(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147769
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】広告掲示箇所評価装置、広告掲示箇所評価方法及び広告掲示箇所評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0242 20230101AFI20231005BHJP
G06Q 30/0203 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
G06Q30/02 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055472
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栢野 政義
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB02
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】広告掲示箇所の宣伝効果の評価に係る情報を取得することを可能とする広告掲示箇所評価装置、広告掲示箇所評価方法及び広告掲示箇所評価プログラムを提供する。
【解決手段】広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価手段(制御部11)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価手段を備えることを特徴とする広告掲示箇所評価装置。
【請求項2】
前記推定視認者数情報は、前記視認者の人数を時間帯毎に推定した情報であり、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所について、時間帯毎に評価を決定することを特徴とする請求項1に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項3】
前記推定視認者数情報は、前記視認者の人数を前記視認者の属性毎に推定した情報であり、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所について、対象とする視認者の属性毎に評価を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項4】
前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数を推定し、前記推定視認者数情報を取得する推定手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項5】
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と対向する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと反対方向へと移動する人数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項6】
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと直交する方向へと移動する人数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項7】
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと直交する方向へと移動する人数に所定の係数を乗じた数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項8】
前記評価手段は、前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に基づき、所定の基準に従って、前記広告掲示箇所毎にスコアを決定することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項9】
前記評価手段は、前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に基づき、所定の基準に従って、前記広告掲示箇所毎にランクを決定することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置。
【請求項10】
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価ステップを含むことを特徴とする広告掲示箇所評価方法。
【請求項11】
コンピュータを、
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価手段、
として機能させることを特徴とする広告掲示箇所評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告掲示箇所評価装置、広告掲示箇所評価方法及び広告掲示箇所評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅等の施設の構内では、施設の特性(施設の種類、施設の規模等)や時間帯等の諸条件によって、人流、すなわち施設内のどの地点をどれだけの人が通過するかに大きな違いが生じることが想定されるが、人流に応じて適切なサービスを利用者に提供したり、過剰な混雑によって生じる事故等に対する対策を講じたりするためには、施設内の人流の状況を把握することが必要となる。
【0003】
そこで、鉄道駅等の施設の構内の人流を推定するためのシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道駅等の施設の構内には、通常、広告を掲示するための掲示箇所が多数設けられているが、このような広告の掲示箇所に広告を掲示した際に得られる宣伝効果は、各掲示箇所を目にする人数によって左右され、掲示箇所毎に異なることが想定される。
この点、従来のシステムにおいては、鉄道駅等の施設の構内の人流を推定するにとどまり、施設内に設けられた各広告掲示箇所について、その宣伝効果の評価に係る情報を得られるものではなかった。
【0006】
本発明の課題は、広告掲示箇所の宣伝効果の評価に係る情報を取得することを可能とする広告掲示箇所評価装置、広告掲示箇所評価方法及び広告掲示箇所評価プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、広告掲示箇所評価装置において、
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記推定視認者数情報は、前記視認者の人数を時間帯毎に推定した情報であり、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所について、時間帯毎に評価を決定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記推定視認者数情報は、前記視認者の人数を前記視認者の属性毎に推定した情報であり、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所について、対象とする視認者の属性毎に評価を決定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数を推定し、前記推定視認者数情報を取得する推定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置において
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と対向する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと反対方向へと移動する人数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと直交する方向へと移動する人数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記広告掲示箇所は、通路近傍に、当該通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられており、
前記推定手段は、当該通路を前記広告掲示箇所が向くのと直交する方向へと移動する人数に所定の係数を乗じた数を、前記視認者の人数と推定することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に基づき、所定の基準に従って、前記広告掲示箇所毎にスコアを決定することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の広告掲示箇所評価装置において、
前記評価手段は、前記広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に基づき、所定の基準に従って、前記広告掲示箇所毎にランクを決定することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、広告掲示箇所評価方法において、
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価ステップを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、広告掲示箇所評価プログラムにおいて、
コンピュータを、
広告掲示箇所について、当該広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値に係る情報である推定視認者数情報を用いて、所定の基準に従って評価を決定する評価手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広告掲示箇所の宣伝効果の評価に係る情報を取得することを可能とする広告掲示箇所評価装置、広告掲示箇所評価方法及び広告掲示箇所評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る駅構内人流推定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る駅構内人流推定システムの広告価値の評価時の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に生成される集計結果情報の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に行われる丸め処理の一例を示す図であり、(a)は処理前のデータ、(b)は処理後のデータを示す図である。
【
図6】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に行われる利用プラットホーム毎の分割の一例を示す図であり、(a)は処理前のデータ、(b)は処理後のデータを示す図である。
【
図7】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に行われる利用通路毎の分割の一例を示す図であり、(a)は処理前のデータ、(b)は処理後のデータを示す図である。
【
図8】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に生成される移動方向付加後集計結果情報の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る駅構内人流推定システムの人流の推定時に生成される人流情報提供画面の一例を示す図である。
【
図10】変形例4に係る人流情報提供画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1から
図10に基づいて、本発明の実施形態である駅構内人流推定システム100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0021】
[第1 構成の説明]
駅構内人流推定システム100は、駅構内における人流を推定すると共に、推定結果に基いて、駅構内に設けられた広告の掲示箇所の広告価値を評価するためのシステムであり、
図1に示すように、データ分析サーバ1、乗車券利用履歴情報管理サーバ2及び操作端末3を備えて構成され、これら装置の間は、通信ネットワークNを介して接続されている。
【0022】
なお、上記各サーバは、必ずしも別個に設けられていることを要せず、単一の装置が、これら複数のサーバとしての機能を兼ねていてもよい。
また、反対に、上記各サーバは、必ずしも単一の装置によって実現されていることを要せず、複数台の装置が通信ネットワークNを介して接続されることで、各サーバとしての機能が実現されていてもよい。
【0023】
[1 データ分析サーバ]
データ分析サーバ1は、例えば、駅構内人流推定システム100を管理・運営する企業等が保有するコンピュータであり、後述のように、乗車券利用履歴情報管理サーバ2から取得した情報に基づく駅構内の人流の推定や駅構内に設けられた各広告掲示箇所の広告価値の評価等を行う。
データ分析サーバ1は、
図1に示すように、例えば、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備えて構成されている。
【0024】
[(1) 制御部]
制御部11は、データ分析サーバ1の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部12に記憶されたプログラムデータとCPUとの協働により、データ分析サーバ1の各部を統括制御する。
【0025】
[(2) 記憶部]
記憶部12は、データ分析サーバ1の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、後述の動作の説明において述べるデータ分析サーバ1の動作に必要となるデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
また、記憶部12には、データ分析サーバ1を動作させるための制御部11への各種命令を含むプログラムが記憶されており、後述の動作の説明において述べるデータ分析サーバ1の動作は、記憶部12に記憶されたプログラムに従ってなされることとなる。
また、記憶部12には、路線毎利用割合情報D3及び通路毎利用割合情報D4が記憶されている。これら情報の内容については、後述の動作の説明において述べる。
【0026】
[(3) 通信部]
通信部13は、データ分析サーバ1と、乗車券利用履歴情報管理サーバ2及び操作端末3との間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、制御部11の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0027】
[2 乗車券利用履歴情報管理サーバ]
乗車券利用履歴情報管理サーバ2は、例えば、駅構内人流推定システム100を管理・運営する企業等が保有するコンピュータであり、駅の利用者による乗車券の利用履歴に係る情報である乗車券利用履歴情報D1を取得し、蓄積した上で、データ分析サーバ1へと送信する。
【0028】
乗車券利用履歴情報管理サーバ2は、
図1に示すように、データ分析サーバ1と同様、例えば、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えて構成されている。
【0029】
制御部21及び通信部23の構成は、それぞれデータ分析サーバ1における制御部11及び通信部13と変わるところはない。
記憶部22は、データ分析サーバ1における記憶部12と同様に、例えば、HDD、半導体メモリ等により構成され、乗車券利用履歴情報D1が記憶される。
【0030】
乗車券利用履歴情報D1は、本システムによる人流の推定の対象とすることができる各鉄道駅の改札装置における、乗車券としてのICカードの利用履歴に係る情報である。
乗車券利用履歴情報D1は、例えば、当該利用履歴が入場又は出場のいずれに該当するかに係る情報である入出場情報D1-1と、利用した(入場又は出場した)改札に係る情報である利用改札情報D1-2と、利用した年月日に係る情報である利用年月日情報D1-3と、利用した時間帯(例えば9時台、10時台等の1時間単位)に係る情報である利用時間帯情報D1-4と、入場駅に係る情報である入場駅情報D1-5と、出場駅に係る情報である出場駅情報D1-6と、当該利用履歴に係る利用者の属性に係る情報である属性情報D1-7と、を含む。
【0031】
また、属性情報D1-7は、例えば、当該利用者の性別に係る情報である性別情報D1-7-1と、当該利用者の年代(10代、20代等)に係る情報である年代情報D1-7-2と、を含む。
なお、属性情報D1-7に含むことができる属性はこれら二つに限られず、さらに他の属性を含むようにしてもよい。また、性別情報D1-7-1及び年代情報D1-7-2の両者を含むことが好ましいが、性別情報D1-7-1又は年代情報D1-7-2の何れかのみを含むようにしてもよいし、これらをいずれも含まず、他の属性のみから構成されるようにすることも可能である。
属性情報D1-7に含むことができる性別情報D1-7-1及び年代情報D1-7-2以外の情報としては、例えば、決済情報や認証情報が考えられる。
決済情報としては、例えば、乗車券としてのICカードに含まれる電子マネー機能や個別の識別番号を利用することで、決済を行った時間、決済を行った金額、決済を行った店舗、決済を行った交通機関(バス、タクシー等)等に係る情報を取得し、当該情報を記憶するようにすればよい。
また、認証情報としては、ビルの入口等における認証履歴に係る情報を取得し、認証を行った場所や時間等に係る情報を記憶するようにすればよい。
【0032】
乗車券利用履歴情報管理サーバ2においては、例えば、予め記憶部22に、ICカード毎に設定されたID等の識別情報と、当該ICカードの利用者の属性に係る情報(属性情報D1-7)と、を紐付けた情報である利用者属性情報D2を記憶させた上で、駅に設置された改札装置において乗車券としてのICカードが利用される度に、当該利用履歴に係る入出場情報D1-1、利用改札情報D1-2、利用年月日情報D1-3、利用時間帯情報D1-4、入場駅情報D1-5及び出場駅情報D1-6を、利用されたICカードの識別情報と共に通信部23によって受信することによって取得し、取得した情報と、当該ICカードの利用者に係る属性情報D1-7とを紐づけることで乗車券利用履歴情報D1を生成し、これを記憶部22に記憶させる。
【0033】
これによって、乗車券利用履歴情報管理サーバ2の記憶部22には、駅に設置された改札装置において乗車券としてのICカードが利用される度に、乗車券利用履歴情報D1が蓄積されていくこととなる。
【0034】
[3 操作端末]
操作端末3は、本システムを利用して駅構内の人流の推定を行う企業等が使用するPC(Personal Computer)等の情報機器であり、後述のように、対象駅、対象日等の人流の推定の前提条件の入力や、推定結果に係る情報の閲覧等に用いられる。
操作端末3は、
図1に示すように、例えば、データ分析サーバ1と同様に、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を備えると共に、さらに、表示部34と、操作部35と、を備えて構成されている。
【0035】
表示部34は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部31から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。
【0036】
操作部35は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、操作端末3の使用者からの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部31へと出力する。操作部35は、例えば、表示部34と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよく、操作端末3の使用者からの操作入力を受け付けることができるものであれば特に限定されない。
【0037】
[4 通信ネットワーク]
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等であり、
図1に示すように、駅構内人流推定システム100を構成する各装置の間を接続する。
通信ネットワークNとしては、上記のように駅構内人流推定システム100を構成する各装置間を接続し、これらの間でデータの送受信を行うことが可能なものであれば特に限定されない。
【0038】
[第2 動作の説明]
次に、本実施形態に係る駅構内人流推定システム100の動作について説明する。
駅構内人流推定システム100の動作は、大きく分けて、人流の推定(ステップS1)及び広告価値の評価(ステップS2)の2つの工程からなる。
【0039】
[1 ステップS1:人流の推定]
まず、乗車券利用履歴情報D1に基づいて、駅構内の人流の推定を行う際の本システムの動作について、
図2のフローチャートに従って説明する。
【0040】
本システムを利用して駅構内の人流の推定を行う場合、まず、本システムを利用する企業等において、操作端末3の操作部35を使用して、推定の対象駅及び対象日に係る情報を含む分析条件に係る情報を入力し、入力された情報が、通信部33から通信ネットワークNを介して、データ分析サーバ1へと送信される(ステップS1-1)。
【0041】
操作端末3から送信された情報を通信部13によって受信したデータ分析サーバ1は、乗車券利用履歴情報管理サーバ2から、記憶部22に記憶された乗車券利用履歴情報D1のうち、操作端末3において入力された分析条件に合致するものを一括して取得する(ステップS1-2)。
具体的には、データ分析サーバ1から乗車券利用履歴情報管理サーバ2へと、操作端末3において入力された分析条件に係る対象駅及び対象日に係る情報を送信し、乗車券利用履歴情報管理サーバ2において、当該対象駅及び対象日に一致するデータを記憶部22に記憶された乗車券利用履歴情報D1から抽出した上で、データ分析サーバ1へと送信するようにすればよい。
【0042】
乗車券利用履歴情報管理サーバ2から乗車券利用履歴情報D1を取得したデータ分析サーバ1においては、制御部11が、取得した乗車券利用履歴情報D1から個人情報を除外する(ステップS1-3)。
すなわち、乗車券利用履歴情報D1が、属性情報D1-7として、性別情報D1-7-1及び年代情報D1-7-2の他に、利用者の氏名、住所等の当該利用者を特定可能な情報を含む場合に、当該情報を乗車券利用履歴情報D1から除外することとなる。
【0043】
乗車券利用履歴情報D1から個人情報を除外すると、続いて、データ分析サーバ1の制御部11は、乗車券利用履歴情報D1の集計を行う(ステップS1-4)。
【0044】
具体的には、制御部11は、乗車券利用履歴情報D1のうち、入出場情報D1-1、利用改札情報D1-2、利用年月日情報D1-3、利用時間帯情報D1-4、入場駅情報D1-5、出場駅情報D1-6及び属性情報D1-7の全てが共通するものの数を集計する。
なお、当該集計結果に係る情報を集計結果情報D1Aとし、集計結果情報D1Aに含まれる集計人数に係る情報を集計人数情報D1-8Aとする。
【0045】
集計結果情報D1Aの一例を、
図4に示す。なお、
図4においては、〇〇駅の駅構内の2021年10月6日の人流を推定するため、ステップS1-2において、〇〇駅に備えられた各改札装置における2021年10月6日の乗車券としてのICカードの利用履歴に係る情報を取得した場合の集計結果の一例について図視している。
【0046】
続いて、データ分析サーバ1の制御部11は、集計結果情報D1Aについて、集計人数を所定の人数以上とする処理(以下、「丸め処理」という。)を行う(ステップS1-5)。
すなわち、制御部11は、集計結果情報D1Aに、集計人数情報D1-8Aに係る人数が所定の人数(例えば10人)未満となる集計結果が含まれる場合に、このような集計結果を複数合算してまとめることで、人数の最低数が所定人数以上となるデータとする。なお、このような処理後の情報を、丸め処理後集計結果情報D1Bとし、丸め処理後集計結果情報D1Bに含まれる丸め処理後の集計人数に係る情報を丸め処理後集計人数情報D1-8Bとする。
【0047】
なお、集計結果情報D1Aに、集計人数情報D1-8Aに係る人数が所定の人数未満となる集計結果が含まれていない場合には、このような処理を行うことはなく、集計人数情報D1-8Aがそのまま丸め処理後集計人数情報D1-8Bとなる。
【0048】
例えば、制御部11は、入出場情報D1-1が出場である集計結果について、入場駅情報D1-5のみが異なり入場駅情報D1-5以外が共通する集計結果をまとめ、また、入出場情報D1-1が入場である集計結果について、出場駅情報D1-6のみが異なり出場駅情報D1-6以外が共通する集計結果をまとめるようにすればよい。
【0049】
丸め処理の一例を、
図5に示す。この場合、
図5(a)に示すように、出場駅情報D1-6以外が共通する人数が10人未満となる集計結果が3つ存在することから、これら3つの集計結果をまとめ、
図5(b)に示すように人数を10人以上(12人)とする。
また、入場駅情報D1-5以外が共通する人数が10人未満となる集計結果が3つ存在することから、これら3つの集計結果をまとめ、
図5(b)に示すように人数を10人以上(11人)とする。
【0050】
このように複数の駅を1つにまとめる際には、例えば、特定の市町村内等、特定のエリア内に存在する駅まとめるようにすればよい。
【0051】
なお、このような丸め処理の方法は上記のように入場駅情報D1-5又は出場駅情報D1-6以外の情報が共通するものをまとめることが好ましいが、これに限られず、集計結果の人数の最低数を所定人数以上とすることができるものであれば、他の情報以外が共通するものをまとめるようにしてもよい。例えば、利用者の属性毎の分析が難しくなることから好ましくはないものの、属性情報D1-7に含まれる性別情報D1-7-1又は年代情報D1-7-2以外の情報が共通するものをまとめるようにすることも可能である。
【0052】
続いて、制御部11は、丸め処理後集計結果情報D1Bに係る集計人数について、利用したことが推定されるプラットホーム毎に分割する(ステップS1-6)。
【0053】
すなわち、本システムによる人流推定の対象とする鉄道駅と、他の特定の鉄道駅との間の区間を複数の路線が走っている場合、利用者が当該区間を走行する路線のうちいずれの路線を利用するかによって、当該利用者が人流推定の対象とする鉄道駅において利用するプラットホームが決定されることとなる。
【0054】
そこで、予めデータ分析サーバ1の記憶部12に、複数の路線が並行して走行する区間についての路線毎の利用割合に係る情報である路線毎利用割合情報D3を記憶させておき、当該情報を用いて分割すればよい。
なお、分割後の情報を、利用プラットホーム分割後集計結果情報D1Cとし、利用プラットホーム分割後集計結果情報D1Cに含まれる分割後の集計人数に係る情報を利用プラットホーム分割後集計人数情報D1-8Cとする。
【0055】
路線毎利用割合情報D3は、特定の駅と特定の駅との間を複数の路線が繋ぐ全区間について、路線毎の利用者の割合を定めた情報であり、過去の各路線の利用実績に係る情報を集計して作成の上、記憶部12に記憶させておけばよい。
【0056】
プラットホーム毎の分割の一例を、
図6に示す。
この場合、例えば、
図6(a)に示すように、丸め処理後集計結果情報D1Bとして、入出場情報D1-1が出場、利用改札情報D1-2が中央改札、利用年月日情報D1-3が2021年10月6日、利用時間帯情報D1-4が9時台、入場駅情報D1-5が××駅、出場駅情報D1-6が〇〇駅、性別情報D1-7-1が男、年代情報D1-7-2が20代の人数が60人であった場合に、××駅と〇〇駅とをつなぐ路線が路線α及び路線βの二つあり、〇〇駅における路線αの到着ホームが1番ホーム、〇〇駅における路線βの到着ホームが2番ホーム、××駅から〇〇駅への列車の利用について、路線毎利用割合情報D3に係る路線の利用割合が、路線α:路線β=1:2であったとすると、
図6(b)に示すようにして、上記60人の利用者数が1:2に分割された上で、利用プラットホーム情報D1-9が付加されるようにして、利用プラットホーム分割後集計結果情報D1Cが生成されることとなる。
【0057】
続いて、制御部11は、利用プラットホーム分割後集計結果情報D1Cについて、利用したことが推定される通路毎に分割する(ステップS1-7)。なお、この場合の通路とは、「通路」という名称が付された場所に限られず、駅構内に設けられた広場や店舗内等であっても、鉄道駅の利用者が通過できる場所であれば広く含むものとする。
【0058】
具体的には、予めデータ分析サーバ1の記憶部12に、本システムによる人流推定の対象とする鉄道駅において、特定のプラットホームと特定の改札との間の移動に利用することができる通路が複数存在する場合について、このような通路毎の利用割合に係る情報である通路毎利用割合情報D4を記憶させておき、当該情報を用いて分割すればよい。
なお、分割後の情報を、利用通路分割後集計結果情報D1Dとし、利用通路分割後集計結果情報D1Dに含まれる分割後の集計人数に係る情報を利用通路分割後集計人数情報D1-8Dとする。
【0059】
通路毎利用割合情報D4は、本システムによる人流推定の対象とする鉄道駅の駅構内において、特定のプラットホームと特定の改札との間に複数の通路が存在する場合に、特定のプラットホームから特定の改札への移動時、又は特定の改札から特定のプラットホームへの移動時における通路毎の利用者の割合を定めた情報である。
通路毎利用割合情報D4としては、例えば、過去の各通路の利用実績に係る情報を、各通路に設置したカメラ・センサー等よって取得の上集計することによって作成し、記憶部12に記憶させておけばよい。
【0060】
なお、通路毎利用割合情報D4は、上記のように実際の利用実績に基づいて作成された情報であることが好ましいが、これに限られず、例えば単純に通路数によって按分するようにして利用者の割合を定めるようにしてもよい。
また、通路毎の利用割合を通路の特性に応じて定めるようにしてもよい。この場合、例えば、エスカレーターのある通路について、階段しかない通路と比較して利用割合を高くするといった定め方が考えられる。
【0061】
通路毎の分割の一例を、
図7に示す。
この場合、例えば、
図7(a)に示すように、利用プラットホーム分割後集計結果情報D1Cとして、入出場情報D1-1が出場、利用改札情報D1-2が中央改札、利用年月日情報D1-3が2021年10月6日、利用時間帯情報D1-4が9時台、入場駅情報D1-5が××駅、出場駅情報D1-6が〇〇駅、性別情報D1-7-1が男、年代情報D1-7-2が20代、利用プラットホーム情報D1-9が1番ホームの人数が20人という情報と、入出場情報D1-1が出場、利用改札情報D1-2が中央改札、利用年月日情報D1-3が2021年10月6日、利用時間帯情報D1-4が9時台、入場駅情報D1-5が××駅、出場駅情報D1-6が〇〇駅、性別情報D1-7-1が男、年代情報D1-7-2が20代、利用プラットホーム情報D1-9が2番ホームの人数が40人という情報と、が含まれていた場合に、1番ホームから中央改札に向かう通路が通路a及び通路bの2つあり、通路毎利用割合情報D4に係る1番ホームから中央改札への移動時の通路の利用比率が、通路a:通路b=1:1、2番ホームから中央改札に向かう通路が通路c、通路d及び通路eの3つあり、通路毎利用割合情報D4に係る2番ホームから中央改札への移動時の通路の利用比率が、通路c:通路d:通路e=1:1:2であったとすると、
図7(b)に示すように、1番ホームから中央改札へと移動する20人の利用者数が1:1に分割され、2番ホームから中央改札へと移動する40人の利用者数が1:1:2に分割され、かつ、利用通路情報D1-10が付加されるようにして、利用通路分割後集計結果情報D1Dが生成されることとなる。
【0062】
続いて、制御部11は、利用通路分割後集計結果情報D1Dについて、通路における移動方向を特定する(ステップS1-8)。
【0063】
すなわち、特定のプラットホームから特定の改札へと特定の通路を利用して移動し、又は特定の改札から特定のプラットホームへと特定の通路を利用して移動する際の当該通路における移動方向は一定であることから、通路毎利用割合情報D4に、特定のプラットホームから特定の改札へと特定の通路を利用して移動し、又は特定の改札から特定のプラットホームへと特定の通路を利用して移動する各パターンについての通路における移動方向に係る情報を含めておき、当該情報を用いて、利用通路分割後集計結果情報D1Dに含まれる各集計結果について、移動方向に係る情報である移動方向情報D1-11を付加するようにすればよい。
なお、移動方向情報D1-11付加後の情報を、移動方向付加後集計結果情報D1Eとする。
【0064】
移動方向付加後集計結果情報D1Eの一例を、
図8に示す。
【0065】
上記ステップS1-1からステップS1-8の工程を経ることによって、乗車券利用履歴情報D1から集計された、駅構内の改札において入場し又は出場する利用者の人数を、利用プラットホーム及び利用通路毎に分割することができる。
【0066】
ステップS1-8まで完了すると、データ分析サーバ1においては、制御部11が、移動方向付加後集計結果情報D1Eに基づいて、人流の推定結果に係る情報について、本システムを利用する企業等に提供するための画面である人流情報提供画面G1を作成する(ステップS1-9)。
【0067】
人流情報提供画面G1は、例えば通信部13から通信ネットワークNを介して操作端末3へと送信することで、本システムを利用する企業等が確認することができると共に、当該企業等から駅構内の店舗、駅構内に広告を掲示する広告事業者等の事業者に提供することが可能となる。
【0068】
人流情報提供画面G1は、例えば、
図9に示すように、通路毎かつ利用時間毎の利用者数を表示する通路毎利用者数表示G11と、1日における利用者の総数を性別毎かつ年代毎に表示する属性毎利用者数表示G12と、駅構内における出発地点(改札又はプラットホーム)及び到着地点(改札又はプラットホーム)毎に1日における利用者数を表示するOD毎利用者数表示G13と、を含む。
【0069】
この場合、通路毎利用者数表示G11は、例えば、
図9に示すように、各通路の時間帯毎の利用者数について、当該通路における二つの移動方向に係る棒グラフが重ねて表示されるようにすればよい。
【0070】
また、属性毎利用者数表示G12は、
図9に示すように、男女に分けて円グラフを設け、円グラフによって年代毎の割合を表示するようにすればよい。
【0071】
また、OD毎利用者数表示G13は、
図9に示すように、出発地点となる改札又はプラットホーム(origin)と到着地点となる改札又はプラットホーム(destination)との間を移動する1日の利用者の数を、性別毎に表示した棒グラフとすればよい。
【0072】
[2 ステップS2:広告価値の評価]
続いて、ステップS1における駅構内の人流の推定結果に基いて、駅構内の各箇所に設けられた広告の掲示箇所について、広告価値の評価を行う際の本システムの動作について、
図3のフローチャートに従って説明する。
【0073】
なお、本発明における広告の掲示箇所は、何らかの宣伝目的を有する掲示がなされる箇所であればよく、広告の掲示のみを目的としたものに限定されない。例えば、駅構内の店舗スペースの通路に向いた面についても、店名を記載した看板等の宣伝目的を有する掲示がなされることから、「広告掲示箇所」に該当し、このような広告の掲示箇所が、通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられていることとなる。
店舗スペースにおいて、通路に向いた面の広告価値は、当該店舗スペース自体の価値に直結することから、このように店舗スペースの通路に向いた面を広告の掲示箇所と見て、その広告価値を評価する場合、駅構内の店舗スペース自体の価値を評価することができる。
【0074】
ステップS1-8で移動方向付加後集計結果情報D1Eが生成されると、制御部11は、移動方向付加後集計結果情報D1Eを基に、駅構内の各通路に設置された広告の掲示箇所のそれぞれについて、当該掲示箇所に掲示された広告を目にする人数を、時間帯毎に推定する(ステップS2-1)。
【0075】
具体的には、上記のとおり移動方向付加後集計結果情報D1Eには、各改札と各プラットホームとの間を移動する時間帯毎の利用者の人数を、利用する通路毎に分割した情報が含まれ、さらに、当該利用者の移動方向に係る情報も含まれることから、制御部11は、移動方向付加後集計結果情報D1Eを基に、各通路の時間帯毎かつ移動方向毎の利用者数を集計する。
【0076】
その上で、まず、広告の掲示箇所が、これが設置された通路における人の移動方向と平行な方向(移動方向のいずれかに沿い、移動方向のいずれかに対向する方向)を向くように設けられている場合、通路を広告掲示箇所が向くのと反対方向へと移動する利用者の時間帯毎の人数を、当該時間帯において広告の掲示箇所を目にする人数と推定する。
【0077】
例えば、南北方向に伸びる通路aについて、午前9時台の北方向に向かう利用者数の集計結果が1000人、午後9時台の南方向に向かう利用者数の集計結果が2000人であれば、通路aに設けられた南向きの広告掲示箇所を目にする9時台の人数を1000人、通路aに設けられた北向きの広告掲示箇所を目にする9時台の人数を2000人と推定することとなる。
【0078】
また、広告の掲示箇所が、これが設置された通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられている場合、通路を広告掲示箇所が向くのと直交する両方向へと移動する利用者の時間帯毎の人数の合計を、当該時間帯において広告の掲示箇所を目にする人数と推定する。
【0079】
例えば、南北方向に伸びる通路aについて、午前9時台の北方向に向かう利用者数の集計結果が1000人、午後9時台の南方向に向かう利用者数の集計結果が2000人であれば、通路aに設けられた東向き又は西向きの広告の掲示箇所を目にする9時台の人数を3000人と推定することとなる。
【0080】
続いて、制御部11は、ステップS2-1で集計した各広告掲示箇所を目にする時間帯毎の人数の推定値を、移動方向付加後集計結果情報D1Eに含まれる属性情報D1-7によって、利用者の属性毎に分割する(ステップS2-2)。
【0081】
具体的には、上記のように、南北方向に伸びる通路aに設けられた南向きの広告掲示箇所の広告を目にする9時台の人数が1000人と集計された場合において、属性情報D1-7が、性別情報D1-7-1及び年代情報D1-7-2を含む場合であれば、集計された1000人が、性別及び年代によって分割されることとなる。
【0082】
例えば、南北方向に伸びる通路aに設けられた南向きの広告掲示箇所の広告を目にする9時台の人数1000人が、10代男性80人、10代女性80人、20代男性100人、20代女性80人、30代男性100人、30代女性80人、40代男性80人、40代女性70人、50代男性70人、50代女性60人、60代男性50人、60代女性40人、70代男性30人、70代女性30人、80代男性30人、80代女性20人というように分割されることとなる。
【0083】
続いて、制御部11は、ステップS2-2で利用者の属性ごとに分割した各広告掲示箇所を目にする時間帯毎の人数を基に、各広告掲示箇所について、所定の基準に従って、時間帯毎かつ属性毎の評価を決定する。
【0084】
この際の評価の決定基準としては、各掲示箇所に掲示された広告を目にする時間帯毎かつ属性毎の人数を基に、その人数の多寡によって、各掲示箇所を評価するようにすればよい。
また、その際の評価方法としては、例えば、人数を基にスコアを算出するようにしてもよいし、人数によって複数のランク(例えば人数が多い方から順にランクAからF等)に分けてもよい。
【0085】
例えば、特定の広告の掲示箇所について、1時間に視認する人数が、100人以上をランクA、80人以上100人未満をランクB、60人以上80人未満をランクC、40人以上60人未満をランクD、20人以上40人未満をランクE、0人以上20人未満をランクFとするといった評価方法が考えられる。
この場合、ステップS2-2で例示したように分割がなされた場合であれば、南北方向に伸びる通路aに設けられた南向きの広告掲示箇所の9時台の評価が、10代男性についてランクB、10代女性についてランクB、20代男性についてランクA、20代女性についてランクB、30代男性についてランクA、30代女性についてランクB、40代男性についてランクB、40代女性についてランクC、50代男性についてランクC、50代女性についてランクC、60代男性についてランクD、60代女性についてランクD、70代男性についてランクE、70代女性についてランクE、80代男性についてランクE、80代女性についてランクEと決定されることとなる。
【0086】
ステップS2-3まで完了すると、データ分析サーバ1においては、制御部11が、ステップS2-3で決定された各広告の掲示箇所の評価に係る情報を、本システムを利用する企業等に提供するための画面である広告価値評価情報提供画面を作成する(ステップS2-4)。
【0087】
広告価値評価情報提供画面は、例えば、駅構内の広告の掲示箇所のそれぞれについて、ステップS2-2で分割されて生成された時間帯毎かつ利用者の属性毎の各広告掲示箇所を目にする人数に係る情報と、ステップS2-3において決定された各広告掲示箇所の時間帯毎かつ利用者の属性毎の評価(ランク、スコア等)に係る情報と、が併記される画面とすればよい。
広告価値情報提供画面についても、例えば通信部13から通信ネットワークNを介して操作端末3へと送信することで、本システムを利用する企業等が確認することができると共に、当該企業等から駅構内に広告を掲示する広告事業者等の事業者に提供することが可能となる。
【0088】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係る駅構内人流推定システム100の効果について説明する。
【0089】
本実施形態に係る駅構内人流推定システム100によれば、データ分析サーバ1において、ステップS1-4で、乗車券利用履歴情報D1に基づいて、人流推定の対象とする駅の利用者数について、乗車券利用履歴情報D1に含まれる情報の内、利用改札情報D1-2を含む情報が共通するものの数を集計することによって、少なくとも利用した改札毎に分割されるようにして集計した上で、さらに、当該集計結果に係る人数を、ステップS1-6で、利用したことが推定されるプラットホーム毎に分割する。
これによって、各プラットホームと各改札との間を移動した利用者の数を把握できることから、駅構内における改札とプラットホームとの間での人流の推定精度を向上することが可能となる。
【0090】
また、ステップS1-4で、入出場情報D1-1、すなわち、改札の利用履歴が入場又は出場のいずれに該当するかに係る情報が共通する数を集計し、入場者(改札からプラットホームへと移動する)又は出場者(プラットホームから改札へと移動する)に分けて利用者数を集計することで、移動方向毎の人数を推定することが可能となる。
【0091】
また、データ分析サーバ1において、予め複数の路線が存在する区間について路線毎の利用者の割合を定めた情報である路線毎利用割合情報D3を記憶させておき、当該情報を用いて、利用者数を利用したことが推定されるプラットホーム毎に分割することによって、予め定められたプラットホーム毎の利用割合に基づき、容易に利用者数をプラットホーム毎に分割することができる。
【0092】
また、ステップS1-6で利用したことが推定されるプラットホーム毎に分割された利用者数を、さらに、ステップS1-7で、利用したことが推定される通路毎に分割することで、各プラットホームと各改札との間を移動した利用者の数を、さらに利用した通路毎に把握できることから、駅構内における改札とプラットホームとの間での人流の推定精度をさらに向上することができる。
【0093】
また、データ分析サーバ1において、予め改札とプラットホームとの間に複数の通路が存在する場所について通路毎の利用者の割合を定めた情報である通路毎利用割合情報D4を記憶させておき、当該情報を用いて、利用者数を利用したことが推定される通路毎に分割することによって、予め定められた通路毎の利用割合に基づき、容易に利用者数を通路毎に分割することができる。
【0094】
また、ステップS1-8で、ステップS1-7で利用したことが推定される通路毎に分割された利用者数について、通路における移動方向を特定することで、通路における移動方向毎の利用者の割合を把握することが可能となる。
【0095】
また、ステップS1-5の丸め処理において、ステップS1-4における集計結果をまとめて所定の人数以下とならないようにすることで、人流推定の対象とする駅の利用者数の集計が、各集計結果が所定の人数未満とならないように分割して行われたこととなる。これによって、集計された人数が少なくなり過ぎることで個人が特定されるリスクが生じることを防止できる。
【0096】
また、ステップS1-4で、属性情報D1-7、すなわち、性別、年代等の利用者の属性が共通する数を集計することで、属性毎に分けて利用者数を集計することができ、駅構内の人流について、単に利用者の数のみならず、その属性毎の割合についても把握することが可能となる。
【0097】
また、広告掲示箇所については、広告を掲示した際にこれを目にする人数によって宣伝効果が左右されるところ、各広告掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値を用いて、所定の基準に従って評価を決定することで、単に駅構内の人流を推定するにとどまらず、人流に基づく各広告掲示箇所の宣伝効果の評価に係る情報も取得することが可能となる。
【0098】
また、各広告の掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値が時間帯毎に推定された値であることによって、各広告の掲示箇所について、時間帯毎に評価を決定することができる。これによって、例えば、時間帯毎の評価に応じて掲示する広告を変更することが可能となる。
【0099】
また、各広告の掲示箇所を目にする視認者の人数の推定値が利用者の属性毎に推定された値であることによって、各広告の掲示箇所について、対象とする視認者の属性毎に評価を決定することができる。これによって、例えば、各広告の掲示箇所に、対象とする属性が適した広告を掲示することが可能となる。
【0100】
また、広告の掲示箇所が、通路における人の移動方向と対向する方向を向くように設けられている場合に、通路を広告掲示箇所が向くのと反対方向へと移動する利用者の人数を、当該広告の掲示箇所を目にする視認者の人数と推定することで、通路における人の移動方向と対向する方向を向くように設けられた広告の掲示箇所を目にする視認者の人数を容易に推定することができる。
【0101】
また、広告の掲示箇所が、通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられている場合に、通路を広告掲示箇所が向くのと直交する方向へと移動する利用者の人数を、当該広告の掲示箇所を目にする視認者の人数と推定することで、通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられた広告の掲示箇所を目にする視認者の人数を容易に推定することができる。
【0102】
[第4 変形例]
次に、本実施形態に係る駅構内人流推定システム100の変形例について説明する。
【0103】
[1 変形例1:丸め処理の方法の変更]
上記動作の説明においては、ステップS1-5の丸め処理において、集計結果情報D1Aに、集計人数情報D1-8Aに係る人数が所定の人数(例えば10人)未満となる集計結果が含まれる場合に、このような集計結果を複数合算してまとめることで、人数の最低数が所定人数以上となるデータとする場合について説明したが、丸め処理の方法はこれに限られない。
【0104】
例えば、集計人数情報D1-8Aに係る人数が所定の人数未満となる集計結果が含まれていた場合に、当該集計結果に係る人数を所定の数値に固定することで、集計結果を複数合算することなく、丸め処理をおこなってもよい。
例えば、集計人数情報D1-8Aに係る人数が10人未満となる集計結果が含まれていた場合に、当該集計結果に係る人数を、0人又は10人に固定することで、集計人数情報D1-8Aに係る人数が10人未満となる集計結果が生じないようにすることが考えられる。
【0105】
また、丸め処理を行うタイミングも、ステップS1-4における集計結果情報D1Aの取得の直後には限られない。
例えば、ステップS1-8で移動方向付加後集計結果情報D1Eを取得した後に、丸め処理を行うことも可能である。この場合、最終的な分割後の集計結果が所定数未満(たとえば10人未満)となったグループに対してのみ、丸め処理を行って人数を所定の人数以上とすることで、個人が特定されるリスクを低減しつつ、丸め処理が不要(最終的な分割後の集計結果が所定数以上)となったグループに対しては、丸め処理を行わずに、元の乗車券利用履歴情報D1に近い正確なデータに基づいて、人流の推定結果に係る情報を提供することが可能となる。
【0106】
[2 変形例2;広告視認者数の推定方法の変更]
上記動作の説明のステップS2-1においては、広告の掲示箇所が、これが設置された通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられている場合について、通路を広告掲示箇所が向くのと直交する両方向へと移動する利用者の時間帯毎の人数の合計を、当該時間帯において広告の掲示箇所を目にする人数と推定する場合について説明したが、通路を広告掲示箇所が向く方向と直交する方向に移動する利用者のうち広告を目にする人の割合は、通路を広告掲示箇所が向く方向と対向する方向へと移動する利用者のうち広告を目にする人の割合よりも少なくなる場合も想定される。
【0107】
そこで、広告の掲示箇所が、これが設置された通路における人の移動方向と直交する方向を向くように設けられている場合、通路を広告掲示箇所が向くのと直交する両方向へと移動する利用者の時間帯毎の人数の合計に、所定の重み係数を乗じた数を、当該時間帯において広告の掲示箇所を目にする人数と推定してもよい。
【0108】
この場合、例えば、南北方向に伸びる通路aについて、午前9時台の北方向に向かう利用者数の集計結果が1000人、午後9時台の南方向に向かう利用者数の集計結果が2000人であれば、その合計である3000人に、所定の重み係数である50%(0.5)を乗じた数である1500人を、通路aに設けられた東向き又は西向きの広告の掲示箇所を目にする9時台の人数と推定することとなる。
【0109】
[3 変形例3:乗車券利用履歴情報の取得対象の変更]
上記構成の説明においては、乗車券利用履歴情報D1が、乗車券としてのICカードの利用履歴に係る情報である場合について説明したが、乗車券利用履歴情報D1は、本システムによる人流の推定の対象とすることができる各鉄道駅の改札装置における乗車券の利用履歴に係る情報であって、入出場情報D1-1と、利用改札情報D1-2と、利用年月日情報D1-3と、利用時間帯情報D1-4と、入場駅情報D1-5と、出場駅情報D1-6と、属性情報D1-7と、を含むものであればよく、必ずしもICカードの利用履歴には限定されない。
例えば、ICチップが搭載され決済機能を備えたスマートフォンやウェアラブルデバイス等が乗車券として使用された際に、その利用履歴に係る情報が記憶されるようにしてもよい。
【0110】
[4 変形例4:人流情報提供画面の変更]
上記動作の説明においては、ステップS1-9で、人流の推定結果に係る情報について、本システムを利用する企業等に提供するための画面として、
図9に示す人流情報提供画面G1を使用する場合について説明したが、人流の推定結果に係る情報の提供に使用できる画面はこれに限られない。
【0111】
例えば、
図10に示す人流情報提供画面G1Aのように、駅構内図に表示された矢印の方向によって人流の向きを表現すると共に、矢印の色によって人流の量を表現するようにしてもよい。
【0112】
図10においては、駅構内
図G14上に、矢印の方向によって人流の向きを表現すると共に、矢印の色によって人流の量を表現する第1人流表示矢印G141及び第2人流表示矢印G142が表示されている。
第1人流表示矢印G141及び第2人流表示矢印G142は、駅構内図上の同一の箇所に反対方向を向くように表示され、駅構内の当該箇所における、矢印が向く方向の人流の量を、その色によって示している。
【0113】
なお、図においては矢印の色は明暗しか表現していないが、例えば、人流が少ないと緑色に表示されていた矢印が、人流の増加に伴って徐々に赤色に変化するようにして、色相によって人流の量を表現することが好ましい。
また、色相の変化と違って認識し難いことから好ましくはないものの、明度や彩度の違いによって人流の量を表現することも可能である。
【0114】
また、人流情報提供画面G1Aは、さらに、利用年月日入力欄G15及び利用時間入力欄G16を有し、入力された利用年月日及び利用時間に対応した情報を表示するように構成されている。すなわち、入力された利用年月日及び利用時間に対応して、第1人流表示矢印G141及び第2人流表示矢印G142の色が変化することとなる。
【0115】
また、人流情報提供画面G1Aは、さらに、通路毎の利用者数を表示する通路毎利用者数表示G11Aと、利用者数を性別毎かつ年代毎に表示する属性毎利用者数表示G12Aと、駅構内における出発地点(改札又はプラットホーム)及び到着地点(改札又はプラットホーム)毎の利用者数を表示するOD毎利用者数表示G13Aと、を含む。
【0116】
通路毎利用者数表示G11Aは、
図10に示すように、利用年月日入力欄G15及び利用時間入力欄G16に入力された日時における各通路の利用者数を、色によって方向毎に分けた棒グラフを用いて表示する。
【0117】
また、属性毎利用者数表示G12Aは、
図10に示すように、利用年月日入力欄G15及び利用時間入力欄G16に入力された日時における利用者の総数を、単一の円グラフによって、性別毎かつ年代毎に分けて表示する。
【0118】
また、OD毎利用者数表示G13Aは、
図10に示すように、出発地点となる改札又はプラットホーム(origin)と到着地点となる改札又はプラットホーム(destination)との間を移動する利用年月日入力欄G15及び利用時間入力欄G16に入力された日時における利用者数を、色によって属性毎に分けた棒グラフによって表示する。
【0119】
さらに、人流情報提供画面G1Aには、
図10に示すように、凡例表示G17を表示する。凡例表示G17は、第1人流表示矢印G141及び第2人流表示矢印G142の矢印の色が示す人流量、通路毎利用者数表示G11Aの棒グラフの色が示す方向、属性毎利用者数表示G12Aの円グラフの色が示す属性、並びにOD毎利用者数表示G13Aの棒グラフの色が示す属性について、その凡例となる色が表示される部分である。
【0120】
なお、
図10においては、駅構内の一か所についてのみ人流表示矢印が表示される場合について図示したが、駅構内の広範囲が表示される図を用いた上で、複数箇所について同時に人流表示矢印が表示されるようにしてもよい。また、このような広範囲の表示から特定の地点を指定することで、
図10に示すような特定の箇所が拡大される表示に移行できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
100 駅構内人流推定システム
1 データ分析サーバ(広告掲示箇所評価装置)
11 制御部(評価手段、推定手段)
12 記憶部
13 通信部
2 乗車券利用履歴情報管理サーバ
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
3 操作端末
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 表示部
35 操作部
D1 乗車券利用履歴情報
D1A 集計結果情報
D1B 丸め処理後集計結果情報
D1C 利用プラットホーム分割後集計結果情報
D1D 利用通路分割後集計結果情報
D1E 移動方向付加後集計結果情報
D2 利用者属性情報
D3 路線毎利用割合情報
D4 通路毎利用割合情報