(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014784
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】処理装置、検出システム、処理方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20230124BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20230124BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/265
G01N29/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118942
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】505204114
【氏名又は名称】東芝検査ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】千葉 康徳
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真拡
(72)【発明者】
【氏名】渥美 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB07
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC03
2G047CA01
2G047DB02
2G047DB14
2G047EA10
2G047GA04
2G047GA13
2G047GB02
2G047GG21
2G047GG24
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】接合体の溶接部の位置をより精度良く得られる、処理装置、検出システム、処理方法、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】実施形態に係る処理装置は、接合体に向けて第1方向に沿って超音波を送信して得られた反射波の強度データを受信する。前記装置は、前記強度データを用いて、前記接合体の溶接部を特定する。前記装置は、前記第1方向と交差する第1面における前記溶接部の第1中心位置を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合体に向けて第1方向に沿って超音波を送信して得られた反射波の強度データを受信し、
前記強度データを用いて、前記接合体の溶接部を特定し、
前記第1方向と交差する第1面における前記溶接部の第1中心位置を算出する、処理装置。
【請求項2】
前記強度データの前記第1面における第2中心位置と、前記第1中心位置と、の間の距離を算出する、請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記距離を用いて前記接合体の良否を判定する、請求項2記載の処理装置。
【請求項4】
前記距離に基づく値が第1閾値を超えるとき、ユーザへの第1報知を出力する、請求項2又は3に記載の処理装置。
【請求項5】
検出された前記溶接部の径を用いて前記溶接部を検査する、請求項2~4のいずれか1つに記載の処理装置。
【請求項6】
前記距離を用いて、前記溶接部の検査の正確性を判定する、請求項5記載の処理装置。
【請求項7】
前記距離に基づく値が第2閾値を超えるとき、ユーザへの第2報知を出力する、請求項6記載の処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の処理装置と、
前記超音波を送信し、前記反射波を検出し、前記強度データを前記処理装置へ送信する検出器と、
を備えた検出システム。
【請求項9】
前記検出器が先端に設けられたマニピュレータをさらに備えた、請求項8記載の検出システム。
【請求項10】
前記マニピュレータを制御する制御装置をさらに備え、
前記強度データの前記第1面における第2中心位置と、前記第1中心位置と、の間の距離に基づく値が第1閾値を超えるとき、前記制御装置は、前記距離が短くなるように、前記マニピュレータを動作させて前記検出器の位置を補正し、
前記検出器は、補正された前記位置で、前記溶接部に対する前記超音波の送信及び前記反射波の検出を実行する、請求項9記載の検出システム。
【請求項11】
接合体に向けて第1方向に沿って超音波を送信して得られた反射波の強度データを受信し、
前記強度データを用いて、前記接合体の溶接部を特定し、
前記第1方向と交差する第1面における前記溶接部の第1中心位置を算出する、処理方法。
【請求項12】
処理装置に、
接合体に向けて第1方向に沿って超音波を送信して得られた反射波の強度データを受信させ、
前記強度データを用いて、前記接合体の溶接部を特定させ、
前記第1方向と交差する第1面における前記溶接部の中心位置を算出させる、
プログラム。
【請求項13】
請求項12記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理装置、検出システム、処理方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
接合体に向けて超音波を送信し、反射波を検出するシステムがある。このシステムについて、接合体の溶接部の位置をより精度良く得られる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、接合体の溶接部の位置をより精度良く得られる、処理装置、検出システム、処理方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る処理装置は、接合体に向けて第1方向に沿って超音波を送信して得られた反射波の強度データを受信する。前記装置は、前記強度データを用いて、前記接合体の溶接部を特定する。前記装置は、前記第1方向と交差する第1面における前記溶接部の第1中心位置を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る検出システムを示す模式図である。
【
図3】探査により得られた3次元の検出結果を例示する模式図である。
【
図4】実施形態に係る検出システムの動作を説明するための模式図である。
【
図5】特定された溶接部の一例を示す模式図である。
【
図6】特定された溶接部の別の一例を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係る検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る検出システムの動作の別の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る別の検出システムを示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る別の検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る検出システムを示す模式図である。
実施形態に係る検出システム1は、処理装置10及び検出器20を含む。
【0009】
検出器20は、接合体50に向けて超音波を送信し、その反射波を検出(受信)する。
図1の例では、検出器20は、人が把持可能なロッド状である。検出器20は、反射波を検出すると、反射波の強度を示す強度データを処理装置10へ送信する。以降では、検出器20による超音波の送信及び反射波の検出を、探査(プロ-ビング)ともいう。
【0010】
接合体50は、金属板51(第1部材)及び金属板52(第2部材)を含む。金属板51と金属板52は、溶接部53において抵抗スポット溶接されている。処理装置10は、強度データを用いて、種々の処理を実行する。例えば、処理装置10は、接合体50における溶接部53の位置を特定する。また、処理装置10は、溶接部53の中心位置を算出する。さらに、処理装置10は、接合体50の良否を判定しても良い。処理装置10は、溶接部53の径を算出しても良い。処理装置10は、溶接部53を検査しても良い。
【0011】
図2は、検出器の内部構造を示す模式図である。
検出器20は、
図2に示すように、素子アレイ21及び伝搬部22を含む。素子アレイ21は、複数の検出素子21aを含む。例えば、検出素子21aは、トランスデューサであり、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。検出素子21aは、Z方向(第1方向)に沿って超音波を送信する。複数の検出素子21aは、X方向(第2方向)及びY方向(第3方向)に配列されている。X方向は、Z方向と交差する。Y方向は、X-Z面と交差する。
図2の例では、X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。
【0012】
伝搬部22は、検出器20の先端に設けられる。素子アレイ21は、伝搬部22により被覆されている。検出器20の先端を溶接部53に接触させた際、伝搬部22は、素子アレイ21と溶接部53との間に位置する。素子アレイ21が超音波を発すると、超音波は、伝搬部22を伝搬して検出器20の外部に送信される。超音波が反射されると、その反射波は、伝搬部22を伝搬して素子アレイ21に達する。素子アレイ21は、反射波を検出し、反射波強度を示す信号(強度データ)を処理装置10へ送信する。素子アレイ21から送信される信号の強度は、反射波の強度に対応する。
【0013】
伝搬部22は、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。伝搬部22により、検出器20が溶接部53へ接触した際に、素子アレイ21の変形、損傷などを抑制できる。伝搬部22は、溶接部53への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0014】
溶接部53には、凝固部54が形成されている。凝固部54は、金属板51の一部と金属板52の一部が溶融して混ざり合い、凝固して形成される。接合体50の表面には、カプラント液55が塗布される。カプラント液55により、検出器20と接合体50との間で、超音波が伝搬し易くなる。それぞれの検出素子21aは、カプラント15が塗布された接合体50に向けて超音波USを送信し、接合体50からの反射波RWを検出する。
【0015】
例えば
図2に示すように、1つの検出素子21aが接合体50に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、接合体50の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子21aのそれぞれは、反射波RWを検出する。探査では、それぞれの検出素子21aが順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子21aで検出する。
【0016】
図3は、探査により得られた3次元の検出結果を例示する模式図である。
探査では、上述したように、それぞれの検出素子21aが超音波を順次送信し、それぞれの反射波を複数の検出素子21aで検出する。
図2に示す具体例では、8×8の64個の検出素子21aが設けられている。この場合、64個の検出素子21aが超音波を順次送信する。1つの検出素子21aは、反射波を64回繰り返し検出する。1つの検出素子21aからは、Z方向の反射波強度分布の検出結果が、64回出力される。1つの検出素子21aから出力された64回の反射波の強度分布は、合算される。合算された強度分布が、1回の探査において、1つの検出素子21aが設けられた座標における強度分布となる。64個の検出素子21aのそれぞれによる検出結果について、同様の処理が実行される。各検出素子21aの検出結果に対して、X方向及びY方向における分解能を向上させるために、開口合成が実行されても良い。以上により、X-Y面(第1面)内の各点において、Z方向における反射波の強度分布が生成される。すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向の各点における反射波強度を含む3次元の強度データが得られる。
【0017】
図3の模式図では、3次元強度データの溶接部53近傍の様子が示されている。
図3において、輝度が高い部分は、超音波の反射波強度が相対的に大きい部分である。
図3の例では、溶接部53の上面及び下面からの反射波と、これら上面と下面との間で多重反射した反射波と、が現れている。
【0018】
図4は、実施形態に係る検出システムの動作を説明するための模式図である。
図4(a)に示すように、超音波USは、伝搬部22の表面22a、金属板51の上面51a及び下面51b、溶接部53の上面53a及び下面53bで反射される。
【0019】
表面22a、上面51a、上面53a、下面51b、及び下面53bのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子21aとの間のZ方向におけるそれぞれの距離が、互いに異なる。検出素子21aがこれらの面からの反射波を検出すると、反射波強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか判別できる。
【0020】
図4(b)及び
図4(c)のそれぞれは、X-Y面内の1点において、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。
図4(b)及び
図4(c)において、横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。時間は、Z方向における位置に対応する。
図4(b)のグラフは、表面22a、上面51a、及び下面51bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図4(b)のグラフは、接合されていない点からの反射波RWの検出結果を例示している。
図4(c)のグラフは、表面22a、上面53a、及び下面53bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図4(c)のグラフは、接合されている点からの反射波RWの検出結果を例示している。
【0021】
図4(b)及び
図4(c)のグラフにおいて、ピークPe10は、表面22aからの反射波RWに基づく。ピークPe11は、上面51aからの反射波RWに基づく。ピークPe12は、下面51bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe11及びピークPe12が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面51a及び下面51bのZ方向における位置に対応する。
【0022】
同様に、ピークPe13は、上面53aからの反射波RWに基づく。ピークPe14は、下面53bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe13及びピークPe14が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面53a及び下面53bのZ方向における位置に対応する。
【0023】
処理装置10は、X-Y面内の各点におけるZ方向の反射波強度分布において、ピークPe12が存在するか判定する。具体的には、処理装置10は、ピークPe12が検出されうるZ方向の範囲において、ピークを検出する。処理装置10は、そのピーク強度を、閾値と比較する。Z方向の範囲及び閾値は、予め設定される。
【0024】
ピーク強度が閾値を超えているとき、処理装置10は、そのピークがピークPe12であると判定する。ピークPe12の存在は、その点において下面51bが存在し、金属板51と金属板52が接合されていないことを示す。処理装置10は、ピークPe12が検出された点を、接合されていないと判定する。処理装置10は、ピークPe12が検出されない点を、接合されていると判定する。処理装置10は、X-Y面内の各点が接合されているか、順次判定する。処理装置10は、接合されていると判定された点の集合を、溶接部53として特定する。
【0025】
図4(b)及び
図4(c)の例では、反射波RWの強度は、絶対値で表されている。反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子21aから出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。特定の周期の周波数成分のみが抽出されるように、フィルタリングが実行されても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0026】
図5は、特定された溶接部の一例を示す模式図である。
図5は、上述した接合又は未接合の判定の結果を示す。接合又は未接合の判定が実行される領域のX方向及びY方向における範囲は、X方向及びY方向において強度データが得られた範囲に対応する。一例として、
図5に示す2次元データのX方向における範囲及びY方向における範囲は、
図3に示す3次元の強度データのX方向における範囲及びY方向における範囲にそれぞれ対応する。X方向及びY方向において、強度データが得られた範囲の一部が抽出され、抽出された領域に対して接合又は未接合の判定が実行されても良い。判定は、強度データのX-Y面内の各点について実行される。
図5では、強度データに基づいて接合されていると判定された点は、白色で表されている。接合されていないと判定された点は、黒色で表されている。接合されていると判定された点の集合が、溶接部53に対応する。処理装置10は、各点における接合の判定結果を用いて、
図5に示す2次元データを生成する。
【0027】
処理装置10は、
図5に示す2次元データを用いて、溶接部53のX-Y面における中心位置を算出する。ここでは、溶接部53のX-Y面における中心位置を、第1中心位置と呼ぶ。例えば、処理装置10は、
図5に示す2次元データを用いて、溶接部53のX-Y面における重心位置を算出する。溶接部53の重心位置が、第1中心位置として用いられる。
【0028】
溶接部53は、抵抗スポット溶接により形成されるため、一般的には円状である。処理装置10は、以下のいずれかの方法により算出される中心位置を、溶接部53の中心位置として用いても良い。第1の方法では、処理装置10は、最小二乗法によって溶接部53の近似円を生成し、その近似円の中心位置を算出する。第2の方法では、処理装置10は、溶接部53の外縁に内接する最大の内接円を生成し、その内接円の中心位置を算出する。第3の方法では、処理装置10は、溶接部53の外縁に外接する最小の外接円を生成し、その外接円の中心位置を算出する。第4の方法では、処理装置10は、半径差が最小となる内接円及び外接円の中心位置を算出する。
【0029】
いずれかの方法により、処理装置10は、
図5に示すように、第1中心位置C1を算出する。
【0030】
さらに、処理装置10は、受信した強度データのX-Y面における中心の位置を算出する。ここでは、強度データのX-Y面における中心位置を、第2中心位置と呼ぶ。例えば、処理装置10は、
図3に示す3次元の強度データのX-Y面における中心位置を、第2中心位置として算出する。又は、処理装置10は、
図5に示す2次元データのX-Y面における中心位置を、第2中心位置として算出しても良い。
【0031】
いずれかの方法により、処理装置10は、
図5に示すように、第2中心位置C2を算出する。
【0032】
処理装置10は、
図5に示すように、第1中心位置と第2中心位置との間の距離Dを算出する。距離Dは、予め設計された溶接部53の位置(設計位置)に対する、溶接部53の実際の位置のずれに対応する。距離Dに基づく値を、予め設定された第1閾値と比較する。例えば、距離Dが、第1閾値と比較される。距離Dを用いて算出される値が、第1閾値と比較されても良い。第1閾値は、位置のずれに対する許容量に応じて設定される。距離Dに基づく値が第1閾値を超えるとき、処理装置10は、ユーザへの第1報知を出力する。第1報知は、溶接部53の中心が反射波の検出範囲の中心からずれていることを、ユーザに示す。
【0033】
図6は、特定された溶接部の別の一例を示す模式図である。
図6は、
図5と同様に、強度データのX-Y面内の各点における接合又は未接合の判定の結果を示す。
図6に示す例では、溶接部53の一部が、得られた強度データの範囲外に位置する。この場合、
図6に示すように、強度データから特定された溶接部53の第1中心位置C1と、第2中心位置C2と、の間の距離Dが、
図5に示す例に比べて長くなる。この結果、距離Dが第1閾値を超え、ユーザに向けて第1報知が出力される。
【0034】
なお、溶接部53の全体が得られた強度データの範囲外に位置する場合、第1中心位置C1及び距離Dを算出できない。この場合、処理装置10は、距離Dが第1閾値を超える場合と同様に、ユーザへの報知を出力する。
【0035】
図7は、実施形態に係る検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
検出器20は、探査を実行し、反射波の強度データを取得する(ステップSt1)。処理装置10は、強度データを用いて、溶接部53を特定する(ステップSt2)。処理装置10は、第1中心位置を算出する(ステップSt3)。処理装置10は、第2中心位置を算出する(ステップSt4)。処理装置10は、第1中心位置と第2中心位置との間の距離を算出する(ステップSt5)。処理装置10は、距離に基づく値を第1閾値と比較する(ステップSt6)。当該値が第1閾値を超えるとき、処理装置10は、第1報知を出力する(ステップSt7)。
【0036】
実施形態の利点を説明する。
接合体50では、複数の部材が溶接部53において接合されている。溶接部53の位置は、接合体50の品質に影響する。例えば、溶接部53の位置が設計位置からずれていると、接合体50の強度が、設計強度よりも低下する可能性がある。
【0037】
溶接部53の上面には、円状の窪みである溶接痕が形成される。溶接痕の位置は、カメラによって取得された画像から検出できる。しかし、外観上確認できる溶接痕の中心位置は、実際に接合されている溶接部53の中心位置から、ずれている可能性がある。製造された接合体50について、強度等の信頼性をより精度良く判定するためには、溶接部53の実際の中心位置を使用することが望ましい。
【0038】
この課題について、実施形態に係る処理装置10は、検出器20から反射波の強度データを受信すると、その強度データを用いて、接合体50の溶接部53を特定する。そして、処理装置10は、X-Y面における溶接部53の第1中心位置C1を算出する。実施形態によれば、外観上の溶接痕の位置又は形状等に拘わらず、溶接部53の実際の中心位置を得ることができる。実施形態によれば、カメラを用いて溶接部53の位置を検出する場合に比べて、溶接部53の位置をより精度良く得られる。また、実施形態によれば、カメラ等の溶接部53の位置を特定するための外部機器を用いることなく、溶接部53の検査に用いられるデータから、溶接部53のより正確な位置を算出できる。
【0039】
処理装置10は、得られた強度データのX-Y面における第2中心位置を算出し、第1中心位置C1と第2中心位置C2との間の距離Dを算出しても良い。溶接部53については、その位置が予め設計される。予め設計された位置(設計位置)に溶接部53が形成されるように、抵抗スポット溶接が実行される。例えば、検出器20の先端は、設計位置に当てられる。検出器20が設計位置に接触した状態で探査が実行されると、強度データのX-Y面における中心は、設計位置の中心に位置する。すなわち、第2中心位置C2は、予め設計された溶接部53の中心位置に対応する。第1中心位置C1と第2中心位置C2との間の距離Dが長いほど、溶接部53の実際の位置が、溶接部53の設計位置からずれていることを示す。
【0040】
処理装置10は、距離Dを用いて、接合体50の良否を判定しても良い。距離Dが長いほど、信頼性が低下する可能性が高く、接合体50が不良である可能性が高い。処理装置10は、距離Dに基づく値が第1閾値を超えるとき、その接合体50を不良と判定する。処理装置10は、距離Dに基づく値が第1閾値以下のとき、その接合体50を良と判定する。
【0041】
処理装置10は、距離Dに基づく値が第1閾値を超えるとき、ユーザへの第1報知を出力しても良い。例えば、処理装置10は、第1報知として第1データをユーザの端末装置へ送信する。処理装置10は、モニタに第1データを表示させても良い。ユーザは、処理装置10又は検出器20の使用者、溶接工程の管理者、又は溶接の検査工程の管理者などである。第1データの送信により、溶接の不良をユーザへ報知できる。
【0042】
ユーザへの利便性の向上のために、第1データは、接合体50を特定するための識別情報を含んでも良い。第1データは、接合体50の溶接工程の識別情報を含んでも良い。第1データは、第1中心位置C1が第2中心位置C2からずれていることを示すテキスト(エラーメッセージ)を含んでも良い。第1データは、
図5又は
図6に示す画像データを含んでも良い。画像データ上で、第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び距離Dの少なくともいずれかが示されても良い。
【0043】
処理装置10は、音又は光を発する出力装置から、音又は光を出力させても良い。音又は光の出力により、溶接の不良をユーザへ報知できる。
【0044】
処理装置10は、強度データを用いて、溶接部53を検査しても良い。検査には、溶接部53の径が用いられる。処理装置10は、
図5又は
図6に示す2次元データを用いて、溶接部53の長径を算出する。長径は、溶接部53の外縁上で最も離れた2点間の距離に対応する。溶接部53は、長径を、予め設定された閾値と比較する。長径が閾値を超えるとき、溶接部53は、接合体50を合格と判定する。長径が閾値以下のとき、溶接部53は、接合体50を不合格と判定する。
【0045】
検査には、第1中心位置を算出する際に生成された、
図5又は
図6に示す2次元データを利用できる。このため、強度データを用いて第1中心位置の算出及び検査を実行する場合、カメラを用いた溶接痕の中心位置の算出及び検査を実行する場合に比べて、処理時間を短縮できる。
【0046】
検査が行われる場合、処理装置10は、距離Dを用いて検査の正確性を判定しても良い。距離Dが短いほど、検査の信頼性は高い。距離Dが長いと、例えば
図6に示すように、溶接部53の一部が、得られた強度データの範囲外に位置する。この場合、溶接部53の径が、実際の値よりも短く算出される可能性がある。溶接部53自体は適切に形成されているにも拘わらず、溶接部53が不良と判定される可能性がある。
【0047】
処理装置10は、距離Dに基づく値が第2閾値を超えるとき、その検査結果を不正確と判定する。処理装置10は、距離Dに基づく値が第2閾値以下のとき、その検査結果を正確と判定する。第2閾値は、設計位置に対する溶接部53の位置のずれが検査結果へ及ぼす影響に応じて、設定される。第2閾値は、第1閾値と同じでも良いし、第1閾値とは異なっていても良い。
【0048】
処理装置10は、距離Dに基づく値が第2閾値を超えるとき、ユーザへの第2報知を出力しても良い。第2報知は、溶接部53の検査結果が不正確であることを、ユーザに示す。例えば、処理装置10は、報知として第2データをユーザの端末装置へ送信する。処理装置10は、モニタに第2データを表示させても良い。第2データの送信により、検査が不正確であることをユーザへ報知できる。
【0049】
ユーザへの利便性の向上のために、第2データは、検査工程の識別情報を含んでも良い。第2データは、検査結果が不正確であることを示すテキスト(エラーメッセージ)を含んでも良い。第2データは、
図5又は
図6に示す画像データを含んでも良い。画像データ上で、第1中心位置C1、第2中心位置C2、及び距離Dの少なくともいずれかが示されても良い。
【0050】
図8は、実施形態に係る検出システムの動作の別の一例を示すフローチャートである。
図8に示す動作は、
図7に示す動作と比べて、ステップSt8~10をさらに含む。ステップSt7の後、処理装置10は、溶接部53を検査する(ステップSt8)。処理装置10は、距離に基づく値を第2閾値と比較する(ステップSt9)。当該値が第2閾値を超えるとき、処理装置10は、第2報知を出力する(ステップSt10)。
【0051】
図8に示したフローチャートにおいて、ステップSt6以降の動作のタイミングは、適宜変更可能である。例えば、ステップSt6及び7は、ステップSt8及び9の後に実行されても良い。第1閾値及び第2閾値が同じ値である場合、距離とこれらの閾値との比較が1つの判定処理で実行され、第1報知及び第2報知が同時に出力されても良い。
【0052】
図9は、実施形態に係る別の検出システムを示す模式図である。
図9に示す検出システム1aは、処理装置10、検出器20、及びロボット30を含む。ロボット30は、マニピュレータ31及び制御装置32を含む。
図9に示すように、検出器20は、マニピュレータ31に取り付けられても良い。
【0053】
図9に示す例では、マニピュレータ31は、垂直多関節型である。マニピュレータ31は、水平多関節型又はパラレルリンク型であっても良い。検出器20は、エンドエフェクタとして、マニピュレータ31の先端に設けられる。制御装置32は、マニピュレータ31の動作を制御する。制御装置32は、いわゆるロボットコントローラである。
【0054】
図9に示すように、マニピュレータ31の先端には、検出器20及び吐出器25が設けられる。吐出器25は、溶接部53に向けてカプラント液を吐出する。カプラント液が吐出された後、制御装置32は、検出器20の先端を溶接部53に当てる。
【0055】
検出システム1aにおいて、処理装置10は、
図7又は
図8に示す動作を実行可能である。検出システム1aは、さらに、第1中心位置及び第2中心位置の算出結果に応じて、検出器20の位置を補正可能であっても良い。
【0056】
図10は、実施形態に係る別の検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図10に示す動作は、
図7に示す動作との比較において、ステップSt7に代えてステップSt11及びSt12を含む。
【0057】
ステップSt6において距離に基づく値が第1閾値を超えるとき、処理装置10は、第1中心位置と第2中心位置との間の距離を制御装置32に送信する(ステップSt11)。距離は、第1中心位置に対する第2中心位置のずれ量に対応する。制御装置32は、距離が短くなるように、マニピュレータ31を動作させて検出器20の位置を補正する(ステップSt12)。例えば、制御装置32は、第1中心位置と第2中心位置が一致するように、マニピュレータ31を動作させる。ステップSt12の後、ステップSt1が再度実行される。
【0058】
第1中心位置に対する第2中心位置のずれ量に応じて検出器20の位置が自動的に補正されることで、より信頼性の高い強度データが得られる。例えば、この強度データを用いることで、溶接部53の検査の精度を向上できる。
【0059】
図10に示す動作において、ステップSt11及びSt12による検出器20の位置の補正に加えて、
図7に示すように第1報知が送信されても良い。ステップSt6において距離に基づくが第1閾値以下のとき、
図8に示すように、溶接部53が検査され、距離に基づく値が第2閾値と比較されても良い。
【0060】
図11は、ハードウェア構成を示す模式図である。
処理装置10として、例えば
図11に示すコンピュータ90を用いることができる。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0061】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0062】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0063】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。
【0064】
入力インタフェース(I/F)95は、処理装置10と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。
【0065】
出力インタフェース(I/F)96は、処理装置10と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aに信号(データ)を送信する。出力装置96aは、モニタ、プロジェクタ、プリンタ、音響装置、及び発光装置から選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0066】
通信インタフェース(I/F)97は、処理装置10外部のサーバ97aと、処理装置10と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0067】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリなどの、非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0068】
記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出し可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得又は読み出しは、ネットワークを通じて行われても良い。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,1a:検出システム、 10:処理装置、 15:カプラント、 20:検出器、 21:素子アレイ、 21a:検出素子、 22:伝搬部、 22a:表面、 25:吐出器、 30:ロボット、 31:マニピュレータ、 32:制御装置、 50:接合体、 51:金属板、 51a:上面、 51b:下面、 52:金属板、 53:溶接部、 53a:上面、 53b:下面、 54:凝固部、 55:カプラント液、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 C1:第1中心位置、 C2:第2中心位置、 D:距離、 Pe10~Pe14 :ピーク、 RW:反射波、 US:超音波