(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147773
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20231005BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20231005BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D53/26 220
B01J20/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055478
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 有希
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【テーマコード(参考)】
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
4D052AA08
4D052CB01
4D052DA03
4D052DB01
4D052HA01
4G066AA22B
4G066AC14D
4G066AC17C
4G066AC17D
4G066AC23C
4G066AC25C
4G066BA03
4G066BA07
4G066CA43
4G066DA03
4G066GA01
4G066GA06
(57)【要約】
【課題】被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率が高く、除湿性能及び再生時のエネルギー効率を向上できる吸着フィルター、吸着ロータ、及び当該吸着ロータを用いた吸着処理装置を提供する。
【解決手段】処理ガスに含まれる水分を吸着する吸着フィルター1であって、互いに対向する一対のガス流通口30を有するケーシング3と、不織布基材に吸着材としてシリカゲルを担持させた吸着素子2であって、ケーシング3に収容された吸着素子2と、を備え、吸着素子2は、一方向に凸をなして突き出る第一折曲げ部20が一方のガス流通口30の方を向き且つ他方向に凸をなして突き出る第二折曲げ部21が他方のガス流通口30の方を向いたプリーツ状に成形されており、吸着材は、前記不織布基材を構成する繊維の表面に担持される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスに含まれる水分を吸着する吸着フィルターであって、
互いに対向する一対のガス流通口を有するケーシングと、
不織布基材に吸着材としてシリカゲルを担持させた吸着素子であって、前記ケーシングに収容された吸着素子と、
を備え、
前記吸着素子は、一方向に凸をなして突き出る第一折曲げ部が一方の前記ガス流通口の方を向き且つ前記一方向と反対方向の他方向に凸をなして突き出る第二折曲げ部が他方の前記ガス流通口の方を向いたプリーツ状に成形されており、
前記吸着材は、前記不織布基材を構成する繊維の表面に担持される、吸着フィルター。
【請求項2】
前記吸着材は、接着又は合成により前記不織布基材を構成する繊維の表面に担持される、請求項1に記載の吸着フィルター。
【請求項3】
圧力損失が2kPa以下である、請求項1又は2に記載の吸着フィルター。
【請求項4】
前記吸着素子は、一方の前記ガス流通口から他方の前記ガス流通口に向かう方向の長さが100mm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸着フィルター。
【請求項5】
前記不織布基材は、フェノール樹脂繊維不織布、ポリフェニレンエーテル繊維不織布、耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維不織布、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維不織布及びPET不織布からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いて形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸着フィルター。
【請求項6】
前記吸着素子は、前記吸着材を30質量%以上80質量%以下含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸着フィルター。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸着フィルターを複数備えた吸着ロータであって、
前記吸着フィルターが、当該吸着ロータの回転軸周りの周方向に沿って配置されている、吸着ロータ。
【請求項8】
請求項7に記載の吸着ロータと、
前記吸着ロータを回転させる駆動機構と、
前記吸着ロータの回転により前記周方向の一部分の領域である吸着ゾーンに移動した前記吸着フィルターに流入、流出させ、かつ、前記吸着ロータの回転により前記周方向の一部分の領域でありかつ前記吸着ゾーンと区切られた再生ゾーンに移動した前記吸着フィルターに対して流入、流出させる流路を形成す流路形成部材と、
を備える、吸着処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理ガス中の水分を吸着して被処理ガスの除湿を目的とした除湿装置は、工業用途、家庭用途を問わず広く用いられており、除湿装置として、
図10に示すように、回転軸Lを中心にして回転可能な円柱形の吸着ロータ111を備えた除湿装置110が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
吸着ロータ111は、一般的にハニカム構造の吸着素子112を備えており、吸着素子112は、例えば不織布基材にシリカゲルなどの吸着材を担持した吸着シートで形成されている。吸着シートは、平坦なライナーシート113Aと、長手方向に沿って凹凸が繰り返す波型とされたコルゲートシート113Bとを含む。吸着素子112は、ライナーシート113A及びコルゲートシート113Bを交互に径方向に積み重ねることで、径方向に直交する長さ方向に延びる多数の空隙114が密に並ぶハニカム構造とされている。
【0004】
吸着ロータ111は回転軸周りの周方向に沿って吸着ゾーン及び脱着ゾーンに区切られている。吸着ゾーンにおいては、例えば外気などの被処理ガスが吸着ロータ111に供給される。被処理ガスは、吸着ゾーンに位置する吸着素子112のそれぞれの空隙114を流れることで吸着素子112を通過するが、この際に被処理ガス中の水分が吸着材によって吸着される。これにより、被処理ガスが除湿される。脱着ゾーンにおいては、例えば高温空気などの再生ガスが吸着ロータ111に供給される。再生ガスは、脱着ゾーンに位置する吸着素子112のそれぞれの空隙114を流れて吸着素子112を通過するが、この際に吸着材から水分を脱着する。これにより、吸着材が再生される。
【0005】
図10に示す除湿装置110では、吸着素子112がハニカム構造であり、被処理ガスや再生ガスは吸着素子112のそれぞれの空隙114を流れるため、除湿時や再生時に吸着素子112の表面に対して並行に流れる。よって、被処理ガスや再生ガスが吸着素子112を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハニカム構造の吸着素子は、圧力損失が低いものの、被処理ガスが通過する際に吸着素子の表面に対して並行に流れるため、吸着素子の表面側に担持された吸着材は被処理ガスと容易に接触して水分を吸着するのに対して、吸着素子の内部に担持された吸着材は被処理ガスと接触し難く水分を吸着し難い。よって、ハニカム構造の吸着素子は、吸着材を有効に利用できておらず、除湿性能に劣る。また、ハニカム構造の吸着素子は、被処理ガスと同様に再生ガスと吸着材との接触効率が低いことから、再生時のエネルギー効率が低く、環境負荷が大きい。
【0008】
本開示は、上述した課題の解決のため、被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率が高く、除湿性能及び再生時のエネルギー効率を向上できる吸着ロータ、当該吸着ロータを構成する吸着フィルター、及び当該吸着ロータを用いた吸着処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、被処理ガスに含まれる水分を吸着する吸着フィルターに関する。本開示の吸着フィルターは、互いに対向する一対のガス流通口を有するケーシングと、不織布基材に吸着材としてシリカゲルを担持させた吸着素子であって、前記ケーシングに収容された吸着素子と、を備え、前記吸着素子は、一方向に凸をなして突き出る第一折曲げ部が一方の前記ガス流通口の方を向き且つ前記一方向と反対方向の他方向に凸をなして突き出る第二折曲げ部が他方の前記ガス流通口の方を向いたプリーツ状に成形されており、前記吸着材は、前記不織布基材を構成する繊維の表面に担持される、ことを特徴とする。
【0010】
本開示の吸着フィルターにおいて好ましい態様は、前記吸着材は、接着又は合成により前記不織布基材を構成する繊維の表面に担持される、ことを特徴とする。
【0011】
本開示の吸着フィルターにおいて好ましく態様は、圧力損失が2kPa以下である、ことを特徴とする。
【0012】
本開示の吸着フィルターにおいて好ましく態様は、前記吸着素子は、前記ガス流通口から前記ガス流通口に向かう方向の長さが100mm以上である、ことを特徴とする。
【0013】
本開示の吸着フィルターにおいて好ましく態様は、前記不織布基材は、耐熱性不織布を用いることが好ましく、例えばフェノール樹脂繊維不織布、ポリフェニレンエーテル繊維不織布、耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維不織布、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維不織布及びPET不織布からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いて形成される、ことを特徴とする。
【0014】
本開示の吸着フィルターにおいて好ましく態様は、前記吸着素子は、前記吸着材を30質量%以上80質量%以下含有する、ことを特徴とする。
【0015】
また本開示は、被処理ガスに含まれる水分を吸着する吸着処理装置に関する。本開示の吸着処理装置は、本開示の吸着フィルターを複数備え、前記吸着フィルターが、当該吸着ロータの回転軸周りの周方向に沿って配置されている、ことを特徴とする。
【0016】
また本開示は、被処理ガスに含まれる水分を吸着する吸着ロータに関する。本開示の吸着ロータは、本開示の吸着ロータと、前記吸着ロータを回転させる駆動機構と、前記吸着ロータの回転により前記周方向の一部分の領域である吸着ゾーンに移動した前記吸着フィルターに流入、流出させ、かつ、前記吸着ロータの回転により前記周方向の一部分の領域でありかつ前記吸着ゾーンと区切られた脱着ゾーンに移動した前記吸着フィルターに対して流入、流出させる流路を形成す流路形成部材と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本開示の吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置によれば、プリーツ状に成形された吸着素子が、その第一折曲げ部がケーシングの一方のガス流通口の方を向き且つ第二折曲げ部がケーシングの他方のガス流通口の方を向いた状態でケーシングに収容されている。そのため、被処理ガスや再生ガスは吸着素子の一部分と交差して吸着素子を通過する。よって、吸着素子の表面側に担持された吸着材だけでなく、吸着素子の内部に担持された吸着材についても被処理ガスや再生ガスが良好に接触する。よって、被処理ガスと吸着材との接触効率が高いため、除湿性能を向上できる。また、再生ガスと吸着材との接触効率も高く、その分、従来の吸着素子がハニカム構造の場合に比べて、低い温度や低風量の再生ガスで吸着材から水分を脱着することができるため、再生時のエネルギー効率を向上できる。
【0018】
加えて、本開示の吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置によれば、吸着材は、不織布基材を構成する繊維の表面に担持しており、不織布基材の繊維と繊維の間に存在するのが抑制されている。これにより、吸着素子の通気性が高まり、吸着素子を被処理ガスや再生ガスが通過する際の圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る吸着フィルターの斜視図である。
【
図3】
図3に示す吸着フィルターが備える支持体の斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る吸着処理装置の縦断面図である。
【
図6】
図4に示す吸着ロータの一部分を拡大して示す断面図である。
【
図7】吸着素子の不織布基材を構成する繊維の表面に吸着材が担持されている状態を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図8】吸着素子の不織布基材を構成する繊維の表面に吸着材が担持されている状態を拡大して示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図10】(A)は従来技術の除湿装置の斜視図であり、(B)は従来技術の吸着ロータの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の吸着フィルター、吸着ロータ及び吸着処理装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1から
図3は本開示の一実施形態に係る吸着フィルター1を示す。吸着フィルター1は、例えば外気などの被処理ガス中の水分を吸着材により吸着して被処理ガスから取り除く除湿を主な目的として使用される。
図4から
図6は、本開示の一実施形態に係る吸着ロータ10もしくは吸着処理装置100の概略構成を示す。吸着処理装置100は、回転する吸着ロータ10に被処理ガスが供給されることで被処理ガスから水分を取り除く処理を連続的に行う装置であり、デシカント式除湿装置をその用途の一例として挙げることができる。本実施形態の吸着フィルター1、吸着ロータ10及び吸着処理装置100は、特にビルディング、マンション、病院、工場、商業施設などにおいて大風量の被処理ガスの除湿を行うのに好適に使用される。なお、本実施形態の吸着フィルター1、吸着ロータ10及び吸着処理装置100の用途は、除湿に限定されない。
【0022】
吸着フィルター
図1から
図3に示すように、吸着フィルター1は、不織布からなる基材(以下、「不織布基材」という。)に吸着材を担持させた吸着素子2と、吸着素子2を収容したケーシング3と、吸着素子2の形状を保持する支持体4とを備える。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ケーシング3は、特に限定されないが本実施形態では直方体状の外形を呈する。ケーシング3の内部は直方体状の外形を呈する空洞である。ケーシング3は、六面のうち、一組の互いに対向する一対の面にそれぞれ内部の空洞に連通する開口が形成されている。ケーシング3の互いに対向する一対の開口はガス流通口30であり、被処理ガスや再生ガスは一方のガス流通口30を通ってケーシング3に導入され、他方の開口ガス流通口30を通ってケーシング3から排出される。一対のガス流通口30は、特に限定されないが本実施形態ではいずれも長方形状の外形を呈し、同じ大きさである。
【0024】
ケーシング3は、図示は省略するが、一対のガス流通口30が形成されていない四面のうち、少なくとも一つの面が着脱可能な蓋ないしは開閉可能な蓋で構成することが好ましい。これにより、ケーシング3に対して吸着素子2を容易に出し入れすることができる。
【0025】
ケーシング3の素材は、ケーシング3が使用時に十分な強度や耐熱性を発揮するものであれば特に限定されるものではなく、例えばステンレス、アルミニウムなどの金属材料の他、アクリル、ベークライト、メラニンなどの樹脂材料などを一例として挙げることができる。
【0026】
ケーシング3の大きさは、ケーシング3に収容する吸着素子2の数や大きさに応じて適宜設定される。
【0027】
ケーシング3に収容される吸着素子2の数は、本実施形態では一つであるが、複数であってもよい。複数の吸着素子2をケーシング3に収容する場合は、単にケーシング3内で複数の吸着素子2を積層するのではなく、図示は省略するが、ケーシング3内に仕切り板を設け、隣り合って配置される二つの吸着素子2の間に仕切り板を介在させることが好ましい。これにより、ケーシング3内で吸着素子2同士が接触したりこすれたりするのを抑制することができる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、吸着素子2は、ケーシング3の内面に密接した状態でケーシング3に収容される。吸着素子2は、所定の幅、厚み及び長さを有する帯状物をプリーツ状に成形したものである。つまり、吸着素子2は、前記帯状物をつづら折りする、言い換えればジグザグ状に折り曲げて幾重にも折り重ねた形状とし、当該形状が保持されたものである。吸着素子2は、一方向に凸をなして突き出る第一折曲げ部20と、前記一方向と反対方向の他方向に凸をなして突き出る第二折曲げ部21と、第一折曲げ部20及び/又は第二折曲げ部21に連なる直線部22とを含む。吸着素子2の折り重ねる層数は特に限定されず、第一折曲げ部20を少なくとも一つ含み、第二折曲げ部21を少なくとも一つ含んでいればよい。
【0029】
吸着素子2は、ケーシング3に導入される被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を交差しながら通過するとともに低い圧力損失で吸着素子2を通過するように、ケーシング3に収容されている。具体的には、プリーツ状の吸着素子2において第一折曲げ部20がケーシング3の一方のガス流通口30の方を向くとともに第二折曲げ部21がケーシング3の他方のガス流通口30の方を向いており、各第一折曲げ部20の頂点を通る平面及び各第二折曲げ部21の頂点を通る平面が通風方向Fに対して垂直となるように、ケーシング3に収容されている。
【0030】
これにより、ケーシング3に導入された被処理ガスや再生ガスは、吸着素子2の第一折曲げ部20及び第二折曲げ部21とそのまま交差したり、第一折曲げ部20及び第二折曲げ部21の間の直線部22の方に流れの向きを変えて交差したりして、吸着素子2を通過する。そのため、吸着素子2は、その表面側の吸着材だけでなく内部の吸着材についても被処理ガスや再生ガスが良好に接触し、被処理ガス及び再生ガスと吸着材との接触効率が高い。よって、吸着素子2は、除湿時には吸着材によって効果的に被処理ガス中の水分を吸着することができるため、除湿性能を向上できる。また、吸着素子2は、再生時も再生ガスが効果的に吸着材から水分を脱着することができ、低温度や低風量の再生ガスで吸着材の再生が可能であるため、再生時のエネルギー効率を向上できる。
【0031】
吸着素子2は、複数の直線部22が通風方向F(ケーシング3の一方のガス流通口30から他方のガス流通口31に向かう方向)と平行又はほぼ平行となるように、ケーシング3に収容されている。そのため、複数の直線部22が通風方向Fに対して垂直となるように吸着素子2がケーシング3に収容されている場合と比べて、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0032】
吸着素子2の大きさ、つまりは、高さ、横幅、長さは特に限定されるものではない。その中で、吸着素子2の長さ(一方のガス流通口30から他方のガス流通口31に向かう方向(奥行き方向)の大きさであり、第一折曲げ部20の先端から第二折曲げ部21の先端までの長さ)は、好ましくは100mm以上500mm以下であり、より好ましくは150mm以上350mm以下である。吸着素子2の長さが100mm以上であることにより、吸着素子2は大風量の被処理ガスに対して水分の吸着処理を行うことができる一方で、吸着素子2の長さが500mm以下であることにより、吸着ロータ10の大型化を抑制することができる。
【0033】
吸着素子2を構成する吸着材は、シリカゲルである。シリカゲルの形状は、特に限定されるものではなく、粉末状、不定形の破砕状、繊維状、円柱状や球状などの粒状、ハニカム状など、種々の形状とすることができる。
【0034】
吸着材の大きさは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5μm以上150μm以下であり、より好ましくは1μm以上100μm以下である。吸着材の大きさが0.5μm以上であることにより、吸着素子2において吸着材の脱落を生じ難くすることができるとともに、被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率を高めることができる一方で、吸着素子2の大きさが150μm以下であることにより、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる。なお、吸着材の大きさは、レーザー回折式粒度分布計のD50値もしくは走査電子顕微鏡による平均粒子径により測定することができる。
【0035】
吸着材は、特に限定されるものではないが、好ましくは平均細孔径が10Å以上100Å以下であり、より好ましくは15Å以上80Å以下の細孔径を持つシリカゲルが好ましい。平均細孔径が10Å以上100Å以下の細孔径を有するシリカゲルは、良好な吸着性能を有するうえ、再生時に吸着した水分を吸着材から脱離しやすい。なお、吸着材の平均細孔径は、100nm以上の場合は水銀圧入法で、100nm未満の場合は窒素吸着法によって得ることができる。
【0036】
吸着材のBET法による測定での比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは400m2/g以上1000m2/g以下であり、より好ましくは500m2/g以上700m2/g以下である。吸着材の比表面積が400m2/g以上であることにより、被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率を高めることができる一方で、吸着材の比表面積が1000m2/g以下であることにより、吸着材の強度を十分に確保することができる。
【0037】
吸着素子2における吸着材の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上70質量%以下である。吸着材の含有量が30質量%以上であることにより、被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率を高めることができる一方で、吸着材の含有量が80質量%以下であることにより、吸着素子2において吸着材の脱落を生じ難くすることができるとともに、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0038】
吸着材は、特に限定されるものではないが、後述するバインダーによる接着で不織布基材に担持させる前に、水蒸気又は水を細孔内に含ませておくことが好ましい。これにより、バインダーが吸着材の細孔内に存在して最高を閉塞することを防ぐことができるため、吸着素子2において吸着材による被処理ガス中の水分の吸着性能が低下するのを抑制することできる。
【0039】
吸着材は、特に限定されるものではないが、シリカゲルにアミン化合物を担持させることにより、二酸化炭素、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド類に対する吸着性能を吸着材が有するようにしてもよい。
【0040】
吸着素子2を構成する基材は、一枚の不織布の単体、又は、複数枚の不織布を重ねた積層体である。不織布を構成する繊維は、特に限定されるものではなく、例えばフェノール樹脂繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維、ピッチ繊維、耐炎化ピッチ繊維、アラミド繊維、PET繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、活性炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、その他の金属繊維などを一例として挙げることができる。その中でも、フェノール系繊維からなる不織布(フェノール系繊維不織布)、ポリフェニレンエーテル繊維からなる不織布(ポリフェニレンエーテル繊維不織布)、耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維からなる不織布(耐炎化ポリフェニレンエーテル繊維不織布)、耐炎化アクリロニトリル繊維からなる不織布(耐炎化アクリロニトリル繊維不織布)、PET繊維からなる不織布(PET繊維不織布)は、太繊度化しやすくかつ耐熱性に優れるために好ましい。
【0041】
なお、上述した繊維の断面形状は、円形や楕円形等の一般的な形状の他、例えば星形やY型等の異形な形状であってもよい。
【0042】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは15μm以上60μm以下である。平均繊維径が10μm以上であることにより、不織布基材の繊維間の空隙が狭くなり過ぎないため、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる一方で、平均繊維径が100μm以下であることにより、吸着素子2において吸着材の脱落を生じ難くすることができる。
【0043】
平均繊維径は、走査電子顕微鏡(製品名SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて繊維の顕微鏡画像を観察し、その顕微鏡画像から100本以上の繊維直径を読み取り、読み取った繊維直径を平均して求めることができる。
【0044】
不織布の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、スパンレース法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法などを一例に挙げることができる。その中でも、吸着材を担持できる適当な空隙が得られるとの理由で、ニードルパンチ法により製造されたニードルパンチ不織布を用いることが好ましい。
【0045】
不織布基材の厚み(不織布基材が一枚の不織布の単体である場合は不織布単体の厚み、不織布基材が複数枚の不織布を重ねた積層体である場合は積層体の総厚み)は、特に限定されるものではないが、好ましくは4mm以上50mm以下であり、より好ましくは10mm以上40mm以下である。不織布基材の厚みが4mm以上であることにより、吸着素子2の強度を十分に確保することができる一方で、不織布基材の厚みが50mm以下であることにより、吸着素子2をプリーツ状に容易に加工できるとともに、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0046】
不織布基材の目付(不織布基材が一枚の不織布の単体である場合は不織布単体の目付、不織布基材が複数枚の不織布を重ねた積層体である場合は積層体の総目付)は、特に限定されるものではないが、好ましくは300g/m2以上5000g/m2以下であり、より好ましくは600g/m2以上4000g/m2以下である。不織布基材の目付が300g/m2以上であることにより、吸着素子2の強度を十分に確保することができるとともに、被処理ガスや再生ガスと吸着材との接触効率を高めることができる一方で、不織布基材の目付が5000g/m2以下であることにより、被処理ガスや再生ガスが吸着素子2を通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0047】
吸着素子2は、以下に説明する手順で製造される。まず、吸着材及びバインダーを水中に分散させてスラリーを製造する。
【0048】
バインダーは、吸着材を不織布基材に接着できるものであれば特に限定されないが、撥水性のバインダーを用いることが好ましい。撥水性のバインダーとして、スチレン及び/又はアクリルに由来する構成単位を有する有機バインダーなどを例示することができる。バインダーの形態は特に限定されないが、エマルジョン状のものを使用することが好ましい。
【0049】
スラリー中の吸着材及びバインダーの含有量は、特に限定されるものではないが、吸着材は例えば10質量%以上30質量%以下であり、バインダーは例えば2質量%以上15質量%以下である。また、スラリーの温度は、特に限定されるものではないが、例えば5℃以上35℃以下である。
【0050】
次に、スラリーに不織布基材を十分に浸漬させてスラリーを不織布基材の表面だけでなく内部にまで取り込む。そして、スラリーに浸漬させた後の不織布基材を圧力をかけて絞り、スラリーを不織布基材の内部に十分に浸透させるとともに、不織布基材から不要なスラリーを取り除いて不織布基材に付与するスラリー量を調整する。不織布基材に付与するスラリーの割合は、特に限定されるものではないが、好ましくは30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上90質量%以下である。そして、絞った後の不織布基材を乾燥させ、不織布基材に含まれる水分を除去する。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、例えば5℃以上200℃以下であり、例えば約20℃かつ低湿度の空気を使用して乾燥することができる。
【0051】
最後に、乾燥後の吸着材を担持した不織布基材をプリーツ状に成形することで吸着素子2が製造される。なお、不織布基材をプリーツ状に成形する際に、不織布基材を折り曲げ可能な状態とするために、不織布基材が完全に乾燥する半乾燥状態で不織布基材をプリーツ状に成形し、成形後に不織布基材を完全に乾燥させてもよい。
【0052】
図7及び
図8は、上述した方法により製造された吸着素子2の走査電子顕微鏡写真である。スラリーに浸漬させた後の不織布基材を絞ることで、スラリーは不織布基材の内部に浸透し、不織布基材の表面側の繊維だけでなく不織布基材の内部の繊維にスラリーが付着するとともに、繊維と繊維の間のスラリーは押し出されて不織布基材から取り除かれる。これにより、吸着材は、不織布基材の全体において構成繊維の表面にバインダーによる接着で担持する一方で、不織布基材の繊維と繊維の間に存在するのが抑制される。これにより、吸着素子2の通気性が高まり、吸着素子2を被処理ガスや再生ガスが通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0053】
図1から
図3に示すように、支持体4は、プリーツ状の吸着素子2を形状が崩れない安定した状態に保持するために、ケーシング3内に設けられている。支持体4は、特に限定されるものではないが本実施形態では二枚の平型金網40の間に波型金網41が挟み込まれた網状体からなる。支持体4は、プリーツ状の吸着素子2の間隔をあけて配置される複数の直線部22の間の隙間に挟み込まれている。
【0054】
支持体4の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5mm以上25mm以下である。支持体4の素材は、吸着フィルター4の使用条件において十分な強度、耐熱性、耐薬品性などがあれば特に限定されるものではなく、例えばステンレス、アルミニウムなどの金属材料の他、アクリル、ベークライト、メラニンなどの樹脂材料などを一例として挙げることができる。
【0055】
なお、支持体4は、必ずしも複数の網状体で構成されている必要はなく、プリーツ状の吸着素子2を形状が崩れない安定した状態に保持できるものであれば、その形態は限定されない。
【0056】
上述した構造の吸着フィルター1は、圧力損失が2kPa以下であることが好ましく、1.5kPa以下がより好ましく、1.0kPa以下がより好ましい。これにより、吸着フィルター1に被処理ガスを効率よく通過させることができる。
【0057】
圧力損失は、吸着フィルター1を通気圧損測定治具にセットし、一方のガス流通口30に対して風速2.0m/sで通風した時の圧力損失を測定することで求めることができる。
【0058】
吸着ロータ
図4から
図6に示すように、吸着ロータ10は、横断面視で内径及び外径を有する中空の略円環状であり、所定の高さを有している。吸着ロータ10は、回転軸Lの周りに回転駆動されるように処理室101に設置される。また、吸着ロータ10は、内周及び外周のそれぞれにおいて被処理ガスが導入及び排出されるように回転軸が鉛直方向を向くように処理室101に設置される。吸着ロータ10の回転軸は、横断面視における中心を通る。
【0059】
吸着ロータ10は、上述した吸着フィルター1を複数備える。複数の吸着フィルター1は、吸着ロータ10の回転軸の周りの周方向に沿って配置されている。複数の吸着フィルター1は、ケーシング3の一対のガス流通口30が吸着ロータ10の外周及び内周と向かい合うように配置されている。また、複数の吸着フィルター1は、それぞれが上下に複数段(本実施形態では上下二段)となるように固定された状態で配置されているが、必ずしも複数段で配置される必要はない。
【0060】
吸着ロータ10は、例えばステンレス製の一対の円盤5A,5Bを備える。一対の円盤5A,5Bは、複数の吸着フィルター1を上下から挟持する。一対の円盤5A,5Bは、横断面視で内径及び外径を有する中空の略円環状である。一対の円盤5A,5Bは、横断面視における中心を吸着ロータ10の回転軸が通るように互いに平行に配置される。一対の円盤5A,5Bの中央の開口は、筒状に並べられた複数の吸着フィルター1の内側の空洞と連通している。
【0061】
吸着ロータ10は、一対の円盤5A,5Bの間の空間を周方向において互いに独立した複数の空間に仕切る複数の仕切り7を備える。一対の円盤5A,5Bの間において隣り合う二つの仕切り7の間に吸着フィルター1が例えばゴム製のシール部材6を介して気密状態で収納されている。複数の仕切り7は、一対の円盤5A,5Bの内周縁から外周縁まで径方向に延び、周方向に問う間隔をあけて配置されている。また、複数の仕切り7は、一対の円盤5A,5Bの間に立設されている。吸着ロータ10の内周ないしは外周から流入する被処理ガスは、一対の円盤5A,5Bの間であり複数の仕切り7の間のそれぞれの吸着フィルター1を通過する。
【0062】
仕切り7は、本体部70と一対のシール部71A,71Bとを含む。本体部70は例えばステンレス製である。本体部70の上端及び下端は一対の円盤5A,5Bに気密状態で当接している。シール部71A,71Bは、例えばゴム製である。シール部71A,71Bは、本体部70の両側縁に例えば接着剤などによって取り付けられている。シール部71A,71Bの上端及び下端は一対の円盤5A,5Bに気密状態で当接している。本体部70の内側の側縁に取り付けられたシール部71Aは、その一部分が一対の円盤5A,5Bの内周縁から内側に突き出ている。本体部70の外側の側縁に取り付けられたシール部71Bは、その一部分が一対の円盤5A,5Bの外周縁から外側に突き出ている。
【0063】
吸着処理装置
・吸着処理装置の構造
図4から
図6に示すように、吸着処理装置100は、処理室101内に設置された上述した吸着ロータ10を備える。吸着ロータ10は、例えばモータ9の回転駆動力を受けて回転軸Lの周りに回転駆動される。吸着ロータ10は、処理室101内で回転することで、周方向の一部分が被処理ガスの吸着処理を行う吸着ゾーン102に移動し、周方向の残りの部分が再生ガスにより脱着処理を行う脱着ゾーン103に移動する。
【0064】
吸着処理装置100は、処理室101内に供給された被処理ガスを処理室101内で回転する吸着ロータ10の一部の吸着フィルター1に流入・流出させる流路や、処理室101内で回転する吸着ロータ10の他の一部の吸着フィルター1に再生ガスを流入・流出させる流路を形成するための供給流路形成部材8を備える。具体的に、供給流路形成部材8は、第一流路形成部材80、第二流路形成部材81、第三流路形成部材82及びゾーン区画部材83を含む。
【0065】
第一流路形成部材80は、円筒状であり、その内部を被処理ガスが流通する。第一流路形成部材80は、処理室101の天井を貫通するように設けられ、第一流路形成部材80の下端は吸着ロータ10の円盤5Aに気密状態かつ円盤5Aの回転が可能に当接している。第一流路形成部材80の内側の空洞は、円盤5Aの中央の開口を介して吸着ロータ10の内側の空洞と連通している。第一流路形成部材80は、処理室101内において吸着ロータ10の外側から流入し吸着フィルター1を通過して吸着ロータ10の内側に流出した被処理ガスを、下端の開口800から内部に導入し、上端の開口801から処理室101の外部に排出する。
【0066】
第二流路形成部材81は、筒状であり、その内部を再生ガスが流通する。第二流路形成部材81の一端部はL字に折れ曲がって第一流路形成部材80の側壁を貫通するように設けられている。第二流路形成部材81の一端の開口810は、処理室101の外部に位置しており、再生ガスを第二流路形成部材81に導入する。第二流路形成部材81の他端部は吸着ロータ10の内側の空洞に配置されている。第二流路形成部材81の他端の開口811は、鉛直方向に平行をなして吸着ロータ10の内周と向かい合い、吸着ロータ10の回転により周方向に移動する吸着フィルター1の流通口30と相対する。第二流路形成部材81の他端の開口811は、第二流路形成部材81の内部を流れる再生ガスを吸着ロータ10の吸着フィルター1の内周に向けて吐き出す。
【0067】
第三流路形成部材82は、筒状であり、その内部を再生ガスが流通する。第三流路形成部材82の一端部は吸着ロータ10の外周の外側に配置されている。第三流路形成部材82の一端の開口820は、鉛直方向に平行をなして吸着ロータ10の外周と向かい合い、第二流路形成部材81の他端の開口811と吸着ロータ10を間に挟んで向かい合う。そのため、第三流路形成部材82の一端の開口820は、吸着ロータ10の回転により周方向に移動する吸着フィルター1の流通口30と相対する。第三流路形成部材82の一端の開口821は、吸着ロータ10の内側から流入し吸着フィルター1を通過して外側に流出した再生ガスを第三流路形成部材82に導入する。第三流路形成部材82の他端部は処理室101の側壁を貫通するように設けられている。第三流路形成部材82の他端の開口821は、処理室101の外部に位置しており、第三流路形成部材82の内部を流れる再生ガスを処理室101の外部に排出する。
【0068】
ゾーン区画部材83は、第二流路形成部材81の他端に設けられた一対の内周側湾曲部830と、第三流路形成部材82の一端に設けられた一対の外周側湾曲部831とを含む。内周側湾曲部830は吸着ロータ10の内周と向かい合うように、外周側湾曲部831は吸着ロータ10の外周と向かい合うように、それぞれが湾曲しており、内周側湾曲部830及び外周側湾曲部831は互いに並行している。内周側湾曲部830及び外周側湾曲部831の上端及び下端は、吸着ロータ10の円盤5A,5Bに気密状態かつ円盤5A,5Bの回転が可能に当接している。
【0069】
吸着ロータ10の回転に伴い、複数の吸着フィルター1及び複数の仕切り7が吸着ロータ10の周方向に移動する。この際に、一部の仕切り7の内側のシール部71A及び外側のシール部71Bがそれぞれ回転方向の上流側の内周側湾曲部830及び外周側湾曲部831に気密状態で当接し、他の一部の仕切り7の内側のシール部71A及び外側のシール部71Bがそれぞれ回転方向の下流側の内周側湾曲部830及び外周側湾曲部831に気密状態で当接しながら移動する。これにより、これらの仕切り7の間にある吸着ロータ10の周方向の一部分の領域が第二流路形成部材81及び第三流路形成部材82と連通し、処理室101の内部空間及び第一流路形成部材80とは連通しないために脱着ゾーン103となり、この脱着ゾーン103に移動している吸着フィルター1に再生ガスが供給される。一方で、吸着ロータ10の周方向において、上述した脱着ゾーン103と区切られた他の一部分の領域は処理室101の内部空間及び第一流路形成部材80と連通し、第二流路形成部材81及び第三流路形成部材82とは連通しないために吸着ゾーン102となり、この吸着ゾーン102に移動している吸着フィルター1に被処理ガスが供給される。吸着ロータ10の複数の吸着フィルター1は、吸着ロータ10の回転により、吸着ゾーン102と脱着ゾーン103とを交互に移動する。
【0070】
・吸着処理装置の動作
まず、被処理ガス中の水分の吸着処理について説明する。処理室101内の吸着ゾーン102において吸着ロータ10に対して外周から被処理ガスを供給することにより、被処理ガスを吸着ロータ10の吸着ゾーン102に移動している吸着フィルター1に導入する。吸着フィルター1は、被処理ガスが吸着素子2を通過する間に吸着材により被処理ガス中の水分を吸着する。これにより、被処理ガスは除湿される。そして、除湿された被処理ガスを吸着ロータ10の内周から排出して第一流路形成部材80に導入し、第一流路形成部材80によって処理室101の外部に排出する。
【0071】
次に、吸着処理により水分を吸着した吸着フィルター1の再生について説明する。第二流路形成部材81によって処理室101内の脱着ゾーン103において吸着ロータ10に対して内周から加熱空気などの再生ガスを供給し、再生ガスを吸着ロータ10の脱着ゾーン103に移動している吸着フィルター1に導入する。吸着フィルター1は、再生ガスが吸着素子2を通過することにより吸着材が吸着した水分が再生ガスにより脱着される。これにより、吸着フィルター1の吸着素子2が再生される。そして、水分を含んだ再生ガスを吸着ロータ10の外周から排出して第三流路形成部材82に導入し、第三流路形成部材82によって処理室101の外部に排出する。
【0072】
このように、吸着処理装置100においては、吸着ロータ10の回転に伴って吸着ゾーン102に移動する吸着フィルター1により被処理ガスに対する吸着処理が行われ、吸着処理後に脱着ゾーン103に移動する吸着フィルター1に対して吸着した水分の脱着処理が行われる。吸着ロータ10が回転軸L周りに回転することにより、吸着フィルター1は吸着ゾーン101と脱着ゾーン103とを交互に移動するため、被処理ガス中の水分の吸着と、水分を吸着した吸着フィルター1の再生処理とが連続的に実施される。
【0073】
作用・効果
上述した吸着フィルター1、吸着ロータ10、及び吸着処理装置100によれば、プリーツ状に成形された吸着素子2が、その第一折曲げ部20がケーシング3の一方のガス流通口30の方を向き且つ第二折曲げ部21がケーシング3の他方のガス流通口30の方を向いた状態でケーシング3に収容されている。そのため、被処理ガスや再生ガスは吸着素子2の一部分(各折曲げ部20,21や直線部22)と交差して吸着素子2を通過する。よって、吸着素子2の表面側に担持された吸着材だけでなく、吸着素子2の内部に担持された吸着材についても被処理ガスや再生ガスが良好に接触する。よって、被処理ガスと吸着材との接触効率が高いため、除湿性能を向上できる。また、再生ガスと吸着材との接触効率も高く、その分、従来の吸着素子がハニカム構造の場合に比べて、低い温度や低風量の再生ガスで吸着材から水分を脱着することができるため、再生時のエネルギー効率を向上できる。
【0074】
加えて、上述した吸着フィルター1、吸着ロータ10、及び吸着処理装置100によれば、吸着材は、不織布基材を構成する繊維の表面に担持しており、不織布基材の繊維と繊維の間に存在するのが抑制されている。これにより、吸着素子2の通気性が高まり、吸着素子2を被処理ガスや再生ガスが通過する際の圧力損失を低減することができる。よって、大風量の被処理ガスに対して水分の吸着を行うために吸着素子2の長さが200mm以上の大型の吸着フィルター1であっても、低い圧力損失で被処理ガスや再生ガスを通過させることができる。
【0075】
変形例
以上、本開示の吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置の一実施形態について説明したが、本開示の吸着フィルター、吸着ロータ、及び吸着処理装置は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0076】
例えば上述した実施形態では、吸着素子2において吸着材はバインダーによる接着で不織布基材に担持されるが、一変形例として、吸着材を不織布基材に直接合成することにより、不織布基材に担持させてもよい。吸着材を不織布基材に直接合成するには、不織布基材を構成する繊維の表面に例えば水ガラスを担持・コーティングして酸又はアルカリ溶液で処理を行う方法、あるいはテトラエトキシシラン(TEOS)などの加水分解・重縮合により前記繊維の表面にシリカを担持・コーティングする方法、などの公知の方法を用いることができる。
【0077】
吸着材を不織布基材に直接合成すると、バインダーで接着する場合と比べて、プリーツ状に折り重ねた吸着素子2の積層数を少なくしても同等の吸着性能が出せ、結果、被処理ガスの処理量を多くすることができる。
【0078】
また上述した実施形態では、吸着処理装置100において吸着ロータ10は回転軸Lが鉛直方向を向くように処理室101に設置されるが、回転軸Lが水平方向を向くように処理室101に設置してもよい。この場合、吸着ロータ10は、
図9に示すように、回転軸L周りの周方向に沿って配置された複数の吸着フィルター1を連結することで形成される。吸着フィルター1は、上述した実施形態と同様、プリーツ状に成形された吸着素子2と、吸着素子2を収容するケーシング3とを備える。
【0079】
ケーシング3は、この実施形態では、直方体状ではなく断面が台形の四角柱状の外形を呈する。ケーシング3の内部は直方体状の外形を呈する空洞である。ケーシング3は、六面のうち、台形で構成される互いに対向する一対の面にそれぞれ内部の空洞に連通するガス流通口30が形成されている。吸着素子2は、ケーシング3の内面に密接した状態でケーシング3に収容される。
【0080】
図9に示す実施形態でも、吸着ロータ10の吸着フィルター1は、吸着ロータ10の回転により、吸着ゾーン102及び脱着ゾーン103を交互に移動する。吸着ゾーン102及び脱着ゾーン103は、図示しない流路形成部材により区分けされる。吸着フィルター1が吸着ゾーン102に移動すると、吸着ゾーン102に供給される被処理ガスが吸着フィルター1の吸着素子2に交差しながら吸着素子2を通過することで、吸着材により被処理ガス中の水分を吸着する。これにより、被処理ガスは除湿される。吸着フィルター1が脱着ゾーン103に移動すると、脱着ゾーン103に供給される再生ガスが吸着フィルター1の吸着素子2に交差しながら吸着素子2を通過することで、吸着材が吸着した水分が再生ガスにより脱着される。これにより、吸着フィルター1の吸着素子2が再生される。
【0081】
図9に示す実施形態によっても、上述した実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0082】
図9に示す実施形態の吸着フィルター1、吸着ロータ10及び吸着処理装置100は、低風量の被処理ガスの除湿を行うのに例えば工場などで好適に使用することができる。なお、吸着フィルター1、吸着ロータ10及び吸着処理装置100の用途は、除湿に限定されない。
【実施例0083】
以下に本開示の吸着フィルターの実施例を示して作用・効果を具体的に説明するが、本開示の吸着フィルターは以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例は、吸着材としてA形シリカゲル(富士シリシア化学社製フジシリカゲルA形破砕、固形分率73%)2.7kgを水5.8kgに一晩浸漬させ、その後、耐水性バインダーとしてアクリル-スチレン系バインダーA(固形分率37%)1.0kgを添加し、固形分25%のスラリーを生成した。不織布としてカイノールフェルト(目付600g/m2、繊度10デニール、厚み6.0mm)をスラリーに浸漬させた後、不織布から余剰なスラリーを絞り落とし、水分を揮発させて、シリカゲルを担持した不織布を得た。この不織布を4枚積層して不織布基材とし、不織布基材をプリーツ状に折り曲げた後、130℃で加熱乾燥を行うことで、高さ250mm×横幅250mm、長さ200mmのプリーツ状に成形された吸着素子を得た。吸着素子の吸着材の含有率は47.8質量%であった。
【0085】
比較例は、吸着材として実施例と同じA形シリカゲルを水中に24時間浸漬させた後に、ろ過し、細孔内に水分子が吸着されたシリカゲルサンプルを得た。このシリカゲルサンプルを80質量%(水分子を除く)、フィブリル化していない繊維としてアラミド繊維を8質量%、フィブリル化した繊維としてアラミド繊維を5質量%、有機バインダーとして水中溶解温度が70℃のポリビニルアルコール(PVA)繊維を7質量%の比率で混合し、坪量75g/m2となる質量にて湿式抄紙装置(東洋紡エンジニアリング株式会社製)によりシート化し、その後、130℃、真空条件下、24時間で脱溶媒処理を行い、吸着シートを得た。得られた吸着シートを用いて、山高さ=1.5mm、山ピッチ=2.6mmの波型加工を行ったコルゲートシートと、平坦なライナーシートを用意し、ライナーシート及びコルゲートシートを交互に積層して、高さ250mm×横幅250mm、長さ200mmのハニカム構造の吸着素子を得た。
【0086】
実施例のプリーツ状の吸着素子と比較例のハニカム構造の吸着素子をそれぞれケーシングに密接状態で収容した吸着フィルターを、動的水蒸気吸脱着評価試験機に設置し、除湿性能の評価を行った。除湿時の被処理ガス(空気)の風量と再生時の再生ガス(空気)の風量との比を3:1に設定し、除湿は、温度:20℃、絶対湿度:6.5g/kg-DA、風速:2m/secの被処理ガスを吸着素子に供給して被処理ガス中の水分の吸着を行った。再生は、除湿時とは逆方向から、温度:80℃から150℃、絶対湿度:成り行き、風速:2m/secの再生ガスを除湿時とは逆方向から吸着素子に供給して吸着材の水分の吸着を行った。除湿と再生を交互に複数回行い、水分が吸着された被処理ガスの絶対湿度の平均値を除湿性能として測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
実施例と比較例を対比すれば、実施例は比較例よりも概ね除湿性能に優れていることが確認される。さらに実施例は、再生ガスの温度(脱着温度)が低い温度であっても、高い除湿性能を維持できるが、比較例では脱着温度が低いと除湿性能が低下することが確認される。これらのことから、実施例は吸着素子がプリーツ状であることから吸着素子がハニカム構造の比較例よりも、被処理ガスと吸着材との接触効率が高いため、除湿性能が向上しているとともに、再生ガスと吸着材との接触効率も高いため、低い温度の再生ガスで吸着材から水分を脱着することが可能であり、再生時のエネルギー効率が向上することが分かる。