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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147753
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】作業機械の周囲監視装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20231005BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055445
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松下 達也
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205CA04
3F205JA00
(57)【要約】
【課題】より簡易に周囲監視の適正化を図る。
【解決手段】作業機械1の周囲を俯瞰表示する周囲監視装置であって、作業機械1の周囲の物体までの距離情報を取得する距離検出手段634と、距離情報を反映して物体を第1の態様で表示する表示手段622と、予め定められた検出モードにおいて、距離検出手段634より検出された距離が所定範囲内の物体の少なくとも一部を除外対象の物体として決定する除外対象決定手段と、を有し、表示手段622は、作業時には、距離検出手段634によって検出された物体のうち、前記除外対象決定手段により除外対象として決定された物体を除外して前記周囲の物体を前記第1の態様で表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲を俯瞰表示する周囲監視装置であって、
前記作業機械の周囲の物体までの距離情報を取得する距離検出手段と、
前記距離情報を反映して前記物体を第1の態様で表示する表示手段と、
予め定められた検出モードにおいて、前記距離検出手段により検出された距離が所定範囲内の物体の少なくとも一部を除外対象の物体として決定する除外対象決定手段と、を有し、
前記表示手段は、作業時には、前記距離検出手段によって検出された物体のうち、前記除外対象決定手段により除外対象として決定された物体を除外して前記周囲の物体を前記第1の態様で表示する作業機械の周囲監視装置。
【請求項2】
前記作業機械は、変形、分解又は組み立てが行われる部位を有する
請求項1に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項3】
前記検出モードにおいて、前記距離検出手段が、前記作業機械の旋回部と共に旋回しながら検出を行い、
前記距離検出手段による検出結果と前記旋回部の旋回角度情報に基づいて、前記物体の位置情報を特定する位置特定手段を有する
請求項1又は2に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記除外対象決定手段により除外対象として決定された物体を、前記第1の態様とは異なる第2態様で表示する
請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項5】
前記検出モードにおいて、前記距離検出手段により検出された距離が所定範囲内の物体のうち、除外対象とする物体と除外対象としない物体とを選別する選別手段を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項6】
前記距離検出手段により検出された物体が前記作業機械の構成部材か否かを特定する物体種別特定手段を有し、
前記作業機械が走行動作を開始した場合、
前記表示手段は、前記除外対象決定手段により除外対象として決定された物体であっても、前記物体種別特定手段により前記作業機械の構成部材ではないと特定された物体については表示する
請求項5に記載の作業機械の周囲監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械としてのクレーンの監視装置は、設定された監視範囲内での物体の検出を行い、操作者に警告するものであり、カウンタウエイト等の分離可能な構成の有無により監視範囲を変更し、監視範囲の適正化を図ることが可能であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-155181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記監視装置は、監視範囲内での物体の検出の際に、自機の一部を誤って検出するおそれがあった。特に、ジャッキアップ装置やクローラの左右方向の位置が拡縮する構成等、形状が容易に変化する構成を備える場合に、誤検出の影響が顕著となり、その対策が煩雑であった。
【0005】
本発明は、より簡易に周囲の監視範囲の適正化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
作業機械の周囲を俯瞰表示する周囲監視装置であって、
前記作業機械の周囲の物体までの距離情報を取得する距離検出手段と、
前記距離情報を反映して前記物体を第1の態様で表示する表示手段と、
予め定められた検出モードにおいて、前記距離検出手段により検出された距離が所定範囲内の物体の少なくとも一部を除外対象の物体として決定する除外対象決定手段と、を有し、
前記表示手段は、作業時には、前記距離検出手段によって検出された物体のうち、前記除外対象決定手段により除外対象として決定された物体を除外して前記周囲の物体を前記第1の態様で表示する、という構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より簡易に周囲監視の適正化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る周囲監視装置を搭載したクレーンの側面図である。
図2】クレーンの制御装置及びその周辺の構成を示すブロック図である。
図3】周囲検出装置の検出情報に基づく未処理検出画像の表示例である。
図4】検出モードにおける周囲検出装置の検出情報に基づく検出画像の表示例である。
図5】未処理検出画像に不要な検出の表示を抑制するための処理を施した処理済み検出画像の表示例である。
図6】警報範囲を表示装置に表示した場合の表示例である。
図7】検出処理部及び監視処理部によって行われる周囲監視制御の流れを示すフローチャートである。
図8】設置物を有する環境での検出モードの実施によって取得された検出情報に基づく検出画像の表示例である。
図9】未処理検出画像に対して検出モードで取得されたクレーンの一部分及び設置物の不要な検出の表示を抑制するための処理を施した処理済み検出画像を表示する表示例である。
図10】クレーンの走行により設置物が表示された処理済み検出画像を表示する表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[クレーンの概略構成]
図1は本発明の実施形態に係る周囲監視装置を搭載した作業機械としてのクレーンの側面図である。
クレーン1は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。クレーン1の記載に関して、上部旋回体3の操作者(搭乗者)から見た前後左右方向をクレーン1の前後左右方向として説明する。なお、特に言及しない場合には、原則として、下部走行体2は、上部旋回体3と前後方向が一致した状態(基準姿勢とする)にあるものとしてクレーン1の前後左右を説明する。また、クレーン1を水平面に置いた状態でクレーン1における上下方向を鉛直方向という場合もある。
【0010】
図1に示すように、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回部としての上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に起伏可能に取付けられたブーム4とを含んで構成されている。
【0011】
下部走行体2は、本体ボディ21と、本体ボディ21の左,右両側に設けられたクローラ22とを備えている。左,右のクローラ22は、それぞれ図示しない走行用油圧モータによって回転駆動される。
【0012】
上部旋回体3の前側にはブーム4の下端部が支持されている。また、上部旋回体3におけるブーム支持位置よりも後側には、マスト31の下端部が支持されている。
また、上部旋回体3は、図示しない旋回用油圧モータによって下部走行体2に対して鉛直方向の軸回りに旋回駆動される。
【0013】
上部旋回体3の後部には、ブーム4及び吊荷との重量バランスをとるカウンタウエイト5が取付けられる。カウンタウエイト5は、必要に応じて枚数を増減させることができる。
【0014】
カウンタウエイト5の前側には、ブーム4の起伏動作を行う起伏ウインチ(図示略)が配設され、その前側には、巻き上げロープ32の巻取り、巻出しを行う巻上ウインチ(図示略)が配設されている。巻上ウインチは、巻上用油圧モータ(図示略)により、巻上ロープ32の巻取り、巻出しを行い、フック34及び吊荷を昇降させる。
また、上部旋回体3の右前側にはキャブ33が配置されている。
【0015】
ブーム4は、上部旋回体3に起伏可能に取付けられている。ブーム4は、下部ブーム41と上部ブーム42とを備えている。
上部ブーム42の上端部には、巻上ロープ32をガイドするシーブ43が回転可能に取付けられている。
【0016】
マスト31は、上端部に上部スプレッダ35を備え、上部スプレッダ35は、一端部がブーム4の上端部に接続されたペンダントロープ44の他端部に接続されている。上部スプレッダ35の下方には下部スプレッダ36が設けられ、これらの間に複数回掛け回された起伏ロープ37が起伏ウインチにより巻取り又は巻出されると上部スプレッダ35と下部スプレッダ36との間隔が変化してブーム4が起伏する。ブーム起伏ウインチは、起伏用油圧モータ(図示略)により駆動する。
【0017】
[クレーンの制御系]
上部旋回体3のキャブ33等には、クレーンの制御装置60が併設されている。図2は制御装置60及びその周辺の構成を示すブロック図である。制御装置60は、クレーン1に搭載された制御端末であり、主に、クレーン1の走行、旋回、吊荷等の各種動作の制御に加えて、クレーン1の周囲監視処理を行う。
制御装置60は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されているコントローラ61を備えている。
コントローラ61は、後述する周囲検出装置634の検出情報を適正化して提示する検出処理部611と、周囲監視処理を行う監視処理部612のソフトウェアモジュールを備える。なお、検出処理部611と監視処理部612の一方又は両方は、ハードウェアから構成してもよい。
【0018】
上記検出処理部611と監視処理部612と入力部621と表示手段としての表示装置622とメモリ625とは、クレーン1とその周囲の俯瞰画像を表示する周囲監視装置として機能する。周囲監視装置としての機能については、後述する。
【0019】
コントローラ61には、入力部621、表示手段としての表示装置622、警報器623、操作レバー624、メモリ625が接続され、これらが制御装置60を構成している。
さらに、コントローラ61には、ロードセル631、ブーム角度センサ632、旋回量センサ633、距離検出手段としての周囲検出装置634、コントロールバルブ635が接続されている。
【0020】
入力部621は、キャブ33内に設けられ、例えば、タッチパネルのような入力インターフェイスであり、操作者からの操作に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。操作者は、入力部621を操作してブーム4の長さ、フック34の重量、その他の各種の設定や操縦に必要な各種の入力を行うことができる。
表示装置622は、キャブ33内に設けられ、例えば、入力部621としても利用されるタッチパネル式のディスプレイを備え、コントローラ61から出力される制御信号に基づいて、表示画面に吊荷の重量、ブーム角度、上部旋回体3の旋回角度等の情報を表示する。
警報器623は、コントローラ61から出力される制御信号に基づいて、警報を発生する。
【0021】
操作レバー624は、キャブ33内に設けられ、例えば、クレーン1に各種の動作を行わせる操作を手動入力し、操作レバー624の操作量に対応する制御信号をコントローラ61に入力する。
例えば、操作レバー624は、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、ブーム4の起伏動作、巻上ウインチによる巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しの操作入力を行うことができる。
【0022】
ロードセル631は、上部スプレッダ35と下部スプレッダに複数回掛け回された起伏ロープ37の末端に取付けられており、ブーム4を起伏させる際に起伏ロープ37に作用する張力を検出し、検出した張力に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。
なお、ロードセル631は、ブーム4の起伏力を間接的に計測できればどこに配置されていてもよい。例えば、ブーム4先端のペンダントロープ44の取付位置(不図示)に設けて、ペンダントロープ44に掛かる張力を検出してもよい。
【0023】
ブーム角度センサ632は、ブーム4の基端側に取付けられており、ブーム4の起伏角度(以下、ブーム角度とも記す)を検出し、検出したブーム角度に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。ブーム角度センサ632は、たとえば、水平面に対する角度である対地角をブーム角度として検出する。
【0024】
旋回量センサ633は、下部走行体2と上部旋回体3の間に取付けられており、上部旋回体3の旋回角度を検出し、検出した旋回角度に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。旋回量センサ633は、たとえば、垂直軸回りの角度を旋回角度として検出する。
【0025】
コントロールバルブ635は、コントローラ61からの制御信号に応じて切り替えが可能な複数のバルブから構成されている。
例えば、コントロールバルブ635は、下部走行体2の左右のクローラ22の回転駆動を制御するバルブ、上部旋回体3の旋回動作を制御するバルブ、起伏ウインチの回転駆動を制御するバルブ、巻上ウインチの回転駆動を制御するバルブ等を含んでいる。
【0026】
[周囲検出装置]
周囲検出装置634は、当該周囲検出装置634の周囲に存在する物体までの距離検出を行うセンサ、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)のようなレーザスキャナを用いた距離計測器である。なお、距離検出の対象となる「物体」には、物だけでなく、人も含まれる。
周囲検出装置634は、図1に示すように、上部旋回体3の後端部底面(カウンタウエイト5を設けない状態での後端部)に取り付けられている。
周囲検出装置634は、クレーン1における水平方向であって、旋回中心から水平後方に向かう直線LBを半径として周囲検出装置634を中心に左右両側に135°(合計270°)の範囲で広がりを持つ扇形の水平な二次元平面を検出平面の一つとしている。
さらに、周囲検出装置634は、上記扇形の検出平面を、当該周囲検出装置634を左右方向に貫通する水平な軸回りに上方と下方とに角度90度以下の範囲で傾斜させた立体的な範囲で物体に対する距離検出を行うことができる。
即ち、周囲検出装置634は、レーザ光を直線LBから左右両側に135°の範囲で二次元平面上の走査を行い、さらに、二次元平面上の走査を水平な軸回りに上下に角度90度以下の範囲で、微少角度で変化させて行うことで、立体的な範囲の距離検出を行う。
周囲検出装置634は、上記のように、周囲のあらゆる方向に対して物体の距離を検出するので、検出処理部611は、その検出情報から、周囲検出装置634に対する方向と距離とを対応付けた検出画像のデータを生成することが可能である。
【0027】
なお、以下の説明では、旋回中心から水平方向について上部旋回体3(カウンタウエイト5を含み、ブーム4は除く)における最も遠方となる位置までの距離を「旋回半径」とし、旋回中心から旋回半径の円周で囲まれた範囲を「旋回範囲」とする。ここでは、「旋回半径」は、旋回中心からカウンタウエイト5の後端部までの距離である場合を例示する。
また上述した直線LBの長さは、旋回半径に数mをプラスした長さであり、旋回中心から直線LBを半径とする円周で囲まれた範囲を「提示範囲F」とする。提示範囲Fは、物体の存在が検出された場合に操作者に表示又は警告等の提示が行われる範囲である。
【0028】
上記周囲検出装置634は、レーザ光等の照射を利用するので、クレーン1のレーザ光の照射を受ける箇所も物体として検出されてしまう。後述する検出処理部611は、このようなクレーン1の一部の映り込みによる不要な検出の表示を抑制するための処理を行って周囲検出装置634の検出情報を表示装置622に表示させている。検出処理部611によるクレーン1の不要な検出の表示を抑制するための処理の内容については後述する。
【0029】
なお、周囲検出装置634について、直線LBの長さと、検出を行う左右及び上下の角度範囲は一例であって、上記数値に限定されるものではない。
また、周囲検出装置634は、鉛直上下方向に平行な検出平面を鉛直上下方向に沿った軸回りに左右に回動させて検出を行っても良い。
さらに、周囲検出装置634は、車体のいずれかの位置、例えば、上部旋回体3の左端、右端、前端等のように複数箇所に設けてもよい。
【0030】
なお、上記クレーン1における「水平方向」とは、上部旋回体3の旋回軸に垂直な平面に沿った方向を示し、前述した前後方向及び左右方向に平行な方向である。
また、クレーン1における「垂直方向」とは、上部旋回体3の旋回軸に平行な方向を示し、鉛直上下方向に平行な方向である。
【0031】
[検出処理部]
図3及び図5は周囲検出装置634による立体的な提示範囲Fで周囲の物体を検出した場合の検出情報を反映した検出画像(俯瞰画像)G1,G3であり、検出画像G1はクレーン1の一部が映り込むことによる不要な検出の表示を抑制するための処理が行われていない状態の検出画像(未処理検出画像G1とする)、検出画像G3は同処理が行われた検出画像(処理済み検出画像G3とする)である。検出処理部611は、処理済み検出画像G3のみを表示装置622で表示し、未処理検出画像G1は表示しないが、比較のために図示している。
【0032】
検出処理部611は、周囲検出装置634による立体的な提示範囲Fで検出された周囲の物体表面の検出位置を全て水平面に正射影で投影して生成された検出画像を表示装置622に表示させる。
検出画像G1,G3は、周囲検出装置634による検出位置を水平面に正射影で投影して生成された画像である。また、検出画像G1,G3は、画像内での距離の縮尺に対応した縮尺で表した平面視のクレーン1を示すアイコンIcを含む。
【0033】
次に、検出処理部611が実行するクレーン1の不要な検出の表示を抑制するための処理について説明する。
クレーン1の不要な検出の表示を抑制してクレーン1以外の周囲の物体を表示するためには、上述した未処理検出画像G1からクレーン1の一部に相当する検出位置を示すドットを除外する必要がある。
【0034】
そこで、検出処理部611は、クレーン1の非作業時に、周囲検出装置634によって検出され得るクレーン1以外の全ての物体が置かれていない状態で、周囲検出装置634によってクレーン1の周囲の物体検出を行う。以下、これを「検出モード」という。上記検出モードは、例えば、操作者が入力部621から実行指示を入力することで実行してもよい。
ここで、「検出モード」における非作業時の「作業」とは、クレーン1の走行動作、ブーム4の起伏動作、巻上ウインチによる巻上ロープ32の巻き取り、巻き出し等のいずれかの動作を伴う吊荷やフックの移動、運搬に関わる動作を行う場合をいう。
【0035】
図4は検出モードにおける周囲検出装置634による検出情報に基づく検出画像(俯瞰画像)G2の表示例を示す。検出処理部611は、検出モードにおいて、検出情報に基づく検出画像G2を表示装置622に表示させる制御を行う。
検出モードでは、作業員が用意したクレーン1の周囲の物体を除いた環境で周囲の物体検出を行うので、理想的には、図4に示すように、周囲検出装置634から検出範囲Eに入って映り込んだクレーン1の一部分までの距離を示す検出情報のみが取得される。
【0036】
なお、検出モードにおける周囲検出装置634の検出範囲E(周囲検出装置634を中心とする範囲)は、提示範囲Fと一致しなくともよい。検出モードにおける周囲検出装置634の検出範囲Eの径方向範囲を示す周囲検出装置634を中心とする半径は、旋回半径以上であって提示範囲Fの半径(直線LB)以下であることが好ましい。
そして、入力部621からは、検出範囲Eの半径を上記範囲内で任意に設定することが可能である。
【0037】
そして、検出処理部611は、検出モードにおいて、周囲検出装置634により検出された検出範囲E内の物体を除外対象の物体として決定する。
さらに、クレーン1の作業時において(作業モードとする)、周囲検出装置634によって検出情報から検出モードにおいて検出された距離と同位置となる検出情報を除外して表示装置622に表示させることにより操作者に提示する制御を行う。
【0038】
即ち、検出処理部611は、作業モードにおいて、周囲検出装置634によって提示範囲Fについて周囲の距離検出を行い、周囲に存在する物体表面までの距離を示す位置座標が得られた場合に、これらの位置座標から前述した検出モードで得られた物体表面までの距離を示す位置座標と一致するものを全て除外して残った検出情報に基づいて俯瞰画像を生成し、処理済み検出画像G3として表示装置622に表示する制御を行う。
従って、上記検出処理部611は、「除外対象決定手段」として機能する。
なお、上記位置座標の一致の判定は、完全一致でなくともよい。例えば、一致したとみなせる数値範囲の幅を予め設定し、設定された数値範囲のずれは許容して一致と判定することが好ましい。
また、除外対象決定手段としての検出処理部611は、除外対象の物体以外の検出した物体を検出された距離及び方向に応じた位置に表示を行っているが、この表示態様を「第1の態様」と定義する。
【0039】
未処理検出画像G1と比較すると分かるように、処理済み検出画像G3は、未処理検出画像G1におけるクレーン1の一部に相当する不要な検出部分が除かれていることが分かる。
【0040】
なお、クレーン1は、変形、分解又は組み立てが行われる部位を有する場合がある。変形とは、クレーンの構成の一部が可動又は移動を行う場合であり、上部旋回体3の回動、ブーム4の回動、運搬時と作業時とで行われる左右のクローラ22の間隔の拡縮、ジャッキアップ装置の作動、ビームの伸縮動作や拡縮動作等がこれに該当する。
分解とは、クレーンの構成の一部が取り外されること、組み立てとは、クレーンの構成の一部が取り付けられることである。さらに、分解と組み立ては、作業現場で行われる組立分解であることとする。例えば、ピンで連結されており、現場で外すことが可能なものは、ここでいう「分解と組み立て」に含まれ、ピンで連結されているものの連結部ごと被膜されていてピンをたたくだけで取り外すことはできないものや溶接で連結されているもののような現場で外すことを想定していないものは含まれない。具体的には、カウンタウエイト5の取り付け、取り外しによる数の増減、左右のクローラ22の取り外し、取付け等が組み立てと分解に含まれ得る。
これらのように、クレーン1に、状況に応じて変形や姿勢の変化が生じる構成(変化部とする)が搭載され、当該変化部が周囲検出装置634の検出範囲E内に入る可能性がある場合、検出モードと作業モードとで変化部の検出情報が一致しない状況が生じ得る。
例えば、一方のモードでは検出されなかった変化部が他方のモードでは検出される場合や、検出モードと作業モードとで同一の変化部について異なる形状で検出される場合等である。
その場合、未処理検出画像G1から変化部に相当する部分を適正に除外することができず、処理済み検出画像G3に変化部が残存するおそれがある。
【0041】
これを回避するために、検出モードは、クレーン1による作業開始に極力近いタイミング(例えば、作業開始の直前等)に実行することが好ましい。時期的にこれらのタイミングが近ければ、変化部の変形や姿勢の変化が生じる可能性が低減するからである。
さらに、上記変化部については、状況変化を検出するセンサ、或いは、変化部の動作の実行指令を検出する検出手段を設け、これらから変化部の状況変化を認識した場合に、表示装置622を通じて検出モードの再実行を促す報知処理を行ってもよい。
【0042】
また、上部旋回体3の旋回角度に応じてクレーン1における周囲検出装置634のレーザ光の照射を受ける箇所が変化する場合がある。
従って、検出モードにおける周囲検出装置634による検出は、上部旋回体3の異なる複数の旋回角度ごとに実施することが好ましい。検出モードにおける複数の旋回角度は、数が多いほどよい。例えば、周囲検出装置634が上部旋回体3と共に旋回し、旋回量センサ633で旋回角度を検出しながら周囲検出装置634が検出を行う。
そして、制御装置60は、周囲検出装置634による検出結果と旋回量センサ633で検出された上部旋回体3の旋回角度情報とに基づいて、検出範囲E内の物体の位置情報を特定する位置特定手段を備える構成としてもよい。位置特定手段は、一定の旋回角度単位で上部旋回体3の旋回角度範囲全体について周囲検出装置634による旋回角度ごとの検出情報を取得し、検出時の旋回角度と関連付けて、上記位置情報として保存する。
そして、作業モードでは、現在の上部旋回体3の旋回角度を旋回量センサ633により検出し、現在の旋回角度と一致する検出モードでの周囲検出装置634による検出情報を位置情報から読み出して、処理済み検出画像G3を生成し、表示装置622に表示する制御を行うことが好ましい。
【0043】
[監視処理部]
監視処理部612は、前述した作業モードでの検出情報に基づいて、提示範囲F内となる警報範囲W内の物体の有無を判定し、物体がある場合に報知処理を実行する。なお、この場合、前述したクレーン1の一部に相当する不要な検出部分(除外された物体)については、警報範囲W内にある物体の判断からは除かれる。
【0044】
図6は提示範囲Fを表示装置622に表示して報知処理を行う場合の表示例である。
図示のように、上記提示範囲Fの内側には、警報範囲Wが設定されている。この警報範囲Wは、上部旋回体3の旋回中心の同心円状に、クレーン1からの距離に応じて段階的に第1警報範囲(W11~W14)と第2警報範囲(W21~W24)に設定されている。
【0045】
第1警報範囲は、旋回中心からの半径が提示範囲Fよりも狭く、第2警報範囲は、第1警報範囲よりもさらに狭い。
さらに、第1警報範囲と第2警報範囲は、第1警報範囲W11~W14、第2警報範囲W21~W24のように、クレーン1を中心とする周方向について複数に分割しても良い。図6は四分割を例示しているが、分割個数は任意に変更可能である。
【0046】
前述したように、警報範囲W内に物体が検出された場合には、監視処理部612は、クレーン1の操縦を行う操作者に警報を行う報知処理を実行する。
上記のように、警報範囲Wを複数に分割した場合、例えば、監視処理部612は、第1警報範囲W11~W14及び第2警報範囲W21~W24における物体が検出された範囲について、色彩を付する、明度を高める、点滅表示を行う等の強調表示を行う警報制御を実行しても良い。
その場合、図6のように、各範囲に対して物体hが検出されたときに、クレーン1からの距離が離隔した第1警報範囲W11~W14よりもクレーン1からの距離が近接した第2警報範囲W21~W24の方がより強調された表示を行うことが好ましい。強調された表示とは、例えば、より濃い色彩の表示、より明るい色彩の表示、該当する範囲の点滅表示或いはより早い点滅表示等が挙げられる。
【0047】
また、第1警報範囲W11~W14及び第2警報範囲W21~W24のように、クレーン1を中心とする周方向について複数に分割した場合には、いずれの方向に物体hが存在しているかを明確且つ速やかに認識させることが可能である。
【0048】
[周囲監視装置としての処理]
上記検出処理部611及び監視処理部612によって行われる周囲監視装置としての周囲監視制御の流れを図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、このフローチャートに示す処理は、短周期的に繰り返し実行される。
【0049】
まず、検出処理部611は、検出モードの実行指令の有無を判定し(ステップS1)、実行指令を受けた場合には、周囲検出装置634によって周囲の物体の距離検出を行い、検出範囲E内における物体の検出情報をメモリ625に記録して(ステップS3)、ステップS5に処理を進める。
また、検出モードの実行指令がなかった場合にもステップS5に処理を進める。
【0050】
ステップS5では、クレーン1の作業時において、周囲検出装置634によって周囲の距離検出を行う。
そして、検出処理部611は、提示範囲F内の物体の検出情報と、直近の検出モードにおける物体の検出情報とを比較し、位置座標が等しい検出情報があるか否かを判定する(ステップS7)。
【0051】
そして、検出処理部611は、位置座標が等しい物体の検出情報がある場合には、作業モードでの物体の検出情報から検出モードでの物体の検出情報を除外して処理済み検出画像G3を生成し、表示装置622に表示する(ステップS9)。
また、検出処理部611は、位置座標が等しい検出情報がない場合には、作業モードでの物体の検出情報そのものからなる処理済み検出画像G3を表示装置622に表示する(ステップS11)。
【0052】
次いで、監視処理部612は、提示範囲F内に警報範囲Wが設定されているか否かを判定する(ステップS13)。
そして、警報範囲Wが設定されていなければそのまま周囲監視制御の処理を終了する。
【0053】
一方、警報範囲Wが設定されていた場合には、監視処理部612は、作業モードでの物体の検出情報に警報範囲W内の位置座標が含まれているか否かを判定する(ステップS15)。
そして、警報範囲W内の位置座標が含まれていなければそのまま周囲監視制御の処理を終了する。
【0054】
一方、作業モードでの物体の検出情報に警報範囲W内の位置座標が含まれていた場合には、監視処理部612は、さらにその位置座標が第1警報範囲W11~W14又は第2警報範囲W21~W24のいずれに属するかを特定し、該当する警報範囲W11~W24について処理済み検出画像G3中で第1警報範囲W11~W14と第2警報範囲W21~W24のそれぞれに対応する表示を行うように表示装置622の表示制御を実行して周囲監視制御の処理を終了する。
【0055】
[発明の実施形態の技術的効果]
以上のように、クレーン1のコントローラ61の検出処理部611は、検出モードにおいて、周囲検出装置634からクレーン1の一部までの距離を示す検出情報を取得し、この検出情報から除外対象の物体を決定し、作業モードにおいて、作業時に周囲検出装置634によって検出された検出情報から検出モードで検出された検出情報(除外対象の物体)と同位置となる検出情報を除外して生成された処理済み検出画像G3を表示装置622に表示させる制御を行っている。
このため、クレーン1の一部が誤って周囲の物体であるかのように表示されることが低減され、周囲監視の適正化を図ることが可能となる。
【0056】
また、クレーン1は、変形、分解又は組み立てが行われる変形部を有するが、そのような場合であっても、検出モードを作業開始前のなるべく近いタイミングで実施することで、変化部が誤って周囲の物体であるかのように表示されることを低減することができ、変化部を有するクレーン1であっても、特別な設定作業を行ったり、特別な検出手段を設けることなく簡易に周囲監視の適正化を図ることが可能となる。
【0057】
また、検出処理部611は、検出モードにおいて、周囲検出装置634がクレーン1の上部旋回体3と共に旋回して周囲検出装置634からクレーン1の一部までの距離を検出させることにより、複数の旋回角度ごとに検出情報を取得することができる。そして、周囲検出装置634による検出結果と上部旋回体3の旋回角度情報に基づいて、物体の位置情報を特定して位置特定手段としての処理を行っている。
これにより、上部旋回体3の旋回角度に応じて検出モードの検出情報が異なる場合であっても、作業モードにおける上部旋回体3の旋回角度から、適正な旋回角度の検出モードにおける検出情報を選択することができ、上部旋回体3の旋回時にあっても、周囲監視の適正化を図ることが可能となる。
【0058】
また、検出モードにおいて、検出する径方向範囲は、入力部621から設定して調整可能である。このため、検出モードにおいて、周囲検出装置634によって物体として検出されたクレーン1の一部を過不足なく検出情報として検出することができ、検出情報のデータサイズの適正化、検出モードにおける処理の迅速化を図りつつ、クレーン1に対する適正な範囲を検出することが可能となる。
【0059】
[周囲監視装置としての処理の他の例]
検出処理部611は、検出モードを実行する際に、作業者が周囲検出装置634によって検出され得るクレーン1以外の物体が何も置かれていない環境を用意し、クレーン1の周囲の物体検出を行うことが好ましい。
しかしながら、例えば、クレーン1の周囲の検出範囲E内に、クレーン1以外の物体を全て撤去した環境を用意できない場合や撤去するための負担が大きくなりすぎる場合もあり得る。
一方、クレーン1以外の物体が、移動体ではなく、上部旋回体3の旋回時に干渉するおそれがない高さの物体(固定物、建造物、設置物等、以下、設置物Tとする)等である場合には、作業時にクレーン1との干渉が生じないので、撤去しないで検出モードを実施してもよい。このような設置物Tを有する環境での検出モードの実施によって取得された検出情報に基づく検出画像(俯瞰画像)G4の表示例を図8に示す。
【0060】
検出処理部611は、上記検出モードにおいて、周囲検出装置634から検出範囲Eに入って映り込んだクレーン1の一部分及び設置物Tを除外する物体に含む検出情報を取得する。
そして、検出処理部611は、上記検出情報に基づく検出画像G4を表示装置622に表示する。このとき、検出処理部611は、クレーン1の一部分を示す検出情報と設置物Tを示す検出情報とを別々の検出情報と識別するための指定入力を入力部621から受け付けて記録する。
【0061】
このとき、入力部621は、検出モードの検出情報に含まれる周囲検出装置634により検出された距離が所定範囲内の物体のうち、クレーン1と設置物Tとを選別することができる。
例えば、マウス等の入力インターフェイスからなる入力部621によって、クレーン1の一部分であること及び設置物Tであることをそれぞれ枠L1,L2による範囲指定操作によって指定入力を受けると、検出処理部611は、検出モードにおいて取得された検出情報を、クレーン1の一部分である検出情報と設置物Tの検出情報とに区別して記録することができる。
この場合、入力部621は、例えば、前述した枠L1,L2により、クレーン1を除外対象の物体とし、設置物Tを除外対象としない物体とに選別することができる。この場合、入力部621は、選別手段として機能する。
さらに、入力部621は、例えば、前述した枠L1,L2により、クレーン1を当該クレーン1の構成部材とし、設置物Tをクレーン1の構成部材以外とに選別することができる。この場合、入力部621は、物体種別特定手段として機能する。
【0062】
クレーン1と設置物Tとを共に除外対象の物体とする前提の場合には、検出処理部611は、作業モードにおいて周囲検出装置634によって取得された検出情報から、検出モードで取得されたクレーン1の一部分の検出情報及び設置物Tの検出情報の位置座標と一致するものを除外した検出情報を取得し、図9に示す処理済み検出画像G5を表示する。
図3の未処理検出画像G1と比較すると分かるように、処理済み検出画像G5は、未処理検出画像G1におけるクレーン1の一部及び設置物Tに相当する不要な検出部分が除かれていることが分かる。
【0063】
なお、前述した図5の処理済み検出画像G3のように、クレーン1の一部に相当する不要な検出部分は完全に除外して表示されないようにしてもよいが、図9に示す処理済み検出画像G5のように、クレーン1の一部及び設置物Tに相当する不要な検出部分については、他の検出部分と区別することができるように、作業時に検出した物体を表示する第1態様とは異なる第2態様で表示してもよい。図9の処理済み検出画像G5では、クレーン1の一部及び設置物Tを点線にて表示しているが、第2態様は、これに限定されず、例えば、色彩を変える、濃度を変える、点滅させる等の態様を採ってもよい。その場合、クレーン1の一部及び設置物Tは、他の検出部分よりも目立ちにくい態様で表示することが好ましい。また、複数種類の第2態様の中から選択可能としてもよい。
また、クレーン1の一部のみを不要な検出部分(除外対象)として除外する図5の処理済み検出画像G3を表示する処理を行う場合にも、クレーン1の一部に相当する不要な検出部分については、他の検出部分と区別することができるように、作業時に検出した物体とは異なる第2態様で表示してもよい。
【0064】
なお、前述した監視処理部612は、提示範囲F内となる警報範囲W内に物体がある場合に報知処理を実行するが、クレーン1の一部に相当する不要な検出部分に加えて、設置物Tも不要な検出部分として、警報範囲W内にある物体の判断からは除かれる。
【0065】
上述のように、除外する対象に設置物Tも加えた場合であっても、クレーン1の走行による移動動作を行わない場合や設置物Tが干渉しない高さにある場合には、設置物Tとクレーン1との干渉は生じないので問題は生じない。
一方、設置物Tが検出モードにおいて、撤去困難な物体であり、クレーン1との干渉が生じるおそれがある物体である場合には、前述した選別手段としての入力部621により、クレーン1を除外対象の物体とし、設置物Tを除外対象としない物体とに選別しておくことにより、例えば、検出処理部611は、設置物Tの検出情報については除外対象とせず、他の検出部分と区別することなく作業時に検出した物体と同じ態様で表示する対象とし、図10に示す処理済み検出画像G6のように表示する表示制御を行う。
また、監視処理部612は、設置物Tを検出した場合に警報範囲W内にある場合に警報を実行する対象として判断する。
【0066】
一方、クレーン1の走行による移動動作が行われた場合には、設置物Tとクレーン1との干渉が生じるおそれがある。このような場合には、前述した物体種別特定手段としての入力部621により、設置物Tをクレーン1の構成部材ではない物体と選別しておくことが好ましい。この場合、クレーン1が走行動作を開始すると、検出処理部611は、設置物Tを除外対象とする場合でも、クレーン1の構成部材ではない物体と特定し、他の検出部分と区別することなく作業時に検出した物体と同じ態様で表示する対象とし、図10に示す処理済み検出画像G6のように表示する表示制御を行う。
また、監視処理部612は、設置物Tを検出した場合に警報範囲W内にある場合に警報を実行する対象として判断する。
【0067】
上記のように、設置物Tをクレーン1と区別すると共に、除外対象としない設定を行う、或いは、設置物Tをクレーン1の構成部材ではない物体と設定することにより、状況に応じた適正な設置物Tの表示制御を行うことができる。
また、設置物Tを除外対象としない設定やクレーン1の構成部材ではないとする設定を行うことにより、設置物Tの撤去作業を回避することができ、設置物Tの撤去が困難である場合等に検出モードを容易に実行することを可能とする。
さらに、設置物Tがクレーン1の構成部材ではない設定とした場合に、クレーン1が走行すると、検出処理部611は、設置物Tについては他の検出した物体と同じ態様で表示装置622に表示を行い、監視処理部612は、他の検出した物体と同じように報知の対象とする。これにより、クレーン1の走行による設置物Tとの干渉を回避低減することが可能となる。
【0068】
[その他]
上記発明の実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記クレーン1における周囲監視装置を行う構成は、クローラクレーンに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン等の他の移動式クレーンに加えて、港湾クレーン、天井クレーン、ジブクレーン、門型クレーン、アンローダ、固定式クレーン等、ウインチドラムを有するあらゆるクレーンに適用可能である。
さらに、周囲監視装置は、クレーン以外の油圧ショベル、基礎機械等の作業機械にも適用可能である。
【0069】
また、周囲検出装置634(距離検出手段)は、レーザスキャナに限らず、物体との距離を数値として検出することができればカメラ(ステレオカメラを含む)や超音波等による距離検出手段を利用することも可能である。
また、周囲検出装置634は、検出モード用のものと作業モード用のものとを個別に有する構成としてもよい。その場合、それぞれの周囲検出装置634は、検出方式が同じものでなくともよい。
【0070】
また、検出画像では、当該検出画像全体で物体も含めて一定の縮尺倍率で表示していたが、一部の範囲の倍率を変えて表示しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、クレーン1に設けられている表示装置622に検出画像(俯瞰画像)を表示する例を示したが、検出画像を見せる対象は、操縦者が好ましいが、操縦者以外の人であってもよい。また、検出画像(俯瞰画像)は、携帯端末やクレーン外の人物、より好ましくは操作者が見る他の表示装置に表示しても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 クレーン(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体(旋回部)
4 ブーム
5 カウンタウエイト
22 クローラ
60 制御装置
61 コントローラ
611 検出処理部
612 監視処理部
621 入力部(選別手段)
622 表示装置(表示手段)
633 旋回量センサ
634 周囲検出装置(距離検出手段)
E 検出範囲
F 提示範囲
G1 未処理検出画像
G2,G4 検出画像
G3,G5,G6 処理済み検出画像
T 設置物
W 警報範囲
W11~W24 警報範囲
h 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10