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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147842
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】積層型フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/203 20060101AFI20231005BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P1/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055569
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐輝
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HB05
5J006JA01
5J006JA11
5J006LA03
5J006LA21
(57)【要約】
【課題】寸法を大きくすることなく、スタブ型共振器を追加することが可能な積層型フィルタ装置を実現する。
【解決手段】積層型フィルタ装置1は、積層体50と、積層体50の底面50Aに配置された入力端子2および出力端子3と、積層体50内に配置された共振回路10、キャパシタC21,C22、第1のスタブ型共振器21および第2のスタブ型共振器22とを備えている。共振回路10は、第1の経路5に設けられている。キャパシタC21,C22は、第2の経路6に設けられている。第1のスタブ型共振器21は、第2の経路6において入力端子2とキャパシタC21との間に設けられている。第2のスタブ型共振器22は、第2の経路6において出力端子3とキャパシタC22との間に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層を含み、被実装体に対向する第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有する積層体と、
前記第1の面に配置された入力端子および出力端子と、
前記積層体内に配置された共振回路、キャパシタ、第1のスタブ型共振器および第2のスタブ型共振器とを備え、
前記共振回路は、回路構成上、前記入力端子と前記出力端子とを接続する第1の経路に設けられ、
前記キャパシタは、回路構成上、前記入力端子と前記出力端子とを接続し且つ前記共振回路を経由しない第2の経路に設けられ、
前記第1のスタブ型共振器は、回路構成上、前記第2の経路において前記入力端子と前記キャパシタとの間に設けられ、
前記第2のスタブ型共振器は、回路構成上、前記第2の経路において前記出力端子と前記キャパシタとの間に設けられていることを特徴とする積層型フィルタ装置。
【請求項2】
更に、前記積層体に一体化され且つグランドに接続されるグランド導体層を備え、
前記共振回路、前記キャパシタ、前記第1のスタブ型共振器および前記第2のスタブ型共振器は、前記複数の誘電体層の積層方向において、前記第1の面と前記グランド導体層との間には存在するが、前記第2の面と前記グランド導体層との間には存在しないことを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ装置。
【請求項3】
前記共振回路を構成する少なくとも一部の素子は、前記複数の誘電体層の積層方向において、前記第1および第2のスタブ型共振器と前記グランド導体層との間に配置されていることを特徴とする請求項2記載の積層型フィルタ装置。
【請求項4】
前記第1のスタブ型共振器と前記第2のスタブ型共振器の少なくとも一方は、所定の周波数に対応する波長の1/4に相当する電気長を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型フィルタ装置。
【請求項5】
前記第1のスタブ型共振器の物理長と前記第2のスタブ型共振器の物理長は、互いに等しいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型フィルタ装置。
【請求項6】
前記第1のスタブ型共振器の形状および配置と、前記第2のスタブ型共振器の形状および配置は、前記第1のスタブ型共振器と前記第2のスタブ型共振器との間を通り前記複数の誘電体層の積層方向に平行な仮想の平面を中心として対称であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の積層型フィルタ装置。
【請求項7】
前記第1のスタブ型共振器と前記第2のスタブ型共振器は、前記複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の積層型フィルタ装置。
【請求項8】
前記キャパシタは、キャパシタ用導体層を含み、
前記キャパシタ用導体層は、前記複数の誘電体層の積層方向において前記第1および第2のスタブ型共振器とは異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型フィルタ装置。
【請求項9】
前記キャパシタ用導体層は、前記第1のスタブ型共振器の一端部の近傍部分と前記第2のスタブ型共振器の一端部の近傍部分に対向していることを特徴とする請求項8記載の積層型フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共振器とスタブ型共振器とを備えた積層型フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つに、バンドパスフィルタがある。特に小型の通信装置に用いられるバンドパスフィルタには、小型化が求められる。小型化に適したバンドパスフィルタとしては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。
【0003】
現在、第5世代移動通信システム(以下、5Gと言う。)を用いた通信サービスが提供され始めている。5Gでは、10GHz以上の周波数帯域、特に、10~30GHzの準ミリ波帯や30~300GHzのミリ波帯の利用が想定されている。このように、従来よりも高い周波数帯域が利用されるようになると、バンドパスフィルタにおいても、従来よりも高い周波数帯域において特性を満足することが求められる。例えば、バンドパスフィルタの通過帯域の高域側において、バンドパスフィルタの通過減衰量を大きくすることが求められる。
【0004】
特許文献1には、積層された複数の誘電体層を含む積層体を備えたバンドパスフィルタが開示されている。このバンドパスフィルタは、入力端子と、出力端子と、入力端子と出力端子とを接続する経路に設けられた3つの共振器と、入力端子と出力端子とを接続し且つ3つの共振器を経由しない他の経路に設けられたキャパシタとを備えている。
【0005】
特許文献2には、通過帯域よりも高い所定の周波数の信号を減衰させるためのノッチフィルタ部を備えたバンドパスフィルタが開示されている。ノッチフィルタ部は、1/4波長共振器を備えている。この1/4波長共振器は、一端が入出力ポートに接続され、他端が開放されたスタブ型共振器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-124211号公報
【特許文献2】特開2020-057920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層体を用いた積層型バンドパスフィルタでは、積層体の構造よっては、通過帯域の高域側において反共振が生じ、通過減衰量が小さくなる場合があった。これに対し、特許文献2のように、スタブ型共振器を利用することが考えられる。すなわち、バンドパスフィルタに、反共振が生じた周波数の近傍に減衰極を形成するスタブ型共振器を追加することにより、通過帯域の高域側における通過減衰量を大きくすることが考えられる。しかし、スタブ型共振器を追加すると、バンドパスフィルタの小型化が難しくなるという問題点がある。
【0008】
上記の問題は、積層型バンドパスフィルタに限らず、フィルタとして機能する共振回路を備えた積層型フィルタ装置全般に当てはまる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、寸法を大きくすることなく、スタブ型共振器を追加することが可能な積層型フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層型フィルタ装置は、積層された複数の誘電体層を含み、被実装体に対向する第1の面と第1の面とは反対側の第2の面とを有する積層体と、第1の面に配置された入力端子および出力端子と、積層体内に配置された共振回路、キャパシタ、第1のスタブ型共振器および第2のスタブ型共振器とを備えている。共振回路は、回路構成上、入力端子と出力端子とを接続する第1の経路に設けられている。キャパシタは、回路構成上、入力端子と出力端子とを接続し且つ共振回路を経由しない第2の経路に設けられている。第1のスタブ型共振器は、回路構成上、第2の経路において入力端子とキャパシタとの間に設けられている。第2のスタブ型共振器は、回路構成上、第2の経路において出力端子とキャパシタとの間に設けられている。
【0011】
本発明の積層型フィルタ装置は、更に、積層体に一体化され且つグランドに接続されるグランド導体層を備えていてもよい。共振回路、キャパシタ、第1のスタブ型共振器および第2のスタブ型共振器は、複数の誘電体層の積層方向において、第1の面とグランド導体層との間には存在していてもよいし、第2の面とグランド導体層との間には存在しなくてもよい。
【0012】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、共振回路を構成する少なくとも一部の素子は、複数の誘電体層の積層方向において、第1および第2のスタブ型共振器とグランド導体層との間に配置されていてもよい。
【0013】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1のスタブ型共振器と第2のスタブ型共振器の少なくとも一方は、所定の周波数に対応する波長の1/4に相当する電気長を有していてもよい。
【0014】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1のスタブ型共振器の物理長と第2のスタブ型共振器の物理長は、互いに等しくてもよい。
【0015】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1のスタブ型共振器の形状および配置と、第2のスタブ型共振器の形状および配置は、第1のスタブ型共振器と第2のスタブ型共振器との間を通り複数の誘電体層の積層方向に平行な仮想の平面を中心として対称であってもよい。
【0016】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、第1のスタブ型共振器と第2のスタブ型共振器は、複数の誘電体層の積層方向において同じ位置に配置されていてもよい。
【0017】
また、本発明の積層型フィルタ装置において、キャパシタは、キャパシタ用導体層を含んでいてもよい。キャパシタ用導体層は、複数の誘電体層の積層方向において第1および第2のスタブ型共振器とは異なる位置に配置されていてもよい。また、キャパシタ用導体層は、第1のスタブ型共振器の一端部の近傍部分と第2のスタブ型共振器の一端部の近傍部分に対向していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層型フィルタ装置では、第1のスタブ型共振器は、第2の経路において入力端子とキャパシタとの間に設けられ、第2のスタブ型共振器は、第2の経路において出力端子とキャパシタとの間に設けられている。これにより、本発明によれば、寸法を大きくすることなく、スタブ型共振器を追加した積層型フィルタ装置を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の回路構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における4層目ないし7層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における8層目ないし10層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体における11層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の積層体の内部を示す斜視図である。
図8図7に示した積層体の内部の一部を示す斜視図である。
図9図7に示した積層体の内部の一部を示す平面図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置の変形例における積層体の内部の一部を示す平面図である。
図11】比較例の積層型フィルタ装置における積層体の内部の一部を示す平面図である。
図12】シミュレーションによって得られた通過減衰特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層型フィルタ装置(以下、単にフィルタ装置と記す。)1の構成の概略について説明する。図1には、フィルタ装置1の例として、バンドパスフィルタを示している。フィルタ装置1は、入力端子2と、出力端子3と、共振回路10とを備えている。入力端子2および出力端子3の各々は、信号の入力または出力のための端子である。共振回路10は、バンドパスフィルタの要部を構成する。
【0021】
共振回路10は、回路構成上、入力端子2と出力端子3とを接続する第1の経路5に設けられている。本実施の形態では、共振回路10は、2つのLC共振器11,12を含んでいる。LC共振器11,12は、回路構成上、入力端子2側からこの順に配置されている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0022】
LC共振器11は、インダクタL11とキャパシタC11とを含んでいる。LC共振器12は、インダクタL12とキャパシタC12とを含んでいる。インダクタL11とインダクタL12は、磁界結合するように構成されている。共振回路10は、更に、インダクタL11とインダクタL12とを容量結合させるキャパシタC10を含んでいる。
【0023】
フィルタ装置1は、更に、キャパシタC21,C22と、第1のスタブ型共振器21と、第2のスタブ型共振器22とを備えている。キャパシタC21,C22は、回路構成上、入力端子2と出力端子3とを接続し且つ共振回路10を経由しない第2の経路6に設けられている。また、キャパシタC21,C22は、回路構成上、入力端子2側からこの順に配置されている。キャパシタC21,C22は、入力端子2と出力端子3とを容量結合させるためのものである。
【0024】
第1のスタブ型共振器21は、回路構成上、第2の経路6において入力端子2とキャパシタC21との間に設けられている。第2のスタブ型共振器22は、回路構成上、第2の経路6において出力端子3とキャパシタC22との間に設けられている。第1のスタブ型共振器21と第2のスタブ型共振器22の少なくとも一方は、所定の周波数に対応する波長の1/4に相当する電気長を有している。
【0025】
以下、図1を参照して、フィルタ装置1の回路構成の一例について説明する。フィルタ装置1は、更に、インダクタL1,L2と、キャパシタC1,C2とを備えている。キャパシタC1の一端は、入力端子2に接続されている。キャパシタC10の一端は、キャパシタC1の他端に接続されている。キャパシタC2の一端は、キャパシタC10の他端に接続されている。キャパシタC2の他端は、出力端子3に接続されている。
【0026】
インダクタL1の一端は、キャパシタC1とキャパシタC10の接続点に接続されている。インダクタL2の一端は、キャパシタC2とキャパシタC10の接続点に接続されている。インダクタL11,L12の各他端は、インダクタL1の一端に接続されている。インダクタL1の他端は、グランドに接続されている。
【0027】
キャパシタC11の一端は、インダクタL11の一端に接続されている。キャパシタC12の一端は、インダクタL12の一端に接続されている。キャパシタC11,C12の各他端は、インダクタL2の一端に接続されている。インダクタL2の他端は、グランドに接続されている。
【0028】
第1のスタブ型共振器21の一端は、入力端子2に接続されている。キャパシタC21の一端は、第1のスタブ型共振器21の他端に接続されている。キャパシタC22の一端は、キャパシタC21の他端に接続されている。第2のスタブ型共振器22の一端は、キャパシタC22の他端に接続されている。第2のスタブ型共振器22の他端は、出力端子3に接続されている。
【0029】
次に、図2を参照して、フィルタ装置1のその他の構成について説明する。図2は、フィルタ装置1の外観を示す斜視図である。
【0030】
フィルタ装置1は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体50を備えている。入力端子2、出力端子3、共振回路10、第1のスタブ型共振器21、第2のスタブ型共振器22、インダクタL1,L2およびキャパシタC1,C2,C21,C22は、積層体50に一体化されている。
【0031】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0032】
ここで、図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0033】
図2に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。底面50Aおよび上面50Bの各々の形状は、X方向に長い矩形形状である。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0034】
底面50Aは、基板等の図示しない被実装体に対向する。底面50Aは、本発明における「第1の面」に対応する。積層体50において、上面50Bは、底面50Aとは反対側に位置する。上面50Bは、本発明における「第2の面」に対応する。
【0035】
入力端子2および出力端子3は、積層体50の底面50Aに配置されている。フィルタ装置1は、更に、積層体50の底面50Aに配置された端子111,112,113,114を備えている。端子111,112,113は、側面50Fよりも側面50Eにより近い位置において、X方向にこの順に並んでいる。入力端子2は、端子111に対して、Y方向の先に配置されている。出力端子3は、端子113に対して、Y方向の先に配置されている。端子114は、端子112に対して、Y方向の先に配置されている。端子111~114の各々は、グランドに接続される。
【0036】
次に、図3(a)ないし図6を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体層の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された11層の誘電体層を有している。以下、この11層の誘電体層を、下から順に1層目ないし11層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし11層目の誘電体層を符号51~61で表す。
【0037】
図3(a)ないし図6において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~59の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、端子、導体層または他のスルーホールに接続されている。
【0038】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、入力端子2、出力端子3および端子111~114が形成されている。また、図3(a)では、入力端子2および出力端子3に接続された2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号51T1,51T2で示している。
【0039】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、キャパシタ用導体層521と、導体層522が形成されている。また、図3(b)では、誘電体層51に形成された特定のスルーホール51T1,51T2に接続される2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号52T1,52T2で示している。
【0040】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、共振器用導体層531,532が形成されている。導体層531,532の各々は、互いに反対側に位置する第1端および第2端を有している。導体層531の第1端と導体層532の第1端は、所定の間隔を開けて隣接している。導体層531の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T1が接続されている。導体層532の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T2が接続されている。
【0041】
また、図3(c)では、導体層531の第2端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号53T1で示し、導体層532の第2端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号53T2で示している。
【0042】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、インダクタ用導体層541,542が形成されている。導体層541,542の各々は、互いに反対側に位置する第1端および第2端を有している。
【0043】
また、図4(a)では、誘電体層53に形成された特定のスルーホール53T1,53T2に接続される2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号54T1,54T2で示している。また、導体層541の第1端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号54T3で示し、導体層541の第2端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号54T4で示し、導体層542の第1端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号54T5で示し、導体層542の第2端の近傍部分に接続された特定のスルーホールを符号54T6で示している。
【0044】
図4(b)は、5層目および6層目の誘電体層55,56の各々のパターン形成面を示している。誘電体層55,56の各々には、特定のスルーホール55T1,55T2,55T3,55T4,55T5,55T6が形成されている。誘電体層54に形成された特定のスルーホール54T1~54T6は、それぞれ、誘電体層55に形成された特定のスルーホール55T1~55T6に接続されている。また、誘電体層55,56では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0045】
図4(c)は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、キャパシタ用導体層571と、導体層572,573,574が形成されている。誘電体層56に形成された特定のスルーホール55T1は、導体層572に接続されている。誘電体層56に形成された特定のスルーホール55T2は、導体層573に接続されている。誘電体層56に形成された特定のスルーホール55T4,55T6は、導体層574に接続されている。
【0046】
また、図4(c)では、導体層572,573に接続された2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号57T1,57T2で示している。また、誘電体層56に形成された特定のスルーホール55T3,55T5に接続される2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号57T3,57T5で示している。
【0047】
図5(a)は、8層目の誘電体層58のパターン形成面を示している。誘電体層58のパターン形成面には、キャパシタ用導体層581,582と、導体層583,584が形成されている。誘電体層57に形成された特定のスルーホール57T1,57T2,57T3,57T5は、それぞれ導体層581,582,583,584に接続されている。また、図5(a)では、導体層583,584に接続された2つの特定のスルーホールを、それぞれ符号58T3,58T5で示している。
【0048】
図5(b)は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、キャパシタ用導体層591,592が形成されている。誘電体層58に形成された特定のスルーホール58T3,58T5は、それぞれ導体層591,592に接続されている。
【0049】
図5(c)は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、グランド導体層601が形成されている。
【0050】
図6は、11層目の誘電体層61のパターン形成面を示している。誘電体層61のパターン形成面には、マーク611が形成されている。
【0051】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、11層目の誘電体層61のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし11層目の誘電体層51~61が積層されて構成される。
【0052】
符号を付した複数の特定のスルーホールを除く図3(a)ないし図5(b)に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし11層目の誘電体層51~61を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、複数の特定のスルーホールを除く図3(a)ないし図5(b)に示した複数のスルーホールのうち、端子内または導体層内に位置するスルーホールは、その端子またはその導体層に接続されている。
【0053】
図7は、1層目ないし11層目の誘電体層51~61が積層されて構成された積層体50の内部を示している。図8は、図7に示した積層体50の内部の一部を示している。図7および図8に示したように、積層体50の内部では、図3(a)ないし図6に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。
【0054】
以下、図1に示したフィルタ装置1の回路の構成要素と、図3(a)ないし図9(b)に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。LC共振器11のインダクタL11は、インダクタ用導体層541と、特定のスルーホール54T3,54T4,55T3,55T4,57T3とによって構成されている。LC共振器11のキャパシタC11は、キャパシタ用導体層591と、グランド導体層601と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。
【0055】
LC共振器12のインダクタL12は、インダクタ用導体層542と、特定のスルーホール54T5,54T6,55T5,55T6,57T5とによって構成されている。LC共振器12のキャパシタC12は、キャパシタ用導体層592と、グランド導体層601と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。
【0056】
キャパシタC21は、キャパシタ用導体層521と、共振器用導体層531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC22は、キャパシタ用導体層521と、共振器用導体層532と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0057】
第1のスタブ型共振器21は、共振器用導体層531によって構成されている。第2のスタブ型共振器22は、共振器用導体層532によって構成されている。なお、この例では、第1のスタブ型共振器21と第2のスタブ型共振器22は、いずれも、所定の周波数に対応する波長の1/4に相当する電気長を有している。
【0058】
キャパシタC1は、キャパシタ用導体層581,591と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC2は、キャパシタ用導体層582,592と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC10は、キャパシタ用導体層571,591,592と、これらの導体層の間の誘電体層57,58とによって構成されている。
【0059】
インダクタL1の一部は、導体層574とグランド導体層601とを接続する複数のスルーホールによって構成されている。インダクタL2の他の一部とインダクタL2は、端子111~114とグランド導体層601とを接続する複数のスルーホールによって構成されている。
【0060】
次に、図2ないし図9を参照して、本実施の形態に係るフィルタ装置1の構造上の特徴について説明する。図9は、図7に示した積層体50の内部の一部を示す平面図である。共振回路10、キャパシタC21,C22、第1のスタブ型共振器21および第2のスタブ型共振器22は、積層体50内に配置されている。
【0061】
グランド導体層601は、積層体50に一体化され且つグランドに接続される。本実施の形態では特に、グランド導体層601は、積層体50内に配置されている。共振回路10、キャパシタC21,C22、第1のスタブ型共振器21および第2のスタブ型共振器22は、積層方向Tにおいて、底面50Aとグランド導体層601との間には存在するが、上面50Bとグランド導体層601との間には存在しない。
【0062】
共振回路10を構成する少なくとも一部の素子は、積層方向Tにおいて、第1および第2のスタブ型共振器21,22とグランド導体層601との間に配置されている。本実施の形態では、インダクタL11,L12と、キャパシタC11(グランド導体層601を除く)と、キャパシタC12(グランド導体層601を除く)が、積層方向Tにおいて、共振器用導体層531,532とグランド導体層601との間に配置されている。
【0063】
共振器用導体層531すなわち第1のスタブ型共振器21は、互いに異なる方向に延在する2つの部分を含んでいる。同様に、共振器用導体層532すなわち第2のスタブ型共振器22は、互いに異なる方向に延在する2つの部分を含んでいる。本実施の形態では、第1および第2のスタブ型共振器21,22(共振器用導体層531,532)の各々は、X方向に平行な方向に延在する部分とY方向に平行な方向に延在する部分とを含んでいる。第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層531の物理長)と第2のスタブ型共振器22の物理長(共振器用導体層532の物理長)は、互いに等しい。
【0064】
ここで、図9に示したように、第1のスタブ型共振器21と第2のスタブ型共振器22との間を通り積層方向Tに平行な仮想の平面を、記号Pで表す。仮想の平面Pは、YZ平面に平行且つ底面50Aおよび上面50Bの各々に対して垂直な平面である。また、仮想の平面Pは、底面50Aまたは上面50Bの長手方向(X方向に平行な方向)における積層体50の中央において積層体50と交差する。第1のスタブ型共振器21(共振器用導体層531)の形状および配置と、第2のスタブ型共振器22(共振器用導体層532)の形状および配置は、仮想の平面Pを中心として対称である。
【0065】
また、積層体50において、入力端子2、端子111、LC共振器11(インダクタL11,C11)、第1のスタブ型共振器21およびキャパシタC1を含む部分を構成する複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)を、複数の第1の導体と言う。また、積層体50において、出力端子3、端子113、LC共振器12(インダクタL12,C12)、第2のスタブ型共振器22およびキャパシタC2を含む部分を構成する複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)を、複数の第2の導体と言う。複数の第1の導体の形状および配置は、仮想の平面Pを中心として、複数の第2の導体の形状および配置と対称である。
【0066】
共振器用導体層531,532は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。従って、第1のスタブ型共振器21と第2のスタブ型共振器22は、積層方向Tにおいて同じ位置に配置されている。第1のスタブ型共振器21(共振器用導体層531)は、特定のスルーホール51T1,52T1を介して入力端子2に接続されている。第2のスタブ型共振器22(共振器用導体層532)は、特定のスルーホール51T2,52T2を介して入力端子2に接続されている。
【0067】
キャパシタC21,C22は、キャパシタ用導体層521を含んでいる。キャパシタ用導体層521は、積層方向Tにおいて共振器用導体層531,532すなわち第1および第2のスタブ型共振器21,22とは異なる位置に配置されている。キャパシタ用導体層521は、共振器用導体層531の第1端すなわち第1のスタブ型共振器21の一端部の近傍部分と、共振器用導体層532の第1端すなわち第2のスタブ型共振器22の一端部の近傍部分に対向している。
【0068】
ここで、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された構造物を、スルーホール列と言う。積層体50は、スルーホール列T3,T4,T5,T6を含んでいる。スルーホール列T3は、特定のスルーホール54T3,55T3,57T3によって構成されている。スルーホール列T4は、特定のスルーホール54T4,55T4によって構成されている。スルーホール列T5は、特定のスルーホール54T5,55T5,57T5によって構成されている。スルーホール列T6は、特定のスルーホール54T6,55T6によって構成されている。
【0069】
LC共振器11のインダクタL11は、スルーホール列T3,T4と、インダクタ用導体層541とを含んでいる。インダクタ用導体層541は、スルーホール列T3とスルーホール列T4とを接続している。インダクタ用導体層541は、積層方向Tにおいて、底面50Aとスルーホール列T3,T4との間に配置されている。
【0070】
LC共振器12のインダクタL12は、スルーホール列T5,T6と、インダクタ用導体層542とを含んでいる。インダクタ用導体層542は、スルーホール列T5とスルーホール列T6とを接続している。インダクタ用導体層542は、積層方向Tにおいて、底面50Aとスルーホール列T5,T6との間に配置されている。
【0071】
インダクタ用導体層541,542の各々は、互いに異なる方向に延在する部分を含んでいる。本実施の形態では特に、インダクタ用導体層541,542の各々は、X方向に平行な方向に延在する1つの部分と、Y方向に平行な方向に延在する2つの部分とを含んでいる。
【0072】
次に、本実施の形態に係るフィルタ装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、共振回路10が第1の経路5に設けられ、キャパシタC21,C22が第2の経路6に設けられている。本実施の形態では、上記の共振回路10とキャパシタC21,C22の構成を前提として、第2の経路6の一部を、第1および第2のスタブ型共振器21,22としている。具体的には、本実施の形態では、3層目の誘電体層53のパターン形成面において、特定のスルーホール52T1からキャパシタ用導体層521に対向する位置まで延在する導体層を、共振器用導体層531としている。同様に、誘電体層53のパターン形成面において、特定のスルーホール52T2からキャパシタ用導体層521に対向する位置まで延在する導体層を、共振器用導体層532としている。これにより、本実施の形態によれば、フィルタ装置1の寸法を大きくすることなく、第1および第2のスタブ型共振器21,22を追加することができる。
【0073】
ここで、第1および第2のスタブ型共振器21,22を追加することの意義について説明する。本実施の形態に係るフィルタ装置1のように、積層体50を用いた積層型バンドパスフィルタでは、積層体50の構造によっては、通過帯域の高域側において反共振が生じ、通過減衰量が小さくなる場合がある。特に、本実施の形態のような、共振回路を覆うグランド導体層を設けた場合には、共振回路を構成する導体層とグランド導体層との結合によって、通過帯域の高域側において反共振が生じやすくなる。上記の問題は、グランド導体層が積層体内に設けられている場合に限らず、グランド導体層が積層体の上面に設けられている場合にも当てはまる。
【0074】
これに対し、本実施の形態では、反共振が生じた周波数の近傍に減衰極を形成する第1および第2のスタブ型共振器21,22を設けることにより、通過帯域の高域側における通過減衰量を大きくすることができる。第1および第2のスタブ型共振器21,22の各々は、所定の周波数に対応する波長の1/4に相当する電気長を有している。所定の周波数は、反共振が生じた周波数と同じ周波数であってもよいし、反共振が生じた周波数とは異なる周波数であってもよい。
【0075】
また、第1および第2のスタブ型共振器21,22の各々は、同じ電気長を有していてもよいし、互いに異なる周波数を有していてもよい。第1および第2のスタブ型共振器21,22の各々が同じ電気長を有している場合、第1および第2のスタブ型共振器21,22は、実質的に1つの減衰極を形成する。この場合、減衰極の通過減衰量を大きくすることができる。また、第1および第2のスタブ型共振器21,22の各々が互いに異なる電気長を有している場合、2つの減衰極を形成することができる。この場合、比較的広い周波数帯域において通過減衰量を大きくすることができる。
【0076】
以下、シミュレーションの結果を参照して、本実施の形態の効果について説明する。シミュレーションでは、実施例のモデルと変形例のモデルと比較例のモデルとを用いた。実施例のモデルは、本実施の形態に係るフィルタ装置1のモデルである。変形例のモデルは、変形例のフィルタ装置のモデルである。比較例のモデルは、比較例のフィルタ装置のモデルである。
【0077】
始めに、変形例のフィルタ装置101の構成について説明する。図10は、変形例のフィルタ装置101における積層体50の内部の一部を示す平面図である。変形例のフィルタ装置101は、本実施の形態に係るフィルタ装置1の変形例である。フィルタ装置101は、本実施の形態におけるキャパシタ用導体層521および共振器用導体層531,532の代わりに、キャパシタ用導体層1521および共振器用導体層1531,1532を含んでいる。キャパシタ用導体層1521は、2層目の誘電体層52に形成されている。共振器用導体層1531,1532は、3層目の誘電体層53に形成されている。フィルタ装置101のその他の構成は、本実施の形態に係るフィルタ装置1の構成と同じである。
【0078】
導体層1531,1532の各々は、互いに反対側に位置する第1端および第2端を有している。導体層1531の第1端と導体層1532の第1端は、所定の間隔を開けて隣接している。導体層1531の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T1(図3(b)参照)と、特定のスルーホール53T1が接続されている。導体層1532の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T2(図3(b)参照)と、特定のスルーホール53T2が接続されている。
【0079】
フィルタ装置101の回路構成は、図1に示したフィルタ装置1の回路構成と同じである。フィルタ装置101では、キャパシタC21は、キャパシタ用導体層1521と、共振器用導体層1531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC22は、キャパシタ用導体層1521と、共振器用導体層1532と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。第1のスタブ型共振器21は、導体層1531によって構成されている。第2のスタブ型共振器22は、導体層1532によって構成されている。
【0080】
フィルタ装置101では、第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層531の物理長)と第2のスタブ型共振器22の物理長(共振器用導体層532の物理長)は、互いに異なっている。すなわち、第1および第2のスタブ型共振器21,22(共振器用導体層1531,1532)の各々は、X方向に平行な方向に延在する第1の部分とY方向に平行な方向に延在する第2の部分とを含んでいる。第1のスタブ型共振器21(共振器用導体層1531)の第1の部分は、第2のスタブ型共振器22(共振器用導体層1532)の第1の部分よりも短く、第1のスタブ型共振器21(共振器用導体層1531)の第2の部分の長さと第2のスタブ型共振器22(共振器用導体層1532)の第2の部分の長さは、互いに等しい。従って、第1のスタブ型共振器21(共振器用導体層1531)の全体の物理長は、第2のスタブ型共振器22(共振器用導体層1532)の全体の物理長よりも短くなる。
【0081】
なお、変形例における第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層531の物理長)は、本実施の形態における第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層531の物理長)よりも短い。また、変形例における第2のスタブ型共振器22の物理長(共振器用導体層532の物理長)は、本実施の形態における第2のスタブ型共振器22の物理長(共振器用導体層532の物理長)よりも長い。
【0082】
キャパシタ用導体層1521は、共振器用導体層1531の第1端すなわち第1のスタブ型共振器21の一端部の近傍部分と、共振器用導体層1532の第1端すなわち第2のスタブ型共振器22の一端部の近傍部分に対向している。
【0083】
次に、比較例のフィルタ装置201の構成について説明する。図11は、比較例のフィルタ装置201における積層体50の内部の一部を示す平面図である。フィルタ装置201には、本実施の形態における第1および第2のスタブ型共振器21,22は設けられていない。また、フィルタ装置201は、本実施の形態におけるキャパシタ用導体層521および共振器用導体層531,532の代わりに、キャパシタ用導体層2521および導体層2531,2532を備えている。導体層1521は、2層目の誘電体層52に形成されている。導体層2531,2532は、3層目の誘電体層53に形成されている。フィルタ装置201のその他の構成は、本実施の形態に係るフィルタ装置1の構成と同じである。
【0084】
導体層2531,2532の各々は、互いに反対側に位置する第1端および第2端を有している。導体層2531の第1端と導体層2532の第1端は、X方向に平行な方向において所定の間隔を開けて並んでいる。導体層2531の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T1(図3(b)参照)と、特定のスルーホール53T1が接続されている。導体層2532の第2端の近傍部分には、誘電体層52に形成された特定のスルーホール52T2(図3(b)参照)と、特定のスルーホール53T2が接続されている。
【0085】
フィルタ装置201の回路構成は、第1および第2のスタブ型共振器21,22が設けられていない点を除いて、図1に示したフィルタ装置1の回路構成と同じである。フィルタ装置201では、キャパシタC21は、キャパシタ用導体層2521と、導体層2531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC22は、キャパシタ用導体層2521と、導体層2532と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0086】
フィルタ装置201では、導体層2531,2532の各々は、X方向に平行な方向に延在する第1の部分とY方向に平行な方向に延在する第2の部分とを含んでいる。導体層2531の物理長は、本実施の形態における第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層531の物理長)よりも短い。導体層2532の物理長は、本実施の形態における第2のスタブ型共振器22の物理長(共振器用導体層532の物理長)よりも短い。また、導体層2531,2532の各々の物理長は、変形例における第1のスタブ型共振器21の物理長(共振器用導体層1531の物理長)よりも短い。
【0087】
キャパシタ用導体層2521は、導体層2531の第1端の近傍部分と、導体層2532の第1端の近傍部分に対向している。また、キャパシタ用導体層2521は、本実施の形態におけるキャパシタ用導体層521よりも長い。
【0088】
次に、シミュレーションの結果について説明する。シミュレーションでは、通過帯域および通過帯域における通過減衰量がほぼ一致するように、実施例のモデル、変形例のモデルおよび比較例のモデルを設計した。
【0089】
図12は、シミュレーションによって得られた通過減衰特性を示す特性図である。図12において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。図12において、符号91を付した曲線は、実施例のモデルの通過減衰特性を示し、符号92を付した曲線は、比較例のモデルの通過減衰特性を示し、符号93を付した曲線は、比較例のモデルの通過減衰特性を示している。
【0090】
図12に示したように、比較例のモデル(符号93)では、通過帯域の高域側において反共振が生じ、通過帯域の高域側の周波数帯域における減衰量の絶対値が小さくなっていることが分かる。一方、実施例のモデル(符号91)と変形例のモデル(符号92)では、反共振が生じた周波数の近傍を除き、比較例のモデル(符号93)に比べて、通過帯域の高域側の周波数帯域における減衰量の絶対値が大きくなっていることが分かる。この結果から理解されるように、本実施の形態によれば、第1および第2のスタブ型共振器21,22によって、通過帯域の高域側の周波数帯域における通過減衰量(減衰量の絶対値)を大きくすることができる。
【0091】
また、図12に示したように、実施例のモデル(符号91)では1つの減衰極が形成され、変形例のモデル(符号92)では2つの減衰極が形成されている。このように、本実施の形態によれば、第1および第2のスタブ型共振器21,22の物理長を変更することによって、通過帯域の高域側の周波数帯域における通過減衰特性を制御することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、共振回路10は、共振器を1つだけ含んでいてもよいし、共振器を3つ以上含んでいてもよい。
【0093】
また、本発明のフィルタ装置は、グランド導体層601の代わりに、積層体50の上面50Bに配置されたシールド導体層を備えていてもよい。なお、グランド導体層601は、本発明のフィルタ装置の必須の構成要素ではなく、設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…フィルタ装置、2…入力端子、3…出力端子、10…共振回路、11,12…LC共振器、21…第1のスタブ型共振器、22…第2のスタブ型共振器、50…積層体、50A…底面、50B…上面、50C~50F…側面、601…グランド導体層、C1,C2,C10,C11,C12,C21,C22…キャパシタ、L1,L2,L11,L12…インダクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12