(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147828
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】交通量計測装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/015 20060101AFI20231005BHJP
G08G 1/04 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
G08G1/015 A
G08G1/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055554
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(71)【出願人】
【識別番号】511118506
【氏名又は名称】ハイテクインター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西米 武
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 慎也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亨
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC04
5H181EE07
(57)【要約】
【課題】車両台数と車種の検知を精度よく行う交通量計測装置を提供する。
【解決手段】走行する車両10を撮像する撮像手段2と、車両の走行方向と交差する方向へ延びる仮想線を、撮像手段によって撮像された撮像画像上に重畳して表示する表示部と、車両を含む複数の動体の予め撮像された画像を学習した検知用モデル45と、予め特定の地域で撮像された複数の車両の画像及び該車両の車種が関連付けられた車種判定用モデル46と、撮像手段によって撮像された撮像画像から、検知用モデルを基に、走行する車両を検知して追跡する動体追跡部42と、動体追跡部によって追跡される車両が、仮想線を通過したか否かを判定する通過判定部43と、仮想線を通過したと判断された車両に対して、車種判定用モデルを基に、車種の判定処理を行う車種判定部44と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車両を撮像する撮像手段と、
前記車両の走行方向と交差する方向へ延びる仮想線を、前記撮像手段によって撮像された撮像画像上に重畳して表示する表示部と、
車両を含む複数の動体の予め撮像された画像を学習した検知用モデルと、
前記撮像手段が設置される場所を含む所定のエリアで予め撮像された複数の車両の画像及び該車両の車種が関連付けられた車種判定用モデルと、
前記撮像手段によって撮像された撮像画像から、前記検知用モデルを基に、走行する前記車両を検知して追跡する動体追跡部と、
前記動体追跡部によって追跡される前記車両が、前記仮想線を通過したか否かを判断する通過判定部と、
前記仮想線を通過したと判断された前記車両に対して、前記車種判定用モデルを基に、前記車両の車種の判定処理を行う車種判定部と、を備えることを特徴とする交通量計測装置。
【請求項2】
前記動体追跡部及び前記車種判定部は、昼間モード及び夜間モードを切り替え可能であり、
前記昼間モード用の前記車種判定用モデルは、予め昼間に撮像された車両の学習用昼画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みであり、
前記夜間モード用の前記検知用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された車両の学習用夜画像及び該学習用夜画像が該車両の前方であるか又は後方であるかを関連付けて学習済みであり、
前記夜間モード用の前記車種判定用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された車両の前記学習用夜画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みであることを特徴とする請求項1に記載の交通量計測装置。
【請求項3】
前記通過判定部が、前記車両の走行方向に対する前記仮想線の位置及び角度を自動的に最適化する仮想線フィードバック手段を有することを特徴とする請求項2に記載の交通量計測装置。
【請求項4】
前記動体追跡部は、前記撮像手段によって撮像された撮像画像における所定の大きさ以上の前記車両を検知可能であり、
前記撮像画像中、前記動体追跡部が前記車両を検知可能な範囲が、前記撮像画像全体に対する所定の割合を下回る場合、前記動体追跡部が前記車両を検知可能な範囲の割合が前記撮像画像全体に対して所定の割合以上を占めるように、前記撮像手段が自動的に撮像領域をズームインすることを特徴とする請求項3に記載の交通量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通量の調査のために、道路を走行する車両を撮像し、その撮像画像に基づいて車両の通過台数を計測する交通量計測装置が知られている。例えば、特許文献1には、撮像画像に仮想的な通過線を設定し、その通過線を跨いだ車両の台数を計数するとともに、予め様々な種類の車両画像を学習させた学習済みの推定モデルにより、通過した車両の車種を推定して、車種別の交通量を計測可能な交通量計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、撮像画像に基づいて車両の通過台数を計測する交通量計測装置において、計測されたデータは、実際に通過した車両台数とその車種とを比較して、正確性に欠けるという問題がある。例えば、現在一般的に使用されている交通量計測用のフリーウェアにおいて、動体の判別のための推定モデルには、日本車の画像が学習されていないため、車種判定の誤りが非常に多い。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両台数と車種の検知を精度よく行う交通量計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、
走行する前記車両を撮像する撮像手段と、
前記車両の走行方向と交差する方向へ延びる仮想線を、前記撮像手段によって撮像された撮像画像上に重畳して表示する表示部と、
車両を含む複数の動体の予め撮像された画像を学習した検知用モデルと、
撮像手段が設置される場所を含む所定のエリアで予め撮像された複数の車両の画像及び該車両の車種が関連付けられた車種判定用モデルと、
前記撮像手段によって撮像された撮像画像から、前記検知用モデルを基に、走行する前記車両を検知して追跡する動体追跡部と、
前記動体追跡部によって追跡される前記車両が、前記仮想線を通過したか否かを判定する通過判定部と、
前記仮想線を通過したと判定された前記車両に対して、前記車種判定用モデルを基に、前記車両の車種の判定処理を行う車種判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によると、車両の検知と追跡を行うための検知用モデルと、車両の車種判定を行うための車種判定用モデルの2種類のモデルに分け、車種判定用モデルには、撮像手段が設置される場所を含む所定のエリアで予め撮像された複数の車両の画像及び該車両の車種を学習させたことで、車種判定の精度を高めることが可能となる。また、仮想線通過前は検知用モデルを用いて動体追跡部が車両の検知と追跡を実行し、仮想線通過後に車種判定用モデルを用いて車種判定部が車種の判定を実行するという2段階の処理を行うことで、車種の判定精度をより高めることが可能となる。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、
前記動体追跡部及び前記車種判定部は、昼間モード及び夜間モードを切り替え可能であり、
前記昼間モード用の前記車種判定用モデルは、予め昼間に撮像された前記車両の学習用昼画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みであり、
前記夜間モード用の前記検知用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された前記車両の学習用夜画像及び該学習用夜画像が車両の前方であるか又は後方であるかを関連付けて学習済みであり、
前記夜間モード用の前記車種判定用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された前記車両の前記学習用夜画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みであることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によると、昼間と夜間とで車種判定部が判定に用いる学習用画像を分けることで、夜間の検知率を高めることが可能となる。夜間に撮像された撮像画像は、ヘッドライトによって、車両の輪郭が昼間と異なる。そのため、夜間の交通量の計測に、昼間と同じ学習用画像を用いたのでは、検知精度が著しく低下する。本開示の技術では、夜間にヘッドライトを点灯させた状態で撮像された学習用夜画像を用いることで、ヘッドライトの影響による車両の輪郭の特徴を含めて車種を学習し、それに基づいて夜間の走行車両の車種を判定するため、夜間に走行する車両の台数だけでなく、その車種の判定の精度を高めることが可能となる。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、
前記通過判定部が、前記車両の走行方向に対する前記仮想線の位置及び角度を自動的に最適化する仮想線フィードバック手段を有することを特徴とする。
【0011】
様々な走行エリアを撮像して車両を計測する際、走行方向に対する仮想線の位置や角度によっては上記の検知精度向上の効果が十分に発揮されない場合がある。上記の構成によると、自動的に仮想線の位置及び角度を変化させ、仮想線を通過したと判断した車両の台数が、実際に通過した車両の台数に近づくように最適化することができるため、検知精度向上の効果を発揮することが可能となる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、
前記動体追跡部は、前記撮像手段によって撮像された撮像画像における所定の大きさ以上の前記車両を検知可能であり、
前記撮像画像中、前記動体追跡部が前記車両を検知可能な範囲が、前記撮像画像全体に対する所定の割合を下回る場合、前記動体追跡部が前記車両を検知可能な範囲の割合が前記撮像画像全体に対して所定の割合以上を占めるように、前記撮像手段が自動的に撮像領域をズームインすることを特徴とする。
【0013】
動体追跡部によって検知可能な範囲をズームインすることで、動体追跡部による検知及び追跡の精度を高めるとともに、車種判定部による車種の判定の精度も高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、車両台数と車種の検知を精度よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る交通量計測装置を示す概略図である。
【
図2】交通量計測装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】昼間の車種判定のための学習用昼画像の一例である。
【
図4】夜間の車種判定のための学習用夜画像の一例である。
【
図5】車種判定の流れを示すフローチャートである。
【
図10】学習用昼画像を用いた場合の検知精度を示すグラフである。
【
図11】学習用昼画像及び学習用夜画像を用いた場合の検知精度を示すグラフである。
【
図12】学習用昼画像及び学習用夜画像を用いた場合の検知精度を示す表である。
【
図13】学習用夜画像を用いた場合の夜間の検知精度を示す表である。
【
図14】仮想線フィードバックを含む車種判定の流れを示すフローチャートである。
【
図15】仮想線の位置及び角度を変化させる前の撮像画像である。
【
図16】仮想線の位置及び角度を変化させた後の撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、実施形態に係る交通量計測装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る交通量計測装置を示す概略図である。本実施形態の交通量計測装置1は、撮像手段2と、表示部3を有する管理サーバ4とを備える。
【0018】
本実施形態の撮像手段2は、CCTVカメラである。撮像手段2は、走行する車両10を撮像する。撮像手段2が撮像する撮像画像は、動画でも良く、静止画でも良い。撮像手段2は、例えば、車両10の走行エリアを照らす街灯5を有する支柱6に固定される。撮像手段2が固定される対象は、必ずしも街灯5の支柱6でなくても良いが、撮像手段2は、街灯5に照らされる範囲において車両10を撮像可能に、街灯5の近くに設置されることが好ましい。
【0019】
撮像手段2は、車両10を斜め上方から撮像する。撮像手段2の設置位置や設置角度は制限されるものではないが、例えば、取り付け高さは地上約6mであり、上下角度は水平から約30°下向きであり、左右角度は道路に対して約30°内向きである。撮像手段2は、複数の走行方向の走行エリアを撮像可能に設置されることが好ましい。
【0020】
撮像手段2は、例えば、携帯高速通信技術(LTE(Long Term Evolution))等を用いた通信回線7を介して管理サーバ4に接続される。撮像手段2によって撮像された撮像画像は、通信回線7を経由して管理サーバ4へ送信される。管理サーバ4は、撮像手段2によって撮像された撮像画像を解析して、車両10の車種を判別するとともに、車両10の台数を計数するコンピュータである。管理サーバ4は、インターネットのクラウド上に設けられるサーバであってもよい。
【0021】
車種とは、車両10の種類である。例えば、小型車、大型車等の種類である。小型車には軽自動車及び普通車を含む。大型車は、バスやトラックを含む。また、小型車を更に、軽自動車と普通車に分類可能としても良い。また、車両には二輪車を含み、二輪車と自動車とを更に分類可能としても良い。
【0022】
管理サーバ4は、表示部3を備える。本実施形態では、表示部3は、コンピュータに接続されたモニタである。表示部3はこれに限らず、例えば、スマートフォンやタブレット等の端末画面であっても良い。表示部3は、撮像手段によって撮像された撮像画像を表示する。表示部3は、撮像画像の上に仮想線を重畳して表示する(
図6~9参照)。
【0023】
仮想線は、撮像手段によって撮像された撮像画像の上に重畳して表示される仮想的な線である。仮想線は、車両の走行方向と交差する方向へ延びる。車両10は、撮像画像において仮想線を跨ぐことによって、通過したものとして計数される。仮想線は、1本に限らず、複数本表示されても良い。仮想線は、1車線に限らず、複数車線に亘って延びていても良い。
【0024】
図2は、交通量計測装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、管理サーバ4は、画像受信部41、動体追跡部42、通過判定部43、車種判定部44、検知用モデル45及び車種判定用モデル46を備える。
【0025】
画像受信部41は、撮像手段2によって撮像された撮像画像を受信する。
【0026】
動体追跡部42は、画像受信部41が受信した撮像画像から、検知用モデル45を基に、走行する車両を検知して追跡する。画像受信部41は、例えば1秒間に10コマの撮像画像を受信し、動体追跡部42は、それぞれのコマにおいて所定の確度を満たす車両を検知し、連続したコマにおいて検知した車両を追跡する。確度とは、検知用モデル45を基に、例えば、検知した物体が小型車や大型車であることの確からしさを示す値である。動体追跡部42は、受信した撮像画像における、所定の大きさ以上の車両を検知可能である。
【0027】
動体追跡部42は、検知用モデル45を基に、所定の確度(追跡開始確度)を満たす車両を検知すると、追跡を開始する。検知された車両には、撮像手段によって撮像された撮像画像の上に重畳して矩形の検知枠が表示される。追跡開始後、動体追跡部42は、所定の確度(追跡継続確度)を満たす車両であって、連続したコマにおいて重なり合うとともに移動方向が同じ検知枠に囲まれる車両を同一の車両であると判断する。動体追跡部42は、追跡中の車両が追跡途中に追跡継続確度を満たさない、又は、車両自体が検知されなかった場合であっても、移動方向が同一であって、所定のコマ数の間に再び追跡継続確度を満たす車両を検知した場合は、追跡中の車両と同一の車両であると判断する。
【0028】
動体追跡部42は、撮像画像において複数の車両を追跡可能である。動体追跡部42は、撮像画像において一方向に走行する車両のみならず、複数の方向へ走行する車両を同時に追跡可能である。
【0029】
検知用モデル45は、車両を含む複数の動体の予め撮像された画像を学習済みである。検知用モデル45の学習は、ディープラーニングを用いて行われる。検知用モデル45のディープラーニングには、例えば、Google社のフレームワークであるテンソルフローを用いることができる。検知用モデル45には、人、二輪車、小型車及び大型車を含む複数の動体の画像が学習されている。検知用モデル45は、動体追跡部42による検知と追跡に用いられるものであり、後述の車種判定部44による車種の判定には用いられない。検知用モデル45は、動体追跡部42が動体を検知し、追跡可能であれば良く、学習用に用いられる画像は、実際に撮像手段2によって撮像される車両が含まれる必要はない。
【0030】
通過判定部43は、動体追跡部42によって追跡される車両が仮想線を通過したか否かを判断し、仮想線を通過したと判断する。具体的には、動体追跡部42によって所定の確度で追跡される車両を囲う検知枠の下辺の中央座標が、仮想線を進行方向に跨いだ場合に、仮想線を通過したと判断する。
【0031】
車種判定部44は、通過判定部43が仮想線を通過したと判断した車両に対して、車種判定用モデルを基に、その車両の車種の判定処理を行う。
【0032】
車種判定用モデル46は、撮像手段2が設置される場所を含む所定のエリアで撮像された車両の画像を学習済みである。車種判定用モデル46に用いられる学習用の画像は、実際に交通量計測が行われる状況に近い状態で撮像された画像であることが好ましい。
【0033】
車種判定用モデル46の学習用画像は、例えば、実際に交通量計測が行われる走行エリアに設置された撮像手段2により、予め撮像された車両の画像であることが好ましい。実際に交通量計測に用いられる撮像手段2により予め撮像された画像は、交通量計測の際に撮像される撮像画像と同様の位置や角度で撮像されるため、交通量計測の精度を高めることが可能となる。撮像手段2が設置される場所を含む所定のエリアとは、例えば、広島市内の道路において撮像手段を設置して交通量計測を行う場合、その設置場所において予め撮像された画像だけでなく、同じ広島市内の他の道路で撮像された画像であっても良い。所定のエリアとは、例えば、日本国内を含むが、日本国外は含まないことが好ましい。車種判定用モデル46の学習は、ディープラーニングを用いて行われる。
【0034】
検知用モデル45及び車種判定用モデル46の学習用画像は、学習用昼画像及び学習用夜画像を含むことが好ましい。
図3は、昼間の車種判定のための学習用昼画像の一例である。
図3に示すように、学習用昼画像とは、予め昼間に撮像された車両の学習用昼画像である。
図4は、夜間の車種判定のための学習用夜画像の一例である。
図4に示すように、学習用夜画像とは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された車両の画像である。
【0035】
本実施形態の交通量計測装置1は、仮想線に対する車両の通過方向と、通過した車両の台数及びその車種を関連付けて記録することが可能である。
【0036】
動体追跡部42による車両の検知及び追跡と、車種判定部44による計数及び車種の判定は、それぞれディープラーニングを用いて行われる。動体追跡部42による検知用モデル45に基づく車両の検知及び追跡と、車種判定部44による車種の判定を、仮想線に対する車両の通過の判定の前後に分けて行うことで、車種判定部44による車種の判定の精度を高めることができる。
【0037】
(車種判定処理)
次に、
図5から
図9に基づいて、車種判定と車両計数の流れを説明する。
図5は、車種判定の流れを示すフローチャートである。
図6から
図9は、表示部に表示される撮像画像の一例であって、
図6から
図9の順に時系列に沿う昼間の撮像画像である。
【0038】
まず、画像受信部41が、撮像手段2から、車両10を撮像した撮像画像を受信する(S11)。画像受信部41は、受信した撮像画像を動体追跡部42へ送出する。
【0039】
動体追跡部42は、検知用モデル45に基づいて、撮像画像において所定の確度(追跡開始確度)を満たす車両10を検知する(S12)。動体追跡部42は、検知した車両10を囲むように検知枠を生成する。検知枠は、撮像手段2によって撮像された撮像画像上に重畳して表示される。
【0040】
表示部3には、
図6のような画像が表示される。
図6は、動体追跡部42が車両10を追跡し始めてT秒後に撮像された撮像画像である。
図6には、手前側に2車線、奥側に3車線の道路が映っている。奥側の道路には、車両の走行方向と交差する方向へ仮想線L1が延びる。仮想線L1は、奥側の3車線に亘って延びている。手前側の道路には、車両の走行方向と交差する方向へ仮想線L2が延びる。仮想線L2は手前側の2車線に亘って延びている。仮想線L1,L2は、撮像手段2によって撮像された撮像画像上に重畳して表示されている。
【0041】
奥側の車線には、左側から右側へ走行する車両10が映っている。車両10はトラックである。道路の外側には停止車両20が映っている。停止車両20は普通車である。車両10,20は、動体追跡部42により検知され、全体を矩形の検知枠で囲まれている。
【0042】
動体追跡部42は、車両10を追跡開始後、連続したコマにおいて所定の確度(追跡継続確度)を満たす車両であって、連続したコマにおいて検知枠が重なり合うとともに、検知枠の移動方向が同じ車両を、同一の車両であると判断し、追跡する(S13)。動体追跡部42において、検知用モデル45は、車両10の撮像画像と学習用画像とを比較して、車両10の確度を算出する。動体追跡部42において、算出された確度は、表示部3において、車両10を囲む検知枠の外に表示される。例えば、
図6において、車両10の確度は0.57 truck(大型車)と表示されており、大型車としての確からしさはやや低い。
【0043】
通過判定部43は、動体追跡部42によって追跡される車両10が、仮想線L1を通過したか否かを判定する(S14)。通過判定部43は、動体追跡部42によって所定の確度で追跡される車両10を囲う検知枠の下辺の中央座標が、仮想線L1を進行方向に跨いだ際に、仮想線L1を通過したと判断する。
【0044】
図7において、車両10は、仮想線L1の通過前の位置にある。
図7では、検知枠は、車両10の前方部分のみを囲むように表示されている。このとき、動体追跡部42は、車両10の全体ではなく、前方部分のみを誤って検知している。
図7における、車両10の確度は0.53 car(小型車)であり、大型車を小型車と誤って検知している。
【0045】
図8において、車両10は、仮想線L1上を走行している。
図8では、検知枠が車両10の全体を囲むように表示されている。動体追跡部42は、車両10の全体を検知している。
図7における、車両10の確度は0.79 truck(大型車)である。
【0046】
図6から
図8に示すように、車両10が仮想線L1上に差し掛かるまでに算出された確度のうち、
図8の確度が最も大きいが、これらは仮想線L1の通過前における検知及び追跡のための確度であって、車種の判定には用いられない。
【0047】
動体追跡部42は、追跡中の車両10が仮想線L1を通過中に追跡継続確度を満たさない、又は、車両自体が検知されなかった場合であっても、移動方向が同一であって、所定のコマ数の間に再び追跡継続確度を満たす車両を検知した場合は、追跡中の車両と同一の車両10であると判断し、通過判定部43はそれを基に1台の車両10が仮想線L1を通過したと判定する(S15)。
【0048】
図9において、車両10は、仮想線L1を通過したと判定されている。車種判定部44は、仮想線L1を通過したと判定された車両10に対して、車種判定用モデル46を用いて車両10の車種の判定を行う(S16)。検知枠が車両10の全体を囲むように表示されている。車種判定部44は、車両10の全体を検知し、確度0.81 truck(大型車)と判定している。
【0049】
交通量計測装置1は、車種判定部44による車種の判定結果及び通過した車両の台数を関連付けて、車両の計測結果として出力する(S17)。
【0050】
(実施形態の効果)
車両の検知と追跡を行うための検知用モデル45と、車両の車種判定を行うための車種判定用モデル46の2種類のモデルに分け、車種判定用モデル46には、撮像手段2が設置される場所を含む所定のエリアで予め撮像された複数の車両の画像及び該車両の車種を学習させたことで、車種判定の精度を高めることが可能となる。また、仮想線通過前は検知用モデル45を用いて動体追跡部42が車両の検知と追跡を実行し、仮想線通過判定後に車種判定用モデル46を用いて車種判定部44が車種の判定を実行するという2段階の処理を行うことで、車種の判定精度をより高めることが可能となる。
【0051】
(昼間モードと夜間モードの切り替え)
本実施形態においては、検知精度を更に高めるため、動体追跡部42及び車種判定部44は、昼間モード及び夜間モードを切り替え可能である。
【0052】
昼間モード用の検知用モデル45は、予め昼間に撮像された車両を含む複数の動体の学習用昼画像を学習済みである。昼間モードにおいて、動体追跡部42は、昼間モード用の検知用モデル45を用いて車両を検知及び追跡する。
【0053】
昼間モード用の車種判定用モデル46は、予め昼間に撮像された車両の学習用昼画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みである。昼間モードにおいて、車種判定部44は、昼間モード用の車種判定用モデル46に基づいて、昼間に走行する車両の車種を判定する。
【0054】
前記夜間モード用の前記検知用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された車両の学習用夜画像及び該学習用夜画像が車両の前方であるか又は後方であるかを関連付けて学習済みである。夜間モードにおいて、動体追跡部42は、夜間モード用の検知用モデル45を用いて夜間に走行する車両を検知及び追跡する。
【0055】
夜間モード用の前記車種判定用モデルは、予め夜間に街灯の下でヘッドライトを点灯させた状態で撮像された車両の前記学習用夜画像及び該車両の車種を関連付けて学習済みである。夜間モードにおいて、車種判定部44は、夜間モード用の車種判定用モデル46を用いて夜間に走行する車両の車種を判定する。
【0056】
夜間に撮像された車両10の撮像画像は、ヘッドライトによって、車両10の輪郭が昼間とは異なる。そのため、夜間の交通量の計測において、昼間と同じ学習用画像を用いたのでは、検知精度が低下する。
【0057】
図10は、学習用昼画像を用いた場合の検知精度を示すグラフである。具体的には、
図10は、日の入り前後の交通量の計測を、昼間モードで行った場合の検知成功率を示すグラフである。縦軸は、検知成功率[%]を示し、横軸は時刻を示す。検知成功率とは、通過する車両を目視で計数した実際の車両通過台数を100%として、交通量計測装置が計数した車両通過台数をパーセンテージで示したものである。
【0058】
図10に示すように、昼間モードを用いた場合、日の入りの約15分前から検知率が顕著に低下する。日の入りから約30分後の暗い状態では、検知成功率は1桁であった。
【0059】
図11は、夜間モードを用いた場合の検知精度を示すグラフである。具体的には、
図11は、日の入り前後の交通量の計測を、夜間モードで行った場合の検知成功率を示すグラフである。縦軸は、検知成功率[%]を示し、横軸は時刻を示す。
図10と
図11は、車種判定部による判定を昼間モードで行った場合と、夜間モードで行った場合の違いであり、その他の条件はほぼ同じである。
【0060】
図11に示すように、夜間モードを用いた場合、日の入り前後で検知成功率を略100%に保っており、
図10のような顕著な低下は見られなかった。
【0061】
図12は、昼間モード及び夜間モードを用いた場合の検知精度を示す表である。手前から奥側へ通過する車両と、奥側から手前側へ通過する車両の、2方向の走行車両を計数している。
図12中、成功率とは、目視で計数した実際の車両台数を100%として、交通量計測装置が、検知に成功した車両台数をパーセンテージで示したものである。車両の走行方向に関わらず、昼間は97%以上、夜間は99%以上の検知精度であった。
【0062】
図12に示すように、昼間には昼間モード、夜間には夜間モードへ切り替えて使用することで、時間帯に拠らず、高い検知成功率で交通量の計数を行うことが可能となる。
【0063】
図13は、夜間モードを用いた場合の車種判定の精度を示す表である。
図13中の正解率とは、目視によって確認された実際の車種別の車両通過台数を100%として、交通量計測装置が、正しく判定した車種別の車両通過台数をパーセンテージで示したものである。
図13に示すように、本実施形態の交通量計測装置では、夜間において、通過する車両の種類が小型車又は大型車であることを、95%という高い確率で正しく判定した。このように、夜間には夜間モードを使用することで、従来はほとんど不可能であった夜間における車種の判別が高い正解率で可能となった。
【0064】
本実施形態では、
図4に示すような、夜間にヘッドライトを点灯させた状態で撮像された学習用夜画像を用いることで、ヘッドライトの影響による車の輪郭の特徴を含めて車種を学習し、それに基づいて夜間の走行車両の車種を判定するため、夜間に走行する車両の台数とその車種の精度を顕著に高めることが可能となる。
【0065】
(実施形態2)
図14は、実施形態2による車種判定の流れを示すフローチャートである。本実施形態は、検知物体の大きさ判定手段及び仮想線フィードバック手段を有する点で上記実施形態1と異なる。以下の説明において、上記実施形態1と同様の構成については同じ符号を用いる。
【0066】
まず、画像受信部41が、撮像手段2から、車両を撮像した撮像画像を受信する(S21)。画像受信部41は、受信した撮像画像を動体追跡部42へ送出する。
【0067】
動体追跡部42は、走行する車両10を検知する(S22)。動体追跡部42は検知した車両10を、囲むように検知枠を生成し、検知枠を撮像手段2によって撮像された画像上に重畳して表示する。
【0068】
撮像手段2は、動体追跡部42が検知した車両10の検知場所分布から車両10の大きさを最適化する(S23)。検知場所分布とは、撮像手段2によって撮像された撮像画像のうち、動体追跡部42が走行する車両を検知可能な場所の分布である。具体的には、撮像画像中、動体追跡部42が車両を検出可能な範囲が、撮像画像全体に対する所定の割合(例えば6割)を下回る場合、動体追跡部42が車両を検知可能な範囲の割合が撮像画像全体に対して所定の割合(6割)以上を占めるように、撮像手段2が自動的に撮像領域をズームインする。撮像手段2は、例えば光学ズームによって撮像画像を拡大する。車両10の検知場所分布から車両10の大きさを自動で最適化することで、検知精度を高めることができる。
【0069】
動体追跡部42は、車両10を追跡開始後、連続したコマにおいて所定の確度(追跡継続確度)を満たす車両であって、連続したコマにおいて検知枠が重なり合うとともに、検知枠の移動方向が同じ車両を、同一の車両であると判断し、追跡する(S24)。
【0070】
通過判定部43は、動体追跡部42によって追跡される車両10が、仮想線L1を通過したか否かを判定する(S25)。
【0071】
本実施形態の交通量計測装置は、仮想線フィードバック手段を有する。仮想線フィードバック手段は、交通量計測装置の設置の段階で、検知精度を高めるための最適化に用いられる。仮想線フィードバック手段は、仮想線最適化ステップ(S26)において、車両の走行方向に対する仮想線L1の位置及び角度を変化させ、仮想線を通過したと判断した車両の台数が、実際に通過した車両の台数に近づくように自動で最適化する。
【0072】
図15は、ズームイン並びに仮想線の位置及び角度を変化させる前の撮像画像である。
図15において、交通量計測装置の車両台数の検知率は66%であった。
図16は、動体追跡部42が車両を検知可能な範囲の割合が
図15よりも広がるように、撮像手段2が撮像領域をズームインするとともに、仮想線フィードバック手段を用い、仮想線の位置及び角度を変化させた後の撮像画像である。
図16の仮想線の位置及び角度において、交通量計測装置の車両台数の検知率は100%であり、顕著に改善された。
図16に示すように、仮想線の位置及び角度を変化させることにより、検知精度が最も高くなるように最適化することが可能となる。
【0073】
動体追跡部42は、追跡中の車両10が仮想線L1を通過中に追跡継続確度を満たさない、又は、車両自体が検知されなかった場合であっても、移動方向が同一であって、所定のコマ数の間に再び追跡継続確度を満たす車両を検知した場合は、追跡中の車両と同一の車両10であると判断し、通過判定部43はそれを基に1台の車両10が仮想線L1を通過したと判定する(S27)。
【0074】
車種判定部44は、仮想線L1を通過したと判定された車両10に対して、車種判定用モデル46を用いて車種の判定を行う(S28)。
【0075】
交通量計測装置1は、車種判定部44による車種の判定結果及び通過した車両の台数を関連付けて、車両の計測結果として出力する(S29)。
【0076】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0077】
1 交通量計測装置
2 撮像手段
3 表示部
4 管理サーバ
5 街灯
6 支柱
7 通信回線
10 車両
20 車両
41 画像受信部
42 動体追跡部
43 通過判定部
44 車種判定部
45 検知用モデル
46 車種判定用モデル
L1 仮想線
L2 仮想線