(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147770
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ロータおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231005BHJP
H02K 1/278 20220101ALI20231005BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20231005BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/278
H02K21/14 M
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055474
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋衣
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA23
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE18
5H601EE27
5H601EE39
5H601FF02
5H601FF17
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA25
5H601GA32
5H601GA34
5H621AA02
5H621BB07
5H621GB10
5H621HH01
5H621JK03
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB01
5H622CB05
5H622PP10
5H622PP11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】駆動トルクを向上させるロータおよび回転電機を提供する。
【解決手段】複数のマグネットは、径方向内側から外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びる一対の第1マグネット41a,41bと、一対の第1マグネット41a,41bの径方向内端部よりも径方向外側において径方向と直交する方向に延びる第2マグネット42と、を含む。ロータコア20は、周方向一方側の第1マグネット41aの径方向外側に配置された第1フラックスバリア部51bと、周方向他方側の第1マグネット41bの径方向外側に配置された第2フラックスバリア部51dと、第2マグネット42の周方向他方側に配置された第3フラックスバリア部52bと、を有する。第1フラックスバリア部51bの外縁を構成する少なくとも1辺は、周方向一方側の第1マグネット41aにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりもd軸側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として軸方向に延びる複数のマグネット挿入孔が設けられるロータコアと、
複数の前記マグネット挿入孔の内部にそれぞれ収容された複数のマグネットと、
を有し、
複数の前記マグネットは、
周方向に互いに間隔を空けて配置され、軸方向に見て径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びる一対の第1マグネットと、
一対の前記第1マグネットの径方向内端部よりも径方向外側において一対の前記第1マグネット同士の間の周方向位置に配置され、軸方向に見て径方向と直交する方向に延びる第2マグネットと、
を含み、
前記ロータコアは、
軸方向に見て、一対の前記第1マグネットのうち、周方向一方側に位置する前記第1マグネットの径方向外側に配置された第1フラックスバリア部と、
一対の前記第1マグネットのうち、周方向他方側に位置する前記第1マグネットの径方向外側に配置された第2フラックスバリア部と、
前記第2マグネットの周方向他方側に配置された第3フラックスバリア部と、
を有し、
軸方向に見て、前記第1フラックスバリア部の外縁を構成する少なくとも1辺は、周方向一方側の前記第1マグネットにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりもd軸側に位置する、ロータ。
【請求項2】
軸方向に見て、前記第2フラックスバリア部の外縁は、周方向他方側の前記第1マグネットにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりも、前記d軸から遠い位置に配置されている、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1フラックスバリア部および前記第2フラックスバリア部の外縁は、それぞれ曲線部を含む、
請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
軸方向に見て、第3フラックスバリア部の周方向の最大寸法は、径方向の最大寸法よりも長い、
請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項5】
軸方向に見て、一対の前記第1マグネットのうち、周方向一方側に位置する前記第1マグネットの径方向内側に配置された第4フラックスバリア部と、
一対の前記第1マグネットのうち、周方向他方側に位置する前記第1マグネットの径方向内側に配置された第5フラックスバリア部と、を有し、
前記第4フラックスバリア部の径方向の最大寸法は、前記第5フラックスバリア部の径方向の最大寸法よりも長く、
前記第5フラックスバリア部の周方向の最大寸法は、前記第4フラックスバリア部の周方向の最大寸法よりも長い、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータの径方向外側に位置するステータと、
を備える、回転電機。
【請求項7】
前記ロータは、周方向一方側に回転可能である、
請求項6に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータコアとロータコアに設けられた穴に配置された永久磁石とを備える回転電機が知られている。例えば、特許文献1にはトルクリプルを低減させるために、マグネットの両側に配置されたフラックスバリア部を磁極中心に対して周方向に非対称とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラックスバリア部が直線の組み合わせで構成されているため、磁束は直線が交差する角部を迂回して通ることになる。そのため、磁路長さが大きくなることで、磁気抵抗が大きくなりリラクタンストルクが低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、駆動トルクを向上させるロータおよび回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸を中心として軸方向に延びる複数のマグネット挿入孔が設けられるロータコアと、複数の前記マグネット挿入孔の内部にそれぞれ収容された複数のマグネットと、を有し、複数の前記マグネットは、周方向に互いに間隔を空けて配置され、軸方向に見て径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びる一対の第1マグネットと、一対の前記第1マグネットの径方向内端部よりも径方向外側において一対の前記第1マグネット同士の間の周方向位置に配置され、軸方向に見て径方向と直交する方向に延びる第2マグネットと、を含み、前記ロータコアは、軸方向に見て、一対の前記第1マグネットのうち、周方向一方側に位置する前記第1マグネットの径方向外側に配置された第1フラックスバリア部と、一対の前記第1マグネットのうち、周方向他方側に位置する前記第1マグネットの径方向外側に配置された第2フラックスバリア部と、前記第2マグネットの周方向他方側に配置された第3フラックスバリア部と、を有し、軸方向に見て、前記第1フラックスバリア部の外縁を構成する少なくとも1辺は、周方向一方側の前記第1マグネットにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりもd軸側に位置する。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上記のロータと、前記ロータの径方向外側に位置するステータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、ロータおよび回転電機において駆動トルクを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の回転電機を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の回転電機の一部を示す部分断面図であって、
図1におけるII-II断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のロータの磁極部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の磁束の流れを含むロータの磁極部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、フラックスバリア部が対称構造の場合と非対称構造の場合のトルクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るロータおよび回転電機について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を「上側」とし、負の側を「下側」とする上下方向である。各図に適宜示す中心軸Jは、Z軸方向と平行であり、上下方向に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。各図に適宜示す矢印θは、周方向を示している。矢印θは、上側から見て中心軸Jを中心として反時計回りの向きを向いている。以下の説明では、或る対象を基準として周方向のうち矢印θが向かう側、すなわち上側から見て反時計回りに進む側を「周方向一方側」と呼び、或る対象を基準として周方向のうち矢印θが向かう側と逆側、すなわち上側から見て時計回りに進む側を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0013】
図1に示すように、回転電機1は、インナーロータ型の回転電機である。
本実施形態において回転電機1は、三相交流式の回転電機である。回転電機1は、例えば、三相交流の電源が供給されることで駆動される三相モータである。回転電機1は、ハウジング2と、ロータ10と、ステータ60と、ベアリングホルダ4と、ベアリング5a,5bと、を備える。
【0014】
ハウジング2は、ロータ10、ステータ60、ベアリングホルダ4、およびベアリング5a,5bを内部に収容している。ハウジング2の底部は、ベアリング5bを保持している。ベアリングホルダ4は、ベアリング5aを保持している。ベアリング5a,5bは、例えば、ボールベアリングである。
【0015】
ステータ60は、ロータ10の径方向外側に位置する。ステータ60は、ステータコア61と、インシュレータ64と、複数のコイル65と、を有する。ステータコア61は、コアバック62と、複数のティース63と、を有する。コアバック62は、後述するロータコア20の径方向外側に位置する。なお、以下の
図2においては、インシュレータ64の図示を省略している。
【0016】
図2に示すように、コアバック62は、ロータコア20を囲む環状である。コアバック62は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0017】
複数のティース63は、コアバック62から径方向内側に延びている。複数のティース63は、周方向に間隔を空けて並んで配置されている。複数のティース63は、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。ティース63は、例えば、48個設けられている。つまり、回転電機1のスロット67の数は、例えば、48である。
【0018】
複数のコイル65は、ステータコア61に取り付けられている。
図1に示すように、複数のコイル65は、例えば、インシュレータ64を介してティース63に取り付けられている。本実施形態においてコイル65は、分布巻きされている。つまり、各コイル65は、複数のティース63に跨って巻き回されている。本実施形態においてコイル65は、全節巻きされている。つまり、コイル65が差し込まれるステータ60のスロット同士の周方向ピッチが、ステータ60に三相交流電源が供給された際に生じる磁極の周方向ピッチと等しい。回転電機1の極数は、例えば、8である。つまり、回転電機1は、例えば、8極48スロットの回転電機である。このように、本実施形態の回転電機1においては、極数をNとしたとき、スロット数がN×6となる。
【0019】
ロータ10は、中心軸Jを中心として回転可能である。
図2に示すように、ロータ10は、シャフト11と、ロータコア20と、複数のマグネット40と、を有する。シャフト11は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。
図1に示すように、シャフト11は、ベアリング5a,5bによって中心軸J回りに回転可能に支持されている。
【0020】
ロータコア20は、磁性体である。ロータコア20は、シャフト11の外周面に固定されている。ロータコア20は、ロータコア20を軸方向に貫通する貫通孔21を有する。
図2に示すように、貫通孔21は、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする円形状である。貫通孔21には、シャフト11が通されている。シャフト11は、例えば圧入等により、貫通孔21内に固定されている。図示は省略するが、ロータコア20は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。
【0021】
ロータコア20は、複数のマグネット挿入孔30を有する。複数のマグネット挿入孔30は、例えば、ロータコア20を軸方向に貫通している。複数のマグネット挿入孔30の内部には、複数のマグネット40がそれぞれ収容されている。マグネット挿入孔30内におけるマグネット40の固定方法は、特に限定されない。複数のマグネット挿入孔30は、一対の第1マグネット挿入孔31a,31bと、第2マグネット挿入孔32と、を含む。
【0022】
複数のマグネット40の種類は、特に限定されない。マグネット40は、例えば、ネオジム磁石であってもよいし、フェライト磁石であってもよい。複数のマグネット40は、一対の第1マグネット41a,41bと、第2マグネット42と、を含む。一対の第1マグネット41a,41bと、第2マグネット42とは極を構成する。
【0023】
本実施形態において一対の第1マグネット挿入孔31a,31bと一対の第1マグネット41a,41bと第2マグネット挿入孔32と第2マグネット42とは、周方向に間隔を空けて複数ずつ設けられている。一対の第1マグネット挿入孔31a,31bと一対の第1マグネット41a,41bと第2マグネット挿入孔32と第2マグネット42とは、例えば、8つずつ設けられている。
【0024】
ロータ10は、一対の第1マグネット挿入孔31a,31bと一対の第1マグネット41a,41bと第2マグネット挿入孔32と第2マグネット42とを1つずつ含む磁極部70を複数有する。磁極部70は、例えば、8つ設けられている。複数の磁極部70は、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数の磁極部70は、ロータコア20の外周面における磁極がN極の磁極部70Nと、ロータコア20の外周面における磁極がS極の磁極部70Sと、を複数ずつ含む。磁極部70Nと磁極部70Sとは、例えば、4つずつ設けられている。4つの磁極部70Nと4つの磁極部70Sとは、周方向に沿って交互に配置されている。各磁極部70の構成は、ロータコア20の外周面の磁極が異なる点および周方向位置が異なる点を除いて、同様の構成である。
【0025】
第1マグネット挿入孔31aと第1マグネット挿入孔31bとは、例えば、軸方向に見て、d軸を構成する
図3に示す磁極中心線IL1を周方向に挟んで配置されている。磁極中心線IL1は、磁極部70の周方向中心と中心軸Jとを通り、径方向に延びる仮想線である。第1マグネット挿入孔31aと第1マグネット挿入孔31bとは、例えば、軸方向に見て、磁極中心線IL1に対して線対称に配置されている。以下、磁極中心線IL1に対して線対称である点を除いて第1マグネット挿入孔31aと同様の構成については、第1マグネット挿入孔31bについての説明を省略する場合がある。
【0026】
第1マグネット挿入孔31aは、第1直線部31cと、内端部31dと、外端部31eと、を有する。第1直線部31cは、軸方向に見て、第1マグネット挿入孔31aが延びる方向に直線状に延びている。第1直線部31cは、例えば、軸方向に見て長方形状である。内端部31dは、第1直線部31cの径方向内側の端部に繋がっている。内端部31dは、第1マグネット挿入孔31aの径方向内側の端部である。外端部31eは、第1直線部31cの径方向外側の端部に繋がっている。外端部31eは、第1マグネット挿入孔31aの径方向外側の端部である。外端部31eは、第1直線部31cの径方向外側の端部から径方向外側に磁極中心線IL1に沿って延びている(詳細は後述)。第1マグネット挿入孔31bは、第1直線部31fと、内端部31gと、外端部31hと、を有する。
【0027】
第2マグネット挿入孔32は、一対の第1マグネット挿入孔31a,31bの径方向外側の端部同士の周方向の間に位置する。つまり、本実施形態において第2マグネット挿入孔32は、外端部31eと外端部31hとの周方向の間に位置する。第2マグネット挿入孔32は、例えば、軸方向に見て、径方向と直交する方向に略直線状に延びている。第2マグネット挿入孔32は、例えば、軸方向に見て、磁極中心線IL1と直交する方向に延びている。一対の第1マグネット挿入孔31a,31bと第2マグネット挿入孔32とは、例えば、軸方向に見て、∇形状に沿って配置されている。
【0028】
軸方向に見て、第2マグネット挿入孔32の周方向の中心には、例えば、磁極中心線IL1が通っている。つまり、第2マグネット挿入孔32の周方向中心の周方向位置は、例えば、磁極部70の周方向中心の周方向位置と一致している。第2マグネット挿入孔32の軸方向に見た形状は、例えば、磁極中心線IL1を中心とする線対称な形状である。第2マグネット挿入孔32は、ロータコア20の径方向外周縁部に位置する。
【0029】
第2マグネット挿入孔32は、第2直線部32aと、一端部32cと、を有する。第2直線部32aは、軸方向に見て、第2マグネット挿入孔32が延びる方向に直線状に延びている。第2直線部32aは、例えば、軸方向に見て長方形状である。一端部32cは、第2直線部32aの周方向他方側(-θ側)の端部に繋がっている。一端部32cは、第2マグネット挿入孔32の周方向他方側の端部である。一端部32cは、第1マグネット挿入孔31bにおける外端部31hの周方向一方側に間隔を空けて配置されている。他端部32cは、周方向他方側に円弧状に湾曲して延びている。
【0030】
一対の第1マグネット41a,41bは、一対の第1マグネット挿入孔31a,31bの内部にそれぞれ収容されている。第1マグネット41aは、第1マグネット挿入孔31aの内部に収容されている。第1マグネット41bは、第1マグネット挿入孔31bの内部に収容されている。一対の第1マグネット41a,41bは、例えば、軸方向に見て長方形状である。一対の第1マグネット41a,41bが延びる方向の長さは同じである。一対の第1マグネット41a,41bが延びる方向と直交する方向の第1マグネット41a,41bの長さは同じである。
【0031】
図示は省略するが、第1マグネット41a,41bは、例えば、直方体状である。図示は省略するが、第1マグネット41a,41bは、例えば、第1マグネット挿入孔31a,31b内の軸方向の全体に亘って設けられている。一対の第1マグネット41a,41bは、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1マグネット41aは、例えば、第1マグネット41bの周方向一方側(+θ側)に位置する。
【0032】
第1マグネット41aは、軸方向に見て第1マグネット挿入孔31aに沿って延びている。第1マグネット41bは、軸方向に見て第1マグネット挿入孔31bに沿って延びている。第1マグネット41a,41bは、例えば、軸方向に見て、径方向に対して斜めに傾いた方向に略直線状に延びている。一対の第1マグネット41a,41bは、軸方向に見て径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びている。つまり、第1マグネット41aと第1マグネット41bとの間の周方向の距離は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなっている。
【0033】
第1マグネット41aは、例えば、径方向内側から径方向外側に向かうに従って、周方向一方側(+θ側)に位置する。第1マグネット41bは、例えば、径方向内側から径方向外側に向かうに従って、周方向他方側(-θ側)に位置する。第1マグネット41aと第1マグネット41bとは、例えば、軸方向に見て、磁極中心線IL1を周方向に挟んで配置されている。第1マグネット41aと第1マグネット41bとは、例えば、軸方向に見て、磁極中心線IL1に対して線対称に配置されている。以下、磁極中心線IL1に対して線対称である点を除いて第1マグネット41aと同様の構成については、第1マグネット41bについての説明を省略する場合がある。
【0034】
第1マグネット41aは、第1マグネット挿入孔31a内に嵌め合わされている。より詳細には、第1マグネット41aは、第1直線部31c内に嵌め合わされている。第1マグネット41aの側面のうち、第1直線部31cが延びる方向と直交する方向における両側面のうち、少なくとも径方向内側の側面は、例えば、第1直線部31cの内側面との間に隙間を有している。
【0035】
軸方向に見て、第1マグネット41aの延伸方向の両端部は、第1マグネット挿入孔31aの延伸方向の両端部からそれぞれ離れて配置されている。軸方向に見て、第1マグネット41aが延びる方向において第1マグネット41aの両側には、内端部31dと外端部31eとがそれぞれ隣接して配置されている。ここで、本実施形態において内端部31dは、フラックスバリア部51aを構成している。外端部31eは、フラックスバリア部51bを構成している。つまり、ロータコア20は、軸方向に見て、第1マグネット41aが延びる方向において第1マグネット41aを挟んで配置された一対のフラックスバリア部51a,51bを有する。ロータコア20は、軸方向に見て、第1マグネット41bが延びる方向において第1マグネット41bを挟んで配置された一対のフラックスバリア部51c,51dを有する。
【0036】
このように、ロータコア20は、軸方向に見て、各第1マグネット41a,41bが延びる方向において各第1マグネット41a,41bのそれぞれを挟んで一対ずつ配置されたフラックスバリア部51a,51b,51c,51dを有する。フラックスバリア部51a,51b,51c,51d、後述するフラックスバリア部52bは、磁束の流れを抑制できる部分である。すなわち、各フラックスバリア部には、磁束が通りにくい。各フラックスバリア部は、磁束の流れを抑制できるならば、特に限定されず、空隙部を含んでもよいし、樹脂部等の非磁性部を含んでもよい。
【0037】
以下の説明では、一対のフラックスバリア部51a,51bのうち、径方向外側に位置するフラックスバリア部51bを第1フラックスバリア部51bとし、径方向内側に位置するフラックスバリア部51aを第4フラックスバリア部51aとする。また、一対のフラックスバリア部51c,51dのうち、径方向外側に位置するフラックスバリア部51dを第2フラックスバリア部51dとし、径方向内側に位置するフラックスバリア部51cを第5フラックスバリア部51cとする。
【0038】
軸方向に見て、第1フラックスバリア部51bは、第1マグネット41aの径方向端部から磁極中心線IL1に沿って径方向外側に延びている。第1フラックスバリア部51bの外縁を構成する辺は、第1辺56aと、第2辺56bと、第3辺56cと、含む。第1辺56aは、磁極中心線IL1と平行に延びる。第1辺56aにおける径方向内側の端部は、第1マグネット41aの径方向外側の端面と接触する。第1フラックスバリア部51bの外縁を構成する少なくとも1辺は、第1マグネット41aにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりも磁極中心線IL1側に位置する。第1辺56aは、第1マグネット41aにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりもd軸側である磁極中心線IL1側に位置する。第1辺56aが、第1マグネット41aにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりも磁極中心線IL1側に位置することで、第1マグネット41aにおけるエッジ部からの磁束漏れを抑制できる。その結果、駆動トルクを向上できる。
【0039】
第2辺56bは、第1辺56aの径方向外側の端部から周方向一方側に延びる。第2辺56bは、中心軸Jを中心とする円弧状の曲線部である。第1辺56aと第2辺56bの交差部は、R面取りの曲線部でフィレットされている。第3辺56cは、q軸IL2に沿って径方向外側に延びる直線である。第3辺56cと第2辺56bの交差部は、R面取りの曲線部でフィレットされている。
【0040】
軸方向に見て、第1フラックスバリア部51bが曲線部を含むことで、第1フラックスバリア部51bの外縁を構成する辺が角部の一部となる直線で構成された場合に、
図4に示すように、第1フラックスバリア部51bの周方向一方側から第1フラックスバリア部51bを迂回して磁極中心線IL1側に流れる磁束B1が、角部を迂回する場合と比較して磁路長さを短くできる。この結果、磁気抵抗が小さくなりリラクタンストルクを大きくできる。従って、実施形態では駆動トルクを向上できる。
【0041】
軸方向に見て、第2フラックスバリア部51dは、第1マグネット41bの径方向端部から磁極中心線IL1に沿って径方向外側に延びている。第2フラックスバリア部51dの外縁は、第1マグネット41bにおける最も径方向外側に位置するエッジ部よりも、磁極中心線IL1から遠い位置に配置されている。従って、第1フラックスバリア部51bと第1マグネット41bは、磁極中心線IL1に対して非対称である。
【0042】
第2フラックスバリア部51dの外縁を構成する辺は、第4辺57aと、第5辺57bと、第6辺57cと、含む。第4辺57aは、q軸IL2に沿って延びる。第5辺57bは、第4辺57aの径方向外側の端部から周方向他方側に延びる。第5辺57bは、中心軸Jを中心とする円弧状の曲線部である。第4辺57aと第5辺57bの交差部は、R面取りの曲線部でフィレットされている。第6辺57cは、径方向内側に向かうに従って磁極中心線IL1側に向かう方向に延びる直線である。第5辺57bと第6辺57cの交差部は、R面取りの曲線部でフィレットされている。
【0043】
第2フラックスバリア部51dが曲線部を含むことで、第2フラックスバリア部51dの外縁を構成する辺が角部の一部となる直線で構成された場合に、
図4に示すように、第2フラックスバリア部51dの周方向他方側から第2フラックスバリア部51dを迂回して磁極中心線IL1側に流れる磁束B2が、角部を迂回する場合と比較して磁路長さを短くできる。この結果、磁気抵抗が小さくなりリラクタンストルクを大きくできる。従って、実施形態では駆動トルクを向上できる。
【0044】
第4フラックスバリア部51aの径方向の最大寸法は、第5フラックスバリア部51cの径方向の最大寸法よりも長く、第5フラックスバリア部51cの周方向の最大寸法は、第4フラックスバリア部51aの周方向の最大寸法よりも長い。
第4フラックスバリア部51aの径方向の最大寸法が、第5フラックスバリア部51cの径方向の最大寸法よりも長く、第5フラックスバリア部51cの周方向の最大寸法が、第4フラックスバリア部51aの周方向の最大寸法よりも長いことで、第1マグネット41bを通る磁束に関し、磁極中心線IL1線上の外径側から内径側の漏れ磁束を抑制することができる。
【0045】
第2マグネット42は、第2マグネット挿入孔32の内部に収容されている。第2マグネット42は、一対の第1マグネット41a,41bの径方向内端部よりも径方向外側において一対の第1マグネット41a,41b同士の間の周方向位置に配置されている。第2マグネット42は、軸方向に見て第2マグネット挿入孔32に沿って延びている。第2マグネット42は、軸方向に見て径方向と直交する方向に延びている。一対の第1マグネット41a,41bと第2マグネット42とは、例えば、軸方向に見て、∇形状に沿って配置されている。
【0046】
なお、本明細書において「第2マグネットが一対の第1マグネット同士の間の周方向位置に配置されている」とは、第2マグネットの周方向位置が一対の第1マグネット同士の間の周方向位置に含まれていればよく、第1マグネットに対する第2マグネットの径方向位置は特に限定されない。
【0047】
第2マグネット42の軸方向に見た形状は、例えば、磁極中心線IL1に対して線対称な形状である。第2マグネット42は、例えば、軸方向に見て長方形状である。図示は省略するが、第2マグネット42は、例えば、直方体状である。図示は省略するが、第2マグネット42は、例えば、第2マグネット挿入孔32内の軸方向の全体に亘って設けられている。第2マグネット42の径方向内側部分は、例えば、一対の第1マグネット41a,41bの径方向外端部同士の周方向の間に位置する。第2マグネット42の径方向外側部分は、例えば、一対の第1マグネット41a,41bよりも径方向外側に位置する。
【0048】
第2マグネット42は、第2マグネット挿入孔32内に嵌め合わされている。より詳細には、第2マグネット42は、第2直線部32a内に嵌め合わされている。第2マグネット42の側面のうち、第2直線部32aが延びる方向と直交する径方向における両側面は、例えば、第2直線部32aの内側面とそれぞれ接触している。軸方向に見て第2直線部32aが延びる方向において、第2マグネット42の長さは、例えば、第2直線部32aの長さと同じである。
【0049】
第1マグネット41aの磁極は、軸方向に見て第1マグネット41aが延びる方向と直交する方向に沿って配置されている。第1マグネット41bの磁極は、軸方向に見て第1マグネット41bが延びる方向と直交する方向に沿って配置されている。第2マグネット42の磁極は、径方向に沿って配置されている。
【0050】
第1マグネット41aの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向外側に位置する磁極とは、互いに同じである。第1マグネット41aの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向内側に位置する磁極とは、互いに同じである。
【0051】
磁極部70Nにおいて、第1マグネット41aの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向外側に位置する磁極とは、例えば、N極である。磁極部70Nにおいて、第1マグネット41aの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向内側に位置する磁極とは、例えば、S極である。
【0052】
図示は省略するが、磁極部70Sにおいては、磁極部70Nに対して、各マグネット40の磁極が反転して配置されている。つまり、磁極部70Sにおいて、第1マグネット41aの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向外側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向外側に位置する磁極とは、例えば、S極である。磁極部70Sにおいて、第1マグネット41aの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第1マグネット41bの磁極のうち径方向内側に位置する磁極と第2マグネット42の磁極のうち径方向内側に位置する磁極とは、例えば、N極である。
【0053】
軸方向に見て、第2マグネット42における周方向他方側の端部は、第2マグネット挿入孔32における周方向他方側の端部から離れて配置されている。軸方向に見て、第2マグネット42が延びる方向において第2マグネット42の周方向他方側には、一端部32cが隣接して配置されている。ここで、本実施形態において一端部32cは、フラックスバリア部52bを構成している。第2マグネット42における周方向一方側の端部は、第2マグネット挿入孔32における周方向一方側の端部である。つまり、第2マグネット42における周方向一方側の端部は、ロータコア20と接する。
【0054】
つまり、ロータコア20は、軸方向に見て、第2マグネット42が延びる方向において第2マグネット42の周方向一方側にフラックスバリア部を有さず、周方向他方側にフラックスバリア部52bを有する。フラックスバリア部52bおよび第2マグネット42は、第1マグネット41aを挟む一対のフラックスバリア部51a,51bのうち径方向外側に位置する第1フラックスバリア部51bと、第1マグネット41bを挟む一対のフラックスバリア部51c,51dのうち径方向外側に位置する第2フラックスバリア部51dとの周方向の間に位置する。
【0055】
第3フラックスバリア部52bは、第2マグネット42の周方向他方側の端部から周方向他方側に延びる。第3フラックスバリア部52bの周方向の最大寸法は、径方向の最大寸法よりも長い。第3フラックスバリア部52bにおける周方向他方側の外縁は、辺部58aを含む。辺部58aは、半円状の曲線部である。
【0056】
辺部58aが、曲線部であることで、第3フラックスバリア部52bの周方向他方側から第3フラックスバリア部52bを迂回して磁極中心線IL1側に流れる磁束B2は、辺部58aが角部の一部となる直線で構成された場合に、
図4に示すように、第2フラックスバリア部51dの周方向他方側から第3フラックスバリア部52bを迂回して磁極中心線IL1側に流れる磁束B2が、角部を迂回する場合と比較して磁路長さを短くできる。この結果、磁気抵抗が小さくなりリラクタンストルクを大きくできる。従って、実施形態では駆動トルクを向上できる。
【0057】
第3フラックスバリア部52bの周方向の最大寸法が径方向の最大寸法よりも長いことで、第3フラックスバリア部52bを迂回して磁極中心線IL1側に流れる磁束B2は、周方向一方側への成分を多く含む方向でステータ60に向かう。この結果、力行時に周方向一方側に回転するロータ10からの磁束B2がティース63に向かいやすくなり、駆動トルクを大きくできる。
【0058】
第2マグネット42の周方向一方側にフラックスバリア部が設けられないことで、
第1フラックスバリア部51bと第2マグネット42との間における磁路を大きくでき磁気抵抗を小さくできる。このため、リラクタンストルクを発生させる磁束B1が流れを阻害されることなく通りやすくなる。そのため、実施形態では、磁束密度が増加して駆動トルクを大きくできる。
【0059】
図5に示すように、第1フラックスバリア部51bと第2フラックスバリア部51dが上述した非対称構造を採る場合は、対称構造を採る場合と比較して、駆動トルクを約1.3%向上させることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のロータ10および回転電機1では、周方向一方側に回転する際に、力行方向に特化して最大トルクを向上させることができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。この場合、回転電機は、三相交流式の発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機の極数およびスロット数は、特に限定されない。回転電機においてコイルはどのような巻き方で構成されていてもよい。以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…回転電機、 10…ロータ、 20…ロータコア、 30…マグネット挿入孔、 40…マグネット、 51a…第4フラックスバリア部、 51b…第1フラックスバリア部、 51c…第5フラックスバリア部、 51d…第2フラックスバリア部、 52b…第3フラックスバリア部、 58a…辺部、 60…ステータ、 70、70N、70S…磁極部、 IL1…磁極中心線(d軸)、 IL2…q軸、 J…中心軸