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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147771
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】プラスチック容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055476
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝平
(72)【発明者】
【氏名】中谷 正樹
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA09
(57)【要約】
【課題】プラスチックフィルム等の別体の添付を省略することができるプラスチック容器を提供する。
【解決手段】ペットボトル1はプラスチック素材で形成され、当該プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器である。ペットボトル1には、所定の手順によって剥離する性質を有するようにバーコードBCが可溶性のインク等によって印刷された第3印刷領域PA3と、それとは別の成分情報或いはリサイクルマークPMといった情報がレーザ光によりレーザマーキングされた第2印刷領域PA2と、が外周に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック素材で形成され、当該プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器であって、
所定の手順によって剥離する性質を有するように所定の情報がインクによって印刷されたインク印刷領域と、前記所定の情報とは別の情報がレーザ光によりレーザマーキングされたレーザ刻印領域と、が外周に設けられている、プラスチック容器。
【請求項2】
前記インク印刷領域には、所定の用途に必要な一定のコントラストが要求される機能性情報が前記所定の情報として印刷され、
前記レーザ刻印領域には、前記機能性情報よりも要求されるコントラストの程度が低い付加情報が前記別の情報として印刷されている、請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項3】
前記機能性情報は、前記所定の用途に必要な情報を含むように所定の規格に準拠して生成されるコードを含んでいる、請求項2に記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記インク印刷領域には、前記機能性情報が単色で印刷されている、請求項2又は3に記載のプラスチック容器。
【請求項5】
前記付加情報は、互いに異なるコントラストで印刷される情報として第1付加情報、及び当該第1付加情報よりも高いコントラストで印刷される第2付加情報の二つの情報を含み、
前記レーザ刻印領域には、前記付加情報として前記第1付加情報が印刷され、
前記インク印刷領域は、前記機能性情報が印刷される第1インク印刷領域と、他の情報が印刷される第2インク印刷領域とを含み、
前記第2付加情報は、前記他の情報として前記第2インク印刷領域に前記単色により印刷されている、請求項4に記載のプラスチック容器。
【請求項6】
前記インク印刷領域と前記レーザ刻印領域とは、重なり合わないように前記外周の異なる範囲に設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項7】
前記インクとして、所定の溶剤により前記プラスチック素材から剥離する性質を持つ可溶性のインクが利用され、
前記所定の手順は、前記可溶性のインクを前記所定の溶剤により前記外周から剥離する手順として構成され、
前記所定の情報は、前記可溶性のインクの性質により剥離する性質を有するように前記インク印刷領域に印刷されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項8】
前記インク印刷領域には、前記所定の手順により前記プラスチック素材から剥離する性質を持つ溶解層が形成され、
前記所定の情報は、前記溶解層の剥離に伴い当該溶解層とともに剥離する性質を有するように前記インク印刷領域の前記溶解層の上に印刷されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック素材で形成され、プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材で形成され、プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器が存在する。プラスチックの原料には、例えば合成樹脂、及び天然樹脂といった樹脂が含まれる。このようなプラスチック素材を利用したプラスチック容器の一例として、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を原料とするペットボトルがよく知られている。ペットボトルは水やお茶といった飲み物を収容した状態で商品として販売される場合が多いが、そのような場合には一般的に商品名や内容物といった各種の情報の表示が必要とされる。これらの販売時に必要となる各種情報はリサイクル時にペットボトルから取り外すことができる別体に印刷される場合が多い。例えば、このような別体として各種情報が印刷されたプラスチックフィルムを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5327561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種情報は一般的にインクジェット印刷にてインクで印刷されるが、インク等の不純物はペットボトルをプラスチック素材としてリサイクルするためには好ましくない。このため、ペットボトルには特許文献1のようなプラスチックフィルムが添付され、販売等に必要な情報はそのプラスチックフィルムに印刷される。しかし、この場合、リサイクル時にはそのプラスチックフィルムを取り外す手順が必要となってしまう。
【0005】
一方、インクのような不純物が生じない印刷方法としてレーザマーキングが知られている。レーザマーキングは、プラスチック素材に対するインクの付加がないのでリサイクルへの適合性が高い。しかし、レーザマーキングによって刻印された情報は、インクで印刷された情報に比べて色彩バリエーションやコントラストといった各種の面で劣る場合が多い。例えば、商品としてのペットボトルには販売用にバーコードが表示されるのが一般的である。そのようなバーコードはPOSレジスタ等の他の装置によってコントラスト差を読み取れるように印刷されている必要があるが、レーザマーキングではそのようなコントラスト差を十分に実現できない場合が多い。したがって、ペットボトルにはプラスチックフィルムを介して情報を表示する手法が依然として使用されている。
【0006】
そこで、本発明は、プラスチックフィルム等の別体の添付を省略することができるプラスチック容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラスチック容器は、プラスチック素材で形成され、当該プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器であって、所定の手順によって剥離する性質を有するように所定の情報がインクによって印刷されたインク印刷領域と、前記所定の情報とは別の情報がレーザ光によりレーザマーキングされたレーザ刻印領域と、が外周に設けられているものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一形態に係るプラスチック容器の外観を模式的に示す図。
図2】バーコードの印刷手法の一例を説明するための説明図。
図3】印刷装置の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(プラスチック容器)
図1図2を参照して、まず本発明のプラスチック容器の一形態について説明する。プラスチック容器は、プラスチック素材によって形成される容器である。プラスチック素材は、例えば合成樹脂、及び天然樹脂といった樹脂を含む各種の原料により適宜に構成されてよいが、一例としてPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂により構成される。この種のプラスチック容器は、プラスチック素材としてのリサイクルが予定される。このため、プラスチック容器は、所定のリサイクル手順に適合するように構成される。以下では、一例としてプラスチック容器がPET樹脂を原料とするプラスチック素材により形成される場合、つまりプラスチック容器がいわゆるペットボトルとして構成される場合について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一形態に係るプラスチック容器の外観を模式的に示す図である。図1の(a)はプラスチック容器1の正面側を、(b)は裏面側を、それぞれ示している。一般的なペットボトルにはリサイクル手順において分離が予定される別体(多くの場合がプラスチックフィルム)が添付され、その別体に各種の情報が印刷される。一方、図1に示すように、プラスチック容器1には、各種の情報が印刷された印刷領域PAが、そのような別体の代わりに外周に設けられる。また、印刷領域PAは、第1印刷領域PA1~第3印刷領域PA3を含んでいる。各印刷領域PAには適宜の情報が印刷されてよいが、一例として互いに別々の情報(一部に同じ情報が含まれる場合を含む)が印刷される。つまり、印刷領域PAには、印刷される情報に応じて第1印刷領域PA1~第3印刷領域PA3の三つの領域が形成される。
【0011】
具体的には、プラスチック容器1(以下、ペットボトル1と呼ぶ場合がある)は各種の内容物を収容してよく、適宜の用途に使用され得るが、図1の例は水、お茶、炭酸飲料といった飲料用の液体を収容する容器として使用される場合を示している。ペットボトル1は、このような飲料用の液体を収容した状態で商品として販売される。このようなペットボトル1は円柱状等の適宜の形状を有していてよいが、図1の例では六角柱状の形状を有している。また、プラスチック容器の軸線(図1の例の垂直方向)に沿って伸びるように外周に形成される各面(六角を形成する各面)も適宜に形成されてよく、例えば平面状に形成されてもよいが、図1の例では内側に窪むように緩やかに湾曲する曲面状に形成されている。第1印刷領域PA1~第3印刷領域PA3は、このようなペットボトル1の外周に適宜に形成されてよいが、図1の例では外周に設けられる六面の三つの面にそれぞれ範囲が重複しないように(重なり合わないように)別々の異なる範囲に形成されている。
【0012】
より具体的には、図1の(a)に示すように、第1印刷領域PA1は正面側に位置する面に形成される。第1印刷領域PA1には適宜の情報が印刷され得るが、図1の例では“A商品”の情報が印刷されている。“A商品”は商品名を示す情報である。つまり、ペットボトル1には飲料用の液体が収容された後に商品として販売されるが、第1印刷領域PA1にはその商品の商品名が所定の情報として印刷される。また、ペットボトル1の正面は適宜に特定されてよいが、一例として商品名が印字された面が正面側と判別される。つまり、第1印刷領域PA1はペットボトル1の適宜の外周面に形成されてよく、その第1印刷領域PA1が形成された面が正面として機能する。
【0013】
また、図1の(b)に示すように、第2印刷領域PA2は裏面側に位置する外周面に形成される。第2印刷領域PA2が印刷される外周面は適宜に設定されてよく、第1印刷領域PA1とは無関係に設定されてもよいが、図1の例では第1印刷領域PA1と正反対の外周面(裏面)に形成されている。このような第2印刷領域PA2には第1印刷領域PA1と同様に適宜の情報が印刷され得るが、図1の例では内容物(ペットボトル1に収容される液体)に関する情報として内容関連情報が印刷されている。また、内容関連情報は、法令、或いは商品の用途等に応じて適宜の情報を含んでいてよいが、一例として成分情報を含んでいる。成分情報は内容物の成分を示す情報である。内容関連情報は、成分情報の他にも、例えば商品の販売責任者、問合せ先、内容物に関する各種の注意事項といった法令等に応じた各種の情報を適宜に含み得る。第2印刷領域PA2には、内容関連情報の他にも各種の情報が適宜に印刷されてよく、例えばペットボトル1の素材(例えばプラスチック)に関する情報やリサイクル可能な素材を示す情報といった素材に関する各種の情報が適宜に印刷され得るが、図1の例ではリサイクル可能な素材を示す情報の一例としてリサイクルマークRMが印刷されている。
【0014】
第3印刷領域PA3も第2印刷領域PA2と同様に適宜の外周面に形成されてよく、第2印刷領域PA2(ひいては第1印刷領域PA1)とは無関係に形成されてもよいが、図1の例では裏面から見て第2印刷領域PA2の左隣の外周面に形成されている。第3印刷領域PA3には第2印刷領域PA2等と同様に適宜の情報が印刷され得るが、図1の例ではバーコードBCが印刷されている。バーコードBCは、商品番号等の適宜の販売用情報を含むように所定の規格に準じて生成される周知のコードの一種である。第3印刷領域PA3には、商品番号等の商品としてのペットボトル1の販売(用途)に販売に関連する適宜の販売関連情報が印刷されるが、バーコードBCはそのような情報の一例である。第3印刷領域PA3には、バーコードBCの他にも、例えば商品番号等の販売に関連する適宜の販売関連情報が印刷され得るが、それらの図示は省略した。
【0015】
ペットボトル1は使用後に廃材として解消されると、プラスチック素材としてリサイクルされる。このため、ペットボトル1は所定のリサイクル手順に適合するように構成されるが、それは印刷領域PAも同様である。例えば、一般的なリサイクル手順では各種情報の印刷に使用されるインクは不純物に相当する。このため、外周面への印刷(印刷領域PAの形成)は、各種の情報がインク以外を使用する手法か、若しくはペットボトル1の外周からインクを剥離可能な手法で実現される。このような手法として各種の手法が適宜に採用されてよいが、インク以外を使用する手法の一例としてレーザマーキングが採用される。レーザマーキングはレーザを照射して刻印によりマーキング(印刷)する手法である。
【0016】
一方、インクを剥離可能な手法はインクを使用したインク印刷の一種である。インクを剥離可能な手法は適宜に実現され得るが、一例として所定の溶剤により溶解(剥離)する性質を有するインク(以下、可溶性のインクと呼ぶ場合がある)を使用する手法(以下、インク剥離手法と呼ぶ場合がある)、及び所定の溶剤により剥離する性質を有する溶解層の上にインク印刷を実行する手法(以下、層剥離手法と呼ぶ場合がある)が含まれる。このようなインク印刷は各種の方法によって実現されてよく、例えば所定の情報をインクによりスタンプする方法によって実現されてもよいが、一例としてインクを射出するインクジェット印刷によって実現される。インク剥離手法、及び層剥離手法については更に後述する。
【0017】
各印刷領域PAは、レーザを照射して刻印により印刷するレーザマーキングと、インクを使用したインク印刷と、が使い分けられて形成される。レーザマーキング、及びインクジェット印刷は適宜に使い分けられてよく、第1印刷領域PA1~第3印刷領域PA3に適宜に適用されてよいが、一例として第2印刷領域PA2にはレーザマーキングが、第1印刷領域PA1及び第3印刷領域PA3にはインクジェット印刷が、それぞれ適用される。つまり、第2印刷領域PA2はレーザマーキングにより形成され、第1印刷領域PA1及び第3印刷領域PA3はインクジェット印刷により形成されている。
【0018】
第3印刷領域PA3には、上述のとおりバーコードBCが印刷されている。バーコードBCは商品としてのペットボトル1の販売時にPOSレジスタ等の所定の装置によって読み取られるが、この読み取りには一定以上のコントラストが要求される。このようなコントラストの実現のために、第3印刷領域PA3(バーコードBC等)の印刷にインクジェット印刷が使用されている。また、第3印刷領域PA3においてバーコードBCは適宜の色のインクで印刷されてよく、複数色のインクによって印刷されてもよいが、図1の例では単色(適宜の色であってよいが、一例として白)のインクによって印刷されている。この例において、第3印刷領域PA3に印刷されるバーコードBCが、本発明の所定の情報及び機能性情報として機能する。また、所定の装置での読み取りが、本発明の所定の用途として機能する。
【0019】
同様に、第1印刷領域PA1の商品名もインクジェット印刷によって印刷されている。商品名は主として購入者によって見されるための情報である。バーコードBCほどのコントラストは要求されないが、購入者の目につきやすい方がよく、出来るだけ目立つ表示が好ましい。このため、商品名はレーザマーキングによって印刷されてもよいが、図1の例ではインクジェット印刷によりレーザマーキングよりも高いコントラストで印刷されている。また、第1印刷領域PA1の印刷は第3印刷領域PA3と同様に単色、及び複数色の適宜の色のインクで実現されてよく、第3印刷領域PA3と相違する色のインクで実現されてもよいが、一例として第3印刷領域PA3と同じ色の単色で印刷されている。つまり、第1印刷領域PA1、及び第3印刷領域PA3は同じ単色のインクで形成されている。この例において第1印刷領域PA1、及び第3印刷領域PA3が、本発明のインク印刷領域として機能する。より具体的には、第1印刷領域PA1、及び第3印刷領域PA3が、本発明の第2インク印刷領域、及び第1インク印刷領域としてそれぞれ機能する。また、第1印刷領域PA1の商品名の情報が、本発明の他の情報及び第2付加情報(付加情報)として機能する。
【0020】
また、第2印刷領域PA2の内容関連情報は、商品名と同様に主として購入者に見られるために表示される。このため、この情報の表示に要求されるコントラストの程度は、一般的にやはりバーコードBC(バーコードBCの読み取り)よりも低い。ただし、商品名ほど目立たせる必要もない。このため、商品名よりも低いコントラストで印刷されてよく、結果的に第2印刷領域PA2の印刷にはレーザマーキングが使用されている。ペットボトル1においてレーザマーキング、及びインクジェット印刷は、一例としてこのように印刷される情報の用途に必要なコントラストの程度に応じて使い分けられている。この例において、第2印刷領域PA2が本発明のレーザ刻印領域として機能する。また、第2印刷領域PA2に印刷された内容関連情報が、本発明の別の情報及び第1付加情報(付加情報)として機能する。
【0021】
図2は、バーコードBC(第3印刷領域PA3)の印刷手法の一例としてインク剥離手法、及び層剥離手法を説明するための説明図である。バーコードBCは、一例としてこれらの手法によりペットボトル1から剥離する性質を有するように第3印刷領域PA3に印刷されている。図2の例は、第3印刷領域PA3を拡大して模式的に示している。また、図2の(a)はインク剥離手法が適用される場合の第3印刷領域PA3を、(b)は層剥離手法が適用される場合の第3印刷領域PA3を、それぞれ示している。
【0022】
具体的には、図2の(a)に示すように、インク剥離手法では、インクジェット印刷によって射出された可溶性のインクによりペットボトル1の外周に直接的にバーコードBCが印刷される。可溶性のインクは所定の溶剤によって剥離する性質を有する。このため、可溶性のインクを利用したリサイクル手順(所定の手順)を通じてペットボトル1から剥離される。つまり、バーコードBCは、このような可溶性のインクの性質により剥離する性質を有するように第3印刷領域PA3に印刷されている。また、リサイクル手順は、所定の溶剤を利用して可溶性のインク(バーコードBC)自体をペットボトル1の外周から剥離する手順として構成される。
【0023】
可溶性のインクとして各種のインクが適宜に利用されてよく、例えば所定の剥離剤で剥離可能なUV硬化インク等が利用されてもよいが、図2の例では主溶剤として水を用いた水性インク、或いは主溶剤として有機溶剤を用いた非水系(油性)インクが利用される。同様に、所定の溶剤として、水性インクが利用される場合には水等の無機溶剤が、油性インクが利用される場合にはエタノール等の有機溶剤が、それぞれ使用される。
【0024】
一方、図2の(b)に示すように、層剥離手法では、第3印刷領域PA3にベース層BLが設けられ、そのベース層BLの上にバーコードBCが印刷される。ベース層BLは、一つの層として形成されても印刷の都合(あるいは素材の都合)等に応じて複数の層として形成されてもよいが、溶解層を含んでいる。溶解層は所定の要素を利用したリサイクル手順(所定の手順)によりペットボトル1から剥離する性質を有する層である。溶解層はベース層BLが複数の層を含む場合でもプライマ層として機能し、ペットボトル1の外周と接するように形成される。溶解層(プライマ層)は適宜に構成されてよく、例えば所定の要素としての熱や光等の刺激により剥離する性質を有する成分によって構成されてもよいが、一例として油性インク等の可溶性のインクによって形成される。可溶性のインクは、上述のとおり所定の溶剤によって剥離する性質を有するため、その所定の溶剤を利用したリサイクル手順においてベース層BL(溶解層)はバーコードBCとともに剥離される。つまり、バーコードBCは、このような溶解層の剥離に伴いその溶解層とともに剥離する性質を有するようにベース層BLの上に印刷されている。
【0025】
バーコードBCは適宜のインクによってベース層BLに印刷されてよく、例えば油性インク等の可溶性のインクによって印刷されてもよいし、剥離が予定されないタイプのインク(例えば簡単に剥離できない性質を有するインク)よって印刷されてもよいが、一例としてUV硬化インクによって印刷される。UV硬化インクは、UV(紫外線)の照射により硬化するタイプのインクである。UV硬化インクは所定の剥離剤により剥離可能であるが、一例として上述のとおりベース層BLの剥離に伴い、そのベース層BLとともに剥離される。
【0026】
(印刷装置)
次に、図3を参照して、印刷領域PAを形成するための印刷装置(印刷方法)の一形態について説明する。ペットボトル1は各種情報が印刷された印刷領域PAを含んでいる。このため、印刷装置は、印刷領域PAが形成された(各種情報が印刷された)容器としてのペットボトル1を製造する装置としても機能する。図3は、印刷領域PAを形成するための印刷装置の一例を模式的に示す図である。このような印刷装置は商品としてのペットボトル1を製造するための製造装置の一部に組み込まれる場合が多く、製造装置には搬送コンベヤ等の各種搬送手段、或いは搬送手段等を動作させる各種動力源等といった製造に必要な各種の装置が適宜に設けられ得るが、図3の例はそのような製造装置において印刷装置として機能する部分を模式的に示している。また、図3の例は、そのような印刷装置を上から見た場合を示している。
【0027】
図3に示すように、印刷装置10には、搬送ラインCL、レーザマーキング装置11、インクジェット印刷装置12、検査装置13、及び装置制御ユニット14が設けられる。搬送ラインCLは、各種情報が印刷される前の無地のプラスチック容器(以下、無地のペットボトルBPと呼ぶ場合がある)を搬送するための経路として構成される。無地のペットボトルBPは搬送ラインCLに沿って左から右に順次移動するように不図示の搬送手段(例えば搬送ベルトコンベア)によって搬送される。搬送ラインCLは製造装置の一部として印刷装置10よりも下流にも形成されるが、無地のペットボトルBPは印刷装置10を経るとペットボトル1に変化する。このため、搬送ラインCLでは印刷装置10よりも下流ではペットボトル1が搬送される。
【0028】
レーザマーキング装置11、インクジェット印刷装置12、及び検査装置13は、搬送方向に沿って順に搬送ラインCLに設けられる。レーザマーキング装置11は、レーザマーキングを実行する周知の印刷装置である。レーザマーキング装置11には、制御ユニットCUlが設けられる。制御ユニットCUlは、マイクロプロセッサ、及びその動作に必要な内部記憶装置を含んだコンピュータユニットとして構成され、レーザマーキング装置11が実行するレーザマーキングに関する各種の処理を実行する。なお、レーザマーキング装置11には、制御ユニットCUlに対する外部記憶装置として印刷用のプログラムを記憶する記憶ユニット、タッチパネル等の入力装置といった各種のハードウエアが適宜に設けられ得るが、それらの図示は省略した。
【0029】
インクジェット印刷装置12は、インクジェット印刷を実行する周知の印刷装置である。インクジェット印刷装置12には、制御ユニットCUiが設けられる。制御ユニットCUiは、マイクロプロセッサ、及びその動作に必要な内部記憶装置を含んだコンピュータユニットとして構成され、インクジェット印刷装置12が実行するインクジェット印刷に関する各種の処理を実行する。なお、インクジェット印刷装置12には、制御ユニットCUiに対する外部記憶装置として印刷用のプログラムを記憶する記憶ユニット、タッチパネル等の入力装置、インクを射出するインクヘッドといった各種のハードウエアが適宜に設けられ得る。また、例えば層剥離手法が適用される場合、インクヘッドにはプライマ層(溶解層)用インクヘッド、及び塗色用インクヘッドが含まれる。しかし、それらの図示は省略した。
【0030】
検査装置13は印刷領域PAの印刷状況(レーザマーキング装置11等の印刷結果)を検査するための周知の装置である。検査装置13には各種の動作を制御するための独自の制御ユニットが設けられてもよいが、一例として装置制御ユニット14に接続され、装置制御ユニット14によって各種の検査を実行するように制御される。装置制御ユニット14は、マイクロプロセッサ、及びその動作に必要な内部記憶装置を含んだコンピュータユニットとして構成され、各種装置の動作を制御するための適宜の処理を実行する。装置制御ユニット14に接続される装置には、検査装置13の他にレーザマーキング装置11、及びインクジェット印刷装置12が含まれる。具体的には、装置制御ユニット14はレーザマーキング装置11の制御ユニットCUl、及びインクジェット印刷装置12の制御ユニットCUiに接続され、制御ユニットCUl、及び制御ユニットCUiを介してレーザマーキング装置11及びインクジェット印刷装置12の制御を実行する。
【0031】
なお、装置制御ユニット14には、制御ユニットCUiに対する外部記憶装置として印刷用のプログラムを記憶する記憶ユニット、或いはタッチパネル等の入力装置といった各種のハードウエアが適宜に接続され得る。例えば、層剥離手法が適用される場合、印刷装置10にはUV硬化装置がインクジェット印刷装置12よりも搬送ラインCLの下流(例えば検査装置13の後)に設けられる。この場合、装置制御ユニット14に接続されるハードウエアにはそのUV硬化装置が含まれ、UV硬化装置がUVインクを硬化させる動作を実行するようにUV硬化装置を制御する各種の処理を実行する。
【0032】
以上に説明したように、この形態によれば、ペットボトル1の外周には第1印刷領域PA1及び第3印刷領域PA3といったインク印刷領域と、第2印刷領域PA2といったレーザ刻印領域とが設けられる。このため、情報の用途(情報に求められる印刷の精度)に応じてインク印刷領域とレーザ刻印領域とを使い分けることができる。
【0033】
一方で、第3印刷領域PA3のバーコードBC等は、所定のリサイクル手順によって剥離する性質を有するようにインク印刷領域に印刷される。具体的には、例えばバーコードBCは、インク剥離手法、或いは層剥離手法といった剥離可能な手法によって外周に印刷されている。このため、第3印刷領域PA3のバーコードBC等の情報は所定の手順によって剥離される。これにより、バーコードBC等の情報、つまりそれを表示するインクの除去も実現することができるので、リサイクル適正を持たせることができる。結果として、プラスチックフィルム等の別体の添付を省略することができる。このため、そのような別体が添付される場合に比べてリサイクル適正の向上を図ることができる。
【0034】
また、インク印刷を通じてバーコードBCの一定のコントラストが実現される。つまり、リサイクル適正を維持しつつ、コントラスト差によりPOSレジスタ等の他の装置によってバーコードBCを読み取ることができる。これにより、適切なバーコードBCの表示を実現することができる。一方で、バーコードBCほどコントラストが要求されない成分表示等は、レーザマーキングにより印刷されている。つまり、情報に要求されるコントラスト(印刷精度の一つ)に応じて情報の印刷にインク印刷とレーザマーキングとが使い分けられている。これにより、用途に応じた情報の印刷精度、及びリサイクル適正の向上の両立を図ることができる。
【0035】
さらに、インク印刷、及びレーザマーキングの両方を含むことにより、各種情報の全てがインクで別体に印刷される場合に比べて、インクの使用量の低減を図ることができる。結果として、印刷コストの低減を図ることができる。特に、インク印刷が単色で実現される場合には、複数色が利用される場合に比べてより印刷コストの低減を図ることができる。
【0036】
本発明は上述した形態に限定されず、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。また、本発明は、上述の形態、及び以下の変形等が施された形態に含まれる各種の技術的手段が適宜に組み合わされて得られる形態にて実施されてもよい。例えば、上述の形態では、ペットボトル1は、製造装置に組み込まれる印刷装置10によって製造されている。しかし、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、印刷装置10は、製造装置とは別の独立した装置として構成されてもよい。
【0037】
同様に、上述の形態では、印刷装置10は、レーザマーキング装置11、及びインクジェット印刷装置12の両方を含んでいる。しかし、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、ペットボトル1は、互いに別々の装置として構成されるレーザマーキング装置、及びインクジェット印刷装置の二つの装置を介して製造されてもよい。具体的には、例えば第2印刷領域PA2はレーザマーキング装置により形成され、第1印刷領域PA1、及び第3印刷領域PA3はその後にインクジェット印刷装置により別途形成されてもよい。また、第1印刷領域PA1、及び第3印刷領域PA3も別々のインクジェット印刷により別々に形成されてもよい。さらに、これらのレーザマーキング装置、及びインクジェット印刷装置は、別々の製造者によって管理されていてもよい。つまり、第2印刷領域PA2の形成(レーザマーキングの実行)と、第3印刷領域PA3等の形成(インク印刷の実行)とは互いに異なる製造者(主体)によって実現されてもよい。
【0038】
上述の形態では、印刷領域PA(インク印刷領域、或いはレーザ刻印領域)はペットボトル(プラスチック容器)1に形成されている。しかし、本発明は、このような形態に限定されない。印刷領域PAの形成は、容器に限定されず、各種のプラスチック素材の物に適用されてよい。また、印刷領域PAの形成は、プラスチック素材の物にも限定されず、ガラス瓶等のガラス素材、或いは缶等の金属素材といったリサイクルが予定される各種の素材の物に適用されてよい。
【0039】
上述の形態では、インク使用量低減(リサイクル適合性を高める)観点から情報に求められるコントラスト差に応じてインク印刷とレーザマーキングとが使い分けられている。しかし、本発明は、このような形態に限定されない。インク印刷とレーザマーキングとは、コスト、視覚的効果、或いは流通面等における都合といった各種の観点から適宜の基準に基づいて使い分けられてよい。一方、例えばインクのリサイクル適合性の向上(リサイクル適合性の高いインクの使用、或いはインクの剥離を容易にするリサイクル手順の適用等)、又はインク等のリサイクル素材以外の存在に関するリサイクル基準の変化等に応じて、各種の情報はインク印刷のみによって形成されてもよい。つまり、レーザマーキングは省略され、成分表示等を含む全ての情報がインク印刷により実現されてもよい。この場合、印刷装置10のレーザマーキング装置11は省略され、例えばインクジェット印刷装置12によって全情報が印刷されてよい。
【0040】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する部材を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0041】
本発明のプラスチック容器は、プラスチック素材で形成され、当該プラスチック素材としてリサイクルされるプラスチック容器(1)であって、所定の手順によって剥離する性質を有するように所定の情報がインクによって印刷されたインク印刷領域(PA1、PA3)と、前記所定の情報とは別の情報がレーザ光によりレーザマーキングされたレーザ刻印領域(PA2)と、が外周に設けられているものである。
【0042】
本発明によれば、プラスチック容器の外周にはインク印刷領域とレーザ刻印領域とが設けられる。このため、情報の用途(情報に求められる印刷の精度)に応じてインク印刷領域とレーザ刻印領域とを使い分けることができる。一方で、所定の情報は所定の手順によって剥離する性質を有するようにインク印刷領域に印刷されるため、所定の手順によって剥離される。これにより、所定の情報、つまりインクの除去も実現することができるので、リサイクル適正を持たせることができる。結果として、プラスチックフィルム等の別体の添付を省略することができる。このため、そのような別体が添付される場合に比べてリサイクル適正の向上を図ることができる。結果として、用途に応じた情報の印刷精度、及びリサイクル適正の向上の両立を図ることができる。さらに、各種情報の全てがインクで別体に印刷される場合に比べてインクの使用量の低減を図ることができる。結果として、印刷コストの低減を図ることができる。
【0043】
インク印刷領域とレーザ刻印領域とは適宜に使い分けられてよい。例えば、インク印刷領域とレーザ刻印領域とは、情報に要求される色彩バリエーション(例えば目立つ配色等)といった視覚的な印刷効果に応じて使い分けられてもよいし、情報に要求されるコントラストに応じて使い分けられてもよい。具体的には、例えば、本発明のプラスチック容器の一態様において、前記インク印刷領域には、所定の用途に必要な一定のコントラストが要求される機能性情報(BC)が前記所定の情報として印刷され、前記レーザ刻印領域には、前記機能性情報よりも要求されるコントラストの程度が低い付加情報(RM等)が前記別の情報として印刷されてもよい。この場合、インク印刷領域を通じて機能性情報の一定のコントラストが実現される。このため、適切な機能性情報の表示を実現することができる。
【0044】
機能性情報は一定のコントラストが要求される情報であるが、各種の情報を適宜に含んでいてよい。例えば、機能性情報は一定のコントラストが必要な文字、記号、或いは絵といった情報を含んでいてよい。あるいは、機能性情報は、バーコード、或いは二次元コードといった他の装置における読み取りのために一定のコントラストが要求される情報を含んでいてもよい。具体的には、例えば、本発明の機能性情報が印刷される態様において、前記機能性情報は、前記所定の用途に必要な情報を含むように所定の規格に準拠して生成されるコード(BC)を含んでいてもよい。
【0045】
同様に、機能性情報は、適宜に印刷されてよく、例えば用途に応じて各種の配色で印刷されてよい。また、機能性情報は単色で印刷されても複数色で印刷されてもよい。具体的には、例えば、本発明の機能性情報が印刷される態様において前記インク印刷領域には、前記機能性情報が単色で印刷されていてもよい。この場合、複数色が利用される場合に比べて印刷コストの低減を図ることができる。
【0046】
インク印刷領域の所定の情報は機能性情報に限定されても限定されなくてもよい。例えば、機能性情報のみが所定の情報としてインク印刷領域に印刷されていてもよい。あるいは、所定の情報はその他の適宜の情報を含んでいてもよい。例えば、機能性情報が単色で印刷される本発明の態様において、前記付加情報は、互いに異なるコントラストで印刷される情報として第1付加情報(RM等)、及び当該第1付加情報よりも高いコントラストで印刷される第2付加情報(例えば商品名)の二つの情報を含み、前記レーザ刻印領域には、前記付加情報として前記第1付加情報が印刷され、前記インク印刷領域は、前記機能性情報が印刷される第1インク印刷領域(PA3)と、他の情報が印刷される第2インク印刷領域(PA2)とを含み、前記第2付加情報は、前記他の情報として前記第2インク印刷領域に前記単色により印刷されていてもよい。
【0047】
所定の情報の剥離する性質、及びその剥離のための所定の手順は適宜に実現されてよい。例えば、所定の情報の性質は、所定の情報が剥離される性質を持つインクによって印刷される場合にそのインクの性質によって実現されてもよい。あるいは、所定の情報の性質は、所定の情報が剥離可能な性質を持つ層の上に印刷され、その層とともに剥離される場合においてその層の性質によって実現されてもよい。同様に、所定の手順は、例えばインク自体を剥離させるための手順として実行されても、層を剥離させるための手順として実行されてもよい。具体的には、例えば、本発明のプラスチック容器の一態様において、前記インクとして、所定の溶剤により前記プラスチック素材から剥離する性質を持つ可溶性のインクが利用され、前記所定の手順は、前記可溶性のインクを前記所定の溶剤により前記外周から剥離する手順として構成され、前記所定の情報は、前記可溶性のインクの性質により剥離する性質を有するように前記インク印刷領域に印刷されていてもよい。あるいは、本発明のプラスチック容器の一態様において、前記インク印刷領域には、前記所定の手順により前記プラスチック素材から剥離する性質を持つ溶解層(BL)が形成され、前記所定の情報は、前記溶解層の剥離に伴い当該溶解層とともに剥離する性質を有するように前記インク印刷領域の前記溶解層の上に印刷されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ペットボトル(プラスチック容器)
BC バーコード(所定の情報、機能性情報)
BL ベース層(溶解層)
RM リサイクルマーク(別の情報、付加情報)
PA1 第1印刷領域(第2インク印刷領域、インク印刷領域)
PA2 第2印刷領域(レーザ刻印領域)
PA3 第3印刷領域(第1インク印刷領域、インク印刷領域)
図1
図2
図3