(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147761
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド
(51)【国際特許分類】
B22C 1/00 20060101AFI20231005BHJP
B22C 1/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B22C1/00 B
B22C1/00 K
B22C1/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055459
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】小川 文幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 照東
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA02
4E092AA23
4E092AA27
4E092AA45
4E092BA09
(57)【要約】
【課題】鋳型特性の向上を図りつつ、鋳造後における鋳型の崩壊性がより一層高められ得た鋳型を、実用的に有利に造型することの出来るレジンコーテッドサンド(RCS)を提供する。
【解決手段】耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練して、かかる耐火性骨材の表面を樹脂粘結剤にて被覆してなるRCSにおいて、かかる耐火性骨材が、50質量%以上のSiO2 を含有し、充填率が53%以上であるものであると共に、沸点が300℃以下であり、且つ分子量が100以下である気化成分を300~2000ppmの割合で含み、更に0.30W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練して、かかる耐火性骨材の表面を該樹脂粘結剤にて被覆してなるレジンコーテッドサンドにして、
前記耐火性骨材が、50質量%以上のSiO2 を含有し、充填率が53%以上であるものであると共に、沸点が300℃以下であり、且つ分子量が100以下である気化成分を300~2000ppmの割合で含み、更に0.30W/m・K以上の熱伝導率を有していることを特徴とする鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項2】
前記耐火性骨材が、ケイ砂及び/又はSiO2 質の人工骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項3】
前記耐火性骨材が、30~90のAFS指数を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項4】
前記樹脂粘結剤が、フェノール樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項5】
常温で自由流動性を有する乾態のレジンコーテッドサンドであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項6】
前記気化成分が、50℃で液体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項7】
前記気化成分が、水、メタノール及びフェノールのうちの何れか1種を少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項8】
保水剤が、更に含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項9】
崩壊性向上剤が、更に含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項10】
良熱伝導体が、更に含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項11】
前記耐火性骨材の少なくとも一部が、形状係数が1.40以下であり、表面付着の粘土分の含有量が0.20質量%以下であり、更に塩酸可溶分の含有量が3質量%以下である耐火物粒子にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項12】
前記耐火物粒子が、鋳造工程において回収される回収砂から再生されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【請求項13】
アルミニウム合金溶湯を鋳造するための鋳型の造型に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンドに係り、特に、鋳型特性の向上と共に、鋳造後における崩壊性に優れた鋳型を有利に造型し得るレジンコーテッドサンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の砂型鋳造による鋳物の製造に際しては、各種の耐火性骨材からなる鋳物砂を用いて造型することにより得られた鋳型内において、溶融金属を冷却して、凝固、固化させた後、かかる鋳型を構成する主型や砂中子の除去を行なう必要があるが、そのような鋳型、特に、砂中子の除去方法としては、一般的に、鋳造してから鋳物の温度が常温付近になるまで冷却した後、ノックアウトマシン等の振動機を用いて、鋳物に振動を与えて、砂中子を崩壊させることで、かかる砂中子の除去が行なわれるようになっている。しかし、砂中子には、鋳物砂を相互に結合するバインダ(粘結剤)として、フェノール樹脂等のレジン(樹脂)が用いられているところから、かかるレジンにて鋳物砂が固着して、単に振動を与えただけでは、容易に崩壊しなかったりして、鋳物からの鋳物砂の除去に時間がかかったりする等の問題があった。
【0003】
ところで、そのようなレジンにて固着された砂中子を崩壊させるには、加熱によって、かかるレジンを熱分解させる手法の採用が考えられるのであるが、砂中子に含まれているレジンを熱分解させるためには、充分な熱量を砂中子に与える必要があり、例えば、アルミニウム合金鋳物の場合では、アルミニウム合金の溶融温度に近い温度で1~2時間保持することにより、レジンを熱分解させ、砂中子を形成する鋳物砂の固化物を分解、分離させることが出来る。また、そのような加熱の後、5~6時間かけて冷却せしめ、次いで振動を与えることで、砂中子を崩壊させ、鋳物砂の除去が行なわれることとなる。しかし、この方法においては、レジンの分解のために、大きな熱エネルギーと共に、長い処理時間を要する問題があり、仮に未分解のレジンが残存したりすると、振動を加えたとしてもエネルギーが吸収され、砂崩壊に有効に働かないため、砂中子を除去するには充分な熱処理を施す必要があった。
【0004】
また、特開平9-182952号公報等においては、高圧水を噴射させて、鋳物の内部に吹き付けることにより、砂中子を粉砕して、鋳物内部から中子を除去する手法が提案されているのであるが、この高圧水を用いた場合にあっては、水が飛び散ることで、作業現場が水浸しとなり、そのために、作業現場や作業者に防水対策を施す必要性がある等、作業性が悪化すると共に、高圧水を噴射させる装置を用意する必要がある等の設備上の問題に加えて、除去した砂が水に濡れてしまうところから、砂を再利用するには、砂の乾燥等の、手間のかかる作業が必要となる問題を、内在するものであった。
【0005】
さらに、特開平9-1285号公報においては、鋳物砂及びフェノール系樹脂と共に、ZnOやZnO・B2O3の如き酸化亜鉛系化合物からなる崩壊性改善剤を必須成分として含有するシェルモールド用鋳型材料が提案され、そこでは、かかる酸化亜鉛系化合物に、更に、Br含有有機化合物やZnBr2 等のハロゲン含有化合物を組み合わせて含有せしめることにより、鋳造後の砂落し作業性がより一層容易となることが明らかにされているのであるが、そのようなハロゲン系添加物が併用されていることにより、鋳型の崩壊性はよいものの、鋳物や鋳造金型に腐食が惹起される問題があり、実用上において採用され難いものであった。
【0006】
加えて、特開昭62-124046号公報や特公平5-79423号公報においては、シェルモールド用鋳型材料に、崩壊性向上剤として、芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩を含有せしめたり、過マンガン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の熱分解生成物を含有せしめて、鋳造後における鋳型の崩壊性や砂落し性が向上せしめられ得ることが明らかにされているのであるが、それら崩壊性向上剤の添加による鋳型の崩壊性の向上には限界があり、また、鋳型の崩壊性をより一層高めるべく、そのような崩壊性向上剤の使用量を増大せしめたりすると、鋳型の物性に悪影響をもたらす等の問題を内在するものであった。
【0007】
このように、鋳型の崩壊性向上のための公知の何れの手法においても、それぞれの手法に内在する問題点があり、鋳造後の鋳型の崩壊性を有利に高め得る手法としては、実用上において、そのまま採用し得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-182952号公報
【特許文献2】特開平9-1285号公報
【特許文献3】特開昭62-124046号公報
【特許文献4】特公平5-79423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンドを提供することにあり、また、他の課題とするところは、鋳型特性の向上を図りつつ、鋳造後における鋳型の崩壊性がより一層高められ得る鋳型を、実用的に有利に造型することの出来るレジンコーテッドサンドを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて、理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0011】
先ず、本発明の第一の態様とするところは、耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練して、かかる耐火性骨材の表面を該樹脂粘結剤にて被覆してなるレジンコーテッドサンドにして、前記耐火性骨材が、50質量%以上のSiO2 を含有し、充填率が53%以上であるものであると共に、沸点が300℃以下であり、且つ分子量が100以下である気化成分を300~2000ppmの割合で含み、更に0.30W/m・K以上の熱伝導率を有していることを特徴とする鋳型崩壊性に優れたレジンコーテッドサンドにある。
【0012】
また、本発明の第二の態様は、前記耐火性骨材が、ケイ砂及び/又はSiO2 質の人工骨材を主体とすることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の第三の態様は、前記耐火性骨材が、30~90のAFS指数を有していることを特徴としている。
【0014】
加えて、本発明の第四の特徴は、前記樹脂粘結剤が、フェノール樹脂を主成分とすることを特徴とする。
【0015】
そして、本発明に従う第五の特徴は、常温で自由流動性を有する乾態のレジンコーテッドサンドであることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の第六の特徴は、前記気化成分が、50℃で液体であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に従う第七の特徴は、前記気化成分が、水、メタノール及びフェノールのうちの何れか1種を少なくとも含むことを特徴とする。
【0018】
加えて、本発明の第八の態様は、保水剤が、更に含有せしめられていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に従う第九の態様は、崩壊性向上剤が、更に含有せしめられていることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の第十の態様は、良熱伝導体が、更に含有せしめられていることを特徴とする。
【0021】
加えて、本発明に従う第十一の態様は、前記耐火性骨材の少なくとも一部が、形状係数が1.40以下であり、表面付着の粘土分の含有量が0.20質量%以下であり、更に塩酸可溶分の含有量が3質量%以下である耐火物粒子にて構成されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明に従う第十二の態様は、前記耐火物粒子が、鋳造工程において回収される回収砂から再生されたものであることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明の第十三の態様は、アルミニウム合金溶湯を鋳造するための鋳型の造型に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明に従うレジンコーテッドサンドにあっては、耐火性骨材として、SiO2 含有量が50質量%以上である、特にケイ砂を主体とする天然骨材が用いられ、その充填率が53%以上のものであることに加えて、0.30W/m・K以上の高い熱伝導率を有すると共に、沸点が300℃以下であり且つ分子量が100以下である気化成分を300~2000ppmの割合で含むレジンコーテッドサンドとして、構成されているところから、そのようなレジンコーテッドサンドを用いて造型される鋳型の熱伝導特性が、より一層有利に高められ得ることとなるのであり、これによって、造型して得られる鋳型の内部まで効果的に硬化せしめ得て、未硬化部位の存在が有利に抑制乃至は解消され得ることとなるところから、鋳造に際して、金属溶湯の熱を鋳型全体により均一に伝え易くなるのであり、そのために、そのような金属溶湯の熱にて、耐火性骨材を結合する樹脂粘結剤の結合力を有利に低下せしめ得ることによって、鋳型の崩壊性が効果的に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0025】
しかも、そのような本発明に従うレジンコーテッドサンドを用いて造型して得られる鋳型においては、レジンコーテッドサンドが熱伝導性に優れていることによって、従来の如き、造型時の加熱によっても充分に硬化し得ない未硬化部位の存在が効果的に低減乃至は消滅され得ることとなるところから、強度等の鋳型特性の向上が有利に実現され得るようになると共に、造型サイクル時間も効果的に短縮され得、更には、鋳造時における鋳型からのガス発生量の低減も効果的に図られ得ることとなるところから、鋳物欠陥の発生の抑制乃至は阻止をも、有利に実現され得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例において中子の崩壊性を測定するために用いた鋳造試験用砂型の縦断面説明図である。
【
図2】実施例において廃中子を内包したアルミニウム合金鋳物の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ところで、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)は、耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練して、かかる耐火性骨材の表面を、樹脂粘結剤にて被覆することによって得られるものであり、そこにおいて、そのようなRCSを構成する耐火性骨材としては、RCSの熱伝導率を向上せしめる上において、ケイ砂を主体とする天然や人工の耐火性粒子、中でも天然粒子(骨材)が有利に用いられ、そこでは、ケイ砂(ケイ石原鉱を粉砕して篩い分けしたものをも含む。以下同じ)のみを使用する場合の他、ケイ砂に公知の各種の鋳物砂を混合せしめてなる混合砂であっても、何等差し支えなく、更に、それらの回収砂や再生砂、中でも鋳造工程において回収される回収砂から再生された耐火性粒子も、新砂と共に、又は新砂に代えて、同様に使用可能である。尤も、そのような耐火性粒子からなる耐火性骨材は、一般に、50質量%以上のSiO2 を含有していることが望ましく、特に60質量%以上、中でも70質量%以上のSiO2 含有量であることが望ましく、これによって、RCSの熱伝導率の向上により一層有利に寄与し得ることとなる。
【0028】
そして、本発明にあっては、かくの如き耐火性粒子として、充填率が53%以上であるものが用いられることとなる。このような充填率を有する耐火性粒子は、小さな粒子を除去したり、研磨等により粒子の角を丸めたり、更には球状化したり、粒度を整える等の処置を施したりすることによって、得ることが可能である。なお、かかる充填率よりも低い耐火性粒子を用いた場合にあっては、熱伝導率が良好なRCSを得ることが困難となり、そのために、そのようなRCSを用いて造型された鋳型の崩壊性を改善することも困難となるからである。
【0029】
なお、上記した充填率は、鋳物砂の見掛の容積中に占める砂粒子の充填部の容積の比率を言うものであり、本発明において、そのような充填率は、以下の方法で測定した数値として、定義されるものである。即ち、先ず、200mlのメスシリンダーに、水:メタノール=7:3(重量比)の混合溶液の100mlを収容し、これに、別のメスシリンダーで流し込み法によって計量した鋳物砂(耐火性粒子)の100mlを徐々に加えた後に、密閉し、気泡が出なくなったことを確認した後、メスシリンダーの液面を読み、この数値:Mmlと200mlの目盛りとの差:200-Mを、空隙率:Vとして求め、更に、この空隙率:Vを100から減じてなる値:100-Vを、充填率:Xとして、求められるものである。なお、メスシリンダーに収容される液体として、水とメタノールの混合液に代えて、水に界面活性剤を加えたものや、他の液体を用いることも可能である。
【0030】
また、本発明にあっては、そのような耐火性粒子として、形状係数が1.40以下であるものが、好適に用いられることとなる。ここで、本発明において用いられる耐火性粒子(骨材)の形状係数は、粒形係数乃至は粒形指数とも称され、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として用いられるものであって、その値が1に近づく程、球形(真球)に近づくことを意味しているものである。そして、そのような形状係数は、公知の各種の手法で測定され、例えば、特許第3253579号公報にも明らかにされている如く、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の砂粒の表面積を測定し、その値を、砂粒が全て球形であると仮定した場合の表面積である理論的表面積で割った値を、形状係数とする方法がある。
【0031】
なお、かかる形状係数が1.40以下である耐火性粒子は、前記した53%以上の充填率を実現する場合と同様に、例えば、小さな粒子を除去したり、研磨等により粒子の角を丸めたり、更には球状化したり、粒度を整える等の処置を施したりすることによって、得ることが可能である。また、この形状係数が1.40よりも大きくなると、充填率を高めることが困難となる等の問題があり、そのために、熱伝導率が良好なRCSを得ることが困難となるのであり、それ故に、そのようなRCSを用いて造型された鋳型の崩壊性の向上に充分に寄与し難くなるのである。
【0032】
さらに、本発明において用いられる耐火性骨材は、中でも、鋳造工程において回収される回収砂を再生して得られる再生砂である場合において、骨材表面に付着する粘土分の含有量が0.20質量%以下であり、更に、骨材中の塩酸可溶分の含有量が3質量%以下となるように調整されていることが望ましい。なお、そのような耐火性骨材の表面に付着する粘土分は、通常の研磨処理によって除去することが可能であり、また、耐火性骨材中の塩酸可溶分、例えば非磁性金属成分等は、篩分けしたり、従来から公知の渦電流選別機を用いた選別処理等によって、非磁性無機粒子である耐火性骨材から、分離、除去されることとなる。これに反して、それら粘土分や塩酸可溶分の含有量が、上記の規定値よりも多くなると、耐火性骨材の充填率や熱伝導率の向上を充分に図り難くなり、本発明の目的が有利に実現され難くなる。
【0033】
そして、かくの如く、充填率等の特性が調整された耐火性骨材は、熱伝導特性に優れたものであって、特に、熱伝導率が0.22W/m・K以上の骨材粒子を与え、更にそのような骨材粒子を20質量%以上含むものとして調製されることにより、熱伝導性に優れたRCSを有利に与えるものとなるのであり、これによって、そのようなRCSを用いて造型される鋳型の崩壊性が、有利に改善され得ることとなる。
【0034】
なお、上述のような耐火性粒子(耐火性骨材)は、一般に、30~90のAFS指数を有していることが望ましく、中でも、好ましくは35~80、より好ましくは40~70のAFS指数を有していることが望ましい。このAFS指数が30よりも小さくなると、耐火性粒子の粒度が大きくなり過ぎて、熱伝導度に悪影響をもたらす他、鋳型としての特性を低下せしめる恐れがあり、更に、鋳肌の悪化等の問題も惹起されることとなる。一方、AFS指数が90を超えるようになると、耐火性粒子の粒度が小さくなり過ぎて、樹脂粘結剤と混練したときに、耐火性粒子の凝集物であるダマの発生量が多くなることに加えて、熱伝導率の向上を充分に実現し難くなる等の問題が惹起され易くなる。
【0035】
本発明に従うRCSは、上述の如き耐火性骨材に、所定の樹脂粘結剤を混練せしめて、かかる耐火性骨材の表面を、樹脂粘結剤にて被覆することによって形成されるものであるが、その際、用いられる樹脂粘結剤としては、従来から公知の各種のものを挙げることが出来、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、アミンポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等の中から、適宜に選択して用いられることとなるが、本発明にあっては、フェノール樹脂が有利に用いられることとなる。
【0036】
ところで、かかる本発明において、樹脂粘結剤として好適に用いられるフェノール樹脂は、よく知られているように、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒又は塩基性触媒の存在下において反応させることにより得られる、固体状乃至は液体状(ワニス形態のものやエマルジョン形態のものを含む)の縮合生成物であって、そこで用いられる触媒の種類によって、ノボラック型又はレゾール型と称されるものであり、所定の硬化剤乃至は硬化触媒の存在下又は非存在下において加熱することにより、熱硬化性を発現するフェノール樹脂である。
【0037】
なお、そのようなフェノール樹脂の原料として用いられるフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであって、例えば、フェノールの他に、クレゾール、キシレノール、p-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等の多価フェノール、ナフトール類等、及びそれらの混合物等の公知のものを挙げることが出来、そして、それらのうちの1種が、単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられることとなる。
【0038】
また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液の形態であるホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド等を挙げることが出来、更にそれら以外の公知のアルデヒド化合物も適宜に用いることが出来る。そして、それらアルデヒド類は、単独で用いられても、2種以上を組み合わせて用いられても、何等差支えない。
【0039】
ここで、本発明において用いられるノボラック型フェノール樹脂は、上記したフェノール類とアルデヒド類とを用いて、よく知られているように、酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸、更には、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛等の酸性物質にて縮合反応させて、形成されるものである。なお、その際、アルデヒド類(F)とフェノール類(P)の配合モル比(F/P)としては、用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定されるところであるが、好ましくは0.55~0.80の範囲内において選定されることとなる。
【0040】
一方、レゾール型フェノール樹脂は、上記のフェノール類とアルデヒド類とを用いて、従来と同様にして、公知の塩基性触媒にて縮合反応せしめることにより、形成されることとなる。なお、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や、アルカリ土類金属の酸化物を用いることが出来る他、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン等のアミン類、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンや、その他2価金属のナフテン酸塩や2価金属の水酸化物等を用いることが出来る。また、そのような縮合反応におけるアルデヒド類とフェノール類の配合モル比(F/P)は、そこで用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定されるところであるが、一般に1.1~4.0の範囲内において選定されることとなる。
【0041】
なお、上記のノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂は、それぞれ、単独で用いられる他、適宜の割合で混合して用いられても、何等差支えなく、また、公知の如く、フェノールの一部をビスフェノールA、ナフトール等の成分に変更して得られる変性フェノール樹脂も使用可能であり、更には、ベンジリックエーテル型のフェノール樹脂として用いることも可能である。
【0042】
また、上記したフェノール樹脂の如き樹脂粘結剤を、耐火性骨材に混練せしめるに際して、かかる樹脂粘結剤の配合量としては、使用する樹脂の種類や要求される鋳型の強度等を考慮して、適宜に決定されるところであって、一義的に規定され得るものではないが、一般的には、耐火性骨材の100質量部に対して、0.2~10質量部程度の範囲内であり、好ましくは0.5~8質量部、更に好ましくは1~5質量部の範囲内とされることとなる。
【0043】
このように、耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練して、かかる耐火性骨材の表面を樹脂粘結剤にて被覆してなるRCSは、本発明に従って、300℃以下で気化し得るように、沸点が300℃以下であり、且つ分子量が100以下である気化成分を300~2000ppmの割合で含み、更に、0.30W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成され、これによって、そのようなRCSから造型して得られる鋳型の鋳造後における崩壊性が、効果的に高められ得ることとなる。なお、かかる気化成分の含有量が300ppmよりも少なくなったり、また熱伝導率が0.30W/m・Kよりも低くなると、鋳型崩壊特性を充分に発揮し得なくなる問題があり、また、気化成分の含有量が2000ppmよりも多くなると、鋳型の造型に際して、RCSのブロッキングが惹起され易くなり、目的とする鋳型の造型が困難となる等の問題を惹起する。
【0044】
このため、本発明に従うRCSは、有利には、常温で自由流動性を有する乾態のRCSとして調整されるものであって、その動的安息角を測定したときに、動的安息角の測定値が得られるものである。ここで、動的安息角とは、片方の端面が透明で平らな面を有する円筒内に、RCSを収容し(例えば、直径:7.2cm、高さ:10cmの容器に体積の半分までRCSを入れる)、一定速度(例えば、25rpm)で軸周りに回転させ、その円筒内で流動しているコーテッドサンドの層の斜面が平面状となり、斜面と水平面との間で形成される角度を測定したものである。なお、かかる乾態のRCSにおける動的安息角としては、80°以下が好ましく、中でも、45°以下がより好ましく、とりわけ30°以下が更に好ましい。特に、耐火性骨材が球状である場合において、45°以下の動的安息角を有する乾態のRCSが、容易に実現され得ることとなる。これに対して、RCSが湿ったような状態で、円筒内で流動せずに、RCSの層の斜面が平面として形成されず、それ故に動的安息角が測定出来ないものが、湿態のRCSとされることとなる。
【0045】
そして、かくの如き本発明に従って、RCS中に含有せしめられる気化成分は、熱伝達媒体として機能するものであって、そのような気化成分としては、300℃以下の沸点を有する、分子量が100以下の公知の各種の物質の中から、適宜に選択されることとなるが、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素類;エタノール、n-ブタノール、t-ブタノール、フルフリルアルコール、メタノール等のアルコール類;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、トリオキサン、フルフラル等のエーテル・アセタール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;エチレンカルボナート、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール等の多価アルコール及びその誘導体類;乳酸、プロピオン酸、酪酸、無水マレイン酸等のカルボン酸類;フェノール等のフェノール類;アセトアミド、アセトニトリル、アニリン、イミダゾール、ジエチルアミン等の含窒素化合物;水等の液状物質の中から、適宜に選択されることとなる。特に、これらの中でも、本発明においては、水分、メタノール及びフェノールのうちの少なくとも何れか1種が、気化成分として有利に含有せしめられることとなる。
【0046】
なお、かかる気化成分の分子量が100を越えるようになると、気化成分は揮発しにくくなり、また鋳型の内部や隅々に浸透しにくくなるため、内部硬化性を向上させる本来の機能が低くなる等という問題があり、また、その沸点が300℃よりも高くなると、充分に揮発させ難くなって、鋳型内部での拡散がし難くなり、本発明の効果を充分に享受し難くなる問題がある。また、気化成分の沸点が低くなり過ぎると、鋳型造型前にRCSから気化成分が抜け出す恐れがあるところから、一般に、気化成分は、50℃より高い沸点を有していることが望ましいのである。従って、本発明において用いられる気化成分としては、有利には、50℃で液体であるものが、好適に用いられることとなる。
【0047】
ところで、本発明の対象とするRCSにおいては、その形成に際して用いられる樹脂粘結剤や、必要に応じて配合せしめられる硬化剤等の添加剤から、それらの含有成分や溶媒成分等として、前記した気化成分である水乃至は水分が必然的に持ち込まれて、RCSの含有成分の一つを構成することとなるのであるが、RCSの製造工程中において、そのような水乃至は水分を含む気化成分をRCS中に有利に保持して、RCS中における気化成分量が、本発明にて規定される範囲内に有利に確保され得るように、RCSには、更に、保水剤が好適に含有せしめられることとなる。
【0048】
このような保水剤の含有量としては、RCSにおける耐火性骨材の表面に形成される被覆層を与える樹脂粘結剤中の樹脂量(固形分)の100質量部に対して、一般に、0.5~50質量部の割合であることが望ましく、中でも、1~40質量部が好ましく、特に、2~30質量部であることが好ましい。この含有せしめられる保水剤の存在量が少な過ぎると、その添加効果を有利に享受することが困難となる恐れがあり、一方、その含有量が多くなり過ぎると、吸湿によるブロッキングが生じる恐れがあり、また使用量に応じた効果の向上が認められず、費用対効果の観点より得策ではない。なお、ここで用いられる保水剤は、保湿剤としても認識されているものであって、多価アルコール、水溶性高分子、炭化水素類、糖類、タンパク質、無機化合物等の公知のものの中から適宜に選択して、用いることが出来る。
【0049】
具体的には、そのような保水剤の一つである多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールプロパン等を例示することが出来、また水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物;アルカリレゾール樹脂等の液状レゾール樹脂;ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水性高分子;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;アルキルデンプン、カルボキシメチルデンプン、酸化デンプン等のデンプン誘導体等を挙げることが出来、更に、炭化水素類としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等を例示することが出来る。また、糖類としては、単糖類、オリゴ糖、デキストリン等の多糖類等を挙げることが出来、更に、タンパク質としては、ゼラチン等を挙げることが出来る。加えて、無機化合物としては、食塩、硫酸ソーダ、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ケイ酸塩等が挙げられる。そして、これら各種の保水剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ得るものである。
【0050】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、本発明に従うRCSには、上記した保水剤と共に、或いは、それに代えて、崩壊性向上剤として、酸素酸塩、リン酸エステル、脂肪族縮合リン酸エステル、有機カルボン酸金属塩及び炭酸化合物のうちの少なくとも何れか一つが、更に含有せしめられ、これによって、そのようなRCSを用いて造型される鋳型の崩壊性が効果的に向上せしめられることとなる。なお、ここで用いられる酸素酸塩としては、一般に、アルカリ金属の酸素酸塩であることが望ましく、具体的には、硝酸アルカリ金属塩、過マンガン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アルカリ金属塩、タングステン酸アルカリ金属塩等を挙げることが出来る。中でも、鋳型強度面から、硝酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アルカリ金属塩及びタングステン酸アルカリ金属塩が好ましく、更には、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等に代表される硝酸のアルカリ金属塩が、特に好ましく用いられることとなる。このような酸素酸塩の含有量としては、一般に、樹脂粘結剤の100質量部に対して、0.1~50質量部程度、好ましくは1~20質量部程度の割合が採用されることとなる。
【0051】
さらに、崩壊性向上剤として用いられる上記したリン酸エステルや脂肪族縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ブチルホスホン酸ジブチル等の脂肪族や芳香族の各種のリン酸エステル類、Fyrol PNX(ICL JAPAN株式会社製)等の脂肪族縮合リン酸エステル類を挙げることが出来、それらの中から適宜に選択、使用されることとなる。なお、このリン酸エステル類及び/又は脂肪族縮合リン酸エステル類の含有量としては、一般に、樹脂粘結剤の100質量部に対して、0.5~30質量部、より好ましくは1~10質量部程度の割合が、採用されることとなる。
【0052】
更にまた、上記せる有機カルボン酸金属塩は、有機カルボン酸と金属との塩である。そして、そのような有機カルボン酸金属塩を構成する有機カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エライジン酸などの脂肪酸;シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、o-クロロ安息香酸、m-クロロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、o-ブロモ安息香酸、m-ブロモ安息香酸、p-ブロモ安息香酸、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-メトキシ安息香酸、m-メトキシ安息香酸、p-メトキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、酒石酸などの飽和二塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二塩基酸などを例示することができる。
【0053】
一方、上記有機カルボン酸金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、バリウム、スズなどを例示することができる。二塩基酸においては、少なくとも1つのカルボキシル基が上記金属との塩とされる。この有機カルボン酸金属塩の配合量は、フェノール樹脂の100質量部に対して0.1~15質量部程度の範囲に設定するのが好ましい。鋳型として要求される性能によって、この配合量は変動するが、一般的に有機カルボン酸金属塩の配合量が0.1質量部未満では、鋳型の崩壊性が不十分になる傾向があり、逆に15質量部を超えると、粘結剤の強度が低下して、鋳型の取り扱い性が悪くなる傾向がある。
【0054】
加えて、崩壊性向上剤としては、炭酸金属塩、炭酸水素金属塩及び過炭酸金属塩からなる群より選ばれた炭酸化合物も使用可能である。そこにおいて、炭酸金属塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸鉛、炭酸銅、炭酸アルミニウム等が用いられる。また、炭酸水素金属塩としては、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム等が用いられる。更に、過炭酸金属塩としては、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸リチウム等が用いられる。本発明において、特に好ましい炭酸化合物としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム,炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸リチウムがあり、それらが単独で又は混合して用いられることとなる。
【0055】
また、本発明の他の望ましい態様によれば、本発明に従うRCSには、上記した保水剤及び/又は崩壊性向上剤と共に、或いは、それらに代えて、金属酸化物、金属粉末、非酸化物セラミックス等の良熱伝導体が更に含有せしめられ、これによって、鋳型の崩壊性がより一層向上せしめられ得ることとなる。ここで、そのような良熱伝導体は、一般に、平均粒子径が100μm以下の粒子乃至は粉状形態を呈するものであって、耐火性骨材と樹脂粘結剤の混練に際して配合されて、RCS中に含有せしめられることとなる。そして、かかる良熱伝導体の一つである金属酸化物としては、具体的には、鉄、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛等の金属の酸化物であって、例えば、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四三酸化鉄、水酸化酸化鉄、酸化第一コバルト、酸化第二コバルト、酸化第一ニッケル、酸化第二ニッケル、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化亜鉛等を挙げることが出来る。また、金属粉末としては、鉄粉、アルミニウム粉、亜鉛粉末、銅粉等が用いられ、更に非酸化物セラミックスとしては、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン、炭素複合材料等が用いられる。なお、かかる良熱伝導体の合計含有量としては、一般に、耐火性骨材の100質量部に対して、0.1~3質量部程度、好ましくは0.1~1質量部程度、更に好ましくは0.1~0.5質量部程度とされることとなる。
【0056】
なお、本発明にあっては、上述の如き配合成分の他にも、必要に応じて、RCSや鋳型の物性改善等を目的として、従来より一般的に用いられている各種の添加剤も、適宜に配合されて、RCS中に含有せしめることが可能である。例えば、RCSの流動性の向上等に寄与する滑剤として、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類は、樹脂、RCSの何れの製造時にも含有させることが可能である。ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等は、RCS製造時に添加することが可能である。また、鋳型の硬化速度の向上に寄与する添加剤として、ベンゼンカルボン酸類;安息香酸、サリチル酸、パラアミノ安息香酸、アントラニル酸、フタル酸、テレフタル酸等を、樹脂、RCSの何れの製造時に含有させることも可能である。更に、耐火性骨材と樹脂粘結剤との結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を、樹脂、RCSの何れの製造時にも含有させることが出来る。加えて、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も使用可能である。
【0057】
ところで、上述せる如き配合成分を用いて、本発明に従うRCSを製造するに際しては、所定の耐火性粒子(骨材)に対して、樹脂粘結剤や他の配合成分が、常法に従って混練せしめられることとなるのであるが、そこで採用される製造法としては、特に限定されるものではなく、ドライホットコート法やセミホットコート法、コールドコート法、粉末溶剤法等の、従来から公知の方法が、何れも採用され得るところである。尤も、本発明にあっては、特に、ワールミキサーやスピードミキサー等の混練機内で、予熱された耐火性粒子と樹脂粘結剤とを混練した後、ヘキサメチレンテトラミン等の所定の硬化剤や硬化促進剤の水溶液、更には他の配合成分等を加えると共に、送風冷却によって、塊状内容物を粒状に分離させ、次いで、ステアリン酸カルシウムの如き滑剤を加える、所謂ドライホットコート法の採用が推奨される。なお、上記したドライホットコート法等における耐火性粒子の予熱温度としては、最終的に得られるRCS中の水分を含む気化成分の含有量が、本発明に規定される範囲内となるように、RCSの製造条件等を考慮して、適宜に選定されることとなるが、一般には、100~160℃程度の温度が、好ましくは100~140℃程度の温度が採用される。また、樹脂粘結剤や硬化剤/硬化促進剤等の添加剤を、耐火性粒子と混練せしめるタイミングとしては、当業者の知識に基づいて適宜に選定されるところであって、単独に、順次混練せしめられる他、適宜に組み合わせて混練することも、可能である。
【0058】
かくして得られる本発明に従うRCSにあっては、所定の気化成分を300~2000ppmの割合で含有していると共に、その粒状形態において熱伝導率を測定したときに、従来からのRCSとは異なり、0.30W/m・K以上、好ましくは0.33W/m・K以上の熱伝導率を有しているものであって、これにより、本発明の目的とする鋳型崩壊性の向上に有利に寄与し得ることとなるのである。ここで、RCSの熱伝導率は、JIS-R-2551-1:2007に準拠した非定常熱線加熱法(プローブ法)により、測定され得るものである。具体的には、京都電子工業株式会社製の迅速熱伝導率計(QTM-710)を用いて、所定の粉体容器内に、測定対象であるRCSを収容して、プローブ(加熱線+熱電対)を用いて、かかる加熱線に一定電流を通じて発熱させる一方、加熱線の温度を熱電対にて測定して、その得られた昇温グラフ(時間軸を対数目盛りにしたグラフ)の傾きから、測定対象であるRCSの熱伝導率が、求められるのである。
【0059】
また、かくの如き本発明に従うRCSは、その製造工程において生じる、複数の耐火性粒子が結合(凝集)した複合粒子である、所謂ダマの含有量が少ないものであることが望ましく、一般に、製造工程から取り出されたRCSを篩分けしたとき、20メッシュの篩を通過し得なかったもの、換言すれば20メッシュ篩上のダマ量が、RCSの総量に対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であることが推奨されるのである。これに反して、RCS中のダマ量が多くなると、鋳型を造型するための成形型の成形キャビティ内への充填性が悪くなって、鋳型の硬化特性に悪影響をもたらし、鋳型強度等の鋳型特性の向上を充分に図り難くなることに加えて、鋳造後における鋳型の崩壊性も充分でなくなる等の問題を、惹起するようになる。なお、かかるダマの含有量は、本発明に関わる好ましい範囲の粒度指数(AFS)の耐火性骨材を用いることと、添加する平均粒子径が100μm以下の金属酸化物等の良熱伝導体等の量を好ましい範囲に制限することで、制御が可能となる。
【0060】
さらに、上述の如くして得られるRCSを用いて、シェルモールド鋳型の如き、所定の鋳型を造型するに際しては、かかるRCSの加熱硬化を図るべく、加熱下において、目的とする鋳型の造型が行なわれることとなるが、そのような加熱造型方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の手法が、何れも有利に用いられることとなる。例えば、上述せる如きRCSを、目的とする鋳型を与える所望の形状空間を有する、150~300℃程度に予熱された成形型内に、重力落下方式や吹込み方式等によって充填せしめて、硬化させた後、かかる成形型から硬化した鋳型を抜型することにより、目的とする鋳造用鋳型を得ることが出来るのである。特に、かかるRCSを用いて、250℃×60秒の条件下で造型して得られた鋳型は、その硬化率が面積比で30%以上となる特徴を有するものとなるのである。なお、その造型された鋳型には、更に必要に応じて、200~300℃程度の温度での2次焼成処理が施され、それによって、鋳型の硬化促進が有利に惹起され得て、鋳型の崩壊性が格段に向上せしめられ得ることとなる。
【0061】
また、かかる造型して得られた鋳型を用いて、アルミニウム合金溶湯等の所定の金属溶湯の鋳造が行なわれ、その凝固の後、ノックアウトマシン等の振動機を用いて、鋳物に振動を与えて、鋳型を崩壊させることにより、鋳型が除去されることとなるのであるが、本発明に従うRCSを用いた鋳型にあっては、RCS中の気化成分を介しての熱伝導作用に基づくところの鋳型の硬化率の向上と共に、RCS自体が高い熱伝導率を有するものであるところから、注湯される金属溶湯の熱によって、耐火性骨材を結合する樹脂粘結剤の劣化が効果的に進行され得て、結合力が有利に低下せしめられるようになるのであり、これにより、短時間の振動の付与によって、容易に、鋳型が崩壊せしめられ得、以て、鋳型(鋳物砂)の除去作業が、簡便に且つ容易に行なわれ得ることとなったのである。
【実施例0062】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。なお、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0063】
また、以下の記載において、部及び%は、充填率が容器%であること以外は、特に断りのない限り、それぞれ、質量部及び質量%を意味するものである。更に、以下において製造されたRCSの各特性や、それから得られた鋳型特性や鋳型の崩壊性については、以下の方法に従って評価されたものである。
【0064】
-充填率の測定-
それぞれの鋳物砂について、本件明細書本文中の先に説明した測定方法に従って、充填率を求める。
【0065】
-形状係数の測定-
それぞれの鋳物砂について、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を使用して、その1gあたりの実際の砂粒の表面積を測定し、その得られた値を、砂粒が全て球形であると仮定した場合の表面積である理論的表面積で割った値を求め、それを、形状係数とする。
【0066】
-粘土分含有量の測定-
試料砂(鋳物砂)の50gを精秤して、処理前の砂質量を求め、それを500mlのガラスビーカに収容した後、水300mlを加え、更に水酸化ナトリウムの1粒(約200mg)を添加し、次いで、電気ヒータにて30分間沸騰させた後、その沸騰した湯を捨て、水で数回洗浄し、更にその後、乾燥機にて乾燥させて、その乾燥後の試料砂の質量を精秤し、処理後の砂質量とする。そして、粘土分(%)は、それら得られた砂質量に基づいて、以下の式に従って算出する。
粘土分(%)=[(処理前の砂質量)-(処理後の砂質量)]
/(処理前の砂質量)×100
【0067】
-塩酸可溶分含有量の測定-
試料砂の約10gを精秤して、ケルダールチューブ内に収容した後、更に、20%塩酸の50mlをケルダールチューブ内に投入して、180℃の温度で約20分間加熱する。次いで、この加熱の後、ケルダールチューブを冷却し、その内容物を濾取して、水道水にて充分に水洗した後、加熱乾燥させて、かかる塩酸処理された試料砂の重量を精秤する。そして、その塩酸処理によって減少した試料砂の減少分を百分率にて表わして、それを、塩酸可溶分の含有量とする。
【0068】
-水分率(%)の測定-
RCS中の含水分量は、カールフィッシャー法や乾燥機等で加熱したときの重量変化によって、測定可能であるが、ここでは、以下の手法によって求めた。即ち、先ず、得られたRCSの2.0gを、脱水溶剤であるアクアミクロンML(三菱化学株式会社製)の100mLが入ったカールフィッシャー水分測定器(平沼産業株式会社製:AQV-7 HIRANUMA AUQA COUNTER)のフラスコ[予め、カールフィッシャー試薬(Sigma-Aldrich Laborchemikalien Gmbh社製:ハイドラナールコンポジット5)を滴下して、水分を0にしておく]内に投入した後、マグネチックスターラーを用いて数分間撹拌し、その後、前記ハイドラナールコンポジット5を滴下して、水分量を定量し、その得られた値から、水分率を算出する。
【0069】
-熱伝導率の測定-
京都電子工業株式会社製の迅速熱伝導率計:QTM-710を用いて、先に記載の方法に従って求められた昇温グラフから、各試料(RCS)の熱伝導率を算出する。
【0070】
-ダマ含有量の測定-
それぞれの実施例で得られたRCSを20メッシュの篩で篩分け、その篩上の20メッシュ以上の粒径を有する複合粒子(ダマ)を取り出す。ダマ量は、混練に使用した砂(耐火性骨材)の質量に対するダマの質量の質量%として、以下の式に従って算出する。
ダマ量(%)=[ダマ質量/(ダマ質量+20メッシュ以下の砂の質量)]×100
【0071】
-鋳型強度の測定-
各RCSを用いて得られた、幅:10mm×厚み:10mm×長さ:60mmの大きさの試験片(成形温度:250℃、時間:60秒)について、更にはかかる試験片を2次焼成(250℃×240秒)したものについて、それぞれの破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製:デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、測定する。そして、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の式により、算出して、鋳型強度とする。
抗折強度(N/cm2)=1.5×LW/ab2
[但し、L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験片の幅(cm)、 b:試験片の厚み(cm)]
【0072】
-硬化率の測定-
直径:50mm×高さ:50mmの円柱状鋳型を造型(250℃×90秒)した後、冷却し、その得られた冷却鋳型を、高さ:25mmの位置で切断する。次いで、その切断された鋳型の切断面より未硬化部をアセトンで溶解除去した後、乾燥させて、重量を測定し、その得られた値を、完全硬化時の重量で除し、そしてその得られた比率を、硬化率とする。
【0073】
-崩壊性の評価-
先ず、
図1に示されるように、幅:40mm、長さ:75mm、厚さ:25mmのサイズのドッグボーン型抗張力試験片2を、各RCSでそれぞれ作製して、崩壊性試験用中子とした。
【0074】
次いで、125mm×80mm×75mmのサイズにおいて、上記中子試験片2より少し大きな空間を有する外型4を別途作製し、その中に、上記の中子試験片2をセットした後、720℃の温度のアルミニウム合金溶湯を、S/M:0.383において鋳込んで、目的とする鋳物6(
図2参照)を鋳造した。
【0075】
そして、かかる鋳物6の冷却の後、鋳物6の1箇所(
図2における白抜き矢印で示される部位)に、チッピング圧:0.3MPaにおいて、エアハンマーにより3秒間の振動を与えて、鋳物の排出口(径:16mm)より砂を排出する操作を10回繰り返した時の排出砂の総質量を測定し、全部排出されたときの総質量で除して、その量を%で表示した。そこでは、その数値が大きくなる程、崩壊性が良好であることを示している。
【0076】
-耐火性骨材の調整-
先ず、実施例や比較例において用いた耐火性骨材の一つである新砂として、オーストラリア産の天然珪砂(商品名:フラタリーサンド)を準備した。また、かかる耐火性骨材の他の一つである再生砂は、鋳造工程から回収された珪砂を、常法に従って磁気分離処理、渦電流選別処理及び焙焼処理を施して再生し、更にその得られた再生処理砂を研磨処理することによって、得られたものである。
【0077】
そして、各実施例や各比較例においては、上記で準備された再生砂及び新砂を用い、それらの所定割合の混合砂として、或いはそれらの単独砂として、用いられている。なお、実施例や比較例における耐火性骨材(混合砂)は、何れも、それぞれのAFS指数を与える篩を用いて篩い分けして得られたものであり、また、各骨材中のSiO2 含有量は、蛍光X線分析法で測定されたものであり、更に充填率は、上述の如く、明細書本文中において説明した測定方法によって求められたものである。加えて、実施例1~25において用いられた再生砂と新砂との混合砂からなる耐火性骨材は、上述の測定手法による測定の結果、何れも、形状係数が1.40以下であり、表面付着の粘度分の含有量が0.20%以下であると共に、塩酸可溶分の含有量も3%以下であるものであった。
【0078】
-フェノール樹脂Aの製造-
温度計、撹拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノール940部、47%ホルマリン440部、及びシュウ酸2.8部を、それぞれ投入した。次いで、撹拌下、反応容器内を徐々に昇温して、還流温度に到達せしめた後、90分間還流して反応させ、更に、反応液の温度が170℃になるまで加熱及び減圧濃縮することにより、重量平均分子量(Mw)が1800であり、軟化点が86℃であり、遊離フェノールを0.5%含有するノボラック型フェノール樹脂である固形のフェノール樹脂Aを得た。
【0079】
-フェノール樹脂Bの製造-
温度計、撹拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノール188部、ビスフェノールA1824部、47%ホルマリン428部、及びシュウ酸2.8部を、それぞれ投入した。次いで、撹拌下、反応容器内を徐々に昇温して、還流温度に到達せしめた後、90分間還流して反応させ、更に、反応液の温度が170℃になるまで加熱及び減圧濃縮することにより、重量平均分子量(Mw)が1700であり、軟化点が92℃であり、遊離フェノールを0.8%含有するビスフェノールA変性ノボラック型フェノール樹脂である固形のフェノール樹脂Bを得た。
【0080】
-フェノール樹脂Cの製造-
温度計、撹拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノール680部、47%ホルマリン535部、及びヘキサメチレンテトラミン101部をそれぞれ仕込み、約60分を要して70℃まで昇温させ、そのまま5時間反応させた。その後、反応液を90℃になるまで加熱しつつ、減圧、脱水した後、エチレンビスステアリン酸アミドの35部を加えて、重量平均分子量(Mw)が2400、遊離フェノール含有量が4.5重量%である固形のアンモニアレゾール型フェノール樹脂であるフェノール樹脂Cを得た。
【0081】
-フェノール樹脂Dの製造-
温度計、撹拌装置及びコンデンサを備えた反応容器に、フェノールの940部、47%ホルマリンの1280部、及び50%苛性ソーダ水溶液の94部を、それぞれ投入した。次いで、撹拌下、反応容器内を徐々に昇温して、80℃で3時間反応せしめた後、減圧濃縮することにより、重量平均分子量(Mw)が2200で、遊離フェノール含有量が2.3重量%である、液状のレゾール型フェノール樹脂としてのフェノール樹脂D(樹脂固形分60%)を得た。この液状のフェノール樹脂Dは、また、保水効果をも有するものである。
【0082】
-実施例1-
再生砂の50%と新砂の50%とからなる混合砂の100部を、サンドヒーターにて130~150℃に加熱した後、フェノール樹脂Aの75%と液状フェノール樹脂Dの25%とからなる樹脂粘結剤の1.5部を配合して、スピードミキサーにて約50秒間混練した後、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンを、樹脂粘結剤中の樹脂固形分に対して3.0%となる割合において、冷却水に溶かして得られた硬化剤水溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練し、更にステアリン酸カルシウムの0.1部を添加して、15秒間混合した後、ミキサーから排出することにより、目的とする常温流動性を有する乾態のRCSを得た。
【0083】
-実施例2~実施例25-
耐火性骨材として、下記表1~表3に示される配合割合の再生砂と新砂とからなる混合砂を用いると共に、硬化剤の使用量や樹脂粘結剤を構成するフェノール樹脂の構成及び使用割合、更には所定の保水剤、崩壊性向上剤、良熱伝導体及び追加気化成分を、下記表1~表3に示される割合において配合することとしたこと以外は、実施例1と同様にして、目的とする乾態のRCSを、それぞれ製造した。なお、保水剤、崩壊性向上剤及び良熱伝導体の添加乃至は配合は、樹脂粘結剤の配合と共に実施し、また追加気化成分については、硬化剤水溶液に添加、混合せしめて、硬化剤水溶液の添加と同時に実施した。そこで、保水剤として用いたPEGは、ポリエチレングリコールを示し、またPPGは、ポリプロピレングリコールを示すものである。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
-比較例1~比較例8-
耐火性骨材として、下記表4に示される構成の混合砂を用いると共に、硬化剤の使用量や樹脂粘結剤の構成に加え、保水剤、崩壊性向上剤、追加気化成分を、下記表4に示される割合としたこと以外は、実施例1と同様にして、各種のRCSを製造した。なお、保水剤、崩壊性向上剤は、樹脂粘結剤と共に、予熱された耐火性骨材に混練せしめる一方、追加気化成分は、硬化剤水溶液に混合して、添加せしめるようにした。
【0088】
【0089】
-RCSの評価-
上記の実施例1~25及び比較例1~8において、それぞれ製造された各種のRCSについて、気化成分の含有量、ダマ含有量、造形後及び二次焼成後の鋳型特性(鋳型強度及び硬化率)について評価すると共に、それらRCSから得られる鋳型のアルミニウム合金の鋳造試験を実施して、その崩壊性の評価を行い、それらの結果を、下記表5~表8に示した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
かかる表5~表7の結果から明らかな如く、実施例1~25において得られた各RCSは、何れも、耐火性骨材として、充填率が53%以上であるSiO2 質の耐火性粒子を用いたものであると共に、水分を主体とする気化成分の含有量が300~2000ppmの範囲内であり、且つRCSの熱伝導率が0.30W/m・K以上となるものであるところから、鋳造後における鋳型の崩壊が、エアーハンマーによる振動を加えることにより、直ちに進行して、その崩壊性が極めて良好であることが認められる。特に、実施例6,7,10,12~14及び20~22において得られたRCSは、何れも、崩壊性向上剤の配合による相乗的な効果によって、鋳型の崩壊性において、極めて優れた結果を示すものであった。
【0095】
これに対して、比較例1~8において得られたRCSにあっては、表8に示される如く、高いSiO2 含有量を有する耐火性粒子を用いてはいるものの、その充填率が低いものであったり、気化成分の含有量が少ないものであるために、熱伝導率が充分でなく、鋳型特性が悪く、また鋳型の崩壊性試験においても鋳型の有効な崩壊が認められず、鋳型の崩壊性において、劣るものであることが認められた。