(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147741
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】保護膜形成フィルム、保護膜形成用複合シート、半導体装置の製造方法、及び保護膜形成フィルムの使用
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231005BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231005BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055428
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堂下 美紗季
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004AB05
4J004CA04
4J004CA06
4J004DB02
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4J040KA32
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4J040LA01
4J040LA02
4J040LA08
4J040PA00
4J040PA20
4J040PA42
5F063AA04
5F063AA18
5F063BA20
5F063DD96
5F063EE29
(57)【要約】
【課題】常温保管した場合の安定性が高い保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムを備えた保護膜形成用複合シートと、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた半導体装置の製造方法との提供。
【解決手段】熱硬化性の保護膜形成フィルム13であって、示差走査熱量分析法によって、保護膜形成フィルム13の試験片を、昇温速度10℃/minで、23℃から300℃まで昇温したときの発熱開始温度が160℃以上である保護膜形成フィルム13。支持シート10と、支持シート10の一方の面10a上に設けられた保護膜形成フィルム13と、を備えた保護膜形成用複合シート101。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、
示差走査熱量分析法によって、前記保護膜形成フィルムの試験片を、昇温速度10℃/minで、23℃から300℃まで昇温したときの発熱開始温度が160℃以上である、保護膜形成フィルム。
【請求項2】
前記保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有し、
前記保護膜形成フィルムにおける、前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、63質量%以下である、請求項1に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項3】
前記保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有し、
前記保護膜形成フィルムにおける、前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上である、請求項1又は2に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項4】
前記発熱開始温度が170℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
【請求項5】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、
前記保護膜形成フィルムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成用複合シート。
【請求項6】
半導体装置の製造方法であって、
前記製造方法は、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムの一方の面、又は請求項5に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムの露出面を、半導体ウエハの裏面に貼付する貼付工程と、
前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させて保護膜を形成する熱硬化工程と、
前記熱硬化工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜の前記支持シート側の面にレーザー印字を行い、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面にレーザー印字を行う印字工程と、
前記印字工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記支持シート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断し、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面に、ダイシングシートを貼付した後、前記ダイシングシート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断することにより、前記半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた保護膜付き半導体チップを作製する加工工程と、
前記加工工程の後に、前記保護膜付き半導体チップを、前記ダイシングシート又は支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記保護膜形成用複合シート、又は前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、前記貼付工程で用いる、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体ウエハの回路面とは反対側の裏面に貼付し、前記半導体ウエハを分割して得られた半導体チップの裏面に保護膜を形成するための、保護膜形成フィルムの使用であって、
前記保護膜形成フィルムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成フィルムの使用。
【請求項9】
前記保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、前記半導体ウエハの前記裏面に貼付する、請求項8に記載の保護膜形成フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成フィルム、保護膜形成用複合シート、半導体装置の製造方法、及び保護膜形成フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このような半導体ウエハは、分割により半導体チップとされ、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。
このような半導体ウエハや半導体チップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、半導体ウエハの裏面に、保護膜を形成するための保護膜形成フィルムを貼付する。保護膜形成フィルムは、これを支持するための支持シート上に積層され、保護膜形成用複合シートの状態で使用されることもあるし、支持シート上に積層されずに使用されることもある。次いで、通常は、裏面に保護膜形成フィルムを備えた半導体ウエハ(保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ)は、その後の各種工程を経て、裏面に保護膜を備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)へと加工される。このような保護膜付き半導体チップは、そのピックアップ後に、基板の回路面に搭載され、半導体装置を構成する。保護膜形成フィルムは、例えば、硬化によって保護膜を形成する。
【0004】
保護膜形成フィルムは、最終的に保護膜の状態で、半導体チップの裏面を十分に保護可能であり、半導体チップにおいて微小な欠けが生じる、いわゆるチッピングを抑制することが求められる。そして、このような目的に沿った保護膜形成フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、保護膜形成フィルムのうち、加熱によって硬化する熱硬化性の保護膜形成フィルムは、通常、その製造直後から使用時まで、冷蔵保管することが推奨される。その理由は、保護膜形成フィルムを冷蔵せずに保管した場合、保護膜形成フィルムの安定性が低く、熱硬化性の発現に必要な保護膜形成フィルムの含有成分の一部が、保管中に反応してしまい、実際の使用時に、保護膜形成フィルムが十分に機能しなくなる可能性があるためである。しかし、冷蔵保管の場合には、常温保管の場合よりも、保管に要するコストが高く、保護膜形成フィルムの取り扱いも煩雑である。そこで、近年は、常温保管でも問題なく使用可能な保護膜形成フィルムに対する需要がある。
これに対して、特許文献1で開示されている保護膜形成フィルムは、常温保管した場合の安定性が低い。
【0007】
本発明は、常温保管した場合の安定性が高い保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムを備えた保護膜形成用複合シートと、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた半導体装置の製造方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、示差走査熱量分析法によって、前記保護膜形成フィルムの試験片を、昇温速度10℃/minで、23℃から300℃まで昇温したときの発熱開始温度が160℃以上である、保護膜形成フィルム。
[2].前記保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有し、前記保護膜形成フィルムにおける、前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、63質量%以下である、[1]に記載の保護膜形成フィルム。
[3].前記保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有し、前記保護膜形成フィルムにおける、前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上である、[1]又は[2]に記載の保護膜形成フィルム。
[4].前記発熱開始温度が170℃以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
[5].支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、前記保護膜形成フィルムが、[1]~[4]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成用複合シート。
【0009】
[6].半導体装置の製造方法であって、前記製造方法は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムの一方の面、又は[5]に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムの露出面を、半導体ウエハの裏面に貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させて保護膜を形成する熱硬化工程と、前記熱硬化工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜の前記支持シート側の面にレーザー印字を行い、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面にレーザー印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記支持シート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断し、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面に、ダイシングシートを貼付した後、前記ダイシングシート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断することにより、前記半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた保護膜付き半導体チップを作製する加工工程と、前記加工工程の後に、前記保護膜付き半導体チップを、前記ダイシングシート又は支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する半導体装置の製造方法。
[7].前記保護膜形成用複合シート、又は前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、前記貼付工程で用いる、[6]に記載の半導体装置の製造方法。
【0010】
[8].半導体ウエハの回路面とは反対側の裏面に貼付し、前記半導体ウエハを分割して得られた半導体チップの裏面に保護膜を形成するための、保護膜形成フィルムの使用であって、前記保護膜形成フィルムが、[1]~[4]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成フィルムの使用。
[9].前記保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、前記半導体ウエハの前記裏面に貼付する、[8]に記載の保護膜形成フィルムの使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温保管した場合の安定性が高い保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムを備えた保護膜形成用複合シートと、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた半導体装置の製造方法と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の他の例を模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇保護膜形成フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムは、熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、示差走査熱量分析(DSC)法によって、前記保護膜形成フィルムの試験片を、昇温速度10℃/minで、23℃から300℃まで昇温したときの発熱開始温度(本明細書においては、単に「発熱開始温度」と称することがある)が160℃以上である。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、例えば、後述するように、支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0014】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、これから作製した試験片を用いて、DSC法によって発熱開始温度を測定したとき、その発熱開始温度が160℃以上となる特性を有する。このような特性を有する本実施形態の保護膜形成フィルムは、常温保管した場合の安定性が高い。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0015】
本実施形態の保護膜形成フィルム、又はこれを備えた保護膜形成用複合シートを用いることにより、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えた保護膜形成フィルム付き半導体チップを製造できる。さらに、前記保護膜形成フィルム付き半導体チップから、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた保護膜と、を備えた保護膜付き半導体チップを製造できる。さらに、保護膜付き半導体チップを用いて、半導体装置を製造できる。
【0016】
半導体ウエハの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側の半導体ウエハの面を「回路面」と称する。そして、半導体ウエハの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
半導体ウエハは、ダイシング等の手段により分割され、半導体チップとなる。本明細書においては、半導体ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側の半導体チップの面を「回路面」と称し、半導体チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
半導体ウエハの回路面と半導体チップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、前記保護膜付き半導体チップを用いることにより、半導体装置を製造できる。
本明細書において、「半導体装置」としては、保護膜付き半導体チップが、半導体チップの回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものが挙げられる。
【0018】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、熱硬化性を有し、その熱硬化によって保護膜として機能する。
【0019】
常温の保護膜形成フィルムを、常温を超える温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムとし、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの硬さと、加熱前の保護膜形成フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成フィルムは、熱硬化性である。
【0020】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0021】
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0022】
<<発熱開始温度>>
DSCでの前記試験片の発熱開始温度は、160℃以上であり、170℃以上であることが好ましく、例えば、173℃以上、176℃以上、及び180℃以上のいずれかであってもよい。前記発熱開始温度が高いほど、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が高い。
前記発熱開始温度の上限値は、特に限定されない。例えば、保護膜形成フィルムが容易に得られる点では、前記発熱開始温度は、195℃以下であってもよい。
一実施形態において、前記発熱開始温度は、例えば、160~195℃、170~195℃、173~195℃、176~195℃、及び180~195℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記発熱開始温度の一例である。
【0023】
DSCに供する前記試験片の形態は、DSCを高精度に行うことが可能であれば、特に限定されない。例えば、複数枚の保護膜形成フィルムを積層して、適切な形状で切り出すことにより、前記試験片を作製できる。試験片としては、例えば4~10mg程度の質量があれば十分である。
【0024】
DSCでの前記試験片の発熱開始温度は、例えば、DSC曲線(DSCデータをプロットして得られた曲線)の微分曲線が最初に負の値を示す点での接線と、前記微分曲線が極大値(最初に観測される極値)を示す温度での接線と、の交点が示す温度、と定義される。
【0025】
DSCでの前記試験片の発熱開始温度は、前記保護膜形成フィルムの含有成分の種類と、その含有量と、を調節することで調節できる。
例えば、保護膜形成フィルムが、後述する硬化促進剤(C)を含有する場合には、硬化促進剤(C)の反応性を調節することで、前記発熱開始温度をより容易に調節できる。より具体的には、例えば、硬化促進剤(C)として、反応開始温度が低めのものを選択すること、このような硬化促進剤(C)の含有量を増やすこと、によって、前記発熱開始温度を高くすることができる。
例えば、保護膜形成フィルムが、後述する熱硬化剤(B2)を含有する場合には、熱硬化剤(B2)として、前記発熱開始温度を高くするために、常温で固形状のものを選択することが好ましい。
【0026】
保護膜形成フィルムの厚さは、特に限定されない。
保護膜形成フィルムの厚さは、50μm以下であることが好ましく、例えば、40μm以下、及び30μm以下のいずれかであってもよい。保護膜形成フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜形成フィルムの厚さが過剰となることが避けられる。
一方、保護膜形成フィルムの厚さは、保護性能がより高い保護膜を形成できる点では、5μm以上であることが好ましい。
一実施形態において、保護膜形成フィルムの厚さは、例えば、5~50μm、5~40μm、及び5~30μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは保護膜形成フィルムの厚さの一例である。
【0027】
本明細書において、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0028】
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず「厚さ」とは、特に断りのない限り、対象物において無作為に選出された5箇所で測定した厚さの平均で表される値であり、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
【0029】
前記保護膜形成フィルムを半導体ウエハの目的とする箇所に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
【0030】
例えば、保護膜形成フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃、110~180℃、及び120~160℃のいずれかであってもよい。
前記熱硬化時の加熱時間は、加熱温度を考慮して、適宜設定すればよく、例えば、3分~5時間、10分~4時間、及び30分~3時間のいずれかであってもよい。
【0031】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、半導体ウエハの回路面とは反対側の裏面に貼付し、前記半導体ウエハを分割して得られた半導体チップの裏面に保護膜を形成するために、使用可能である。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、半導体ウエハの前記裏面への貼付性が良好であり、半導体チップの保護性能が高い。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、常温で保管中であっても、熱硬化性の発現に必要な含有成分の目的外の反応が抑制される。すなわち、本実施形態の保護膜形成フィルムは、常温保管した場合の安定性が高い。そこで、例えば、保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、半導体ウエハの前記裏面に貼付した場合であっても、貼付性が良好であり、半導体チップの保護性能が高い。
【0032】
<<保護膜形成用組成物>>
前記保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物(より具体的には熱硬化性保護膜形成用組成物)を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0033】
前記保護膜形成フィルムは、熱硬化性に加え、エネルギー線硬化性を有していてもよい。
【0034】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0035】
保護膜形成フィルムにおいて、保護膜形成フィルムの総質量に対する、保護膜形成フィルムの1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
同様に、保護膜形成用組成物において、保護膜形成用組成物の総質量に対する、保護膜形成用組成物の1種又は2種以上の後述する含有成分の合計含有量の割合は、100質量%を超えない。
【0036】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0037】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、保護膜形成用組成物は、熱硬化性であるため、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性の保護膜形成フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0038】
好ましい保護膜形成フィルムとしては、例えば、硬化促進剤(C)を含有するものが挙げられ、より好ましい保護膜形成フィルムとしては、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)、硬化促進剤(C)及び充填材(D)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
以下、保護膜形成用組成物の組成について、詳細に説明する。
【0039】
<保護膜形成用組成物(III)>
好ましい保護膜形成用組成物としては、例えば、硬化促進剤(C)を含有する保護膜形成用組成物(III)(本明細書においては、単に「組成物(III)」と略記することがある)等が挙げられる。保護膜形成用組成物(III)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)、硬化促進剤(C)及び充填材(D)を含有していることが、より好ましい。
【0040】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
【0041】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0042】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0043】
重合体成分(A)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましく、200000~1200000であることがさらに好ましく、300000~1000000であることが特に好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの造膜性が向上する。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ保護膜形成フィルムが追従し易くなる。
【0044】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0045】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-50~50℃であることがより好ましく、-50~20℃であることがさらに好ましい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成フィルムの硬化物と支持シートとの密着性が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0046】
アクリル樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有し、これら構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
【0047】
【数1】
(式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tg
kはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;W
kはアクリル樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、W
kは下記式を満たす。)
【0048】
【数2】
(式中、m及びW
kは、前記と同じである。)
【0049】
前記Tgkとしては、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載されている値を使用できる。例えば、アクリル酸メチルのホモポリマーのTgkは10℃であり、メタクリル酸メチルのホモポリマーのTgkは105℃であり、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのホモポリマーのTgkは-15℃であり、メタクリル酸グリシジルのホモポリマーのTgkは41℃であり、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーのTgkは-70℃であり、アクリル酸のホモポリマーのTgkは103℃であり、アクリロニトリルのホモポリマーのTgkは97℃であり、アクリル酸n-ブチルのホモポリマーのTgkは-54℃であり、アクリル酸エチルのホモポリマーのTgkは-24℃である。
【0050】
アクリル樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;前記(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0051】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。
【0052】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0053】
アクリル樹脂を構成するモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0054】
アクリル樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。
【0055】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ保護膜形成フィルムが追従し易くなることがある。
【0056】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0057】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0058】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0059】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0060】
組成物(III)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、10~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、例えば、10~35質量%であってもよい。
この内容は、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合が、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、10~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、例えば、10~35質量%であってもよい、ことと同義である。
これは、溶媒を含有する樹脂組成物から溶媒を除去して、樹脂膜を形成する過程では、溶媒以外の成分の量は、通常、変化しないことに基づいており、樹脂組成物と樹脂膜とでは、溶媒以外の成分同士の含有量の比率は同じである。そこで、本明細書においては、以降、保護膜形成フィルムの場合に限らず、溶媒以外の成分の含有量については、樹脂組成物から溶媒を除去した樹脂膜での含有量のみ記載する。
【0061】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0062】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、保護膜形成フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0063】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
本明細書において、熱硬化性ポリイミド樹脂とは、熱硬化することによってポリイミド樹脂を形成する、ポリイミド前駆体と、熱硬化性ポリイミドと、の総称である。
【0064】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0065】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0067】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0070】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0071】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
【0072】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0073】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0074】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0075】
DSCでの前記試験片の発熱開始温度がより高くなる点では、熱硬化剤(B2)は、常温で固形状であることが好ましく、このようなものとしては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
すなわち、前記保護膜形成フィルムは、熱硬化剤(B2)として、少なくとも常温で固形状であるものを含有していることが好ましい。
【0076】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、保護膜形成フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0077】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の総含有量に対する、常温で固形状である熱硬化剤(B2)の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよく、100質量%であること、すなわち、組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、熱硬化剤(B2)として、常温で固形状であるもののみを含有していてもよい。前記割合が高いほど、DSCでの前記試験片の発熱開始温度が高くなる傾向にある。
【0078】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、10~70質量部であることが好ましく、20~65質量部であることがより好ましく、30~60質量部であることがさらに好ましく、例えば、40~55質量部であってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成フィルムの硬化物と支持シートとの密着性が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0079】
[硬化促進剤(C)]
硬化促進剤(C)は、組成物(III)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0080】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0081】
DSCでの前記試験片の発熱開始温度がより高くなる点では、硬化促進剤(C)は、反応開始温度が低めのものであることが好ましく、このようなものとしては、例えば、イミダゾール類等が挙げられる。
前記保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)として、少なくともイミダゾール類を含有していることが好ましい。
【0082】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~5質量部、及び0.5~3.5質量部のいずれかであってもよい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で保護膜形成フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。
【0083】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の総含有量に対する、イミダゾール類である硬化促進剤(C)の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよく、100質量%であること、すなわち、組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)として、イミダゾール類のみを含有していてもよい。前記割合が高いほど、DSCでの前記試験片の発熱開始温度が高くなる傾向にある。
【0084】
[充填材(D)]
保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0085】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0086】
保護膜形成用組成物における、充填材(D)のそれ以外の成分に対する分散性が向上する点では、前記シリカは、有機基で表面修飾されたシリカであることが好ましく、ビニル基、エポキシ基、フェニル基又はメタクリル基で表面修飾されたシリカであることがより好ましく、ビニル基又はエポキシ基で表面修飾されたシリカであることが特に好ましい。
【0087】
保護膜形成用組成物における、充填材(D)のそれ以外の成分に対する分散性が向上する点では、充填材(D)の平均粒子径は、0.02~2μmであることが好ましく、0.05~1μmであることがより好ましく、0.07~0.7μmであることが特に好ましい。
【0088】
本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、電子顕微鏡を用いて、対象物である粒子を観察し、無作為に100個の粒子を選択して、それらの平面視での粒子径を算出したときの、その算術平均値([100個の粒子の平面視での粒子径の合計値]/100)を意味する。そして、このときの粒子径としては、粒子の平面視での外周上の任意の2点を結んで得られる線分の最大値を採用できる。
例えば、保護膜形成フィルム中の充填材(D)のような、樹脂フィルム中の粒子については、樹脂フィルムを焼成することによって樹脂成分を消失させた後、残った粒子について、上記の方法により、平均粒子径を求めることができる。
【0089】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0090】
保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有している場合、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、40質量%以上であってもよいが、50質量%以上であることが好ましく、例えば、55質量%以上、及び60質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムは、保護性能がより高い保護膜を形成でき、例えば、保護膜付き半導体チップでのチッピングの抑制効果が高くなる。
【0091】
保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有している場合、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、65質量%以下であってもよいが、63質量%以下であることが好ましく、例えば、57質量%以下、及び50質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、保護膜形成フィルムを保護対象の被着体に貼付したときに、保護膜と被着体との積層物の反りを抑制する効果が高くなり、例えば、保護膜付き半導体ウエハでの反りの抑制効果が高くなる。
【0092】
保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、上述のいずれかの下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
一実施形態において前記割合は、40~65質量%、40~63質量%、40~57質量%以下、及び40~50質量%以下のいずれかであってもよいし、50~65質量%、50~63質量%、及び50~57質量%のいずれかであってもよいし、55~65質量%、及び55~63質量%のいずれかであってもよいし、60~65質量%であってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
【0093】
[カップリング剤(E)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、保護膜形成フィルムから形成された保護膜の被着体に対する接着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、前記保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0094】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0095】
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0096】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0097】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III)及び保護膜形成フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量がこのような範囲であることで、保護膜形成フィルムと被着体との化学的な相性を若干制御して、粘着性と剥離性をより調整し易くすることができる。一方、カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0098】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、保護膜形成フィルムの粘着力及び凝集力を調節できる。
【0099】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0100】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
保護膜形成用組成物の経時安定性が向上する点では、組成物(III)が架橋剤(F)を含有しないか、又は、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量が、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、例えば、0.01質量部未満であるなど、架橋剤(F)の含有量が少ないことが好ましい。
これに対して、一定量以上の架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0102】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0103】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物、又はエネルギー線硬化性化合物から合成されたと見做せるオリゴマー若しくはポリマー(重合体)である。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0104】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0105】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0106】
前記オリゴマー若しくはポリマーの合成に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0107】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0108】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III)において、組成物(III)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
【0109】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0110】
組成物(III)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、光重合開始剤(H)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0111】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0112】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0113】
[着色剤(I)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、着色剤(I)を含有していることが好ましい。着色剤(I)を含有させることにより、保護膜形成フィルム及び保護膜の光透過性を容易に調節できる。
【0114】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0115】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0116】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0117】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0118】
着色剤(I)を用いる場合、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜形成フィルムの光透過性を調節することにより、保護膜形成フィルム又は保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。例えば、被着体から保護膜形成フィルムを剥離したときに、保護膜形成フィルムの被着体における残存の有無を、目視によって容易に確認できる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0119】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0120】
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0121】
[溶媒]
組成物(III)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III)は、取り扱い性が良好となる。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0122】
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0123】
組成物(III)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0124】
組成物(III)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0125】
<保護膜形成用組成物(III)の製造方法>
組成物(III)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0126】
◎保護膜形成フィルムの例
図1は、本実施形態の保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0127】
ここに示す保護膜形成フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成フィルム13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
【0128】
保護膜形成フィルム13から作製した前記試験片の、上述のDSCでの発熱開始温度は、160℃以上である。
【0129】
保護膜形成フィルム13は、上述の保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0130】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、保護膜形成フィルム13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0131】
図1に示す保護膜形成フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、半導体ウエハ(図示略)の裏面への貼付面となる。そして、後述する支持シート又はダイシングシートを用いる場合には、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた保護膜形成フィルム13の露出面が、前記支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
【0132】
図1においては、剥離フィルムが保護膜形成フィルム13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、保護膜形成フィルム13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0133】
本実施形態の保護膜形成フィルムは、後述する支持シートと併用することで、保護膜の形成とダイシングを共に行うことができる、保護膜形成用複合シートを構成可能である。以下、このような保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0134】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えており、前記保護膜形成フィルムが、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムである。
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成フィルムによって、半導体ウエハの裏面に貼付できる。
【0135】
本明細書においては、保護膜形成フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成フィルムの硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0136】
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0137】
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0138】
支持シートは、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0139】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成フィルムとの間に配置される。
【0140】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成フィルムとの間の、密着性及び剥離性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
【0141】
本実施形態の保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0142】
◎保護膜形成用複合シートの一例
図2は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0143】
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0144】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成フィルム13が積層され、保護膜形成フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
【0145】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、
図2に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0146】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートと、前記シートの両面に設けられた、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する層と、を備えた複数層構造を有していてもよい。
【0147】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成フィルム13の第1面13aに半導体ウエハの裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0148】
図3は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成フィルムの大きさが異なり、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0149】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(
図3における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。そして、保護膜形成フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成フィルム23が積層されていない領域とに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bには、支持シート10が設けられている。
【0150】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、
図2~
図3に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図2~
図3に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0151】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0152】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
前記樹脂は、耐熱性に優れる点では、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0153】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0154】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0155】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、保護膜形成用複合シートの可撓性と、ウエハへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0156】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0157】
基材は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0158】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成フィルム、又は前記他の層)との密着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0159】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0160】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0161】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0162】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0163】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0164】
粘着剤層は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0165】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を調節できる。例えば、後述する保護膜付きチップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性粘着剤層を硬化させることにより、この保護膜付きチップをより容易にピックアップできる。
【0166】
本明細書においては、エネルギー線硬化性粘着剤層がエネルギー線硬化した後であっても、基材と、エネルギー線硬化性粘着剤層の硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「支持シート」と称する。
【0167】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0168】
粘着剤組成物の塗工及び乾燥は、例えば、上述の保護膜形成用組成物の塗工及び乾燥の場合と同じ方法で行うことができる。
【0169】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0170】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0171】
[非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル樹脂であることが好ましい。
前記アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
【0172】
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となるものが挙げられる。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0173】
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0174】
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)において、前記アクリル重合体等の前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0175】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0176】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0177】
[エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0178】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0179】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0180】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0181】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0182】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0183】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーの重合体であるオリゴマー等が挙げられる。
【0184】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0185】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
【0186】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0187】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0188】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0189】
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
【0190】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0191】
前記光重合開始剤としては、例えば、上述の光重合開始剤(H)と同様のものが挙げられる。
【0192】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0193】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0194】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0195】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0196】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0197】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、その塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0198】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0199】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0200】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0201】
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0202】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0203】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。また、この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に粘着剤層以外の他の層を積層する場合にも適用できる。
【0204】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に保護膜形成フィルム以外の層(フィルム)を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0205】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0206】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0207】
◇半導体装置の製造方法(保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートは、前記保護膜付き半導体チップを作製し、さらにこれを用いて、半導体装置を製造するのに用いることができる。
【0208】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、前記保護膜形成フィルムの一方の面、又は前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムの露出面を、半導体ウエハの裏面に貼付する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させて保護膜を形成する熱硬化工程と、前記熱硬化工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜の前記支持シート側の面にレーザー印字を行い、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面にレーザー印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用複合シートを用いた場合には、前記保護膜形成用複合シート中の前記支持シート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断し、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを用いた場合には、前記保護膜の他方の面に、ダイシングシートを貼付した後、前記ダイシングシート上において、前記半導体ウエハを半導体チップへと分割し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って、前記保護膜を切断することにより、前記半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた、切断後の前記保護膜と、を備えた保護膜付き半導体チップを作製する加工工程と、前記加工工程の後に、前記保護膜付き半導体チップを、前記ダイシングシート又は支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0209】
前記保護膜形成フィルムは、常温保管した場合の安定性が高い。したがって、前記製造方法においては、常温で保管後の保護膜形成フィルムを用いた場合に、本発明の効果が最も強く発現する。
例えば、本実施形態の半導体装置の製造方法においては、前記保護膜形成用複合シート、又は前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルムを、常温で30日間保管後に、前記貼付工程で用いてもよい。
【0210】
以下、半導体装置の製造方法について、図面を引用しながら説明する。
図4は、本実施形態の半導体装置の製造方法のうち、保護膜形成用複合シートを用いた場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図2に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合について、説明する。
【0211】
<<製造方法(1)>>
<貼付工程>
前記製造方法(1)の前記貼付工程においては、
図4(a)に示すように、剥離フィルム15を取り除いた前記保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13を、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、半導体ウエハ9と、半導体ウエハ9の裏面9bに設けられた保護膜形成フィルム13と、を備えた保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901を作製する。保護膜形成フィルム13は、その露出面である第1面13aを、半導体ウエハ9の裏面9bに貼り合わせる。
図4(a)中、符号9aは、半導体ウエハ9の回路面を示している。
【0212】
なお、
図4においては、半導体ウエハ又は半導体チップの回路面における、回路と突状電極等の図示を省略している。これは、以降の図においても同様である。
【0213】
保護膜形成フィルム13の半導体ウエハ9への貼付は、ロールを用いる方法等、公知の方法で行うことができる。
【0214】
保護膜形成フィルム13の半導体ウエハ9への貼付条件は、特に限定されない。通常、貼付時の保護膜形成フィルム13の温度(貼付温度)は20~100℃であることが好ましく、65~85℃であることがより好ましい。保護膜形成フィルム13を貼付する速度(貼付速度)は0.1~2m/minであることが好ましく、貼付時に保護膜形成フィルム13に加える圧力(貼付圧力)は0.1~0.6MPaであることが好ましい。
【0215】
保護膜形成フィルム13から作製した前記試験片の、上述のDSCでの発熱開始温度が、160℃以上であることにより、貼付工程においては、半導体ウエハ9への保護膜形成フィルム13の貼付性が良好である。例えば、常温で保管後の保護膜形成フィルム13を用いても、半導体ウエハ9への保護膜形成フィルム13の貼付性が良好であり、これにより、保護膜による半導体チップの保護性能も高い。
【0216】
<熱硬化工程>
製造方法(1)の前記貼付工程の後、前記熱硬化工程においては、保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901中の保護膜形成フィルム13を熱硬化させて、
図4(b)に示すように、保護膜13’を形成する。これにより、保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901は、半導体ウエハ9と、半導体ウエハ9の裏面9bに設けられた保護膜13’と、を備えた保護膜付き半導体ウエハ901’となる。
図4(b)中、符号13b’は、保護膜13’の第2面を示しており、保護膜形成フィルム13の第2面13bに対応している。また、符号13a’は、保護膜13’の第1面を示しており、保護膜形成フィルム13の第1面13aに対応している。また、
図4(b)中では、保護膜形成フィルム13を熱硬化後の保護膜形成用複合シートを、新たに符号101’を付して示している。
【0217】
熱硬化工程において、保護膜形成フィルム13の熱硬化時の加熱温度と加熱時間は、先に説明したとおりである。
【0218】
保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’においては、保護膜13’は高い保護性能を有し、半導体ウエハ9の保護効果が高い。
【0219】
保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、65質量%以下であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’での反りの抑制効果が高くなる。
【0220】
<印字工程>
製造方法(1)の前記熱硬化工程の後、前記印字工程においては、
図4(c)に示すように、保護膜形成用複合シート101’中の保護膜13’の支持シート10側の面(すなわち、第2面13b’)にレーザー光Rを照射することにより、前記面にレーザー印字を行う。
レーザー印字は公知の方法で行うことができる。例えば、レーザー光Rの波長を300~1100nmとし、スキャンスピードを50~1000mm/sとして、レーザー光Rを照射することにより、レーザー印字を良好に行うことができる。代表的なレーザー光Rの波長としては、例えば、355nm、532nm、1064nm等が挙げられるが、これらは一例である。
【0221】
<加工工程>
製造方法(1)の前記印字工程の後、前記加工工程においては、保護膜形成用複合シート101’中の支持シート10上において、半導体ウエハ9を半導体チップ90へと分割し、半導体ウエハ9の分割箇所に沿って、保護膜13’を切断する。これにより、
図4(d)に示すように、半導体チップ90と、半導体チップ90の裏面90bに設けられた、切断後の保護膜130’と、を備えた保護膜付き半導体チップ913’を作製するとともに、複数個の保護膜付き半導体チップ913’が、支持シート10上で整列して固定されて構成されている、保護膜付き半導体チップ群902を作製する。
図4(c)中、符号130a’は、切断後の保護膜130’の第1面を示しており、保護膜13’の第1面13a’に対応している。また、符号130b’は、切断後の保護膜130’の第2面を示しており、保護膜13’の第2面13b’に対応している。また、符号90aは、半導体チップ90の回路面を示しており、半導体ウエハ9の回路面9aに対応している。
【0222】
製造方法(1)の加工工程においては、例えば、半導体ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断と、を同時に行ってもよいし、半導体ウエハ9の分割を行ってから、保護膜13’の切断を行ってもよい。
製造方法(1)においては、半導体ウエハの分割と、保護膜の切断とを、その順序によらず、中断することなく同じ操作によって連続的に行った場合には、半導体ウエハの分割と、保護膜形成フィルムの切断と、を同時に行ったものとみなす。
【0223】
半導体ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断と、はいずれも、これらを行う順番に応じて、公知の方法で行うことができる。
【0224】
例えば、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー光の照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各種ダイシングによって、半導体ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断と、を同時に行ことができる。
また、ステルスダイシング(登録商標)により改質層を形成し、かつ分割を行っていない半導体ウエハ9と、保護膜13’と、をともに、これらの表面に対して平行な方向に引っ張る、所謂エキスパンドを行うことでも、半導体ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断と、を同時に行ことができる。このようなエキスパンドは、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
【0225】
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製する。
【0226】
保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’においては、保護膜130’は高い保護性能を有し、半導体チップ90の保護効果が高い。例えば、保護膜付き半導体チップ913’においては、チッピングが抑制される。
【0227】
<ピックアップ工程>
製造方法(1)の前記加工工程の後、前記ピックアップ工程においては、
図4(e)に示すように、保護膜付き半導体チップ913’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
製造方法(1)のピックアップ工程においては、保護膜付き半導体チップ913’中の保護膜130’の第2面130b’と、支持シート10中の粘着剤層12の第1面12aと、の間で剥離が生じる。
【0228】
保護膜付き半導体チップ913’は、公知の方法でピックアップできる。
例えば、製造方法(1)においては、保護膜付き半導体チップ913’を、その支持シート10側から、支持シート10を介して(介在させて)、ピンを用いて突き上げることで、ピックアップできる。
図4(e)においては、さらに、真空コレット等の引き離し手段7を用いて、保護膜付き半導体チップ913’を矢印P方向に引き離す場合を示している。
【0229】
製造方法(1)の前記ピックアップ工程の後は、例えば、ピックアップした保護膜付き半導体チップ913’中の突状電極を、基板の回路面にフリップチップ接続することにより、保護膜付き半導体チップ913’を前記回路面にボンディングする(本明細書においては、「ボンディング工程」と称することがある)。
前記突状電極は、保護膜付き半導体チップ913’中の半導体チップ90の回路面90aに設けられている。
ボンディング工程においては、例えば、保護膜付き半導体チップ913’中の突状電極を、基板の回路面に設けられている接続パッドに接触させて、前記突状電極と、前記回路面上の前記接続パッドと、を電気的に接続することで、フリップチップ接続できる。
保護膜付き半導体チップ913’の前記回路面へのボンディングは、公知の方法で行うことできる。
【0230】
前記ボンディング工程の後は、保護膜付き半導体チップ913’を備えた基板を用いて、以降、公知の方法に従って、半導体パッケージを作製し、この半導体パッケージを用いることにより、目的とする半導体装置を製造できる。
【0231】
ここまでは、製造方法(1)として、保護膜形成用複合シートを用いた場合の半導体装置の製造方法について説明したが、保護膜形成用複合シートに代えて、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを用いても、半導体装置を製造できる。
図5は、本実施形態の半導体装置の製造方法のうち、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを用いた場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(2)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示す保護膜形成フィルム13を用いた場合について、説明する。
【0232】
<<製造方法(2)>>
<貼付工程>
前記製造方法(2)の前記貼付工程においては、
図5(a)に示すように、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルム13、より具体的には、第1剥離フィルム151を取り除いた保護膜形成フィルム13を、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901を作製する。
本工程は、保護膜形成用複合シート101を構成している、換言すると支持シート10を備えている保護膜形成フィルム13に代えて、第2剥離フィルム152を備えている保護膜形成フィルム13を用いる点を除けば、製造方法(1)の前記貼付工程と同じである。
【0233】
保護膜形成フィルム13は、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付する前に、半導体ウエハ9と同じ直径又はウエハの直径よりも1~10mm小さい直径の円形状に裁断しておいてもよい。このようにすることで、貼付工程での作業性と、後述の第2剥離フィルム152の取り除きの作業性が、向上する。
【0234】
製造方法(2)においても、保護膜形成フィルム13から作製した前記試験片の、上述のDSCでの発熱開始温度が、160℃以上であることにより、貼付工程においては、半導体ウエハ9への保護膜形成フィルム13の貼付性が良好である。例えば、常温で保管後の保護膜形成フィルム13を用いても、半導体ウエハ9への保護膜形成フィルム13の貼付性が良好であり、これにより、保護膜による半導体チップの保護性能も高い。
【0235】
<熱硬化工程>
製造方法(2)の前記貼付工程の後、前記熱硬化工程においては、保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901中の保護膜形成フィルム13を熱硬化させて、
図4(b)に示すように、保護膜13’を形成する。これにより、保護膜形成フィルム付き半導体ウエハ901は、保護膜付き半導体ウエハ901’となる。
本工程は、保護膜形成用複合シート101を備えている半導体ウエハ9に代えて、保護膜形成フィルム13と第2剥離フィルム152の積層物を備えている半導体ウエハ9を用いる点を除けば、製造方法(1)の前記熱硬化工程と同じである。
【0236】
製造方法(2)においても、保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’においては、保護膜13’は高い保護性能を有し、半導体ウエハ9の保護効果が高い。
【0237】
製造方法(2)においても、保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、65質量%以下であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’での反りの抑制効果が高くなる。
【0238】
<印字工程>
製造方法(2)の前記熱硬化工程の後、前記印字工程においては、
図5(c)に示すように、保護膜付き半導体ウエハ901’から、第2剥離フィルム152を取り除き、これにより新たに生じた露出面、すなわち保護膜13’の第2面13b’に、レーザー光Rを照射することにより、前記面にレーザー印字を行う。レーザー印字後の保護膜付き半導体ウエハ901’は、製造方法(1)における、レーザー印字後の保護膜付き半導体ウエハ901’と同じである。
本工程においては、製造方法(1)の前記印字工程の場合と同じ方法で、保護膜13’にレーザー印字を行うことができる。
【0239】
<ダイシングシート貼付工程>
製造方法(2)の前記印字工程の後は、
図5(d)に示すように、保護膜付き半導体ウエハ901’中の保護膜13’の第2面13b’に、ダイシングシート80を貼付する。ダイシングシート80は、基材81と、その一方の面に設けられた粘着剤層82と、を備えている。本工程においては、粘着剤層82の基材81側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)82aを保護膜13’の第2面13b’に貼付する。粘着剤層82の第1面82aは、ダイシングシート80の第1面80aと同じである。
このように、製造方法(2)は、前記印字工程と前記加工工程との間に、前記保護膜付き半導体ウエハ中の前記保護膜の前記半導体ウエハ側とは反対側の面に、ダイシングシートを貼付するダイシングシート貼付工程を有する。
【0240】
ダイシングシート80は、保護膜形成用複合シート101中の支持シート10と、同様の構成を有するものであってよい。
ここでは、ダイシングシート80を用いた場合について示しているが、製造方法(2)においては、例えば、基材のみからなるダイシングシート等、ダイシングシート80以外の公知のダイシングシートを用いてもよい。
【0241】
ダイシングシート80の保護膜13’への貼付は、公知の方法で行うことができ、例えば、製造方法(1)の前記貼付工程における、保護膜形成用複合シート101の半導体ウエハ9への貼付の場合と同じ方法で行うことができる。
【0242】
製造方法(2)においては、前記ダイシングシート貼付工程以降、上述の、支持シート10を備えている保護膜付き半導体ウエハ901’に代えて、ダイシングシート80を備えている保護膜付き半導体ウエハ901’を用いる点を除けば、製造方法(1)の場合と同じ方法で、加工工程、ピックアップ工程及びボンディング工程を行うことができ、目的とする半導体装置を製造できる。
【0243】
<加工工程>
例えば、製造方法(2)の前記印字工程(前記ダイシングシート貼付工程)の後、前記加工工程においては、
図5(e)に示すように、ダイシングシート80上において、半導体ウエハ9を半導体チップ90へと分割し、半導体ウエハ9の分割箇所に沿って、保護膜13’を切断することにより、保護膜付き半導体チップ913’を作製する。これにより得られる保護膜付き半導体チップ913’は、製造方法(1)における保護膜付き半導体チップ913’と同じである。製造方法(2)の加工工程においては、保護膜付き半導体チップ913’とともに、複数個の保護膜付き半導体チップ913’が、ダイシングシート80上で整列して固定されて構成されている、保護膜付き半導体チップ群903を作製する。
【0244】
製造方法(2)においても、保護膜形成フィルム13として、先の説明のとおり、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上であるものを用いた場合には、保護膜付き半導体ウエハ901’においては、保護膜130’は高い保護性能を有し、半導体チップ90の保護効果が高い。例えば、保護膜付き半導体チップ913’においては、チッピングが抑制される。
【0245】
<ピックアップ工程>
例えば、製造方法(2)の前記加工工程の後、前記ピックアップ工程においては、
図5(f)に示すように、保護膜付き半導体チップ913’を、ダイシングシート80から引き離してピックアップする。
製造方法(2)の前記ピックアップ工程においては、保護膜付き半導体チップ913’中の保護膜130’の第2面130b’と、ダイシングシート80中の粘着剤層82の第1面82aと、の間で剥離が生じる。
【0246】
製造方法(2)の前記ピックアップ工程でピックアップした保護膜付き半導体チップ913’は、製造方法(1)の前記ピックアップ工程でピックアップした保護膜付き半導体チップ913’と同じである。したがって、製造方法(2)のこれ以降の前記ボンディング工程等の各工程は、製造方法(1)の前記ボンディング工程等の各工程と同じであり、製造方法(1)の場合と同様に、目的とする半導体装置を製造できる。
【0247】
<<半導体装置の製造方法の変形例>>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記貼付工程と、前記熱硬化工程と、前記印字工程と、前記ダイシングシート貼付工程と、前記加工工程と、前記ピックアップ工程と、前記ボンディング工程と、のいずれにも該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の工程を行うタイミングは、前記他の工程の内容に応じて、適宜選択できる。
【0248】
前記半導体装置の製造方法における前記他の工程の一例としては、前記貼付工程の前に、前記半導体ウエハの回路面にバックグラインドテープを貼付するバックグラインドテープ貼付工程と、前記バックグラインドテープ貼付工程の後で、前記貼付工程の前に、前記半導体ウエハの回路面からバックグラインドテープを取り除くバックグラインドテープ除去工程と、が挙げられる。
前記バックグラインドテープは公知のものでよく、前記バックグラインドテープの、半導体ウエハの回路面への貼付と、半導体ウエハの回路面からの除去は、公知の方法で行うことができる。
【0249】
本明細書においては、単なる「貼付工程」との記載は、「ダイシングシート貼付工程」と、「バックグラインドテープ貼付工程」と、のいずれにも該当しない、上述の、前記保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、半導体ウエハの裏面に貼付する工程を意味する。
【0250】
ここまでは、前記製造方法(1)として、
図2に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合について説明してきたが、本実施形態の半導体装置の製造方法においては、
図3に示す保護膜形成用複合シート102等をはじめとする、他の保護膜形成用複合シートを用いてもよい。
前記他の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、前記他の保護膜形成用複合シートと、
図2に示す保護膜形成用複合シート101と、の構成の相違に基づいて、本実施形態の半導体装置の製造方法は、いずれかのタイミングで行う前記他の工程を有していてもよい。
【実施例0251】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0252】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0253】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:BA(10質量部)、MA(70質量部)、GMA(5質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量400000、ガラス転移温度-1℃)
[エポキシ樹脂(B1)]
(B1)-1:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量274~284g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、三菱ケミカル社製「DICY7」)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)2P4MHZ-PW」)
(C)-2:イミダゾール系硬化促進剤(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンと、6-2-(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)エチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンと、の1:1の混合物、四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)2MAOK-PW」)
(C)-3:2-ヘプタデシルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)C17Z」)
(C)-4:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール(登録商標)2PHZ-PW」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾された球状シリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越シリコーン社製「KBM403」、メトキシ当量12.7mmol/g、分子量236.3)
[着色剤(I)]
(I)-1:有機系黒色顔料(大日精化工業社製「6377ブラック」)
【0254】
[実施例1]
<<保護膜形成フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III)の製造>
重合体成分(A)-1(18.45質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(11.07質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(1.85質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(5.54質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.37質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.37質量部)、充填材(D)-1(59.04質量部)、カップリング剤(E)-1(0.37質量部)及び着色剤(I)-1(2.95質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が50質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III)-1を得た。ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0255】
<保護膜形成フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET502150」、厚さ50μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成フィルムを製造した。
【0256】
さらに、得られた保護膜形成フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、貼付速度2m/min、貼付温度60℃、貼付圧力0.5MPaの条件で、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを製造した。
【0257】
<<保護膜形成フィルムの評価>>
<発熱開始温度の測定>
上記で得られた複数枚の剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを用いて、これらの第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムを取り除きながら、保護膜形成フィルムの露出面同士を順次貼り合わせていくことにより、第2剥離フィルムと、複数枚の保護膜形成フィルムと、第2剥離フィルムと、がこの順に積層されて構成された積層物を作製した。そして、この積層物から切片を切り出した。
次いで、この切片から最表面の2枚の第2剥離フィルムを取り除いて、得られたものを試験片とした。この試験片の質量は、約5gであった。
次いで、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「DSC-600」)を用いてDSC法により、昇温速度10℃/minで、前記試験片を23℃から300℃まで昇温し、このときの発熱開始温度を測定した。結果を表1に示す。
【0258】
<常温での保管安定性(貼付性)の評価>
上記で得られた剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを、大気下、23℃の温度条件下で30日間保管した。
次いで、テープラミネーター(リンテック社製「RAD-3600F/12」)を用いて、12インチシリコンウエハ(厚さ300μm)の#2000研磨面に対して、この保管後の剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを、貼付速度50mm/s、ローラー温度60℃、テーブル温度80℃、貼付圧力0.25MPaの条件で、一方の剥離フィルム(第1剥離フィルム)を取り除きながら貼付することにより、剥離フィルム(第2剥離フィルム)と、保護膜形成フィルムと、シリコンウエハと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルムを備えた保護膜形成フィルム付きシリコンウエハを作製した。
【0259】
次いで、保護膜形成フィルム付きシリコンウエハから剥離フィルムを剥離した。このとき、剥離フィルムと保護膜形成フィルムの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離フィルムを保護膜形成フィルムから剥離した(180°剥離を行った)。次いで、保護膜形成フィルムのシリコンウエハへの貼付状態(貼付性)を目視観察して、下記基準に従って、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:保護膜形成フィルムのシリコンウエハからの浮きが全く無く、保護膜形成フィルムはシリコンウエハに密着しており、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が高い。
B:シリコンウエハの外周近傍の一部の領域と、保護膜形成フィルムとの間に、気泡が存在しており、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性がAよりも劣る。
C:保護膜形成フィルムが剥離フィルムとともにシリコンウエハから剥がれており、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が低い。
【0260】
<保護膜付きシリコンウエハでの反りの抑制効果の評価>
上述の保護膜形成フィルムの常温での保管安定性(貼付性)の評価時と同じ方法で、12インチシリコンウエハ(厚さ300μm)の#2000研磨面に対して、上記で得られた保護膜形成フィルムを貼付することにより、剥離フィルムを備えた保護膜形成フィルム付きシリコンウエハを作製した。
次いで、保護膜形成フィルム付きシリコンウエハから剥離フィルムを剥離した後、この保護膜形成フィルム付きシリコンウエハをオーブンの内部に入れて、130℃で2時間加熱することにより、保護膜形成フィルムを熱硬化させて、保護膜付きシリコンウエハを作製した。
【0261】
次いで、得られた保護膜付きシリコンウエハをオーブンの内部から取り出し、常温下で放冷した後、テーブルの平坦面に載せた。このとき、保護膜付きシリコンウエハ中のシリコンウエハをテーブルの平坦面に対向させた。保護膜付きシリコンウエハ中のシリコンウエハ側の面は、保護膜付きシリコンウエハで反りが発生した場合には、凸面となる。そして、保護膜付きシリコンウエハの外周部の任意の3箇所で、テーブルの平坦面と保護膜付きシリコンウエハとの間の距離を測定し、その平均値を、保護膜付きシリコンウエハの反り量として採用した。さらに、下記基準に従って、保護膜付きシリコンウエハでの反りの抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:反り量が0mmであり、反りが抑制されている。
B:反り量が0mm超2mm以下であり、反りの抑制効果がAよりも劣るが、保護膜形成フィルムは実用に供することが可能である。
C:反り量が2mm超であり、反りの抑制効果が低く、保護膜形成フィルムは実用に供することができない。
ここで、保護膜形成フィルムが、実用に供することが可能であるということは、保護膜形成フィルムの熱硬化後(保護膜を形成後)に、例えば、ダイシングシートを貼付して、保護膜付き半導体ウエハのダイシングを行うなど、通常の工程を問題なく行うことが可能であることを意味する。
【0262】
<保護膜付きシリコンチップでのチッピングの抑制効果の評価>
上述の、保護膜付きシリコンウエハでの反りの抑制効果の評価で作製した保護膜付きシリコンウエハを用い、そのうちの保護膜の露出面(シリコンウエハ側とは反対側の面)に対して、テープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD-2510F/12)を用いて、ダイシングテープ(リンテック社製「Adwill D-686H)の粘着剤層側の面を貼付した。貼付条件は、貼付速度30mm/s、ローラー温度23℃、テーブル温度23℃、貼付圧力0.25MPaとした。
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6361」)を用いて、保護膜付きシリコンウエハをダイシングすることにより、シリコンウエハを、大きさが5mm×5mmのシリコンチップへと分割するとともに、保護膜をシリコンチップと同じ大きさに切断して、多数の保護膜付きシリコンチップを作製した。このとき、ダイシングブレード(ディスコ社製「Z05-SD2000-N1-90 CC」)の移動速度を30mm/secとし、回転数を45000rpmとし、ハイトを65μmとした。
次いで、これら保護膜付きシリコンチップを、ダイシングシートから粘着シート(リンテック社製「Adwill D-210)に転写し、そのうちの任意の10個の保護膜付きシリコンチップを、デジタル顕微鏡を用いて観察し、チッピング(シリコンチップの割れ又は欠け)の最大値を確認した。そして、その最大値から、下記基準に従って、保護膜付きシリコンチップでのチッピングの抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:チッピングの最大値が20μm以下であり、チッピングの抑制効果が高い。
B:チッピングの最大値が20μm超50μm以下であり、Aよりも劣るが、チッピングが抑制されている。
C:チッピングの最大値が50μm超であり、チッピングが抑制されていない。
【0263】
<<保護膜形成フィルムの製造及び評価>>
[実施例2~6、比較例1~2]
保護膜形成フィルムの含有成分と含有量が、表1又は表2に示すとおりとなるように、配合成分の種類を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成フィルムを製造し、評価した。結果を表1又は表2に示す。
【0264】
【0265】
【0266】
上記結果から明らかなように、実施例1~6においては、保護膜形成フィルムのシリコンウエハへの貼付性が良好であり、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が高いことを確認できた。実施例1~6においては、DSC法での試験片の発熱開始温度が170.6℃以上であり、十分に高かった。
【0267】
さらに、実施例1~6においては、保護膜付きシリコンウエハでの反りの抑制効果と、保護膜付きシリコンチップでのチッピングの抑制効果が、ともに良好であり、保護膜形成フィルムは、良好な特性を有していた。
【0268】
これに対して、比較例1~2においては、保護膜形成フィルムのシリコンウエハへの貼付性が劣っており、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が劣っていた。特に比較例2においては、保護膜形成フィルムの常温での保管安定性が低かった。比較例1~2においては、DSC法での試験片の発熱開始温度が149.3℃以下であり、不十分であった。
比較例1~2においては、保護膜形成フィルムをシリコンウエハへ正常に貼付できなかったため、保護膜付きシリコンウエハでの反りの抑制効果と、保護膜付きシリコンチップでのチッピングの抑制効果については、評価を行わなかった。