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特開2023-147764発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂発泡成形体、および、発泡性粒子の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147764
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂発泡成形体、および、発泡性粒子の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055463
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】吉田 早織
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32K
4F074AA33
4F074AA33K
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA45
4F074CA49
4F074CC27X
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】成形時の融着性は維持したまま、分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を効率よく製造する方法を提供する。そのような製造方法で得られる、分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供する。そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。発泡性粒子に付着した分散剤や重合粉末を効率よく十分に洗浄できる、発泡性粒子の洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、該工程において、該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、該発泡性粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~390質量部の範囲に調整する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
該工程において、該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、該発泡性粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~390質量部の範囲に調整する、
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記発泡性粒子が、1段法、2段法、およびシード重合法のいずれかにより形成される、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法によって得られる、発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である、
予備発泡スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項3に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
請求項4に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される、スチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項7】
スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する洗浄方法であって、
該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、
該発泡性粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~395質量部の範囲に調整する、
発泡性粒子の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂発泡成形体、および、発泡性粒子の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、発泡スチロール土木工法に用いられる盛土材料、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材、クッションの充填剤等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子(代表的には、発泡性スチレン系樹脂粒子あるいはそれを予備発泡させた予備発泡スチレン系樹脂粒子)を原料として製造される型内発泡成形体が、所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。このような発泡成形体は、互いに融着した複数の発泡性粒子により構成されている。
【0003】
従来、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造するにあたっては、スチレン系単量体を含む単量体成分を重合して発泡剤を添加することによって得られる発泡性粒子の表面に付着している分散剤や重合粉末を除去するために、該発泡性粒子を、大量の水で洗浄しているため、発生する大量の廃液の処理が必要であるという問題がある。
【0004】
発泡剤の含浸工程にて懸濁安定剤として存在させた難水溶性無機塩を分解した後、この懸濁液から分離して得られた発泡性樹脂粒子の洗浄方法であって、この発泡性樹脂粒子を収納している洗浄槽内にこの洗浄槽内を攪拌することなく洗浄水を供給して発泡性樹脂粒子を洗浄しつつ、発泡性樹脂粒子の洗浄によって発生した排水を洗浄槽外に排出し、この洗浄槽外に排出された排水中の塩素イオン濃度が10ppm以下となるまで上記洗浄槽内に洗浄水を供給して発泡性樹脂粒子の洗浄を行なうことを特徴とする発泡性樹脂粒子の洗浄方法によって塩酸に起因する塩素イオンを効果的に除去して設備の腐食を防ぐことができる発泡性樹脂粒子の洗浄方法が報告されている(特許文献1)。しかし、この洗浄方法では、洗浄槽の上部の発泡性樹脂粒子についてはピュアな洗浄水が供給されることによって洗浄されやすいが、洗浄槽の中心部や下部まで完全に洗浄するためには大量の洗浄水が必要であり、また、洗浄時間が長時間になるという問題がある。
【0005】
分散安定剤として酸化マグネシウムを含有する水性媒体中で、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて得られた発泡性樹脂粒子を、酸化マグネシウムを補集し得る水溶性の塩で処理して、前記発泡性樹脂粒子に付着した酸化マグネシウムを洗浄除去する洗浄方法が報告されている(特許文献2)。しかし、この洗浄方法は、酸化マグネシウムを分散剤に使用した場合に発泡性樹脂粒子に付着した分散剤が除去できるという方法であり、発泡性樹脂粒子に付着した重合粉末の除去については検討されていない。
【0006】
また、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造時に微粉末が生成することを抑制する方法として、ポリスチレン系樹脂種粒子が懸濁された水性媒体中に、種粒子100質量部に対し21質量部以上30質量部未満の範囲のスチレン系単量体を添加・吸収させる第1工程と、次いで、重合開始剤と単量体とを水性媒体中に添加し、単量体の重合反応を開始させる第2工程と、重合反応における単量体の重合転化率が75~95%となった時点で、残りの単量体を連続的又は断続的に供給し、重合させる第3工程とを含み、前記第1工程及び第2工程で添加する単量体は、式(M1+M2)÷(QP+M1+M2)×100(式中、M1は第1工程での単量体添加量、M2は第2工程での単量体添加量、QPは種粒子の質量)で算出される百分率が26%以上35%未満の範囲となるように添加する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が報告されている(特許文献3)。しかし、この方法は、製造時の微粉末の生成を抑制することを目的としており、最終的に発泡性樹脂粒子に付着してしまった分散剤や重合粉末については適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-263912号公報
【特許文献2】特開1999-240977号公報
【特許文献3】特開2011-195769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、成形時の融着性は維持したまま分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を効率よく製造する方法を提供することにある。また、そのような製造方法で得られる、分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することにある。さらに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することにある。さらに、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することにある。さらに、発泡性粒子に付着した分散剤や重合粉末を効率よく十分に洗浄できる、発泡性粒子の洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、
スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する工程を含む、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
該工程において、該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、該発泡性粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~390質量部の範囲に調整する。
【0010】
一つの実施形態によれば、上記発泡性粒子が、1段法、2段法、およびシード重合法のいずれかにより形成される。
【0011】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、上記製造方法によって得られる。
【0012】
本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、
上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子であって、
該予備発泡の嵩発泡倍率が2倍~150倍である。
【0013】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記発泡性スチレン系樹脂粒子から成形される。
【0014】
本発明の実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、上記予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形される。
【0015】
本発明の実施形態による発泡性粒子の洗浄方法は、
スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する洗浄方法であって、
該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、
該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~395質量部の範囲に調整する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形時の融着性は維持したまま分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を効率よく製造する方法を提供することができる。また、そのような製造方法で得られる、分散剤や重合粉末の表面付着量が十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。さらに、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供することができる。さらに、そのような、発泡性スチレン系樹脂粒子や予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体を提供することができる。さらに、発泡性粒子に付着した分散剤や重合粉末を効率よく十分に洗浄できる、発泡性粒子の洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。本明細書における「質量」は「重量」と読み替えてもよい。
【0019】
≪≪A.発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法≫≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する工程を含む。すなわち、本明細書においては、発泡性スチレン系樹脂粒子を製造するにあたって、水で洗浄する前の粒子を「発泡性粒子」と称し、水で洗浄した後の粒子を「発泡性スチレン系樹脂粒子」と称するものとする。
【0020】
≪A-1.発泡性粒子≫
発泡性粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む。
【0021】
<A-1-1.スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂は、該スチレン系樹脂を構成する単量体成分としてスチレン系単量体を含む。すなわち、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を含む単量体成分を重合させて得られる。
【0022】
スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体の全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0023】
単量体成分は、主成分としてスチレン系単量体を含んでいれば、他の単量体を含んでいてもよい。本明細書において「主成分」とは、全成分中の該成分の含有割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0024】
他の単量体としては、代表的には、ビニル単量体が挙げられる。
【0025】
ビニル単量体としては、例えば、多官能単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体が挙げられる。ビニル単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0026】
多官能単量体の具体例としては、例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;が挙げられる。多官能単量体を用いることにより、スチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。スチレン系樹脂を構成する単量体成分中の多官能単量体の含有量は、好ましくは0質量%~0.1質量%であり、より好ましくは0.005質量%~0.05質量%である。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。スチレン系樹脂を構成する単量体成分中のアクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~3.0質量%である。
【0028】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0029】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルなどが挙げられる。
【0030】
スチレン系樹脂は、汎用スチレン樹脂(GPPS)、市販されているスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないスチレン系樹脂であってもよいし、リサイクル原料のスチレン系樹脂であってもよい。リサイクル原料は、代表的には、使用済みのスチレン系樹脂発泡成形体であってもよい。リサイクル原料は、食品包装用トレー、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等であってもよい。リサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものであってもよい。
【0031】
1つの実施形態においては、スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との含有比(スチレン系樹脂/オレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。スチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。スチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0032】
オレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用することができる。オレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。具体例としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm~0.94g/cmであり、より好ましくは0.91g/cm~0.93g/cmである。高密度は、好ましくは0.95g/cm~0.97g/cmであり、より好ましくは0.95g/cm~0.96g/cmである。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0033】
<A-1-2.発泡剤>
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0034】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;が挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、発泡剤としては、脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。発泡剤としては、より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、およびこれらの組み合わせである。
【0035】
発泡性粒子中における発泡剤の含有量は、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を形成するに十分な量である限り、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の含有量は、発泡性粒子100質量部に対して、好ましくは2質量部~16質量部であり、より好ましくは3質量部~8質量部である。
【0036】
<A-1-3.発泡性粒子の製造方法>
発泡性粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造しうる。このような製造方法は、代表的には、スチレン系単量体を含む単量体成分を重合させる工程と、重合の途中および/または重合の終了後に発泡剤を添加して発泡性粒子を得る工程と、を含む。
【0037】
単量体成分の重合方法としては、代表的には、懸濁重合法が挙げられる。
【0038】
重合の途中および/または重合の終了後に発泡剤を添加して含浸させる方法は1段法と呼ばれる。
【0039】
発泡剤を添加せずに重合して得られた粒子をふるい分けして必要な粒径範囲の粒子のみを得て、この粒子と水と分散剤を供給した反応容器を昇温して分散液を調製し、この分散液に発泡剤を添加して粒子に発泡剤を含浸させる方法は2段法(後含浸法)と呼ばれる。
【0040】
小粒子のスチレン系樹脂粒子(種粒子)と水と分散剤を供給した反応容器を昇温して分散液を調製し、ここに、重合開始剤を溶解した単量体成分を連続的に供給し、必要に応じて、さらに単量体成分を連続的に供給し、これによって重合を行い、目的とする粒子径まで成長させる方法はシード重合法と呼ばれる。シード重合法において、発泡剤は、重合の途中および/または重合の終了後に添加され、含浸される。
【0041】
1段法、2段法、およびシード重合法のいずれかの方法によっても、発泡性粒子を形成することができる。
【0042】
スチレン系単量体の重合における重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,2-t-ブチルパーオキシブタン、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサイハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
重合開始剤としては、分子量を調整し、残存単量体量を減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50℃~80℃の範囲にある重合開始剤と、10時間の半減期を得るための分解温度が80℃~120℃の範囲にある重合開始剤とを併用してもよい。重合開始剤は、種粒子に均一に吸収させる必要があることから、液状物として添加することが好ましい。重合開始剤を直接に分散液中に添加すると、種粒子に均一に吸収されにくくなるので、重合開始剤は水性媒体に懸濁または乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し、分散剤を加えて、水性懸濁液として添加することが好ましい。
【0044】
重合開始剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用量を採用しうる。このような使用量としては、スチレン系単量体に対して、好ましくは0.1質量%~1.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~0.8質量%である。
【0045】
分散剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散剤を採用しうる。このような分散剤としては、例えば、懸濁安定剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0046】
懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの難溶性無機金属塩;が挙げられる。難溶性無機金属塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常併用される。
【0047】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩;β-テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩;が挙げられる。
【0048】
重合開始剤は、好ましくは、スチレン系単量体を含む単量体成分または溶剤に溶解して添加する。溶剤としては、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;が挙げられる。溶剤を用いる場合は、通常、スチレン系単量体に対して10質量%以下の量で用いる。
【0049】
スチレン系単量体を含む反応液(代表的には懸濁液)は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、着色剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
発泡性粒子を製造する際には、発泡剤とともに発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0051】
発泡性粒子を製造する際には、発泡剤とともに難燃剤や難燃助剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロヘキサン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’(2’’,3’’-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパンが挙げられる。難燃助剤としては、例えば、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサンが挙げられる。
【0052】
発泡性粒子は、溶融押出法により製造してもよい。溶融押出法は、スチレン系樹脂ペレットを樹脂供給装置に供給し、樹脂供給装置内で溶融されたスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤を含有した溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から押し出し、その後冷却して、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法である。ダイの小孔から冷却用液体中に直接押し出し、押し出した直後に押出物を回転刃で切断し、切断された粒子を冷却用液体中で冷却する方法はホットカット法と呼ばれる。ダイの小孔から一旦空気中にストランド状に押し出し、ストランドが発泡する前に冷却用水槽中に導き、ストランドを冷却用水槽中で冷却した後、切断し円柱状の粒子とする方法はストランドカット法(コールドカット法)と呼ばれる。ホットカット法、ストランドカット法(コールドカット法)のいずれの方法によっても、発泡性粒子を製造することができる。
【0053】
≪A-2.発泡性粒子を水で洗浄する工程≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する工程を含む。この工程を、以下、洗浄工程と称することがある。
【0054】
洗浄工程においては、水の温度を特定の温度範囲に調整する。この温度範囲としては、好ましくは1℃~37℃の範囲であり、より好ましくは3℃~35℃の範囲であり、さらに好ましく5℃~30℃の範囲であり、特に好ましくは8℃~25℃の範囲であり、最も好ましくは10℃~20℃の範囲である。このような温度範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、成形品の融着性は維持したまま、分散剤や重合粉末の表面付着量がより十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【0055】
洗浄工程においては、発泡性粒子100質量部に対する水の量を特定の量範囲に調整する。この量範囲としては、好ましくは31質量部~390質量部の範囲であり、より好ましくは35質量部~350質量部の範囲であり、さらに好ましくは40質量部~300質量部の範囲であり、特に好ましくは45質量部~200質量部の範囲であり、最も好ましくは45質量部~180質量部の範囲である。このような量範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、分散剤や重合粉末の表面付着量がより十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【0056】
洗浄工程における洗浄時間は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な時間を設定しうる。製造コスト等を勘案すると、洗浄時間は、好ましくは90分以下であり、より好ましくは60分以下である。
【0057】
≪A-3.他の工程≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、本発明の効果をより発現させ得る点で、上記の洗浄工程を経て得られた粒子を乾燥する乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥条件としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な乾燥条件を設定しうる。
【0058】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、上記の洗浄工程を経て得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に表面添加剤を添加(代表的には塗布)する工程を含んでいてもよい。
【0059】
表面添加剤が発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に塗布されることにより、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の表面特性を目的に応じて適切に改質し得る。表面添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
表面添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加量を採用しうる。このような添加量としては、代表的には、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~3.0質量部であり、より好ましくは0.05質量部~2.0質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部~1.6質量部である。
【0061】
表面添加剤としては、例えば、展着剤、帯電防止剤、結合防止剤、融着促進剤、滑剤が挙げられる。
【0062】
表面添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール(代表的には、展着剤および帯電防止剤として機能):中鎖脂肪酸トリグリセリド(炭素数が5~12の直鎖状または分岐状の脂肪酸のグリセリド)などの5℃において液体である脂肪族化合物(代表的には、融着促進剤として機能);ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの高級脂肪酸の金属塩(代表的には、結合防止剤として機能);ステアリン酸トリグリセリド(代表的には、融着促進剤として機能)、ステアリン酸モノステアレート(代表的には、帯電防止剤として機能);シリコーンオイル(代表的には、滑剤として機能);が挙げられる。
【0063】
≪≪B.発泡性スチレン系樹脂粒子≫≫
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法により得られる。
【0064】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、全体として粒子の形状を有する。本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の具体的な形状としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用することができる。このような形状としては、例えば、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状などが挙げられる。
【0065】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、平均粒子径が、好ましくは0.3mm~3.0mmであり、より好ましくは0.3mm~1.7mmである。
【0066】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、任意の適切なその他の添加剤をさらに含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、着色剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料が挙げられる。その他の添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0067】
≪≪C.予備発泡スチレン系樹脂粒子≫≫
予備発泡スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。
【0068】
すなわち、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~100倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば、以下のようにして求められる。予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率が上記範囲内にあることにより、発泡時や成形時のブロッキングをより防止でき、さらに、発泡時と成形時の帯電性をより抑制しつつより良好な融着性や表面性を発現し、静電気のより少ないスチレン系樹脂発泡成形体を成形することができる、予備発泡スチレン系樹脂粒子を提供し得る。
【0069】
発泡性スチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0070】
1つの代表的な実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡スチレン系樹脂粒子をそのまま用いる場合、予備発泡スチレン系樹脂粒子は、好ましくは、多数の予備発泡スチレン系樹脂粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0071】
≪≪D.スチレン系樹脂発泡成形体≫≫
本発明の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。本発明の別の一つの実施形態によるスチレン系樹脂発泡成形体は、本発明の実施形態による予備発泡スチレン系樹脂粒子から成形されるスチレン系樹脂発泡成形体である。
【0072】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、予備発泡スチレン系樹脂粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(以下、単に「発泡粒子」と称する場合がある)を含む。
【0073】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0074】
スチレン系樹脂発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡スチレン系樹脂粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡スチレン系樹脂粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡スチレン系樹脂粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること、を含む。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。スチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡スチレン系樹脂粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡スチレン系樹脂粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0075】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.04MPa~0.1MPaであり、より好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0076】
必要に応じて、スチレン系樹脂発泡成形体の成形前に予備発泡スチレン系樹脂粒子を熟成させてもよい。予備発泡スチレン系樹脂粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡スチレン系樹脂粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0077】
スチレン系樹脂発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは2倍~150倍であり、より好ましくは5倍~100倍である。
【0078】
≪≪E.発泡性粒子の洗浄方法≫≫
上述の通り、本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法においては、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する洗浄工程を、水の温度を特定の温度範囲に調整し、発泡性粒子100質量部に対する水の量を特定の量範囲に調整することによって、分散剤や重合粉末の表面付着量がより十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。すなわち、本発明の実施形態による発泡性粒子の洗浄方法は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性粒子を水で洗浄する洗浄方法であって、該水の温度を1℃~37℃の範囲に調整し、該発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対する該水の量を31質量部~395質量部の範囲に調整する。
【0079】
本発明の実施形態による発泡性粒子の洗浄方法における水の温度範囲は、好ましくは1℃~37℃の範囲であり、より好ましくは3℃~35℃の範囲であり、さらに好ましく5℃~30℃の範囲であり、特に好ましくは8℃~25℃の範囲であり、最も好ましくは10℃~20℃の範囲である。このような温度範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、成形品の融着性は維持したまま、分散剤や重合粉末の表面付着量がより十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【0080】
本発明の実施形態による発泡性粒子の洗浄方法における水の量範囲は、好ましくは31質量部~390質量部の範囲であり、より好ましくは35質量部~350質量部の範囲であり、さらに好ましくは40質量部~300質量部の範囲であり、特に好ましくは45質量部~200質量部の範囲であり、最も好ましくは45質量部~180質量部の範囲である。このような量範囲の水を用いて発泡性粒子を洗浄することにより、分散剤や重合粉末の表面付着量がより十分に低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することができる。
【実施例0081】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0082】
<洗浄後の発泡性スチレン系樹脂粒子表面に付着した分散剤と重合粉末の付着残量率の測定と評価>
洗浄後に脱水した後の湿った発泡性スチレン系樹脂粒子を600g採取し、上部から上澄み液が流れ落ちるポリビーカーに入れて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム50ppmの水溶液を400ml/minの流速で流し込みながら、撹拌機を270rpmで撹拌させて洗浄し、発泡性スチレン系樹脂粒子が混入しないように注意しながら上澄み液を計6L回収した。
6Lの回収液を、あらかじめ質量を測定したガラス繊維濾紙(GA-200)を用いて吸引濾過をし、得られた濾紙を45度のオーブンに一晩乾燥させ、翌日、質量を測定した。
また、別途、洗浄後に脱水した後の湿った発泡性スチレン系樹脂粒子1gを45℃のオーブン内で一晩乾燥させて、翌日乾燥後の発泡性スチレン系樹脂粒子の質量を測定し、以下の数式により、実際の発泡性スチレン系樹脂粒子の質量を求めた。
実際の発泡性スチレン系樹脂粒子の質量=600×(乾燥後の発泡性スチレン系樹脂粒子の質量/1)
以下の数式により、洗浄後の発泡性スチレン系樹脂粒子表面に付着した分散剤と重合粉末の付着残量率を計算して求めた。
付着残量率(%)=(濾紙上の分散剤および重合粉末の質量/実際の発泡性スチレン系樹脂粒子の質量)
)×100
付着残量率の評価は以下の通りとした。
◎:0.1%未満
〇:0.1%以上0.15%未満
△:0.15%以上0.2%未満
×:0.2%以上
【0083】
<発泡成形体の融着評価>
幅300mm、長さ400mm、厚み30mmの平板形状のスチレン系樹脂発泡成形体の表面に、一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約2mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って該スチレン系樹脂発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、100個~150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子同士の界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。
また、融着性の評価基準は以下の通りとした。
◎:融着率が90%以上
○:融着率が85%以上90%未満
△:融着率が80%以上85%未満
×:融着率が80%未満
【0084】
[実施例1]
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水:40000質量部、懸濁安定剤としてリン酸三カルシウム:100質量部、アニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:3.2質量部を供給し、攪拌しながら、スチレン:40000質量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド:102質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート:24質量部を添加し、90℃に昇温して重合した。この温度で6時間保持し、さらに、125℃に昇温してから2時間後に冷却し、スチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン系樹脂粒子を篩分けし、種粒子として粒子径0.5mm~0.71mmのスチレン系樹脂粒子を得た。なお、撹拌の回転数については、上記粒子径が得られるように調整した。
次に、内容積25リットルの撹拌機付き重合容器に、種粒子:2150質量部、水:7520質量部、ピロリン酸マグネシウム:30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1.0質量部を供給し、撹拌しつつ72℃に加熱して、分散液を作製した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド:31質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート:8質量部、気泡調整剤としてジドデシル3,3’-チオジプロピオネート:0.7質量部をスチレン:786質量部、アクリル酸ブチル:137質量部の単量体混合物に溶解させた溶液を調製し、この全てを上記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして、分散液中に上記溶液を供給し終えてから72℃で60分間維持した。
次いで、87℃まで1時間で昇温させながら、スチレン:2346質量部を一定供給し、次いで、87℃で1時間30分保持しながら、スチレン:3744質量部にジビニルベンゼン:2.7質量部を溶解した単量体混合物を一定供給し、さらに30分保持した。
次いで、125℃まで昇温し、30分保持することで、未反応の単量体を反応させた。次いで、100℃まで冷却し、重合容器内に、シクロヘキサン:92質量部、アジピン酸ジイソブチル:82質量部、スチレン:45質量部、混合ブタン:640質量部を圧入し、2時間保持した後、重合容器内を25℃に冷却した。
その後、反応液と発泡性スチレン系樹脂粒子を分離させて反応液だけを除去し、あらかじめ12℃に調温していた洗浄水を発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して96質量部投入して10分間洗浄し、脱水した。
脱水完了後に一部サンプリングして、洗浄後の発泡性スチレン系樹脂粒子表面についた分散剤と重合粉末の付着残量率の測定を行った。
脱水後に乾燥させた後、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子に、ブロッキング防止剤としてステアリン酸亜鉛:0.1質量部、融着促進剤として12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド:0.08質量部を被覆した。
被覆後、発泡性スチレン系樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。熟成が完了しているのを確認し、発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を得た。
<予備発泡スチレン系樹脂粒子の作製>
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子(1)を加熱して嵩密度0.0166g/cmに予備発泡させ、予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を得た。得られた予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)は、20℃で24時間熟成させた。
<スチレン系樹脂発泡成形体の作製>
熟成した予備発泡スチレン系樹脂粒子(1)を、室温雰囲気下、24時間放置した後、型内発泡成形し、400mm×300mm×30mmサイズの板状のスチレン系樹脂発泡成形体(1)を得た。型内発泡成形は、積水工機社製のACE-3SP成形機を用いて行った。加熱時間は、一方加熱時間8秒、逆一方加熱時間2秒、両面加熱時間5秒とし、成形圧(水蒸気吹き込みゲージ圧)は0.06MPaとした。
結果を表1に示した。
【0085】
[実施例2]
洗浄水の量を50質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(2)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(2)、スチレン系樹脂発泡成形体(2)を得た。
結果を表1に示した。
【0086】
[実施例3]
洗浄水の量を40質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(3)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(3)、スチレン系樹脂発泡成形体(3)を得た。
結果を表1に示した。
【0087】
[実施例4]
洗浄水の量を150質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(4)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(4)、スチレン系樹脂発泡成形体(4)を得た。
結果を表1に示した。
【0088】
[実施例5]
洗浄水の量を200質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(5)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(5)、スチレン系樹脂発泡成形体(5)を得た。
結果を表1に示した。
【0089】
[実施例6]
洗浄水の量を300質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(6)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(6)、スチレン系樹脂発泡成形体(6)を得た。
結果を表1に示した。
【0090】
[実施例7]
洗浄水の温度を1℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(7)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(7)、スチレン系樹脂発泡成形体(7)を得た。
結果を表1に示した。
【0091】
[実施例8]
洗浄水の温度を20℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(8)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(8)、スチレン系樹脂発泡成形体(8)を得た。
結果を表1に示した。
【0092】
[実施例9]
洗浄水の温度を35℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(9)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(9)、スチレン系樹脂発泡成形体(9)を得た。
結果を表1に示した。
【0093】
[比較例1]
洗浄水の量を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C1)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C1)、スチレン系樹脂発泡成形体(C1)を得た。
結果を表1に示した。
【0094】
[比較例2]
洗浄水の量を400質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C2)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C2)、スチレン系樹脂発泡成形体(C2)を得た。
結果を表1に示した。
【0095】
[比較例3]
洗浄水の温度を38℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、発泡性スチレン系樹脂粒子(C3)、予備発泡スチレン系樹脂粒子(C3)、スチレン系樹脂発泡成形体(C3)を得た。
結果を表1に示した。
【0096】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の実施形態による製造方法で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、スチレン系樹脂発泡成形体、および、本発明の実施形態による洗浄方法を用いて得られる発泡性粒子は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子、およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器(例えば、魚箱などの食品容器、通い箱)、緩衝材、フロート、ブロック、魚および農産物等の梱包材、盛土材(盛土用成形体や盛土ブロックなど)、畳の芯材、クッションの芯材、コンクリートの骨材等に好適に用いられる。