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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147795
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】建築部材及び建築部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/292 20060101AFI20231005BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04C3/292
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055509
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】倉田 高志
(72)【発明者】
【氏名】吉松 遼平
(72)【発明者】
【氏名】塩見 拓馬
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA16
2E001GA52
2E001GA62
2E001HB02
2E001HC01
2E001LA04
2E001LA06
2E001LA15
2E163FF03
2E163FF05
2E163FF06
(57)【要約】
【課題】火災による影響が発生することを遅らせることができ、かつ鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供する。
【解決手段】それぞれ貫通孔20hが形成された2つの木材20と、2つの木材20それぞれにより挟まれる板状の鋼材10と、木材20と鋼材10とを貫通し、木材20を鋼材10に固定する接合手段30と、を備え、2つの木材20の間における鋼材10が配置されていない部分に継ぎ材50が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ貫通孔が形成された2つの木材と、
前記2つの木材それぞれにより挟まれる板状の鋼材と、
前記木材と前記鋼材とを貫通し、前記木材を前記鋼材に固定する接合手段と、を備え、
前記2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられていることを特徴とする、
建築部材。
【請求項2】
前記継ぎ材の板厚は、前記鋼材の板厚以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の建築部材。
【請求項3】
前記継ぎ材は、前記鋼材に接していることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の建築部材。
【請求項4】
前記継ぎ材は、前記木材の一部であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項5】
前記継ぎ材は取付部材により前記木材に取り付けられ、前記取付部材の少なくとも一部は前記木材の炭化範囲よりも前記鋼材の側に配置されることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項6】
前記取付部材は螺合部材であり、前記木材に噛み込むことを特徴とする、
請求項5に記載の建築部材。
【請求項7】
前記取付部材は、耐火用でない接着剤であることを特徴とする、
請求項5に記載の建築部材。
【請求項8】
前記接合手段を木栓により隠すことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の建築部材。
【請求項9】
前記木栓の一部は、前記木材の炭化範囲の厚さ方向の寸法以上であることを特徴とする、
請求項8に記載の建築部材。
【請求項10】
請求項5から7のいずれか1項に記載の建築部材の製造方法であって、
前記木材の姿勢に応じて前記継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、
前記木材に前記継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、
前記木材と前記鋼材とを接合する接合工程と、
を備えることを特徴とする、
建築部材の製造方法。
【請求項11】
前記取り付け工程は、前記炭化範囲の内側に前記取付部材を配置することを特徴とする、
請求項10に記載の建築部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築部材及び建築部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、木製部材(木材)の貫通穴より僅かに外形を大きくしたシア部材(コネクタ)を配置し、鋼製部材(鋼材)に当接配置した上で、ボルトにて緊結して鋼製部材と摩擦接合する構造が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、鋼製の芯材と、芯材と平行に積層されたラミナからなる集成材を用いた複合部材において、芯材に対する最外層のラミナに、他の層のラミナよりも強度の高い木材を用いる構造が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4252029号公報
【特許文献2】特開2008-174932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木製部材と鋼製部材からなる複合部材においては、耐火性能の向上の為に火災の発生時に鋼製部材が加熱されることを防ぐことが好ましい。
しかしながら、前記従来の複合部材においては、木製部材と鋼製部材との隙間に熱を持った空気が侵入し、鋼製部材が早期に加熱されることから、耐火性能の向上に課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、火災による影響が発生することを遅らせることができ、かつ鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る建築部材は、それぞれ貫通孔が形成された2つの木材と、前記2つの木材それぞれにより挟まれる板状の鋼材と、前記木材と前記鋼材とを貫通し、前記木材を前記鋼材に固定する接合手段と、を備え、前記2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、2つの木材の間における鋼材が配置されていない部分に継ぎ材が設けられている。これにより、建築部材の外周面において鋼材が露出することを防ぐことができる。また、木材と鋼材との間の隙間を無くすことで、隙間を伝って熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材に熱が伝播しにくい構造とすることができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0008】
また、前記継ぎ材の板厚は、前記鋼材の板厚以上であることを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、継ぎ材の板厚は、鋼材の板厚以上である。これにより、木材と鋼材とを接合する際は、木材によって継ぎ材が厚さ方向の両側面から圧縮される。よって、継ぎ材に発生する反力によって、木材と鋼材との間に隙間が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0010】
また、前記継ぎ材は、前記鋼材に接していることを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、継ぎ材は、鋼材に接している。ここで、木材は鋼材の厚さ方向の両側面に配置されている。このため、継ぎ材が鋼材の幅方向の側面に接することで、鋼材の周囲を包括的に覆うことができる。よって、より鋼材に熱が伝播しにくい構造とすることができる。
【0012】
また、前記継ぎ材は、前記木材の一部であることを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、継ぎ材は木材の一部である。つまり、継ぎ材と木材とは一体に成形された同一部材である。これにより、構成部品を少なくすることができる。よって、材料の歩留まりを向上するとともに、建築部材の組み立てを容易にすることができる。
【0014】
また、前記継ぎ材は取付部材により前記木材に取り付けられ、前記取付部材の少なくとも一部は前記木材の炭化範囲よりも前記鋼材の側に配置されることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、継ぎ材は取付部材により木材に取り付けられる。つまり、継ぎ材は木材と別の部材である。これにより、継ぎ材の寸法管理や、木材と継ぎ材との位置調整を効率的に行うことができる。また、取付部材の一部は木材の炭化範囲よりも鋼材の側に配置される。ここで、炭化範囲とは、火災発生時の木材の外周面における炭化が想定された範囲である。取付部材の一部を木材の炭化範囲よりも鋼材の側に取り付けることで、木材が炭化した場合であっても建築部材から取付部材が脱落することを防ぐことができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0016】
また、前記取付部材は螺合部材であり、前記木材に噛み込むことを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、取付部材は螺合部材であり、木材に噛み込む。つまり、取付部材は、固定された木材及び継ぎ材の内部に位置する。これにより、取付部材によって木材と鋼材との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0018】
また、前記取付部材は、耐火用でない接着剤であることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、取付部材は、耐火用でない接着剤である。ここで、上述のように取付部材の少なくとも一部は炭化範囲より鋼材の側に配置される。このため、耐火用の接着剤を用いなくても、継ぎ材を木材に固定することができる。よって、耐火用の接着剤を用いる場合と比較して費用を抑えることができる。
【0020】
また、前記接合手段を木栓により隠すことを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、接合手段を木栓により隠す。これにより、接合手段が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より鋼材に熱が伝播する可能性を低くすることができる。
【0022】
また、前記木栓の一部は、前記木材の炭化範囲の厚さ方向の寸法以上であることを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、木栓の一部は、木材の炭化範囲の厚さ方向の寸法以上である。これにより、炭化範囲が炭化した後においても、木栓の少なくとも一部は炭化しない。よって、木材が炭化した後であっても接合手段が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より耐火性能の向上に寄与することができる。
【0024】
また、本発明に係る建築部材の製造方法は、前記木材の姿勢に応じて前記継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、前記木材に前記継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、
前記木材と前記鋼材とを接合する接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、木材の姿勢に応じて継ぎ材の取り付け場所を判別する判別工程と、木材に継ぎ材を取り付ける取り付け工程と、木材と鋼材とを接合する接合工程と、を備える。判別工程により、継ぎ材の誤組付けを確実に防ぐことができる。取り付け工程と接合工程とが別の工程である。つまり、予め木材に継ぎ材が配置された状態で接合工程を行う。よって、鋼材と継ぎ材との位置を確実に合わせた状態で木材と鋼材とを接合することで、より確実に木材及び継ぎ材と鋼材との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0026】
また、前記取り付け工程は、前記炭化範囲の内側に前記取付部材を配置することを特徴としてもよい。
【0027】
この発明によれば、取り付け工程は、炭化範囲の内側に取付部材を配置する。これにより、木材が炭化した後においても取付部材の機能を維持することができる。よって、より確実に鋼材に熱が伝播することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、火災による影響が発生することを遅らせることができ、かつ鋼材に熱が伝播しにくい構造を備える建築部材及び建築部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る建築部材の全体図である。
図2】本発明に係る建築部材の第一例における、図1に示すA-A方向の断面図である。
図3図2に示す建築部材における構成の第一態様である。
図4図2に示す建築部材における構成の第二態様である。
図5】本発明に係る建築部材の第二例における、図1に示すA-A方向の断面図である。
図6】本発明に係る建築部材の第三例における、図1に示すA-A方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る建築部材を説明する。本発明に係る建築部材は、例えば、体育館、倉庫といった建物において屋根のトラスとして用いられる。
本実施形態においては、第1建築部材100、第2建築部材200、第3建築部材300について説明する。以下、これらを区別しない場合に、建築部材と呼称する。
【0031】
(第1建築部材100について)
まず、第1建築部材100について説明する。図1に示すように、第1建築部材100は、鋼材10と、木材20と、接合手段30と、押さえプレート40と、継ぎ材50と、木栓60と、を備える。
鋼材10は、鋼製の板状部材である。以下、建築部材の各構成の説明において、方向を示す際に鋼材10を基準として厚さ方向D1、幅方向D2、長手方向D3、と呼称することがある。特に厚さ方向D1及び幅方向D2について、鋼材10に向かう側を内側、鋼材10から離れる側を外側と呼称する。
【0032】
鋼材10は、建築部材の主構造となり、強度を担保する。鋼材10は、例えば、帯状鋼板から成形される。鋼材10は、例えば、厚さ方向D1の寸法(板厚)は6mm~28mm、幅方向D2の寸法は130mm~575mm、長手方向D3の寸法は1500mm~7500mmの範囲が好適に用いられる。上記以外の寸法であっても、必要に応じ適宜寸法を決定してもよい。また、鋼材10の厚さ方向D1には、接合手段30が貫通するためのボルト孔11が設けられている。ボルト孔11の大きさは、接合手段30が貫通するための必要最小限の大きさであってもよいし、バラツキを吸収するために大きめに設定してもよい。
【0033】
木材20は、鋼材10に対し2つ設けられる。具体的には、鋼材10の厚さ方向D1の両側面に一対に設けられる。つまり、鋼材10は、2つの木材20それぞれにより挟まれる。これにより、木材20は鋼材10の面外方向(弱軸方向)の剛性を高める。加えて、木材20は、鋼材10が外側に露出することを防ぐ。これにより、火災発生時において直接に鋼材10が加熱されることを防ぐ。また、火災発生時には木材20が先に炭化(燃焼)することで、鋼材10への入熱を遅らせる。これにより、鋼材10の座屈応力の低下を遅らせる。
木材20には、例えば、集成材が好適に用いられる。集成材には、例えば、カラマツ、ベイマツが好適に用いられる。あるいはこれに限らず、密度が0.4g/cm以上であるものが好適に用いられる。また、木材20には不燃薬液が含侵されている。
【0034】
以下、図2に示すように、前記炭化について、要求される耐火条件で建築部材を放置した場合に木材20が炭化する領域を、炭化範囲CAと呼称する。炭化範囲CAは、木材20の外周面から内側へ向けて位置する。図2に示す炭化範囲CAは、特に炭化範囲CAと炭化範囲CAでない部位との境界を示す。
また、木材20は、建築部材の外観について意匠性を向上することにも寄与する。
【0035】
木材20には、厚さ方向D1に貫通する貫通孔20h及び座繰穴20Hが形成されている。貫通孔20h及び座繰穴20Hは、木材20の長手方向D3において、端部周辺に設けられていてもよいし、間隔をあけて複数設けられていてもよい。鋼材10のボルト孔11についても同様とする。図2に示すように、貫通孔20h及び座繰穴20Hは、木材20における鋼材10に接する面から、厚さ方向D1の外側に向けて設けられる。
貫通孔20hには、接合手段30のボルト31が配置される。貫通孔20hは、ボルト31が干渉しないようにボルト31の外径よりも大きい内径を備える。貫通孔20hの一方の端部は、木材20における鋼材10に接する面に位置する。貫通孔20hの他方の端部は、座繰穴20Hの一方の端部と繋がっている。
【0036】
座繰穴20Hは、一方の端部が貫通孔20hの他方の端部と繋がり、他方の端部が木材20における厚さ方向D1の外側の面に位置する。座繰穴20Hには、押さえプレート40が配置される。座繰穴20Hの内径は押さえプレート40の外径よりも大径である。
【0037】
接合手段30は、鋼材10および木材20を厚さ方向D1に貫通し、鋼材10と木材20とを厚さ方向D1に挟んで固定する。接合手段30は、ボルト31と、ナット32と、を備える。
ボルト31は、木材20の貫通孔20h及び鋼材10のボルト孔11を貫通するように配置される。ボルト31は、例えば、中ボルトが好適に用いられる。ナット32は、ボルト31を締め付ける。これにより、木材20と鋼材10とを固定し一体化する。中ボルトであるボルト31とナット32とを締結する際は、締結トルクを管理することが好ましい。図1に示すように、接合手段30は、長手方向D3において間隔をあけて複数設けられる。
【0038】
押さえプレート40は、図2に示すように座繰穴20Hの一方の端部に接するように配置される。押さえプレート40は、座繰穴20Hの一方の端部と接することで、ボルト31及びナット32が直接に木材20に干渉し、木材20が削れることを避ける。押さえプレート40の外径は、少なくとも貫通孔20hの内径よりも大きく、かつ座繰穴20Hの内径よりも小さく設定する。押さえプレート40の厚さは、4.5mmのものが好適に用いられる。
【0039】
継ぎ材50は、一対に設けられた2つの木材20の間における鋼材10が位置しない部位に配置される。第1建築部材100において、鋼材10が位置しない部位とは、鋼材10における幅方向D2の両側面において木材20同士の間に生じる隙間をいう。この部位に継ぎ材50を設けることで、第1建築部材100の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0040】
継ぎ材50の厚さ方向D1の寸法(板厚)は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法(板厚)以上である。このような寸法とすることで、木材20と鋼材10とを接合手段30によって締め付けると、木材20によって継ぎ材50が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより継ぎ材50に発生する反力によって、木材20と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐ。
【0041】
図2に示すように、継ぎ材50は鋼材10に接している。具体的には、継ぎ材50は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、木材20と継ぎ材50とによって鋼材10の周囲を包括的に覆う。これにより木材20と鋼材10との間の隙間を無くすことで、隙間に熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材10に熱が伝播しにくい構造とする。
【0042】
上述のように継ぎ材50を鋼材10に取り付けた際、木材20の幅方向D2の側面において木材20と継ぎ材50との境目を滑らかにするために、次のような方法を執ってもよい。すなわち、まず、継ぎ材50を、木材20に取り付けたときに継ぎ材50の幅方向D2における外側の端部が木材20の表面から突出するような形状とする。このような形状の継ぎ材50を木材20に取り付けた後に継ぎ材50を削ることで、木材20の表面と面一になるようにしてもよい。
【0043】
継ぎ材50は、取付部材51によって木材20に取り付けられる。図2に示すように、取付部材51は、例えば、ビスをはじめとする螺合部材である。つまり、取付部材51を木材20に螺合して噛み込むように取り付ける。
あるいは、取付部材51は接着剤であってもよい。つまり、継ぎ材50と木材20との間に接着剤を塗布して圧着することで取り付けてもよい。前記圧着は、木材20と鋼材10とを接合する前に予め行ってもよいし、木材20と鋼材10とを接合手段30によって締め付ける際に同時に行ってもよい。
【0044】
上述のように、継ぎ材50は取付部材51により木材20に取り付けられる。つまり、第1建築部材100においては、木材20と継ぎ材50とは別の部材である。このとき、取付部材51の少なくとも一部は木材20の炭化範囲CAよりも鋼材10の側に配置される。具体的には、以下の通りである。
【0045】
すなわち、取付部材51が螺合部材である場合は、図2に示すように、複数設けられた取付部材51の少なくとも一部は炭化範囲CAよりも鋼材10の側に配置する。
取付部材51が接着剤の場合は、少なくとも炭化範囲CAよりも鋼材10の側に取付部材51を塗布する。
【0046】
このような取り付け方とすることで、火災等によって木材20の炭化範囲CAが炭化した後においても取付部材51が機能を失わないようにする。また、取付部材51が特別な耐火性能を有しなくても、継ぎ材50を木材20に取り付ける機能を担保できるようにする。このため、取付部材51が接着剤の場合は、費用等の観点から耐火用でない接着剤が好適に用いられる。例えば、コニシ株式会社製のボンド(登録商標)木工用が好適に用いられる。これに限らず、より確実に耐火性能を確保するために、耐火用の接着剤を用いてもよい。耐火用の接着剤には、例えば、吉野石膏株式会社製のトラボンド(登録商標)が好適に用いられる。
【0047】
継ぎ材50を木材20に取り付ける際は、例えば図3に示すように、片方の木材20に対して鋼材10の幅方向D2の両側の継ぎ材50を取り付ける。このような取り付けは、第1建築部材100の製作の際、厚さ方向D1の側面を上方に向けて作業を行う場合に好適である。
【0048】
あるいは図4に示すように、鋼材10の幅方向D2において一方の側の継ぎ材50を一方の木材20に、他方の側の継ぎ材50を他方の木材20に取り付けるようにしてもよい。このような取り付けは、第1建築部材100の製作の際、継ぎ材50を鋼材10の幅方向D2の側面に引っ掛けるようにして木材20を鋼材10に対して仮配置できることから、幅方向D2の側面を上方に向けて作業を行う場合に好適である。
【0049】
木栓60は、接合手段30を隠すために用いられる。木栓60は、木材20に形成された座繰穴20Hに配置される。木栓60は、座繰穴20Hに圧入されてもよいし、接着剤によって固定されてもよい。これにより、接合手段30が建築部材の外周面に露出することを防ぐ。このことで、より鋼材10に熱が伝播する可能性を低くする。
木栓60の一部は、木材20の炭化範囲の厚さ方向D1の寸法以上である。このような寸法とすることで、火災等によって木材20の炭化範囲CAが炭化した後においても上述のように接合手段30を隠す役割を担保する。
【0050】
木栓60を木材20に取り付ける際、木栓60と木材20との境目を滑らかにするために、次のような方法を執ってもよい。すなわち、まず、木栓60を、木材20に取り付けたときに木栓60の厚さ方向D1における外側の端部が木材20の表面から突出するような形状とする。このような形状の木栓60を木材20に取り付けた後に木栓60を削ることで、木材20の表面と面一になるようにしてもよい。
【0051】
(第2建築部材200)
次に、図5に示す第2建築部材200について説明する。なお、第2建築部材200においては、第1建築部材100における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第2建築部材200は、第1建築部材100と比較して、木材20に代えて第2木材220を備える点と、継ぎ材50を備えない点とで相違し、その他の構成は同じである。
【0052】
第2木材220は、鋼材10の厚さ方向D1の両側面に一対に設けられる。第2木材220は、基本的な構造は木材20と同じであるが、幅方向D2の両端部に第2継ぎ材250を備える点で木材20と相違する。第2継ぎ材250は、第2木材220の幅方向D2の両端において、鋼材10の厚さ方向D1の側面に接する側の側面から厚さ方向D1の内側に向けて突出した部位である。第2継ぎ材250における前記突出の量は、少なくとも鋼材10の厚さ方向D1の寸法の半分である。このような形状とすることで、接合手段30により第2木材220を鋼材10に接合した時、第2継ぎ材250によって鋼材10の幅方向D2の両側面を覆う。すなわち、第2建築部材200の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0053】
あるいは、前記突出の量は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法の半分以上であってもよい。このような寸法とすることで、第2木材220と鋼材10とを接合手段30によって締め付けると、第2継ぎ材250が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより第2継ぎ材250に発生する反力によって、第2木材220と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐようにしてもよい。
また、図5に示すように、第2継ぎ材250は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、第2木材220と鋼材10との間の隙間を無くす。
【0054】
このように、第2継ぎ材250は、第1建築部材100の継ぎ材50と同じ役割を有する。第2継ぎ材250(継ぎ材)は、第2木材220(木材)の一部である。つまり、第2継ぎ材250は第2木材220と一体に形成された同一部材である。
また、第2継ぎ材250同士の接触面には、接着剤又は螺合部材を配置してより確実に隙間をなくすようにしてもよい。また、第2継ぎ材250同士の境目を滑らかにするために、第2木材220と鋼材10とを接合した後、前記境目を切削してもよい。
【0055】
(第3建築部材300)
次に、図6に示す第3建築部材300について説明する。なお、第3建築部材300においては、第1建築部材100における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第3建築部材300は、第1建築部材100と比較して、木材20と第3木材320とを備える点と、継ぎ材50を備えない点とで相違する。
【0056】
第3建築部材300においては、同形状の木材20が一対に設けられず、鋼材10の厚さ方向D1の一方の側面に木材20が設けられ、他方の側面に第3木材320が設けられる。
第3木材320は、第3木材320は、基本的な構造は木材20と同じであるが、幅方向D2の両端部に第3継ぎ材350を備える点で木材20と相違する。第3継ぎ材350は、第3木材320の幅方向D2の両端において、鋼材10の厚さ方向D1の側面に接する側の側面から厚さ方向D1の内側に向けて突出した部位である。第3継ぎ材350における前記突出の量は、少なくとも鋼材10の厚さ方向D1の寸法と等しい。このような形状とすることで、接合手段30により木材20及び第3木材320を鋼材10に接合した時、第3継ぎ材350によって鋼材10の幅方向D2の両側面を覆う。すなわち、第3建築部材300の外周面に鋼材10が露出することを防ぐ。
【0057】
あるいは、前記突出の量は、鋼材10の厚さ方向D1の寸法以上であってもよい。このような寸法とすることで、木材20及び第3木材320と鋼材10とを接合手段30によって締め付けると、第3継ぎ材350が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。これにより第3継ぎ材350に発生する反力によって、木材20及び第3木材320と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐようにしてもよい。
また、図6に示すように、第3継ぎ材350は、鋼材10の幅方向D2の側面に密接するように取り付けられる。このように取り付けることで、第3木材320と鋼材10との間の隙間を無くす。
【0058】
このように、第3継ぎ材350は、第1建築部材100の継ぎ材50と同じ役割を有する。第3継ぎ材350(継ぎ材)は、第3木材320(木材)の一部である。つまり、第3継ぎ材350は第3木材320と一体に形成された同一部材である。
また、木材20と第3継ぎ材350との接触面には、接着剤又は螺合部材を配置してより確実に隙間をなくすようにしてもよい。また、木材20と第3継ぎ材350との境目を滑らかにするために、木材20及び第3木材320と鋼材10とを接合した後、前記境目を切削してもよい。
【0059】
(建築部材の製造方法)
次に、本実施形態に係る建築部材の製造方法を説明する。以下において、木材20、第2木材220、第3木材320を区別しない場合には、木材20と記載する。
本実施形態に係る製造方法は、判別工程と、取り付け工程と、接合工程と、を備える。判別工程及び取り付け工程は、木材20に継ぎ材50を取り付けるための工程である。第3継ぎ材350が一体に形成された第2木材220、及び第3継ぎ材350が一体に形成された第3木材320については、この工程を省略する。
【0060】
判別工程は、木材20の姿勢に応じて継ぎ材50の取り付け場所を判別する工程である。例えば、まず、カメラ等によって木材20の貫通孔20hあるいは座繰穴20Hの位置を把握して、木材20の姿勢を判断する。次に、木材20における表面に貫通孔20hが位置している面を判別して、その面の幅方向D2の両端を継ぎ材50の取り付け場所と判別する。
【0061】
取り付け工程は、木材20に継ぎ材50を取り付ける。具体的には、判別工程で判別した取り付け場所に、取付部材51によって継ぎ材50を取り付ける。このとき、上述のように炭化範囲の内側に取付部材51を配置する。これにより、木材20が炭化した後においても取付部材51が機能を失わないようにする。
【0062】
接合工程は、木材20と鋼材10とを接合する工程である。具体的には、第1建築部材においては木材20同士を、第2建築部材においては第2木材220同士を、第3建築部材においては木材20と第3建築部材とを、それぞれ接合手段30のボルト31及びナット32とを締結して接合する工程である。
【0063】
接合工程において、接合手段30を締め付ける。接合工程は、接合手段30の締結力を所定のトルク量で管理する第一次締結工程と、接合手段30の締め付け量を所定の回転角度で管理する第二次締結工程と、を含む。第一次締結工程によって接合手段30を所定のトルクにより締め付けることで、接合手段30に負荷する軸力を管理する。第二次締結工程によって締付量を管理する。
【0064】
上記の第一次締結工程と第二次締結工程による、建築部材における品質管理の具体例は、下記のようになる。すなわち、まず、接合手段30のボルト31の先端にナット32を取り付け、所定の締結トルクにより一次締めを行う(第一次締結工程)。これにより、建築部材の量産工程において接合手段30に負荷される軸力を一定とする。次に、所定の回転角により本締めを行う(第二次締結工程)。所定の回転角は、例えば120°である。これにより、建築部材において設計上必要な軸力を確保する。上記工程により、建築部材を製造する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る建築部材によれば、2つの木材20の間における鋼材10が配置されていない部分に継ぎ材50が設けられている。これにより、建築部材の外周面において鋼材10が露出することを防ぐことができる。また、木材20と鋼材10との間の隙間を無くすことで、隙間を伝って熱を持った空気が侵入することを防ぎ、鋼材10に熱が伝播しにくい構造とすることができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0066】
また、継ぎ材50の板厚は、鋼材10の板厚以上である。これにより、木材20と鋼材10とを接合する際は、木材20によって継ぎ材50が厚さ方向D1の両側面から圧縮される。よって、継ぎ材50に発生する反力によって、木材20と鋼材10との間に隙間が生じることをより確実に防ぐことができる。
【0067】
また、継ぎ材50は、鋼材10に接している。ここで、木材20は鋼材10の厚さ方向D1の両側面に配置されている。このため、継ぎ材50が鋼材10の幅方向D2の側面に接することで、鋼材10の周囲を包括的に覆うことができる。よって、より鋼材10に熱が伝播しにくい構造とすることができる。
【0068】
また、継ぎ材50は木材20の一部である。つまり、継ぎ材50と木材20とは一体に成形された同一部材である。これにより、構成部品を少なくすることができる。よって、材料の歩留まりを向上するとともに、建築部材の組み立てを容易にすることができる。
【0069】
また、継ぎ材50は取付部材51により木材20に取り付けられる。つまり、継ぎ材50は木材20と別の部材である。これにより、継ぎ材50の寸法管理や、木材20と継ぎ材50との位置調整を効率的に行うことができる。また、取付部材51の一部は木材20の炭化範囲よりも鋼材10の側に配置される。ここで、炭化範囲とは、火災発生時の木材20の外周面における炭化が想定された範囲である。取付部材51の一部を木材20の炭化範囲よりも鋼材10の側に取り付けることで、木材20が炭化した場合であっても建築部材から取付部材51が脱落することを防ぐことができる。よって、耐火性能の向上に寄与することができる。
【0070】
また、取付部材51は螺合部材であり、木材20に噛み込む。つまり、取付部材51は、固定された木材20及び継ぎ材50の内部に位置する。これにより、取付部材51によって木材20と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0071】
また、取付部材51は、耐火用でない接着剤である。ここで、上述のように取付部材51の少なくとも一部は炭化範囲より鋼材10の側に配置される。このため、耐火用の接着剤を用いなくても、継ぎ材50を木材20に固定することができる。よって、耐火用の接着剤を用いる場合と比較して費用を抑えることができる。
【0072】
また、接合手段30を木栓60により隠す。これにより、接合手段30が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より鋼材10に熱が伝播する可能性を低くすることができる。
【0073】
また、木栓60の一部は、木材20の炭化範囲の厚さ方向D1の寸法以上である。これにより、炭化範囲が炭化した後においても、木栓60の少なくとも一部は炭化しない。よって、木材20が炭化した後であっても接合手段30が建築部材の外周面に露出することを防ぐことができる。よって、より耐火性能の向上に寄与することができる。
【0074】
また、木材20の姿勢に応じて継ぎ材50の取り付け場所を判別する判別工程と、木材20に継ぎ材50を取り付ける取り付け工程と、木材20と鋼材10とを接合する接合工程と、を備える。判別工程により、継ぎ材50の誤組付けを確実に防ぐことができる。取り付け工程と接合工程とが別の工程である。つまり、予め木材20に継ぎ材50が配置された状態で接合工程を行う。よって、鋼材10と継ぎ材50との位置を確実に合わせた状態で木材20と鋼材10とを接合することで、より確実に木材20及び継ぎ材50と鋼材10との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0075】
また、取り付け工程は、炭化範囲の内側に取付部材51を配置する。これにより、木材20が炭化した後においても取付部材51の機能を維持することができる。よって、より確実に鋼材10に熱が伝播することを防ぐことができる。
【0076】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第3継ぎ材350は第3木材320の幅方向D2の両端に設けられるとして説明したが、これに限らない。例えば、第3継ぎ材350に相当する形状が、木材20の幅方向D2の一方の端部のみに形成されてもよい。このような形状を有する木材20を一対に設けることで、鋼材10の厚さ方向D1の側面に取り付けられる木材20を同一の形状としてもよい。
【0077】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 鋼材
20 木材
20h 貫通孔
30 接合手段
50 継ぎ材
51 取付部材
60 木栓
CA 炭化範囲
D1 方向
D2 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6