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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147846
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】対応付け装置及び対応付け方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/74 20220101AFI20231005BHJP
   G06V 10/772 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
G06V10/74
G06V10/772
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055579
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友祐
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 健
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA04
5L096DA01
5L096DA02
5L096DA04
5L096FA02
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA64
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA05
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と第2画像における対象を表した複数の第2対象領域とを対象領域の特徴量に基づいて対応付ける追跡装置において、対応付けに用いる特徴量の種別を適切に選択する。
【解決手段】追跡装置1は、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の各々について、複数の種別の特徴量を抽出するとともに、前記特徴量が前記対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した特徴量の各々について算出する特徴量抽出部12と、特徴量の種別毎に、第1対象領域と第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、信頼度に基づいて算出する確実度算出部13と、確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて第1対象領域と第2対象領域との対応付け判定処理を行う対応付け判定部14と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と、第2画像における前記対象を表した複数の第2対象領域の各々を対応付ける対応付け装置であって、
前記複数の第1対象領域と前記複数の第2対象領域の各々について、複数の種別のうち少なくとも1つの種別の特徴量を抽出するとともに、前記特徴量が前記対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した前記特徴量の各々について算出する特徴量抽出部と、
前記特徴量の種別毎に、前記第1対象領域と前記第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、前記複数の第1対象領域と前記複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した前記信頼度に基づいて算出する確実度算出部と、
前記確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて前記第1対象領域と前記第2対象領域との対応付け判定処理を行う対応付け判定部と、
を備えることを特徴とする対応付け装置。
【請求項2】
前記確実度算出部は、前記選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない前記第1対象領域である第1未割当対象領域と、前記選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない前記第2対象領域である第2未割当対象領域の少なくとも一方について算出した前記信頼度に基づいて前記確実度を再算出し、
前記対応付け判定部は、再算出した前記確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて前記第1未割当対象領域と前記第2未割当対象領域との対応付け判定処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の対応付け装置。
【請求項3】
前記確実度算出部は、前記複数の種別から1個以上の種別を選んだ集合を設定し、設定した集合毎に、当該集合に含まれる種別の特徴量を用いて前記第1対象領域と前記第2対象領域を対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す前記確実度を算出し、
前記対応付け判定部は、前記確実度がより高い集合を選択し、選択した集合に含まれる種別の特徴量を用いて前記対応付け判定処理を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の対応付け装置。
【請求項4】
前記確実度算出部は、
前記複数の第1対象領域又は前記複数の第2対象領域の少なくとも一方である複数の対象領域の各々について算出した前記信頼度の分布である信頼度分布を算出し、
2つ以上の種別を含んだ前記集合に含まれる種別の信頼度について各々算出した前記信頼度分布の間の相違度が閾値以下である場合に、前記2つ以上の種別を含んだ集合の前記確実度を、当該集合に含まれる種別の前記信頼度に基づいて算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の対応付け装置。
【請求項5】
前記確実度算出部は、前記選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない前記第1対象領域と前記第2対象領域との対応付け判定処理を、前記選択された種別の確実度よりも確実度が低い種別の特徴量に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の対応付け装置。
【請求項6】
前記確実度算出部は、前記複数の第1対象領域と前記複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した前記信頼度の統計量を算出し、算出された前記統計量に基づいて前記確実度を算出することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の対応付け装置。
【請求項7】
前記確実度算出部は、前記特徴量の種別に応じて前記統計量を補正することにより前記確実度を算出することを特徴とする請求項6に記載の対応付け装置。
【請求項8】
前記対応付け判定部は、算出された前記信頼度が閾値よりも低い前記第1対象領域又は前記第2対象領域を、それぞれ前記第1対象領域又は前記第2対象領域と対応付けしないことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の対応付け装置。
【請求項9】
第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と、第2画像における前記対象を表した複数の第2対象領域の各々を対応付ける対応付け方法であって、
前記複数の第1対象領域と前記複数の第2対象領域の各々について、複数の種別のうち少なくとも1つの種別の特徴量を抽出するとともに、前記特徴量が前記対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した前記特徴量の各々について算出し、
前記特徴量の種別毎に、前記第1対象領域と前記第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、前記複数の第1対象領域と前記複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した前記信頼度に基づいて算出し、
前記確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて前記第1対象領域と前記第2対象領域との対応付け判定処理を行う、
ことを特徴とする対応付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像の各々における対象を表した対象領域どうしを対応付ける対応付け装置及び対応付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、入力画像の部分画像に写る追跡対象物体を追跡する画像処理装置が記載されている。
画像中に写った複数物体の位置を推定して追跡する技術として、複数物体追跡(MOT:Multiple Object Tracking)と呼ばれる手法が知られている。複数物体追跡では、時刻t=nの入力画像から追跡対象を各々含んだ部分画像の領域である対象領域を複数検出し、検出した対象領域の各々について特徴量を抽出する。そして、時刻t=nよりも前の時刻t=n-1の入力画像から検出した複数の対象領域の特徴量と比較し、特徴量が類似する時刻t=nの対象領域と時刻t=n-1の対象領域とを対応付けることによって、同一の追跡対象を映した対象領域の時系列を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-075051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象領域どうしの対応付けには、複数の種別を用いることが好ましい。対応付けに適する特徴量の種別は、入力画像によって異なるからである。例えば、追跡対象が人物である場合、人物の顔が高解像度で撮影できれば顔特徴量が適している。しかし、顔の撮影解像度が低い場合には、例えば頭部特徴量(頭の動きや視線など)の方が顔特徴量よりも適することもある。また、顔の撮影解像度が低い場合や遮蔽物などによって、顔や頭部の一部にオクルージョンがある場合には、例えば全身特徴量(体型、身長、性別、年代など)の方が顔特徴量よりも適することもある。
【0005】
一方で、複数物体追跡のように複数の対象領域の追跡を行う場合、これらの複数の対象領域の各々に対して常に全ての種別の特徴量を抽出できるとは限らない。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と第2画像における対象を表した複数の第2対象領域とを対象領域の特徴量に基づいて対応付ける対応付け装置において、対応付けに用いる特徴量の種別を適切に選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と、第2画像における対象を表した複数の第2対象領域の各々を対応付ける対応付け装置が与えられる。追跡装置は、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の各々について、複数の種別の特徴量を抽出するとともに、特徴量が対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した特徴量の各々について算出する特徴量抽出部と、特徴量の種別毎に、第1対象領域と第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、信頼度に基づいて算出する確実度算出部と、確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された特徴量に基づいて第1対象領域と第2対象領域との対応付け判定処理を行う対応付け判定部と、を備える。
【0007】
本発明の他の一形態によれば、第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と、第2画像における対象を表した複数の第2対象領域の各々を対応付ける対応付け方法が与えられる。対応付け方法では、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の各々について、複数の種別のうち少なくとも1つの種別の特徴量を抽出するとともに、特徴量が対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した特徴量の各々について算出し、特徴量の種別毎に、第1対象領域と第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した信頼度に基づいて算出し、確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された特徴量に基づいて第1対象領域と第2対象領域との対応付け判定処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と第2画像における対象を表した複数の第2対象領域とを対象領域の特徴量に基づいて対応付ける対応付け装置において、対応付けに用いる特徴量の種別を適切に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の追跡装置のハードウエア構成例を示す概略図である。
図2】実施形態の対応付け方法の概要の説明図である。
図3】実施形態の追跡装置の機能構成例のブロック図である。
図4】第1実施形態の確実度算出部が算出する信頼度分布の模式図である。
図5】第1実施形態の確実度算出部において信頼度分布間の相違度が算出される信頼度分布の模式図である。
図6】(a)は信頼度分布間の相違度が小さい場合の模式図であり、(b)は信頼度分布間の相違度が大きい場合の模式図である。
図7】第1実施形態の対応付け方法の一例のフローチャートである。
図8】第2実施形態の対応付け方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本発明の実施形態の追跡装置1のハードウエア構成例を示す概略図である。本発明の実施形態の追跡装置1は、異なる複数の時刻で順次取得した入力画像から追跡対象が写っている対象領域(すなわち追跡対象が写っている位置)を検出し、同一の追跡対象の対象領域どうしを対応付けることにより同一の追跡対象を追跡する追跡装置である。追跡装置1は、特許請求の範囲に記載の「対応付け装置」の一例である。例えば特定の人物を追跡する場合には、検出対象は「人」であり、追跡対象は「特定の人物」である。
以下の説明では、追跡対象として複数の人物を追跡する追跡装置を例示して説明するが、本発明における追跡対象は人物に限定されない。本発明は、複数物体(例えば複数車両など)を追跡する追跡装置にも広く適用可能である。
また、本発明は、複数の時刻で順次取得した入力画像から同一の追跡対象を追跡する追跡装置以外にも、同一の対象物を表した画像や対象領域どうしを対応付ける用途に広く適用可能である。例えば、互いに対応付けられる画像や対象領域は、複数の異なる時刻に撮影されたものでなくともよい。
例えば、画像に映る物体を認識する物体同定において、複数の認識対象の物体が写っている画像集合と、既知の物体が写っている画像集合との対応付けに適用してもよい。例えば人物同定において、防犯カメラの監視画像のような複数の人物が写っている画像において人物を検出した対象領域の各々と、既知の人物が写っている検索画像集合との対応付けに適用してもよい。
また例えば、視点の異なる複数のカメラで同一時刻に撮影した複数視点の画像の各々に複数物体が写っている場合に、複数視点の画像間で同一物体どうしの対応づけに適用してもよい。同一物体の複数視点画像が得ることにより、3次元形状推定や、より精密な姿勢推定や行動推定が可能となる。
【0012】
追跡装置1は、撮影部2と、通信部3と、記憶部4と、画像処理部5と、出力部6と、及び操作入力部7を備える。
撮影部2は、所定の領域を監視する目的で設置される防犯カメラであり、当該領域内に滞在する人物が撮影できる位置に取り付けられる。撮影部2で撮影した画像は通信部3を介して画像処理部5に送信される。
【0013】
通信部3は、撮影部2、画像処理部5、出力部6及び操作入力部7の間でデータの送受信を行なう。LAN(Local Area Network)や、インターネット等の公衆回線を利用できる。
記憶部4は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
画像処理部5は、CPU、MPU、周辺回路、端子、各種メモリ等で構成され、撮影部2が撮影した画像に対して画像処理を施した結果を、通信部3を介して出力部6に送信する。
【0014】
出力部6は、追跡装置1により生成された各種情報を出力するディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、リムーバブルドライブ装置、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、ネットワークインターフェース等である。
操作入力部7は、ユーザーにより操作され、テンプレートや検索範囲の指定入力を受け付けるためのマウスやキーボード等である。
【0015】
図2は、実施形態の対応付け方法の概要の説明図である。入力画像Imは、時刻t=nにおいて撮影部2により生成され画像処理部5に入力された画像である。入力画像Imn-1は、時刻t=nよりも1処理周期前の時刻t=n-1において撮影部2により生成され画像処理部5に入力された画像である。
画像処理部5は、入力画像Imに人物が写っている対象領域A21、A22、A23及びA24を物体検出技術によって検出する。例えば画像処理部5は、物体検出技術として背景差分処理とテンプレートマッチングとに基づく方法など公知の方法を利用できる。
【0016】
一方で、入力画像Imn-1に人物が写っている対象領域A11、A12及びA13も、入力画像Imの対象領域A21~A24の検出よりも1処理周期前に、画像処理部5によって検出されている。対象領域A11~A13は、時刻t=n-1よりも前に検出された対象領域に対応付けられて対象領域の時系列T、T、T(以下の説明において「トラック」と表記することがある)を形成している。
入力画像Imn-1は特許請求の範囲に記載の「第1画像」の一例であり、入力画像Imは特許請求の範囲に記載の「第2画像」の一例であり、対象領域A11~A13は特許請求の範囲に記載の「第1対象領域」の一例であり、対象領域A21~A24は特許請求の範囲に記載の「第2対象領域」の一例である。
【0017】
なお、入力画像Imの対象領域A21と入力画像Imn-1の対象領域A11は、同一人物Pが写っている部分画像の領域であり、対象領域A22と対象領域A12は、同一人物Pが写っている部分画像の領域であり、対象領域A23と対象領域A13は、同一人物Pが写っている部分画像の領域である。入力画像Imの対象領域A24は、入力画像Imには写っているが入力画像Imn-1に写っていない人物Pが写っている部分画像の領域である。
【0018】
画像処理部5は、入力画像Imの対象領域A21~A24と入力画像Imn-1の対象領域A11~A13のとの間の全ての組合せを比較し、対応付けm、m及びmを判定する。すなわち、対象領域A21~A24とトラックT~Tとの間の対応付けを判定する。
画像処理部5は、入力画像Imの対象領域A21~A24の各々の特徴量を抽出する。一方で、入力画像Imn-1の対象領域A11~A13の各々の特徴量は、対象領域A21~A24の特徴量の抽出よりも1処理周期前に画像処理部5によって抽出され記憶部4に記憶されている。画像処理部5は、抽出した特徴量に基づいて対象領域A21~A24とトラックT~Tとの間の対応付けm、m及びmを判定する。
【0019】
すなわち、トラックT~Tのうち、対象領域A21の特徴量に類似する特徴量を有する対象領域A11のトラックTを対象領域A21に対応付ける。同様に、対象領域A22の特徴量に類似する特徴量を有する対象領域A12のトラックTを対象領域A22に対応付ける。対象領域A23の特徴量に類似する特徴量を有する対象領域A13のトラックTを対象領域A23に対応付ける。
【0020】
トラックT~Tと対象領域A21~A24との間の対応付けを判定する際に、対応付けの最適化処理を行ってもよい。例えばトラックT~Tと対象領域A21~A24との対応付けの全てのパターンについて、特徴量間の類似度の合計をパターン毎に算出し、類似度の合計が高くなるように対応付けを判定してよい。
画像処理部5は、対象領域A11~A13のいずれにも対応付けられなかった対象領域A24の時系列を、新たなトラックとして生成する。
【0021】
トラックT~Tと対象領域A21~A24のとの間の対応付けには、複数の種別を用いることが好ましい。対応付けに適する特徴量の種別は、入力画像によって異なるからである。例えば人物P~Pの顔が高解像度で撮影できれば顔特徴量が適している。しかし、顔の撮影解像度が低い場合には、例えば頭部特徴量の方が顔特徴量よりも適することもある。また、顔の撮影解像度が低い場合や什器などによるオクルージョンがある場合には、例えば全身特徴量の方が顔特徴量よりも適することもある。
一方で、複数の対象領域A21~A24の各々に対して常に全ての種別の特徴量を抽出できるとは限らない。
【0022】
そこで画像処理部5は、対象領域A11~A13と対象領域A21~A24について、複数の種別の特徴量を抽出するとともに、抽出した特徴量の各々の信頼度を算出する。本明細書において特徴量の「信頼度」とは、対象領域に写っている追跡対象を識別するのに特徴量がどの程度適しているかを表す指標値であってよい。すなわち、当該特徴量を用いて対象領域に写っている追跡対象を識別した際に、正しく識別できるかの確度を表す指標値であってよい。
言い換えれば、当該特徴量を用いて対象領域に写っている追跡対象を識別した際に、同じ対象か否かを正しく識別できる(すなわち、対応付けできる)かの確度を表す指標値であってよい。例えば、実際に特徴量を用いて対象を識別することなく、同じ対象か否かを正しく識別できるかの確度を表す指標値であってよい。特徴量による対象領域の対応付けは、2つの特徴量が同じ対象か否かを識別することに等しいので、特徴量の信頼度は、正しく対応付けできるかの確度を表す指標値として捉えることができる。
次に、特徴量の種別毎に、対象領域A11~A13と対象領域A21~A24とを当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、信頼度に基づいて算出する。そして、確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された特徴量に基づいて対象領域A11~A13と対象領域A21~A24との対応付け判定処理を行う。
これにより追跡装置1は、複数の種別の特徴量の中から対応付けに用いる特徴量を、適切に選択することが可能となる。
【0023】
図3は、実施形態の追跡装置1の機能構成例のブロック図である。入力画像取得部10と、対象領域検出部11と、特徴量抽出部12と、確実度算出部13と、対応付け判定部14と、トラック記憶部15と、追跡結果出力部16を備える。
図1の撮影部2は、入力画像取得部10として機能し、記憶部4はトラック記憶部15として機能し、画像処理部5は、対象領域検出部11と、特徴量抽出部12と、確実度算出部13と、対応付け判定部14として機能し、出力部6は、追跡結果出力部16として機能する。
【0024】
入力画像取得部10は、複数の異なる時刻t=1、2、…の各々において、所定の監視領域を撮影した画像を入力画像として順次取得する。例えば入力画像取得部10は、撮影部2で撮影した画像を入力画像として取得してもよい。
対象領域検出部11は、入力画像取得部10が取得した入力画像に人物が写っている複数の対象領域を物体検出技術によって検出する。例えば、対象領域検出部11は、物体検出技術として背景差分処理とテンプレートマッチングとに基づく方法など公知の方法を利用できる。
【0025】
以下の説明において、時刻t=nに取得した入力画像から検出した複数の対象領域を「対象領域A」と表記する(i=1、2、…)。
一方で、トラック記憶部15には、時刻t=nよりも前に取得した入力画像から検出した対象領域の時系列である複数のトラックTの情報が記憶されている(k=1、2、…)。以下の説明において、トラックTを構成する対象領域のうち時刻t=n-1以前の数時刻間に取得した入力画像から検出した対象領域を「対象領域A」と表記する。
【0026】
特徴量抽出部12は、複数の対象領域Aの各々について、複数の特徴量種別jのうち対象領域Aから抽出可能な少なくとも1つの種別の特徴量を抽出する。例えば、複数の特徴量種別jの特徴量として、顔特徴量と頭部特徴量と全身特徴量を抽出してよい。例えば特徴量抽出部12は、深層学習(Deep Learning)で用いられるような多層のネットワークで構成されたCNNでモデル化された特徴量抽出モデルに対象領域Aを入力することによって、対象領域Aの特徴量を抽出してよい。
【0027】
本明細書では、特徴量抽出部12は、L個の特徴量種別jのうち抽出可能な少なくとも1つの種別の特徴量を抽出する場合を例示する(j=1、2、…、L)。
以下に説明する第1実施形態では、L個の特徴量種別jの中から1個以上の種別を選んだ特徴量種別の集合Cを決定し、集合Cの特徴量に基づいて対象領域AとトラックTとの間の対応付けを判定する。
【0028】
集合Cに含まれる特徴量種別jの数が1個である場合には、単一の特徴量に基づいて対象領域AとトラックTとの間の対応付けを判定する。
集合Cに含まれる複数の特徴量種別jの数が2個以上である場合には、集合Cに含まれる複数の特徴量種別jの特徴量f、f、…に基づいて、対象領域AとトラックTとの間の対応付けを判定する。
例えば、特徴量f、f、…のそれぞれについてトラックTの対象領域Aと対象領域Aとの類似度s、s、…を算出し、類似度s、s、…の合計(s+s+…)や積(s×s×…)などを総合類似度sとして求めて、総合類似度sに応じて対象領域AとトラックTとの間の対応付けを判定してよい。
このとき、特徴量間の総合類似度sが閾値以下である対象領域AとトラックTの組合せも対応付けない。
【0029】
さらに、特徴量抽出部12は、対象領域Aから抽出した特徴量種別jの特徴量の信頼度r を算出する。例えば特徴量抽出部12は、変分オートエンコーダ(VAE:Variational Auto Encoder)やガウス過程等の生成モデルを用いて、特徴量空間における対象領域Aの特徴量の平均及び分散を算出してよい。特徴量抽出部12は、特徴量の分散の逆数を信頼度r として求めてよい。但し、本発明はこれに限られず、特徴量の抽出とともに特徴量の信頼度に関する何らかの指標を算出する手法であれば広く用いることができる。
【0030】
確実度算出部13は、L個の特徴量種別jの中から1個以上の種別を選んだ特徴量種別の集合C毎に、当該集合Cの特徴量に基づいて対象領域AをトラックTに対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度Rを、集合Cに含まれる特徴量種別jについて算出した信頼度r に基づいて算出する。
対応付け判定部14は、確実度Rがより高い特徴量種別jの集合Cを優先して選択し、選択された集合Cの特徴量に基づいて対象領域AとトラックTとを対応付ける対応付け判定処理を行う。
【0031】
ここで、選択された集合Cに含まれる全ての特徴量が、全ての対象領域Aに対して良好に抽出できるとは限らないことに留意する。例えば、ある対象領域に対しては顔特徴量を良好に抽出できても、他の対象領域に対しては解像度が低い又はオクルージョン等の理由により顔特徴量を良好に抽出できないことがあるからである。
このため、対応付け判定部14は、選択された集合Cに含まれる特徴量の信頼度r が閾値以下である対象領域AやトラックTは対応付けない。
【0032】
以下の説明において、対応付け判定部14によるトラックTとの対応付けが完了した対象領域Aを「割当済対象領域」と表記し、まだトラックTに対応付けられていない対象領域Aを「未割当対象領域」と表記する。また、対象領域Aとの対応付けが完了したトラックTを「割当済トラック」と表記し、まだ対象領域Aに対応付けられていないトラックTを「未割当トラック」と表記する。
【0033】
対応付け判定部14は、時刻t=nの処理周期において(すなわち時刻t=1、2、…の複数の処理周期のうち各々の単一処理周期内において)、未割当対象領域を割当済トラックに対応付けする対応付け判定処理を、特徴量種別jの集合Cを選択し直しながら繰り返し実行する。
【0034】
具体的には、対応付け判定部14は、時刻t=nの処理周期における第1回目の対応付け判定処理を行う前に、全ての対象領域Aを「未割当対象領域」に設定し、全てのトラックTを「未割当トラック」に設定する。
確実度算出部13は、対応付け判定処理を1回行う毎に、未割当対象領域に設定された対象領域Aの信頼度r に基づいて、未割当対象領域に設定された対象領域Aを対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度Rを算出する。
対応付け判定部14は、確実度Rがより高い特徴量種別jの集合Cを優先して選択し、選択された集合Cの特徴量に基づいて未割当対象領域と未割当トラックとの対応付けを判定する。
【0035】
対応付け判定部14は、ある対象領域AをあるトラックTに対応付けた場合、トラックTの時系列に対象領域Aを追加する。例えばトラック記憶部15に記憶されているトラックTの情報に対象領域Aの情報(位置、幅、高さ等)を追加して、トラック記憶部15に記憶されているトラックTの情報を更新する。また、対応付け判定部14は、対象領域Aについて抽出した全ての特徴量種別jの特徴量と信頼度r をトラックTの情報に追加して、トラック記憶部15に記憶されているトラックTの情報を更新する。対応付け判定部14は、対応付けが完了した対象領域AとトラックTとを、それぞれ割当済対象領域と割当済トラックに設定する。
【0036】
対応付け判定部14は、対応付け判定処理を1回行う毎に、所定の対応付け終了条件を満足するか否かを判定する。例えば以下の条件(A1)~(A3)のいずれかを満足する場合に、対応付け終了条件を満足する。
(A1)全ての対象領域Aが「割当済対象領域」に設定された。
(A2)全てのトラックTが「割当済トラック」に設定された。
(A3)全ての集合Cについて、未割当対象領域の信頼度r に基づいて算出した確実度Rcが全て閾値以下である。
(A3)に代えて又は加えて、以下の条件(A4)を満足する場合に対応付け終了条件を満足すると判定してもよい。
(A4)全ての未割当対象領域の信頼度r が全て閾値以下である。
【0037】
対応付け終了条件を満足した場合に、対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aが残っているか否かを判定する。対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aから始まる時系列を新しいトラックとして生成する。例えば未割当対象領域の情報(位置、幅、高さ等)と、未割当対象領域について抽出した全ての特徴量種別jの特徴量と信頼度r をトラック記憶部15に記憶する。
以上の処理を終了すると、時刻t=nの処理周期が完了し、次の時刻t=n+1の処理周期の処理を開始する。
【0038】
次に、確実度Rの算出方法の例について説明する。
集合Cに含まれる特徴量種別jの数が1個である場合には、確実度算出部13は、次式(1)に基づいて確実度Rを算出してよい。
=a1×R+b1 …(1)
【0039】
式(1)において、Rは未割当対象領域のうち特徴量種別jの特徴量を計算可能な対象領域Aに対して算出した信頼度r の統計量であってよい。統計量Rは、例えば信頼度r の平均、分散、歪度などのモーメントであってよく、信頼度r の中央値や、最大値や、最小値、分位点などであってもよい。
また、a1は所定の補正係数であり、b1は所定の補正加算値である。補正係数a1や補正加算値b1を特徴量種別j毎に異なる値に設定することにより、特徴量種別jの特徴量による対応付けに優先度を設定したり、値域の異なる信頼度r の値を正規化してもよい。
【0040】
集合Cに含まれる特徴量種別jの数が複数個である場合に確実度算出部13は、特徴量種別j毎に、未割当対象領域に設定された対象領域Aの各々について算出した信頼度r の分布である信頼度分布rを算出する。図4は、確実度算出部13が算出する信頼度分布rの模式図である。
確実度算出部13は、集合Cから特徴量種別α、βのペアを選び、信頼度分布rαとrβとの間の相違度Dist(rα,rβ)を算出する。図5は、確実度算出部13において相違度Dist(rα,rβ)が算出される信頼度分布rα、rβのペアの模式図である。例えば確実度算出部13は、信頼度分布間のカルバック・ライブラー(KL:Kullback-Leibler)ダイバージェンスや、信頼度列の内積に基づいた距離を相違度Dist(rα,rβ)として算出してよい。
【0041】
確実度算出部13は、集合Cから選んだ特徴量種別の全てのペアにおいて相違度Dist(rα,rβ)が所定の閾値以下となる場合に、次式(2)にしたがい、統計量Rの総和ΣRに基づいて確実度Rを算出する。
【数1】
式(2)において、a2は所定の補正係数であり、b2は所定の補正加算値である。補正係数a2は、例えば集合Cの要素数に応じて設定してよい。例えば要素数が多いほど小さな補正係数a1を設定してよい。また、集合Cに応じて補正係数a2や補正加算値b2を異なる値に設定することにより、集合Cの特徴量による対応付けに優先度を設定してもよい。
なお、確実度算出部13は、上式(2)の確実度Rに代えて統計量Rの総乗ΠRに基づいて確実度Rをしてもよい。
【0042】
一方で、集合Cから選んだ特徴量種別のいずれかのペアα、βに対して相違度Dist(rα,rβ)が所定の閾値以下とならない場合には、対応付け判定部14は、集合Cの特徴量に基づく対象領域AとトラックTとの対応付け判定処理を行わない。
例えば、集合Cから選んだ特徴量種別のいずれかのペアα、βに対して、相違度Dist(rα,rβ)が所定の閾値以下とならない場合には、確実度Rを0又は非常に小さな所定値に設定する。これにより、集合Cの優先度を下げて、対応付け判定部14が対象領域AとトラックTとの対応付け判定処理に集合Cの特徴量を使用しないようにする。
【0043】
以下、図6(a)及び図6(b)を参照してその理由を説明する。図6(a)は信頼度分布rα、rβ間の相違度Dist(rα,rβ)が小さい場合の模式図であり、図6(b)は相違度Dist(rα,rβ)が大きい場合の模式図である。
図6(a)において破線20、21でそれぞれ囲んだ範囲では、特徴量種別αの信頼度rα と特徴量種別βの信頼度rβ が両方とも高くなっている。このように、相違度Dist(rα,rβ)が小さい場合には、信頼度rα と信頼度rβ が両方とも高くなる対象領域Aが生じやすい。信頼度は当該特徴量を用いて対象領域を(正しく識別できるか、つまり、)正しく対応付けできるかの確度を表す指標値であるので、信頼度rα と信頼度rβ が両方同程度に高い対象領域Aついては、特徴量種別α、βの両方を用いて対応付けすると、一方のみの特徴量種別を用いた場合に比べて、より正しく対応付ける確度が高くなる。このため、特徴量種別α、βの組合せに基づいてより確実に対応付けできる対象領域Aiが存在することとなる。
【0044】
一方で、相違度Dist(rα,rβ)が大きい場合には、図6(b)に示すように信頼度rα と信頼度rβ が両方とも高くなる対象領域Aが生じにくい。このため、このような特徴量種別の組合せに基づいて対応付けを行うと、確実に対応付けできるか否かが分からず、誤った対応付けが行われる虞がある。
このため対応付け判定部14は、集合Cから選んだ特徴量種別のいずれかのペアα、βに対して相違度Dist(rα,rβ)が所定の閾値以下とならない場合には、集合Cの特徴量に基づく対象領域AとトラックTとの対応付け判定処理を行わない。
【0045】
上記説明では、未割当対象領域に設定された対象領域Aの信頼度r に基づいて確実度Rを算出する例について記載した。これに代えて、未割当トラックに設定されたトラックTを構成する対象領域のうち時刻t=n-1以前の数時刻間に取得した入力画像から検出した対象領域Aの信頼度r に基づいて確実度Rを算出してもよい。
上記のとおり対応付け判定部14は、対象領域AをトラックTに対応付ける際には、対象領域Aについて抽出した全ての特徴量種別jの特徴量と信頼度r を、トラック記憶部15に記憶されているトラックTの情報に追加する。したがって、トラック記憶部15にトラックTの対象領域Aについて抽出した全ての特徴量種別jの特徴量と信頼度r が記憶されている。
【0046】
確実度算出部13は、トラック記憶部15から信頼度r を読み出して、信頼度r に基づく確実度Rを算出してもよい。信頼度r に基づく確実度Rの算出は、上述した信頼度r に基づく確実度Rの算出方法と同様である。
対応付け判定部14は、信頼度r に基づく確実度Rがより高い特徴量種別jの集合Cを優先して選択し、選択された集合Cの特徴量に基づいて未割当対象領域と未割当トラックとの対応付けを判定する。
【0047】
また、確実度算出部13は、対象領域Aの信頼度r に基づく確実度R(以下「確実度R1」と表記することがある)と、トラックTの対象領域Aの信頼度r に基づく確実度R(以下「確実度R2」と表記することがある)とを組み合わせた合成確実度R3を算出してもよい。
例えば、確実度算出部13は信頼度r に基づく確実度R1と信頼度r に基づく確実度R2との積を合成確実度R3=R1×R2として算出してもよい。
【0048】
例えば、確実度算出部13は信頼度r に基づく確実度R1と信頼度r に基づく確実度R2との和を合成確実度R3=R1+R2として算出してもよい。このとき確実度算出部13は、確実度R1又は確実度R2のいずれか一方が0又は非常に小さな所定値である場合に、合成確実度R3を0又は非常に小さな所定値に設定する。
対応付け判定部14は、合成確実度R3がより高い特徴量種別jの集合Cを優先して選択し、選択された集合Cの特徴量に基づいて未割当対象領域と未割当トラックとの対応付けを判定する。
【0049】
図3を参照する。対応付け判定部14は、対象領域Aの情報(位置、幅、高さ等)と、対象領域Aが対応付けられたトラックTの識別情報Idと、を追跡結果出力部16に出力する。また、新しいトラックを生成した場合には、生成したトラックを構成する対象領域Aの情報と新しく生成したトラックの識別情報Idと、追跡結果出力部16に出力する。
【0050】
追跡結果出力部16は、複数の異なる時刻t=1、2、…において入力画像取得部10が取得した入力画像を、出力部6から複数の異なる時刻にそれぞれ表示する。例えば、出力部6のディスプレイに表示する。
その際に、対応付け判定部14から出力される対象領域Aの情報に基づいて、入力画像から検出した対象領域Aの位置情報を出力する。例えば、対象領域Aを表す図形(例えば四角形)を入力画像に重畳してディスプレイに表示してよい。
【0051】
さらに追跡結果出力部16は、対応付け判定部14から出力される識別情報Idに基づいて、複数の異なる時刻t=1、2、…の入力画像から同一の追跡対象を検出した対象領域Aを特定する情報を出力部6から出力する。例えば、同一の追跡対象を検出した対象領域Aを表す図形を同じ色彩及び明度で表示し、異なる追跡対象を検出した対象領域Aを表す図形を異なる色彩や異なる明度で表示してよい。また例えば、同一の追跡対象を検出した対象領域Aに同一の記号やマーク、図形、文字(例えば識別情報など)を付加して表示してもよい。
【0052】
(動作)
図7は、第1実施形態の対応付け方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において入力画像取得部10は、時刻t=nに撮影した入力画像Imを取得する。
ステップS2において対象領域検出部11は、入力画像Imに人物が写っている複数の対象領域Aを検出する。
ステップS3において特徴量抽出部12は、複数の対象領域Aの各々について、複数の特徴量種別jのうち対象領域Aから抽出可能な少なくとも1つの種別の特徴量を抽出する。
【0053】
ステップS4において特徴量抽出部12は、対象領域Aから抽出した特徴量種別jの特徴量の信頼度r を算出する。
ステップS5において対応付け判定部14は、全ての対象領域Aを「未割当対象領域」に設定し、全てのトラックTを「未割当トラック」に設定する。
ステップS6において確実度算出部13は、未割当対象領域の信頼度r に基づく確実度Rを算出する。確実度算出部13は、未割当トラックTの対象領域Aから抽出した特徴量種別jの特徴量の信頼度r をトラック記憶部15から読み出して、未割当トラックの信頼度r に基づく確実度Rを算出してもよい。確実度算出部13は、合成確実度R3を算出してもよい。
【0054】
ステップS7において対応付け判定部14は、確実度R又は合成確実度R3に基づく優先度に従って、特徴量種別jの集合Cを選択する。
ステップS8において対応付け判定部14は、選択された集合Cの特徴量に基づいて未割当対象領域と未割当トラックとの対応付けを判定する。
ステップS9において対応付け判定部14は、ステップS8で対応付けした対象領域AとトラックTを、それぞれ割当済対象領域と割当済トラックに設定する。
【0055】
ステップS10において対応付け判定部14は、所定の対応付け終了条件を満足するか否かを判定する。対応付け終了条件を満足する場合(ステップS10:Y)に処理はステップS11へ進む。対応付け終了条件を満足しない場合(ステップS10:N)に処理はステップS6へ戻る。
ステップS11において対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aが残っているか否かを判定する。未割当対象領域に設定された対象領域Aが残っている場合(ステップS11:Y)に処理はステップS12へ進む。未割当対象領域に設定された対象領域Aが残っていない場合(ステップS11:N)に処理は終了する。
ステップS12において対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aから始まる時系列を新しいトラックとして生成する。その後に処理は終了する。
【0056】
(第2実施形態)
以下に説明する第2実施形態では、L個の特徴量種別jの中から1個の種別を選択し、選択した1個の種別の特徴量に基づいて対象領域AとトラックTとの間の対応付けを判定する。
確実度算出部13は、L個の特徴量種別j毎に、当該特徴量種別jの特徴量に基づいて対象領域AをトラックTに対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度Rを信頼度r に基づいて算出する。例えば確実度算出部13は、集合Cに含まれる特徴量種別jの数が1個である場合の上式(1)の確実度Rを算出してよい。
【0057】
対応付け判定部14は、確実度Rに従って特徴量種別jの優先度を設定する。例えば、確実度Rが高いほどより高い優先度を設定してよい。
対応付け判定部14は、時刻t=nの処理周期において(すなわち時刻t=1、2、…の複数の処理周期のうち各々の単一処理周期内において)、優先度の高い特徴量種別jの特徴量から順に選択しながら、選択した特徴量に基づいて未割当対象領域を割当済トラックに対応付けする対応付け判定処理を繰り返し実行する。
【0058】
この際に、対応付け判定部14は、信頼度r が閾値以下である対象領域AやトラックTは対応付けない。また、特徴量間の類似度が閾値以下である対象領域AとトラックTの組合せも対応付けない。
対応付け判定部14は、対応付け判定処理を1回行う毎に、所定の対応付け終了条件を満足するか否かを判定する。例えば以下の条件(B1)~(B4)のいずれかを満足する場合に、対応付け終了条件を満足する。
(B1)全ての特徴量種別jの特徴量が対応付け処理に使用された。
(B2)全ての対象領域Aが「割当済対象領域」に設定された。
(B3)全てのトラックTが「割当済トラック」に設定された。
(B4)全ての未割当対象領域の信頼度r が全て閾値以下である。
(B5)選択された特徴量種別jの確実度Rが閾値以下である。
【0059】
対応付け終了条件を満足した場合に、対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aが残っているか否かを判定する。対応付け判定部14は、未割当対象領域に設定された対象領域Aから始まる時系列を新しいトラックとして生成する。
以上の処理を終了すると、時刻t=nの処理周期が完了し、次の時刻t=n+1の処理周期の処理を開始する。
【0060】
なお、確実度算出部13は、第1実施例と同様に、未割当トラックに設定されたトラックTを構成する対象領域のうち時刻t=n-1以前の数時刻間に取得した入力画像から検出した対象領域Aの信頼度r に基づいて確実度Rを算出してもよい。
対応付け判定部14は、信頼度r に基づく確実度Rに従って特徴量種別jの優先度を設定してよい。
また確実度算出部13は、第1実施例と同様に、対象領域Aの信頼度r に基づく確実度R(以下「確実度R1」と表記することがある)と、トラックTの対象領域Aの信頼度r に基づく確実度R(以下「確実度R2」と表記することがある)とを組み合わせた合成確実度R3を算出してもよい。対応付け判定部14は、合成確実度R3に従って特徴量種別jの優先度を設定してよい。
【0061】
(動作)
図8は、第2実施形態の対応付け方法の一例のフローチャートである。
ステップS20~S23の処理は、図7のステップS1~S4の処理と同様である。
ステップS24において確実度算出部13は、L個の特徴量種別j毎に、当該特徴量種別jの特徴量の信頼度に基づいて対象領域AをトラックTに対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度Rを算出する。
ステップS25において対応付け判定部14は、全ての対象領域Aを「未割当対象領域」に設定し、全てのトラックTを「未割当トラック」に設定する。また、確実度Rに従って特徴量種別jの優先度を設定する。
【0062】
ステップS26において対応付け判定部14は、優先度を指定する変数Pを1に設定する。
ステップS27において対応付け判定部14は、確実度Rに基づく優先度がP番目である特徴量種別jの特徴量を選択する。
ステップS28において対応付け判定部14は、選択された種別の特徴量に基づいて未割当対象領域と未割当トラックとの対応付けを判定する。
ステップS29において対応付け判定部14は、ステップS28で対応付けした対象領域AとトラックTを、それぞれ割当済対象領域と割当済トラックに設定する。
【0063】
ステップS30において対応付け判定部14は、変数Pの値を1だけ増加させる(すなわち変数Pをインクリメントする)。
ステップS31において対応付け判定部14は、所定の対応付け終了条件を満足するか否かを判定する。対応付け終了条件を満足する場合(ステップS:Y)に処理はステップSへ進む。対応付け終了条件を満足しない場合(ステップS:N)に処理はステップSへ進む。
ステップS32及びS33の処理は、図7のステップS11及びS12の処理と同様である。
【0064】
(実施形態の効果)
(1)追跡装置1は、第1画像における対象を表した複数の第1対象領域と、第2画像における対象を表した複数の第2対象領域の各々を対応付ける。追跡装置1は、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の各々について、複数の種別のうち少なくとも1つの種別の特徴量を抽出するとともに、前記特徴量が前記対象の識別に適している程度を示す信頼度を、抽出した特徴量の各々について算出する特徴量抽出部12と、特徴量の種別毎に、第1対象領域と第2対象領域を当該種別の特徴量を用いて対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した信頼度に基づいて算出する確実度算出部13と、確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて第1対象領域と第2対象領域との対応付け判定処理を行う対応付け判定部14と、を備える。
【0065】
これにより、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域とを対応付ける際に、複数の種別の特徴量の中からより適した種別の特徴量を適宜選択して用いることができる。この結果、当該時刻に適した種別の特徴量を用いて対応付けを行うことができる。また、特徴量の信頼度と、特徴量に基づく対応付けの正確度合いとが相関関係にあるという仮定に基づいて確実度を算出できる。
なお、複数の第1対象領域は単一の画像内に設定される領域であってもよく、複数の画像それぞれ設定される領域であってもよい。同様に、複数の第2対象領域は単一の画像内に設定される領域であってもよく、複数の画像それぞれ設定される領域であってもよい。
【0066】
(2)確実度算出部13は、選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない第1対象領域である第1未割当対象領域と、選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない第2対象領域である第2未割当対象領域の少なくとも一方について算出した信頼度に基づいて確実度を再算出してよい。対応付け判定部14は、再算出した確実度がより高い種別の特徴量を優先して選択し、選択された種別の特徴量に基づいて第1未割当対象領域と第2未割当対象領域との対応付け判定処理を行ってもよい。
これにより選択された種別の特徴量に基づいて適切な対応付けできない対象領域がある場合には、この対象領域に適した種別の特徴量を選択し直して対応付け判定処理を行うので、適切な種別の特徴量で対応付けができる対象領域を増やすことができる。この結果、各々の対象領域に適した種別の特徴量を用いて対応付けを行うことができるので、より適切な対応付けが可能となる。
【0067】
(3)確実度算出部13は、複数の種別から1個以上の種別を選んだ集合を設定し、設定した集合毎に、この集合に含まれる種別の特徴量を用いて第1対象領域と第2対象領域を対応付けた場合の対応付けの正確度合いを示す確実度を算出してもよい。対応付け判定部14は、確実度がより高い集合を選択し、選択した集合に含まれる種別の特徴量を用いて対応付け判定処理を行ってもよい。
これにより、対応付けに用いる特徴量の組合せを適切に選択することが可能となる。
【0068】
(4)確実度算出部13は、複数の第1対象領域又は前記複数の第2対象領域の少なくとも一方である複数の対象領域の各々について算出した信頼度の分布である信頼度分布を算出し、2つ以上の種別を含んだ集合に含まれる種別の信頼度について各々算出した信頼度分布の間の相違度が閾値以下である場合に、2つ以上の種別を含んだ集合の確実度を、この集合に含まれる種別の前記信頼度に基づいて算出してもよい。
これにより、2つ以上の種別の特徴量の集合に基づいて対応付け判定処理を行う際に、対応付けに有利な特徴量の集合を選別できる。
【0069】
(5)確実度算出部13は、選択された種別の特徴量に基づいて対応付けできない第1対象領域と前記第2対象領域との対応付け判定処理を、選択された種別の確実度よりも確実度が低い種別の特徴量に基づいて行ってもよい。
これにより選択された種別の特徴量に基づいて適切な対応付けできない対象領域がある場合には、この対象領域に適した種別の特徴量を選択し直して対応付け判定処理を行うので、適切な種別の特徴量で対応付けができる対象領域を増やすことができる。
【0070】
(6)確実度算出部13は、複数の第1対象領域と複数の第2対象領域の少なくとも一方について算出した信頼度の統計量を算出し、算出された統計量に基づいて確実度を算出してよい。
複数の対象領域の各々について算出した信頼度の統計量を算出することにより、これら信頼度の特徴を要約したスカラー値を確実度として算出できる。
【0071】
(7)確実度算出部13は、特徴量の種別に応じて統計量を補正することにより確実度を算出してもよい。これにより、特徴量の種別の特徴量による対応付けに優先度を設定したり、値域の異なる信頼度の値を正規化できる。
(8)対応付け判定部14は、算出された信頼度が閾値よりも低い第1対象領域又は第2対象領域を、それぞれ第1対象領域又は第2対象領域と対応付けしなくてよい。これにより、信頼度の低い特徴量によって不適切な対応付けを行うのを抑制できる。
【符号の説明】
【0072】
1…追跡装置、2…撮影部、3…通信部、4…記憶部、5…画像処理部、6…出力部、7…操作入力部、10…入力画像取得部、11…対象領域検出部、12…特徴量抽出部、13…確実度算出部、14…対応付け判定部、15…トラック記憶部、16…追跡結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8