(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147815
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/30 20060101AFI20231005BHJP
H01Q 5/42 20150101ALI20231005BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20231005BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20231005BHJP
H01Q 5/357 20150101ALN20231005BHJP
【FI】
H01Q21/30
H01Q5/42
H01Q21/06
H01Q21/24
H01Q5/357
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055534
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】水村 慎
(72)【発明者】
【氏名】曽我 智之
(72)【発明者】
【氏名】島田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅之
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AA13
5J021AB03
5J021GA08
5J021HA06
5J021HA10
5J021JA03
5J021JA05
(57)【要約】
【課題】異なる周波数帯域に対応する複数のアレイアンテナを組み合わせたアンテナ装置において、周波数特性の低下を抑制しながら、小型化を図る。
【解決手段】異なる周波数帯域に対応するアンテナ素子20を配列して構成され、LB素子21は、直交する2方向の放射部を有する2系統の素子2組を四方に配置して形成される正方形領域を並べるように配置され、MB素子22は、LB素子21による正方形領域の並びのうち中央に位置する正方形領域を含む複数の正方形領域にまたがって配置され、HB1素子23およびHB2素子24は、LB素子21による正方形領域の並びのうち角に位置する正方形領域を含む1または複数の正方形領域に、MB素子22の配置とは重ならないように配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数帯域に対応する3種類以上のアンテナ素子を配列して構成され、
第1のアンテナ素子は、直交する2方向の放射部を有する2系統のアンテナ素子2組を四方に配置して形成される正方形領域を並べるように配置され、
第2のアンテナ素子は、前記正方形領域の並びのうち中央に位置する正方形領域を含む複数の正方形領域にまたがって配置され、
第3のアンテナ素子は、前記正方形領域の並びのうち角に位置する正方形領域を含む1または複数の正方形領域に、前記第2のアンテナ素子の配置とは重ならないように配置されることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2のアンテナ素子の1組の配列は、前記第1のアンテナ素子による正方形領域の並ぶ方向に対して45度傾けた方向に並べて構成されることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2のアンテナ素子は、2系統の相互に直交する放射部を有し、当該放射部を前記第1のアンテナ素子の放射部に対して45度傾けて配置されることを特徴とする、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第3のアンテナ素子の1組の配列は、前記第1のアンテナ素子による前記正方形領域の並びにおける一つの正方形領域内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第3のアンテナ素子は、2系統の相互に直交する放射部を有し、当該放射部を前記第1のアンテナ素子の放射部に対して45度傾けて配置されることを特徴とする、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第3のアンテナ素子の配列は、前記第1のアンテナ素子による前記正方形領域の並びにおいて、対角に位置する2か所に2組配置されることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1乃至第3のアンテナ素子とは異なる周波数帯域に対応する第4のアンテナ素子をさらに備え、
前記第4のアンテナ素子の配列は、前記第1のアンテナ素子による前記正方形領域の並びにおいて、前記第3のアンテナ素子の配列が配置される対角とは異なる対角の2か所に2組配置されることを特徴とする、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子よりも高い周波数帯域に対応するアンテナ素子であり、
前記第3のアンテナ素子は、前記第2のアンテナ素子よりもさらに高い周波数帯域に対応するアンテナ素子であることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第3のアンテナ素子よりもさらに高い周波数帯域に対応する第4のアンテナ素子をさらに備え、
前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子とは、前記第1のアンテナ素子による前記正方形領域の並びにおいて、それぞれ異なる対角の2か所に2組ずつ配置されることを特徴とする、請求項8に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局等に用いられるアンテナ装置として、指向性の制御が容易なアレイアンテナがある。また、この種のアンテナ装置において、広い周波数帯域に対応するため、それぞれ異なる周波数帯域に対応した数種類のアンテナ素子のアレイを組み合わせて構成することが行われる。
【0003】
特許文献1には、一方の面に複数の放射素子が縦横に配列された誘電体板を有し、放射素子が複数のグループに小分けされ、各グループ間の間隔と各放射素子の間隔とが異なっているアレイアンテナ装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、低周波アレーアンテナと高周波アレーアンテナとを配置し、低周波アレーアンテナは、4つの同一形状の素子からなり、4つの素子が、正方形を形成するように、正方形の頂点の位置にそれぞれ配置され、高周波アレーアンテナは、4つの同一形状の素子からなり、4つの素子が、平面基板上で正方形を形成するように、正方形の頂点の位置にそれぞれ配置され、それぞれの正方形の中心を同じ位置とし、高周波アレーアンテナを、低周波アレーアンテナに対し45度ずらして配置した2周波共用アンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-347842号公報
【特許文献2】特開2013-157920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンテナ装置は、設置作業の軽減や、設置後の風等の影響を低減する等の観点から、より小型であることが求められる。
【0007】
本発明は、異なる周波数帯域に対応する複数のアレイアンテナを組み合わせたアンテナ装置において、周波数特性の低下を抑制しながら、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、異なる周波数帯域に対応する3種類以上のアンテナ素子を配列して構成され、第1のアンテナ素子は、直交する2方向の放射部を有する2系統のアンテナ素子2組を四方に配置して形成される正方形領域を並べるように配置され、第2のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子による正方形領域の並びのうち中央に位置する正方形領域を含む複数の正方形領域にまたがって配置され、第3のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子による正方形領域の並びのうち角に位置する正方形領域を含む1または複数の正方形領域に、第2のアンテナ素子の配置とは重ならないように配置されることを特徴とする、アンテナ装置である。
より詳細には、第2のアンテナ素子の1組の配列は、第1のアンテナ素子による正方形領域の並ぶ方向に対して45度傾けた方向に並べて構成される。
さらに詳細には、第2のアンテナ素子は、2系統の相互に直交する放射部を有し、この放射部を第1のアンテナ素子の放射部に対して45度傾けて配置される。
また、より詳細には、第3のアンテナ素子の1組の配列は、第1のアンテナ素子による正方形領域の並びにおける一つの正方形領域内に配置される。
さらに詳細には、第3のアンテナ素子は、2系統の相互に直交する放射部を有し、この放射部を第1のアンテナ素子の放射部に対して45度傾けて配置される。
また、好ましくは、第3のアンテナ素子の配列は、前記第1のアンテナ素子による前記正方形領域の並びにおいて、対角に位置する2か所に2組配置される。
さらに好ましくは、第1乃至第3のアンテナ素子とは異なる周波数帯域に対応する第4のアンテナ素子をさらに備え、第4のアンテナ素子の配列は、第1のアンテナ素子による正方形領域の並びにおいて、第3のアンテナ素子の配列が配置される対角とは異なる対角の2か所に2組配置される構成としても良い。
また、より詳細には、第2のアンテナ素子は、第1のアンテナ素子よりも高い周波数帯域に対応するアンテナ素子であり、第3のアンテナ素子は、第2のアンテナ素子よりもさらに高い周波数帯域に対応するアンテナ素子としても良い。
また、好ましくは、第3のアンテナ素子よりもさらに高い周波数帯域に対応する第4のアンテナ素子をさらに備え、第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とは、第1のアンテナ素子による正方形領域の並びにおいて、それぞれ異なる対角の2か所に2組ずつ配置される構成としても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる周波数帯域に対応する複数のアレイアンテナを組み合わせたアンテナ装置において、周波数特性の低下を抑制しながら、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例によるアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図2】本実施例によるアンテナ装置の正面図である。
【
図4】MB素子における1つの素子の構成を示す図である。
【
図5】HB1素子における1つの素子の構成を示す図である。
【
図6】HB2素子における1つの素子の構成を示す図である。
【
図11】LB素子の指向性パターンを示す図であり、
図11(A)は、電界面内指向性を示す図、
図11(B)は磁界面内指向性を示す図である。
【
図12】MB素子の指向性パターンを示す図であり、
図12(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図12(B)は水平面内指向性を示す図である。
【
図13】HB1素子の指向性パターンを示す図であり、
図13(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図13(B)は水平面内指向性を示す図である。
【
図14】HB2素子の指向性パターンを示す図であり、
図14(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図14(B)は水平面内指向性を示す図である。
【
図15】本実施形態によるアンテナ素子の配列の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<アンテナ装置の構成>
図1は、本実施例によるアンテナ装置の構成を示す図である。
図1に示すアンテナ装置100は、板状の基台10の一面側にアンテナ素子20を配列して構成される。基台10のアンテナ素子20が配列される側には、反射板が設けられている。以下、アンテナ装置100において基台10のアンテナ素子20が設けられた側の面を正面とする。また、図示を省略しているが、アンテナ装置100には、アンテナ素子20の配列を覆うようにカバーが取り付けられる。一例として、アンテナ装置100のサイズは、x=600mm、y=600mm、z=125mmであるものとする。
【0013】
図2は、アンテナ装置100の正面図である。アンテナ装置100の正面には、異なる周波数帯域に対応する3種類以上のアンテナ素子20が配列されている。
図2に示す例では、LB(ローバンド)素子21、MB(ミドルバンド)素子22、HB1(第1ハイバンド)素子23、HB2(第2ハイバンド)素子24の4種類のアンテナ素子20が配列されている。図では、各周波数帯域ごとのアンテナ素子20が配列される領域を破線で示している。
【0014】
LB素子21は、ローバンドの周波数帯域(例えば、0.7GHz帯および0.8GHz帯)に対応するアンテナ素子20である。LB素子21は、
図2に示すx方向(水平方向;
図2の横方向)に沿って設けられたLB素子21と、y方向(垂直方向;
図2の縦方向)に沿って設けられたLB素子21とを合わせて2MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)となっている。
【0015】
MB素子22は、ミドルバンドの周波数帯域(例えば、1.5GHz帯、1.7GHz帯および2.0GHz帯)に対応するアンテナ素子20である。MB素子22は、
図2に示すx-y方向に対して45度傾けて交差させた2つの素子を組み合わせて構成されており、一つのMB素子22で2MIMOとなっている。
【0016】
HB1素子23は、2種類のハイバンド一方の周波数帯域(例えば、2.3GHz帯、2.6GHz帯および3.5GHz帯)に対応するアンテナ素子20である。HB1素子23は、
図2に示すx-y方向に対して45度傾けて交差させた2つの素子を組み合わせて構成されており、一つのHB1素子23で2MIMOとなっている。
【0017】
HB2素子24は、2種類のハイバンド他方の周波数帯域(例えば、3.7GHz帯、4.5GHz帯および3.5GHz帯)に対応するアンテナ素子20である。HB2素子24は、
図2に示すx-y方向に対して45度傾けて交差させた2つの素子を組み合わせて構成されており、一つのHB2素子24で2MIMOとなっている。
【0018】
<アンテナ素子の構成および配置>
各アンテナ素子20および各アンテナ素子20の配列について、さらに説明する。上記のように、MB素子22、HB1素子23およびHB2素子24は、二つの素子を組み合わせて構成されているが、その一つの素子に着目して説明する。
【0019】
・LB素子21
図3は、LB素子21の構成を示す図である。LB素子21は、誘電体基板21aに放射部21bと給電部21cとを設けて構成されている。誘電体基板21aは、
図3における下側の辺を基台10の反射板に取り付けられる。放射部21bおよび給電部21cは、誘電体基板21aを挟んで両面に設けられている。
図3に示す例では、誘電体基板21aにおける紙面の手前側の面(
図3で見えている側の面)では、基台10に取り付けられる辺の中央付近から給電部21cが立ち上がり、図の右方向へ放射部21bが伸びている。また、誘電体基板21aにおける紙面の奥側の面(
図3で見えていない側の面)では、破線で示すように、基台10に取り付けられる辺の中央付近から給電部21cが立ち上がり、手前側の面の放射部21bとは反対方向へもう一つの放射部21bが伸びている。
【0020】
ここで、LB素子21が対応する周波数帯域をfc=0.839GHzとすると、誘電体基板21aの両面に設けられた二つの放射部21bを合わせた長さLBaは、170mm≒0.48λcである。また、給電部21cの長さLBbは、60mm≒0.17λcである。そして、これらの放射部21bおよび給電部21cが設けられた誘電体基板21aのサイズは、長さ(図の横方向)が172mm、高さ(図の縦方向)が80.5mmとなっている。
【0021】
図7は、LB素子21の配列を示す図である。LB素子21は、x方向に沿って配置された素子と、y方向に沿って配置された素子とで2系統となっている。
図7に示す例では、x方向に沿って3個のLB素子21を並べた素子列がy方向に4列配置されると共に、y方向に沿って3個のLB素子21を並べた素子列がx方向に4列配置されている。したがって、図示の構成では、x方向に沿って配置されたLB素子21が12個、y方向に沿って配置されたLB素子21が12個設けられている。そして、x方向に沿って配置された2個のLB素子21と、y方向に沿って配置された2個のLB素子21とにより四方を囲まれた正方形領域が形成され、この正方形領域がx方向およびy方向に沿って3×3の9領域並ぶように、LB素子21が配列されている。このLB素子21による正方形領域の3×3領域の大きさは、基台10のアンテナ素子20が設けられる面の大きさとほぼ等しい。
【0022】
・MB素子22
図4は、MB素子22における1つの素子の構成を示す図である。MB素子22は、
図4に示す素子を2個、組み合わせて構成される。2個の素子は、
図4における横方向の中央で直交し、全体として十字形となるように組み合わされる。
図4に示す素子は、誘電体基板22aに放射部22bと給電部22cとを設けて構成されている。誘電体基板22aは、
図4において下側に突出する足部が反射板に取り付けられる。放射部22bおよび給電部22cは、誘電体基板22aを挟んで両面に設けられている。
図4に示す例では、誘電体基板22aにおける紙面の手前側の面(
図4で見えている側の面)では、基台10に取り付けられる足部から給電部22cが立ち上がり、図の右方向へ放射部22bが伸びている。また、誘電体基板22aにおける紙面の奥側の面(
図4で見えていない側の面)では、破線で示すように、基台10に取り付けられ足部から給電部22cが立ち上がり、手前側の面の放射部22bとは反対方向へもう一つの放射部22bが伸びている。
【0023】
ここで、MB素子22が対応する周波数帯域をfc=1.799GHzとすると、誘電体基板22aの両面に設けられた二つの放射部22bを合わせた長さMBaは、78mm≒0.47λcである。また、給電部22cの長さMBbは、39.5mm≒0.24λcである。そして、これらの放射部22bおよび給電部22cが設けられた誘電体基板22aのサイズは、長さ(図の横方向)が80mm、高さ(図の縦方向)が46.5(=20+26.5)mmとなっている。
【0024】
図8は、MB素子22の配列を示す図である。MB素子22は、上記のように2個の素子を組み合わせて構成されており、1個のMB素子22で2系統となっている。
図8に示す例では、9個のMB素子22が、x-y方向に対して45度傾けて3個×3個の正方形(ひし形)に配列されている。また、
図8に示す例では、この9個のMB素子22は、LB素子21によって形成される複数の正方形領域にまたがって配置されている。
【0025】
ここで、MB素子22の配置についてさらに詳細に説明するため、LB素子21により基台10に形成される9個の正方形領域を次のように区別する。
図7および
図8に示す正方形領域のうち、上段の左に位置する正方形領域を「上-左領域」と呼ぶ。同様に、上段の中央に位置する正方形領域を「上-中領域」と呼ぶ。上段の右に位置する正方形領域を「上-右領域」と呼ぶ。また、中段の左に位置する正方形領域を「中-左領域」と呼ぶ。同様に、中段の中央に位置する正方形領域を「中-中領域」と呼ぶ。中段の右に位置する正方形領域を「中-右領域」と呼ぶ。また、下段の左に位置する正方形領域を「下-左領域」と呼ぶ。同様に、下段の中央に位置する正方形領域を「下-中領域」と呼ぶ。下段の右に位置する正方形領域を「下-右領域」と呼ぶ。
【0026】
上記のように正方形領域を区別すると、3個×3個のMB素子22のひし形配列のうち、4つの角に位置する4個のMB素子22は、上-中領域、中-左領域、中-右領域、下-中領域に、それぞれ配置されている。そして、他の5個のMB素子22は、中-中領域に配置されている。各MB素子22は、2個の素子が、LB素子21が配列されている方向(x-y方向)に対して45度傾くように配置されている。
【0027】
・HB1素子23
図5は、HB1素子23における1つの素子の構成を示す図である。HB1素子23は、
図5に示す素子を2個、組み合わせて構成される。2個の素子は、
図5における横方向の中央で直交し、全体として十字形となるように組み合わされる。
図5に示す素子は、誘電体基板23aに放射部23bと給電部23cとを設けて構成されている。誘電体基板23aは、
図5において下側に突出する足部が反射板に取り付けられる。放射部23bおよび給電部23cは、誘電体基板23aを挟んで両面に設けられている。
図5に示す例では、誘電体基板23aにおける紙面の手前側の面(
図5で見えている側の面)では、基台10に取り付けられる足部から給電部23cが立ち上がり、図の右方向へ放射部23bが伸びている。また、誘電体基板23aにおける紙面の奥側の面(
図5で見えていない側の面)では、破線で示すように、基台10に取り付けられ足部から給電部23cが立ち上がり、手前側の面の放射部23bとは反対方向へもう一つの放射部23bが伸びている。
【0028】
ここで、HB1素子23が対応する周波数帯域をfc=2.95GHzとすると、誘電体基板23aの両面に設けられた二つの放射部23bを合わせた長さHB1aは、61.2mm≒0.60λcである。また、給電部23cの長さHB1bは、27.4mm≒0.27λcである。そして、これらの放射部23bおよび給電部23cが設けられた誘電体基板23aのサイズは、長さ(図の横方向)が62.2mm、高さ(図の縦方向)が36(=19.5+16.5)mmとなっている。
【0029】
図9は、HB1素子23の配列を示す図である。HB1素子23は、上記のように2個の素子を組み合わせて構成されており、1個のHB1素子23で2系統となっている。
図9に示す例では、9個のHB1素子23が、x-y方向に沿って3個×3個の正方形に配列されている。また、
図9に示す例では、この9個のHB1素子23は、LB素子21によって形成される一つの正方形領域内(図示の例では、上記の正方形領域の区別において下-左領域)に収まるように配置されている。
【0030】
ここで、各HB1素子23は、2個の素子が、LB素子21が配列されている方向(x-y方向)に対して45度傾くように配置されている。上記のように、LB素子21における1個の素子を構成する誘電体基板23aの長さは62.2mmである。このため、個々の素子がx-y方向に沿うようにして3個のHB1素子23を並べて配置すると、x方向およびy方向の長さは186.6mmとなる。これは、LB素子21の長さ172mmよりも大きい。これに対し、個々の素子をx-y方向に対して45度傾けることにより、HB1素子23のx方向およびy方向のサイズは、約44(=62.2/√2)mmとなる。したがって、HB1素子23をx方向およびy方向に3個並べた長さは132mm程度となり、LB素子21の長さ172mmよりも小さい。このため、HB1素子23の配列は、LB素子21によって形成される一つの正方形領域内に収まる。
【0031】
また、
図2に示すように、HB1素子23の配列は、LB素子21によって形成される正方形領域のうち、対角に位置する2か所(
図2に示す例では、下-左領域と上-右領域)に、2組配置されている。したがって、HB1素子23の配列は、2系統の配列が2組で4系統となっている。HB1素子23は、LB素子21やMB素子22と比較して素子の大きさが小さいため、系統数を多くしている。
【0032】
・HB2素子24
図6は、HB2素子24における1つの素子の構成を示す図である。HB2素子24は、
図6に示す素子を2個、組み合わせて構成される。2個の素子は、
図6における横方向の中央で直交し、全体として十字形となるように組み合わされる。
図6に示す素子は、誘電体基板24aに放射部24bと給電部24cとを設けて構成されている。誘電体基板24aは、
図6において下側に突出する足部が反射板に取り付けられる。放射部24bおよび給電部24cは、誘電体基板24aを挟んで両面に設けられている。
図6に示す例では、誘電体基板24aにおける紙面の手前側の面(
図6で見えている側の面)では、基台10に取り付けられる足部から給電部24cが立ち上がり、図の右方向へ放射部24bが伸びている。また、誘電体基板24aにおける紙面の奥側の面(
図6で見えていない側の面)では、破線で示すように、基台10に取り付けられ足部から給電部24cが立ち上がり、手前側の面の放射部24bとは反対方向へもう一つの放射部24bが伸びている。
【0033】
ここで、HB2素子24が対応する周波数帯域をfc=4.2GHzとすると、誘電体基板24aの両面に設けられた二つの放射部24bを合わせた長さHB2aは、42mm≒0.59λcである。また、給電部24cの長さHB2bは、22mm≒0.31λcである。そして、これらの放射部24bおよび給電部24cが設けられた誘電体基板24aのサイズは、長さ(図の横方向)が43mm、高さ(図の縦方向)が27.5(=16.5+11)mmとなっている。
【0034】
図10は、HB2素子24の配列を示す図である。HB2素子24は、上記のように2個の素子を組み合わせて構成されており、1個のHB2素子24で2系統となっている。
図10に示す例では、10個のHB2素子24が、x-y方向に沿って3個×3個の正方形に配列されている。また、
図10に示す例では、この10個のHB2素子24は、LB素子21によって形成される一つの正方形領域内(図示の例では、上記の正方形領域の区別において上-左領域)に収まるように配置されている。
【0035】
ここで、各HB2素子24は、2個の素子が、LB素子21が配列されている方向(x-y方向)に対して45度傾くように配置されている。HB2素子24は、HB1素子23よりもサイズが小さいので、個々の素子がx-y方向に沿うようにして3個のHB2素子24を並べてもLB素子21の長さを超えないが、本実施形態では、HB2素子24においても個々の素子を傾けて配置することで、配列内のHB2素子24どうしの間隔を狭めている。
【0036】
また、
図2に示すように、HB2素子24の配列は、LB素子21によって形成される正方形領域のうち、対角に位置する2か所(
図2に示す例では、上-左領域と下-右領域)に、2組配置されている。したがって、HB2素子24の配列は、2系統の配列が2組で4系統となっている。HB2素子24は、LB素子21やMB素子22と比較して素子の大きさが小さいため、系統数を多くしている。
【0037】
以上のように各アンテナ素子20を配列したことにより、1組のLB素子21、1組のMB素子22、2組のHB1素子23、2組のHB2素子24の全てが、LB素子21による正方形領域の3×3領域内に配置されている。これにより、同数のアンテナ素子20を相互に重なり合うことなく配置したアンテナ装置100としては、最も小さいサイズとなる。
【0038】
また、2組ずつ設けられたHB1素子23およびHB2素子24は、それぞれ上記LB素子21による正方形領域の3×3領域における対角に位置するように設けられる。このため、2組のHB1素子23の配列どうしの間隔が、LB素子21による正方形領域の3×3領域内で最も遠い位置となるように配置される。同様に、2組のHB2素子24の配列どうしの間隔が、LB素子21による正方形領域の3×3領域内で最も遠い位置となるように配置される。このため、各2組のHB1素子23の配列どうし、HB2素子24の配列どうしをそれぞれ近接させて配置した場合と比較して、各配列どうしが相互に干渉することが抑制される。
【0039】
<アンテナ素子の特性>
図11は、LB素子21の指向性パターンを示す図である。
図11(A)は、電界面内指向性を示す図、
図11(B)は磁界面内指向性を示す図である。
図11に示す例では、何れもサイドローブは十分に小さく、メインローブの広がりは30度程度であり、良好な指向性特性を示している。
【0040】
図12は、MB素子22の指向性パターンを示す図である。
図12(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図12(B)は水平面内指向性を示す図である。MB素子22は、二つの直交する素子を45度傾けて配置されているので、垂直面内指向性および水平面内指向性の何れも偏波面が-45度となっている。
図12に示す例では、何れもサイドローブは十分に小さく、メインローブの広がりは30度程度であり、良好な指向性特性を示している。
【0041】
図13は、HB1素子23の指向性パターンを示す図である。
図13(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図13(B)は水平面内指向性を示す図である。HB1素子23は、二つの直交する素子を45度傾けて配置されているので、垂直面内指向性および水平面内指向性の何れも偏波面が-45度となっている。
図13に示す例では、何れもサイドローブは十分に小さく、メインローブの広がりは30度程度であり、良好な指向性特性を示している。
【0042】
図14は、HB2素子24の指向性パターンを示す図である。
図14(A)は、垂直面内指向性を示す図、
図14(B)は水平面内指向性を示す図である。HB2素子24は、二つの直交する素子を45度傾けて配置されているので、垂直面内指向性および水平面内指向性の何れも偏波面が-45度となっている。
図14に示す例では、何れもサイドローブは十分に小さく、メインローブの広がりは30度程度であり、良好な指向性特性を示している。
【0043】
<変形例>
上記の実施形態では、アンテナ素子20の周波数帯域ごとの配列を、LB素子21に関しては1系統につき3×4個、MB素子22、HB1素子23およびHB2素子24に関しては1系統につき3×3個としたが、各アンテナ素子20の個数は、上記実施形態の数に限定されない。本実施形態のアンテナ装置100は、各アンテナ素子20を次のように配列するものであれば良い。
【0044】
まず、LB素子21を、直交する2方向の放射部を有する2系統のアンテナ素子2組を四方に配置して形成される正方形領域を並べるように配置する。そして、MB素子22を、LB素子21による正方形領域の並びのうち中央に位置する正方形領域を含む複数の正方形領域にまたがって配置する。そして、HB1素子23およびHB2素子24を、LB素子21による正方形領域の並びのうち角に位置する正方形領域を含む1または複数の正方形領域に、それぞれ配置する。HB1素子23およびHB2素子24に関して、2組の配列を配置する場合、それぞれ対角に位置する2か所に配置する。
【0045】
図15は、本実施形態によるアンテナ素子20の配列の変形例を示す図である。
図15に示す例では、MB素子22をバツ印「×」で、HB1素子23をひし形「◇」で、HB2素子24を円「○」で、それぞれ示している。
図15に示す各アンテナ素子20の数は、LB素子21が1系統につき5×6個、MB素子22およびHB1素子23が1系統につき5×5個、HB2素子24が1系統につき6×6個である。
【0046】
図15に示す例において、LB素子21は、x方向に沿って5個のLB素子21を並べた素子列がy方向に6列配置されると共に、y方向に沿って5個のLB素子21を並べた素子列がx方向に6列配置されている。そして、x方向に沿って配置された2個のLB素子21と、y方向に沿って配置された2個のLB素子21とにより四方を囲まれた正方形領域が形成され、この正方形領域がx方向およびy方向に沿って5×5の25領域並ぶように、LB素子21が配列されている。
【0047】
MB素子22は、x-y方向に対して45度傾けて5個×5個の正方形(ひし形)に配列されている。
図15に示す例では、この25個のMB素子22は、LB素子21によって形成される複数の正方形領域にまたがって配置されている。具体的には、中央の正方形領域に5個、中央の正方形領域に対して上下左右に隣接する4つの正方形領域に4個ずつ、中央の正方形領域に対して左上、右上、左下、右下に隣接する4つの正方形領域に1個ずつのMB素子22がそれぞれ配置されている。
【0048】
HB1素子23は、x-y方向に沿って5個×5個の正方形に配列されている。
図15に示す例では、この25個のHB1素子23は、LB素子21によって形成される正方形領域の並びにおいて、左下隅の4つの正方形領域および右上隅の4つの正方形領域に1組ずつ配置されている。具体的には、1組の配列では、左下角の正方形領域に9個、左下角の正方形領域に対して上および右に隣接する2つの正方形領域に6個ずつ、左下角の正方形領域に対して右上に隣接する1つの正方形領域に4個のHB1素子23がそれぞれ配置されている。同様に、他の1組の配列では、右上角の正方形領域に9個、右上角の正方形領域に対して下および左に隣接する2つの正方形領域に6個ずつ、右上角の正方形領域に対して左下に隣接する1つの正方形領域に4個のHB1素子23がそれぞれ配置されている。
【0049】
HB2素子24は、x-y方向に沿って6個×6個の正方形に配列されている。
図15に示す例では、この36個のHB2素子24は、LB素子21によって形成される正方形領域の並びにおいて、左上隅の4つの正方形領域および右下隅の4つの正方形領域に1組ずつ配置されている。具体的には、1組の配列では、左上角の正方形、左上角の正方形領域に対して下および右に隣接する2つの正方形領域、左上角の正方形領域に対して右下に隣接する1つの正方形領域の各々に9個のHB2素子24がそれぞれ配置されている。同様に、他の1組の配列では、右下角の正方形領域、右下角の正方形領域に対して上および左に隣接する2つの正方形領域、右上角の正方形領域に対して左下に隣接する1つの正方形領域の各々に9個のHB2素子24がそれぞれ配置されている。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、LB素子21によって形成される正方形領域の並びとして、(奇数)×(奇数)領域の例(
図2の3×3領域および
図15の5×5領域)を示したが、(偶数)×(偶数)領域としても良い。この場合、MB素子22は、少なくとも中央に位置する4つの正方形領域にまたがって配置される。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10…基台、20…アンテナ素子、21…LB素子、22…MB素子、23…HB1素子、24…HB2素子、100…アンテナ装置