(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147793
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】建築部材及び建築部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 3/292 20060101AFI20231005BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04C3/292
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055507
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】倉田 高志
(72)【発明者】
【氏名】吉松 遼平
(72)【発明者】
【氏名】塩見 拓馬
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA16
2E001GA52
2E001GA63
2E001HB02
2E001HC01
2E001LA04
2E001LA06
2E001LA15
2E163FF03
2E163FF05
2E163FF06
(57)【要約】
【課題】鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供する。
【解決手段】それぞれ貫通孔20hが形成された2つの木材20と、2つの木材20それぞれにより挟まれる板状の鋼材10と、外径が貫通孔20hの内径より大きい中空のコネクタ30であって、貫通孔20hの内部に圧入され、且つ、一方の端部が鋼材10と接する複数の中空のコネクタ30と、コネクタ30の他方の端部に配置される押さえプレート50と、押さえプレート50、コネクタ30及び鋼材10を貫通し、木材20を鋼材10にコネクタ30を介して固定する高力ボルトと、を備え、2つの木材20の間における鋼材10が配置されていない部分に継ぎ材60が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ貫通孔が形成された2つの木材と、
前記2つの木材それぞれにより挟まれる板状の鋼材と、
外径が前記貫通孔の内径より大きい中空のコネクタであって、前記貫通孔の内部に圧入され、且つ、一方の端部が前記鋼材と接する複数の中空のコネクタと、
前記コネクタの他方の端部に配置される押さえプレートと、
前記押さえプレート、前記コネクタ及び前記鋼材を貫通し、前記木材を前記鋼材に前記コネクタを介して固定する高力ボルトと、
を備え、
前記2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられていることを特徴とする、
建築部材。
【請求項2】
前記継ぎ材の板厚は、前記鋼材の板厚以上であることを特徴とする、請求項1に記載の建築部材。
【請求項3】
前記継ぎ材は、前記鋼材に接していることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の建築部材。
【請求項4】
前記継ぎ材は、前記木材の一部であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項5】
前記継ぎ材は取付部材により前記木材に取り付けられ、前記取付部材の少なくとも一部は前記木材の炭化範囲よりも前記鋼材の側に配置されることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項6】
前記取付部材は螺合部材であり、前記木材に噛み込むことを特徴とする、
請求項5に記載の建築部材。
【請求項7】
前記取付部材は、耐火用でない接着剤であることを特徴とする、
請求項5に記載の建築部材。
【請求項8】
前記コネクタ、前記押さえプレート及び前記高力ボルトを木栓により隠すことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項9】
前記木栓の一部は、前記木材の炭化範囲より鋼材の側に配置されることを特徴とする、
請求項8に記載の建築部材。
【請求項10】
請求項5から7のいずれか1項に記載の建築部材の製造方法であって、
前記木材の姿勢に応じて前記継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、
前記木材に前記継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、
前記木材と前記鋼材とを接合する接合工程と、
を備えることを特徴とする、
建築部材の製造方法。
【請求項11】
前記取り付け工程は、前記炭化範囲の内側に前記取付部材を配置することを特徴とする、
請求項10に記載の建築部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築部材及び建築部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、木製部材(木材)の貫通穴より僅かに外形を大きくしたシア部材(コネクタ)を配置し、鋼製部材(鋼材)に当接配置した上で、ボルトにて緊結して鋼製部材と摩擦接合する構造が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、鋼製の芯材と、芯材と平行に積層されたラミナからなる集成材を用いた複合部材において、芯材に対する最外層のラミナに、他の層のラミナよりも強度の高い木材を用いる構造が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4252029号公報
【特許文献2】特開2008-174932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木製部材と鋼製部材からなる複合部材においては、耐火性能の向上の為に火災の発生時に鋼製部材が加熱されることを防ぐことが好ましい。
しかしながら、前記従来の複合部材においては、木製部材と鋼製部材との隙間に熱を持った空気が侵入し、鋼製部材が早期に加熱されることから、耐火性能の向上に課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る建築部材は、それぞれ貫通孔が形成された2つの木材と、前記2つの木材それぞれにより挟まれる板状の鋼材と、外径が前記貫通孔の内径より大きい中空のコネクタであって、前記貫通孔の内部に圧入され、且つ、一方の端部が前記鋼材と接する複数の中空のコネクタと、前記コネクタの他方の端部に配置される押さえプレートと、前記押さえプレート、前記コネクタ及び前記鋼材を貫通し、前記木材を前記鋼材に前記コネクタを介して固定する高力ボルトと、を備え、前記2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられている。これにより、建築部材の外周面において鋼材が露出することを防ぐことができる。また、木材と鋼材との間の隙間を無くすことで、隙間を伝って熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材に熱が伝播しにくい構造とすることができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0008】
また、前記継ぎ材の板厚は、前記鋼材の板厚以上であることを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、継ぎ材の板厚は、鋼材の板厚以上である。これにより、木材と鋼材とを接合する際は、木材によって継ぎ材が厚さ方向の両側面から圧縮される。よって、継ぎ材に発生する反力によって、木材と鋼材との間に隙間が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0010】
また、前記継ぎ材は、前記鋼材に接していることを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、継ぎ材は、鋼材に接している。ここで、木材は鋼材の厚さ方向の両側面に配置されている。このため、継ぎ材が鋼材の幅方向の側面に接することで、鋼材の周囲を包括的に覆うことができる。よって、より鋼材に熱が伝播しにくい構造とすることができる。
【0012】
また、前記継ぎ材は、前記木材の一部であることを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、継ぎ材は木材の一部である。つまり、継ぎ材と木材とは一体に成形された同一部材である。これにより、構成部品を少なくすることができる。よって、材料の歩留まりを向上するとともに、建築部材の組み立てを容易にすることができる。
【0014】
また、前記継ぎ材は取付部材により前記木材に取り付けられ、前記取付部材の少なくとも一部は前記木材の炭化範囲よりも前記鋼材の側に配置されることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、継ぎ材は取付部材により木材に取り付けられる。つまり、継ぎ材は木材と別の部材である。これにより、継ぎ材の寸法管理や、木材と継ぎ材との位置調整を効率的に行うことができる。また、取付部材の一部は木材の炭化範囲よりも鋼材の側に配置される。ここで、炭化範囲とは、火災発生時の木材の外周面における炭化が想定された範囲である。取付部材の一部を木材の炭化範囲よりも鋼材の側に取り付けることで、木材が炭化した場合であっても建築部材から取付部材が脱落することを防ぐことができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0016】
また、前記取付部材は螺合部材であり、前記木材に噛み込むことを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、取付部材は螺合部材であり、木材に噛み込む。つまり、取付部材は、固定された木材及び継ぎ材の内部に位置する。これにより、取付部材によって木材と鋼材との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0018】
また、前記取付部材は、耐火用でない接着剤であることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、取付部材は、耐火用でない接着剤である。ここで、上述のように取付部材の少なくとも一部は炭化範囲より鋼材の側に配置される。このため、耐火用の接着剤を用いなくても、継ぎ材を木材に固定することができる。よって、耐火用の接着剤を用いる場合と比較して費用を抑えることができる。
【0020】
また、前記コネクタ、前記押さえプレート及び前記高力ボルトを木栓により隠すことを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、コネクタ、押さえプレート及び高力ボルトを木栓により隠す。これにより、コネクタ、押さえプレート及び高力ボルトが建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より鋼材に熱が伝播する可能性を低くすることができる。
【0022】
また、前記木栓の一部は、前記木材の炭化範囲より鋼材の側に配置されることを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、木栓の一部は、木材の炭化範囲より鋼材の側に配置される。これにより、炭化範囲が炭化した後においても、木栓の少なくとも一部は炭化しない。よって、木材が炭化した後であっても接合手段が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より耐火性能の向上に寄与することができる。
【0024】
また、本発明に係る建築部材の製造方法は、前記木材の姿勢に応じて前記継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、前記木材に前記継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、前記木材と前記鋼材とを接合する接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、木材の姿勢に応じて継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、木材に継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、木材と鋼材とを接合する接合工程と、を備える。判別工程により、継ぎ材の誤組付けを確実に防ぐことができる。取り付け工程と接合工程とが別の工程である。つまり、予め木材に継ぎ材が配置された状態で接合工程を行う。よって、鋼材と継ぎ材との位置を確実に合わせた状態で木材と鋼材とを接合することで、より確実に木材及び継ぎ材と鋼材との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0026】
また、前記取り付け工程は、前記炭化範囲の内側に前記取付部材を配置することを特徴としてもよい。
【0027】
この発明によれば、取り付け工程は、炭化範囲の内側に取付部材を配置する。これにより、木材が炭化した後においても取付部材の機能を維持することができる。よって、より確実に鋼材に熱が伝播することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】本発明に係る建築部材の第一例における、
図1に示すA-A方向の断面図である。
【
図4】
図2に示す建築部材における構成の第一態様である。
【
図5】
図2に示す建築部材における構成の第二態様である。
【
図6】本発明に係る建築部材の第二例における、
図1に示すA-A方向の断面図である。
【
図7】本発明に係る建築部材の第三例における、
図1に示すA-A方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る建築部材を説明する。本発明に係る建築部材は、例えば、体育館、倉庫といった建物において屋根のトラスとして用いられる。
本実施形態においては、第1建築部材100、第2建築部材200、第3建築部材300について説明する。以下、これらを区別しない場合に、建築部材と呼称する。
【0031】
(第1建築部材100について)
まず、第1建築部材100について説明する。
図1に示すように、第1建築部材100は、鋼材10と、木材20と、コネクタ30と、接合手段40と、押さえプレート50と、継ぎ材60と、木栓70と、を備える。
鋼材10は、鋼製の板状部材である。以下、建築部材の各構成の説明において、方向を示す際に鋼材10を基準として厚さ方向D1、幅方向D2、長手方向D3、と呼称することがある。特に厚さ方向D1及び幅方向D2について、鋼材10に向かう側を内側、鋼材10から離れる側を外側と呼称する。
【0032】
鋼材10は、建築部材の主構造となり、強度を担保する。鋼材10は、例えば、帯状鋼板から成形される。鋼材10は、例えば、厚さ方向D1の寸法(板厚)は6mm~28mm、幅方向D2の寸法は130mm~575mm、長手方向D3の寸法は1500mm~7500mmの範囲が好適に用いられる。上記以外の寸法であっても、必要に応じ適宜寸法を決定してもよい。また、鋼材10の厚さ方向D1には、接合手段40が貫通するためのボルト孔11が設けられている。ボルト孔11の大きさは、木材20に設けられるコネクタ30と接する摩擦面を確保することを前提に、接合手段40が貫通するための必要最小限の大きさであってもよいし、バラツキを吸収するために大きめに設定してもよい。
【0033】
木材20は、鋼材10に対し2つ設けられる。具体的には、鋼材10の厚さ方向D1の両側面に一対に設けられる。つまり、鋼材10は、2つの木材20それぞれにより挟まれる。これにより、木材20は鋼材10の面外方向(弱軸方向)の剛性を高める。加えて、木材20は、鋼材10が外側に露出することを防ぐ。これにより、火災発生時において直接に鋼材10が加熱されることを防ぐ。また、火災発生時には木材20が先に炭化(燃焼)することで、鋼材10への入熱を遅らせる。これにより、鋼材10の座屈応力の低下を遅らせる。
木材20には、例えば、集成材が好適に用いられる。集成材には、例えば、カラマツ、ベイマツが好適に用いられる。あるいはこれに限らず、密度が0.4g/cm3以上であるものが好適に用いられる。また、木材20には不燃薬液が含侵されていてもよい。
【0034】
以下、
図2に示すように、前記炭化について、要求される耐火条件で建築部材を放置した場合に木材20が炭化する領域を、炭化範囲CAと呼称する。炭化範囲CAは、木材20の外周面から内側へ向けて位置する。
図2に示す炭化範囲CAは、特に炭化範囲CAと炭化範囲CAでない部位との境界を示す。
また、木材20は、建築部材の外観について意匠性を向上することにも寄与する。
【0035】
木材20には、厚さ方向D1に貫通する貫通孔20h及び座繰穴20Hが形成されている。
図2に示すように、貫通孔20h及び座繰穴20Hは、木材20における鋼材10に接する面から、厚さ方向D1の外側に向けて設けられる。
貫通孔20hには、コネクタ30が配置される。貫通孔20hは、コネクタ30の外径よりもわずかに小さい内径を備える。貫通孔20hの内径の大きさは、コネクタ30を圧入可能な程度とする。貫通孔20hの一方の端部は、木材20における鋼材10に接する面に位置する。貫通孔20hの他方の端部は、座繰穴20Hの一方の端部と繋がっている。
【0036】
座繰穴20Hは、一方の端部が貫通孔20hの他方の端部と繋がり、他方の端部が木材20における厚さ方向D1の外側の面に位置する。座繰穴20Hには、押さえプレート50が配置される。座繰穴20Hの内径は押さえプレート50の外径よりも大径である。
【0037】
コネクタ30は、中空の部材である。より具体的には、コネクタ30は、筒状の部材である。コネクタ30は、貫通孔20hの内部に複数配置される。コネクタ30は、木材20の長手方向D3において、端部周辺に設けられていてもよいし、間隔をあけて複数設けられていてもよい。木材20の貫通孔20hや、鋼材10のボルト孔11についても同様とする。例えば、コネクタ30は、高さ30mm~50mm、外径50mm、内径22mmのものが好適に用いられる。本実施形態において、コネクタ30の外径は、貫通孔20hの内径よりも大きい。コネクタ30の高さは、厚さ方向D1の寸法である。また、コネクタ30の高さは、木材20の貫通孔20hの軸方向の寸法に合わせて適宜決定する。コネクタ30は、前記筒状の側面が木材20に接し、一方の端面が鋼材10に接し、他方の端面が押さえプレート50に接する。コネクタ30を木材20の貫通孔20hの内部に配置する際は、圧入が好適に用いられる。これにより、木材20とコネクタ30との間にガタが生じることを確実に防止する。本実施形態において、コネクタ30は円筒形であるとする。前記円筒形の内部には、接合手段40が配置される。接合手段40を配置する領域を確保できれば、コネクタ30は、円筒形でなくてもよく、多角筒状であってもよい。コネクタ30にはSS400が好適に用いられる。
【0038】
コネクタ30を木材20の貫通孔20hの内部に配置するとき、コネクタ30の一方の端部が鋼材10と接するとともに、他方の端部が貫通孔20hから突出する。また、コネクタ30の一方の端部は、木材20と面一となるように配置される。これにより、木材20を厚さ方向D1の側面に配置したとき、コネクタ30は、筒状の一方の端部が鋼材10と接する。コネクタ30と鋼材10との接する側面を摩擦面12と呼称する。摩擦面12のすべり係数は、0.4以上であるとする。
【0039】
コネクタ30における押さえプレート50の側の端部は、面取りされている。以下、当該部位を面取部31と呼称する。コネクタ30に面取部31が設けられていない場合は、押さえプレート50との接触面積を確保することができるが、木材20にコネクタ30を挿入する際にコネクタ30の端縁が木材20の貫通孔20hの内部に干渉して貫通孔20hの内周面を損傷することがある。面取部31を設けることによりこの問題を回避する。
【0040】
図3に示すように、面取部31は、少なくとも一部が貫通孔20hの内部に位置する。言い換えれば、その他の部位は木材20の貫通孔20hから突出している。これにより、
図3に示すように、押さえプレート50におけるコネクタ30と接する側の面である第1面B1と、貫通孔20hの端面(木材20の表面)である第2面B2との間に空隙が形成される。以下において、前記空隙を非伝達領域Bと呼称する。
【0041】
図3に示すように、非伝達領域Bは、木材20の表面である第2面B2と、押さえプレート50の表面におけるコネクタ30と接する側の面である第1面B1との間の全面にわたって設けられる。本実施形態において、非伝達領域Bは、上述のように木材20の貫通孔20hからコネクタ30の端部が突出し、前記端部と押さえプレート50とが接することによって構成される。これにより、木材20と抑えプレート50とが干渉して木材20が損傷することを防ぐ。非伝達領域Bにおいて、第1面B1と第2面B2との間の寸法の大きさは、厚さ方向D1において0.5mm以上かつ3mm以下であるとする。非伝達領域Bには、木材20の損傷回避をより確実に担保するために、ゴム、スポンジ等の弾性体をはじめとする緩衝部材Cを配置してもよい。緩衝部材Cは、非伝達領域Bの全部に配置してもよい。緩衝部材Cは、非伝達領域Bの一部のみに配置されてもよい。
【0042】
接合手段40は、鋼材10およびコネクタ30を厚さ方向D1に貫通し、鋼材10とコネクタ30とを厚さ方向D1に挟んで木材20と鋼材10とを固定する。接合手段40は、高力ボルト41と、ナット42と、を備える。
高力ボルト41は、押さえプレート50、コネクタ30の筒状の内部及び鋼材10のボルト孔11を貫通するように配置される。高力ボルト41は、木材20を、鋼材10にコネクタ30を介して固定する。ナット42は、高力ボルト41を締め付ける。これにより、木材20と鋼材10とを固定し一体化する。このとき、高力ボルトである高力ボルト41とナット42との締結をトルク管理することが好ましい。
図1に示すように、接合手段40は、長手方向D3において間隔をあけて複数設けられる。
【0043】
押さえプレート50は、コネクタ30の他方の端部に配置される。具体的には、押さえプレート50は、厚さ方向D1においてコネクタ30の他方の端部と接合手段40との間に配置される。押さえプレート50は、コネクタ30の端面と接することで、接合手段40の軸力をコネクタ30の端面全体で受けることができるようにする。押さえプレート50の外径は、少なくともコネクタ30の端面の外径よりも大きく、かつ座繰穴20Hの内径よりも小さく設定する。押さえプレート50の厚さは、4.5mmのものが好適に用いられる。
【0044】
継ぎ材60は、一対に設けられた2つの木材20の間における鋼材10が位置しない部位に配置される。第1建築部材100において、鋼材10が位置しない部位とは、鋼材10における幅方向D2の両側面において木材20同士の間に生じる隙間をいう。この部位に継ぎ材60を設けることで、第1建築部材100の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0045】
継ぎ材60の厚さ方向D1の寸法(板厚)は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法(板厚)以上である。このような寸法とすることで、木材20と鋼材10とを接合手段40によって締め付けると、木材20によって継ぎ材60が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより継ぎ材60に発生する反力によって、木材20と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐ。
【0046】
図2に示すように、継ぎ材60は鋼材10に接している。具体的には、継ぎ材60は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、木材20と継ぎ材60とによって鋼材10の周囲を包括的に覆う。これにより木材20と鋼材10との間の隙間を無くすことで、隙間に熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材10に熱が伝播しにくい構造とする。
【0047】
上述のように継ぎ材60を鋼材10に取り付けた際、木材20の幅方向D2の側面において木材20と継ぎ材60との境目を滑らかにするために、次のような方法を執ってもよい。すなわち、まず、継ぎ材60を、木材20に取り付けたときに継ぎ材60の幅方向D2における外側の端部が木材20の表面から突出するような形状とする。このような形状の継ぎ材60を木材20に取り付けた後に継ぎ材60を削ることで、木材20の表面と面一になるようにしてもよい。
【0048】
継ぎ材60は、取付部材61によって木材20に取り付けられる。
図2に示すように、取付部材61は、例えば、ビスをはじめとする螺合部材である。つまり、取付部材61を木材20に螺合して噛み込むように取り付ける。
あるいは、取付部材61は接着剤であってもよい。つまり、継ぎ材60と木材20との間に接着剤を塗布して圧着することで取り付けてもよい。前記圧着は、木材20と鋼材10とを接合する前に予め行ってもよいし、木材20と鋼材10とを接合手段40によって締め付ける際に同時に行ってもよい。
【0049】
上述のように、継ぎ材60は取付部材61により木材20に取り付けられる。つまり、第1建築部材100においては、木材20と継ぎ材60とは別の部材である。このとき、取付部材61の少なくとも一部は木材20の炭化範囲CAよりも鋼材10の側に配置される。具体的には、以下の通りである。
【0050】
すなわち、取付部材61が螺合部材である場合は、
図2に示すように、複数設けられた取付部材61の少なくとも一部は炭化範囲CAよりも鋼材10の側に配置する。
取付部材61が接着剤の場合は、少なくとも炭化範囲CAよりも鋼材10の側に取付部材61を塗布する。
【0051】
このような取り付け方とすることで、火災等によって木材20の炭化範囲CAが炭化した後においても取付部材61が機能を失わないようにする。また、取付部材61が特別な耐火性能を有しなくても、継ぎ材60を木材20に取り付ける機能を担保できるようにする。このため、取付部材61が接着剤の場合は、費用等の観点から耐火用でない接着剤が好適に用いられる。例えば、コニシ株式会社製のボンド(登録商標)木工用が好適に用いられる。これに限らず、より確実に耐火性能を確保するために、耐火用の接着剤を用いてもよい。耐火用の接着剤には、例えば、吉野石膏株式会社製のトラボンド(登録商標)が好適に用いられる。
【0052】
継ぎ材60を木材20に取り付ける際は、例えば
図4に示すように、片方の木材20に対して鋼材10の幅方向D2の両側の継ぎ材60を取り付ける。このような取り付けは、第1建築部材100の製作の際、厚さ方向D1の側面を上方に向けて作業を行う場合に好適である。
【0053】
あるいは
図5に示すように、鋼材10の幅方向D2において一方の側の継ぎ材60を一方の木材20に、他方の側の継ぎ材60を他方の木材20に取り付けるようにしてもよい。このような取り付けは、第1建築部材100の製作の際、継ぎ材60を鋼材10の幅方向D2の側面に引っ掛けるようにして木材20を鋼材10に対して仮配置できることから、幅方向D2の側面を上方に向けて作業を行う場合に好適である。
【0054】
木栓70は、接合手段40を隠すために用いられる。木栓70は、木材20に形成された座繰穴20Hに配置される。木栓70は、座繰穴20Hに圧入されてもよいし、接着剤によって固定されてもよい。これにより、接合手段40が建築部材の外周面に露出することを防ぐ。このことで、より鋼材10に熱が伝播する可能性を低くする。
木栓70の一部は、木材20の炭化範囲の厚さ方向D1の寸法以上である。このような寸法とすることで、火災等によって木材20の炭化範囲CAが炭化した後においても上述のように接合手段40を隠す役割を担保する。
【0055】
木栓70を木材20に取り付ける際、木栓70と木材20との境目を滑らかにするために、次のような方法を執ってもよい。すなわち、まず、木栓70を、木材20に取り付けたときに木栓70の厚さ方向D1における外側の端部が木材20の表面から突出するような形状とする。このような形状の木栓70を木材20に取り付けた後に木栓70を削ることで、木材20の表面と面一になるようにしてもよい。
【0056】
(第2建築部材200)
次に、
図6に示す第2建築部材200について説明する。なお、第2建築部材200においては、第1建築部材100における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第2建築部材200は、第1建築部材100と比較して、木材20に代えて第2木材220を備える点と、継ぎ材60を備えない点とで相違し、その他の構成は同じである。
【0057】
第2木材220は、鋼材10の厚さ方向D1の両側面に一対に設けられる。第2木材220は、基本的な構造は木材20と同じであるが、幅方向D2の両端部に第2継ぎ材260を備える点で木材20と相違する。第2継ぎ材260は、第2木材220の幅方向D2の両端において、鋼材10の厚さ方向D1の側面に接する側の側面から厚さ方向D1の内側に向けて突出した部位である。第2継ぎ材260における前記突出の量は、少なくとも鋼材10の厚さ方向D1の寸法の半分である。このような形状とすることで、接合手段40により第2木材220を鋼材10に接合した時、第2継ぎ材260によって鋼材10の幅方向D2の両側面を覆う。すなわち、第2建築部材200の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0058】
あるいは、前記突出の量は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法の半分以上であってもよい。このような寸法とすることで、第2木材220と鋼材10とを接合手段40によって締め付けると、第2継ぎ材260が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより第2継ぎ材260に発生する反力によって、第2木材220と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐようにしてもよい。
また、
図6に示すように、第2継ぎ材260は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、第2木材220と鋼材10との間の隙間を無くす。
【0059】
このように、第2継ぎ材260は、第1建築部材100の継ぎ材60と同じ役割を有する。第2継ぎ材260(継ぎ材)は、第2木材220(木材)の一部である。つまり、第2継ぎ材260は第2木材220と一体に形成された同一部材である。
また、第2継ぎ材260同士の接触面には、接着剤又は螺合部材を配置してより確実に隙間をなくすようにしてもよい。また、第2継ぎ材260同士の境目を滑らかにするために、第2木材220と鋼材10とを接合した後、前記境目を切削してもよい。
【0060】
(第3建築部材300)
次に、
図7に示す第3建築部材300について説明する。なお、第3建築部材300においては、第1建築部材100における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第3建築部材300は、第1建築部材100と比較して、木材20と第3木材320とを備える点と、継ぎ材60を備えない点とで相違する。
【0061】
第3建築部材300においては、同形状の木材20が一対に設けられず、鋼材10の厚さ方向D1の一方の側面に木材20が設けられ、他方の側面に第3木材320が設けられる。
第3木材320は、第3木材320は、基本的な構造は木材20と同じであるが、幅方向D2の両端部に第3継ぎ材360を備える点で木材20と相違する。第3継ぎ材360は、第3木材320の幅方向D2の両端において、鋼材10の厚さ方向D1の側面に接する側の側面から厚さ方向D1の内側に向けて突出した部位である。第3継ぎ材360における前記突出の量は、少なくとも鋼材10の厚さ方向D1の寸法と等しい。このような形状とすることで、接合手段40により木材20及び第3木材320を鋼材10に接合した時、第3継ぎ材360によって鋼材10の幅方向D2の両側面を覆う。すなわち、第3建築部材300の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0062】
あるいは、前記突出の量は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法以上であってもよい。このような寸法とすることで、木材20及び第3木材320と鋼材10とを接合手段40によって締め付けると、第3継ぎ材360が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより第3継ぎ材360に発生する反力によって、木材20及び第3木材320と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐようにしてもよい。
また、
図7に示すように、第3継ぎ材360は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、第3木材320と鋼材10との間の隙間を無くす。
【0063】
このように、第3継ぎ材360は、第1建築部材100の継ぎ材60と同じ役割を有する。第3継ぎ材360(継ぎ材)は、第3木材320(木材)の一部である。つまり、第3継ぎ材360は第3木材320と一体に形成された同一部材である。
また、木材20と第3継ぎ材360との接触面には、接着剤又は螺合部材を配置してより確実に隙間をなくすようにしてもよい。また、木材20と第3継ぎ材360との境目を滑らかにするために、木材20及び第3木材320と鋼材10とを接合した後、前記境目を切削してもよい。
【0064】
(建築部材の製造方法)
次に、本実施形態に係る建築部材の製造方法を説明する。以下において、木材20、第2木材220、第3木材320を区別しない場合には、木材20と記載する。
本実施形態に係る製造方法は、第1工程と、第2工程と、接合工程と、を備える。
第1工程は、木材20にコネクタ30を配置する工程である。具体的には、第1工程は、面取り固定と、仮置き工程と、圧入工程と、突出量確認工程と、を備える。
【0065】
面取り工程において、コネクタ30の面取りを行う。このとき、コネクタ30の面取りは、押さえプレート50の側の端部にのみ行う。
仮置き工程において、コネクタ30を木材20に又は第2木材220、あるいは第3木材320に仮置きする。コネクタ30を貫通孔20hに圧入する際は、
図8に示すように、木材20における鋼材10に面する側から挿入するものとする。また、貫通孔20hの開口に対して、コネクタ30の面取部31が形成された側から挿入する。これにより、コネクタ30が木材20に挿入された後、面取部31は、木材20における鋼材10に面しない側に位置する。これによりコネクタ30の端部が貫通孔20hの内周面に干渉して貫通孔20hの内周面が損傷することを防ぐことに加え、押さえプレート50とコネクタ30の面取り部との位置関係が上述の構成となることを担保する。
【0066】
圧入工程において、コネクタ30を木材20に圧入機で圧入する。このとき、コネクタ30の筒状の中心軸と木材20の貫通孔20hの中心軸とが常に平行となることに留意する。
突出量確認工程において、コネクタ30の木材20の表面からの突出量を確認する。これにより、コネクタ30の端部と木材20の表面との位置関係により、押さえプレート50が配置された時に非伝達領域Bが形成されることを担保する。
【0067】
上述の第1工程の後、第2工程を行う。第2工程は、木材20に継ぎ材60を取り付ける工程である。第3継ぎ材360が一体に形成された第2木材220、及び第3継ぎ材360が一体に形成された第3木材320については、この工程を省略する。
第2工程は、判別工程と、取り付け工程と、を備える。
判別工程は、木材20の姿勢に応じて継ぎ材60の取り付け場所を判別する工程である。例えば、まず、カメラ等によって木材20の貫通孔20hあるいは座繰穴20Hの位置を把握して、木材20の姿勢を判断する。次に、木材20における表面に貫通孔20hが位置している面を判別して、その面の幅方向D2の両端を継ぎ材60の取り付け場所と判別する。
【0068】
取り付け工程は、木材20に継ぎ材60を取り付ける。具体的には、判別工程で判別した取り付け場所に、取付部材61によって継ぎ材60を取り付ける。このとき、上述のように炭化範囲の内側に取付部材61を配置する。これにより、木材20が炭化した後においても取付部材61が機能を失わないようにする。
【0069】
接合工程は、木材20と鋼材10とを接合する工程である。具体的には、第1建築部材100においては木材20同士を、第2建築部材200においては第2木材220同士を、第3建築部材300においては木材20と第3木材320とを、それぞれ接合手段40の高力ボルト41及びナット42とを締結して接合する工程である。
【0070】
接合工程において、コネクタ30が圧入された木材20と鋼材10と接合手段40で締め付ける。接合工程は、接合手段40の締結力を所定のトルク量で管理する第一次締結工程と、接合手段40の締め付け量を所定の回転角度で管理する第二次締結工程と、を含む。第一次締結工程によって接合手段40を所定のトルクにより締め付けることで、接合手段40に負荷する軸力を管理する。第二次締結工程によって締付量を管理する。
【0071】
上記の第一次締結工程と第二次締結工程による、建築部材における品質管理の具体例は、下記のようになる。すなわち、まず、コネクタ30を介して木材20を貫通した接合手段40の高力ボルト41の先端にナット42を取り付け、所定の締結トルクにより一次締めを行う(第一次締結工程)。これにより、建築部材の量産工程において接合手段40に負荷される軸力を一定とする。次に、所定の回転角により本締めを行う(第二次締結工程)。所定の回転角は、例えば120°である。これにより、建築部材において設計上必要な軸力を確保する。上記工程により、建築部材を製造する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る建築部材によれば、2つの木材20の間における鋼材10が配置されていない部分に継ぎ材60が設けられている。これにより、建築部材の外周面において鋼材10が露出することを防ぐことができる。また、木材20と鋼材10との間の隙間を無くすことで、隙間を伝って熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材10に熱が伝播しにくい構造とすることができる。よって、耐火性能の向上に寄与
することができる。
【0073】
また、継ぎ材60の板厚は、鋼材10の板厚以上である。これにより、木材20と鋼材10とを接合する際は、木材20によって継ぎ材60が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。よって、継ぎ材60に発生する反力によって、木材20と鋼材10との間に隙間が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0074】
また、継ぎ材60は、鋼材10に接している。ここで、木材20は鋼材10の厚さ方向D1の両側面に配置されている。このため、継ぎ材60が鋼材10の幅方向D2の側面に接することで、鋼材10の周囲を包括的に覆うことができる。よって、より鋼材10に熱が伝播しにくい構造とすることができる。
【0075】
また、継ぎ材60は木材20の一部である。つまり、継ぎ材60と木材20とは一体に成形された同一部材である。これにより、構成部品を少なくすることができる。よって、材料の歩留まりを向上するとともに、建築部材の組み立てを容易にすることができる。
【0076】
また、継ぎ材60は取付部材61により木材20に取り付けられる。つまり、継ぎ材60は木材20と別の部材である。これにより、継ぎ材60の寸法管理や、木材20と継ぎ材60との位置調整を効率的に行うことができる。また、取付部材61の一部は木材20の炭化範囲CAよりも鋼材10の側に配置される。ここで、炭化範囲CAとは、火災発生時の木材20の外周面における炭化が想定された範囲である。取付部材61の一部を木材20の炭化範囲CAよりも鋼材10の側に取り付けることで、木材20が炭化した場合であっても建築部材から取付部材61が脱落することを防ぐことができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0077】
また、取付部材61は螺合部材であり、木材20に噛み込む。つまり、取付部材61は、固定された木材20及び継ぎ材60の内部に位置する。これにより、取付部材61によって木材20と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0078】
また、取付部材61は、耐火用でない接着剤である。ここで、上述のように取付部材61の少なくとも一部は炭化範囲CAより鋼材10の側に配置される。このため、耐火用の接着剤を用いなくても、継ぎ材60を木材20に固定することができる。よって、耐火用の接着剤を用いる場合と比較して費用を抑えることができる。
【0079】
また、コネクタ30、押さえプレート50及び高力ボルトを木栓70により隠す。これにより、コネクタ30、押さえプレート50及び高力ボルトが建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より鋼材10に熱が伝播する可能性を低くすることができる。
【0080】
また、木栓70の一部は、木材20の炭化範囲CAより鋼材10の側に配置される。これにより、炭化範囲CAが炭化した後においても、木栓70の少なくとも一部は炭化しない。よって、木材20が炭化した後であっても接合手段40が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より耐火性能の向上に寄与することができる。
【0081】
また、木材20の姿勢に応じて継ぎ材60の取り付け場所を判別する判別工程と、木材20に継ぎ材60を取り付ける取り付け工程と、木材20と鋼材10とを接合する接合工程と、を備える。判別工程により、継ぎ材60の誤組付けを確実に防ぐことができる。取り付け工程と接合工程とが別の工程である。つまり、予め木材20に継ぎ材60が配置された状態で接合工程を行う。よって、鋼材10と継ぎ材60との位置を確実に合わせた状態で木材20と鋼材10とを接合することで、より確実に木材20及び継ぎ材60と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0082】
また、取り付け工程は、炭化範囲CAの内側に取付部材61を配置する。これにより、木材20が炭化した後においても取付部材61の機能を維持することができる。よって、より確実に鋼材10に熱が伝播することを防ぐことができる。
【0083】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第3継ぎ材360は第3木材320の幅方向D2の両端に設けられるとして説明したが、これに限らない。例えば、第3継ぎ材360に相当する形状が、木材20の幅方向D2の一方の端部のみに形成されてもよい。このような形状を有する木材20を一対に設けることで、鋼材10の厚さ方向D1の側面に取り付けられる木材20を同一の形状としてもよい。
【0084】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 鋼材
20 木材
20h 貫通孔
30 コネクタ
40 接合手段
50 プレート
60 継ぎ材
61 取付部材
70 木栓
CA 炭化範囲
D1 方向
D2 幅方向