(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147767
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】転写方法、及び転写装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20231005BHJP
【FI】
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055467
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】今井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 豊治
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA54
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CB23
5F142CD13
5F142CD16
5F142CD17
5F142CD18
5F142FA32
5F142FA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することを課題とする。
【解決手段】転写基板20の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層10に保持された素子1を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写方法であって、少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポットで、前記転写基板の第2主面側から転写対象の前記第1素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射し、転写対象の前記第1素子全域を保持する前記保持層に、転写対象の前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、前記第1素子を被転写基板30に転写する第1素子転写工程を実施することを特徴とする転写方法とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写方法であって、 少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポットで、前記転写基板の第2主面側から転写対象の前記第1素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射し、 転写対象の前記第1素子全域を保持する前記保持層に、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、転写対象の前記第1素子を被転写基板に転写する第1素子転写工程を実施することを特徴とする転写方法。
【請求項2】
前記第1レーザスポットは、断面プロファイルの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布を有し、
前記保持層からの分離が可能なエネルギーを有する領域は、前記第1素子全域より広く、前記隣接素子の前記第1素子側の半分を含めた領域よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記第1プロファイルは、マスクにより照射範囲が規制され、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザの照射範囲は、前記第1素子全域及び前記隣接素子の前記第1素子側の半分の領域の一部であることを特徴とする請求項1に記載の転写方法。
【請求項4】
前記第1素子転写工程の後に、
前記隣接素子における前記第1素子とは反対側に隣接配置された少なくとも1個の第2素子に、前記第1レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記第2素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射して前記第2素子を被転写基板に転写する第2素子転写工程を実施することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の転写方法。
【請求項5】
転写基板には前記第1方向とは直交する第2方向にも素子が保持層を介して配列保持されており、
前記第2素子転写工程の後に、
前記隣接素子に対して前記第2方向に隣接して配置された第3素子に、前記第1レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記第3素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射して前記第3素子を被転写基板に転写する第3素子転写工程を実施することを特徴とする請求項4に記載の転写方法。
【請求項6】
前記第3素子転写工程の後に、
前記隣接素子に、前記第1レーザスポットと同等サイズのレーザスポット、又は前記第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記隣接素子を保持している前記保持層にレーザを照射して前記隣接素子を被転写基板に転写する隣接素子転写工程を実施することを特徴とする請求項5に記載の転写方法。
【請求項7】
転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写装置であって、
前記転写基板を保持する転写基板保持部と、
前記転写基板と略平行に前記被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記転写基板に保持層を介して配列された少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポット、及び前記第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットで、前記転写基板の第2主面にレーザを照射することが可能なレーザ照射部と、
前記第1レーザスポットと第2レーザスポットとを切替える制御部と、を備え、
前記第1レーザスポットで照射した場合に、少なくとも前記第1素子全域には前記保持層からの分離が可能なエネルギーのレーザが照射されることを特徴とする転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等の素子を高精度に転写する転写方法、及び転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、コスト低減のために小型化し、特に、小型化した半導体チップであるLEDチップを高速・高精度に実装するための取組みが行われている。特に、ディスプレイに用いられるLEDはマイクロLEDと呼ばれる50μm×50μm以下のLEDチップを数μmの精度で高速に実装することが求められている。
【0003】
特許文献1には、保持層を介して基板に保持されている半導体チップをレーザリフトオフにより転写するものにおいて、半導体チップと同等サイズのレーザスポットで前記保持層にレーザを照射するようにした事項が記載されている。また、保持層が半導体チップの側面に回り込むことがない場合、レーザリフトオフ時に半導体チップが傾くことがなく精度よく転写できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:WO2020/166301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものは、半導体チップと同等サイズのレーザスポットで当該半導体チップを粘着する保持層にレーザを照射するものであるため、小型化される半導体チップをねらうためにレーザ照射の位置精度を向上させる必要があり高コストとなるという問題がある。また、特許文献1記載のもののように、半導体チップと同等サイズのレーザスポットでレーザ照射して半導体チップを粘着保持する保持層全体を消失させるためには、照射面がフラットとなるようなレーザの断面プロファイルとなるような光学系が必要であり装置が複雑となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写方法であって、 少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポットで、前記転写基板の第2主面側から転写対象の前記第1素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射し、 転写対象の前記第1素子全域を保持する前記保持層に、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、転写対象の前記第1素子を被転写基板に転写する第1素子転写工程を実施することを特徴とする転写方法を提供するものである。
【0008】
この構成により、第1素子よりも広い第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。 また、第1レーザスポットの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザ(例えば、ガウシアン分布の断面プロファイルをもつレーザ)であっても素子を保持する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザ照射が可能であるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0009】
転写方法であって、前記第1レーザスポットは、断面プロファイルの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布を有し、 前記保持層からの分離が可能なエネルギーを有する領域は、前記第1素子全域より広く、前記隣接素子の前記第1素子側の半分を含めた領域よりも狭い構成であってもよい。
【0010】
この構成により、第1素子よりも広く隣接素子の第1素子側の半分を含めた領域よりも狭い範囲の第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても第1素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。 また、隣接素子を保持する保持層の一部にも素子を分離可能なエネルギーがレーザ照射されるため隣接素子は転写させないものの、たとえ隣接素子側面に保持層が回り込んでいたとしても、レーザ光の照射により回り込んでいた保持層がアブレーションされ、この後、隣接チップを転写する際に安定して転写することができる。
【0011】
転写方法であって、前記第1プロファイルは、マスクにより照射範囲が規制され、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザの照射範囲は、前記第1素子全域及び前記隣接素子の前記第1素子側の半分の領域の一部である構成でもよい。
【0012】
この構成により、第1素子全域及び隣接素子の第1素子側の半分の領域の一部に確実に第1素子を分離可能なエネルギーのレーザを照射することができる。
【0013】
転写方法であって、前記第1素子転写工程の後に、 前記隣接素子における前記第1素子とは反対側に隣接配置された少なくとも1個の第2素子に、前記第1レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記第2素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射して前記第2素子を被転写基板に転写する第2素子転写工程を実施するようにしてもよい。
【0014】
この構成により、第2素子に対しても、第1レーザスポットでレーザ照射を行うことで、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を保持する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザ照射が可能であるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0015】
転写方法であって、転写基板には前記第1方向とは直交する第2方向にも素子が保持層を介して配列保持されており、 前記第2素子転写工程の後に、 前記隣接素子に対して前記第2方向に隣接して配置された第3素子に、前記第1レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記第3素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射して前記第3素子を被転写基板に転写する第3素子転写工程を実施するようにしてもよい。
【0016】
この構成により、第3素子を粘着する保持層に対しても、第1レーザスポットでレーザ照射を行うことで、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を保持する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザ照射が可能であるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0017】
転写方法であって、前記第3素子転写工程の後に、 前記隣接素子に、前記第1レーザスポットと同等サイズのレーザスポット、又は前記第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットで前記転写基板の第2主面側から前記隣接素子を保持している前記保持層にレーザを照射して前記隣接素子を被転写基板に転写する隣接素子転写工程を実施するようにしてもよい。
【0018】
第1素子転写工程、第2素子転写工程、及び第3素子転写工程により、保持層が隣接素子の最も当該保持層に近接する面と同等もしくは当該保持層に近接する面よりも内側の領域でのみ隣接素子と接触していて保持層が隣接素子の側面に回り込んでいないので、第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットでレーザを照射しても高精度に隣接素子を転写することができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために本発明は、転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写装置であって、
前記転写基板を保持する転写基板保持部と、
前記転写基板と略平行に前記被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記転写基板に保持層を介して配列された少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポット、及び前記第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットで、前記転写基板の第2主面にレーザを照射することが可能なレーザ照射部と、
前記第1レーザスポットと第2レーザスポットとを切替える制御部と、を備え、
前記第1レーザスポットで照射した場合に、少なくとも前記第1素子全域には前記保持層からの分離が可能なエネルギーのレーザが照射されることを特徴とする転写装置を提供するものである。
【0020】
この構成により、第1素子よりも広い第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。 また、第1レーザスポットにおける断面プロファイルの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を粘着する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザが照射できるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。 また、第1レーザスポットよりも小さい第2レーザスポットで側面に保持層が回り込んでいない隣接の素子を簡単な構成で精度よく転写できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の転写方法、および転写装置により、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1における転写装置を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
【
図3】本発明の変形例1におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
【
図4】本発明の変形例2におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
【
図5】本発明の実施例1における第1素子転写工程、及び第2素子転写工程を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例1における第3素子転写工程を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例1における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
【
図8】本発明の実施例1における別の第3素子転写工程を説明する図である。
【
図9】本発明の実施例1における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
【
図10】本発明の実施例1における隣接素子転写工程を説明する図である。
【
図11】本発明の実施例1における別の隣接素子転写工程を説明する図である。
【
図12】本発明の実施例2における第1素子転写工程、第2素子転写工程を説明する図である。
【
図13】本発明の実施例2における第3素子転写工程を説明する図である。
【
図14】本発明の実施例2における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
【
図15】本発明の実施例2における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
【
図16】本発明の実施例2における別の第1素子転写工程を説明する図である。
【
図17】本発明の実施例2における隣接素子転写工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
本発明の実施例1について、
図1~
図11を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例4における転写装置を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
図3は、本発明の変形例1におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
図4は、本発明の変形例2におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と素子の断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
図5は、本発明の実施例1における第1素子転写工程、及び第2素子転写工程を説明する図である。
図6は、本発明の実施例1における第3素子転写工程を説明する図である。
図7は、本発明の実施例1における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
図8は、本発明の実施例1における別の第3素子転写工程を説明する図である。
図9は、本発明の実施例1における別の第1素子転写工程、及び別の第2素子転写工程を説明する図である。
図10は、本発明の実施例1における隣接素子転写工程を説明する図である。
図11は、本発明の実施例1における別の隣接素子転写工程を説明する図である。
【0024】
(転写装置) 実施例1における転写装置100は、転写部110を有している。そして、転写部110により第1素子転写工程、第2素子転写工程、第3素子転写工程、及び隣接素子転写工程が行われる。
【0025】
転写部110の詳細を
図1に示す。 転写部110は、レーザ光111を照射するレーザ照射部112、転写基板を保持して少なくともX軸方向、Y軸方向に移動可能な転写基板保持部113、転写基板保持部113の下側にあって転写基板に隙間を有して略平行に対向するように被転写基板を保持する被転写基板保持部114、および図示しない制御部を備えている。
【0026】
レーザ照射部112は、エキシマレーザなどのレーザ光111を照射する装置であり、転写部110に固定して設けられる。実施例1においては、レーザ照射部112はガウシアン分布の断面プロファイルをもつレーザ光111を照射し、レーザ光111は、制御部により角度が調節されるガルバノミラー115およびfθレンズ116を介してX軸方向およびY軸方向の照射位置が制御され、転写基板保持部113に保持された転写基板20に保持層10を介して複数配置されている半導体チップ1(請求項における「素子」。)に選択的に照射する。レーザ光111が転写基板20の半導体チップ1を保持する保持層10に入射することによって、レーザリフトオフされ、転写基板20から被転写基板30へ半導体チップ1が飛行して転写される。
【0027】
また、実施例1におけるレーザ照射部112は、半導体チップ1を分離可能なエネルギーを有するレーザの照射範囲が転写基板20に隣接して配列された少なくとも1個の転写対象の半導体チップ1全域より広く、かつ、半導体チップ1(請求項における「第1素子」。)にX方向(第1方向)に隣接して配列された隣接半導体チップ(請求項における「隣接素子」。)の半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される大きさの第1レーザスポット50で、転写基板20の第2主面側から半導体チップ1を保持している保持層10を中心とする領域にレーザを照射する。これにより、半導体チップ1全域を保持する保持層10に、半導体チップ1を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、半導体チップ1を被転写基板30に転写することができる。 また、実施例1においては、第1レーザスポット50、及び第1レーザスポット50よりも小サイズの第2レーザスポット60を制御部により切替えて照射することができる。
【0028】
ここで、
図2(b)の縦軸はレーザのパワーであり、横軸は断面プロファイルの幅方向の広がりを示す。実施例1における照射されるレーザは、
図2(b)に示すように第1レーザスポットにおける断面プロファイルの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布を有し、半導体チップ1の保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有する領域は半導体チップ1全域より広く、半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される大きさを有している。なお、
図2(b)の縦軸におけるP1は、第1半導体チップ1の全面に照射されるエネルギーを示す。
【0029】
実施例1においては、第1半導体チップよりも広く第1半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い第1レーザスポット50でレーザ照射を行うことで、
図2(a)に示すように、半導体チップ1全域、及び半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い領域に保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有するレーザ光111が照射される。これにより、照射面がフラットとなるレーザのプロファイルを有する複雑な光学系を必要とせず、高精度な位置合わせを行わなくても簡単な構成で半導体チップ1を高精度に転写することができる。また、隣接半導体チップを保持する保持層10の一部にも半導体チップを分離可能なエネルギーがレーザ照射されるため、たとえ隣接チップ側面に保持層10が回り込んでいたとしても、レーザ光111の照射により回り込んでいた保持層10がアブレーションされ、この後、隣接チップを転写する際に安定して転写することができる。
【0030】
転写基板保持部113は開口を有し、転写基板20の外周部近傍を吸着保持する。転写基板保持部113に保持された転写基板20へこの開口を介してレーザ照射部112から発せられたレーザ光111を当てることができる。
【0031】
また、転写基板保持部113は図示しない移動機構により、少なくともX軸方向、Y軸方向に関して被転写基板保持部114に対して相対移動する。制御部がこの移動機構を制御し、転写基板保持部113の位置を調節することにより、転写基板20に保持された半導体チップ1の被転写基板30に対する相対位置を調節することができる。
【0032】
被転写基板保持部114は、上面に平坦面を有し、半導体チップ1の転写工程中、被転写基板30を保持する。この被転写基板保持部114の上面には複数の吸引孔が設けられており、吸引力により被転写基板30の裏面(半導体チップ1が転写されない方の面)を保持する。
【0033】
なお、実施例1では、転写基板保持部113のみがX軸方向およびY軸方向に移動することにより転写基板保持部113と被転写基板保持部114とが相対移動する形態をとっているが、被転写基板の寸法が大きく、レーザ光111の照射範囲の直下に被転写基板の全面が位置できない場合等には、被転写基板保持部114にもX軸方向およびY軸方向の移動機構が設けられていてもよい。また、転写基板保持部113及び被転写基板保持部114のいずれも移動せず、ガルバノミラー115およびfθレンズ116によりレーザ光1111をX軸方向およびY軸方向の照射位置を制御するようにしてもよい。
【0034】
実施例1におけるレーザ照射部112は、照射するスポットサイズを変更することができ、半導体チップ1全域よりも広く、かつ、半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される大きさの第1レーザスポットと、第1レーザスポットよりも小サイズで半導体チップ1のサイズと同等サイズの第2レーザスポットとを切替えることができる。
【0035】
これにより、半導体チップ1よりも広く、かつ、半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても半導体チップを粘着している保持層にレーザ照射が可能となるとともに、複雑な光学系を用いないガウシアン分布する断面プロファイルを有するレーザ光であっても半導体チップを粘着する保持層に該半導体チップを分離可能とするエネルギーPAを有するレーザ照射が可能であるため、簡単な構成で半導体チップの高精度転写を行うことができる。 また、第1レーザスポットよりも小さい第2レーザスポットで側面に保持層が回り込んでいない隣接の半導体チップを簡単な構成で精度よく転写できる。
【0036】
なお、実施例1においては、X方向を第1の方向としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、Y方向を第1の方向としてもよいし、X方向とY方向の間の斜め方向を第1方向としてもよい。
【0037】
また、実施例1においては、半導体チップ1全域、及び半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの半分を含めた領域よりも狭い領域に保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有するレーザ光111が照射するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、隣接半導体チップを含めた領域は含めず、半導体チップ1全域よりも広い領域の保持層10に、半導体チップ1が保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有するレーザ光111が照射するようにしてもよい。
【0038】
(変形例1)
変形例1におけるレーザ光211の照射による保持層からの分離が可能なエネルギーを有する領域は、半導体チップ1全域より広く隣接半導体チップの領域よりも狭い。変形例1について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の変形例1におけるレーザのプロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と半導体チップの断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
【0039】
変形例1におけるレーザのパワーは実施例1よりも小さい。
図3に示すように、照射されるレーザ光211は、第1レーザスポット50における断面プロファイルの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布を有し、保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有する領域は、半導体チップ1全域より広いが隣接半導体チップの領域よりも狭い。
【0040】
これにより、半導体チップと同等サイズのレーザスポットで高精度にレーザ照射する必要がなく、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0041】
(変形例2)
変形例2におけるレーザ光311は、断面プロファイルにおいて先端部分がほぼフラットで、かつ半導体チップ1全域の広さよりも広く隣接半導体チップの領域よりも狭い照射範囲を有している。変形例2について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の変形例2におけるレーザの断面プロファイルを説明する図であり、(a)は保持層と半導体チップの断面を示し、(b)はレーザの断面プロファイルを示す。
【0042】
変形例2におけるレーザ光311は、マスクにより照射範囲が略四角形に規制され、半導体チップ1を分離可能なエネルギーの照射範囲は、半導体チップ1全域より広く隣接半導体チップの領域よりも狭い領域となっている。そして、レーザの断面プロファイルにおいて先端部分がほぼフラットで、照射方向と直交する幅方向に遠くなってもそれほど弱くならないエネルギー分布を有し、保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有する領域は、半導体チップ1全域の広さよりも広く隣接半導体チップの領域よりも狭い。
【0043】
変形例2においては、略四角形のレーザスポットを照射するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、略円形や楕円形のレーザスポットを照射するようにしてもよく、素子の形状に合わせたレーザスポットの形状にすることができる。
【0044】
これにより、半導体チップと同等サイズのレーザスポットで高精度にレーザ照射する必要がなく、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0045】
なお、変形例2においては、保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有する領域は、半導体チップ1全域の広さよりも広く隣接半導体チップの領域よりも狭くなるようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、レーザの断面プロファイルにおいて先端部分がほぼフラットで、照射方向と直交する幅方向に遠くなってもそれほど弱くならないエネルギー分布を有し、保持層10からの分離が可能なエネルギーPAを有する領域は、半導体チップ1全域より広く、半導体チップ1に対して隣接する隣接半導体チップの少なくとも一部に照射される大きさを有しているようにしてもよい。
【0046】
(転写方法)
実施例1においては、
図5に示すような転写基板20の第1主面21に第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)に配列して保持層10に保持された半導体チップ1を、レーザリフトオフにより被転写基板30に転写するものとする。レーザリフトオフとは、レーザ光111を半導体チップ1と転写基板20の間にある保持層10に転写基板20を透過して到達させることにより、保持層10のポリマーが分解されることでガスが発生し、このガスの発生によって半導体チップ1が下方へ付勢されることである。これにより、半導体チップ1が転写基板20から下方へ飛行し被転写基板30に着弾する。
【0047】
転写基板20は、レーザ光111を透過するSiO2やサファイヤのような素材からなる平板である。保持層10は、ポリイミド、シリコン、ジメチルポリシロキサン(PDMS)のような粘着性を有する素材からなっている。被転写基板30は、SiO2、サファイヤ、ガラスエポキシ、セラミック、金属など任意の素材を用いることができる。
【0048】
実施例1における転写方法について説明する。転写基板20の第1主面21に配置された半導体チップ1a(請求項における「第1素子」。)に第2主面22からレーザ光111を照射してレーザリフトオフにより半導体チップ1aを被転写基板30に転写する。このときのレーザ光111のレーザスポットは、半導体チップ1aを分離可能なエネルギーを有するレーザの照射範囲が少なくとも1個の転写対象である半導体チップ1a全域、及び半導体チップ1aに対してX方向(第1方向)に隣接する半導体チップ1b(請求項における「隣接素子」。)、及びY方向(第2方向)に隣接する半導体チップ2aの半導体チップ1a側の半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される大きさの第1レーザスポット50である。また、本転写方法の説明においては、レーザの照射範囲がマスクにより略四角形に整形されている。
【0049】
これにより、転写基板20の第2主面22から半導体チップ1aを保持している保持層10、その周辺の露出した保持層10、及び第1方向に隣接する半導体チップ1bと第2方向に隣接する半導体チップ2aの半導体チップ1a側の半分の領域の一部を粘着する保持層10の領域にレーザが照射され、半導体チップ1aを被転写基板30に転写することができる。このとき、半導体チップ1bと半導体チップ2aの上記半分の領域の一部を粘着する保持層10に加えて、半導体チップ2bの半導体チップ1a側の端部を粘着する保持層10もガス化して消失する。この工程を、第1素子転写工程と呼ぶ。
【0050】
このように、第1素子転写工程では、第1半導体チップよりも大きな第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても半導体チップを粘着している保持層にレーザ照射が可能となり、簡単な構成で半導体チップの高精度転写を行うことができる。 また、複雑な光学系を用いないガウシアン分布の断面プロファイルを有するレーザ光であっても半導体チップを保持する保持層における照射面はほぼフラットとできるため、簡単な構成で半導体チップの高精度転写を行うことができる。
【0051】
第1素子転写工程の後に、第2素子転写工程を実施する。第2素子転写工程では、半導体チップ1aに対してX方向に隣接する半導体チップ1bにおける半導体チップ1aとは反対側に隣接配置された半導体チップ1c(請求項における「第2素子」。)に、第1レーザスポット50で転写基板20の第2主面22から半導体チップ1cを保持している保持層10を中心とする領域に第1レーザスポット50の大きさでレーザ光111を照射して半導体チップ1cを被転写基板30に転写する。
【0052】
このときの第1レーザスポット50における半導体チップ1cを保持している保持層10を中心とする領域とは、転写対象である半導体チップ1c全域、及び半導体チップ1cに対してX方向(第1方向)に隣接する半導体チップ1d及びY方向(第2方向)に隣接する半導体チップ2cの半導体チップ1c側の半分を含めた領域よりも狭い領域に照射される大きさである。
【0053】
第2素子転写工程により、半導体チップ1cがレーザリフトオフにより被転写基板30に転写されるとともに、半導体チップ1dと半導体チップ2cの上記半分の領域の一部を粘着する保持層10に加えて、半導体チップ2eの半導体チップ1c側の角部を粘着する保持層10もガス化して消失する。
このように、第2素子転写工程では、第2半導体チップを粘着する保持層に対しても、第2半導体チップよりも大きな第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても半導体チップを粘着している保持層にレーザ照射が可能となるとともに、複雑な光学系を用いないガウシアン分布の断面プロファイルを有するレーザ光であっても半導体チップを粘着する保持層を照射面とできるため、簡単な構成で半導体チップの高精度転写を行うことができる。
【0054】
半導体チップ1cに対する第2素子転写工程の後、同様に半導体チップ1e(請求項における「第2素子。」)を対象とした第2素子転写工程を実施する。さらに、その後、半導体チップ1g(請求項における「第2素子」。)を対象とした第2素子転写工程を実施する。半導体チップ1e及び1gに対する第2素子転写工程においても半導体チップ1cに対する第2素子転写工程と同様に、第1レーザスポット50で転写基板20の第2主面22から半導体チップ1e、1gを保持している保持層10を中心とする領域にレーザ光111を順次照射して半導体チップ1e、1gを被転写基板30に順次転写する。
【0055】
これにより、
図5(b)のように転写基板20に粘着されていた半導体チップ1a、1c、1e、1gが被転写基板30に転写され、
図5(c)に示すように、半導体チップ1bが保持層11bに粘着されて転写基板20に保持され、半導体チップ1dが保持層11dに粘着されて転写基板20に保持され、半導体チップ1fが保持層11fに粘着されて転写基板20に保持された状態となる。
【0056】
なお、実施例1においては、半導体チップ1b、1d、1fは、請求項における隣接素子に該当し、半導体チップ1c、1e、1gは、請求項における第2素子に該当する。しかしながら、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、転写基板20にX方向に配列された半導体チップが1a~1c3個の場合は、半導体チップ1bが請求項における隣接素子に該当し、半導体チップ1cが請求項における第2素子に該当する。また、転写基板20にX方向に配列された半導体チップが8個以上の場合は、請求項における隣接素子及び第2素子は、実施例1よりも多くなる。
【0057】
保持層11b、11d、11fは、上述した半導体チップ1aを対象とした第1素子転写工程、及び半導体チップ1c、1e、1gを対象とした第2素子転写工程により、半導体チップ1b、1d、1fの粘着面の端部側の半分の領域の一部が燃焼消失しており半導体チップを粘着する面積を小さくすることができる。これにより、保持層11b、11d、11fは半導体チップ1b、1d、1fの側面に回り込むことなく、後述のように、半導体チップ1b、1d、1fは、第1レーザスポット50よりも小サイズで半導体チップ1b、1d、1fのサイズと同等サイズの第2レーザスポット60により転写することができる。
【0058】
第1素子転写工程及び第2素子転写工程の次に、第3素子転写工程を実施する。第3素子転写工程では、
図6に示すように、まず、半導体チップ1b(請求項における「隣接素子」。)に対してX方向(第1方向)とは直交するY方向(第2方向)に隣接して配置された半導体チップ2b(請求項における「第3素子」。)に、第1レーザスポット50で転写基板20の第2主面22から半導体チップ2bを保持している保持層10を中心とする領域にレーザを照射して半導体チップ2bを被転写基板30に転写する。
【0059】
このときの第1レーザスポット50における半導体チップ2bを保持している保持層10を中心とする領域とは、転写対象である半導体チップ2b全域、及び半導体チップ2bに対してX方向(第1方向)に隣接する半導体チップ2a、2c及び半導体チップ2bに対してY方向(第2方向)に隣接する半導体チップ1b、3bの半導体チップ2b側の半分の領域の一部に照射される大きさの領域である。
【0060】
第3素子転写工程においても、第3素子を粘着する保持層に対しても、第3素子よりも大きな第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても半導体チップを粘着している保持層にレーザ照射が可能となるとともに、複雑な光学系を用いないガウシアン分布の断面プロファイルを有するレーザ光であっても半導体チップを粘着する保持層を照射面とできるため、簡単な構成で半導体チップの高精度転写を行うことができる。
【0061】
次に、同様にして、半導体チップ2d及び半導体チップ2fを対象として第3素子転写工程を順次実施する。つまり、第1レーザスポット50でレーザ光111を半導体チップ2d、及び半導体チップ2fを粘着している保持層10に順次照射して、半導体チップ2d、及び半導体チップ2fを順次、被転写基板30に転写する。
【0062】
これにより、
図6(b)のように転写基板20に粘着されていた半導体チップ2a~2gが、
図6(c)に示すように、半導体チップ2b、2d、2fが被転写基板30に転写される一方、半導体チップ2aが保持層12aに粘着されて転写基板20に保持され、半導体チップ2cが保持層12cに粘着されて転写基板20に保持され、半導体チップ2eが保持層12eに粘着されて転写基板20に保持され、半導体チップ2gが保持層12gに粘着されて転写基板20に保持された状態となる。
【0063】
次に、
図7に示すように、半導体チップ1aに対する第1素子転写工程と同様に、半導体チップ3aに対して第1素子転写工程を実施するとともに、半導体チップ1c、1e、1gに対する第2素子転写工程と同様に、半導体チップ3c、3e、3gに対して第2素子転写工程を順次実施する。
【0064】
そして次に、
図8に示すように、半導体チップ2b、2d、2fに対する第3素子転写工程と同様に、半導体チップ4b、4d、4fに対して第3素子転写工程を順次実施する。
【0065】
さらに、
図9に示すように、上述の半導体チップ3aに対する第1素子転写工程と同様に、半導体チップ5aに対して第1素子転写工程を実施するとともに、半導体チップ3c、3e、3gに対する第2素子転写工程と同様に、半導体チップ5c、5e、5gに対して第2素子転写工程を順次実施する。
【0066】
ここまでの第1素子転写工程、第2素子転写工程、及び第3素子転写工程により、転写基板20に粘着保持された半導体チップは、
図10のように千鳥状に残っている。次に、この残っている半導体チップの転写を行う。この場合、第1素子転写工程、第2素子転写工程、及び第3半導体チップ工程を実施しているので、半導体チップ1b、1d、1f(請求項における「隣接素子」。)の保持層11b、11d、11fは半導体チップ1b、1d、1fを粘着する周囲半分の領域の一部が消失し、
図10(b)に示すように、半導体チップ1b、1d、1fの外形よりも小さくなっており、半導体チップ1b、1d、1fの側面に保持層が回り込んでいない。
【0067】
そこで、
図10に示すように、半導体チップ1bに、第1レーザスポット50よりも小サイズで半導体チップ1bのサイズと同等サイズもしくは半導体チップ1bのサイズよりも小サイズの第2レーザスポット60で転写基板20の第2主面22から半導体チップ1bを保持している保持層11bにレーザを照射して半導体チップ1b(請求項における「隣接素子」。)を被転写基板30に転写する隣接素子転写工程を実施する。
【0068】
このとき、上述のように、保持層11bは半導体チップ1bの外形よりも小さくなっているので、第1レーザスポット50よりも小サイズで半導体チップ1bのサイズと同等サイズもしくは半導体チップ1bのサイズよりも小サイズの第2レーザスポット60であっても半導体チップ1bが傾くことなく精度よく転写できる。
【0069】
なお、実施例1においては、第1レーザスポット50よりも小サイズで半導体チップ1bのサイズと同等サイズもしくは半導体チップ1bのサイズよりも小サイズの第2レーザスポット60で転写するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、第1レーザスポット50と同等サイズのレーザスポットで転写してもよい。この場合、レーザ照射の精度は高くなくても保持層11bがレーザスポットに含まれれば精度よく転写することができる。
【0070】
次に、半導体チップ1d、1fを半導体チップ1bと同じようにして、順次、隣接素子転写工程を実施する。これにより、
図10(c)に示すように、半導体チップ1a~1gの全てが被転写基板30に転写される。
【0071】
次に、
図11に示すように、上述の半導体チップ1b、1d、1fに対する隣接素子転写工程と同様に、半導体チップ2a、2c、2e、2gに対して隣接素子転写工程を実施する。半導体チップ2a、2c、2e、2gについても、第1素子転写工程、第2素子転写工程、及び第3素子転写工程により、保持層12a、12c、12e、12gの半導体チップ2a、2c、2e、2gを粘着する周囲半分の領域の一部が消失し、
図11(b)に示すように、半導体チップ2a、2c、2e、2gの外形よりも小さくなっている。このため、第1レーザスポット50よりも小サイズで半導体チップ2a、2c、2e、2gのサイズと同等サイズもしくは半導体チップ2a、2c、2e、2gのサイズよりも小サイズの第2レーザスポット60で精度よく転写できる。
【0072】
さらに、図示しないが、残る半導体チップ3b、3d、3f、半導体チップ4a、4c、4e、4g、半導体チップ5b、5d、5fを上述と同じようにして隣接素子転写工程を実施して、全ての半導体チップを転写することができる。
【0073】
上述のように、隣接素子転写工程では、半導体チップを保持している保持層の周囲半分の領域の一部が消失して面積を狭くすることができるので、保持層が半導体チップの側面に回り込んでおらず、レーザリフトオフ時に半導体チップが傾くことがなく精度よく転写できる。
【0074】
なお、実施例1においては、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に配列された半導体チップを転写することとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、X方向のみに配列された半導体チップを転写することとしてもよいし、Y方向のみに配列された半導体チップを転写することとしてもよい。この場合は、第3素子転写工程は実施しない。
【0075】
なお、実施例1においては、第1素子、第2素子、第3素子、及び隣接素子を半導体チップとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、抵抗やコンデンサ等の電子部品、及び金属片等の材料等とすることができる。
【0076】
また、実施例1においては、それぞれの素子を同一の被転写基板に転写するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、それぞれ別々の被転写基板に転写するように構成してもよい。
【0077】
このように実施例1においては、転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写方法であって、 少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポットで、前記転写基板の第2主面側から転写対象の前記第1素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射し、 転写対象の前記第1素子全域を保持する前記保持層に、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、転写対象の前記第1素子を被転写基板に転写する第1素子転写工程を実施することを特徴とする転写方法により、第1素子よりも広い第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。 また、第1レーザスポットの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を粘着する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザが照射できるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
【0078】
また、転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写装置であって、
前記転写基板を保持する転写基板保持部と、
前記転写基板と略平行に前記被転写基板を保持する被転写基板保持部と、
前記転写基板に保持層を介して配列された少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポット、及び前記第1レーザスポットよりも小サイズの第2レーザスポットで、前記転写基板の第2主面にレーザを照射することが可能なレーザ照射部と、
前記第1レーザスポットと第2レーザスポットとを切替える制御部と、を備え、
前記第1レーザスポットで照射した場合に、少なくとも前記第1素子全域には前記保持層からの分離が可能なエネルギーのレーザが照射されることを特徴とする転写装置により、第1素子よりも広い第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。
また、第1レーザスポットの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を粘着する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザが照射できるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。
また、第1レーザスポットよりも小さい第2レーザスポットで側面に保持層が回り込んでいない隣接の素子を簡単な構成で精度よく転写できる。
次に、複数の半導体チップ1d、1e、2d、2e(請求項における「第2素子」。)を対象とする第2素子転写工程を実施する。実施例2における第2素子転写工程では、第1半導体チップ1a、1b、2a、2bに対して第1方向に隣接する隣接半導体チップ1c、2cにおける第1半導体チップ1a、1b、2a、2bとは反対側に隣接配置された複数個の第2半導体チップ1d、1e、2d、2eに、第1レーザスポット70で転写基板20の第2主面22から第2半導体チップ1d、1e、2d、2eを保持している保持層10を中心とする領域にレーザを照射して第2半導体チップ1d、1e、2d、2eを被転写基板30に転写する。
また、図示していないが、半導体チップ2a~2gのうち、半導体チップ2a、2b、2d、2e、2gが被転写基板30に転写され、半導体チップ2c、2fがそれぞれ保持層11c、11fにより転写基板20に粘着された状態となる。そして、半導体チップ2c、2fを粘着保持する図示しない保持層12c、12fは、既に実施した第1素子転写工程、及び第2素子転写工程により、半導体チップ2c、2fを粘着する周囲の一部が消失し、半導体チップ2c、2fの外形よりも小さくなっている。
そして、実施例2においても、隣接素子転写工程では、半導体チップを保持している保持層の端部が消失して面積が狭くなっているので、保持層が半導体チップの側面に回り込んでおらず、レーザリフトオフ時に半導体チップが傾くことがなく、半導体チップの大きさと同等もしくは半導体チップの大きさよりも小さいレーザスポット80でも精度よく転写できる。
このように、実施例2においても、転写基板の第1主面に少なくとも第1方向に配列して保持層に保持された素子を、レーザリフトオフにより被転写基板に転写する転写方法であって、 少なくとも1個の転写対象の第1素子全域よりも広い領域に照射される大きさの第1レーザスポットで、前記転写基板の第2主面側から転写対象の前記第1素子を保持している前記保持層を中心とする領域にレーザを照射し、 転写対象の前記第1素子全域を保持する前記保持層に、前記第1素子を分離可能なエネルギーのレーザが照射され、転写対象の前記第1素子を被転写基板に転写する第1素子転写工程を実施することを特徴とする転写方法により、第1素子よりも広い第1レーザスポットでレーザ照射を行うため、高精度な位置合わせを行わなくても素子を粘着している保持層にレーザ照射が可能となる。 また、第1レーザスポットの中心において最大となり、照射方向と直交する幅方向に遠くなるほど弱くなるエネルギー分布の断面プロファイルを有するレーザであっても素子を粘着する保持層全面に素子の分離が可能なエネルギーのレーザが照射できるため、簡単な構成で半導体チップ等の素子を高精度に転写することができる。