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特開2023-147736磁石挿入装置、磁石挿入方法、回転電機用ロータの製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147736
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】磁石挿入装置、磁石挿入方法、回転電機用ロータの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055421
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 千尋
(72)【発明者】
【氏名】長田 浩
(72)【発明者】
【氏名】漆間 慎一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 孝一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 恵多
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】ワークに永久磁石を効率的に挿入する。
【解決手段】複数の軸方向孔を周方向に沿って有するワークを水平姿勢で支持する支持治具と、マガジンと、第1永久磁石を第1高さで支持する第1支持台と、第2永久磁石を第2高さで支持する第2支持台と、マガジンから払い出された第1永久磁石及び第2永久磁石を、ワークにおける挿入対象の一の軸方向孔に同時に第2方向に挿入する挿入治具と、を備え、支持治具は、挿入対象の一の軸方向孔における第1方向の一方側が他方側よりも低くなる姿勢で、ワークを挿入治具に対して位置付け、第2支持台は、第1支持台に対して第1方向の一方側から隣り合い、かつ、第2高さが第1高さよりも低い、磁石挿入装置が開示される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸方向孔を周方向に沿って有するワークを、複数の前記軸方向孔が水平方向に向く横向き姿勢で支持する支持治具と、
重力方向に交差する第1方向に並ぶ第1永久磁石及び第2永久磁石を、複数組、重力方向に積む態様で収容するマガジンと、
前記マガジンから払い出される前記第1永久磁石を第1高さで支持する第1支持台と、
前記マガジンから払い出される前記第2永久磁石を第2高さで支持する第2支持台と、
前記マガジンから払い出された前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石を、前記第1方向に交差する水平な第2方向に移動させることで、前記ワークにおける挿入対象の一の前記軸方向孔に同時に挿入する挿入治具と、を備え、
前記支持治具は、前記第2方向視で前記挿入対象の一の前記軸方向孔における前記第1方向の一方側が他方側よりも低くなる前記横向き姿勢で、前記ワークを前記挿入治具に対して位置付け、
前記第2支持台は、前記第1支持台に対して前記第1方向の前記一方側から隣り合い、かつ、前記第2高さが前記第1高さよりも低い、磁石挿入装置。
【請求項2】
前記挿入治具は、前記第1方向で前記第1支持台と前記第2支持台の間に配置される、請求項1に記載の磁石挿入装置。
【請求項3】
前記挿入治具、前記第1支持台、及び前記第2支持台は、前記横向き姿勢の前記ワークの中心軸を通る鉛直面に関して対称に、前記鉛直面の両側に配置される、請求項1又は2に記載の磁石挿入装置。
【請求項4】
回転電機用のロータを製造するための製造装置であって、
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の磁石挿入装置を含み、
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石は、前記ロータに用いられる、回転電機用ロータの製造装置。
【請求項5】
複数の軸方向孔を周方向に沿って有するワークを準備する工程と、
重力方向に交差する第1方向に並ぶ第1永久磁石及び第2永久磁石を、複数組、重力方向に積む態様で収容するマガジンを準備する工程と、
挿入治具を準備する工程と、
第1支持台と、前記第1支持台に対して前記第1方向の一方側から隣り合う第2支持台とを準備する工程と、
前記第1支持台を用いて、前記マガジンから払い出される前記第1永久磁石を第1高さで支持する第1支持工程と、
前記第2支持台を用いて、前記マガジンから払い出される前記第2永久磁石を、前記第1高さよりも低い第2高さで支持する第2支持工程と、
前記ワークを支持する支持治具を用いて、複数の前記軸方向孔が水平方向に向く前記ワークの横向き姿勢であって、前記第2方向視で挿入対象の一の前記軸方向孔における前記第1方向の前記一方側が他方側よりも低くなる前記横向き姿勢で、前記ワークを前記挿入治具に対して位置付ける位置付け工程と、
前記位置付け工程により位置付けられた前記ワークの前記挿入対象の一の前記軸方向孔に対して、前記マガジンから払い出された前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石を、前記挿入治具を用いて、前記第1方向に交差する水平な第2方向に移動させることで挿入する挿入工程とを含む、磁石挿入方法。
【請求項6】
前記位置付け工程は、前記ワークの中心軸を通る鉛直面に関して2つの前記挿入対象の前記軸方向孔が対称に位置する前記横向き姿勢で、前記ワークを前記挿入治具に対して位置付けることを含み、
前記鉛直面に関して対称に前記鉛直面の両側に配置される前記挿入治具、前記第1支持台、及び前記第2支持台を用いて、2つの前記挿入対象の前記軸方向孔に対する前記第1支持工程、前記第2支持工程及び前記挿入工程が実行される、請求項5に記載の磁石挿入方法。
【請求項7】
前記ワークは、前記軸方向孔の入り口側にテーパ形状を有する、請求項5又は6に記載の磁石挿入方法。
【請求項8】
回転電機用のロータを製造するための製造方法であって、
請求項5から7のうちのいずれか1項に記載の磁石挿入方法の各工程を含み、
前記ワークに挿入された前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石を、前記ロータの磁石孔内に挿入する工程を更に含む、回転電機用ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁石挿入装置、磁石挿入方法、回転電機用ロータの製造装置、及び回転電機用ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の軸方向孔を周方向に沿って有する円環状のワークを、複数の軸方向孔が水平方向に向く横向き姿勢で支持し、一の軸方向孔に対して1つずつ永久磁石を挿入する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2017-051058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、ワークに永久磁石を効率的に挿入することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、ワークに永久磁石を効率的に挿入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、複数の軸方向孔を周方向に沿って有するワークを、複数の前記軸方向孔が水平方向に向く横向き姿勢で支持する支持治具と、
重力方向に交差する第1方向に並ぶ第1永久磁石及び第2永久磁石を、複数組、重力方向に積む態様で収容するマガジンと、
前記マガジンから払い出される前記第1永久磁石を第1高さで支持する第1支持台と、
前記マガジンから払い出される前記第2永久磁石を第2高さで支持する第2支持台と、
前記マガジンから払い出された前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石を、前記第1方向に交差する水平な第2方向に移動させることで、前記ワークにおける挿入対象の一の前記軸方向孔に同時に挿入する挿入治具と、を備え、
前記支持治具は、前記第2方向視で前記挿入対象の一の前記軸方向孔における前記第1方向の一方側が他方側よりも低くなる前記横向き姿勢で、前記ワークを前記挿入治具に対して位置付け、
前記第2支持台は、前記第1支持台に対して前記第1方向の前記一方側から隣り合い、かつ、前記第2高さが前記第1高さよりも低い、磁石挿入装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、ワークに永久磁石を効率的に挿入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】製造対象の回転電機用ロータの一例を示す平面図である。
図2】本実施例による回転電機用ロータの製造装置(永久磁石挿入前の状態)の一例を概略的に示す側面図である。
図3】本実施例による回転電機用ロータの製造装置(永久磁石挿入中の状態)の一例を概略的に示す側面図である。
図4】ワークを概略的に示す平面図である。
図5】マガジン及び永久磁石と支持台との関係を示す側面図(X方向に視た側面図)である。
図6】挿入治具の単品状態を示す斜視図である。
図7】挿入治具により挿入されている2つの永久磁石の先端部とともに、ワークの一部を示す側面図である。
図8図7のラインA-Aに沿った概略的な断面図である。
図9図7のラインB-Bに沿った概略的な断面図である。
図10】支持台の段差形成機能を備えていない第1比較例の問題点の説明図である。
図11】支持台の段差形成機能を備えない代わりにマガジンを傾斜させる第2比較例の問題点の説明図である。
図12】水平面に対して傾斜した支持面を有する支持台を備える第2比較例の問題点の説明図である。
図13】支持台の段差形成機能を備えていない第1比較例の問題点の説明図である。
図14】本実施例の更なる効果の説明図であり、ワークを軸方向視で示す概略図である。
図14A】X2側から視た製造装置の一部を示すX方向視の正面図である。
図15】回転電機用ロータの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図16】変形例による製造装置を概略的に示す側面図(Y方向に視た側面図)である
図17】変形例によるマガジン及び永久磁石と支持台との関係を示す側面図(X方向に視た側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
以下で説明する回転電機用ロータの製造装置及び回転電機用ステータ製造方法は、任意の回転電機用ステータに適用可能である。以下では、好適な適用例として、車両の推進力を発生する動力源として機能できる回転電機用のステータ製造方法について説明する。この場合、回転電機は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用されてよい。
【0011】
図1は、本実施例による回転電機用ロータの製造装置及び回転電機用ロータの製造方法により製造されるのが好適な回転電機用ロータ1の一例を示す平面図である。
【0012】
回転電機用ロータ1は、中心軸(回転軸)Iまわりに回転可能である。回転電機用ロータ1のロータコア12は、中心軸Iまわりの円環状の形態である。ロータコア12は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板により形成される。ロータコア12の内部には、永久磁石16、17(図2参照)が埋め込まれる。すなわち、ロータコア12は、軸方向に貫通する磁石孔121を有し、磁石孔121内に永久磁石16、17が挿入され固定される。なお、変形例では、ロータコア12は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
【0013】
本実施例では、一の磁石孔121に対して2つの永久磁石16、17が挿入される。2つの永久磁石16、17は、周方向に隣接する態様で一の磁石孔121に配置されてよい。
【0014】
なお、図1に示す例では、一の磁極に対してd軸の両側に1つずつ磁石孔121が配置されるが、d軸を通る更なる磁石孔が設けられてもよい。また、内径側と外径側とにそれぞれd軸に対称に磁石孔を設ける構成であってもよく、磁石孔の配置態様は任意である。本実施例は、一の磁石孔に対して2つの永久磁石(又は3つ以上の永久磁石)が設けられる任意の構成に適用可能である。
【0015】
また、図1に示す例では、磁石孔121は矩形の形態であるが、周方向端部等に円弧形状等を有してもよい。また、本実施例では、永久磁石16、17は、直線状の形態(直方体)であることが好適であるが、軸方向視で円弧状の形態やD字状の形態等であってもよい。なお、本実施例では、一例として、2つの永久磁石16、17は、直線状の形態であり、かつ、互いに同一である。ただし、変形例では、2つの永久磁石16、17は、異なる形態を有してもよい。
【0016】
図2及び図3は、本実施例による回転電機用ロータの製造装置2の一例を概略的に示す側面図であり、図2は、永久磁石挿入前の状態(挿入治具50が準備位置に位置する状態)を示し、図3は、永久磁石挿入中の状態を示す。図4は、ワーク60を概略的に示す平面図である。図4には、ワーク60の一部の拡大図として、Q4部の拡大図が併せて示されている。図5は、マガジン30及びそこに収容される永久磁石16、17と支持台41、42との関係を示す側面図(X方向に視た側面図)である。図6は、挿入治具50の単品状態を示す斜視図である。
【0017】
図2等には、互いに直交する3方向であるX方向(第2方向の一例)、Y方向(第1方向の一例)、及びZ方向が定義されている。以下では、Z方向を鉛直(重力)方向に沿った上下方向とし、Z1側を上側とし、Z2側を下側とする。
【0018】
製造装置2は、以下で説明するように、ワーク60に永久磁石16、17を挿入する機能を有する。ワーク60とは、永久磁石16、17を挿入する対象物である。また、ワーク60は、回転電機用ロータ1を形成するためのワーク60であり、ロータコア12に対応した円環状の形態を有する。
【0019】
製造装置2は、支持治具20と、マガジン30と、支持台41、42と、挿入治具50とを含む。また、本実施例では、一例として、ワーク60は、ロータコア12とは異なるリング状の治具であり、製造装置2の構成要素となる。ただし、変形例ではワーク60は、ロータコア12自体であってもよい。以下では、特に言及しない限り、マガジン30と、支持台41、42と、挿入治具50とについては、それぞれ、1つについて説明するが、後述するように、一のワーク60に対して、マガジン30と、支持台41、42と、挿入治具50とが、2つ以上設けられてもよい。
【0020】
支持治具20は、円環状のワーク60を支持する。以下では、ワーク60は、回転電機用ロータ1の中心軸Iと同じ中心軸Iを有するものとし、当該中心軸Iを基準に、ワーク60の軸方向、径方向、及び周方向を定義する。ワーク60は、複数の軸方向孔62を周方向に沿って有する。図4には、軸方向視で複数の軸方向孔62が示されている。複数の軸方向孔62のそれぞれには、後述する挿入治具50により永久磁石16、17が挿入されることになる。複数の軸方向孔62は、軸方向に永久磁石16、17が挿入可能な形態を有し、挿入される永久磁石16、17の並び方向に長手方向(軸方向視での長手方向)を有する。複数の軸方向孔62は、軸方向視で、ロータコア12の磁石孔121と略同じ形態又は厳密に同じ形態を有してよい。なお、本実施例による製造装置2は、複数の軸方向孔62に永久磁石16、17を同時に挿入するのではなく、複数の軸方向孔62の一部(例えば、1つ又は2つ)を変化させながら、一部ずつ永久磁石16、17を挿入していく。以下では、“挿入対象の軸方向孔62”とは、複数の軸方向孔62のうちの、その時点を基準として次に永久磁石16、17を挿入する対象の軸方向孔62、又は、現に永久磁石16、17を挿入している対象の磁石孔121を表す。
【0021】
支持治具20は、軸方向孔62が水平方向(本実施例ではX方向)に向く姿勢でワーク60を支持する。すなわち、支持治具20は、ワーク60の軸方向が水平方向(本実施例ではX方向)になる姿勢でワーク60を支持する。以下では、このようなワーク60の姿勢(ワーク60の軸方向が水平方向になる姿勢)を、「横向き姿勢」とも称する。図2及び図3では、支持治具20が横向き姿勢でワーク60を支持する状態が示されている。なお、支持治具20は、Y軸に沿った回転軸まわりに回転可能であってよく、ワーク60の姿勢を、横向き姿勢と、ワーク60の軸方向が上下方向になる姿勢(以下、「上向き姿勢」とも称する)との間で変化させることが可能であってもよい。
【0022】
本実施例では、支持治具20は、ワーク60の挿入対象の一の軸方向孔62が、後述する挿入治具50の上部に対してX方向で正対する横向き姿勢でワーク60を支持する。挿入対象の一の軸方向孔62が挿入治具50の上部に対してX方向で正対する状態では、挿入対象の一の軸方向孔62への、後述する挿入治具50による永久磁石16、17の挿入が可能である。換言すると、横向き姿勢のワーク60の複数の軸方向孔62のうち、挿入治具50の上部に対してX方向で正対する一の軸方向孔62が、“挿入対象の一の軸方向孔62”となる。
【0023】
本実施例では、挿入対象の一の軸方向孔62が挿入治具50の上部に対してX方向で正対する状態では、ワーク60における挿入対象の一の軸方向孔62の長手方向(軸方向視での長手方向)が、略水平方向に延在する。すなわち、支持治具20は、ワーク60における挿入対象の一の軸方向孔62の長手方向が略水平方向となる横向き姿勢で、ワーク60を挿入治具50に対して位置付ける。図4のQ4部の拡大図には、挿入対象の一の軸方向孔62が示されている。挿入対象の一の軸方向孔62の長手方向が略水平方向に延在する状態とは、図4のQ4部の拡大図に示すように、挿入対象の一の軸方向孔62の長手方向と水平方向とのなす角度αが0度よりもわずかに大きい状態を意味する。角度αは、例えば5度以下の比較的小さい角度であり、例えば約3度であってよい。以下、このような水平方向に対して角度αをなす長手方向を有する挿入対象の一の軸方向孔62を、単に「傾斜した軸方向孔62」とも称する。なお、図4のQ4部の拡大図では、挿入対象の一の軸方向孔62は、軸方向視で長方形の形態であるが、上述したように軸方向孔62の形態は任意である。
【0024】
このように、本実施例では、支持治具20は、軸方向孔62(挿入対象の一の軸方向孔62)が挿入治具50の上部に対してX方向で正対し、かつ、X方向視(軸方向視)で挿入対象の一の軸方向孔62におけるY方向の一方側(図4では、Y2側)が他方側(Y1側)よりも低くなる横向き姿勢で、ワーク60を挿入治具50に対して位置付けることができる。
【0025】
支持治具20は、X軸に沿った回転軸まわりに回転可能であってよく、ワーク60の横向き姿勢を維持しつつ、挿入治具50の上部に対してX方向で正対する軸方向孔62を変化させることが可能であってもよい。この場合、支持治具20は、中心軸Iと同心状の回転軸まわりに回転することで、挿入対象の一の軸方向孔62を順に変化させることができる。
【0026】
マガジン30は、Y方向に並ぶ2つの永久磁石16、17を、複数組、重力方向に積む態様で収容する。
【0027】
マガジン30は、下端側が下方に開口しており、下方には支持台41、42が配置される。マガジン30内の最も下方に位置する2つの永久磁石16、17は、それぞれ支持台41、42上へと落下することで、マガジン30から払い出される(排出される)。最も下方の2つの永久磁石16、17が支持台41、42上へと落下すると、マガジン内の各永久磁石16、17は、自重により、それぞれ1つ分だけ下方に移動する。このようにして、マガジン30内の永久磁石16、17は、重力を利用して、下方から順に支持台41、42上へと払い出されることができる。
【0028】
マガジン30は、Y方向で永久磁石16、17の両側に延在する側壁部31、32を有し、側壁部31、32は、永久磁石16、17の最大積層高さに対応した高さまで延在する。側壁部31、32の下端は、支持台41、42に対して必要なクリアランスだけ残して近接してよい。具体的には、Y1側の側壁部31は、Y方向視で、マガジン30から払い出されたY1側の永久磁石16(支持台41に支持されている永久磁石16)と重なり、Y2側の側壁部32は、Y2側の永久磁石17(支持台42に支持されている永久磁石17)と重なる。このようなマガジン30の側壁部31、32の下端は、マガジン30から払い出された永久磁石16、17のY方向の移動を規制する機能(以下、「Y方向の位置規制機能」とも称する)も有する。Y方向の位置規制機能は、後述する挿入治具50によりX方向に押し出されているときの永久磁石16、17に対して機能する。
【0029】
支持台41、42は、マガジン30の下方に配置される。本実施例では、支持台41、42は、固定されており、マガジン30に対して移動しない。なお、マガジン30も設備に対して移動しないが、取替等は可能であってよい。
【0030】
支持台41は、マガジン30の下端の開口に対して下側から上下方向に対向する支持面410を有する。支持台41は、マガジン30の下端の開口から払い出される永久磁石16を支持面410上で支持する。支持面410は、水平面内に延在するが、支持面410の周辺部には凸部等が形成されてもよい。
【0031】
支持台42は、マガジン30の下端の開口に対して下側から上下方向に対向する支持面420を有する。支持台42は、マガジン30の下端の開口から払い出される永久磁石17を支持面420上で支持する。支持面420は、水平面内に延在するが、支持面420の周辺部には凸部等が形成されてもよい。
【0032】
支持台42は、図5に示すように、支持台41に対してY方向の一方側(本実施例ではY2側)から隣り合う。なお、図5に示す例では、支持台42は、支持台41に対して挿入治具50を間に挟んで隣り合う。
【0033】
支持台42の支持面420は、支持台41の支持面410よりも低い。すなわち、支持台42の支持面420の高さH2(図5参照)は、支持台41の支持面410の高さH1よりも低い。従って、支持台42が支持する永久磁石17の高さと、支持台41が支持する永久磁石16の高さとは異なることになる。すなわち、支持台41は、マガジン30から払い出される永久磁石16を高さH1で支持するのに対して、支持台42は、マガジン30から払い出される永久磁石17を、高さH1(第1高さの一例)よりも低い高さH2(第2高さの一例)で支持する。
【0034】
このように、本実施例の支持台41、42は、異なる高さH1、H2の支持面410、420を有することで、マガジン30から払い出される永久磁石16、17を異なる高さH1、H2で支持できる。これにより、図7から図9を参照して後述するように、傾斜した軸方向孔62に対しても、永久磁石16、17を容易に挿入することが可能となる。高さH1、H2の差は、上述した挿入対象の一の軸方向孔62の角度α(図4参照)に応じて適合されてよい。以下、このような支持台41、42の支持機能を、「段差形成機能」とも称する。段差形成機能の技術的な意義の詳細は後述する。
【0035】
挿入治具50は、X方向に沿って移動可能である。挿入治具50は、X方向に沿って直線状に移動(並進移動)可能であってよい。挿入治具50は、図2及び図3に示すように、マガジン30から払い出された2つの永久磁石16、17に対してX1側に配置される。また、挿入治具50は、図5に示すように、X方向視で、マガジン30から払い出された2つの永久磁石16、17に重なる。なお、図5に示す例では、挿入治具50の上部(2つの永久磁石16、17に重なる部位)は、X方向視で矩形の形態であるが、他の形態であってもよい。また、挿入治具50は、例えば図6に示すような爪のような形態であってもよいし、他の形態であってもよい。
【0036】
挿入治具50がX方向に沿ってX2側に移動すると、挿入治具50のX2側の端面が、マガジン30から払い出された2つの永久磁石16、17のX1側端面に当接する。この当接状態で、挿入治具50がX方向に沿ってX2側に更に移動すると、永久磁石16、17をX2側に移動させる。そして、挿入治具50がX方向に沿ってX2側に更に移動すると、永久磁石16、17がワーク60における挿入対象の一の軸方向孔62にX方向に挿入される。図3には、挿入治具50が図2に示した状態よりもX2側に移動した状態が示されている。挿入治具50が、X方向に沿ってX2側に移動すると、支持台41、42上の2つの永久磁石16、17がX方向に沿ってX2側に移動する。すなわち、支持台41、42上の2つの永久磁石16、17は、挿入治具50によって、ワーク60に向かって押し出される。このようにして、挿入治具50は、2つの永久磁石16、17の移動先(X2側)に位置する軸方向孔62内へと、2つの永久磁石16、17を挿入できる。
【0037】
挿入治具50は、ワーク60における挿入対象の一の軸方向孔62に対して、同時に2つの永久磁石16、17を挿入してよい。なお、ここで、「同時」とは、2つの永久磁石16、17のX方向のズレが一切生じない態様での挿入を厳密に意味するのではなく、一の軸方向孔62に向けて2つの永久磁石16、17が同時に移動している時間が存在する態様を意味し、2つの永久磁石16、17のX方向のズレが若干発生してもよい。
【0038】
本実施例では、挿入治具50は、図5に示すように、Y方向で支持台41と支持台42の間に配置される。この場合、一の挿入治具50を用いて、支持台41、42上の2つの永久磁石16、17を同時にX方向に移動させることができる。このように本実施例では、挿入治具50は、マガジン30から払い出された2つの永久磁石16、17に対して共通の治具であるので、2つの永久磁石16、17を実質的にX方向のズレの生じない態様で、X方向に移動させることができる。ただし、変形例では、挿入治具50は、永久磁石16をX方向に移動させる治具と、軸方向孔62をX方向に移動させる治具の組み合わせにより実現されてもよい。
【0039】
ここで、図7から図9を参照して、挿入治具50による2つの永久磁石16、17に対する挿入動作とともに、ワーク60の好ましい構成について更に説明する。
【0040】
図7は、挿入治具50により挿入されている2つの永久磁石16、17の先端部とともに、ワーク60の一部(挿入対象の一の軸方向孔62に係る一部)を示す側面図である。図7では、軸方向孔62内での永久磁石16、17の状態が分かるように、ワーク60の軸方向孔62内が透視図で示されている。図8は、図7のラインA-Aに沿った概略的な断面図である。図9は、図7のラインB-Bに沿った概略的な断面図である。
【0041】
本実施例では、ワーク60は、好ましくは、X1側(永久磁石16、17の入り口側)で軸方向孔62の孔面積(軸方向視の面積)が広くなるテーパ形状を有する。すなわち、ワーク60は、軸方向孔62まわりの部位として、通常部68のX1側端部に拡径部69を有する。通常部68では、軸方向孔62は、上述した磁石孔121に一致する又は磁石孔121よりもわずかに大きい形態を有する。拡径部69では、軸方向孔62は、上述した磁石孔121よりも有意に大きく、X1側(挿入に対する入り口側)に向かうにつれて孔面積が増加していく形態を有する。
【0042】
このようにワーク60がテーパ形状を有することで、上述した段差形成機能により高さの差を有する2つの永久磁石16、17を、更に容易に、傾斜した軸方向孔62内へと挿入できる。すなわち、軸方向視で、2つの永久磁石16、17の先端部(X2側の先端部)が、通常部68での軸方向孔62に対してわずかにズレを有する場合でも、拡径部69での軸方向孔62に対して挿入できる可能性が高くなる。そして、拡径部69での軸方向孔62に2つの永久磁石16、17の先端部を挿入できると、テーパ形状によって通常部68での軸方向孔62へと、2つの永久磁石16、17の先端部のズレを矯正しつつ導くことができる。
【0043】
なお、挿入治具50に対して軸方向孔62が正対する状態では、図8に模式的に示すように、軸方向孔62の長手方向に沿った中心線L0上に、支持台41、42の永久磁石16、17のそれぞれの中心O1、O2(例えば軸方向視での図心)が位置してもよい。なお、中心線L0は、軸方向視で軸方向孔62の長手方向に対して垂直な方向の中心を通る直線である。ただし、挿入治具50に対して軸方向孔62が正対する状態では、支持台41、42の永久磁石16、17のそれぞれの中心O1、O2が、軸方向孔62の中心線L0よりもわずかに下方に位置してもよい。この場合、テーパ形状により掬い上げる態様で永久磁石16、17を正規の位置(通常部68での軸方向孔62内)へと導くことができる。
【0044】
次に、図10から図13を参照して、比較例との対比で本実施例の効果を説明する。
【0045】
図10は、支持台41、42の段差形成機能を備えていない第1比較例の問題点の説明図であり、軸方向視で、2つの永久磁石16、17と軸方向孔62(挿入対象の軸方向孔62)との位置関係を概略的に示す図である。
【0046】
図10に矢印R10で模式的に示すように、第1比較例では、2つの永久磁石16、17を挿入する際に、傾斜した軸方向孔62に対してY方向に水平に並ぶ2つの永久磁石16、17が干渉しやすくなる。これは、図7を参照して上述したようなテーパ形状を軸方向孔62の入り口側に形成した場合でも同様である。例えば永久磁石17を基準にして正対させると、テーパ形状に倣う際に永久磁石16の向きが水平面に対して斜めになりすぎてしまい、軸方向孔62の上部に干渉しやすくなる。
【0047】
これに対して、本実施例によれば、図7から図9を参照して上述したように、支持台41、42の段差形成機能を備えることで、第1比較例で生じる問題を回避することが可能である。
【0048】
図11は、支持台41、42の段差形成機能を備えない代わりにマガジン30を傾斜させる第2比較例の問題点の説明図である。図11には、軸方向視で、マガジン30とその中に収容される複数の永久磁石16、17が概略的に示されている。また、図11は、左側の正常な状態を示し、右側に、発生しうる異常状態を示す。
【0049】
第2比較例は、傾斜した軸方向孔62の角度αに合わせてマガジン30を傾斜させる構成である。第2比較例のようにマガジン30を傾斜させると、積層された永久磁石16、17の落下時の抵抗等の相違に起因して永久磁石16、17の姿勢(例えばX軸まわりの回転)の安定性が損なわれやすくなるという問題が生じやすい。図11の右側に示す異常状態は、下方側の永久磁石16が転んでしまっている状態である。このような異常が発生すると、マガジン30内で永久磁石16が詰まってしまい、製造ラインの停止等を引き起こしやすい。
【0050】
これに対して、本実施例によれば、支持台41、42の段差形成機能を備えることで、マガジン30を傾斜させる必要がなく、第2比較例で生じる問題を回避することが可能である。
【0051】
図12は、支持台41、42に代えて、水平面に対して傾斜した支持面410A、410Aを有する支持台41A、42Aを備える第3比較例の問題点の説明図である。図12には、軸方向視で、マガジン30Aから払い出された永久磁石16、17とともに、支持台41A、42A(及び挿入治具50)が示されている。
【0052】
第3比較例では、傾斜した軸方向孔62の角度αに合わせて支持面410A、420Aを傾斜させる構成である。第3比較例のように支持面410A、420Aを傾斜させると、マガジン30AのY方向の内寸W12を、永久磁石16、17の幅方向の寸法合計W0によりも、有意に大きくする必要が生じる。具体的には、マガジン30AのY方向の内寸W12は、支持面410A、420Aで支持されているときの姿勢での2つの永久磁石16、17の最大Y方向寸法W1に対して、マージンを有する必要がある。Y方向寸法W1は、寸法合計W0よりも有意に大きいことから、その分だけ、マガジン30Aの内寸W12は、寸法合計W0に対して、より大きいマージンを有する必要がある。
【0053】
ところで、マガジン30(マガジン30Aも同様)は、上述したようにY方向の位置規制機能を有する。すなわち、マガジン30は、側壁部31、32の下端が、永久磁石16、17のY方向の移動を規制する機能を有する。このY方向の位置規制機能は、マガジン30のY方向の内寸(側壁部31、32の内側の面間のY方向距離)W5(図5参照)が、永久磁石16、17の幅方向の寸法合計W0との差が小さいほど(ただしW5>W0)、有効に機能する。
【0054】
この点、第3比較例では、上述したようにマガジン30AのY方向の内寸W12は、寸法合計W0に対して比較的大きいマージンを有するので、Y方向の位置規制機能が有効に機能し難くなる。Y方向の位置規制機能が有効に機能しない場合、図13に模式的に示すように、挿入途中の永久磁石16、17の先端部が開きやくなる(矢印R13参照)。図13に示すように、挿入途中の永久磁石16、17の先端部が開くと、軸方向孔62の入り口側で永久磁石16、17の干渉が生じやすくなる。なお、本実施例(第3比較例も同様)では、挿入治具50は永久磁石16、17の中央部(永久磁石16のY2側及び永久磁石17のY1側)を押すので、永久磁石16、17の先端部が開きやすく、Y方向の位置規制機能の有用性が高い。
【0055】
これに対して、本実施例によれば、マガジン30のY方向の内寸W5(図5参照)は、水平面に並んだ2つの永久磁石16、17の最大Y方向寸法である寸法合計W0に対して、最小のマージンを有するように、設定できる。具体的には、マガジン30のY方向の内寸は、永久磁石16、17の幅方向の寸法合計W0に基づいて、永久磁石16、17がマガジン30内で水平面に対して有意に傾斜しないように適合される。これにより、寸法合計W0に対してマガジン30のY方向の内寸の最小化を図ることができ、その結果、Y方向の位置規制機能が有効に機能し、第3比較例で生じやすい上述した問題(図13参照)を回避することが可能である。
【0056】
図14は、本実施例の更なる効果の説明図であり、ワーク60を軸方向視で示す概略図である。図14Aは、X2側から視た製造装置2の一部を示すX方向視の正面図である。
【0057】
上述したように本実施例によれば、傾斜した軸方向孔62に対して2つの永久磁石16、17を容易に挿入できるので、2つの軸方向孔62に対して、並列的に2つの永久磁石16、17を挿入できる。
【0058】
例えば、図14に示す領域A1内の2つの軸方向孔62は、略水平方向に延在する。従って、領域A1内の2つの軸方向孔62を、それぞれ、“挿入対象の一の軸方向孔62”とすることができる。なお、領域A1内の2つの軸方向孔62は、軸方向視で、中心軸Iを通る鉛直線に関して対称に傾斜している。従って、図14Aに示すように、上述した支持台41、42を、2組、軸方向視で、中心軸Iを通る鉛直線に関して対称な構成を有するように設けることで、領域A1内の2つの軸方向孔62に対して、並列的に2つの永久磁石16、17を挿入できる。
【0059】
このように本実施例によれば、2つの軸方向孔62に対して、並列的に2つの永久磁石16、17を挿入できるので、CT(サイクルタイム)の低減を図ることができる。例えば一のワーク60の複数の軸方向孔62に対して、1つずつ永久磁石16、17を順に挿入する場合に比べて、挿入工程に要する時間を半減できる。
【0060】
次に、図14及び図14Aとともに図15を参照して、回転電機用ロータ1の製造方法について説明する。
【0061】
図15は、回転電機用ロータ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0062】
本製造方法は、まず、ワーク60や製造装置2を準備する準備工程(ステップS150)を含む。なお、製造装置2がすでに準備されている場合は、ワーク60を準備するだけでよい。
【0063】
ここでは図14に示すワーク60が準備され、また、製造装置2は、軸方向視で、装置中心O0(図14A参照)を通る鉛直面に対して対称に、マガジン30、支持台41、42、及び挿入治具50が配置される。なお、ここで、装置中心O0とは、支持治具20により横向き姿勢とされたときのワーク60の中心軸Iが通る位置とする。
【0064】
以下では、装置中心O0に対してY方向Y1側の、マガジン30、支持台41、42、及び挿入治具50を、それぞれ、Y1側のマガジン30、Y1側の支持台41、42、及びY1側の挿入治具50とも称する。また、装置中心O0に対してY方向Y2側の、マガジン30、支持台41、42、及び挿入治具50を、それぞれ、Y2側のマガジン30、Y2側の支持台41、42、及びY2側の挿入治具50とも称する。
【0065】
ついで、本製造方法は、Y1側及びY2側のマガジン30から永久磁石16、17をY1側及びY2側の支持台41、42上に初期的に払い出す初期払い出し工程(ステップS151)を含む。この場合、初期払い出し工程は、Y1側及びY2側の支持台41を用いて、Y1側及びY2側のマガジン30から払い出される永久磁石16を高さH1で支持するY1側の支持工程(第1支持工程の一例)と、Y1側及びY2側の支持台42を用いて、Y1側及びY2側のマガジン30から払い出される永久磁石17を高さH2で支持するY2側の支持工程(第2支持工程の一例)とを含む。なお、準備工程ですでに払い出されている場合は、初期払い出し工程は省略されてもよい。また、Y1側の支持工程及びY2側の支持工程は、CTの短縮化のために並列的に実行されるが、必ずしも厳密に同期して実行されなくてもよい。
【0066】
ついで、本製造方法は、ワーク60をY1側及びY2側の挿入治具50に対して位置付ける初期的な位置付け工程(ステップS152)を含む。ここでは、ワーク60は、その中心軸Iが装置中心O0を通る横向き姿勢であって、装置中心O0のY方向両側に位置するY1側及びY2側の挿入治具50に対して、領域A1内の2つの軸方向孔62がそれぞれ正対する横向き姿勢となるように、位置付けられる。なお、支持台42は、ワーク60を縦向き姿勢で支持している状態から、Y軸に沿った回転軸まわりに回転すると、当該初期的な位置付け工程が実現されるように、構成されていてよい。なお、この初期的な位置付け工程は、上述した初期払い出し工程(ステップS151)と同時に実行されてもよいし、その前に実行されてもよい。
【0067】
ついで、本製造方法は、Y1側及びY2側の挿入治具50によりワーク60に、Y1側及びY2側の支持台41、42上の永久磁石16、17を挿入する挿入工程(ステップS154)を含む。この場合、挿入工程は、Y1側の挿入治具50をX方向X2側に移動させることで、領域A1内の2つの軸方向孔62のうちの、Y1側の軸方向孔62に、Y1側の支持台41、42上の永久磁石16、17を挿入するY1側の挿入工程と、Y2側の挿入治具50をX方向X2側に移動させることで、領域A1内の2つの軸方向孔62のうちの、Y2側の軸方向孔62に、Y2側の支持台41、42上の永久磁石16、17を挿入するY2側の挿入工程を含む。なお、Y1側の挿入工程及びY2側の挿入工程は、好ましくは、CTの短縮化のために並列的に実行されるが、必ずしも厳密に同期して実行されなくてもよい。このようにして、Y1側及びY2側の挿入治具50によりワーク60の2つの挿入対象の軸方向孔62に対して、並列的に2つの永久磁石16、17が挿入される。
【0068】
ついで、本製造方法は、Y1側及びY2側の挿入治具50を元の準備位置(図2参照)に戻す工程(ステップS156)を含む。Y1側の挿入治具50(Y2側の挿入治具50についても同様)を元の準備位置へとX方向X1側に移動させると、Y1側のマガジン30内の残っている永久磁石16、17が一斉に1つ分の高さだけ落下し、一番下の永久磁石16、17がY1側の支持台41、42上に払い出される。なお、同様に、Y1側の工程及びY2側の工程は、CTの短縮化のために並列的に実行されるが、必ずしも厳密に同期して実行されなくてもよい。
【0069】
ついで、本製造方法は、今回のワーク60のすべての軸方向孔62に対して永久磁石16、17の挿入が終了したか否かを判定する判定工程(ステップS158)を含む。判定工程は、今回のワーク60に対する後述するワーク回転工程の実行回数等に基づいて実現されてもよい。
【0070】
他方、すべての挿入が終了していない場合、本製造方法は、ワーク60の中心軸Iまわりに支持治具20を回転させることで、支持治具20の支持されているワーク60を中心軸Iまわりに回転させるワーク回転工程(ステップS160)を含む。なお、支持治具20は、全体が回転する必要はなく、ワーク60を支持する部分だけが回転してよい。例えば、図14Aに示す製造装置2の回転機構22が装置中心O0を通るX方向の軸(=中心軸I)まわりに回転することで、支持治具20に回転可能に支持されたワーク60が回転されてもよい。本製造方法では、ワーク60を45度回転させる。例えば、図14に示す領域A1内の2つの軸方向孔62がそれぞれY1側及びY2側の挿入治具50に正対する状態から、ワーク60を45度回転させると、領域A2内の2つの軸方向孔62がそれぞれY1側及びY2側の挿入治具50に正対する状態が実現される。
【0071】
ワーク回転工程(ステップS160)が終了すると、挿入工程(ステップS154)が新たな挿入対象の2つの軸方向孔62に対して実行される。このようにして、ワーク60を45度ずつ回転させながら、2つずつ軸方向孔62に対して挿入工程が順次実行されていく。例えば、図14に示す例では、領域A1から領域A8までの各領域内の2つの軸方向孔62に対して順に挿入工程が実行される。
【0072】
このようにして今回のワーク60のすべての軸方向孔62に対して永久磁石16、17の挿入が終了した場合、本製造方法は、すべての軸方向孔62に永久磁石16、17が挿入されたワーク60を、次の工程に払い出す工程(ステップS162)を含む。例えば、支持治具20がY軸に沿った回転軸まわりに回転して、今回のワーク60を上向き姿勢に戻してよい。この際、ワーク60は、上向き姿勢で、新たな別のワークであるロータコア12上に位置付けられてもよい。これにより、ワーク60内の永久磁石16、17を、ロータコア12の各磁石孔121へと容易に挿入できる。
【0073】
次に、図16及び図17を参照して、変形例について説明する。
【0074】
図16は、変形例による製造装置2Bを概略的に示す側面図(Y方向に視た側面図)である。図17は、本変形例によるマガジン30B及び永久磁石16、17と支持台41B、42Bとの関係を示す側面図(X方向に視た側面図)である。
【0075】
本変形例では、支持台41B、42Bがマガジン30B内を上下動するように構成される。この場合、支持台41B、42Bは、上方に移動することで、永久磁石16、17をマガジン30Bの上方から払い出す。この際、支持台41B、42Bは、上述した実施例による支持台41、42と同様に、永久磁石16、17を異なる高さで支持する。また、本変形例では、挿入治具50Bは、上述した実施例による挿入治具50と同様にX方向に移動可能であり、図16及び図17に示すように、永久磁石16、17のX1側の端面における上側に当接して、永久磁石16、17をX2側へと押すことで同様に挿入工程を実現する。挿入工程が終了して挿入治具50Bが元の準備位置に戻ると、支持台41B、42Bが永久磁石16、17の1つ分の高さだけ上昇することで(図16の矢印R16参照)、次の永久磁石16、17の払い出しを実現する。
【0076】
本変形例によっても上述した実施例と同様の効果が得られる。
【0077】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・回転電機用ロータ、2・・・製造装置(磁石挿入装置)、20・・・支持治具、30、30B・・・マガジン、41、41B・・・支持台(第1支持台)、42、42B・・・支持台(第2支持台)、50、50B・・・挿入治具、16・・・永久磁石(第1永久磁石)、17・・・永久磁石(第2永久磁石)、60・・・ワーク、62・・・軸方向孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14A
図15
図16
図17