(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147714
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】組成物、表面処理アルミニウム材、及び表面処理アルミニウム材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20231005BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231005BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20231005BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09K3/00 R
B32B15/08 Q
C23C26/00 A
C08L61/28
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055386
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
(72)【発明者】
【氏名】木所 佑介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AB10A
4F100AH02B
4F100AK35B
4F100AK36B
4F100AL05B
4F100BA02
4F100CA18B
4F100CA30B
4F100EH61
4F100GB16
4F100JA07B
4F100JL16
4J002CC18W
4J002CC19W
4J002CC20W
4J002CC21W
4J002CC23W
4J002CH02X
4J002CH02Y
4J002CH05X
4J002CH05Y
4J002FD140
4J002FD31X
4J002FD31Y
4J002GG00
4J002GH00
4J002GH02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC02
4K044BC09
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】アルミニウム材の黒変防止処理を行うための新規の組成物であって、さらにアルミニウム材の濡れ性を向上させたい場合には、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことを可能とする組成物の提供。
【解決手段】本発明の組成物(1)はアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有し、組成物(1)はアルミニウム材の表面処理用である。本発明の組成物(2)はアミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有し、界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステルにおける1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
で表される基で置換された構造を有するノニオン界面活性剤であり、界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
前記組成物はアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有し、
前記組成物はアルミニウム材の表面処理用である、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、さらに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)のいずれか一方又は両方を含有し、
前記界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステルにおける1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤であり、
前記界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物であって、
前記組成物はアミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有し、
前記界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステルにおける1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤であり、
前記界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である、組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤(C1)の分子量が800以上である、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物において、前記酸触媒(B)の含有量が、前記アミノ樹脂(A)の含有量の0.02~4倍モル量である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物において、前記界面活性剤(C1)の含有量が、前記アミノ樹脂(A)の含有量の0.1~10倍モル量である、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物において、前記界面活性剤(C2)の含有量が、前記界面活性剤(C1)の含有量の0.1~2倍モル量である、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸触媒(B)が、リン酸、リン酸誘導体及びスルホン酸からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミノ樹脂(A)がメラミン樹脂である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤(C2)がポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項2、3又は7に記載の組成物。
【請求項11】
アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面に設けられた処理層と、を備えた表面処理アルミニウム材であって、
前記処理層が、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の反応物である、表面処理アルミニウム材。
【請求項12】
アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面に設けられた処理層と、を備えた表面処理アルミニウム材の製造方法であって、
前記製造方法は、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を用いて、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の層を形成する工程(I)と、
前記組成物の層を加熱処理することにより、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の反応物である前記処理層を形成する工程(II)と、を有する、表面処理アルミニウム材の製造方法。
【請求項13】
前記アルミニウム材が、アルミ缶であり、
前記工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、前記アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記組成物を噴霧することにより、前記組成物の層を形成するとともに、前記組成物の層を形成しなかった前記組成物を回収する、請求項12に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【請求項14】
前記組成物における、前記組成物の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量の割合が、10~10000ppmである、請求項12又は13に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、表面処理アルミニウム材、及び表面処理アルミニウム材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活では、アルミニウムを構成材料とする各種製品や部材が、幅広く利用されている。その代表的な例としては、アルミ缶(アルミニウム製の缶)が挙げられる。アルミ缶は、飲料及び食品をはじめとする、保存が必要な物品用の容器として、広く普及している。
【0003】
アルミ缶は、例えば、アルミプレートを用いて、開口部を有する有底筒状の成形体を作製し、その側面に印刷や塗装が施された状態で、内容物が充填される前の最終状態となる。特に、飲食品用のアルミ缶は、通常、内容物が充填され、密封された後、高温殺菌処理されるが、アルミ缶のこの高温殺菌処理時には、印刷や塗装が施されない底面等の表面は、そのままでは黒変してしまう。そこで、この黒変を防止するために、通常は、アルミ缶の底面等に対して、黒変防止用の組成物を噴霧(スプレー)することで、表面処理している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、アルミ缶の底面等は、その濡れ性を向上させることによって、前記組成物による表面処理が容易となる可能性がある。そこで、アルミ缶の底面等に界面活性剤を噴霧して、表面処理することが考えられる。すなわち、アルミ成形体の底面等を界面活性剤で処理した後、続けて、黒変防止用の前記組成物で処理することによって、黒変防止効果の向上が可能となる可能性がある。
【0006】
しかし、各種薬剤を噴霧(スプレー)した場合には、残留した薬剤による、アルミ成形体等のアルミニウム材の目的外の汚染を防止するために、製造装置内の清掃が必要となり、製造効率が低下してしまう。そこで、各種薬剤の噴霧回数の削減が望まれており、アルミニウム材に対して黒変防止処理と濡れ性向上処理をともに行う場合には、薬剤の1回の噴霧でこれらの同時処理が可能であれば、有用である。これに対して、特許文献1で開示されている表面処理剤は、そのような目的に沿ったものではない。
【0007】
本発明は、アルミニウム材の黒変防止処理を行うための新規の組成物であって、さらにアルミニウム材の濡れ性を向上させたい場合には、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことを可能とする組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1].組成物であって、前記組成物はアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有し、前記組成物はアルミニウム材の表面処理用である、組成物。
[2].前記組成物が、さらに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)のいずれか一方又は両方を含有し、前記界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステルにおける1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤であり、前記界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である、[1]に記載の組成物。
【0009】
[3].組成物であって、前記組成物はアミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有し、前記界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステルにおける1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤であり、前記界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である、組成物。
[4].前記界面活性剤(C1)の分子量が800以上である、[2]又は[3]に記載の組成物。
【0010】
[5].前記組成物において、前記酸触媒(B)の含有量が、前記アミノ樹脂(A)の含有量の0.02~4倍モル量である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6].前記組成物において、前記界面活性剤(C1)の含有量が、前記アミノ樹脂(A)の含有量の0.1~10倍モル量である、[2]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[7].前記組成物において、前記界面活性剤(C2)の含有量が、前記界面活性剤(C1)の含有量の0.1~2倍モル量である、[2]又は[3]に記載の組成物。
[8].前記酸触媒(B)が、リン酸、リン酸誘導体及びスルホン酸からなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9].前記アミノ樹脂(A)がメラミン樹脂である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
【0011】
[10].前記界面活性剤(C2)がポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである、[2]、[3]又は[7]に記載の組成物。
[11].アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面に設けられた処理層と、を備えた表面処理アルミニウム材であって、前記処理層が、[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物の反応物である、表面処理アルミニウム材。
[12].アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面に設けられた処理層と、を備えた表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記製造方法は、[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物を用いて、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の層を形成する工程(I)と、前記組成物の層を加熱処理することにより、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の反応物である前記処理層を形成する工程(II)と、を有する、表面処理アルミニウム材の製造方法。
[13].前記アルミニウム材が、アルミ缶であり、前記工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、前記アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記組成物を噴霧することにより、前記組成物の層を形成するとともに、前記組成物の層を形成しなかった前記組成物を回収する、[12]に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
[14].前記組成物における、前記組成物の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量の割合が、10~10000ppmである、[12]又は[13]に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルミニウム材の黒変防止処理を行うための新規の組成物であって、さらにアルミニウム材の濡れ性を向上させたい場合には、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことを可能とする組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の製造方法の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<組成物(組成物(1))>>
本発明の一実施形態に係る組成物(本明細書においては、「組成物(1)」と称することがある)は、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有し、前記組成物はアルミニウム材の表面処理用である。
本実施形態の組成物(組成物(1))でアルミニウム材を表面処理することにより、アルミニウム材の加熱時における黒変を防止できる。すなわち、組成物(1)は、アルミニウム材の黒変防止処理剤である。
【0015】
本明細書においては、「アルミニウム材の黒変」とは、特に断りのない限り、「アルミニウム材の加熱時における黒変」を意味する。そして、この場合の加熱とは、例えば、高温殺菌処理等が可能な程度の高温での加熱を意味し、典型的には温度が65℃以上での加熱が挙げられる。
【0016】
<アミノ樹脂(A)>
前記アミノ樹脂(A)は、前記酸触媒(B)の作用によって、自己縮合し得る成分であり、組成物(1)によってアルミニウム材を表面処理したときに、アルミニウム材の表面に、その自己縮合物等の反応物を形成することによって、アルミニウム材の、その加熱時における黒変の防止を可能とする。アミノ樹脂(A)は、架橋剤の1種と見做すことができる。
【0017】
アミノ樹脂(A)は、アミノ基を有する化合物とアルデヒドとの反応によって生成する樹脂であれば、特に限定されない。
アミノ樹脂(A)としては、例えば、メラミン樹脂、アニリンホルムアルデヒド樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、グリコールウリル樹脂等が挙げられる。
【0018】
アミノ樹脂(A)の市販品としては、例えば、DIC社製「ウォーターゾール(登録商標)S-695」、三井化学社製「ユーバン(登録商標)N705」等が挙げられる。
【0019】
アミノ樹脂(A)の分子量は、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。アミノ樹脂(A)の分子量が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果がより高くなる。
アミノ樹脂(A)の分子量の上限値は、特に限定されない。例えば、アミノ樹脂(A)をより容易に入手できる点では、アミノ樹脂(A)の分子量は、4000以下であることが好ましく、3000以下であってもよい。
アミノ樹脂(A)の分子量は、例えば、1000~4000、1500~4000、及び1500~3000のいずれかであってもよい。
【0020】
アミノ樹脂(A)の分子量は、公知の方法によって測定できる。
【0021】
組成物(1)が含有するアミノ樹脂(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0022】
アルミニウム材の黒変防止効果がより高い点では、アミノ樹脂(A)はメラミン樹脂であることが好ましい。
【0023】
<酸触媒(B)>
前記酸触媒(B)は、アミノ樹脂(A)の反応(例えば、縮合反応)を促進可能であれば、特に限定されない。
酸触媒(B)としては、例えば、リン酸(H3PO4)、リン酸誘導体、スルホン酸等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、複数個の原子が結合した構造を有する原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0025】
酸触媒(B)である前記リン酸誘導体は、リン酸中の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換された構造を有する化合物であれば、特に限定されない。
1分子のリン酸誘導体が2個以上の前記置換基を有する場合、これら2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0026】
好ましい前記リン酸誘導体としては、例えば、リン酸アルキルエステル(リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、リン酸トリアルキルエステル)等のリン酸エステル(リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル)等が挙げられる。
【0027】
酸触媒(B)である前記スルホン酸は、1分子中に1個又は2個以上のスルホ基(-SO3H)を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0028】
好ましい前記スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸誘導体、ナフタレンスルホン酸誘導体等の、アリールスルホン酸、アリールスルホン酸誘導体等が挙げられる。
前記ベンゼンスルホン酸誘導体は、ベンゼンスルホン酸中の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換された構造を有する化合物であれば、特に限定されない。
前記ナフタレンスルホン酸誘導体は、ナフタレンスルホン酸中の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換された構造を有する化合物であれば、特に限定されない。
1分子のベンゼンスルホン酸誘導体及びナフタレンスルホン酸誘導体が、2個以上の前記置換基を有する場合、これら2個以上の置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0029】
前記ベンゼンスルホン酸誘導体としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
前記ナフタレンスルホン酸誘導体としては、例えば、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンモノスルホン酸等が挙げられる。
【0030】
組成物(1)が含有する酸触媒(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
アルミニウム材の黒変防止効果がより高い点では、酸触媒(B)は、リン酸、リン酸誘導体及びスルホン酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0032】
組成物(1)において、酸触媒(B)の含有量は、アミノ樹脂(A)の含有量の0.02~4倍モル量である([組成物(1)の酸触媒(B)の含有量(モル)]/[組成物(1)のアミノ樹脂(A)の含有量(モル)]のモル比が0.02~4である)ことが好ましく、例えば、0.02~2倍モル量、及び0.02~1倍モル量のいずれかであってもよいし、0.15~4倍モル量、及び0.5~4倍モル量のいずれかであってもよいし、0.15~2倍モル量、及び0.5~1倍モル量のいずれかであってもよい。酸触媒(B)の含有量が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果がより高くなる。酸触媒(B)の含有量が前記上限値以下であることで、酸触媒(B)の過剰使用が抑制される。
【0033】
<他の成分(D1)>
組成物(1)は、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)以外に、さらに、これら(アミノ樹脂(A)、酸触媒(B))のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(D1)」と称することがある)を含有していてもよい。
【0034】
組成物(1)が含有する前記他の成分(D1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0035】
組成物(1)が含有する他の成分(D1)としては、例えば、後述する界面活性剤(C1);後述する界面活性剤(C2);前記界面活性剤(C1)と、前記界面活性剤(C2)と、のいずれにも該当しない他の界面活性剤(Y)(本明細書においては、「他の界面活性剤(Y)」と称することがある);アミノ樹脂(A)に該当しない架橋剤(本明細書においては、「架橋剤(X)」と称することがある);添加剤(Z);溶媒等が挙げられる。
【0036】
なかでも、好ましい他の成分(D1)としては、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)が挙げられる。すなわち、組成物(1)は、さらに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)のいずれか一方のみを含有しているか、又は両方を含有していることが好ましい。組成物(1)がアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)に加え、さらに界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)のいずれか一方又は両方を含有していることにより、組成物(1)でアルミニウム材を表面処理したときに、アルミニウム材の黒変を防止できるのに加え、さらに、アルミニウム材の濡れ性を向上させることができる。より具体的には、組成物(1)でアルミニウム材を表面処理することによって、アルミニウム材の濡れ性が向上して、組成物(1)自体によって、アルミニウム材の表面がより均一に被覆されるとともに、組成物(1)によって、アルミニウム材の黒変が防止される。すなわち、アミノ樹脂(A)と、酸触媒(B)と、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)のいずれか一方又は両方と、を含有する組成物(1)は、アルミニウム材に対して、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことを可能とし、黒変防止処理と濡れ性向上処理を別々に行う必要がない。特に、組成物(1)が界面活性剤(C2)を含有していることにより、組成物(1)の泡立ちが抑制されるため、例えば、組成物(1)でアルミニウム材を表面処理するために、組成物(1)を用いて、アルミニウム材の表面に、組成物(1)の層を形成したときに、高い均一性で組成物(1)の層を形成できる、そして、その結果、アルミニウム材の表面に、組成物(1)の反応物である処理層を高い均一性で形成できる。
【0037】
組成物(1)は、界面活性剤(C1)を含有する場合、界面活性剤(C2)も含有していることが好ましい。
【0038】
[界面活性剤(C1)]
前記界面活性剤(C1)は、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステル(本明細書においては、「ヒドロキシアシルグリセロール」と称することがある)における1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤である。
界面活性剤(C1)は、1分子中にエーテル結合とエステル結合をともに有する、エーテル・エステル型ノニオン界面活性剤である。
【0039】
界面活性剤(C1)は、それ単独で、アルミニウム材の濡れ性を向上させることが可能であり、さらに、酸触媒(B)の作用によって、アミノ樹脂(A)と縮合物等の反応物を形成可能であり、この反応物もアルミニウム材の濡れ性を向上させることが可能である。
【0040】
界面活性剤(C1)における前記ヒドロキシアシルグリセロール中のアシル骨格の数は、1~3個である。すなわち、界面活性剤(C1)は、モノアシルグリセロール誘導体、ジアシルグリセロール誘導体又はトリアシルグリセロール誘導体である。ここで、「アシル骨格」とは、アシル基と、水酸基及び前記一般式(i)で表される基のいずれか一方又は両方を置換基として有する置換アシル基と、を包括する概念である。界面活性剤(C1)は、前記置換アシル基を1個、2個又は3個有する。
前記ヒドロキシアシルグリセロール中の前記アシル骨格の数が、2個又は3個である場合、これら複数個のアシル骨格は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これら複数個のアシル骨格は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。複数個のアシル骨格がすべて同一である界面活性剤(C1)は、より容易に入手又は製造できる。
【0041】
前記アシル基と、前記置換アシル基の置換基で置換される前のアシル基(本明細書においては「置換前アシル基」と称することがある)は、長鎖脂肪酸由来であると見做せる鎖長であることが好ましく、前記アシル基と前記置換前アシル基の炭素数は、12以上であることが好ましい。前記アシル基と前記置換前アシル基の炭素数がこのような範囲内である界面活性剤(C1)を用いることで、アルミニウム材の濡れ性がより高くなる。前記アシル基と前記置換前アシル基の炭素数は、前記一般式(i)で表される基又は水酸基で置換される前のアシル基の炭素数であり、前記一般式(i)で表される基の炭素数を含まない。
前記アシル基と前記置換前アシル基の炭素数の上限値は、特に限定されない。例えば、界面活性剤(C1)の入手又は製造がより容易である点では、前記アシル基と前記置換前アシル基の炭素数は24以下であることが好ましい。
【0042】
前記アシル基と前記置換前アシル基を構成している炭化水素基(カルボニル基中の炭素原子に結合している炭化水素基)は、脂肪族炭化水素基(飽和脂肪族炭化水素基又は不飽和脂肪族炭化水素基)であることが好ましく、アルキル基(飽和脂肪族炭化水素基)又はアルケニル基であることがより好ましい。前記アシル基と前記置換前アシル基がこのような炭化水素基で構成されている場合の界面活性剤(C1)は、より容易に入手又は製造でき、このような界面活性剤(C1)を用いることで、アルミニウム材の濡れ性がより高くなる。
【0043】
一般式(i)中の前記nは、一般式「-R11-O-」で表される基(アルキレンオキシ基)の繰り返し数であり、2以上の整数であり、15~60であることが好ましく、30~40であることがより好ましい。nがこのような範囲内であることで、界面活性剤(C1)を用いたことによる効果、すなわち、アルミニウム材の濡れ性を向上させる効果、がより高くなる。
【0044】
一般式(i)中の前記R11は、アルキレン基であり、直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が2又は3のアルキレン基(エチレン基又はプロピレン基)であることがより好ましい。
【0045】
一般式(i)中のn個のR11は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n個のR11は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。n個のR11がすべて同一である界面活性剤(C1)は、より容易に入手又は製造できる。
【0046】
前記ヒドロキシアシルグリセロール中のヒドロキシアシル基における水酸基の、前記一般式(i)で表される基による置換数、換言すると、界面活性剤(C1)中の前記一般式(i)で表される基の数、が2以上である場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記一般式(i)で表される基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。2個以上の前記一般式(i)で表される基がすべて同一である界面活性剤(C1)は、より容易に入手又は製造できる。
【0047】
前記ヒドロキシアシルグリセロール中のヒドロキシアシル基は、その数によらず、すべて、前記一般式(i)で表される基を有していることが好ましい。このような界面活性剤(C1)を用いることにより、アルミニウム材の濡れ性の向上効果が、より高くなる。
【0048】
前記ヒドロキシアシルグリセロール中のヒドロキシアシル基における水酸基の、前記一般式(i)で表される基による置換数、換言すると、界面活性剤(C1)中の前記一般式(i)で表される基の数、は1~3であることが好ましく、2又は3であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
【0049】
前記ヒドロキシアシルグリセロール中のヒドロキシアシル基における水酸基の、前記一般式(i)で表される基による置換位置、換言すると、前記ヒドロキシアシル基中での前記一般式(i)で表される基の結合位置は、特に限定されず、前記ヒドロキシアシル基中の末端部の炭素原子であってもよいし、非末端部の炭素原子であってもよい。
【0050】
前記ヒドロキシアシルグリセロール中の、前記置換アシル基の数が、2個又は3個である場合、これら複数個の置換アシル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これら複数個の置換アシル基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。複数個の置換アシル基がすべて同一である界面活性剤(C1)は、より容易に入手又は製造できる。
【0051】
界面活性剤(C1)においては、ヒドロキシアシル基中のすべての水酸基が、前記一般式(i)で表される基で置換されていることが好ましい。すなわち、界面活性剤(C1)は、前記アシル骨格が水酸基を有しないことが好ましい。
【0052】
界面活性剤(C1)の分子量は、800以上であることが好ましく、900~4000であることがより好ましく、1500~2500であることがさらに好ましい。界面活性剤(C1)の分子量がこのような範囲内であることで、アルミニウム材の濡れ性が高くなる。
【0053】
好ましい界面活性剤(C1)としては、例えば、下記一般式(c)-11:
【0054】
【化1】
(式中、nは2以上の整数である。)
で表される化合物(本明細書においては、「界面活性剤(C11)」と称することがある)が挙げられる。
【0055】
界面活性剤(C1)のHLB値は、6~16であることが好ましく、8~14であることがより好ましい。HLB値がこのような範囲内であるノニオン界面活性剤(C)を用いることで、本発明の効果がより顕著に得られる。
本明細書において、「HLB値」とは、特に断りのない限り、グリフィン法で算出された値である。
【0056】
組成物(1)が含有する界面活性剤(C1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0057】
組成物(1)において、界面活性剤(C1)の含有量は、アミノ樹脂(A)の含有量の0.1~10倍モル量である([組成物(1)の界面活性剤(C1)の含有量(モル)]/[組成物(1)のアミノ樹脂(A)の含有量(モル)]のモル比が0.1~10である)ことが好ましく、例えば、0.1~7倍モル量、及び0.1~4倍モル量のいずれかであってもよいし、1.5~10倍モル量、及び2.5~10倍モル量のいずれかであってもよいし、1.5~7倍モル量、及び2.5~4倍モル量のいずれかであってもよい。界面活性剤(C1)の含有量が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の濡れ性がより高くなる。界面活性剤(C1)の含有量が前記上限値以下であることで、界面活性剤(C1)の過剰使用が抑制される。
【0058】
[界面活性剤(C2)]
前記界面活性剤(C2)は、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤であり、1分子中にエステル結合を有さず、エーテル結合を有する、エーテル型ノニオン界面活性剤であって、界面活性剤(C1)に該当しない成分である。
【0059】
界面活性剤(C2)は、それ単独で、アルミニウム材の濡れ性を向上させることと、組成物(1)の泡立ちを抑制することが可能であり、さらに、酸触媒(B)の作用によって、アミノ樹脂(A)と縮合物等の反応物を形成可能であり、この反応物も、アルミニウム材の濡れ性を向上させることと、組成物(1)の泡立ちを抑制することが可能である。すなわち、界面活性剤(C2)は、アルミニウム材の濡れ性を向上させるとともに、組成物(1)の泡立ちを抑制するための成分である。
【0060】
界面活性剤(C1)を含有する組成物は、そのままではその泡立ちを抑制できないことがあるが、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を共に含有する組成物(組成物(1))は、その泡立ちを抑制できる。
【0061】
界面活性剤(C2)として、より具体的には、例えば、下記一般式(c)-21:
R21O(CH2CH2O)lH (c)-21
(式中、R21はアルキル基であり;lは2以上の整数である。)
で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(本明細書においては、「界面活性剤(C21)」と称することがある)と、下記一般式(c)-22:
R22O(CH2CH(CH3)O)mH (c)-22
(式中、R22はアルキル基であり;mは2以上の整数である。)
で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(本明細書においては、「界面活性剤(C22)」と称することがある)と、下記一般式(c)-23:
R23O(CH2CH2O)p(CH2CH(CH3)O)qH (c)-23
(式中、R23はアルキル基であり;p及びqはそれぞれ独立に2以上の整数である。)
で表されるポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(本明細書においては、「界面活性剤(C23)」と称することがある)が挙げられる。
【0062】
前記一般式(c)-21中の前記R21、前記一般式(c)-22中の前記R22、及び前記一般式(c)-23中の前記R23は、それぞれ独立にアルキル基である。
R21、R22及びR23における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。前記アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状、特に分岐鎖状である場合の界面活性剤(C21)、(C22)又は(C23)を用いることで、組成物(1)の泡立ちがより抑制される。なかでも、前記アルキル基がその末端部に、炭素鎖の分岐構造を有する場合の界面活性剤(C21)、(C22)又は(C23)を用いることで、組成物(1)の泡立ちが顕著に抑制される。
【0063】
組成物(1)の泡立ちを抑制する効果が、より高くなる点では、R21、R22及びR23における前記アルキル基は、複数個の分岐構造を有することが好ましい。
【0064】
R21、R22及びR23における前記アルキル基の炭素数は、7~20であることが好ましい。炭素数がこのような範囲内である界面活性剤(C21)、(C22)又は(C23)を用いることで、組成物(1)の泡立ちを抑制する効果が、より高くなる。
【0065】
前記一般式(c)-21中の前記lは、エチレンオキシ基の繰り返し数である。
前記一般式(c)-22中の前記mは、プロピレンオキシ基の繰り返し数である。
前記一般式(c)-23中の前記pは、エチレンオキシ基の繰り返し数であり、前記qは、プロピレンオキシ基の繰り返し数である。
l、m、p及びqは、それぞれ独立に2以上の整数であり、2~14であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。l、m、p及びqがこのような範囲内であることで、界面活性剤(C21)、(C22)及び(C23)を用いたことによる効果、すなわち、アルミニウム材の濡れ性を向上させる効果と、組成物(1)の泡立ちを抑制する効果が、より高くなる。
【0066】
界面活性剤(C2)の分子量は、350~450であることが好ましく、380~420であることがより好ましい。界面活性剤(C2)の分子量がこのような範囲であることで、アルミニウム材の濡れ性がより高くなる。さらに、界面活性剤(C2)の分子量が前記上限値以下であることで、組成物(1)の泡立ちを抑制する効果がより高くなる。
【0067】
界面活性剤(C2)のHLB値は、6~16であることが好ましく、8~14であることがより好ましい。HLB値がこのような範囲内であるノニオン界面活性剤(C)を用いることで、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0068】
組成物(1)が含有する界面活性剤(C2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
アルミニウム材の濡れ性が高くなり、かつ、組成物(1)の泡立ちを抑制する効果が顕著に高い点では、界面活性剤(C2)は、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(界面活性剤(C21))であることが好ましく、アルキルエーテルを構成しているアルキル基がその末端部に、炭素鎖の分岐構造を有する、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(界面活性剤(C21))であることがより好ましい。
【0070】
組成物(1)が界面活性剤(C1)及び(C2)を含有する場合、組成物(1)において、界面活性剤(C2)の含有量は、界面活性剤(C1)の含有量の0.1~2倍モル量である([組成物(1)の界面活性剤(C2)の含有量(モル)]/[組成物(1)の界面活性剤(C1)の含有量(モル)]のモル比が0.1~2である)ことが好ましく、例えば、0.1~0.8倍モル量、0.1~0.6倍モル量、及び0.1~0.4倍モル量のいずれかであってもよい。界面活性剤(C2)の含有量がこのような範囲であることで、アルミニウム材の濡れ性がより高くなり、かつ、組成物(1)の泡立ちを抑制する効果がより高くなる。
【0071】
[他の界面活性剤(Y)]
他の界面活性剤(Y)は、界面活性剤(C1)と、界面活性剤(C2)と、のいずれにも該当しない界面活性剤であれば、特に限定されない。
他の界面活性剤(Y)は、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤のいずれであってもよいが、ノニオン界面活性剤であることが好ましい。
【0072】
組成物(1)が含有する他の界面活性剤(Y)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
組成物(1)において、他の界面活性剤(Y)の含有量は、アミノ樹脂(A)の含有量の0.1倍モル量以下である([組成物(1)の他の界面活性剤(Y)の含有量(モル)]/[組成物(1)のアミノ樹脂(A)の含有量(モル)]のモル比が0.1以下である)ことが好ましく、0.05倍モル量以下であることがより好ましく、0.03倍モル量以下であることがさらに好ましく、0倍モル量であること、すなわち、組成物(1)は他の界面活性剤(Y)を含有しないことが、特に好ましい。他の界面活性剤(Y)の含有量が前記上限値以下であることで、アルミニウム材の黒変を防止する効果と、アルミニウム材の濡れ性を向上させる効果が、より高くなる。
【0074】
[架橋剤(X)]
架橋剤(X)は、他の化合物と反応可能な基を2個以上有し、アミノ樹脂(A)に該当しない架橋剤であれば、特に限定されない。
架橋剤(X)は、例えば、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。
架橋剤(X)としては、例えば、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
組成物(1)が含有する架橋剤(X)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0076】
組成物(1)において、架橋剤(X)の含有量は、アミノ樹脂(A)の含有量の0.1倍モル量以下である([組成物(1)の架橋剤(X)の含有量(モル)]/[組成物(1)のアミノ樹脂(A)の含有量(モル)]のモル比が0.1以下である)ことが好ましく、0.05倍モル量以下であることがより好ましく、0.03倍モル量以下であることがさらに好ましく、0倍モル量であること、すなわち、組成物(1)は架橋剤(X)を含有しないことが、特に好ましい。架橋剤(X)の含有量が前記上限値以下であることで、アルミニウム材の黒変を防止する効果が、より高くなる。
【0077】
[添加剤(Z)]
前記添加剤(Z)としては、例えば、カップリング剤、密着付与剤、消泡剤、酸化防止剤等の、当該分野で公知の汎用添加剤等が挙げられる。
【0078】
組成物(1)が含有する添加剤(Z)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0079】
組成物(1)における、添加剤(Z)の含有量は、添加剤(Z)の種類に応じて適宜調節でき、特に限定されない。
【0080】
[溶媒]
前記溶媒を含有する組成物(1)は、その取り扱い性が良好である。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、溶質を溶解させるための、常温で液状の成分と、分散質を分散させるための分散媒として機能する、常温で液状の成分と、の両方を包含する概念である。また、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0081】
前記溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n―プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物);トルエン、キシレン等の炭化水素等が挙げられる。
【0082】
組成物(1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0083】
組成物(1)における、組成物(1)の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合([組成物(1)の溶媒以外の成分の総含有量(質量部)]/[組成物(1)の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、10~10000ppmであることが好ましく、50~5000ppmであることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、アルミニウム材をより効率的に表面処理できる。前記割合が前記上限値以下であることで、組成物(1)の取り扱い性がより高くなる。
【0084】
組成物(1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)の合計含有量の割合(([組成物(1)のアミノ樹脂(A)の含有量(質量部)]+[組成物(1)の酸触媒(B)の含有量(質量部)]+[組成物(1)の界面活性剤(C1)の含有量(質量部)]+[組成物(1)の界面活性剤(C2)の含有量(質量部)])/[組成物(1)の溶媒以外の全ての成分の総含有量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果がより高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
組成物(1)が界面活性剤(C1)を含有しない場合には、上記の「組成物(1)の界面活性剤(C1)の含有量」は0質量部である。
組成物(1)が界面活性剤(C2)を含有しない場合には、上記の「組成物(1)の界面活性剤(C2)の含有量」は0質量部である。
【0085】
<組成物(組成物(1))の製造方法>
組成物(1)は、アミノ樹脂(A)と、酸触媒(B)と、必要に応じて他の成分(D1)と、を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま組成物(1)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを組成物(1)としてもよい。
【0086】
配合成分の混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択できる。
【0087】
上述の製造方法において、組成物(1)を得るまでの各工程における温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、5~80℃であってもよい。そして、前記温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節できる。
【0088】
上述の製造方法において、配合成分の添加及び撹拌を行うときの合計時間(添加時間及び撹拌時間の合計)は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、10分~12時間であってもよい。
【0089】
<<組成物(組成物(2))>>
本発明の一実施形態に係る組成物(本明細書においては、「組成物(2)」と称することがある)は、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有し、前記界面活性剤(C1)が、水酸基含有脂肪酸と、グリセリンと、のエステル(ヒドロキシアシルグリセロール)における1個又は2個以上の前記水酸基が、下記一般式(i):
-O(R11O)nH (i)
(式中、nは2以上の整数であり;R11はアルキレン基であり、n個のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表される基で置換された構造を有する(ただし、2個以上の前記水酸基が前記一般式(i)で表される基で置換されている場合、これら2個以上の前記一般式(i)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい)、ノニオン界面活性剤であり、前記界面活性剤(C2)が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基のいずれか一方又は両方を有するノニオン界面活性剤である。
本実施形態の組成物(組成物(2))でアルミニウム材を表面処理することにより、アルミニウム材の加熱時における黒変を防止でき、さらに、アルミニウム材の濡れ性を向上させることができる。すなわち、組成物(2)は、アルミニウム材に対して、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことが可能である。
【0090】
組成物(2)は、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)に加え、さらに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を必須成分として含有し、さらに、その用途がアルミニウム材の表面処理用に限定されない点を除いて、先に説明した組成物(1)と同じである。例えば、組成物(2)が含有するアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)は、それぞれ、組成物(1)が含有するアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)と同じである。そして、組成物(2)が含有する界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)は、それぞれ、組成物(1)が含有していてもよい界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)と同じである。
換言すると、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有する組成物(1)と、アルミニウム材の表面処理用である組成物(2)は、同一である。
【0091】
組成物(2)は、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有する組成物(1)と同じであってよい。
組成物(2)は、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有する組成物(1)と同様の効果を奏する。
【0092】
組成物(2)は、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)以外に、さらに、これら(アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)、界面活性剤(C2))のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(D2)」と称することがある)を含有していてもよい。
【0093】
組成物(2)が含有する前記他の成分(D2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0094】
組成物(2)が含有する他の成分(D2)としては、例えば、組成物(1)が含有するものとして先に説明した他の成分(D1)から、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を除いた成分が挙げられる。すなわち、他の成分(D2)としては、例えば、他の界面活性剤(Y)、架橋剤(X)、添加剤(Z)及び溶媒等が挙げられる。
【0095】
組成物(2)がアミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)、界面活性剤(C2)、及び他の成分(D2)を含有する態様は、それぞれ、組成物(1)がアミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)、界面活性剤(C2)、並びに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)以外の他の成分(D1)を含有する態様と同じである。
【0096】
組成物(2)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アミノ樹脂(A)、酸触媒(B)、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)の合計含有量の割合(([組成物(2)のアミノ樹脂(A)の含有量(質量部)]+[組成物(2)の酸触媒(B)の含有量(質量部)]+[組成物(2)の界面活性剤(C1)の含有量(質量部)]+[組成物(2)の界面活性剤(C2)の含有量(質量部)])/[組成物(2)の溶媒以外の全ての成分の総含有量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果と濡れ性向上効果がより高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0097】
<組成物(組成物(2))の製造方法>
組成物(2)は、必須の配合成分が異なる点を除けば、先に説明した組成物(1)の場合と同じ方法で製造できる。
【0098】
<<表面処理アルミニウム材>>
本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材と、前記アルミニウム材の表面に設けられた処理層と、を備えており、前記処理層が、上述の本発明の一実施形態に係る組成物の反応物である。
アルミニウム材の、組成物(1)の反応物である処理層(組成物(1)から形成された処理層)が設けられている領域においては、その加熱時における黒変が防止される。
アルミニウム材の、組成物(2)の層が形成されている領域においては、その濡れ性が向上しているため、組成物(2)によって、アルミニウム材の表面がより均一に被覆される。その結果、アルミニウム材の、組成物(2)の反応物である処理層(組成物(2)から形成された処理層)が設けられている領域においては、その加熱時における黒変が高い均一性で防止される。
【0099】
組成物(1)の反応物には、例えば、アミノ樹脂(A)の自己縮合物が含まれると推測される。
組成物(1)が界面活性剤(C1)を含有する場合には、組成物(1)の反応物には、例えば、アミノ樹脂(A)の自己縮合物と、アミノ樹脂(A)及び界面活性剤(C1)の縮合物が含まれると推測される。
組成物(1)が界面活性剤(C2)を含有する場合には、組成物(1)の反応物には、例えば、アミノ樹脂(A)の自己縮合物と、アミノ樹脂(A)及び界面活性剤(C2)の縮合物が含まれると推測される。
組成物(2)の反応物には、例えば、アミノ樹脂(A)の自己縮合物と、アミノ樹脂(A)及び界面活性剤(C1)の縮合物と、アミノ樹脂(A)及び界面活性剤(C2)の縮合物が含まれると推測される。
【0100】
前記表面処理アルミニウム材におけるアルミニウム材は、アルミニウムからなるか、又はアルミニウムを主たる構成材料とする。
アルミニウム材における、アルミニウム材の総質量に対する、アルミニウムの含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。一方、前記割合は、100質量%以下である。
【0101】
アルミニウム材の形状は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
アルミニウム材としては、形状の点で分類すると、例えば、アルミ缶、アルミカップ、アルミ蓋、アルミキャップ等の各種アルミニウム成形体が挙げられる。
【0102】
アルミニウム材の厚さは、0.1~1mmであることが好ましく、0.15~0.8mmであることがより好ましく、0.2~0.7mmであることが特に好ましい。このような厚さのアルミニウム材は、汎用性が高い点で好ましい。
【0103】
表面処理アルミニウム材における処理層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。処理層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0104】
本明細書においては、処理層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0105】
処理層の厚さは、0.1~100nmであることが好ましく、0.2~80nmであることがより好ましく、0.3~70nmであることが特に好ましい。処理層の厚さが前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変を防止する効果が、より高くなる。処理層の厚さが前記上限値以下であることで、処理層の厚さが過剰となることが避けられる。
ここで、「処理層の厚さ」とは、処理層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる処理層の厚さとは、処理層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0106】
処理層中のアミノ樹脂(A)に由来する構造の量は、0.2~200mg/m2であることが好ましく、0.4~160mg/m2であることがより好ましく、0.6~140mg/m2であることが特に好ましい。アミノ樹脂(A)に由来する構造の量が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変を防止する効果が、より高くなる。アミノ樹脂(A)に由来する構造の量が前記上限値以下であることで、処理層の厚さが過剰となることが避けられる。
本明細書において、「処理層中のアミノ樹脂(A)に由来する構造」とは、アミノ樹脂(A)中の構造のうち、処理層においても、原子間の結合が切断されることなく維持されている構造を意味し、例えば、アミノ樹脂(A)の自己縮合物の場合であれば、アミノ樹脂(A)中の、縮合によって除かれる水素原子(-H)と水酸基(-OH)を除いた構造を意味する。
【0107】
図1は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の一例を模式的に示す拡大断面図である。
なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0108】
ここに示す表面処理アルミニウム材1は、アルミニウム材11と、アルミニウム材11の 表面に設けられた処理層12と、を備えて、構成されている。
アルミニウム材11は、全体がプレート状であるか、又は一部がプレート状であり、そのプレート状部位の一方の面(表面)11aに、処理層12を備えている。
一方、アルミニウム材11の他方の面(表面)11bは、前記一方の面11aとは反対側の面である。
アルミニウム材11の前記一方の面11a及び他方の面11bは、それぞれ、平面であってもよいし、曲面であってもよいし、凹凸面であってもよく、その形状は特に限定されない。
【0109】
処理層12は、組成物(1)又は組成物(2)の反応物である。
【0110】
アルミニウム材11の前記一方の面11aは、黒変の防止対象であり、処理層12で被覆されていることによって、黒変が防止される。
一方、アルミニウム材11の前記他方の面11bは、黒変の防止対象ではなく、処理層を備えていない。
【0111】
例えば、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、アルミニウム材11の一方の面11aは、底面と、側面と、内表面(内容物を充填する側の面)と、のいずれであってもよい。
【0112】
本明細書においては、特に断りのない限り、アルミ缶の底面とアルミ缶の側面は、いずれも、アルミ缶の外側の面であり、換言するとそれぞれ、アルミ缶の外底面、アルミ缶の外側面であるといえる。そして、アルミ缶の内表面は、アルミ缶の内容物を充填する側の面全般を意味し、アルミ缶の内側の底面(換言すると内底面)とアルミ缶の内側の側面(換言すると内側面)は、いずれもアルミ缶の内表面である。
【0113】
図2は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0114】
ここに示す表面処理アルミニウム材2は、アルミニウム材11と、アルミニウム材11の一方の面11aに設けられた第1処理層121と、アルミニウム材11の他方の面11bに設けられた第2処理層122と、を備えて、構成されている。
【0115】
第1処理層121及び第2処理層122はいずれも、組成物(1)又は組成物(2)の反応物である。
表面処理アルミニウム材2において、第1処理層121及び第2処理層122は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0116】
アルミニウム材11の一方の面11aは、黒変の防止対象であり、第1処理層121で被覆されていることによって、黒変が防止される。
アルミニウム材11の前記他方の面11bも、黒変の防止対象であり、第2処理層122で被覆されていることによって、黒変が防止される。
【0117】
表面処理アルミニウム材2は、アルミニウム材11の他方の面11bに第2処理層122を備えている点を除けば、
図1に示す表面処理アルミニウム材1と同じである。
【0118】
本実施形態の表面処理アルミニウム材は、
図1~
図2に示すものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、
図1~
図2に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、
図1~
図2に示すアルミニウム材は、全体がプレート状であるか、又は一部がプレート状であるが、アルミニウム材の形状はこれに限定されず、例えば、全体又は一部がプレート状以外の形状であってもよいし、全体又は一部が、プレート状とプレート状以外の形状を共に有していてもよい。
【0119】
<<表面処理アルミニウム材の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の製造方法は、上述の本発明の一実施形態に係る組成物を用いて、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の層を形成する工程(I)と、前記組成物の層を加熱処理することにより、前記アルミニウム材の表面に、前記組成物の反応物である前記処理層を形成する工程(II)と、を有する。
【0120】
図3は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の製造方法の一例を模式的に示す拡大断面図である。ここでは、表面処理アルミニウム材が
図1に示す表面処理アルミニウム材1である場合を例に挙げて、その製造方法について説明する。
【0121】
<工程(I)>
本実施形態の製造方法の工程(I)においては、前記組成物(組成物(1)又は組成物(2))を用いて、
図3(a)に示すように、アルミニウム材11の一方の面(表面)11aに、前記組成物の層120を形成する。
【0122】
工程(I)においては、アルミニウム材11の一方の面11aに、前記組成物を付着させることにより、組成物の層120を形成できる。
アルミニウム材11の一方の面11aに、前記組成物を付着させる方法は、公知の方法でよく、前記組成物又はアルミニウム材11の種類に応じて適宜選択できる。例えば、前記組成物をアルミニウム材11に噴霧(スプレー)する方法、各種コーターを用いて前記組成物をアルミニウム材11に塗工する方法、又は前記組成物中にアルミニウム材11を浸漬する方法等によって、アルミニウム材11の一方の面11aに、前記組成物を付着させることができる。
【0123】
これらの中でも、前記組成物をアルミニウム材11に付着させる方法は、前記組成物をアルミニウム材11に噴霧する方法であることが好ましい。前記組成物をアルミニウム材11に噴霧することによって、アルミニウム材11の目的とする箇所に、緻密で均一な組成物の層120を形成できる。この場合、前記組成物は、例えば、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミニウム材11に噴霧してもよい。
【0124】
前記組成物をアルミニウム材11に噴霧(スプレー)する方法は、アルミニウム材11がアルミ缶である場合に、より好ましい方法である。前記組成物をアルミ缶に噴霧することによって、アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、緻密で均一な組成物の層120を形成できる。そして、この場合も前記組成物は、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミ缶に噴霧できる。すなわち、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記組成物を噴霧することが好ましい。
【0125】
スプレー式ウォッシャーを用いて、前記組成物をアルミニウム材11に噴霧した場合には、前記組成物の層120を形成しなかった前記組成物は、回収することができる。回収した前記組成物は、再度、アルミニウム材11に噴霧してもよい。
【0126】
アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、工程(I)においては、スプレー式ウォッシャーを用いて、前記アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記組成物を噴霧することにより、前記組成物の層120を形成するとともに、前記組成物の層を形成しなかった前記組成物を回収することが好ましい。これにより、アルミ缶に緻密で均一な組成物の層120を形成できるだけでなく、さらに、余剰の前記組成物を回収できる。
【0127】
前記組成物が、アルミニウム材の濡れ性を向上させることができる場合には、工程(I)においては、アルミニウム材11の一方の面11aを、前記組成物によってより均一に被覆できる。
さらに、前記組成物が、その泡立ちを抑制できる場合には、工程(I)においては、アルミニウム材11の一方の面11aに、前記組成物の層を高い均一性で形成できる。
【0128】
アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか二以上に、前記組成物を噴霧する場合に限らず、アルミニウム材11のいずれか二以上の表面に前記組成物を付着させる場合には、対象となる二以上の表面の一部又は全てに、同時に前記組成物を付着させてもよいし、対象となる二以上の表面の全てに、同時ではなく段階的に、前記組成物を付着させてもよい。
例えば、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、アルミ缶の底面、側面及び内表面の全てに同時に、前記組成物を付着させても(噴霧しても)よいし、底面、側面及び内表面のいずれか二のみに同時に、前記組成物を付着させても(噴霧しても)よいし、底面、側面及び内表面に段階的に、前記組成物を付着させてもよい。
アルミニウム材11のいずれか二以上の表面に段階的に、前記組成物を付着させる場合には、前記組成物を付着させる表面の順番は、特に限定されない。
【0129】
工程(I)で用いる前記組成物(組成物(1)又は組成物(2))において、前記組成物の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、10~10000ppmであることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、組成物の層120をより効率的に形成できる。前記割合が前記上限値以下であることで、組成物(1)の取り扱い性がより高くなる。より具体的には、前記組成物をアルミニウム材11に付着させるときに、その方法によらず、前記組成物をより容易にアルミニウム材11に付着させることができる。例えば、用意した前記組成物の前記割合が、10000ppmを超えている場合には、溶媒を添加して希釈することにより、前記組成物の前記割合を10000ppm以下とすることが好ましい。このときに添加する溶媒としては、例えば、組成物(1)が含有していてもよい前記溶媒と同じものが挙げられる。
【0130】
<工程(II)>
本実施形態の製造方法の工程(II)においては、前記組成物の層120を加熱処理することにより、
図3(b)に示すように、アルミニウム材11の一方の面(表面)11aに、前記組成物の反応物である処理層12を形成する。これにより、目的とする表面処理アルミニウム材1が得られる。
【0131】
工程(II)における、組成物の層120の加熱処理時の温度(加熱温度)は、90~240℃であることが好ましく、100~230℃であることがより好ましく、140~210℃であることが特に好ましい。加熱温度が前記下限値以上であることで、処理層12の形成量がより多くなる。加熱温度が前記上限値以下であることで、処理層12の劣化を抑制する効果が高くなる。
【0132】
工程(II)における、組成物の層120の加熱処理の時間(加熱時間)は、特に限定されず、加熱温度等を考慮して、適宜調節できる。
通常は、加熱時間は、3~15分であることが好ましく、4~12分であることがより好ましく、5~10分であることが特に好ましい。加熱時間が前記下限値以上であることで、処理層12の形成量がより多くなる。加熱時間が前記上限値以下であることで、工程(II)に要する時間を短縮できる。
このような加熱時間は、加熱温度が上記の数値範囲である場合に、特に好ましい。
【0133】
表面処理アルミニウム材1においては、前記組成物を用いていることで、黒変が防止される。
さらに、工程(I)においては、前記組成物を用いていることで、アルミニウム材11の一方の面11aを、前記組成物によってより均一に被覆することによって、表面処理アルミニウム材1において、黒変を高い均一性で防止することが可能であり、アルミニウム材11の一方の面11aに、前記組成物の層を高い均一性で形成することによって、表面処理アルミニウム材1において、黒変防止処理の効果を高くすることも可能である。
【0134】
表面処理アルミニウム材1の製造方法は、必要に応じて、前記工程(I)と前記工程(II)以外に、これらの工程とは異なる他の工程を有していてもよい。前記他の工程の種類は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。前記他の工程を行うタイミングも、前記他の工程の種類に応じて、適宜選択できる。
【0135】
ここまでは、表面処理アルミニウム材として、
図1に示す表面処理アルミニウム材1を例に挙げて、その製造方法について説明したが、表面処理アルミニウム材1以外の表面処理アルミニウム材も、上記と同様の方法で製造できる。このとき、該当する表面処理アルミニウム材の製造方法は、その表面処理アルミニウム材と、
図1に示す表面処理アルミニウム材1と、の相違点に基づいて、適切なタイミングで、適切な前記他の工程を有していてもよい。
【0136】
例えば、
図2に示す表面処理アルミニウム材2を製造する場合、アルミニウム材11の一方の面11aと他方の面11bに同時に、前記組成物を付着させてもよいし、アルミニウム材11の一方の面11aと他方の面11bに段階的に、前記組成物を付着させてもよい。
【実施例0137】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0138】
各実施例及び比較例で用いた原料を以下に示す。
[アミノ樹脂(A)]
(A)-1:メラミン樹脂(DIC社製「ウォーターゾール(登録商標)S-695」)
[酸触媒(B)]
(B)-1:アルキルリン酸(KING INDUSTRIES社製「NACURE 4000」)
[界面活性剤(C1)]
(C1)-1:下記一般式(c)-11-1で表される化合物(Clariant社製「Emulsogen EL360」、分子量2100、HLB値13)。
【0139】
【0140】
[界面活性剤(C2)]
(C2)-1:下記一般式(c)-21-1で表される化合物(Clariant社製「GENAPOL X 050」、分子量405、HLB値10.6)。
【0141】
【0142】
[架橋剤(X)]
(X)-1:ポリイソシアネート(DIC社製「DNW-5000」)
[他の界面活性剤(Y)]
(Y)-1:下記一般式(y)-1-1で表される化合物(Clariant社製「Emulsogen COL080」、分子量688)。
【0143】
【0144】
[実施例1]
<<組成物の製造>>
常温下で、アミノ樹脂(A)-1(3モル)、酸触媒(B)-1(2モル)、界面活性剤(C1)-1(9モル)、界面活性剤(C2)-1(1モル)及び水(0.2L)を配合し、混合することで、組成物(2)として組成物(2)-1を得た。ここに示す水以外の各成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。得られた組成物(2)-1における、組成物(2)-1の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0145】
<<表面処理アルミニウム材の製造>>
スプレー式ウォッシャーを用いて、上記で得られた組成物(2)-1を、アルミ缶(外径66mm、高さ210mm)の底面に噴霧することにより、アルミ缶の底面に組成物(2)-1の層を形成するとともに、組成物(2)-1の層を形成しなかった組成物(2)-1を回収した(工程(I))。
次いで、組成物(2)-1の層を180℃で10分間加熱処理することにより、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成した(工程(II))。
以上により、組成物(2)-1を用いて、底面に処理層を備えたアルミ缶(以下、「底面処理アルミ缶」と称することがある)を得た。
【0146】
<<組成物の評価>>
<組成物による表面処理アルミニウム材での黒変防止効果の評価>
上記で得られた底面処理アルミ缶(底面を表面処理済みのアルミ缶)を、さらに85℃以上で30分間加熱処理した。次いで、この加熱処理後のアルミ缶の、表面処理済みの底面を目視観察し、下記基準に従って、組成物(2)-1による底面処理アルミ缶での黒変防止効果を評価した。結果を表1中の「黒変防止効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:アルミ缶の表面処理済みの底面は、加熱処理によって全く黒変せず、組成物の黒変防止効果が高かった。
B:アルミ缶の表面処理済みの底面は、加熱処理によって軽度ではあるが黒変しており、組成物の黒変防止効果が「A」の場合よりも劣っていた。
C:アルミ缶の表面処理済みの底面は、加熱処理によって顕著に黒変しており、組成物の黒変防止効果が認められなかった。
【0147】
<組成物による表面処理アルミニウム材の濡れ性向上効果の評価>
上記で得られた組成物(2)-1を、常温下でアルミ板の表面に滴下し、バーコーターを用いて塗り広げ、180℃で5分間加熱処理した。次いで、この表面処理済みのアルミ板を目視観察し、下記基準に従って、組成物(2)-1による濡れ性向上効果を評価した。結果を表1中の「濡れ性向上効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:アルミ板の表面が均一に濡れていて、ハジキが認められず、組成物の濡れ性向上効果が高かった。
B:アルミ板の表面が濡れているが、ハジキが認められ、組成物の濡れ性向上効果が「A」の場合よりも劣っていた。
C:アルミ板の表面で著しいハジキが認められ、組成物の濡れ性向上効果が認められなかった。
【0148】
<組成物の泡立ち抑制効果の評価>
上記で得られた組成物(2)-1(0.2L)を、容量0.5Lの容器中で、常温下で、撹拌速度1500rpmで5分間撹拌した後、静置した。そして、下記基準に従って、組成物(2)-1の泡立ち抑制効果を評価した。結果を表1中の「泡立ち抑制効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:容器中のすべての泡が、容器の150mL以下の目盛りの領域中に収まっており、組成物の泡立ち抑制効果が高かった。
B:容器中の一部の泡が、容器の150mL超250mL以下の目盛りの領域中に存在し、組成物の泡立ち抑制効果が「A」の場合よりも劣っていた。
C:容器中の一部の泡が、容器の250mL超の目盛りの領域中に存在し、組成物の泡立ち抑制効果が低かった。
【0149】
<<組成物の製造、表面処理アルミニウム材の製造、組成物の評価>>
[実施例2]
アミノ樹脂(A)-1の配合量を、3モルに代えて10モルとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(2)-2を製造した。得られた組成物(2)-2における、組成物(2)-2の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0150】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(2)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(2)-2を評価した。結果を表1に示す。
【0151】
[実施例3]
界面活性剤(C1)-1の配合量を9モルに代えて8モルとした点と、界面活性剤(C2)-1の配合量を1モルに代えて2モルとした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(2)-3を製造した。得られた組成物(2)-3における、組成物(2)-3の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0152】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(2)-3を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(2)-3を評価した。結果を表1に示す。
【0153】
なお、上述の組成物(2)-1、(2)-2、及び(2)-3は、いずれも組成物(1)であるともいえるが、便宜上、組成物(2)として記載した。
【0154】
[実施例4]
界面活性剤(C1)-1(9モル)と、界面活性剤(C2)-1(1モル)と、を配合しなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(1)-1を製造した。得られた組成物(1)-1における、組成物(1)-1の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0155】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(1)-1を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(1)-1を評価した。結果を表1に示す。
【0156】
[比較例1]
界面活性剤(C1)-1の配合量を9モルに代えて5モルとした点と、界面活性剤(C2)-1の配合量を1モルに代えて5モルとした点と、酸触媒(B)-1を配合しなかった点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(9)-1を製造した。得られた組成物(9)-1における、組成物(9)-1の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0157】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(9)-1を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(9)-1を評価した。結果を表1に示す。
【0158】
[比較例2]
界面活性剤(C1)-1(9モル)に代えて、他の界面活性剤(Y)-1(9モル)を配合した点と、酸触媒(B)-1を配合しなかった点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(9)-2を製造した。得られた組成物(9)-2における、組成物(9)-2の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0159】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(9)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(9)-2を評価した。結果を表1に示す。
【0160】
[比較例3]
アルミ缶の底面を処理する組成物として、組成物(2)-1に代えて、界面活性剤(C1)-1を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(すなわち界面活性剤(C1)-1)を評価した。結果を表1に示す。
【0161】
[比較例4]
アミノ樹脂(A)-1(3モル)に代えて、架橋剤(X)-1(3モル)を配合した点と、酸触媒(B)-1の配合量を2モルに代えて1モルとした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(9)-3を製造した。得られた組成物(9)-3における、組成物(9)-3の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0162】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(9)-3を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(9)-3を評価した。結果を表1に示す。
【0163】
[比較例5]
アミノ樹脂(A)-1(3モル)と、酸触媒(B)-1(2モル)と、を配合しなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、組成物(9)-4を製造した。得られた組成物(9)-4における、組成物(9)-4の総質量に対する、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)の割合は、2000ppmであった。
【0164】
組成物(2)-1に代えて、上記で得られた組成物(9)-4を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、アルミ缶の底面に処理層(厚さ2nm)を形成し、底面処理アルミ缶を製造して、組成物(9)-4を評価した。結果を表1に示す。
【0165】
【0166】
上記結果から明らかなように、実施例1~4においては、アルミ缶の表面処理済みの底面において、黒変が顕著に防止されていた。実施例1~4においては、組成物(2)-1、(2)-2、(2)-3、及び(1)-1の泡立ちが顕著に抑制されており、アルミ缶の底面に、これら組成物の層を正常に形成でき、処理層を高い均一性で形成できた。このように、実施例1~4においては、処理層を高い均一性で形成できたことによって、アルミ缶の表面処理済みの底面において、高い黒変防止効果が得られた。実施例1~4における、組成物(2)-1、(2)-2、(2)-3、及び(1)-1はいずれも、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有していた。
【0167】
さらに、実施例1~4のうち、実施例1~3においては、アルミ缶の濡れ性が顕著に向上しており、これら表面処理済みのアルミ缶は、より好ましい特性を有していた。実施例1~3における、組成物(2)-1、(2)-2、及び(2)-3は、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)に加え、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)も含有していた。実施例4における組成物(1)-1は、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を含有していなかった。
【0168】
実施例1~4から、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)を含有する組成物は、アルミニウム材の濡れ性を向上させたい場合には、さらに、界面活性剤(C1)及び界面活性剤(C2)を併用することにより、それが可能であること、すなわち、黒変防止処理と濡れ性向上処理を同時に行うことが可能となることを、確認できた。
【0169】
これに対して、比較例1、2、4及び5においては、アルミ缶の表面処理済みの底面において、黒変防止効果が劣っていた。比較例1~2においては、組成物(9)-1、及び(9)-2が酸触媒(B)を含有していなかった。比較例4においては、組成物(9)-3がアミノ樹脂(A)を含有していなかった。比較例5においては、組成物(9)-4がアミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)をともに含有していなかった。このように、比較例1、2、4及び5における、組成物(9)-1、(9)-2、(9)-3、及び(9)-4は、アミノ樹脂(A)及び酸触媒(B)のいずれか一方又は両方を含有していなかった。
【0170】
比較例3においては、他の実施例及び比較例とは異なり、アルミ缶の底面の処理に界面活性剤(C1)を用いたが、界面活性剤(C1)は泡立ちが顕著であり、そのままでは、実用的に使用できないものであった。比較例3においては、実用性を考慮せずに、アルミ缶の底面に処理層を形成した。その結果、アルミ缶の表面処理済みの底面において、黒変防止効果が劣っていた。
【0171】
さらに、比較例1~2は、比較例3~5よりもアルミ缶の濡れ性が劣っていた。比較例1においては、組成物(9)-1の界面活性剤(C1)の含有量が少なかった。比較例2においては、組成物(9)-2が界面活性剤(C1)を含有しておらず、アルミ缶の濡れ性が最も劣っていた。
1,2・・・表面処理アルミニウム材、11・・・アルミニウム材、11a・・・アルミニウム材の一方の面(表面)、11b・・・アルミニウム材の他方の面(表面)、12・・・処理層、121・・・第1処理層、122・・・第2処理層、120・・・組成物の層