてエンベロープトラッキング(Envelope tracking)の制御が行われる場合、電源電圧Vcc2は変化する。
【0023】
増幅トランジスタ52cは、出力端子52bに接続されたコレクタと、キャパシタ52dの第2端に接続され、かつ、抵抗素子52eを通じてバイアス供給回路201に接続されたベースと、接地に電気的に接続されたエミッタと、を有する。増幅トランジスタ52cのベースには、平衡信号の一方である増幅信号RFp2が入力される。増幅トランジスタ52cのコレクタからは、増幅信号RFp2を増幅した増幅信号RFp3(第1増幅信号)が出力される。
【0024】
増幅器53におけるキャパシタ53dは、入力端子53aを通じてインダクタ41bの第2端に接続された第1端と、第2端と、を有する。出力端子53bには、例えば、インダクタ(図示しない)を通じて増幅トランジスタ53cの電源電圧Vcc2が供給される。
【0025】
増幅トランジスタ53cは、出力端子53bに接続されたコレクタと、キャパシタ53dの第2端に接続され、かつ、抵抗素子53eを通じてバイアス供給回路201に接続されたベースと、接地に電気的に接続されたエミッタと、を有する。増幅トランジスタ53cのベースには、平衡信号の他方である増幅信号RFm2が入力される。増幅トランジスタ53cのコレクタからは、増幅信号RFm2を増幅した増幅信号RFm3(第2増幅信号)が出力される。
【0026】
整合回路42は、差動対55とスイッチ回路43との間のインピーダンスを整合する。また、整合回路42は、平衡信号である増幅信号RFp3及びRFm3を、シングルエンド信号である増幅信号RF4に変換するバランである。
【0027】
本実施形態では、整合回路42は、インダクタ42a及び42bを含む。インダクタ42aは、増幅器52における出力端子52bに接続された第1端と、増幅器53における出力端子53bに接続された第2端と、を有する。インダクタ42bは、増幅信号RF4を出力する第1端と、接地に接続された第2端と、を有し、インダクタ42aと電磁界的に結合する。
【0028】
バイアス供給回路201は、バイアス用トランジスタ251と、トランジスタ261及び262と、抵抗素子271と、キャパシタ281と、バイアス用トランジスタ351及び352と、トランジスタ361及び362と、抵抗素子371と、キャパシタ381と、を含む。
【0029】
バイアス供給回路201におけるバイアス用トランジスタ251は、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cのベースにバイアス電圧Vb1を供給する。
【0030】
詳細には、バイアス用トランジスタ251は、バッテリー電圧供給端子171に接続されたコレクタと、抵抗素子271を通じて電流供給端子174に接続され、バイアス電流が供給されるベースと、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cのベースに接続されたエミッタと、を有する。なお、バイアス用トランジスタ251のベースには、バイアス電圧が供給されてもよい。
【0031】
トランジスタ262は、コレクタと、コレクタに接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。以下、トランジスタのコレクタと当該トランジスタのベースとの接続を、ダイオード接続と称することがある。
【0032】
トランジスタ261は、ダイオード接続されており、バイアス用トランジスタ251のベースに接続されたコレクタ及びベースと、トランジスタ262のコレクタ及びベースに接続されたエミッタと、を有する。
【0033】
キャパシタ281は、バイアス用トランジスタ251のベースに接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。
【0034】
バイアス用トランジスタ351は、抵抗素子52eを通じて増幅トランジスタ52cのベースにバイアス電圧Vbp2を供給する。バイアス用トランジスタ352は、抵抗素子53eを通じて増幅トランジスタ53cのベースにバイアス電圧Vbm2を供給する。
【0035】
詳細には、バイアス用トランジスタ351は、バッテリー電圧供給端子172に接続されたコレクタと、抵抗素子371を通じて電流供給端子175に接続され、バイアス電流が供給されるベースと、抵抗素子52eを通じて増幅トランジスタ52cのベースに接続されたエミッタと、を有する。なお、バイアス用トランジスタ351のベースには、バイアス電圧が供給されてもよい。
【0036】
バイアス用トランジスタ352は、バッテリー電圧供給端子173に接続されたコレクタと、バイアス用トランジスタ351のベースに接続され、バイアス電流が供給されるベースと、抵抗素子53eを通じて増幅トランジスタ53cのベースに接続されたエミッタと、を有する。なお、バイアス用トランジスタ352のベースには、バイアス電圧が供給されてもよい。
【0037】
トランジスタ362は、ダイオード接続されており、コレクタ及びベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0038】
トランジスタ361は、ダイオード接続されており、バイアス用トランジスタ351のベース及びバイアス用トランジスタ352のベースに接続されたコレクタ及びベースと、トランジスタ362のコレクタ及びベースに接続されたエミッタと、を有する。
【0039】
キャパシタ381は、バイアス用トランジスタ351のベース及びバイアス用トランジスタ352のベースに接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。
【0040】
図1に示すように、SAWフィルタ回路45は、例えば、周波数帯域の異なる複数のSAWフィルタを含む。スイッチ回路43及び44は、整合回路42から供給される増幅信号RF4が複数のSAWフィルタのうちのいずれかを通過するように増幅信号RF4の経路を切り替える。
【0041】
カプラー46は、スイッチ回路44から供給される増幅信号RF4の電力の一部を増幅信号RF5(第3信号)として制御回路401へ出力するとともに、増幅信号RF4の電力の残りをアンテナ47へ出力する。
【0042】
制御回路401は、増幅信号RFp3及び増幅信号RFm3に基づく増幅信号RF5の大きさと直流電圧Vd1(第1所定値)との大小関係に基づいて差動対55における可変容量部61及び66を制御する。
【0043】
本実施形態では、制御回路401は、検波回路411と、比較器421(第1比較回路)と、直流電源422と、を含む。
【0044】
検波回路411は、増幅信号RF5の振幅に基づく直流電圧信号Sd1(第1電圧)を生成する。本実施形態では、検波回路411は、例えば、ダイオード及びキャパシタを含み、カプラー46から供給される増幅信号RF5をダイオードによって整流する。そして、検波回路411は、整流した増幅信号RF5の電圧をキャパシタによって平滑化することにより直流電圧信号Sd1を生成し、直流電圧信号Sd1を比較器421へ出力する。
【0045】
直流電源422は、接地に接続された陰極と、接地に対する直流電圧Vd1を供給する陽極と、を有する。
【0046】
比較器421は、直流電圧信号Sd1と直流電圧Vd1との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL1(第4信号)を可変容量部66及び67へ出力する。本実施形態では、比較器421は、検波回路411から直流電圧信号Sd1が供給される第1入力端子と、直流電源422の陽極から直流電圧Vd1が供給される第2入力端子と、出力端子と、を有する。
【0047】
比較器421は、例えば、直流電圧信号Sd1が直流電圧Vd1以上のときにハイレベルの比較結果信号SL1をCCC(Cross Coupling Capacitor)制御信号Sc1として出力端子から差動対55へ出力する。一方、比較器421は、例えば、直流電圧信号Sd1が直流電圧Vd1より低いとき、ローレベルの比較結果信号SL1をCCC制御信号Sc1として出力端子から差動対55へ出力する。
【0048】
図2に示すように、差動対55における可変容量部61及び66は、増幅トランジスタ52c及び53cにおける位相を変化させる機能を有する。本実施形態では、可変容量部61及び66は、それぞれ可変容量回路71a及び76cを含む。可変容量回路71aは、スイッチ72a(第1スイッチ)と、キャパシタ73a(第1キャパシタ)と、を含む。可変容量回路76aは、スイッチ77a(第2スイッチ)と、キャパシタ78a(第2キャパシタ)と、を含む。
【0049】
可変容量回路71aは、増幅トランジスタ53cのコレクタと増幅トランジスタ52cのベースとの間に電気的に接続される。可変容量回路71aにおけるスイッチ72a及びキャパシタ73aは、互いに直列に接続される。
【0050】
本実施形態では、スイッチ72aは、出力端子53bを通じて増幅トランジスタ53cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0051】
キャパシタ73aは、スイッチ72aの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ52cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0052】
可変容量回路76aは、増幅トランジスタ52cのコレクタと増幅トランジスタ53cのベースとの間に電気的に接続される。可変容量回路76aにおけるスイッチ77a及びキャパシタ78aは、互いに直列に接続される。
【0053】
本実施形態では、スイッチ77aは、出力端子52bを通じて増幅トランジスタ52cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0054】
キャパシタ78aは、スイッチ77aの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ53cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0055】
スイッチ72a及び77aは、例えば、ハイレベルのCCC制御信号Sc1が供給されると、導通状態となり、ローレベルのCCC制御信号Sc1が供給されると、非導通状態となる。
【0056】
スイッチ72a及び77aが導通状態のときは、キャパシタ73a及び78aは、クロスカップリングキャパシタとして機能し、増幅トランジスタ52c及び53cにおける、入力信号の位相を基準としたときの出力信号の位相(以下、出力位相と称することがある。)を遅らせる。一方、スイッチ72a及び77aが非導通状態のときは、キャパシタ73a及び78aは、クロスカップリングキャパシタとして機能せず、増幅トランジスタ52c及び53cは、通常の差動増幅器として機能する。言い換えれば、可変容量回路71a及び76aは、CCC制御信号Sc1に基づいて、所定の容量値(容量値がゼロの場合を含む)の容量を増幅トランジスタ52c及び53cに接続する回路である。
【0057】
(効果)
図3は、出力信号RFoutの電力に対する増幅トランジスタ52c及び53cにおける出力位相の変化の一例を示す図である。なお、
図3おいて、横軸は、単位を「dBm」とする出力信号RFoutの電力を示す。縦軸は、単位を「°」とする出力位相を示す。
【0058】
図3に示すように、曲線Cr1は、差動対55にクロスカップリングキャパシタが設けられない場合における出力位相の変化である。出力信号RFoutの電力が15dBmを超えたあたりから出力位相が進み始める。そして、28dBmにおける出力位相は、15dBmにおける出力位相と比べて略2.8°進んでいる。
【0059】
図4は、出力信号RFoutの電力に対するNR ACLR(New Radio Adjacent Channel Leakage Ratio)の変化の一例を示す図である。なお、
図4おいて、横軸は、単位を「dBm」とする出力信号RFoutの電力を示す。縦軸は、単位を「dBc」とするNR ACLRを示す。
【0060】
図4に示すように、曲線Cr2は、差動対55にクロスカップリングキャパシタが設けられない場合におけるNR ACLRの変化である。出力位相が進むと信号の歪が大きくなるので、出力位相が進む15dBm以上において、NR ACLRが大きくなり、好ましくない。
【0061】
これに対して、曲線C1(
図3参照)は、差動対55におけるスイッチ72a及び77aが導通状態のときの出力位相の変化である。つまり、差動対55にクロスカップリングキャパシタが設けられた場合における出力位相の変化である。出力信号RFoutの電力が15dBmを超えたあたりから出力位相が進み始めるものの、曲線Cr1と比べて、出力位相の進み度合いが抑制されている。例えば、28dBmにおける出力位相は、15dBmにおける出力位相と比べて略1.0°の進みに抑えることができる。
【0062】
曲線C2(
図4参照)は、差動対55にクロスカップリングキャパシタが設けられた場合におけるNR ACLRの変化である。曲線Cr2と比べて、NR ACLRを小さくすることができる。例えば、27.5dBmでは、曲線Cr2と比べて、NR ACLRを略3.5dBc小さくすることができる。
【0063】
例えば、差動対55にクロスカップリングキャパシタを単に設けるだけでは、出力信号RFoutの電力に関わらず、出力位相が一律に変化してしまうので、好ましくない。
【0064】
本実施形態では、出力位相の進みによる信号の歪が小さいとき、例えば、出力信号RFoutの電力が15dBmより小さいときは、スイッチ72a及び77aを非導通状態にし、増幅トランジスタ52c及び53cを通常の差動増幅器として動作させる。
【0065】
そして、出力位相の進みによる信号の歪が大きいとき、例えば、出力信号RFoutの電力が15dBm以上のときは、スイッチ72a及び77aを導通状態にし、キャパシタ73a及び78aをクロスカップリングキャパシタとして機能させる。これにより、出力位相による信号の歪が大きくなるハイパワー領域だけ、出力位相を調整することができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る電力増幅回路102について説明する。第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0067】
図5は、電源電圧Vcc2ごとの、出力信号RFoutの電力に対する増幅トランジスタ52c及び53cにおける出力位相の変化の一例を示す図である。なお、
図5おいて、横軸は、単位を「dBm」とする出力信号RFoutの電力を示す。縦軸は、単位を「°」とする出力位相を示す。
【0068】
曲線C3、C4、C5、C6、C7、C8及びC9は、それぞれ電源電圧Vcc2が3.0V、3.4V、4.0V、4.4V、4.8V、5.2V及び5.6Vのときの位相の出力電力変化である。
【0069】
電源電圧Vcc2の値に応じて、出力信号RFoutの電力に対する出力位相の変化が大きく異なる。このため、エンベロープトラッキング制御によって電源電圧Vcc2が変化する場合、出力信号RFoutの電力のみに基づいて出力位相を制御する構成では、出力位相の進みの調整が不十分となり、信号の歪が大きくなることがある。第2実施形態に係る電力増幅回路102は、このような課題を解決する。
【0070】
図6は、電力増幅回路102の回路図である。
図6に示すように、第2実施形態に係る電力増幅回路102は、差動対の電源電圧にさらに基づいて可変容量部の制御が行われる点で第1実施形態に係る電力増幅回路101と異なる。
【0071】
電力増幅回路102は、
図1に示す電力増幅回路101と比べて、差動対55の代わりに差動対56を備え、制御回路402(第2制御回路)と、CCC制御ロジック回路441(第3制御回路)と、をさらに備える。制御回路402及びCCC制御ロジック回路441は、パワーアンプ制御集積回路22に形成される。
【0072】
図7は、整合回路41及び42並びに差動対56の詳細な回路図である。
図7に示すように、差動対56は、
図2に示す差動対55と比べて、可変容量部61及び66の代わりに可変容量部62(第1可変容量部)及び67(第2可変容量部)をそれぞれ含む。
【0073】
可変容量部62は、
図2に示す可変容量部61と比べて、可変容量回路71b及び71cをさらに含む。可変容量回路71bは、スイッチ72b(第3スイッチ)と、キャパシタ73b(第3キャパシタ)と、を含む。可変容量回路71cは、スイッチ72cと、キャパシタ73cと、を含む。
【0074】
スイッチ72b及びキャパシタ73bは、直列に接続される。スイッチ72b及びキャパシタ73bは、スイッチ72a及びキャパシタ73aと並列に接続される。
【0075】
本実施形態では、スイッチ72bは、出力端子53bを通じて増幅トランジスタ53cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0076】
キャパシタ73bは、スイッチ72bの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ52cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0077】
スイッチ72c及びキャパシタ73cは、直列に接続される。スイッチ72c及びキャパシタ73cは、スイッチ72a及びキャパシタ73aと並列に接続される。
【0078】
本実施形態では、スイッチ72cは、出力端子53bを通じて増幅トランジスタ53cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0079】
キャパシタ73cは、スイッチ72cの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ52cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0080】
可変容量部67は、
図2に示す可変容量部66と比べて、可変容量回路76b及び76cをさらに含む。可変容量回路76bは、スイッチ77b(第4スイッチ)と、キャパシタ78b(第4キャパシタ)と、を含む。可変容量回路76cは、スイッチ77cと、キャパシタ78cと、を含む。
【0081】
スイッチ77b及びキャパシタ78bは、直列に接続される。スイッチ77b及びキャパシタ78bは、スイッチ77a及びキャパシタ78aと並列に接続される。
【0082】
本実施形態では、スイッチ77bは、出力端子52bを通じて増幅トランジスタ52cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0083】
キャパシタ78bは、スイッチ77bの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ53cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0084】
スイッチ77c及びキャパシタ78cは、直列に接続される。スイッチ77c及びキャパシタ78cは、スイッチ77a及びキャパシタ78aと並列に接続される。
【0085】
本実施形態では、スイッチ77cは、出力端子52bを通じて増幅トランジスタ52cのコレクタに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0086】
キャパシタ78cは、スイッチ77cの第2端に接続された第1端と、増幅トランジスタ53cのベースに接続された第2端と、を有する。
【0087】
スイッチ72b及び77bは、例えば、ハイレベルのCCC制御信号Sc2が供給されると、導通状態となり、ローレベルのCCC制御信号Sc2が供給されると、非導通状態となる。
【0088】
スイッチ72c及び77cは、例えば、ハイレベルのCCC制御信号Sc3が供給されると、導通状態となり、ローレベルのCCC制御信号Sc3が供給されると、非導通状態となる。
【0089】
図6に示すように、制御回路402は、差動対56における増幅トランジスタ52c及び53cに供給される電源電圧Vcc2の大きさに基づいて可変容量部62及び67を制御する。
【0090】
本実施形態では、制御回路402は、比較器431a(第2比較回路)、431b(第3比較回路)及び431cと、直流電源432a、432b及び432cと、を含む。
【0091】
直流電源432aは、接地に接続された陰極と、接地に対する直流電圧Vd2(第2所定値)を供給する陽極と、を有する。
【0092】
比較器431aは、電源電圧Vcc2と直流電圧Vd2との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL2(第5信号)を可変容量部62及び67へ出力する。本実施形態では、比較器431aは、電源電圧Vcc2が供給される第1入力端子と、直流電源432aの陽極から直流電圧Vd2が供給される第2入力端子と、出力端子と、を有する。
【0093】
比較器431aは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd2以上のときにハイレベルの比較結果信号SL2を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。一方、比較器431aは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd2より低いとき、ローレベルの比較結果信号SL2を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。
【0094】
直流電源432bは、接地に接続された陰極と、直流電圧Vd2と異なる直流電圧Vd3(第3所定値)、例えば直流電圧Vd2より高い直流電圧Vd3を供給する陽極と、を有する。
【0095】
比較器431bは、電源電圧Vcc2と直流電圧Vd3との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL3(第6信号)を可変容量部62及び67へ出力する。本実施形態では、比較器431bは、電源電圧Vcc2が供給される第1入力端子と、直流電源432bの陽極から直流電圧Vd3が供給される第2入力端子と、出力端子と、を有する。
【0096】
比較器431bは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd3以上のときにハイレベルの比較結果信号SL3を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。一方、比較器431bは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd3より低いとき、ローレベルの比較結果信号SL3を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。
【0097】
直流電源432cは、接地に接続された陰極と、直流電圧Vd2及びVd3と異なる直流電圧Vd4、例えば直流電圧Vd3より高い直流電圧Vd4を供給する陽極と、を有する。
【0098】
比較器431cは、電源電圧Vcc2と直流電圧Vd4との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL4を可変容量部62及び67へ出力する。本実施形態では、比較器431cは、電源電圧Vcc2が供給される第1入力端子と、直流電源432cの陽極から直流電圧Vd4が供給される第2入力端子と、出力端子と、を有する。
【0099】
比較器431cは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd4以上のときにハイレベルの比較結果信号SL4を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。一方、比較器431cは、例えば、電源電圧Vcc2が直流電圧Vd4より低いとき、ローレベルの比較結果信号SL4を出力端子からCCC制御ロジック回路441へ出力する。
【0100】
CCC制御ロジック回路441は、比較器421、431a、431b及び431cからそれぞれ供給される比較結果信号SL1、SL2、SL3及びSL4に基づいて可変容量部61及び62を制御する。
【0101】
CCC制御ロジック回路441は、比較結果信号SL1、SL2、SL3及びSL4の各々のレベルに基づいてCCC制御信号Sc1、Sc2及びSc3のレベルをそれぞれ決定する。
【0102】
CCC制御ロジック回路441は、決定したレベルのCCC制御信号Sc1をスイッチ72a及び77aに出力する。同様に、CCC制御ロジック回路441は、決定したレベルのCCC制御信号Sc2をスイッチ72b及び77bに出力する。同様に、CCC制御ロジック回路441は、決定したレベルのCCC制御信号Sc3をスイッチ72c及び77cに出力する。
【0103】
このように、増幅信号RF5及び電源電圧Vcc2に基づいて可変容量部62及び67を制御する構成により、出力信号RFoutの電力増大による出力位相の進みを抑制するだけでなく、電源電圧Vcc2の大小によって異なる出力位相の進みを抑制することができる。これにより、エンベロープトラッキング制御によって電源電圧Vcc2が変化する場合においても、出力位相の進みを抑制することができるので、信号の歪によるNR ACLRの増大を抑制することができる。
【0104】
なお、制御回路402からは、比較結果信号SL2、SL3及びSL4の3つの比較結果信号が出力される構成について説明したが、これに限定するものではない。制御回路402からは、1つ、2つ又は4つ以上の比較結果信号が出力される構成であってもよい。
【0105】
また、電力増幅回路102には、制御回路401が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。電力増幅回路102には、制御回路401が設けられない構成であってもよい。
【0106】
また、電力増幅回路101及び102では、可変容量部が、直列に接続されたキャパシタ及びスイッチを含む構成について説明したが、これに限定するものではない。可変容量部は、バリキャップを含む構成であってもよい。
【0107】
また、電力増幅回路101及び102では、可変容量部におけるスイッチが制御回路によって自動的に制御される構成について説明したが、これに限定するものではない。可変容量部におけるスイッチは、手動によってレベルを切り替えることが可能な信号が供給される構成であってもよい。
【0108】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。電力増幅回路101及び102では、増幅トランジスタ52cは、平衡信号の一方である増幅信号RFp2が入力されるベースと、増幅信号RFp2を増幅した増幅信号RFp3が出力されるコレクタと、接地に電気的に接続されたエミッタと、を有する。増幅トランジスタ53cは、当該平衡信号の他方である増幅信号RFm2が入力されるベースと、増幅信号RFm2を増幅した増幅信号RFm3が出力されるコレクタと、接地に電気的に接続されたエミッタと、を有する。可変容量部61及び62は、増幅トランジスタ53cのコレクタと増幅トランジスタ52cのベースとの間に電気的に接続される。そして、可変容量部66及び67は、増幅トランジスタ52cのコレクタと増幅トランジスタ53cのベースとの間に電気的に接続される。
【0109】
このような構成により、可変容量部61及び66の各々のキャパシタンス又は可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを変化させることにより、増幅トランジスタ52c及び53cにおける出力位相を変化させることができる。これにより、増幅信号RFp3及びRFm3の電力が増大した場合において、可変容量部61及び66の各々のキャパシタンス又は可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを適宜調整することで、出力位相の進みを抑制し、増幅信号RFp3及びRFm3の歪の増大を抑制することができる。したがって、出力信号の品質劣化を抑制することが可能な電力増幅回路を提供することができる。
【0110】
また、電力増幅回路101及び102では、可変容量部61及び62は、直列に接続されキャパシタ73a及びスイッチ72aを含む。そして、可変容量部66及び67は、直列に接続されたキャパシタ78a及びスイッチ77aを含む。
【0111】
このような構成により、スイッチ72a及び77aの各々の導通状態及び非導通状態を切り替えることで、増幅トランジスタ52c及び53c間にクロスカップリングキャパシタが接続された状態と、CCCが切り離された状態とを簡易に切り替えることができる。これにより、増幅信号RFp3及びRFm3の電力が増大した場合には、増幅トランジスタ52c及び53c間にCCCが接続された状態にすることができるので、出力位相の進みを抑制することができる。また、増幅信号RFp3及びRFm3の電力が減少した場合には、CCCが切り離された状態にすることができるので、CCCによって増幅信号RFp3及びRFm3の電力が劣化することを抑制することができる。
【0112】
また、電力増幅回路102では、可変容量部62は、直列に接続されたキャパシタ73b及びスイッチ72bであって、キャパシタ73a及びスイッチ72aと並列に接続されたキャパシタ73b及びスイッチ72bをさらに含む。そして、可変容量部67は、直列に接続されたキャパシタ78b及びスイッチ77bであって、キャパシタ78a及びスイッチ77aと並列に接続されたキャパシタ78b及びスイッチ77bをさらに含む。
【0113】
このような構成により、スイッチ72b及び77bの各々の導通状態及び非導通状態をさらに切り替えることで、CCCのキャパシタンスが大きい状態と、CCCのキャパシタンスが小さい状態と、CCCが切り離された状態とを簡易に切り替えることができる。これにより、出力位相を細かく調整することができるので、出力位相の進みを効果的に抑制することができる。
【0114】
また、電力増幅回路101及び102では、制御回路401は、増幅信号RFp3及びRFm3に基づく増幅信号RF5の大きさと直流電圧Vd1との大小関係に基づいて可変容量部61及び66又は可変容量部62及び67を制御する。
【0115】
このような構成により、可変容量部61及び66の各々のキャパシタンス又は可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、直流電圧Vd1の大きさに応じた増幅信号RFp3及びRFm3の電力で自動的に変化させる回路を実現することができる。
【0116】
また、電力増幅回路101及び102では、検波回路411は、増幅信号RF5の振幅に基づく直流電圧信号Sd1を生成する。比較器421は、直流電圧信号Sd1と直流電圧Vd1との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL1を可変容量部61及び66又は可変容量部62及び67へ出力する。
【0117】
このような構成により、可変容量部61及び66の各々のキャパシタンス又は可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、直流電圧信号Sd1と直流電圧Vd1との比較結果に応じて自動的に変化させる回路を実現することができる。
【0118】
また、電力増幅回路102では、制御回路402は、増幅トランジスタ52c及び53cに供給される電源電圧Vcc2の大きさに基づいて可変容量部62及び67を制御する。
【0119】
このような構成により、可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、電源電圧Vcc2の大きさに応じた増幅信号RFp3及びRFm3の電力で自動的に変化させる回路を実現することができる。これにより、例えば、エンベロープトラッキング制御によって電源電圧Vcc2が変化する場合において、出力位相の進みを効果的に抑制することができる。
【0120】
また、電力増幅回路102では、制御回路402は、電源電圧Vcc2と直流電圧Vd2との比較結果に基づくレベルの比較結果信号SL2を可変容量部62及び67へ出力する比較器431aを含む。
【0121】
このような構成により、可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、電源電圧Vcc2と直流電圧Vd2との比較結果に応じて自動的に変化させる回路を実現することができる。
【0122】
また、電力増幅回路102では、制御回路402は、電源電圧Vcc2と、直流電圧Vd2と異なる直流電圧Vd3との比較結果に基づくレベルのCCC制御信号Sc3を可変容量部62及び67へ出力する比較器431bをさらに含む。
【0123】
このような構成により、可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、電源電圧Vcc2と、直流電圧Vd2と異なる直流電圧Vd3とで区切られる3つの電圧範囲のいずれに電源電圧Vcc2が属するかに応じて自動的に変化させる回路を実現することができる。これにより、出力位相を細かく調整することができるので、出力位相の進みを効果的に抑制することができる。
【0124】
また、電力増幅回路102では、CCC制御ロジック回路441は、比較結果信号SL1のレベル及び比較結果信号SL2のレベルに基づいて可変容量部62及び67を制御する。
【0125】
このような構成により、可変容量部62及び67の各々のキャパシタンスを、直流電圧信号Sd1と直流電圧Vd1との比較結果、及び電源電圧Vcc2と直流電圧Vd2との比較結果に基づいて自動的に変化させる回路を実現することができる。これにより、例えば、エンベロープトラッキング制御による電源電圧Vcc2の変化に基づく出力位相の進み、及び増幅信号RFp3及びRFm3の電力の増減に基づく出力位相の進みの両方を効果的に抑制することができる。
【0126】
また、電力増幅回路101及び102では、増幅トランジスタ52c及び53cの前段には、増幅トランジスタ50cが設けられる。
【0127】
このような構成により、出力位相の変化の大きいパワー段の増幅トランジスタ52c及び53cに対して、出力位相の進みを効果的に抑制することができる。
【0128】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0129】
31…入力端子
40、41、42…整合回路
43、44…スイッチ回路
45…SAWフィルタ回路
46…カプラー
47…アンテナ
50…増幅器
50c…増幅トランジスタ
52…増幅器
52c…増幅トランジスタ
53…増幅器
53c…増幅トランジスタ
55、56…差動対
61、62、66、67…可変容量部
71a、71b、71c…可変容量回路
72a、72b、72c…スイッチ
73a、73b、73c…キャパシタ
76a、76b、76c…可変容量回路
77a、77b、77c…スイッチ
78a、78b、78c…キャパシタ
101、102…電力増幅回路
201…バイアス供給回路
401、402…制御回路
411…検波回路
421…比較器
422…直流電源
431a、431b、431c…比較器
432a、432b、432c…直流電源
441…CCC制御ロジック回路