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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147688
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電力変換装置のセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231005BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055329
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 勝也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 仁
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA06X
5H770HA07Z
5H770JA20W
5H770JA20X
5H770JA20Y
5H770QA01
5H770QA27
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、温度や電流等、所定の被測定量を精度よく測定する。
【解決手段】インバータ50の三相電流iuを検出する電流検出部60aは、電流センサ60a1と電流センサ60a2を備える。測定部401では、電流センサ60a1の出力電圧が0~2.5[V]のとき、電流センサ60a2の出力電圧が-α[A]~0[A]の電流値であるとして、電流センサ60a1の出力電圧が2.5~5[V]のとき、電流センサ60a2の出力電圧が0[A]~α[A]の電流値であるとして三相電流iuを測定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、測定範囲の被測定量を測定するセンサシステムを備える、電力変換装置のセンサシステムであって、
前記センサは、前記出力値が一定上限に達するまでの範囲で前記被測定量を測定可能なセンサであり、前記測定可能範囲が狭い程、検出感度が高いセンサと定義され、
前記センサシステムは、
全測定範囲で前記被測定量を測定するための複数の前記センサと、
複数の前記センサにおいて、各々の前記測定可能範囲が重なっている場合であって、前記被測定量が前記測定可能範囲の中にある場合は、前記検出感度が最も高いセンサからの前記出力値に基づいて、前記被測定量を決定する測定部と、を備える電力変換装置のセンサシステム。
【請求項2】
前記検出感度は、前記被測定量に対する前記出力値の傾きである、請求項1に記載のである電力変換装置のセンサシステム。
【請求項3】
前記検出感度は、前記被測定量に対する前記出力値の傾きが大きい第1傾きと、前記傾きが前記第1傾きより小さい第2傾きとを備え、
前記測定部は、前記第1傾きにおける前記傾きが最も大きい前記センサの出力値を用いて、前記被測定量を測定する、請求項1に記載の電力変換装置のセンサシステム。
【請求項4】
前記検出感度は、前記被測定量に対する前記出力値の傾きであり、
複数の前記センサは、前記被測定量の最小値と前記出力値の最小値となる第1点と、前記測定量の最大値と前記出力値の最大値となる第2点とを結ぶ傾きを有する第1センサと、前記第1センサの傾きよりも大きな傾きを有する第2センサと、を含み、
前記測定部は、前記第1センサの前記出力値に基づいて、前記第2センサの前記出力値を用いて、前記被測定量を測定する、請求項1に記載の電力変換装置のセンサシステム。
【請求項5】
前記第2センサを複数備える、請求項4に記載の電力変換装置のセンサシステム。
【請求項6】
前記電力変換装置は、電動圧縮機のモータを駆動するインバータである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置のセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-138521号公報(特許文献1)には、駆動源としての電動モータを制御するインバータが一体的に組み付けられた電動圧縮機において、インバータの付属部品(たとえば、平滑コンデンサ)の温度を検出し、検出した温度が付属部品の最大定格温度以上の場合、入力電流を制限するよう電動圧縮機の回転数を制限することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-168521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動圧縮機において、インバータ等、電力変換装置の電流、電圧、および、温度等の状態は、電動圧縮機を制御する際に、重要な値であり、これらの値を検出/測定して、電動モータを制御している。上記特許文献1では、付属部品が収納された空間の温度の値と付属部品(たとえば、平滑コンデンサ)に流れる電流の値から、電力変換装置を制御して付属部品の入力電流を制限するか否かの判定を行っている。
【0005】
電力変換装置を適切に制御するためには、電力変換装置に設けたセンサの出力信号(出力値)に基づいて、温度や電流等を精度よく測定することが望ましい。
【0006】
本開示の目的は、電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、温度や電流等、所定の被測定量を精度よく測定することが可能な、電力変換装置のセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電力変換装置のセンサシステムは、電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、測定範囲の被測定量を測定するセンサシステムを備える、電力変換装置のセンサシステムである。センサは、出力値が一定上限に達するまでの範囲で被測定量を測定可能なセンサであり、測定可能範囲が狭い程、検出感度が高いセンサと定義される。センサシステムは、全測定範囲で被測定量を測定するための複数のセンサと、複数のセンサにおいて、各々の測定可能範囲が重なっている場合であって、被測定量が前記測定可能範囲の中にある場合は、前記検出感度が最も高いセンサからの前記出力値に基づいて、前記被測定量を決定する測定部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、電力変換装置は、電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、測定範囲の被測定量を測定するセンサシステムを備える。センサは、出力値が一定上限に達するまでの範囲で被測定量を測定可能なセンサであり、測定可能範囲が狭い程、検出感度が高い。センサシステムは、全測定範囲で被測定量を測定するための複数のセンサを備える。センサシステムの測定部は、複数のセンサにおいて、各々の測定可能範囲が重なっている場合であって、被測定量が測定可能範囲の中にある場合は、検出感度が最も高いセンサからの出力値に基づいて、被測定量を決定する。
【0009】
センサの出力値として、被測定量に対する検出感度が高い(大きい)ほど、被測定量の検出精度がよくなる。センサシステムの測定部は、複数のセンサにおいて、各々の測定可能範囲が重なっている場合であって、被測定量が測定可能範囲の中にある場合は、検出感度が最も高いセンサからの出力値に基づいて、被測定量を決定するので、被測定量の検出精度を高めることができる。
【0010】
好ましくは、検出感度は、被測定量に対する出力値の傾きであってよい。
この構成によれば、被測定量に対する出力値が線形であるセンサが複数設けられている場合、被測定量に対する出力値の傾き(ゲイン(入力に対する出力の感度(グラフの傾き))が最も大きいセンサの出力値を用いて、被測定量を測定するので、被測定量を精度よく測定することができる。
【0011】
好ましくは、検出感度は、被測定量に対する出力値の傾きが大きい第1傾きと、傾きが第1傾きより小さい第2傾きとを備え、測定部は、第1傾きにおける傾きが最も大きいセンサの出力値を用いて、被測定量を測定するようにしてもよい。
【0012】
センサの出力値は、線形であることが好ましいが、被測定量に対する出力値の傾きが大きい第1傾きと、傾きが第1傾きより小さい第2傾きを有する非線形になる場合もある。この場合、非線形領域(第2傾きの領域)において、被測定量に対する出力値の変化量が線形領域(第1の傾きの領域)より小さくなり、検出誤差が大きくなる可能性がある。この構成によれば、測定部は、第1傾きにおける傾きが最も大きいセンサの出力値を用いて、被測定量を測定するので、線形領域にあり、かつ、検出感度の最も大きなセンサの出力値を用いて、被測定量を測定でき、精度よく被測定量を測定することができる。
【0013】
好ましくは、検出感度は、被測定量に対する出力値の傾きである。複数のセンサは、被測定量の最小値と出力値の最小値となる第1点と、測定量の最大値と出力値の最大値となる第2点とを結ぶ傾きを有する第1センサと、第1センサの傾きよりも大きな傾きを有する第2センサとを含む。測定部は、第1センサの出力値に基づいて、第2センサの出力値を用いて、被測定量を測定するようにしてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1センサは、被測定量の最小値である第1点と被測定量の最大値である第2点の間、すなわち、全測定範囲で被測定量を測定する。第2センサは、第1センサの傾きより大きな傾きであるため、第2センサによって、全測定範囲の一部の被測定量を測定する。この際、第2センサによって全測定範囲の測定を可能にするため、たとえば、第2センサの検出回路を切り替えて、第2センサが第1センサの傾きより大きな傾きを有するようにしてもよく、第2センサを複数設けてもよい。この構成によれば、第1センサの出力値を参照しつつ第2センサの出力値を用いて被測定量を測定できるので、被測定量を精度よく測定できる。
【0015】
好ましくは、電力変換装置は電動圧縮機のモータを駆動するインバータであってよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、電力変換装置に設けたセンサの出力値に基づいて、温度や電流等、所定の被測定量を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る電動圧縮機100を適用した車両用空調装置ACの全体構成図である。
図2】インバータ50の概略構成図である。
図3】電流センサ60a1および電流センサ60a2の出力特性を示す図である。
図4】電流センサを3個備えた電流検出部60aにおける、出力特性を示す図である。
図5】温度検出部80の出力特性を示す図である。
図6】電圧検出部70の出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る電動圧縮機100を適用した車両用空調装置ACの全体構成図である。車両用空調装置ACは、車両に搭載され、車室内の冷暖房を行なうように構成されている。車両用空調装置ACは、電動圧縮機100と、外部冷却回路200と、空調ECU(Electronic Control Unit)300とを含む。
【0020】
外部冷却回路200は、電動圧縮機100に対して冷媒を供給するように構成されており、たとえば、熱交換器及び膨張弁を含む。電動圧縮機100は、外部冷却回路200から供給された冷媒を圧縮するように構成されている。車両用空調装置ACは、電動圧縮機100によって冷媒を圧縮し、外部冷却回路200によって冷媒の熱交換及び膨張を行う。これによって、車室内の冷暖房が行なわれる。
【0021】
空調ECU300は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びメモリを内蔵し、当該メモリに記憶された情報や各センサ(不図示)からの情報に基づいて車両用空調装置ACの各機器を制御する。空調ECU300は、たとえば、車室内の空調に関してユーザが設定した温度、及び、現在の車室内の温度を認識可能である。空調ECU300は、たとえば、これらのパラメータに基づいてオン/オフ指令等の各種指令を電動圧縮機100に出力する。
【0022】
電動圧縮機100は、ハウジング10と、圧縮部20と、電動モータ30と、インバータユニット40とを含む。電動圧縮機100は、ケーブル95を介して車両に搭載されたバッテリ90に接続可能であり、バッテリ90から直流電力の供給を受けるように構成されている。
【0023】
ハウジング10は、略円筒形状であり、圧縮部20と電動モータ30とを内部に収容する。ハウジング10には、外部冷却回路200から冷媒が吸入される吸入口11a、及び、冷媒が吐出される吐出口11bが形成されている。
【0024】
圧縮部20は、吸入口11aから吸入された冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を吐出口11bから吐出させるように構成されている。なお、圧縮部20は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、及び、ベーンタイプ等のうちいずれのタイプであってもよい。
【0025】
電動モータ30は、圧縮部20を駆動するように構成されている。電動モータ30は、たとえば、回転軸31と、ロータ32と、ステータ33とを含む。回転軸31は、円柱状であり、ハウジング10に対して回転可能に支持されている。ロータ32は、円筒形状であり、回転軸31に固定されている。ステータ33は、ハウジング10に固定されている。ロータ32とステータ33とは、回転軸31の径方向に対向している。なお、ステータ33は、円筒形状のステータコア34と、コイル35とを含む。コイル35は、ステータコア34のティースに巻きつけることで形成されている。電動モータ30は、交流回転電機であり、たとえば、ロータ32に永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機であってよい。
【0026】
インバータユニット40は、ケース41内に収容されたインバータ50からなる。インバータ50は、電動モータ30を駆動する電力変換装置である。インバータ50は、バッテリ90から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに、変換後の交流電力を電動モータ30に供給する。
【0027】
ケース41は、板状のベース部材42と、有底筒状のカバー部材43とを含む。カバー部材43は、ベース部材42に組み付けられている。ベース部材42及びカバー部材43は、ボルト44によってハウジング10に固定されている。ケース41の外面にはコネクタ54が設けられており、回路基板55とコネクタ54とが電気的に接続されている。
【0028】
コネクタ54は、ケーブル95が接続されるように構成されている。コネクタ54およびケーブル95を介して、バッテリ90からインバータ50に直流電力が供給される。
【0029】
インバータ50は、回路基板55に設けた、パワー半導体、各種回路を含む。また、回路基板55には、配線パターンを用いて、電流検出部60、電圧検出部70、温度検出部80等の各種センサ類が、パワー半導体および各種回路とともに実装され、電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、回路基板55に、制御ECU400も実装されている。
【0030】
図2は、インバータ50の概略構成図である。インバータ50は、コネクタ54およびケーブル95を介してバッテリ90と接続される。インバータ50とバッテリ90の間には、電力線PLおよび電力線NLの間に接続されたコンデンサCが設けられる。コンデンサCは、バッテリ電圧を平滑化してインバータ50に供給する。電圧検出部70は、コンデンサCの両端の電圧、すなわちバッテリ90とインバータ50とを結ぶ電力線PL、NL間の電圧VBを検出し、その検出結果を示す信号を制御ECU400に出力する。
【0031】
インバータ50は、バッテリ90から供給される直流電力を交流電力に変換して電動モータ30に供給する。インバータ50は、U相アーム51と、V相アーム52と、W相アーム53とを含む。各相アームは、電力線PLと電力線NLとの間に互いに並列に接続されている。U相アーム51は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q1、Q2を有する。V相アーム52は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q3、Q4を有する。W相アーム53は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q5、Q6を有する。各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、ダイオードD1~D6が逆並列にそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q1~Q6は、たとえば、IBGT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であり、パワー半導体の一例である。MOSFETの場合、ダイオードD1~D6はボディダイオードが使用される。
【0032】
各相アームの中間点は、電動モータ30の各相コイルの各相端に接続されている。スイッチング素子Q1、Q2の中間点は、電動モータ30のU相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q3、Q4の中間点は、電動モータ30のV相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q5、Q6の中間点は、電動モータ30のW相コイルの一方端に接続されている。電動モータ30のU相、V相およびW相の3つのコイルの他方端は、中性点に共通接続されている。
【0033】
インバータ50は、電圧VB(バッテリ電圧)が供給されると、制御ECU400からの制御信号S1~S6に従ってスイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作することにより、直流電圧を交流電圧に変換して電動モータ30を駆動する。これにより、電動モータ30は、トルク指令値Trqcomに従ったトルクを発生するように、インバータ50により制御される。
【0034】
インバータ50には、電流検出部60が設けられる(図1参照)。本実施の形態では、図2に示すように、バッテリ90からインバータ50に供給される電流を検出する電流検出部60dと、電動モータ30に流れる三相電流(モータ電流)iu、iv、iwを検出する電流検出部60a、60b、60cが設けられる。各電流検出部の検出信号は、制御ECU400に出力される。バッテリ90からインバータ50に供給される電流を検出する電流検出部60dは、電力線PLおよび電力線NLのいずれに設けてもよい。また、インバータ50に供給される電流を、三相電流(モータ電流)iu、iv、iwから算出するようにしてもよい。なお、三相電流を検出する電流検出部は、2相の電流を検出できれば、計算により他の1相の電流を求めることができるので、三相電流を検出する電流検出部は、2相の電流を検出するものであってよい。
【0035】
回転角センサ(レゾルバ)65は、電動モータ30の回転角θを検出し、その検出結果を示す信号を制御ECU400に出力する。回転角センサ65によって検出された回転角θの変化速度から、電動モータ30の回転数(回転速度)NMを検出することができる。なお、電動モータ30の駆動制御は、レゾルバ65を備えないセンサレス制御であってもよい。
【0036】
制御ECU400は、図示しない、CPU、メモリおよび入出力バッファを含み、空調ECU300から出力されるトルク指令値Trqcom、電圧検出部70によって検出された電圧VB、電流検出部60a~60cからの三相電流iu,iv,iwおよび回転角センサ65からの回転角θに基づいて、電動モータ30がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、インバータ50の動作を制御する。すなわち、制御ECU400はインバータ50を制御するための制御信号S1~S5を生成して、インバータ50へ出力する。
【0037】
制御ECU400は、機能ブロックとして、測定部401を備える。測定部401は、電流検出部60、電圧検出部70、および、温度検出部80に設けたセンサの出力値(出力信号)を用いて、後述するように、被測定量を検出/測定する。
【0038】
温度検出部80は、インバータ50の温度Ts(スイッチング素子Q1~Q6、ダイオードD1~D6等の温度)を検出する。そして、たとえば、温度Tsが許容温度以上になった場合、トルク指令値Trqcomの値を制限してインバータ50の温度上昇を抑制する。また、温度Tsを各種回路の温度補償用として用いてもよい。
【0039】
本実施の形態において、電流検出部60(60a~60d)、電圧検出部70、および温度検出部80は、同一の被測定量(同じ箇所の電流、電圧、温度)を検出する複数のセンサから構成されている。
【0040】
(実施の形態1)
たとえば、三相電流iuを検出する電流検出部60aは、三相電流iuを検出する、電流センサ60a1および電流センサ60a2(いずれも図示しない)から構成されている。図3は、電流センサ60a1および電流センサ60a2の出力特性を示す図である。図3において、横軸は電流の大きさであり、インバータ50から電動モータ30へ流れる向きの電流値を正としている。図3において、縦軸は出力電圧(出力値)である。実線は、電流センサ60a1の出力特性を示しており、-α[A]の出力電圧が0[V]、0[A]の出力電圧が2.5[V」、α[A」の出力電圧が5[V]である。一点鎖線は、電流センサ60a2の出力特性を示しており、-α[A]の出力電圧が0[V]、0[A]の出力電圧が5[V]あるいは0[V]であり、α[A]の出力電圧が5[V」である。なお、電流センサ60a2は、電流の向きが反転するとき、図3に示す特性になるよう、検出回路が切り替えられる。図3において、測定範囲は、電流検出部60aの測定範囲は、-α[A]からα[A]の範囲である。なお、図3に示すように、電流センサ60a1、60a2の出力特性(電流(被測定量)に対する出力値の変化)は、線形である。
【0041】
図3に示すように、三相電流iuを検出する電流検出部60aは、-α[A」からα[A]までの電流を、電流センサ60a1および電流センサ60a2を用いて検出している。電流センサ60a1のゲイン(電流(被測定量)に対する出力値の感度(グラフの傾き/検出感度))は、2α[A]/5[V]である。電流センサ60a2のゲインは、α[A]/5[V]である。電流センサ60a1および電流センサ60a2は、出力電圧(出力値)が一定上限(5[V])に達するまでの範囲で被測定量(三相電流iu)を測定可能なセンサである。電流センサ60a1の測定可能範囲は、2α[A](-α[A]からα[A])であり、電流センサ60a2の測定可能範囲は、α[A]であるので、測定可能範囲が狭い程、検出感度が高いセンサ(ゲインが大きいセンサ)と定義される。
【0042】
センサのゲインが大きいほど、被測定量の変化に対する出力値の変化が大きいので、被測定量(電流)の検出精度がよい。しかし、センサのゲインが大きいと、出力値としての使用可能幅(本実施の形態では、5[V])を超えうる。このため、電流検出部60aは、ゲインの大きなセンサ(電流センサ60a2)とゲインの小さなセンサ(電流センサ60a1)を組み合わせて、-α[A」からα[A]までの電流を確実に検出するとともに、制御ECU400の測定部401において、電流センサ60a2の検出信号(出力電圧)を用いて、三相電流iuを精度よく検出する。
【0043】
電流検出部60aにおいて、電流センサ60a2の出力電圧は、電流値が「正」(0~α[A])の場合と「負」(-α~0[A])の場合で同じ値を出力する。このため、制御ECU400の測定部401では、電流センサ60a1の出力電圧が0~2.5[V]のとき、電流センサ60a2の出力電圧は、-α[A]~0[A]の電流値であるとして三相電流iuを測定する。また、測定部401は、電流センサ60a1の出力電圧が2.5~5[V]のとき、電流センサ60a2の出力電圧は、0[A]~α[A]の電流値であるとして三相電流iuを測定する。このように、電流センサ60a1の出力電圧を参照することよって、-α[A]~α[A]の電流を電流センサ60a2で検出する。したがって、被測定量(電流)に対する感度が大きいセンサ(電流センサ60a2)の出力値を用いて被測定量(電流)を検出でき、被測定量(電流)を精度よく検出できる。
【0044】
また、電流センサ60a1の出力電圧(出力値)と電流センサ60a2の出力電圧(出力値)を比較することにより、故障診断を行うことができる。たとえば、電流センサ60a1の出力電圧が変化しているにも係わらず、電流センサ60a2の出力値が変化しない場合、電流センサ60a2の故障(たとえば、断線)であると診断できる。この場合、電流センサ60a1の出力電圧を用いて、三相電流iuを測定(検出)することができる。この実施の形態では、同一の被測定量(三相電流iu)の-α[A]からα[A]までを、電流センサ60a1と電流センサ60a2とを用いて検出している。
【0045】
(実施の形態2)
電流検出部60aは、電流センサを3個以上備えた構成であってもよい。図4は、電流センサを3個備えた電流検出部60aにおける、出力特性を示す図である。この例では、三相電流iuを検出する電流センサ60aは、電流センサ60a1、電流センサ60a2、および、電流センサ60a3から構成されている。
【0046】
図4において、実線は、図3に示した例と同様に、電流センサ60a1の出力特性を示しており、-α[A]の出力電圧が0[V]、0[A]の出力電圧が2.5[V」、α[A」の出力電圧が5[V]である。一点鎖線は、図3に示した例と同様に、電流センサ60a2の出力特性を示しており、-α[A]の出力電圧が0[V]、0[A]の出力電圧が5[V]である。なお、この実施形態において、電流センサ60a2には、電流の向きが反転するとき、図3に示す特性になるよう、検出回路を切り替える構成は設けられていない。二点鎖線は、電流センサ60a3の出力特性を示しており、0[A]の出力電圧が0[V]、α[A]の出力電圧が5[V」である。図4に示すように、電流センサ60a1~60a3の出力特性(電流(被測定量)に対する出力値の変化)は、線形である。
【0047】
図4に示すように、電流センサ60a1のゲインは、2α[A]/5[V]である。電流センサ60a2および電流センサ60a3のゲインは、α[A]/5[V]である。センサのゲインが大きいほど、被測定量の変化に対する出力値の変化が大きいので、被測定量(電流)の検出精度がよい。したがって、本実施の形態では、制御ECU400の測定部401において、-α[A]~0[A]の電流は、電流センサ60a2の検出信号(出力電圧)を用いて、三相電流iuを検出する。また、測定部401において、0[A]~α[A]の電流は、電流センサ60a3の出力値を用いて、三相電流iuを検出する。したがって、被測定量(電流)に対する感度が大きいセンサ(電流センサ60a2および電流センサ60a3)の出力値を用いて被測定量(電流)を検出することにより、被測定量(電流)を精度よく検出することができる。
【0048】
この実施の形態においても、電流センサ60a1、電流センサ60a2および電流センサ60a3の出力電圧を比較することにより、故障診断を行うことができる。また、いずれかの電流センサが故障しても、故障していない電流センサによって三相電流iuを検出可能な、冗長化されたセンサシステムを提供できる。
【0049】
なお、この実施の形態では、同一の被測定量(三相電流iu)の-α[A]から0[A]までを、電流センサ60a1と電流センサ60a2とを用いて検出し、同一の被測定量(三相電流iu)の0[A]からα[A]までを、電流センサ60a1と電流センサ60a3とを用いて検出している。
【0050】
(実施の形態3)
図5は、温度検出部80の出力特性を示す図である。温度検出部80は、温度センサ801および温度センサ802(図示せず)から構成される。温度センサ801および温度センサ802は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタからなる温度センサであってよい。
【0051】
図5において、横軸は温度であり、縦軸は出力電圧(出力値)である。実線は、温度センサ801の出力特性を示しており、-40[℃]からt1[℃]までの温度を検出可能である。破線は、温度センサ802の出力特性を示しており、-t0[℃」から150[℃」までの温度を検出可能である。図5に示すように、温度センサ801(実線)の出力特性は、非線形であるが、-40[℃]から0[℃」程度までは線形を示す線形領域であり、0[℃]以上になると、温度(被測定量)に対する変化量(グラフの傾き)が線形領域より小さな非線形領域になる。また、温度センサ802(破線)の出力特性は、非線形であるが、-t0[℃]からt2[℃」程度までは線形を示す線形領域であり、t2[℃]以上になると、温度(被測定量)に対する変化量(グラフの傾き)が線形領域より小さな非線形領域になる。線形領域のグラフの傾きを第1傾き、非線形領域のグラフの傾きを第2傾きと称すると、第2傾きは第1傾きより小さい。
【0052】
この実施の形態では、制御ECU400の測定部401は、温度センサ801の出力電圧が、4[V]以下の場合(0[℃」以下を示す場合)に、温度センサ801の出力電圧(出力値)を用いて、インバータ50の温度Tsを測定する。そして、測定部401は、温度センサ801の出力電圧が4[V]を超える場合、温度センサ802の出力電圧(出力値)を用いて、インバータ50の温度Tsを測定する。
【0053】
温度センサ801の出力特性は、0[℃]以上になると、非線形領域(第2傾き)に入り、また、温度変化に対する出力電圧の変化量が線形領域(第1傾き)より小さくなる。したがって、非線形領域では、温度Tsの測定ばらつきが大きくなり、測定(検出)精度が悪化する。この非線形領域において、温度センサ802の出力特性は、線形であり、また、温度変化に対する出力電圧の変化量が、温度センサ801より大きい。したがって、この非線形領域では、温度センサ802の出力電圧を用いて、温度Tsを測定することにより、温度Tsの測定精度を担保することができる。
【0054】
図5において一点鎖線で示すような出力特性を備えた温度センサ803を用いて、温度Tsを測定することも可能である。この場合、温度センサ803のゲインは比較的小さいので、ゲインの大きな温度センサ801を用いて、温度Tsの測定精度を高めることが好ましい。しかし、センサのゲインが大きいと、測定したい温度幅に対して、出力値としての使用可能幅(本実施の形態では、5[V])を超えてしまう。そこで、この実施の形態では、ゲインの大きな温度センサ801と比較的ゲインの大きな温度センサ802を組み合わせて、-40[℃」から150[℃]までの温度を確実に検出する。そして、制御ECU400の測定部401において、0[℃」以下の温度Tsを温度センサ801の出力電圧(出力値)を用いて測定し、0[℃]を超える温度Tsを温度センサ802の出力電圧(出力信値)を用いて測定することにより、温度Tsの測定精度を担保することができる。
【0055】
この実施の形態では、-40[℃]からt1[℃]まで、同一の被測定量(温度Ts)を、温度センサ801と温度センサ802を用いて検出している。なお、この温度範囲では、上記と同様に、温度センサ801および温度センサ802の出力電圧を比較することにより、故障診断を行うことができる。また、いずれかの温度センサが故障しても、故障していない温度センサによって温度Tsを検出可能な、冗長化されたセンサシステムを提供できる。
【0056】
上記実施の形態では、電流検出部60aおよび温度検出部80について説明したが、電流検出部60b~60d、電圧検出部70においても、同様に、被測定量に対する感度(ゲイン)が異なる複数のセンサ設け、ゲインが大きいセンサの出力値を用いて被測定量(電流、電圧)を測定するようにしてよい。たとえば、図6に示すような出力特性を有する電圧検出部70を用いて、電圧VBを測定してもよい。図6は、電圧検出部70の出力特性を示す図である。電圧検出部70は、ゲインの異なる4個の電圧センサ701~704(図示せず)を備え、図6において、電圧センサ701の出力特性を実線、電圧センサ702の出力特性を破線、電圧センサ703の出力特性を一点鎖線、電圧センサ704の出力特性を二点鎖線で示している。この例において、電圧センサ701~704の出力特性は、線形である。制御装置400の測定部401は、0~v1[V]を電圧センサ701の出力値を用いて測定し、v1~v2[V]を電圧センサ702の出力値を用いて測定し、v2~v3[v]を電圧センサ703の出力値を用いて測定し、v3~VT[V]を電圧センサ704の出力値を用いて測定することにより、電圧VBを測定する。このような構成の電圧検出部70によっても、電圧VBを検出する複数の電圧センサ701~704と、複数の電圧センサ701~704の出力値のうち、電圧VBに対する感度(ゲイン)が最も大きい電圧センサの出力値を用いて電圧VBを測定する測定部401を備えるので、電圧VBを精度よく測定(検出)することができる。
【0057】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10 ハウジング、11a 吸入口、11b 吐出口、20 圧縮部、30 電動モータ、31 回転軸、32 ロータ、33 ステータ、34 ステータコア、35 コイル、40 インバータユニット、41 ケース、42 ベース部材、43 カバー部材、44 ボルト、50 インバータ、51 U相アーム、52 V相アーム、53 V相アーム、54 コネクタ、55 回路基板、60 電流検出部、60a~60d 電流センサ、65 回転角センサ、70 電圧検出部、80 温度検出部、90 バッテリ、95 ケーブル、100 電動圧縮機、200 外部冷却回路、300 空調ECU、400 制御ECU、401 測定部、AC 車両用空調装置、C コンデンサ、D1~D6 ダイオード、NL 電力線、PL 電力線、Q1~Q6 スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6