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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147851
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/20 20060101AFI20231005BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20231005BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20231005BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60N2/20
B60N2/42
B60N2/30
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055586
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多治見 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 哲雄
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EB02
3B087BD01
3B087CD05
(57)【要約】
【課題】起立姿勢とシート前方への倒伏姿勢とに切り換え可能なシートバックのロック機構をシートバック後部に配置された上下回動式のレバーで操作する乗物用シートにおいて、衝突時の安全性の向上を図る。
【解決手段】センタシートバックは、自動車ボディに対して回動可能に取付けられ、自動車ボディに固定されたストライカ27に係合してセンタシートバックを起立姿勢で回動不能にロックするロック機構10と、水平方向に延びる回動軸8Aを中心に回動可能に配設されて回動することでロック機構10をアンロックするレバー8と、を有する。センタシートバックが起立姿勢でロックされた状態でセンタシートバックに後方から衝撃荷重が印加されたとき、レバー8に印加される慣性力によってレバー8が回動軸8Aを中心に回動することを抑制するために回動軸8Aから径方向に離れた位置に慣性力を打ち消すウェイト8bが配設されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物ボディに対して回動可能に直接的又は間接的に取付けられたシートバックを備えた乗物用シートであって、
前記シートバックに配設され前記乗物ボディに直接的又は間接的に固定されたストライカに係合して前記シートバックを起立姿勢で前記乗物ボディに対して回動不能にロックするロック機構と、前記シートバックの後部に水平方向に延びる回動軸を中心に回動可能に配設されて回動することで前記ロック機構をアンロックするレバーと、を有し、
前記シートバックが起立姿勢でロックされた状態で前記シートバックに後方から衝撃荷重が印加されたとき、前記レバーに印加される慣性力によって前記レバーが前記回動軸を中心に回動することを抑制するために前記回動軸から径方向に離れた位置に前記慣性力を打ち消すウェイト部材が配設されている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、前記ウェイト部材は、円柱状で中心軸が前記回動軸と平行に配設されている乗物用シート。
【請求項3】
請求項2において、前記レバーに対し前記ウェイト部材は嵌合により取付けられている乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シート、例えば、自動車用シートにあっては、自動車ボディに対して回動可能に支持されたシートバックを起立姿勢とシート前方への倒伏姿勢とに切り換え可能なものがある。特許文献1に記載された自動車用シートにおいては、シートバックを自動車ボディに対して起立姿勢の状態でロックするロック機構をアンロックしてシートバックを前倒し可能とするストラップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-183140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の自動車用シートにおいては、ロック機構をアンロックするのにストラップを上方向に引張ることによって行っている。したがって、自動車の前突等によってロック状態のシートバックに後方から荷物が当たっても慣性力でストラップが上方向に引張られるような力は印加されずロック機構が解除されることはない。一方、ロック機構のアンロックをシートバックの後部に配置した上下回動式のレバーによって行おうとした場合、レバーの配置場所によってはロック状態のシートバックに後方から荷物が当たったときレバーが慣性力によって回動しロック機構が解除されてしまうおそれがあった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、起立姿勢とシート前方への倒伏姿勢とに切り換え可能なシートバックのロック機構をシートバック後部に配置された上下回動式のレバーで操作する乗物用シートにおいて、衝突時の安全性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、乗物ボディに対して回動可能に直接的又は間接的に取付けられたシートバックを備えた乗物用シートであって、前記シートバックに配設され前記乗物ボディに直接的又は間接的に固定されたストライカに係合して前記シートバックを起立姿勢で前記乗物ボディに対して回動不能にロックするロック機構と、前記シートバックの後部に水平方向に延びる回動軸を中心に回動可能に配設されて回動することで前記ロック機構をアンロックするレバーと、を有し、前記シートバックが起立姿勢でロックされた状態で前記シートバックに後方から衝撃荷重が印加されたとき、前記レバーに印加される慣性力によって前記レバーが前記回動軸を中心に回動することを抑制するために前記回動軸から径方向に離れた位置に前記慣性力を打ち消すウェイト部材が配設されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、ロック機構を水平方向に延びる回動軸を中心に回動することでアンロックするレバーを備えたシートバックが、起立姿勢においてロックされた状態で後方から衝撃荷重を印加されても、レバーに慣性力を打ち消すウェイト部材が配設されているので慣性力によってレバーがアンロック方向に回動されにくい。これによって、乗物用シートの衝突時の安全性を高めることができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記ウェイト部材は、円柱状で中心軸が前記回動軸と平行に配設されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、ウェイト部材が円柱状の単純な形状なのでワイヤ等を適当な長さに切断すればよくコストの増加を抑制できる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記レバーに対し前記ウェイト部材は嵌合により取付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、レバーに対しウェイト部材を嵌合により取付けられるので、取付のための部品や材料が要らずコストの増加をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の自動車用リアシートのシートバックを斜め前方から見た斜視図である。
図2図1のII部分を拡大して示す図である。バックフレームを省いて表示している。
図3】上記実施形態のレバーを斜め後方から見た斜視図である。
図4】上記実施形態のレバーを斜め前方から見た斜視図である。
図5図4のV-V矢視線断面図である。
図6】上記実施形態のレバーとロック機構の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図6は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、自動車用リアシート1のセンタシートバック2に本発明を適用した例である。各図中、矢印により自動車用リアシート1を自動車に取付けたときの各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。なお、左右方向がシート幅方向に相当する。
【0014】
本実施形態の自動車用リアシート1は、自動車の後部側座席であって6:4分割タイプのシートにおける2人掛けが可能な6側シートである。自動車用リアシート1は、センタ側着席乗員の背凭れとなるセンタシートバック2と、サイド側着席乗員の背凭れとなるサイドシートバック3と、センタ側着席乗員及びサイド側着席乗員の着座部となるシートクッション4と、を備えている。シートクッション4については、公知の構成のものであるので説明を省略し、センタシートバック2とサイドシートバック3について説明していく。ここで、自動車用リアシート1とセンタシートバック2が、それぞれ特許請求の範囲の「乗物用シート」と「シートバック」に相当する。
【0015】
図1に示すように、センタシートバック2は、骨格を成すバックフレーム5と、ロック機構10と、クッション材であるバックパッド6と、表皮材であるバックカバー7と、レバー8と、レバーカバー9と、を備えている。バックパッド6は、バックフレーム5を覆うように被せつけられセンタシートバック2の外形形状を形成する。バックカバー7は、バックパッド6を覆うように被せつけられている。レバーカバー9は、樹脂製でセンタシートバック2の上端部側後面部をバックカバー7の上から覆った状態でバックフレーム5に対し取付けられている。
【0016】
バックフレーム5は、センタシートバック2を起立姿勢にした状態で、前方から見て長軸方向を略上下方向とする矩形状の本体部5aと、本体部5aの上端部側前面部に取付けられた上ブラケット5bと、本体部5aの下端部側前面部に取付けられた下ブラケット5cと、を有する。本体部5aは、左右両端部に平行して上下方向に延びるリブ5a1が形成されて剛性が高められている。上ブラケット5bには、右端部にロック機構10が取付けられ、前面側にヘッドレストサポートを支持する左右一対の角筒状のヘッドレストブラケット5b1が取付けられている。下ブラケット5cは、本体部5aの下端部側前面部に当接して固定される平板状のベース部5c1と、ベース部5c1の左右両端部からベース部5c1に対して垂直方向に前方に向かって延びる左右一対の縦壁部5c2と、を有する。左右一対の縦壁部5c2には、それぞれ左右方向に延びる回転軸5dを通す軸孔5c3が設けられている。バックフレーム5は、フロアFに固定された固定フレーム30に対して回転軸5dを中心に前後に回転するように取付けられている。これによって、センタシートバック2は、前面側がシートクッション4の上面側に対向する倒伏姿勢にした状態と、シートクッション4の上面側に対して起立姿勢にした状態と、を採れるようになっている。なお、回転軸5dは、フロアFに対して固定フレーム30を介して間接的に支持されているが、これに限らず、フロアFに直接的に取付けられていてもよい。ここで、フロアFが、特許請求の範囲の「乗物ボディ」に相当する。
【0017】
図1に示すように、サイドシートバック3は、センタシートバック2に対して独立して前面側がシートクッション4の上面側に対向する倒伏姿勢にした状態と、シートクッション4の上面側に対して起立姿勢にした状態と、を採れるようになっている。サイドシートバック3は、骨格を成すバックフレーム20と、クッション材であるバックパッド21と、表皮材であるバックカバー22と、を備えている。バックパッド21は、バックフレーム20を覆うように被せつけられサイドシートバック3の外形形状を形成する。バックカバー22は、バックパッド21を覆うように被せつけられている。
【0018】
バックフレーム20は、サイドシートバック3を起立姿勢にした状態で、略上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム23と、各サイドフレーム23の上端部側を連結するアッパパイプ24と、各サイドフレーム23の上下方向略中央部を連結するセンタパイプ25と、を有する。各サイドフレーム23は、左右方向から見て上方に向かうにつれて前後方向の長さが短くなる板状部23aの前端部と後端部にバックフレーム20の内側方向に向かって延びるフランジ部23bを設けて剛性を高めた形状をしている。各サイドフレーム23の下端部側の板状部23aはリクライニングアジャスタ26を介して固定フレーム30に取付けられている。これによって、バックフレーム20は、シートクッション4に対する傾き角度を変更可能とされている。アッパパイプ24には、前面側にヘッドレストサポートを支持する左右一対の角筒状のヘッドレストブラケット5b1が取付けられている。左側すなわちセンタシートバック2側のサイドフレーム23における板状部23aの上部にはストライカ27がストライカブラケット28を介して取付けられている。具体的には、図2に示すように、ストライカ27は、金属丸棒をU字状に折り曲げて形成され開口端側がストライカブラケット28に固定されている。ストライカ27は、互いに平行に左右方向に延びる前棒状部27aと後棒状部27bとを有する。サイドシートバック3を起立姿勢にした状態で、ストライカ27に対してセンタシートバック2のロック機構10を前棒状部27aに係合させることで、センタシートバック2は起立姿勢にした状態でサイドシートバック3に連結される。すなわち、ストライカ27はフロアFに対しサイドシートバック3を介して間接的に固定されている。
【0019】
図2及び図6に示すように、ロック機構10は、左方に向かって開口したボックス状のケース11と、ケース11に取付けられたフック12と、ケース11に取付けられたポール13と、ケース11に取付けられたカム14と、ケース11に取付けられた解除部材15と、を有する。ケース11は、バックフレーム5の上ブラケット5bに取付けられ、センタシートバック2が起立姿勢にあるとき後下方に向かって開口する略U字状の凹部11aを有している。凹部11aは、センタシートバック2が起立姿勢とされたとき、ストライカ27の前棒状部27aを受け入れ可能とされている。ケース11における凹部11aの前下方にはフック軸12aが左右方向に延びて配設され、ケース11における凹部11aの後上方にはポール軸13aが左右方向に延びて配設され、ポール軸13aの前上方にはカム軸14aが左右方向に延びて配設され、フック軸12aとカム軸14aの間には解除部材軸15aが左右方向に延びて配設されている。
【0020】
図6に示すように、フック12は、板状の部材でケース11に対してフック軸12aによって、その軸回りに回動可能に取付けられているとともに、フックばね12a1の働きによって、図6において、フック軸12aを中心に時計回りの方向に回動付勢されている。フック12は、ストライカ27の前棒状部27aと係合したロック状態において、フック軸12aの後上方において後上方に開口した側面視で略U字状のフック部12bを有している。フック12には、図6において、フック軸12aを中心にフック部12bの反時計回りの方向にフック軸12aから径方向に延びる突出部12cが設けられている。突出部12cには、フック部12bの開口側上端部から上方向に延びる傾斜面部12c1と、傾斜面部12c1の上端部からフック軸12aを中心に、図6において、反時計回りの方向に延びる円弧状部12c2と、が形成されている。また、突出部12cにおける右側面(サイドシートバック3側の面)には、フック軸12aと円弧状部12c2との略中間部において右方向に(サイドシートバック3の方向に)突出する凸部12c3が形成されている。傾斜面部12c1は、後述するポール13がフック12に係合したロック状態において、ポール13のフック係合部13b1が隙を隔てて対向するように形成されている。円弧状部12c2は、ポール13がフック12に係合したロック状態において、ポール13の突起部13bにおける先端部下側の第1フック当接部13b2が当接するように形成されている。また、凸部12c3の上部には、ポール13がフック12に係合したロック状態において、カム14のカム面部14b1が当接してフック12をフック軸12aを中心に、図6において、反時計回りの方向に回転させる押圧力を印加するように形成されている。
【0021】
図6に示すように、ポール13は、板状の部材でケース11に対してポール軸13aによって、その軸回りに回動可能に取付けられているとともに、ポールばね13a1の働きによって、図6において、ポール軸13aを中心に反時計回りの方向に回動付勢されている。ポール13は、ポール軸13aから径方向に突出する突起部13bを有する。突起部13bの径方向中間部には、ストライカ27に係合してロック状態となったフック12の傾斜面部12c1に隙を隔てて対向するフック係合部13b1が形成されている。フック係合部13b1は、ポール軸13aを中心とする円弧の一部をなす形状とされている。突起部13bの先端部下側には、ストライカ27に係合してロック状態となったフック12の円弧状部12c2に当接して摺動可能な第1フック当接部13b2が形成されている。突起部13bの先端部の右側面(サイドシートバック3側の面)には、右方向に(サイドシートバック3の方向に)突出する円柱状の第1凸部13b3が形成されている。第1凸部13b3は、ポール13がフック12に係合したロック状態において、解除部材15のポール当接部15b1が下方から当接することによってポール13をポール軸13aを中心に、図6において、時計回りに回転させフック12との係合が解除されてアンロック状態となる。突起部13bの第1凸部13b3とポール軸13aとの間の右側面には、右方向に突出する円柱状の第2凸部13b4が形成されている。第2凸部13b4は、ポール13をポール軸13aを中心に、図6において、時計回りに回転させたとき、カム14のポール当接部14c1に下方から当接することによってカム14をカム軸14aを中心に、図6において、時計回りに回転させフック12との係合を解除してアンロック状態とする。フック係合部13b1の下端部からポール軸13aの方向に延びる第2フック係合部13b5が設けられている。第2フック係合部13b5は、ポール13がポール軸13aを中心に図6において時計回りに回動し、フック係合部13b1がフック12の傾斜面部12c1との対向から外れたとき、フック12の円弧状部12c2に当接してポール13がポール軸13aを中心に、図6において、反時計回りに回転するのを阻止する。
【0022】
図6に示すように、カム14は、板状の部材でケース11に対してカム軸14aによって、その軸回りに回動可能に取付けられているとともに、カムばね14a1の働きによって、図6において、カム軸14aを中心に反時計回りの方向に回動付勢されている。カム14は、カム軸14aから径方向に延びる第1延出部14bと、第2延出部14cと、を有する。第1延出部14bの先端側にはカム軸14aからの距離が、図6において、カム軸14aを中心に時計回りの方向に向かうにつれて少しずつ増加するカム面部14b1が形成されている。第2延出部14cの先端側には、ポール13がポール軸13aを中心に図6において時計回りに回動したとき第2凸部13b4が当接するポール当接部14c1が形成されている。フック12が、ストライカ27の前棒状部27aと係合したロック状態において、カム面部14b1はフック12の凸部12c3に当接して押圧することにより、フック12をフック軸12aを中心に、図6において、反時計回りの方向に回転させフック部12bが前棒状部27aに対してガタ無く係合するようにする。
【0023】
図6に示すように、解除部材15は、板状の部材でケース11に対して解除部材軸15aによって、その軸回りに回動可能に取付けられているとともに、解除部材ばね15a1の働きによって、図6において、解除部材軸15aを中心に反時計回りの方向に回動付勢されている。解除部材15は、解除部材軸15aから径方向に延びる第1伸出部15bと、解除部材軸15aから第1伸出部15bと反対方向の径方向に延びる第2伸出部15cと、を有する。第1伸出部15bには、解除部材15を解除部材軸15aを中心に、図6において、時計回りに回転させたとき、ポール13の第1凸部13b3に当接してポール13を図6において、時計回りに回転させるポール当接部15b1が形成されている。第2伸出部15cの先端部には、レバー8との間を連結する連結ワイヤ8cが上下方向に相対回転可能に取付けられている。
【0024】
図2図6に示すように、レバー8は、樹脂製の部材でレバーカバー9に対して左右方向に延びる回動軸8Aを中心に回転可能に取付けられている。レバー8は、後方から見て左右方向を長軸方向とする略矩形平板状の本体部8aと、本体部8aの上部に取付けられた金属製で円柱状のウェイト8bと、を有する。本体部8aには、左右両端の上部に回動軸8Aを中心軸とする左右一対の円柱状の被係合部8a1が設けられており、レバーカバー9に設けられた左右一対の係合部9aが嵌め込まれることで本体部8aは回動軸8Aを中心に回転できるようになっている。係合部9aは、中心軸を挟んで中心軸からの距離が等しい状態で対向する2面によって一部が切り取られた変則的な円柱形状をしており、被係合部8a1には係合部9aを回動軸8Aに対して垂直方向に嵌め込むための上記2面間の長さよりわずかに大きい幅の切欠部8a2が設けられている。本体部8aの上部における左右の被係合部8a1の間の部分には、ウェイト8bを嵌め込み固定するための凹部8a3が形成されている。凹部8a3は、ウェイト8bの外径よりわずかに大きい内径の中心軸を左右方向に延びるウェイト軸9Aとする円柱状に形成され、上部にウェイト8bを挿入するための開口部8a4が設けられている。開口部8a4の前側端縁部には、凹部8a3にウェイト8bを挿入するとき変形して挿入後に元に戻ることによってウェイト8bの脱落防止に寄与する左右一対の爪8a5が設けられている。図6に示すように、レバー8をレバーカバー9に取付けたとき、ウェイト軸9Aは回動軸8Aの上方に位置し、ウェイト軸9Aと回動軸8Aの上下方向の距離はウェイト8bの半径とほぼ等しく設定されている。本体部8aの右側前面部には前方に向かって突出する連結ワイヤ取付部8a6が設けられている。連結ワイヤ取付部8a6の前側端部には下方に向かって開口し連結ワイヤ8cの後端部8c1を上下方向に回動可能に支持するワイヤ係止凹部8a7が形成されている。連結ワイヤ8cの後端部8c1は、前端部8c2と同様に右方向に向かって折り曲げられて左右方向に延びるように形成されている。連結ワイヤ8cの前端部8c2は、樹脂製の支持部材15c1を介して、解除部材15の第2伸出部15cの先端部に上下方向に回動可能に取付けられている。ここで、ウェイト8bが、特許請求の範囲の「ウェイト部材」に相当する。
【0025】
図5及び図6に示すように、実線で示すレバー8の状態が、ロック機構10がロック状態の通常の状態である。そして、二点鎖線で示すレバー8の状態が、ロック機構10のロック状態を解除するためにレバー8を後方に引いて回動軸8Aを中心に回転させたときの状態である。図6に示すロック機構10がロック状態にある状態からレバー8を後方に引いて回動軸8Aを中心に回転させると、連結ワイヤ8cが後方に牽引されて解除部材15を解除部材軸15aを中心に、図6において、時計回り方向に回転させる。すると、解除部材15のポール当接部15b1が下からポール13の第1凸部13b3を押し上げることによって、ポール13はポール軸13aを中心に、図6において、時計回り方向に回転する。すると、ポール13の第2凸部13b4がカム14のポール当接部14c1を押し上げることによって、カム14はカム軸14aを中心に、図6において、時計回り方向に回転し、カム面部14b1がフック12の凸部12c3に対する当接から外れる。すると、フック12はフックばね12a1による回動付勢力によってフック軸12aを中心に、図6において、時計回り方向に回転しフック部12bがストライカ27の前棒状部27aとの係合から外れアンロック状態となる。この状態でレバー8から手を離してレバー8が実線の状態となるとともに、解除部材15が元のロック状態に戻っても、ポール13は第2フック係合部13b5がフック12の円弧状部12c2に当接して、図6において、反時計回り方向の回転が阻止されるのでロック機構10はアンロック状態が維持される。この状態で、センタシートバック2は、回転軸5dを中心に前方に向けて回転させられて倒伏姿勢にした状態にされることができる。ここから、センタシートバック2を、回転軸5dを中心に後方に向けて回転させると、ストライカ27の前棒状部27aがフック12の傾斜面部12c1に当接して押圧されることによって、フック12は、図6において、フック軸12aを中心に反時計回り方向に回転する。そして、フック部12bがストライカ27の前棒状部27aに係合してロック状態となる。このとき、ポール13は、第2フック係合部13b5がフック12の円弧状部12c2に対する当接から解除されるので、ポールばね13a1の付勢力によって、図6において、ポール軸13aを中心に反時計回り方向に回転し、第1フック当接部13b2がフック12の円弧状部12c2に当接することによって回転が止められる。このとき、ポール13のフック係合部13b1は、フック12の傾斜面部12c1に隙を隔てて対向している。そして、カム14は、ポール当接部14c1がポール13の第2凸部13b4に対する当接から解除されるので、カムばね14a1の付勢力によって、図6において、カム軸14aを中心に反時計回り方向に回転する。これによって、カム14は、カム面部14b1がフック12の凸部12c3に当接して押圧することにより、フック12をフック軸12aを中心に、図6において、反時計回りの方向に回転させフック部12bが前棒状部27aに対してガタ無く係合するようにする。このように、ロック機構10は元のロック状態に復帰するようになっている。
【0026】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。図6において実線で示すロック機構10がロック状態のときのレバー8の状態において、自動車が追突等をしたとき、起立姿勢のセンタシートバック2に対して後方から荷物等が衝突することがある。このとき、レバー8の本体部8aはその重心位置が回動軸8Aから下方に離隔しているので、慣性力によって回動軸8Aを中心に、図6において、回動軸8Aを中心に反時計回りの方向に回転させようとする力が働く。レバー8が、回動軸8Aを中心に反時計回りの方向に回転するとロック機構10のロック状態が解除されようとする。ここで、レバー8には円柱状のウェイト8bが、ウェイト軸9Aが回動軸8Aの上方となる位置で配設されているのでレバー8に印加された慣性力を打ち消すように作用し、慣性力によってレバー8がアンロック方向に回動されにくくする。これによって、センタシートバック2が起立姿勢を保ち続けるので自動車用リアシート1の衝突時の安全性を高めることができる。
【0027】
また、ウェイト8bは、円柱状をしてその中心軸であるウェイト軸9Aが回動軸8Aと平行に配設されている。これによって、ウェイト8bは単純な形状でワイヤ等を適当な長さに切断すればよいのでコストの増加を抑制できる。さらに、ウェイト8bは、レバー8の凹部8a3に対して嵌合により取付けられているので、取付のための部品や材料を必要とせずさらにコストの増加を抑制できる。
【0028】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0029】
1.上記実施形態においては、ウェイト8bを円柱状のものとしたたが、これに限らず、単純な形状であれば四角柱、六角柱等の多角柱形状であってもよい。
【0030】
2.上記実施形態においては、ウェイト8bは、レバー8の凹部8a3に対して嵌合により取付けられるものとして構成したが、これに限らず、接着やビス止等の機械的手段よって取付けてもよい。
【0031】
3.上記第1実施形態においては、本発明を自動車用リアシート1に適用したが、これに限らず、航空機、船、電車等に搭載のシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 自動車用リアシート(乗物用シート)
2 センタシートバック(シートバック)
4 シートクッション
5 バックフレーム
5d 回転軸
8 レバー
8a 本体部
8a3 凹部
8a4 開口部
8a5 爪
8b ウェイト
8c 連結ワイヤ
8A 回動軸
9 レバーカバー
9A ウェイト軸
10 ロック機構
27 ストライカ
27a 前棒状部
30 固定フレーム
F フロア(乗物ボディ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6