IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立パワーソリューションズの特許一覧 ▶ テクノエイト株式会社の特許一覧

特開2023-147704摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法
<>
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図1
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図2
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図3
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図4A
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図4B
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図5A
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図5B
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図6
  • 特開-摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147704
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B23K20/12 340
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055372
(22)【出願日】2022-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(71)【出願人】
【識別番号】592015271
【氏名又は名称】テクノエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 幸一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊
(72)【発明者】
【氏名】宮部 昇三
(72)【発明者】
【氏名】小林義章
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BG20
4E167BG22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生産性を低下させることなく、被接合部材を載置台に載置した際のセットミスによる接合線のズレや、摩擦攪拌接合する際に生じる接合線のズレを修正する。
【解決手段】第1の被接合部材と第2の被接合部材とを突き合せた被接合部材の前記突き合せた部位を示す接合線において、主軸に取り付けた接合ツールを目標回転速度で回転させながら目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部及びその近傍を摩擦熱により軟化させながら摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において前記摩擦攪拌接合装置内に設定した基準接合点に、前記接合線の画像情報の位置が一致するように、前記接合線の位置を修正しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合部材と第2の被接合部材とを突き合せた被接合部材の前記突き合せた部位を示す接合線において、主軸に取り付けた接合ツールを目標回転速度で回転させながら目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部及びその近傍を摩擦熱により軟化させながら摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において前記摩擦攪拌接合装置内に設定した基準接合点に、前記接合線の画像情報の位置が一致するように、前記接合線の位置を修正しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合ツールの進行方向である前記主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と、
前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置と、を備えることを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材を載置する載置台上において、前記接合線を含む所定の矩形領域である仮想的なXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をX軸とし、
前記原点を含んで前記X軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をY軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項4】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材を載置する載置台上において、前記接合線を含む所定の矩形領域である仮想的なXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の一つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をY軸とし、
前記原点を含んで前記Y軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をX軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記テスト運用段階において、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置して前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して、前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部のX座標とY座標を算出して前記基準接合点として記憶部に記憶するとともに前記接合ツールの中心部を前記基準接合点に合わせ、さらに、前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに、前記X座標を固定座標として所定間隔で前記接合線のY座標を算出して前記記憶部に前記基準接合点として追加記憶し、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記テスト運用段階において、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置して前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して、前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部のX座標とY座標を算出して前記基準接合点として記憶部に記憶するとともに前記接合ツールの中心部を前記基準接合点に合わせ、さらに、前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線のX座標とY座標を算出して前記記憶部に前記基準接合点として追加記憶することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項6】
請求項5に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部の現在のY座標を算出し、
前記記憶部に記憶した最初の前記基準接合点のY座標と比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項7】
請求項6に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線の現在のY座標を算出し、
前記現在のY座標に対応する前記基準接合点のY座標を比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項8】
請求項5に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部の現在のX座標とY座標を算出し、
前記記憶部に記憶した最初の前記基準接合点のX座標およびY座標と比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項9】
請求項8に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線の現在のX座標とY座標を算出し、
前記現在のX座標とY座標に対応する前記基準接合点のX座標とY座標を比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項10】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置および前記後側画像情報取得装置は、光学カメラまたはレーザ変位計のいずれかを使用することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項11】
摩擦攪拌接合装置における接合線の位置修正方法であって、
(a)被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において、接合ツールの進行方向である主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置を使用して、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの前記接合線の画像情報を示す接合線画像情報を取得するステップと、
(b)前記摩擦攪拌接合装置が内部に設定するXY平面上において、所定間隔で前記接合線画像情報の座標を算出して基準接合点を設定するステップと、
(c)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得して前記摩擦攪拌接合始端部の前記XY平面上の座標を算出し、前記基準接合点の座標との差分を算出して前記差分が許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する初期位置修正ステップと、
(d)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記前側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行させ、前記所定間隔で前記現在の接合線画像情報の座標を算出して対応する前記基準接合点の座標との差分を算出し、前記差分が前記許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する進行位置修正ステップと、
を有することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項12】
請求項11に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記(a)ステップにおいて、前記載置台上で前記接合線を含む所定の矩形領域であるXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をX軸とし、
前記原点を含んで前記X軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をY軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項13】
請求項11に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記(a)ステップにおいて、前記載置台上で前記接合線を含む所定の矩形領域であるXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をY軸とし、
前記原点を含んで前記Y軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をX軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記(c)ステップおよび前記(d)ステップにおいて、前記X軸の座標を固定座標として前記接合線のY座標を取得して対応する前記基準接合点のY座標と比較して差分を算出し、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記(c)ステップおよび前記(d)ステップにおいて、前記接合線のX座標及びY座標を取得して対応する前記基準接合点のX座標及びY座標と比較して差分を算出することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合部材同士を摩擦攪拌接合により接合する摩擦攪拌接合装置の構成とその制御に係り、特に、高品質(高精度)な接合が要求される被接合部材の接合に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状の接合ツールを回転させて発生する摩擦熱で被接合材料を軟化させ、その部分を攪拌することで被接合材料同士を接合する摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)は、材料以外の素材を用いないため、疲労強度が高く、材料も溶融しないことから溶接変形(ひずみ)の少ない接合が可能であり、航空機や自動車のボディなど、幅広い分野での応用が期待されている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「接合工具(接合ツールに相当)のXYZ方向位置をサーボモータによって制御しつつ、接合工具で接合線を追跡してアルミ板の接合を行う摩擦撹拌接合装置において、接合工具よりも進行方向前方にCCDカメラを設け、当該CCDカメラで接合される接合線を撮影し、アルミ板の接合端縁上面に、接合端面と平行なマーキングを設けてあって、上記CCDカメラで撮影した映像を画像処理装置で画像処理し、画像中の上記マーキングの位置の画像上の基準線からのずれ量を演算手段で演算し、上記ずれ量をサーボアンプに伝送して、接合線の中心部を接合工具が追跡するように、サーボモータをフィードバック制御する摩擦撹拌接合装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-14093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術によれば、接合工具を接合線に精度よく沿って進行させて被接合部材を摩擦攪拌接合することが可能としている。
【0006】
しかしながら、この方法を実現するためには、準備作業として被接合部材にマーキングをする必要がある。この準備作業は、例えば自動車ボディのパネルなどを大量に(連続的に)摩擦攪拌接合する場合においては、生産性を大きく低下させる要因となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、生産性を低下させることなく、被接合部材を載置台に載置した際のセットミスによる接合線のズレや、摩擦攪拌接合する際に生じる接合線のズレを修正し、本来あるべき接合線の位置において被接合部材を摩擦攪拌接合することが可能な摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを突き合せた被接合部材の前記突き合せた部位を示す接合線において、主軸に取り付けた接合ツールを目標回転速度で回転させながら目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部及びその近傍を摩擦熱により軟化させながら摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において前記摩擦攪拌接合装置内に設定した基準接合点に、前記接合線の画像情報の位置が一致するように、前記接合線の位置を修正しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、摩擦攪拌接合装置における接合線の位置修正方法であって、(a)被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において、接合ツールの進行方向である主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置を使用して、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの前記接合線の画像情報を示す接合線画像情報を取得するステップと、(b)前記摩擦攪拌接合装置が内部に設定するXY平面上において、所定間隔で前記接合線画像情報の座標を算出して基準接合点を設定するステップと、(c)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得して前記摩擦攪拌接合始端部の前記XY平面上の座標を算出し、前記基準接合点の座標との差分を算出して前記差分が許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する初期位置修正ステップと、(d)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記前側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行させ、前記所定間隔で前記現在の接合線画像情報の座標を算出して対応する前記基準接合点の座標との差分を算出し、前記差分が前記許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する進行位置修正ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性を低下させることなく、被接合部材を載置台に載置した際のセットミスによる接合線のズレや、摩擦攪拌接合する際に生じる接合線のズレを修正し、本来あるべき接合線の位置において被接合部材を摩擦攪拌接合することが可能な摩擦攪拌接合装置及び接合線の位置修正方法を実現することができる。
【0011】
これにより、被接合部材同士の高品質(高精度)な摩擦攪拌接合が可能となる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る摩擦攪拌接合装置の全体概要を示す図である。
図2図1の載置台と画像情報取得装置の具体例を示す斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係るXY平面と基準接合点を示す図である。
図4A】接合線のズレと載置台の位置調整を示す図である。
図4B】接合線のズレと載置台の位置調整を示す図である。
図5A】接合線のズレと接合ツールの位置調整を示す図である。
図5B】接合線のズレと接合ツールの位置調整を示す図である。
図6】主軸モータ負荷率と接合ツール挿入動作の関係を概念的に示す図である。
図7】本発明の実施例2に係る接合線の位置修正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0015】
図1から図6を参照して、本発明の実施例1に係る摩擦攪拌接合装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施例に係る摩擦攪拌接合装置1の全体概要を示す図である。
【0017】
本実施例の摩擦攪拌接合装置1は、図1に示すように、主要な構成として、装置本体2と、Z軸上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続される主軸支持部4と、主軸支持部4により保持される主軸15と、主軸15により保持されるツールホルダ(接合ヘッド)5と、ツールホルダ(接合ヘッド)5により保持される接合ツール6とを備えて構成されている。
【0018】
Z軸上下動駆動機構部3には、図1に例示するように、例えばボールスクリュー、リニアガイドなどが用いられ、Z軸上下動駆モータ16により装置本体2に対して主軸支持部4をZ軸方向(上下方向)に駆動させる。
【0019】
接合ツール6はショルダ部7およびプローブ部(接合ピン)8で構成され、主軸モータ14に連結(図1では直結)されている。主軸モータ14は、接合ツール6を所定方向に回転させる。
【0020】
装置本体2は、Z軸上下動駆動機構部3を介して主軸支持部4を支持し、装置本体2に搭載(付属)された制御部(制御装置)11から主軸モータ14に駆動信号を付与して接合ツール6を回転させながら接合線に沿って進行させる。つまり、装置本体2は、主軸支持部4と、主軸15と、ツールホルダ(接合ヘッド)5を保持し、接合ツール6を回転させると共に、接合ツール6を図1のX軸方向およびZ軸方向に移動させる。
【0021】
接合ツール6を所定の回転数で回転させながら、載置台10上に載置された被接合部材9(9a,9b)表面の接合線上にショルダ部7とプローブ部8とを押し付けることにより摩擦熱を発生させて被接合部材9を軟化させ、ショルダ部7とプローブ部8とを被接合部材9に必要量挿入し、当該回転数を保持することで塑性流動が生じ、挿入部が攪拌される。接合ツール6を引き抜く、又は移動することで攪拌部(接合部)が冷却され、被接合部材9は接合される。
【0022】
なお、図1では、ツールホルダ(接合ヘッド)5及び接合ツール6が、主軸15及び主軸支持部4、Z軸上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続(保持)される構成を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、Z軸上下動駆動機構部3のみを介して装置本体2に接続(保持)される構成や、他の可動手段を介して装置本体2に接続(保持)される構成、ツールホルダ(接合ヘッド)5及び接合ツール6が直接装置本体2に接続(保持)される構成、或いは、図1の構成に、さらにツールホルダ(接合ヘッド)5と装置本体2の間にC型フレームを設ける構成、多軸ロボットアームを有する装置本体2に接続(保持)される構成なども本実施例の範囲に含むものとする。
【0023】
また、ショルダ部7とプローブ部(接合ピン)8とが同一である接合ツール(つまりプローブを有さず、ショルダのみ)であっても良く、また、ショルダ部7が回転しない構造であっても良い。
【0024】
装置本体2には、摩擦攪拌接合装置1の動作を制御する制御部(制御装置)11が設置(付属)されている。制御部(制御装置)11は、接合ツール6による接合条件を決定する接合条件信号やZ軸上下動駆動機構部3による接合ツール6の鉛直方向(Z方向)の保持位置(接合ピン8の挿入量)を決定する保持位置決定信号などの接合パラメータ(FSW接合条件)を記憶する記憶部(図示せず)を備えている。なお、制御部11は、制御装置として装置本体とは別に構成してもよい。
【0025】
また、装置本体2には、X軸方向に駆動可能なX軸前後駆動機構部12が設けられており、X軸前後動駆モータ13により装置本体2の上部をX軸方向に設けられたリニアガイドのレールに沿って移動させることで、ツールホルダ(接合ヘッド)5及び接合ツール6をX軸方向(接合方向)へ移動させることができる。
【0026】
ここで、本実施例の摩擦攪拌接合装置1には、図1に示すように、接合ツール6の進行方向である主軸15の前側に配置された前側画像情報取得装置17aと、接合ツール6の進行方向と反対方向である主軸15の後側に配置された後側画像情報取得装置17bが設置されている。
【0027】
前側画像情報取得装置17aおよび後側画像情報取得装置17bにより取得した接合線画像情報は、制御部(制御装置)11に入力され、接合ツール6による摩擦攪拌接合の接合条件にフィードバックされる。
【0028】
図2に、載置台10と画像情報取得装置17a,17bの具体例を示す。図2では、載置台10の構成例として、載置台移動機構部10aにより被接合部材9(9a,9b)をY軸方向に移動可能な構造の載置台を示している。
【0029】
上述したように、主軸15の前側(接合ツール6の進行方向側)には前側画像情報取得装置17aが配置され、主軸15の後側(接合ツール6の進行方向と反対方向側)には後側画像情報取得装置17bが配置されており、それぞれ主軸15の前側の接合線18の画像情報、主軸15の後側の接合線18の画像情報を取得することができる。
【0030】
本発明では、後述するように、主軸15の前後に設置した画像情報取得装置17a,17bにより接合線18の画像情報を取得し、接合線18の画像情報の位置が摩擦攪拌接合装置1内に設定した基準接合点に一致するように接合線18の位置を修正しながら接合ツール6を摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで進行する。
【0031】
次に、図6を用いて、主軸モータ負荷率と接合ツール挿入動作の関係について説明する。図6は、主軸モータ負荷率と接合ツール挿入動作の関係を概念的に示す図である。図6に示すように、接合ツール位置は主軸モータ14の負荷率と関係がある。
【0032】
プローブ部(接合ピン)8を被接合部材9に接触させて接合ツール6の挿入を開始すると、接合ツール位置が深くなるに従い主軸モータ14の負荷率は上昇する。
【0033】
接合ツール6の挿入中にショルダ部7が被接合部材9に接触すると、主軸モータ14の負荷率の上昇率は一時的に低下するが、接合ツール6の挿入がさらに進むと、主軸モータ14の負荷率の上昇率は再び上昇する。
【0034】
接合ツール6の挿入時の目標負荷率または目標接合ツール位置に到達した時点で、接合ツール6の挿入処理を終了し、接合ツール位置を固定した状態で、接合ツール6を一定の時間回転させて被接合部材9への入熱処理を行う。
【0035】
その後、被接合部材9の摩擦攪拌接合処理を行う。摩擦攪拌接合処理の間は、主軸モータ負荷率と接合ツール位置をともに一定の値(目標値)を保持するように、主軸モータ14及びZ軸上下動駆動モータ16の駆動を制御する。
【0036】
摩擦攪拌接合処理が終了した時点で、接合ツール6の引き抜きを開始すると、接合ツール位置が浅くなるに従い主軸モータ14の負荷率は低下する。
【0037】
上記のように、本実施例の摩擦攪拌接合装置1は、摩擦攪拌接合始端部において、接合ツール6を所定の回転速度を示す目標回転速度で回転しながら被接合部材9(第1の被接合部材9aと第2の被接合部材9bとを突き合せたもの)の接合線18(第1の被接合部材9aと第2の被接合部材9bとの突き合せた部位を示す線)に目標とする深度を示す目標深度まで挿入し、その位置において、接合ツール6近傍の被接合部材9の温度を示す接合温度が所望の値に上昇するまで入熱処理を行い、その後、接合線(第1の被接合部材9aと第2の被接合部材9bとの接合部)に沿って所定の進行速度を示す目標進行速度で接合ツール6を摩擦攪拌接合終端部まで進行させて被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する。
【0038】
高精度の摩擦攪拌接合品質を確保するには、正確性を保持して接合ツール6を接合線18に沿って進行させることが肝要となる。本来あるべき接合線18の位置からずれて摩擦攪拌接合すると、接合強度の低下を招くこととなり、その結果、高精度の接合品質を確保できないこととなる。
【0039】
しかしながら、接合線18は、必ずしも本来あるべき位置にあるとは限らない。例えば、載置台10に被接合部材9(9a,9b)をセットする際に、セットミスによって接合線18の位置にズレが生じたり、接合ツール6により被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する際にも被接合部材9(9a,9b)の載置位置にズレが生じることにより接合線18の位置がずれることがある。
【0040】
本発明は、接合線18のズレを修正するものである。これにより、連続的に被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する場合であっても、接合線18を本来あるべき位置に保持し、その位置において摩擦攪拌接合することが可能になる。
【0041】
接合線18の位置ずれを修正するには、基準となるテンプレートを実際の接合線18の位置を取得して定期的にズレ量の状態を管理する必要がある。本発明では、次のようにこれを実現する。
【0042】
先ず、載置台10に被接合部材9(9a,9b)を精度よく載置する。このときの接合線18の位置は当然、ズレが生じていないので、この接合線18の位置によりテンプレートを作成する。
【0043】
被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する際には、実際の接合線18の位置を取得して、作成したテンプレートとの差異を定期的に確認し、その差異が許容範囲を超えていたら許容範囲内に入るように載置台10の位置を調整、すなわち被接合部材9(9a,9b)の配置位置を修正することで接合線18の位置を修正しながら、接合ツール6を進行させていく。
【0044】
以下、具体的に説明する。
【0045】
本発明では、実際の接合線18の位置を接合線18の画像情報を取得して把握する。接合線18の画像情報を取得するために、図2に示すように、主軸15の回転しない部位(主軸ホルダなど)に画像情報取得装置17a,17bを配設する。
【0046】
接合線18の位置ずれを管理するには、被接合部材9(9a,9b)を載置台10にセットしてから接合ツール6による摩擦攪拌接合終了まで、すなわち、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの接合線18の位置を監視することとなるので、接合線18の画像情報は摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで取得することとなる。
【0047】
そのために、本発明では、主軸15の前側(接合ツール6の進行方向)に前側画像情報取得装置17aを備え、主軸15の後側(接合ツール6の進行方向と反対方向)に後側画像情報取得装置17bを備える。これら、主軸15の前側と後側に配設した2つの画像情報取得装置17a,17bにより、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの接合線18の画像情報を取得する。
【0048】
先ず、摩擦攪拌接合装置1により被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する本運用接合段階の前段階であるテスト運用段階において、載置台10に摩擦攪拌接合をする被接合部材9(9a,9b)を載置する。このとき、被接合部材9(9a,9b)の載置位置にズレが生じていないことを確認する。この状態において、テンプレートを作成する。テンプレートは、基準接合点の集合体で構成する。
【0049】
図3に、本発明に係るXY平面と基準接合点19を示す。
【0050】
図3に示すように、載置台10上において、1辺が摩擦攪拌接合装置1の載置台10と対向する面に平行で、接合線18を含む所定の矩形領域を仮想的なXY平面として設定する。
【0051】
図4A及び図4Bに、接合線18のズレと載置台10の位置調整を示す。また、図5A及び図5Bに、接合線18のズレと接合ツール6の位置調整を示す。
【0052】
図3図4A及び図4Bに示すように、XY平面において摩擦攪拌接合装置1に近い側の頂点の一つを原点として、原点を含んで摩擦攪拌接合装置1の載置台10と対向する面に直交して遠ざかる一辺である直交軸をX軸とするとき、原点においてX軸と直交して摩擦攪拌接合装置1の載置台10と対向する面に平行する一辺である平行軸をY軸とする。
【0053】
或いは、図5A及び図5Bに示すように、直交軸をY軸と設定するときは平行軸をX軸として設定する。
【0054】
いずれの場合も、基準接合点19はXY平面におけるX軸とY軸上の座標として設定する。
【0055】
テスト運用段階において、先ず、後側画像情報取得装置17bにより摩擦攪拌接合始端部における接合線18の画像情報を取得する。この位置のX座標及びY座標を算出する。この点を最初の基準接合点19として摩擦攪拌接合装置1の制御部11に備える記憶部に記憶する。
【0056】
次に、接合ツール6を接合線18に沿って所定速度で進行する。接合ツール6を摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌終端部まで進行させながら、所定間隔で前側画像情報取得装置17aにより接合線18の画像情報を取得し、接合線18のX座標及びY座標を算出し、基準接合点群として記憶部に記憶していく。これらの基準接合点19の集合体でテンプレートを構成する。基準接合点19を設定する所定間隔は時間で設定してもよいし、距離で設定してもよい。
【0057】
なお、接合線18がX軸に平行な直線形状である場合には、X軸方向に接合線18のズレが生じることはないので、基準接合点19のX座標は固定座標となり、Y座標が変動座標となる。そして、接合線18が曲線を含む複雑形状である場合には、X座標及びY座標ともに変動座標となる。
【0058】
また、基準接合点19は、被接合部材9(9a,9b)の形状と接合線18の位置に変更がなければ再設定をする必要はない。
【0059】
次に、被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する本運用接合段階の運用について説明する。
【0060】
先ず、被接合部材9(9a,9b)を載置台10に載置し、接合ツール6を摩擦攪拌接合始端部に配置する。
【0061】
後側画像情報取得装置17bにより摩擦攪拌接合始端部の接合線18の画像情報を取得し、接合線18のX座標とY座標を算出する。これらの座標を、最初の基準接合点19の座標と比較し、その差分を算出する。
【0062】
当該座標の差分が許容範囲を超えている場合には、差分が許容範囲に入るように載置台10の位置を調整することにより、接合線18の位置ズレを修正する。これが、摩擦攪拌接合始端部における接合線18の位置ズレ修正であり、最初の修正である。当然、座標の差分が許容範囲内であれば、修正する必要はない。
【0063】
最初の接合線18の修正が終了したら、接合線18に沿って、接合条件(被接合部材9の材質と厚みなど)により設定した進行速度で接合ツール6を進行していく。
【0064】
このとき、所定間隔で、前側画像情報取得装置17aより接合線18の画像情報を取得し、接合線18のX座標及びY座標を算出し、対応する基準接合点19のそれぞれの座標との差分を算出する。
【0065】
当該差分が許容範囲を超えている場合には、差分が許容範囲に入るように載置台10の位置を調整することにより接合線18の位置ズレを修正する。この処理を摩擦攪拌接合終端部まで繰り返して接合ツール6を進行する。
【0066】
なお、接合線18がX軸に平行な直線形状である場合には、X軸方向に接合線18にズレが生じることはないので、X座標は固定座標となり、Y座標のみを変動座標として基準接合点19との差分算出、接合線18の位置ズレ修正を行うこととなる。
【0067】
前側画像情報取得装置17a及び後側画像情報取得装置17bは、光学カメラかレーザ変位計の何れを使用してもよい。
【実施例0068】
図7を参照して、本発明の実施例2に係る接合線の位置修正方法について説明する。図7は、本発明による代表的な接合線の位置修正方法を示すフローチャートである。
【0069】
<接合線画像情報取得ステップ>
先ず、ステップS701において、被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において、接合ツール6の進行方向である主軸15の前側に配置された前側画像情報取得装置17aと接合ツール6の進行方向と反対方向である主軸15の後側に配置された後側画像情報取得装置17bを使用して、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの接合線18の画像情報を示す接合線画像情報を取得する。
【0070】
<基準接合点設定ステップ>
次に、ステップS702において、摩擦攪拌接合装置1が内部に設定するXY平面上において、所定間隔で接合線画像情報の座標を算出して基準接合点19を設定する。
【0071】
<初期位置修正ステップ>
続いて、ステップS703において、被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する際に、接合ツール6を摩擦攪拌接合始端部に配置したときに後側画像情報取得装置17bにより現在の接合線18の画像情報を取得して摩擦攪拌接合始端部のXY平面上の座標を算出し、基準接合点19の座標との差分を算出して当該差分が許容範囲を超えていたら差分が許容範囲に入るように載置台10の位置を移動して接合線18の位置を修正する。
【0072】
<進行位置修正ステップ>
最後に、ステップS704において、被接合部材9(9a,9b)を摩擦攪拌接合する際に、前側画像情報取得装置17aにより現在の接合線18の画像情報を取得しながら接合ツール6を摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで進行させ、所定間隔で現在の接合線画像情報の座標を算出して対応する基準接合点19の座標との差分を算出し、差分が許容範囲を超えていたら当該差分が許容範囲に入るように載置台10の位置を移動して接合線18の位置を修正する。
【0073】
なお、実施例1で説明したように、基準接合点19は、被接合部材9(9a,9b)を載置する載置台10上で接合線18を含む所定の矩形領域であるXY平面を設定し、XY平面において摩擦攪拌接合装置1に近い側の頂点の一つを原点として、原点を含んで摩擦攪拌接合装置1の載置台10と対向する面に直交して遠ざかる一辺である直交軸をX軸とするとき、原点においてX軸と直交して摩擦攪拌接合装置1の載置台10と対向する面に平行する一辺である平行軸をY軸として設定する。或いは、直交軸をY軸とするときは、平行軸をX軸として設定する。いずれの場合も、基準接合点19をX軸とY軸の座標として設定する。
【0074】
そして、接合線18がX軸に平行な直線形状である場合には、初期位置修正ステップと進行位置修正ステップにおいて、X軸の座標を固定座標として接合線18のY座標を取得して対応する基準接合点19のY座標と比較して差分を算出する。
【0075】
また、接合線18が曲線を含む複雑形状である場合には、初期位置修正ステップと進行位置修正ステップにおいて、接合線18のX座標及びY座標を取得して対応する基準接合点19のX座標及びY座標と比較して差分を算出する。
【0076】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…摩擦攪拌接合装置、2…装置本体、3…Z軸上下動駆動機構部、4…主軸支持部、5…ツールホルダ(接合ヘッド)、6…接合ツール、7…ショルダ部、8…プローブ部(接合ピン)、9,9a,9b…被接合部材、10…載置台、10a…載置台移動機構部、11…制御部(制御装置)、12…X軸前後駆動機構部、13…X軸前後動駆モータ、14…主軸モータ、15…主軸、16…Z軸上下動駆動モータ、17a…前側画像情報取得装置、17b…後側画像情報取得装置、18…接合線、19…基準接合点。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合部材と第2の被接合部材とを突き合せた被接合部材の前記突き合せた部位を示す接合線において、主軸に取り付けた接合ツールを目標回転速度で回転させながら目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部及びその近傍を摩擦熱により軟化させながら摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、
前記摩擦攪拌接合装置は、前記接合ツールの進行方向である前記主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と、
前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置と、
前記被接合部材を移動可能な載置台と、を備え、
前記被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行させながら前記前側画像情報取得装置と前記後側画像情報取得装置を使用して前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部までの前記接合線の画像情報を取得して、前記摩擦攪拌接合装置内に設定した基準接合点に、前記接合線の画像情報の位置が一致するように、前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材を載置する載置台上において、前記接合線を含む所定の矩形領域である仮想的なXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をX軸とし、
前記原点を含んで前記X軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をY軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項3】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記被接合部材を載置する載置台上において、前記接合線を含む所定の矩形領域である仮想的なXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の一つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をY軸とし、
前記原点を含んで前記Y軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をX軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記テスト運用段階において、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置して前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して、前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部のX座標とY座標を算出して前記基準接合点として記憶部に記憶するとともに前記接合ツールの中心部を前記基準接合点に合わせ、さらに、前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに、前記X座標を固定座標として所定間隔で前記接合線のY座標を算出して前記記憶部に前記基準接合点として追加記憶し、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記テスト運用段階において、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置して前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して、前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部のX座標とY座標を算出して前記基準接合点として記憶部に記憶するとともに前記接合ツールの中心部を前記基準接合点に合わせ、さらに、前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線のX座標とY座標を算出して前記記憶部に前記基準接合点として追加記憶することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項5】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部の現在のY座標を算出し、
前記記憶部に記憶した最初の前記基準接合点のY座標と比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項6】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線の現在のY座標を算出し、
前記現在のY座標に対応する前記基準接合点のY座標を比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項7】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得して前記接合線内の前記摩擦攪拌接合始端部の現在のX座標とY座標を算出し、
前記記憶部に記憶した最初の前記基準接合点のX座標およびY座標と比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項8】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置により前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合線に沿って前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行するとともに所定間隔で前記接合線の現在のX座標とY座標を算出し、
前記現在のX座標とY座標に対応する前記基準接合点のX座標とY座標を比較して差分を算出し、
前記差分が予め設定した許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項9】
請求項に記載の摩擦攪拌接合装置であって、
前記前側画像情報取得装置および前記後側画像情報取得装置は、光学カメラまたはレーザ変位計のいずれかを使用することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項10】
摩擦攪拌接合装置における接合線の位置修正方法であって、
(a)被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において、接合ツールの進行方向である主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置を使用して、摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部までの前記接合線の画像情報を示す接合線画像情報を取得するステップと、
(b)前記摩擦攪拌接合装置が内部に設定するXY平面上において、所定間隔で前記接合線画像情報の座標を算出して基準接合点を設定するステップと、
(c)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部に配置したときに前記後側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得して前記摩擦攪拌接合始端部の前記XY平面上の座標を算出し、前記基準接合点の座標との差分を算出して前記差分が許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する初期位置修正ステップと、
(d)前記被接合部材を摩擦攪拌接合する際に、前記前側画像情報取得装置により現在の前記接合線の画像情報を取得しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行させ、前記所定間隔で前記現在の接合線画像情報の座標を算出して対応する前記基準接合点の座標との差分を算出し、前記差分が前記許容範囲を超えていたら前記差分が前記許容範囲に入るように前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正する進行位置修正ステップと、
を有することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項11】
請求項10に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記(a)ステップにおいて、前記載置台上で前記接合線を含む所定の矩形領域であるXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をX軸とし、
前記原点を含んで前記X軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をY軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項12】
請求項10に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記(a)ステップにおいて、前記載置台上で前記接合線を含む所定の矩形領域であるXY平面を設定し、
前記XY平面において摩擦攪拌接合装置に近い側の頂点の1つを原点とし、
前記原点を含んで前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に直交して前記摩擦攪拌接合装置から遠ざかる一辺である直交軸をY軸とし、
前記原点を含んで前記Y軸と直交して前記摩擦攪拌接合装置の前記載置台と対向する面に平行な一辺である平行軸をX軸とし、
前記基準接合点および前記接合線の画像情報の位置を前記X軸と前記Y軸の座標として設定することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の接合線の位置修正方法であって、
前記接合線が前記X軸に平行な直線形状である場合には、前記(c)ステップおよび前記(d)ステップにおいて、前記X軸の座標を固定座標として前記接合線のY座標を取得して対応する前記基準接合点のY座標と比較して差分を算出し、
前記接合線が曲線を含む複雑形状である場合には、前記(c)ステップおよび前記(d)ステップにおいて、前記接合線のX座標及びY座標を取得して対応する前記基準接合点のX座標及びY座標と比較して差分を算出することを特徴とする接合線の位置修正方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを突き合せた被接合部材の前記突き合せた部位を示す接合線において、主軸に取り付けた接合ツールを目標回転速度で回転させながら目標深度まで挿入し、前記被接合部材の挿入部及びその近傍を摩擦熱により軟化させながら摩擦攪拌接合始端部から摩擦攪拌接合終端部まで前記接合ツールを進行させて前記被接合部材を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記摩擦攪拌接合装置は、前記接合ツールの進行方向である前記主軸の前側に配置された前側画像情報取得装置と、前記接合ツールの進行方向と反対方向である前記主軸の後側に配置された後側画像情報取得装置と、前記被接合部材を移動可能な載置台と、を備え、前記被接合部材を摩擦攪拌接合する前段階であるテスト運用段階において前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行させながら前記前側画像情報取得装置と前記後側画像情報取得装置を使用して前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部までの前記接合線の画像情報を取得して、前記摩擦攪拌接合装置内に設定した基準接合点に、前記接合線の画像情報の位置が一致するように、前記載置台の位置を移動して前記接合線の位置を修正しながら前記接合ツールを前記摩擦攪拌接合始端部から前記摩擦攪拌接合終端部まで進行することを特徴とする。