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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147807
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】製造装置、製造方法、せん断加工機
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055525
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520457971
【氏名又は名称】株式会社デンソープレステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増渕 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】近藤 文男
(72)【発明者】
【氏名】大平 将希
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615SS03
5H615SS10
5H615SS11
5H615SS13
5H615SS18
5H615SS33
(57)【要約】
【課題】セグメント型積層コアの加工スピードの高速化を実現する製造装置を提供する。
【解決手段】回転電機が備える電機子の積層コアを回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コア1を製造する製造装置において、搬送部2、5、6とせん断加工機4、20とを備える。搬送部2、5、6は、被加工材11としての帯鋼板を長尺方向に搬送する。せん断加工機4、20は、搬送部2、5、6により搬送される被加工材11を、セグメント型積層コア1を構成する複数のコア14および複数のコア14を前記長尺方向に連結する連結部15を有する連結コア12と、被加工材11から連結コア12を除いた部位を連続させた連続スクラップ13とにせん断するパンチ41、211およびダイ42、221を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機が備える電機子の積層コアを前記回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コア(1)を製造する製造装置において、
被加工材(11)としての帯鋼板を長尺方向に搬送する搬送部(2、5、6)と、
前記搬送部により搬送される前記被加工材を、前記セグメント型積層コアを構成する複数のコア(14)および複数の前記コアを前記長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、前記被加工材から前記連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断するパンチ(41、211)およびダイ(42、221)を有するせん断加工機(4、20)と、を備えた製造装置。
【請求項2】
前記連結コアは、前記被加工材の短手方向に並ぶ第1連結コア(121)と第2連結コア(122)とを有しており、
前記連続スクラップは、長尺の前記被加工材のうち前記第1連結コアと前記第2連結コアとの間の部位が連続した形状である、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記第1連結コアおよび前記第2連結コアが有する複数の前記コアは、前記電機子のヨークの一部を形成するヨーク形成部(141)と、前記ヨーク形成部に接続されてティースの一部を形成するティース形成部(142)とを有しており、
前記被加工材の状態において、前記第1連結コアが有する複数の隣り合う前記ティース形成部同士の間に前記第2連結コアが有する前記ティース形成部が配置され、前記第2連結コアが有する複数の隣り合う前記ティース形成部同士の間に前記第1連結コアが有する前記ティース形成部が配置されている、請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記せん断加工機は、前記被加工材に対して垂直方向に往復移動する前記パンチ(41)と、前記被加工材を挟んで前記パンチと対向する位置に配置される前記ダイ(42)とを備える高速プレス加工機(4)である、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造装置。
【請求項5】
前記せん断加工機は、ローラの外周面に前記パンチ(211)を有し前記被加工材の板厚方向の一方側に配置されるパンチローラ(21)と、ローラの外周面に前記ダイ(221)を有し前記被加工材の板厚方向の他方側に前記被加工材を挟んで前記パンチローラと対向する位置に配置されるダイローラ(22)とを備える高速ローラ加工機(20)である、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造装置。
【請求項6】
前記高速ローラ加工機は、前記パンチローラと前記ダイローラに対して前記被加工材の搬送方向の下流側に配置される上ローラ(23)と下ローラ(24)とをさらに備え、
前記上ローラは、ローラの外周面に平坦な曲面を有し、前記被加工材の板厚方向の一方側に配置され、
前記下ローラは、ローラの外周面に平坦な曲面を有し、前記被加工材の板厚方向の他方側に前記被加工材を挟んで前記上ローラと対向する位置に配置され、
前記パンチローラと前記ダイローラは、前記被加工材の板厚方向の一方側から他方側へ向けて前記被加工材の板厚の途中まで、前記被加工材を前記連結コアと前記連続スクラップとにせん断するように構成されており、
前記上ローラと前記下ローラは、前記被加工材の板厚方向の他方側から一方側へ向けて押し戻すことで、前記被加工材を前記連結コアと前記連続スクラップとに完全にせん断するように構成されている、請求項5に記載の製造装置。
【請求項7】
前記せん断加工機で前記被加工材からせん断された前記連結コアを巻き取る連結コア巻取装置(5)と、
前記せん断加工機で前記被加工材からせん断された前記連続スクラップを巻き取る連続スクラップ巻取装置(6)と、をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の製造装置。
【請求項8】
前記せん断加工機に対して前記被加工材の搬送方向の下流側に設けられ、前記連結コアの有する複数の前記コアの表面に接着剤を塗布する塗布装置(8)をさらに備え、
前記塗布装置は、フレキソ印刷またはオフセット印刷または凸版印刷により、前記連結コアの有する複数の前記コアの表面のみに接着剤を塗布する、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の製造装置。
【請求項9】
前記塗布装置に対して前記被加工材の搬送方向の下流側に設けられ、前記連結コアを複数の前記コアと前記連結部とに切断する切断部、および、前記切断部によって切断された複数の前記コアを板厚方向に重ねて押圧する押圧部を有する切断押圧装置(9)をさらに備える、請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記せん断加工機は、前記切断押圧装置で前記連結コアを複数の前記コアと前記連結部とに切断する際の位置決めに用いられるパイロット穴(16)を、前記連結コアのうち前記連結部となる部位に対して加工することが可能であり、前記パイロット穴の縁部(161)の少なくとも一部が前記連結部と繋がっている状態で前記パイロット穴を加工する、請求項9に記載の製造装置。
【請求項11】
回転電機が備える電機子の積層コアを前記回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コア(1)を製造する製造方法において、
被加工材(11)としての帯鋼板を長尺方向に搬送しつつ、パンチ(41、211)およびダイ(42、221)により、前記被加工材を、前記セグメント型積層コアを構成する複数のコア(14)および複数の前記コアを前記長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、前記被加工材から前記連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断するせん断工程を含む製造方法。
【請求項12】
前記連結コアは、前記被加工材の短手方向に並ぶ第1連結コア(121)と第2連結コア(122)とを有しており、
前記連続スクラップは、長尺の前記被加工材のうち前記第1連結コアと前記第2連結コアとの間の部位を連結した形状である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1連結コアおよび前記第2連結コアが有する複数の前記コアは、前記電機子のヨークの一部を形成するヨーク形成部(141)と、前記ヨーク形成部に接続されてティースの一部を形成するティース形成部(142)とを有しており、
前記被加工材の状態において、前記第1連結コアが有する複数の隣り合う前記ティース形成部同士の間に前記第2連結コアが有する前記ティース形成部が配置され、前記第2連結コアが有する複数の隣り合う前記ティース形成部同士の間に前記第1連結コアが有する前記ティース形成部が配置されている、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記せん断工程を、前記被加工材に対して垂直方向に往復移動する前記パンチ(41)と、前記被加工材を挟んで前記パンチと対向する位置に配置される前記ダイ(42)とを有する高速プレス加工機を用いて実施する、請求項11ないし13のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項15】
前記せん断工程を、ローラの外周面に前記パンチ(211)を有し前記被加工材の板厚方向の一方側に配置されるパンチローラ(21)と、ローラの外周面に前記ダイ(221)を有し前記被加工材の板厚方向の他方側に前記被加工材を挟んで前記パンチローラと対向する位置に配置されるダイローラ(22)とを有する高速ローラ加工機(20)を用いて実施する、請求項11ないし13のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項16】
前記高速ローラ加工機は、前記パンチローラと前記ダイローラに対して前記被加工材の搬送方向の下流側に配置される上ローラ(23)と下ローラ(24)とを有し、
前記上ローラは、ローラの外周面に平坦な曲面を有し、前記被加工材の板厚方向の一方側に配置され、
前記下ローラは、ローラの外周面に平坦な曲面を有し、前記被加工材の板厚方向の他方側に前記被加工材を挟んで前記上ローラと対向する位置に配置され、
前記パンチローラと前記ダイローラは、前記被加工材の板厚方向の一方側から他方側へ向けて前記被加工材の板厚の途中まで、前記被加工材を前記連結コアと前記連続スクラップとにせん断し、
前記上ローラと前記下ローラは、前記被加工材の板厚方向の他方側から一方側へ向けて押し戻すことで、前記被加工材を前記連結コアと前記連続スクラップとに完全にせん断する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記せん断工程で前記被加工材からせん断された前記連結コアを巻き取る工程と、
前記せん断工程で前記被加工材からせん断された前記連続スクラップを巻き取る工程と、をさらに含む、請求項11ないし16のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項18】
前記せん断工程の後に、前記連結コアの有する複数の前記コアの表面に接着剤を塗布する塗布工程をさらに含む、請求項11ないし17のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項19】
前記塗布工程の後に、前記連結コアを複数の前記コアと前記連結部とに切断する切断工程と、前記切断工程によって切断された複数の前記コアを板厚方向に重ねて押圧する押圧工程とをさらに含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記切断工程で前記連結コアを複数の前記コアと前記連結部とに切断する際の位置決めに用いられるパイロット穴(16)を、前記連結コアのうち前記連結部となる部位に対して加工するパイロット穴加工工程をさらに含み、
前記パイロット穴加工工程では、前記パイロット穴の縁部(161)の少なくとも一部が前記連結部と繋がっている状態で前記パイロット穴を加工する、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
被加工材(11)としての帯鋼板からセグメント型積層コア(1)を構成するコア(14)を製造するせん断加工機において、
前記被加工材(11)を前記帯鋼板の長尺方向に搬送しつつ、複数の前記コアおよび複数の前記コアを前記長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、前記被加工材から前記連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断するパンチ(41、211)およびダイ(42、221)を有するせん断加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機が備える電機子の積層コアを回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コアを製造する製造装置および製造方法、並びに、そのセグメント型積層コアを構成するコアを製造するせん断加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野での電動化の流れを受けて、その主力となるモータは、スタータやオルタネータなどの小型モータに加え、モータジェネレータやインホイールモータなどモビリティの動力源として使われる中型モータおよび大型モータへニーズが拡大している。
【0003】
一般に、モータは、シャフトに固定されて回転するロータと、そのロータの外周を囲むステータを備えている。ステータは、積層鋼鈑からなるステータコア(即ち、積層コア)に対しコイルを巻いて構成される。そのステータコアは2つの構造に分類される。その1つの構造は、リング状に繋がったヨークとそのヨークから径方向内側に突出する複数のティースを有する一体型ステータコアである。もう1つの構造は、回転電機の回転軸を中心として所定の角度範囲ごとに(例えば、ティースごとに)に分割した複数のセグメント型積層コアを周方向に並べたセグメント型ステータコアである。
【0004】
従来、小型モータでは、材料の使用量が少ないことから、磁気回路を流れる磁束のロスが少ない一体型ステータコアが多用されてきた。一体型ステータコアは、被加工材としての鋼板を円環状に打ち抜くことから、被加工材からスクラップが多く排出されるデメリットがある。また、モータの体格が中型化または大型化してくると、鋼板を一体で抜くための金型も大きくなり、それを加工するプレス加工機も数百トン規模を超えるため、加工スピードが上がらず生産性が低下する。プレス加工機が中大型設備となることに伴って必要な基礎工事、高棟工場、設備投資の増大を招き、イニシャルコストが上がるといった弊害が顕在化する。
【0005】
一方、モータのステータの構造をセグメント型ステータに変更すると、複数のセグメント型積層コアを構成する部品自体が小さくなり、その部品(即ち、各コア)を抜くための金型、プレス加工機も小さくなり、高速での加工、材料歩留まりの向上が期待できる。ただし、ステータコアをセグメント化することで、部品加工点数がN倍に増大し、数量増に見合う加工スピードの向上ができない。例えば、ステータコアを24分割したセグメント型ステータコアでは、一体型ステータコアに比べて部品点数が単純に24倍と増えるが、金型およびプレス加工機の小型化によるプレス加工機の加工スピードの増加は、例えば100SPMから500SPM、即ち5倍程度にするのが限界である。なお、SPMはShots Per Minuteの略である。セグメント型ステータの製造について、一体型ステータコアの製造と同じ生産性を確保しようとすれば、プレス加工機を5倍設置しなければならず現実的ではない。
【0006】
プレス加工スピードの限界を決める要因として、プレス加工機の機械自体の限界スピードと、プレス抜きの加工メカニズムからくる限界スピードがある。大型プレス加工機の機械自体の加工スピードの限界は例えば100SPM程度であり、機械自体の限界速度で律速される。一方、小型プレス加工機を使用した場合、機械自体としては例えば1000SPM~2000SPM程度までの高速化が可能であるが、プレス抜きの加工メカニズムにより、上下運動するパンチと一緒に抜きカス(即ち、小さな廃材)が浮き上がって被加工材の下に入り込むといった「抜きカス上がり」が発生する。その抜きカス上がりの発生を抑止するため、一般に、カスを排出する下型の切り刃部分にミクロンオーダのRや面取りをすること、または、抜きカスが落ちるダイのキャビティに溝をつけることなどの方策が採られることがある。しかしながら、例えば100万回に1回といったppmオーダでの抜きカス上がりの発生は避けられない。さらに、打ち抜いたコアもサイズが小さいため同じような浮き上りが発生する。また、車両等に搭載される中型モータないし大型モータは、必要とするトルクが増大し、積層コアの鋼板の薄板化が要求される。鋼板の薄板化に伴ってステータコアの積層枚数が増えることで、コアの必要枚数が増えるので、生産性向上がより強く求められる。
【0007】
ところで、特許文献1に記載の製造方法は、図33、34に示したように、プレス加工機により被加工材90から櫛歯状のコアシート91、92を打ち抜き、それを螺旋状に巻いてロータコア96を形成するものである。この製造方法では、被加工材90としての帯鋼鈑から2列の櫛歯状のコアシート91、92を打ち抜いている。そして、被加工材90の中で、2列の櫛歯状のコアシート91、92は、一方のコアシート91の有する複数のティース93同士の間に、他方のコアシート92の有する複数のティース94が密接するように配置されている。これにより、この製造方法では、被加工材から2列のコアシートを打ち抜くプレス加工時において、その2列のコアシート91、92の間等に生じる抜きカス95、97(即ち、小さな廃材)を少なくしている。なお、図33では、その抜きカス95、97となる部位に対しハッチングを付して示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭61-11065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法のように、櫛歯状のコアシートを螺旋状に巻いてロータコア96を形成すると、そのロータコア96のうち軸心方向(即ち、軸心が延びる方向)を向く面の一部に段差ができるといった問題がある。さらに、この製造方法では、プレス加工時に、2列のコアシート91、92の間等に抜きカス95、97が生じることから、抜きカス上がりが発生する。したがって、特許文献1に記載の製造方法は、回転電機が備えるセグメント型積層コアの加工スピードを高速化するために参考となるものでない。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、セグメント型積層コアの加工スピードの高速化を実現する製造装置および製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、セグメント型積層コアを構成するコアの加工スピードの高速化を実現するせん断加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、回転電機が備える電機子の積層コアを回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コア(1)を製造する製造装置において、搬送部(2、5、6)とせん断加工機(4、20)とを備える。搬送部は、被加工材(11)としての帯鋼板を長尺方向に搬送する。せん断加工機は、搬送部により搬送される被加工材を、セグメント型積層コアを構成する複数のコア(14)および複数のコアを前記長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、被加工材から連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断するパンチ(41、211)およびダイ(42、221)を有する。
【0012】
これによれば、連続スクラップは、被加工材から連結コアを除いた部位を長尺方向に連結したものであるので、せん断加工の際に連結コアと連続スクラップとの間に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。また、連結コアは、複数のコアを連結部によって長尺方向に連結したものであるので、せん断加工の際にコアがカス上がりのようにダイの穴の中から浮き上がることが無い。したがって、せん断加工において高速化の律速となっていたカス上がり等が生じることが無く、それが技術のブレークスルーとなり、せん断加工機による加工スピードの高速化を実現することができる。その結果、この製造装置により、回転電機が備えるセグメント型積層コアの生産性を向上できる。
【0013】
また、請求項11に係る発明は、回転電機が備える電機子の積層コアを回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割したセグメント型積層コア(1)を製造する製造方法に関する。この製造方法は、被加工材(11)としての帯鋼板を長尺方向に搬送しつつ、その被加工材を、パンチ(41、211)およびダイ(42、221)により、セグメント型積層コアを構成する複数のコア(14)および複数のコアを前記長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、被加工材から連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断する工程を含む。
【0014】
これによれば、請求項11に係る発明も、請求項1に係る発明と同じく、被加工材を連結コアと連続スクラップとにせん断する工程においてカス上がり等が生じることが無いので、加工スピードの高速化を実現し、回転電機が備えるセグメント型積層コアの生産性を向上できる。
【0015】
また、請求項21に係る発明は、被加工材(11)としての帯鋼板からセグメント型積層コア(1)を構成するコア(14)を製造するせん断加工機に関する。せん断加工機は、被加工材(11)を帯鋼板の長尺方向に搬送しつつ、複数のコア(14)および複数のコアを長尺方向に連結する連結部(15)を有する連結コア(12)と、被加工材から連結コアを除いた部位を連続させた連続スクラップ(13)とにせん断するパンチ(41、211)およびダイ(42、221)を有する。
【0016】
これによれば、請求項21に係る発明も、請求項1に係る発明と同じく、コア製造の加工スピードの高速化を実現し、回転電機のセグメント型積層コアを構成するコアの生産性を向上できる。なお、請求項21に係る発明に対し、請求項2~6、10に係る発明を組み合わせることが可能である。
【0017】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る製造装置において前半の工程を行う設備の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る製造装置において後半の工程を行う設備の概略構成を示す図である。
図3】被加工材に対し、連結コアと連続スクラップとなる部位を配置した様子を示す図である。
図4A】被加工材からせん断された第1連結コアを示す図である。
図4B】被加工材からせん断された連続スクラップを示す図である。
図4C】被加工材からせん断された第2連結コアを示す図である。
図5】連結コアからコアを切断する様子を示す図である。
図6図5に続く、連結コアからコアを切断する様子を示す図である。
図7】セグメント型積層コアの斜視図である。
図8】第2実施形態に係る製造装置において全工程を行う設備の概略構成を示す図である。
図9】第3実施形態に係る製造装置において前半の工程を行う設備の概略構成を示す図である。
図10】(A)は、高速ローラ加工機が有する各ローラの側面図である。 (B)は(A)のb矢視において、ダイローラの外周面を視た平面図である。 (C)はダイローラの外周面の一部拡大図である。 (D)は(C)のd-d線において、ダイローラの回転軸に垂直な断面図である。 (E)は(A)のe矢視において、下ローラの外周面を視た平面図である。 (F)は下ローラの外周面の一部拡大図である。 (G)は(F)のg-g線において、下ローラの回転軸に垂直な断面図である。
図11】高速ローラ加工機においてパンチローラとダイローラにより、被加工材をその板厚の途中までせん断する様子を説明するための図である。
図12】高速ローラ加工機においてパンチローラとダイローラを通過した被加工材の状態を示す図である。
図13】高速ローラ加工機において上ローラと下ローラにより、被加工材を完全にせん断する様子を説明するための図である。
図14】高速ローラ加工機において上ローラと下ローラを通過した被加工材の状態を示す図である。
図15】第4実施形態において被加工材に形成されるパイロット穴を説明するための図である。
図16図15のXVI部分の拡大図である。
図17図16のXVII-XVII線の断面図である。
図18】被加工材にパイロット穴をあける方法を説明するための図である。
図19図18に続く、被加工材にパイロット穴をあける方法を説明するための図である。
図20図19に続く、被加工材にパイロット穴をあける方法を説明するための図である。
図21】第5実施形態において被加工材に形成されるパイロット穴を説明するための図である。
図22図21のXXII部分の拡大図である。
図23図22のXXIII-XXIII線の断面図である。
図24】第6実施形態において被加工材に形成されるパイロット穴を説明するための図である。
図25図24のXXV部分の拡大図である。
図26図25のXXVI-XXVI線の断面図である。
図27】第7実施形態において、図26で示した箇所に対応する断面図である。
図28】第8実施形態において被加工材に対し、パイロット穴連続スクラップと連結コアと連続スクラップとなる部位を配置した様子を示す図である。
図29A】被加工材からせん断された第1パイロット穴連続スクラップを示す図である。
図29B】被加工材からせん断された第1連結コアを示す図である。
図29C】被加工材からせん断された連続スクラップを示す図である。
図29D】被加工材からせん断された第2連結コアを示す図である。
図29E】被加工材からせん断された第2パイロット穴連続スクラップを示す図である。
図30】第9実施形態において被加工材に対し、連結コアと連続スクラップとなる部位を配置した様子を示す図である。
図31A】被加工材からせん断された第1連結コアを示す図である。
図31B】被加工材からせん断された連続スクラップを示す図である。
図31C】被加工材からせん断された第2連結コアを示す図である。
図32】第1連結コアからコアを切断する様子を示す図である。
図33】特許文献1において被加工材に2列の櫛歯状のコアシートとなる部位を配置した様子を示す図である。
図34】特許文献1において櫛歯状のコアシートを螺旋状に巻いてロータコアを形成する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の製造装置は、回転電機が備える電機子の積層コア(具体的にはセグメント型ステータコア)を、回転電機の回転軸を中心とした所定の角度範囲ごとに分割した、セグメント型積層コア1(例えば図7参照)を製造するものである。
【0021】
図1に示すように、製造装置は、アンコイラ2、ループコントローラ3、高速プレス加工機4、連結コア巻取装置5、連続スクラップ巻取装置6などを備えている。さらに、図2に示すように、製造装置は、連結コア設置台7、塗布装置8、切断押圧装置9、連結部スクラップ巻取装置10などを備えている。本実施形態のアンコイラ2、連結コア巻取装置5、連続スクラップ巻取装置6等は、特許請求の範囲に記載の「搬送部」の一例に相当する。また、本実施形態の高速プレス加工機4は、特許請求の範囲に記載の「せん断加工機」の一例に相当する。
【0022】
図1に示すように、セグメント型積層コア1を製造するための被加工材11として帯鋼板が用いられる。なお、被加工材11として帯鋼板は、回転電機としてのモータの出力トルク増大等を目的として薄板のものが用いられる。
【0023】
アンコイラ2は、コイル状に巻かれた被加工材11としての帯鋼鈑を心棒2aで支持し、その被加工材11をコイルの外周側から巻きほぐす装置である。アンコイラ2により巻きほぐされた被加工材11は、その長尺方向に搬送される。その被加工材11は、アンコイラ2からループコントローラ3、高速プレス加工機4の順に搬送される。
【0024】
ループコントローラ3は、アンコイラ2から供給される被加工材11のたるみを調整し、材料のバタツキおよび折れ曲がりを抑えて高速送りを可能にする装置である。ループコントローラ3は、縦型アンコイラ(即ち、アンコイラ2の心棒が水平に配置されるもの)を使用する際に用いることが好ましい。
【0025】
高速プレス加工機4として、例えば100kN~450kN高速プレス加工機が用いられる。また、高速プレス加工機4として、限界速度が例えば1000SPM~2000SPM程度のものが用いられる。高速プレス加工機4には、アンコイラ2からループコントローラ3を経由して被加工材11が搬送される。高速プレス加工機4は、その被加工材11の面に対して垂直方向に往復移動するパンチ41と、被加工材11を挟んでパンチ41と対向する位置に配置されるダイ42とを有している。高速プレス加工機4は、被加工材11を送る、止める、抜き加工(即ち、せん断加工)する、再び送る、といった動作を繰り返す「間欠送り」により、被加工材11を、例えば図3および図4A図4Cに示したような連結コア12と連続スクラップ13とにせん断するせん断加工を行うものである。なお、高速プレス加工機4が実行するせん断加工は、特許請求の範囲に記載の「せん断工程」の一例に相当する。
【0026】
図3は、被加工材11に対し連結コア12と連続スクラップ13となる部位を配置した様子を示したものである。なお、図3は、高速プレス加工機4が有するパンチ41の一部またはダイ42の一部を、パンチ41が往復移動する方向から視た図であるとも言える。すなわち、高速プレス加工機4が有するパンチ41およびダイ42には、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断加工するための、図3に示したような凹凸が設けられている。
【0027】
図3図4Aおよび図4Cに示すように、連結コア12は、セグメント型積層コア1を構成する複数のコア14と、その複数のコア14を被加工材11の長尺方向に連結する連結部15とを有している。このように、連結部15によって複数のコア14を被加工材11の長尺方向に連結したことで、高速プレス加工機4がせん断加工を行う際に、コア14がカス上がりのようにダイ42の穴の中から浮き上がることが無い。なお、連結部15にはパイロット穴16が設けられる。このパイロット穴16については、後述の第4~第8実施形態で説明する。
【0028】
連結コア12は、第1連結コア121と第2連結コア122とを有している。第1連結コア121と第2連結コア122は、被加工材11の短手方向に並び、それぞれが被加工材11の長尺方向に連続している。第1連結コア121と第2連結コア122が有する複数のコア14は、電機子のヨークの一部を形成するヨーク形成部141と、そのヨーク形成部141に接続されてティースの一部を形成するティース形成部142とを有している。そして、図3に示すように、被加工材11の状態において、第1連結コア121が有する複数の隣り合うティース形成部142同士の間に、第2連結コア122が有するティース形成部142が配置されている。また、第2連結コア122が有する複数の隣り合うティース形成部142同士の間に、第1連結コア121が有するティース形成部142が配置されている。このように、第1連結コア121と第2連結コア122を配置することで、連続スクラップ13の面積を小さくし、材料の無駄を低減できる。
【0029】
一方、図3および図4Bに示すように、連続スクラップ13は、被加工材11から連結コア12を除いた全ての部位を連続させた形状である。具体的には、第1連結コア121と連続スクラップ13との境界線(以下、「第1境界線17」という)は、その第1境界線17において所定の部位と別の部位とが接することなく、一筆書きのように延びている。また、第2連結コア122と連続スクラップ13との境界線(以下、「第2境界線18」という)も、その第2境界線18において所定の部位と別の部位とが接することなく、一筆書きのように延びている。そして、第1境界線17と第2境界線18とは全領域において互いに接することなく、間隔をあけて延びている。そのため、第1境界線17と第2境界線18との間の領域が全て連続スクラップ13となる。これにより、連続スクラップ13は、全て繋がった状態で連続スクラップ巻取装置6によって回収される。したがって、せん断加工の際に、連結コア12と連続スクラップ13との間に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。また、上述したように、連結コア12は、複数のコア14が連結部15によって連結しているので、せん断加工の際にコア14がカス上がりのようにダイ42の穴の中から浮き上がることが無い。したがって、せん断加工において高速化の律速となっていたカス上がり等が生じることが無く、それが技術のブレークスルーとなり、高速プレス加工機4による加工の限界速度(例えば1000~2000SPM)まで加工スピードの高速化を実現することができる。
【0030】
再び図1に示すように、連続スクラップ巻取装置6は、高速プレス加工機4から送り出される連続スクラップ13を全て繋がった状態でコイル状にして巻き取る装置である。一方、連結コア巻取装置5は、第1連結コア巻取装置51と第2連結コア巻取装置52とを有している。第1連結コア巻取装置51は、高速プレス加工機4から送り出される第1連結コア121を全て繋がった状態でコイル状にして巻き取る装置である。第2連結コア巻取装置52は、高速プレス加工機4から送り出される第2連結コア122を全て繋がった状態でコイル状にして巻き取る装置である。なお、連続スクラップ巻取装置6および連結コア巻取装置5と、高速プレス加工機4との間に、不図示のループコントローラを設置してもよい。連結コア巻取装置5によって巻き取られた連結コア12(即ち、第1連結コア121と第2連結コア122)は、図2に示す連結コア設置台7に設置される。
【0031】
続いて、図2に示すように、連結コア設置台7には、コイル状に巻かれた連結コア12が設置される。連結コア設置台7は、横型アンコイラ(即ち、アンコイラの心棒が鉛直方向に配置されるもの)であり、コイル状に巻かれた連結コア12を心棒で支持し、その連結コア12をコイルの外周側から巻きほぐす装置である。連結コア設置台7により巻きほぐされた連結コア12は、塗布装置8、切断押圧装置9の順に搬送される。
【0032】
塗布装置8は、連結コア12の有する複数のコア14の表面に接着剤を塗布する装置である。塗布装置8として、周知の印刷技術(例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凸版直刷・ワーク移動式、凸版オフセット・ワーク移動式)を採用できる。印刷技術を使用することで、連結コア12の有する複数のコア14の表面のみにピンポイントで接着剤を塗布することが出来る。なお、塗布装置8が実行する工程は、特許請求の範囲に記載の「塗布工程」の一例に相当する。
【0033】
切断押圧装置9は、連結コア12を複数のコア14と連結部15とに切断する不図示の切断部と、その切断部によって切断された複数のコア14を板厚方向に重ねて押圧する不図示の押圧部を有している。図5および図6に示すように、切断部は、連結コア12に設けられたパイロット穴16を位置決めに用いて、連結コア12からコア14を切断する。なお、図5および図6では、連結コア12をコア14と連結部15とに切断する位置を破線Cで示している。なお、切断部は、連結コア12から一度に複数個のコア14を切断する「多数個カット」により、加工スピードを向上することが出来る。なお、切断部が実行する工程は、特許請求の範囲に記載の「切断工程」の一例に相当する。
【0034】
押圧部は、図7に示したように、切断部によって切断された複数のコア14を板厚方向に重ねて押圧することで、セグメント型積層コア1を形成する。切断部が多数個カットを行う場合、押圧部も一度に複数個のセグメント型積層コア1を形成することで、加工スピードを向上することが出来る。なお、押圧部が実行する工程は、特許請求の範囲に記載の「押圧工程」の一例に相当する。
【0035】
後の工程で、複数個のセグメント型積層コア1は、周方向に並ぶように組み合わされて、回転電機を構成する電機子の積層コア(具体的にはセグメント型ステータコア)となる。
【0036】
なお、図2に示すように、連結コア12から複数のコア14を切断された連結部15は、連結部スクラップ巻取装置10に巻き取り回収される。
【0037】
以上説明した第1実施形態の製造装置は、次の作用効果を奏するものである。
(1)本実施形態では、せん断加工機の一例としての高速プレス加工機4は、被加工材11を、複数のコア14および連結部15を有する連結コア12と、被加工材11から連結コア12を除いた全ての部位を連続させた連続スクラップ13とにせん断する。
【0038】
これによれば、高速プレス加工機4によるせん断加工の際に連結コア12と連続スクラップ13との間に抜きカスが形成されず、せん断加工の際にカス上がりが生じることが無い。また、連結コア12は、複数のコア14を連結部15によって長尺方向に連結しているので、せん断加工の際にコア14がカス上がりのようにダイ42の穴の中から浮き上がることが無い。したがって、高速プレス加工機4によるせん断加工において高速化の律速となっていたカス上がり等が生じることが無く、それが技術のブレークスルーとなり、加工スピードの高速化を実現することができる。その結果、この製造装置により、回転電機が備えるセグメント型積層コア1の生産性を向上できる。
【0039】
(2)本実施形態では、連続スクラップ13は、長尺の被加工材11のうち第1連結コア121と第2連結コア122との間の全ての部位が連続した形状である。
これによれば、第1連結コア121と連続スクラップ13との間に抜きカスが形成されず、第2連結コア122と連続スクラップ13との間にも抜きカスが形成されない。そのため、高速プレス加工機4によるせん断加工において高速化の律速となっていたカス上がりが生じることが無いので、加工スピードの高速化を実現できる。
【0040】
(3)本実施形態では、被加工材11の状態において、第1連結コア121が有する複数の隣り合うティース形成部142同士の間に第2連結コア122が有するティース形成部142が配置され、第2連結コア122が有する複数の隣り合うティース形成部142同士の間に第1連結コア121が有するティース形成部142が配置されている。
このように第1連結コア121と第2連結コア122を配置することで、連続スクラップ13の面積を小さくし、材料の無駄を低減できる。
【0041】
(4)本実施形態では、被加工材11のせん断加工を、被加工材11に対して垂直方向に往復移動するパンチ41と、被加工材11を挟んでパンチ41と対向する位置に配置されるダイ42とを有する高速プレス加工機4により実施する。
これによれば、高速プレス加工機4において高速化の律速となっていたカス上がりが生じることがないので、高速プレス加工機4による加工の限界速度(例えば1000~2000SPM)まで加工スピードの高速化を実現することができる。
【0042】
(5)本実施形態では、製造装置は、高速プレス加工機4でせん断加工された連結コア12を、連結コア巻取装置5で巻き取る。また、製造装置は、高速プレス加工機4でせん断加工された連続スクラップ13を、連続スクラップ巻取装置6で巻き取る。
これによれば、製造装置は、連結コア巻取装置5と連続スクラップ巻取装置6を備えることで、連結コア12に対するその後の加工工程を、高速プレス加工機4とは別の場所で実施できる。
【0043】
(6)本実施形態では、製造装置は、連結コア12の有する複数のコア14の表面に接着剤を塗布する塗布装置8を備える。塗布装置8は、例えば、フレキソ印刷またはオフセット印刷または凸版印刷などにより、連結コア12の有する複数のコア14の表面のみに接着剤を塗布することが可能である。
【0044】
(7)本実施形態では、製造装置は、連結コア12を複数のコア14と連結部15とに切断する切断部、および、切断部によって切断された複数のコア14を板厚方向に重ねて押圧する押圧部を有する切断押圧装置9を備える。
これによれば、連結コア12から切断した複数のコア14を積層することで、セグメント型積層コア1を形成できる。なお、切断押圧装置9の有する切断部および押圧部は、連結コア12から複数のコア14を同時に切断、積み重ね、押圧するといった、いわゆる多数取りを行うことで、高速化を図ることが可能である。
【0045】
また、上述した第1実施形態は、セグメント型積層コア1を製造する製造方法として捉えることも可能である。その製造方法および作用効果は次のとおりである。
(8)本実施形態の製造方法は、被加工材11を、複数のコア14および連結部15を有する連結コア12と、被加工材11から連結コア12を除いた全ての部位を連続させた連続スクラップ13とにせん断する工程を含む。
この製造方法によれば、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13にせん断する工程において高速化の律速となっていたカス上がり等が生じることがないので、加工スピードの高速化を実現し、回転電機が備えるセグメント型積層コア1の生産性を向上できる。なお、この製造方法に対し、第1実施形態で説明した製造方法、及び、後述の第2~第9実施形態で説明する製造方法を組み合わせることが可能である。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して製造装置の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図8に示すように、第2実施形態の製造装置は、アンコイラ2、ループコントローラ3、高速プレス加工機4、塗布装置8、切断押圧装置9、連続スクラップ巻取装置6などを備えている。すなわち、第2実施形態の製造装置は、アンコイラ2から連続スクラップ巻取装置6までの構成が直結されたレイアウトとされている。そのため、第2実施形態の製造装置は、第1実施形態で説明した連結コア巻取装置5、連結コア設置台7を備えていない。したがって、高速プレス加工機4でせん断加工された連結コア12は、そのまま塗布装置8、切断押圧装置9の順に搬送され、セグメント型積層コア1に加工される。連続スクラップ巻取装置6は、連続スクラップ13と連結部15の両方を巻き取り回収する。なお、図示は省略するが、連続スクラップ巻取装置6とは別に、連結部15を巻き取り回収する連結部スクラップ巻取装置10を設置してもよい。
【0048】
以上説明した第2実施形態の製造装置も、第1実施形態のものと同一の作用効果を奏することが可能である。なお、第1実施形態と第2実施形態それぞれのレイアウトは、生産数量に応じて選択すればよい。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して製造装置の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図9に示すように、第3実施形態の製造装置は、第1実施形態で説明した高速プレス加工機4に代えて、高速ローラ加工機20を備えている。なお、本実施形態の高速ローラ加工機20も、特許請求の範囲に記載の「せん断加工機」の一例に相当する。また、高速ローラ加工機20が実行するせん断加工は、特許請求の範囲に記載の「せん断工程」の一例に相当する。
【0051】
高速ローラ加工機20として、限界速度が例えば2000~10000SPM程度のものが用いられる。高速ローラ加工機20は、被加工材11の搬送方向上流側に設けられるパンチローラ21およびダイローラ22と、そのパンチローラ21およびダイローラ22に対して被加工材11の搬送方向下流側に設けられる上ローラ23および下ローラ24とを有している。高速ローラ加工機20は、高速プレス加工機4が実行する「間欠送り」とは異なり、ローラの回転による「連続送り」によって、加工スピードを飛躍的に向上することが出来る。
【0052】
図10(A)に示すように、パンチローラ21は、被加工材11の板厚方向の一方側に配置される。ダイローラ22は、被加工材11の板厚方向の他方側に、被加工材11を挟んでパンチローラ21と対向する位置に配置される。
上ローラ23は、パンチローラ21に対して被加工材11の搬送方向下流側にて、被加工材11の板厚方向の一方側に配置される。下ローラ24は、ダイローラ22に対して被加工材11の搬送方向下流側にて、被加工材11の板厚方向の他方側に、被加工材11を挟んで上ローラ23と対向する位置に配置される。パンチローラ21、ダイローラ22、上ローラ23、下ローラ24はそれぞれ、自身の回転軸21a、22a、23a、24aを中心として自転するように構成されている。
【0053】
図10(C)および図10(D)に示すように、ダイローラ22の外周面には、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断するための凹凸(即ち、ダイ221)が設けられている。図示は省略するが、パンチローラ21の外周面にも、ダイローラ22の外周面の凹凸に対応した凹凸(即ち、パンチ211)が設けられている。
【0054】
一方、図10(F)および図10(G)に示すように、下ローラ24の外周面は、平坦な曲面となっている。図示は省略するが、上ローラ23の外周面も、平坦な曲面となっている。
【0055】
次に、高速ローラ加工機20により被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断する方法について、図11図14を参照して説明する。なお、図11図14では、パンチ211、ダイ221、連結コア12および連続スクラップ13等の形状を簡略化して記載している。
【0056】
図11は、パンチローラ21とダイローラ22により、被加工材11をその板厚の途中までせん断する様子を示している。図11に示すように、パンチローラ21に設けられたパンチ211は、搬送方向に移動する被加工材11に接する際(即ち、下死点を通過する際)、パンチローラ21の回転により、被加工材11の面に対して角度を変えつつ上下に移動する。図11では、パンチローラ21のパンチ211が下死点を通過する際に、搬送方向に移動する被加工材11に対して角度を変える様子を破線211a、実線211b、一点鎖線211cにて示している。このように、パンチローラ21のパンチ211は、ダイローラ22のダイ221の穴に対しても角度を変えつつ上下に移動する。そのため、仮にそのパンチ211をダイ221の穴に挿入する構成とすれば、パンチ211とダイ221の穴の内壁とが接触する恐れがある。そこで、本実施形態では、パンチローラ21とダイローラ22は、被加工材11の板厚方向の一方側から他方側へ向けて被加工材11の板厚の途中まで、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断する構成としている。したがって、パンチローラ21のパンチ211はダイローラ22のダイ221の穴に挿入されないので、パンチローラ21のパンチ211とダイローラ22のダイ221の穴の内壁とが接することはない。
【0057】
図12は、パンチローラ21とダイローラ22を通過した被加工材11の状態を示している。図12に示すように、パンチローラ21とダイローラ22を通過した被加工材11は、パンチローラ21のパンチ211によって押された部位が、被加工材11の板厚の途中までダイローラ22側に突出した状態となっている。すなわち、被加工材11は、その板厚の途中まで、連結コア12と連続スクラップ13とにせん断される。
【0058】
続いて、図13は、上ローラ23と下ローラ24により被加工材11を完全にせん断する様子を示している。図13に示すように、上ローラ23と下ローラ24は、搬送方向に移動する被加工材11に接する際、被加工材11のうちパンチローラ21のパンチ211によって押された部位を、被加工材11の板厚方向の他方側から一方側へ向けて押し戻すように構成されている。これにより、被加工材11は、その板厚の全部において、連結コア12と連続スクラップ13とに完全にせん断される。
【0059】
図14は、上ローラ23と下ローラ24を通過した被加工材11の状態を示している。図14に示すように、上ローラ23と下ローラ24を通過した被加工材11は、連結コア12と連続スクラップ13とに完全にせん断される。
【0060】
以上説明した第3実施形態の製造装置は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第3実施形態では、被加工材11のせん断加工を、ローラの外周面にパンチ211を有するパンチローラ21と、ローラの外周面にダイ221を有するダイローラ22とを備える高速ローラ加工機20により実施する。
これによれば、連結コア12と連続スクラップ13との間に抜きカスが形成されないので、高速ローラ加工機20を使用することが可能である。第1実施形態等で説明した高速プレス加工機4は間欠送りにより加工を行うものであるので、限界速度が例えば1000~2000SPM程度である。それに対し、第3実施形態で説明した高速ローラ加工機20は、高速プレス加工機4による限界速度をブレークスルーするものである。すなわち、高速ローラ加工機20は、被加工材11の間欠送りではなく、被加工材11の連続送りを行うものであることから、加工の限界速度を飛躍的に向上させることが可能となる。具体的には、高速ローラ加工機20により、例えば2000~10000SPM以上の加工スピードの高速化が実現可能である。
【0061】
(2)第3実施形態では、高速ローラ加工機20が備えるパンチローラ21とダイローラ22は、被加工材11の板厚方向の一方側から他方側へ向けて被加工材11の板厚の途中まで、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断する構成である。そして、上ローラ23と下ローラ24は、被加工材11の板厚方向の他方側から一方側へ向けて押し戻し、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とに完全にせん断する構成である。
これにより、高速ローラ加工機20は、パンチローラ21のパンチ211が、ダイローラ22のダイ221の穴に挿入されない構成となる。そのため、高速ローラ加工機20は、パンチ211およびダイ221の刃先の摩耗等を抑制しつつ、連結コア12と連続スクラップ13とを高速かつ確実にせん断することが可能である。
【0062】
(第4~第8実施形態)
第4~第8実施形態では、連結コア12に設けられるパイロット穴16について説明する。
【0063】
(第4実施形態)
図15に示すように、パイロット穴16は、連結コア12のうち連結部15に設けられる。パイロット穴16は、切断押圧装置9の切断部で連結コア12を複数のコア14と連結部15とに切断する際に、連結コア12の位置決めに用いられるものである。切断押圧装置9の切断部では、パイロット穴16の位置を基準として、連結部15とコア14との切断が行われる。
【0064】
パイロット穴16は、第1実施形態で説明した高速プレス加工機4または第3実施形態で説明した高速ローラ加工機20で開けることが可能である。したがって、パイロット穴16は、被加工材11を連結コア12と連続スクラップ13とにせん断するせん断加工と同時に実施される。なお、高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20によるパイロット穴16の加工は、特許請求の範囲に記載の「パイロット穴加工工程」の一例に相当する。
【0065】
図16および図17に示すように、第4実施形態では、高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20は、パイロット穴16の縁部161の全周が連結部15と繋がった状態でパイロット穴16を加工する。なお、それに限らず、高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20は、パイロット穴16の縁部161の少なくとも一部が連結部15と繋がっている状態でパイロット穴16を加工してもよい。そのように加工することで、パイロット穴16をせん断加工する際に、カスが発生することが無く、加工スピードを高速化できる。
【0066】
次に、高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20による、パイロット穴16の加工方法の一例を、図18図20を参照して説明する。
【0067】
図18図20に示すように、パイロット穴16の加工には、先端の尖ったパンチ25が用いられる。パンチ25は、被加工材11の板厚方向に往復移動する。そのパンチ25を被加工材11に突き刺すことで、パイロット穴16の縁部161の少なくとも一部が連結部15と繋がっている状態でパイロット穴16を加工することが可能である。したがって、高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20で被加工材11にパイロット穴16を加工する際に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。そのため、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20において、加工スピードの高速化を実現することができる。
【0068】
(第5実施形態)
図21図23に示すように、第5実施形態では、パイロット穴16は、その縁部161のうち周方向の一部が連結部15と繋がっている状態で加工される。すなわち、図23に示すように、被加工材11のうちパイロット穴16に対応する部位162は、その一部がパイロット穴16の縁部161にて繋がった状態で被加工材11の板厚方向に折り曲げられる。このようにパイロット穴16を形成しても、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20で被加工材11にパイロット穴16を加工する際に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。そのため、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20において、加工スピードの高速化を実現することができる。
【0069】
(第6実施形態)
図24図26に示すように、第6実施形態では、パイロット穴16は、縁部161のうち周方向の一部または全部が連結部15と繋がっており、底部163を有する形状とされる。すなわち、被加工材11のうちパイロット穴16に対応する部位は、パイロット穴16の縁部161にて繋がった状態で、被加工材11の板厚方向に押圧されて凹んだ形状の底部163となる。このようにパイロット穴16を形成しても、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20で被加工材11にパイロット穴16を加工する際に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。そのため、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20において、加工スピードの高速化を実現することができる。
【0070】
(第7実施形態)
第7実施形態は、第6実施形態の変形例である。図27に示すように、第7実施形態では、パイロット穴16は、縁部161の2か所が連結部15と繋がっている形状で加工される。すなわち、被加工材11のうちパイロット穴16に対応する部位164、165は、パイロット穴16の縁部161にて繋がった状態で被加工材11の板厚方向に折り曲げられる。このようにパイロット穴16を形成しても、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20で被加工材11にパイロット穴16を加工する際に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。そのため、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20において、加工スピードの高速化を実現することができる。
【0071】
(第8実施形態)
第8実施形態について、図28および図29A図29Eを参照して説明する。図28は、被加工材11に対し、第1パイロット穴連続スクラップ31、第1連結コア121、連続スクラップ13、第2連結コア122、第2パイロット穴連続スクラップ32となる部位を配置した様子を示す図である。図29A図29Eはそれぞれ、被加工材11からせん断された第1パイロット穴連続スクラップ31、第1連結コア121、連続スクラップ13、第2連結コア122、第2パイロット穴連続スクラップ32を示している。
【0072】
図28図29B図29Dに示すように、第8実施形態では、パイロット穴16は、半円状に形成され、その穴の一部が連結部15の外側に開放された状態で形成される。一方、図28図29A図29Eに示すように、被加工材11のうちパイロット穴16に対応する部位166は、第1パイロット穴連続スクラップ31または第2パイロット穴連続スクラップ32に繋がった状態となる。したがって、このようにパイロット穴16を形成しても、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20で被加工材11にパイロット穴16を加工する際に抜きカスが形成されず、カス上がりが生じることが無い。そのため、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20において、加工スピードの高速化を実現することができる。
【0073】
(第9実施形態)
第9実施形態について、図30図31A図31Cおよび図32を参照して説明する。第9実施形態は、上述した第1~第8実施形態に対し、コア14の形状を変形したものである。
【0074】
上述した第1~第8実施形態では、コア14は、電機子のヨークの一部を形成するヨーク形成部141の外周側が円弧状であった。それに対し、図30図31Aおよび図31Cに示すように、第9実施形態では、コア14は、ヨーク形成部141の外周側が直線状となっている。そのため、第9実施形態では、連結コア12において複数のコア14と連結部15との接続箇所が、第1~第8実施形態で説明したものよりも長くなっている。
【0075】
図32に示すように、切断押圧装置9は、連結コア12からコア14を切断する。なお、図32では、連結コア12から例えば4個のコア14を多数取りする様子を示している。
【0076】
以上説明した第9実施形態で示したコア14の形状においても、上述した第1~第8実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0078】
例えば、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて、アンコイラ2から連続スクラップ巻取装置6までの構成を直結したレイアウトとしてもよい。
【0079】
また、例えば、上記各実施形態では、パイロット穴16は高速プレス加工機4または高速ローラ加工機20で開けるものとして説明したが、それに限らず、パイロット穴16は、高速プレス加工機4および高速ローラ加工機20とは別の装置及び別の工程で開けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
2 アンコイラ(搬送部)
4 高速プレス加工機(せん断加工機)
5 連結コア巻取装置(搬送部)
6 連続スクラップ巻取装置(搬送部)
11 被加工材
12 連結コア
13 連続スクラップ
14 コア
15 連結部
20 高速ローラ加工機(せん断加工機)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13
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図28
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図30
図31A
図31B
図31C
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図34