(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147780
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】IL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/73 20060101AFI20231005BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231005BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231005BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K36/73
A61K8/9789
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61P17/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055488
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】590003722
【氏名又は名称】佐賀県
(71)【出願人】
【識別番号】591119750
【氏名又は名称】岩瀬コスファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】岩元 彬
(72)【発明者】
【氏名】柘植 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD48
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4B018MF01
4C083AA111
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4C088AB51
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4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC20
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】新規のIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物、及びその応用品を提供する。
【解決手段】イチゴ葉抽出物を含有することを特徴とするIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物。当該組成物はIL-8産生抑制作用及びコラゲナーゼ産生抑制作用に優れ、人体に対する毒性や刺激性が少ない。そのため、化粧料組成物、機能性食品等の用途に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチゴ葉抽出物を含有することを特徴とするIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物。
【請求項2】
前記イチゴ葉抽出物が、イチゴ葉の水及び/又はエタノールからなる抽出溶媒による溶媒抽出物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
医薬用である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
皮膚外用用(但し、医薬用である場合を除く。)である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
経口用(但し、医薬用である場合を除く。)である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
イチゴ葉と、抽出溶媒とを接触させることにより、イチゴ葉抽出物を得る抽出工程を有することを特徴とするIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物、及びその応用品に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-8(IL-8)は炎症性サイトカインのひとつであり、好中球の遊走性を高め、炎症を促進することやエラスチンの分解を促進することが知られている。IL-8が関与する疾患としては、好中球の浸潤を伴う炎症疾患、リウマチ、痛風、喘息発作、クローン病等がある。
【0003】
また、マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase、MMP)は、活性中心に金属イオンが配座したタンパク質分解酵素群であり、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンなどの細胞外マトリックスの分解代謝に関与する。MMPの中でもコラゲナーゼが過剰に働くと、皮膚組織のしわやたるみなどの劣化の原因となる。また、コラゲナーゼが関与する疾患としては、リウマチ、変形性関節症、骨粗しょう症、歯周炎、癌転移等がある。
【0004】
このように、IL-8やコラゲナーゼは、様々な疾患の原因となり得る。そのため、IL-8やコラゲナーゼの産生に関連する成分についての研究が進められている。
例えば、インターロイキン-8(IL-8)の産生を抑制する作用を有するものとして、イザヨイバラ果実抽出物(特許文献1)、亜鉛又は亜鉛塩(特許文献2)等が報告されている。また、コラゲナーゼの産生を抑制する作用を有するものとして、柿蒂抽出物(特許文献3)、マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物(特許文献4)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-058806号公報
【特許文献2】特開2003-146892号公報
【特許文献3】特開2006-083070号公報
【特許文献4】特開2012-206984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、これまでに様々な成分にIL-8やコラゲナーゼの産生を抑制する作用があることが報告されているが、より優れた有効な成分の探索が行われている。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、新規のIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を有する組成物、及びその応用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、イチゴ葉抽出物が、優れたIL-8産生抑制作用及びコラゲナーゼ産生抑制作用を有することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> イチゴ葉抽出物を含有するIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物。
<2> 前記イチゴ葉抽出物が、イチゴ葉の水及び/又はエタノールからなる抽出溶媒による溶媒抽出物である<1>に記載の組成物。
<3> 医薬用である、<1>または<2>に記載の組成物。
<4> 皮膚外用用(但し、医薬用である場合を除く。)である、<1>または<2>に記載の組成物。
<5> 経口用(但し、医薬用である場合を除く。)である、<1>または<2>に記載の組成物。
<6> イチゴ葉と、抽出溶媒とを接触させることにより、イチゴ葉抽出物を得る抽出工程を有するIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規のIL-8産生抑制用やコラゲナーゼ産生抑制用の組成物並びにその応用品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1及び実施例2のイチゴ葉抽出物のヒト3次元培養表皮のIL-8産生への影響の評価結果を示すグラフである((a):実施例1,(b):実施例2)。
【
図2】実施例1及び実施例2のイチゴ葉抽出物のヒト3次元培養表皮のコラゲナーゼ(MMP-1)産生への影響の評価結果を示す図である((a):実施例1,(b):実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0013】
<1.IL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物>
本発明は、イチゴ葉抽出物を含有するIL-8産生抑制用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制用組成物(以下、単に「本発明の組成物」と記載する場合がある)に関する。
【0014】
本発明の組成物は、含有するイチゴ葉抽出物に起因してIL-8産生抑制及びコラゲナーゼ産生抑制に対して優れた効果を奏する。そのため、本発明の組成物は、イチゴ葉抽出物のIL-8産生抑制作用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制作用に基づいて、「IL-8産生抑制用組成物」、又は「コラゲナーゼ産生抑制用組成物」、さらには、「IL-8産生抑制用組成物及びコラゲナーゼ産生抑制用組成物」として用いることができる。
【0015】
ここで、インターロイキン-8(IL-8)とは、炎症性サイトカインのひとつであり,CXCケモカインに分類され、白血球に対する遊走活性を示す。また、繊維芽細胞や内皮細胞など種々の細胞から産生される分子量約8KDaのポリペプチドである。
また、IL-8は好中球遊走活性を有し、炎症を促進したり、エラスチンの分解を促進する。また、IL-8は加齢によって増加し、表皮幹細胞にダメージをもたらし、細胞の老化を促進する炎症性サイトカインである。
【0016】
本明細書における「IL-8産生抑制作用」とは、IL-8の産生を抑制する作用を意味し、IL-8の産生が抑制されているか否かで評価できる。また、IL-8産生抑制作用には、IL-8の産生を完全に抑制することのみならず、IL-8の過剰産生を抑制するなどのIL-8産生の部分的な抑制も含まれる。
また、本発明の組成物は、IL-8産生を抑制する作用を有し、IL-8産生抑制用組成物として好適に使用することができる。
本発明の組成物が有するIL-8産生抑制作用は、後述する実施例の評価方法(2-2.)によって評価することができる。
【0017】
また、コラゲナーゼとは、コラーゲン分解活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり、動物組織細胞および炎症細胞、腫瘍細胞などが産生するコラーゲンを分解する酵素である。
対象となるコラゲナーゼとしては、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)がある。例えば、MMP-1、MMP-2、MMP-8、MMP-9、MMP-13等が挙げられ、これらのうち、少なくとも1種が対象となればよい。この中でもMMP-1が特に好適な対象である。
【0018】
本明細書において、「コラゲナーゼ産生抑制作用」とは、コラゲナーゼの産生を抑制する作用を意味し、対象となるコラゲナーゼの遺伝子発現が抑制されているか否かで評価できる。コラゲナーゼ産生抑制作用には、コラゲナーゼの産生を完全に抑制することのみならず、コラゲナーゼの過剰産生を抑制するなどのコラゲナーゼ産生の部分的な抑制も含まれるものとする。
また、本発明の組成物は、コラゲナーゼ産生を抑制する作用を有し、コラゲナーゼ産生抑制用組成物として好適に使用することができる。
本発明の組成物が有するコラゲナーゼ産生抑制作用は、後述する実施例の評価方法(2-3.)によって評価することができる。
【0019】
本発明の組成物は、IL-8産生抑制作用及びコラゲナーゼ産生抑制作用を有する。これに基づいて、炎症抑制等の作用を有するため、様々な症状を予防又は改善することができ、医薬用、及び医薬用に該当しない化粧料などの皮膚外用用、食品やサプリメントなどの経口用の形態として用いることができる。
【0020】
以下、本発明の組成物をさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明の組成物の原料として使用される「イチゴ」は、バラ科(Rosaceae)オランダイチゴ(Fragaria)属であり、食用果実として栽培されている植物である。本発明において、「イチゴ葉」は、根と花托を除いたすべての部位、すなわち葉部、茎部、芽部、ランナー部、クラウン部を含むものである。
【0022】
原料イチゴの品種、ブランド、産地等は、特に限定されず、イチゴであれば使用することができる。具体的には、例えば、白イチゴ、いちごさん、さがほのか、とよのか、とちおとめ、あまおう、章姫、アスカルビー、アイベリー、とちひめ、レッドパール、さちのか、紅ほっぺ、ももいちご等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
イチゴ葉は、果実収穫後に通常廃棄される部位であるため、本発明において果実収穫後のイチゴ葉を採取して使用してもよい。イチゴ葉は、事前処理せずにそのまま溶媒抽出物に使用することもできるが、通常、抽出効率を高めるため、スライス、粉砕、圧搾またはすりおろし等により、細粒物として使用する。
【0024】
本発明において、「抽出物」とは、対象となる原料植物、又はこれを必要に応じて前処理(乾燥、細切)したものを、圧搾又は溶媒抽出する等して、有効成分の含有量を高めた形態のものを総括した概念である。
【0025】
イチゴ葉抽出物は、イチゴ葉を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。なお、抽出液を乾燥して得られる乾燥物も、抽出物に該当するものとする。
【0026】
イチゴ葉抽出物を溶媒抽出で得る場合、抽出溶媒は、イチゴ葉に含有されるIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を発現する成分を抽出できるものであればよい。
具体例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、メタノール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ヘキサン、エチルアセテート等が挙げられる。また、抽出溶媒として用いる水は、本発明の効果を損なわないかぎり任意であり、例えば、水道水、蒸留水、ミネラル水等が挙げられる。
これらの抽出溶媒は単独又はこれら2種以上の混合物として使用することができ、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。
【0027】
なお、抽出溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。例えば、pH調整剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0028】
抽出効率、環境や生体への安全性及び製造コストの観点等から、イチゴ葉抽出物の好適な例は、イチゴ葉の水及び/又はエタノールからなる抽出溶媒による溶媒抽出物である。
抽出溶媒として、水や水及びエタノールの混合溶媒を使用することにより、優れたIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を有するイチゴ葉抽出物を得ることができる。
【0029】
抽出溶媒として水とエタノールの混合溶媒を用いる場合、水とエタノールの混合割合は、イチゴ葉に含有されるIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を発現する成分を抽出できる範囲で適宜調整すればよい。例えば、水及びエタノールの混合溶媒を100体積%とした時に、エタノールの割合が、0.1~80体積%である。
【0030】
原料であるイチゴ葉に対する抽出溶媒の量は特に制限はないが、通常、イチゴ葉に対して重量比で1~100倍量程度である。
【0031】
イチゴ葉から溶媒抽出物を抽出する方法は、イチゴ葉に含有されるIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を発現する成分を抽出できる方法であればよい。
好適なイチゴ葉抽出物の製造方法を例示すると、イチゴ葉と、抽出溶媒とを接触させ、抽出溶媒中に、イチゴ葉から有効成分が十分に抽出されるまで一定時間撹拌する方法が挙げられる。
抽出時間は、抽出溶媒の種類や、イチゴ葉と抽出溶媒との割合を考慮し適宜選択されるが、抽出溶媒が水及びエタノールの混合溶媒の場合は、例えば、1~24時間が挙げられる。
【0032】
抽出工程における抽出操作は品質劣化を避けるために常温で行うが、抽出効率を上げるために加温状態にして行うことができる。また、必要に応じて、イチゴ葉抽出物の有効成分の割合を高めるために減圧濃縮や凍結乾燥により溶媒除去してもよい。
【0033】
また、抽出物に含まれる残渣を取り除くため、濾過や遠心分離を行ってもよい。また、得られた抽出液はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。また、必要に応じて、減圧濃縮や凍結乾燥、噴霧乾燥等の濃縮・乾燥により溶媒除去してもよい。
【0034】
<2.本発明の組成物の応用>
本発明の組成物は、本発明におけるイチゴ葉抽出物をそのまま使用してもよいが、通常、本発明の効果を損なわないその他の成分を組み合わせて使用される。
その他の成分としては、ヒトが安全に使用できる成分であればよく、後述する使用形態(医薬用、皮膚外用用、経口用)を考慮して適宜決定される。
その他の成分の配合割合は、本発明の効果を損なわない限りその目的に応じて適宜選択して決定することができる。
【0035】
本発明の組成物は、IL-8産生抑制作用及び/又はコラゲナーゼ産生抑制作用を有するため、「IL-8産生抑制用組成物」や「コラゲナーゼ産生抑制用組成物」として、使用することができる。
また、本発明の組成物は、その目的に応じて任意の形態で使用することができる。すなわち、医薬用組成物、及び医薬用組成物に該当しない皮膚外用用組成物(化粧料組成物等)、経口用組成物(サプリメント、機能性食品等)等への使用が可能である。
【0036】
本発明の組成物をIL-8産生抑制用として用いる場合、含有するイチゴ葉抽出物の量は、IL-8産生が関与する症状の種類及び程度、本発明の組成物の形態、使用方法を考慮して、必要量が摂取できるような範囲で適宜決定される。
【0037】
また、本発明の組成物をコラゲナーゼ産生抑制用として用いる場合、含有するイチゴ葉抽出物の量はコラゲナーゼ産生が関与する症状の種類及び程度、本発明の組成物の形態、使用方法を考慮して、必要量が摂取できるような範囲で適宜決定される。
【0038】
(医薬組成物)
本発明の組成物の好適な形態のひとつは、イチゴ葉抽出物の有効量を薬学的に許容される基材とともに配合した医薬用の組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する場合がある。)である。
【0039】
本明細書において、「医薬組成物」とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用な薬剤を意味する。また、本明細書において、「医薬組成物」には、医薬品のみならず、医薬部外品も含む。
【0040】
本発明の医薬組成物は、イチゴ葉抽出物以外にもその効能を損なわない範囲で他の薬剤や薬理学的に許容される任意の成分を含んでもよい。
【0041】
本発明の医薬組成物は、IL-8産生やコラゲナーゼ産生が関与する疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用である。すなわち、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
【0042】
本発明の医薬組成物の対象となるIL-8産生やコラゲナーゼ産生が関与する疾患又は症状には制限はないが、具体例として例えば、リウマチ、慢性炎症、変形性関節症、臓器の弾力低下、心筋梗塞、歯周炎等が挙げられる。
【0043】
本発明の医薬組成物は、イチゴ葉抽出物を含有していればよく、どのような形態の薬剤であっても構わない。本発明の医薬組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。本発明の医薬組成物の形態は、固体又は液体同士でもよいし、固体と液体でも良いし、特に限定されない。投与方法としては、経口又は非経口であってもよい。本発明の医薬組成物の好適な態様としては、経口剤や皮膚外用剤が挙げられる。
【0044】
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の医薬組成物とすることもできる。
【0045】
本発明の医薬組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の観点から、本発明の医薬組成物は、持続して摂取することが好ましい。
【0046】
<医薬組成物以外の形態>
上述の通り、イチゴ葉抽出物は、医薬品、医薬部外品以外の製品に配合してもよい。そのような形態のうち、好適な具体例としては、皮膚外用用組成物や経口用組成物(但し、医薬組成物である場合は除く)が挙げられる。
【0047】
(皮膚外用用組成物)
本発明の組成物の好適な形態のひとつは、イチゴ葉抽出物を配合した皮膚外用用組成物(以下、「本発明の皮膚外用用組成物」と記載する場合がある。)である。
【0048】
以下、本発明の皮膚外用用組成物の典型例である化粧料組成物について説明するが、本発明の皮膚外用組成物は化粧料組成物に限定されない。
【0049】
本発明の皮膚外用用組成物は、優れたIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を有し、上述の通り、IL-8産生やコラゲナーゼ産生が関与する症状を予防又は改善することができる。例えば、皮膚のハリや弾力低下、皮膚の保湿、皮膚のしわの形成、皮膚の赤み等に対する美容効果を得ることができる。
【0050】
本発明の皮膚外用用組成物は、慣用の化粧料基材を適宜配合し、所望の剤型とすることができる。その形態は特に制限はないが、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリームファンデーション、水性軟膏、スプレー等の形態が挙げられる。また、本発明において、化粧料組成物は、入浴剤、ボディーソープ、シャンプー等の入浴用組成物も含む概念である。
【0051】
また、本発明の皮膚外用用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧料や皮膚外用医薬、入浴用製品で使用される任意の成分を添加することができる。かかる任意成分の具体例としては、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、香料、ミツロウ等が挙げられる。これら任意成分の配合割合は、その目的に応じて適宜選択して決定することができる。
【0052】
イチゴ葉抽出物を、皮膚外用用組成物に配合する割合は任意であるが、IL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用の少なくとも一方に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0053】
本発明の皮膚外用用組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の皮膚外用用組成物とすることもできる。
【0054】
(経口用組成物)
本発明の組成物の好適な形態のひとつは、イチゴ葉抽出物を配合した経口用組成物(以下、「本発明の経口用組成物」と記載する場合がある。)である。
本発明の経口用組成物は、優れたIL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用を有するため、機能性食品、サプリメント等へ好適に使用される。
【0055】
以下、本発明の経口用組成物の典型例である機能性食品、サプリメント、食品添加剤について説明するが、本発明の経口用組成物は機能性食品、サプリメント、食品添加剤に限定されない。
【0056】
本発明の経口用組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、本発明の経口用組成物の形態、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、本発明の経口用組成物の有する作用又は効能を得るために、本発明の経口組成物は、持続して摂取することが好ましい。
【0057】
本発明の組成物は、日常的に経口摂取しやすいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品及び/又は飲料を意味し、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品又は機能性表示食品)や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
【0058】
機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、乾燥粉末、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、青汁飲料、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0059】
また、本発明の経口用組成物は、サプリメントの形態として使用することも可能である。サプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
本発明のサプリメントは、本発明の組成物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
【0060】
イチゴ葉抽出物を、機能性食品やサプリメントに配合する割合は任意であるが、IL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用の少なくとも一方に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0061】
本発明の経口組成物を保健機能食品として用いる場合、製品において本発明に係るイチゴ葉抽出物によりもたらされる作用又は効能が表示されていてもよい。例えば、本発明に係る製品の本体、包装、容器、パッケージ等の収納物、又はその広告等への表示が挙げられる。
【0062】
また、製品化の際に付される作用又は効能に関する表示としては、例えば、「肌の弾力性を維持する」、「肌のはりを改善する」、「肌のはり低下を防止する」、「シワを防止する」、「肌の水分を保持する」、「血管の柔軟性を維持する」、「炎症に伴う赤みを改善する」、「関節の健康を維持する」、「歯の健康を維持する」、「歯茎の健康を維持する」等が挙げられる。
【0063】
また、本発明の組成物は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
【0064】
本発明の組成物を、食品添加剤に配合する割合は任意であるが、IL-8産生抑制作用やコラゲナーゼ産生抑制作用の少なくとも一方に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0065】
本発明の経口用組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、ペットフード等の動物用の経口用組成物とすることもできる。
【実施例0066】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例の混合溶媒において示す「%」は、特に明示しない限り「体積%」を示す。また、抽出溶媒が混合溶媒の場合、バランスである水は省略して記載する。例えば、「50%エタノール」と記載した場合、50体積%エタノールと50体積%水との混合溶媒を意味する。
【0067】
1.イチゴ葉抽出物の調製
以下の方法で、実施例1及び実施例2のイチゴ葉抽出物を製造した。
【0068】
(実施例1)
原料に「白い宝石(白イチゴ)」(登録商標)(手島農園(唐津市)より提供)のイチゴ葉(根と花托を除いたすべての部位(葉、茎、芽、ランナー、クラウン等))を用いた。
まず、イチゴ葉を水洗後、乾燥させ、粉末化した。得られたイチゴ葉粉末に50%(v/v)含水エタノールを加え、室温で4時間撹拌した後に、遠心分離により回収した上澄み液を吸引濾過し、不溶物を除去した抽出液を得た。この抽出液をエバポレーター及び凍結乾燥機を用いて乾燥させ、得られた固形物をイチゴ葉抽出物とした。イチゴ葉抽出物は、使用前に50%エタノールに溶解させ、実施例1のイチゴ葉抽出物を得た。
【0069】
(実施例2)
実施例1の方法において、原料に「いちごさん」(登録商標)(佐賀県農業試験研究センターより提供)のイチゴ葉を用いた以外は同様の方法で、実施例2のイチゴ葉抽出物を得た。
【0070】
2.評価方法
2-1.ヒト3次元培養表皮を用いた試験(細胞毒性の評価)
ヒト3次元培養表皮LabCyte EPI-MODEL24(J-TEC社)をアッセイ培地(J-TEC社)で前培養した。18時間後、培養カップをアッセイ培地(control)、実施例1又は実施例2のイチゴ葉抽出物を含むアッセイ培地に移し、CO2インキュベーター内で4時間培養した。その後、これにUVA(30J/cm2;ランプ TOSHIBA SH1002MA,フィルター ASAHI SPECTRA SH0385 LU0325)を照射し、新しいアッセイ培地、実施例1又は実施例2のイチゴ葉抽出物を含むアッセイ培地に培養カップを移し、CO2インキュベーター内で培養した。48時間培養後、培養液中のIL-8濃度をIL-8 Human Uncoated ELISA Kit(Invitrogen社)を用いて酵素抗体法により測定した。また、培養液中のコラゲナーゼ(MMP-1)をマウス抗ヒトMMP-1抗体(Santa cruz社)とHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Bethyl社)を用いてウエスタンブロッティングにより検出した。なお、図示していないが、ヒト3次元培養表皮を用いて、MTTアッセイ(細胞生存アッセイ)を行い、すべての群で細胞生存率に影響を与えないことを確認した。
【0071】
2-2.IL-8産生抑制作用における評価(酵素抗体法)
ヒト3次元培養表皮LabCyte EPI-MODEL24を用いて実施例1及び実施例2のイチゴ葉抽出物のIL-8産生への影響を調べた。
48時間培養後、培養プレートの各ウェルの培養液において、IL-8 Human Uncoated ELISA Kit(Invitrogen社)を用いて、製造元プロトコルに従い、IL-8濃度を測定した。各ウェルは、波長450nm及び570nmにおける吸光度を測定し、得られた測定結果より、IL-8濃度を算出した。
【0072】
2-3.コラゲナーゼ産生抑制作用における評価(ウエスタンブロッティング法)
次に、ウエスタンブロッティング法により実施例1及び実施例2のイチゴ葉抽出物のコラゲナーゼ(MMP-1)産生への影響を調べた。
培養プレートの各ウェルの培養液を回収し、マウス抗ヒトMMP-1抗体及びHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体を用いたウエスタンブロッティング法によりコラゲナーゼ(MMP-1)の検出を行った。
【0073】
3.評価結果
3-1.イチゴ葉抽出物のIL-8産生への影響
結果を
図1(a)及び
図1(b)に示す。
図1(a)に示す通り、実施例1のイチゴ葉抽出物を添加することにより、UVA照射によって誘導されたIL-8産生が、濃度依存的に低下することが分かった。また、
図1(b)に示す通り、実施例2のイチゴ葉抽出物を添加した場合も、UVA照射によって誘導されたIL-8産生が、濃度依存的に低下することが分かった。このことから、イチゴ葉抽出物は、IL-8産生を抑制し、ヒト3次元培養表皮に対して炎症抑制作用を示すことが明らかとなった。
【0074】
3-2.イチゴ葉抽出物のコラゲナーゼ産生への影響
結果を
図2(a)及び
図2(b)に示す。
図2(a)に示す通り、実施例1のイチゴ葉抽出物を添加することによって、コラゲナーゼ産生が著しく低下することが確認された。また、
図2(b)に示す通り、実施例2のイチゴ葉抽出物を添加した場合も、コラゲナーゼ産生が著しく低下することが確認された。このことから、イチゴ葉抽出物は、コラゲナーゼ産生を阻害し、コラーゲン分解の発現を阻害することが明らかとなった。
本発明の組成物は、優れたIL-8産生抑制作用及びコラゲナーゼ産生抑制作用を有するため、皮膚のハリや弾力、しわ、保湿等に対して効果がある。また、本発明の組成物は、各種医薬組成物、皮膚外用用組成物、経口用組成物等に好適に使用することができる。