(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147852
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】クレーン作業支援システム、配置部、プログラム及び飛行体離陸方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20231005BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20231005BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231005BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B64C27/08
B64C39/02
B66C15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055587
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 実
(72)【発明者】
【氏名】釜島 勝顕
(72)【発明者】
【氏名】池田 勇
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA05
(57)【要約】
【課題】飛行体が磁性体の影響を受けず飛行できるクレーン作業支援システムを提供する。
【解決手段】クレーン作業支援システムは、飛行体60及びステーション61を備える。飛行体60は、磁気センサ66を有する。飛行体60は、当該磁気センサ66を利用して飛行する。前記ステーション61は、クレーン30又はその周辺に設けられ、前記飛行体60を配置可能である。前記ステーション61は、非磁性体からなる。前記飛行体60は、前記ステーション61から離陸し、前記クレーン30の周辺を飛行することによって前記クレーン30の作業を支援する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを有し、当該磁気センサを利用して飛行する飛行体と、
クレーン又はその周辺に設けられ、前記飛行体を配置可能な配置部と、
を備えるクレーン作業支援システムであって、
前記配置部は、非磁性体からなり、
前記飛行体は、前記配置部から離陸し、前記クレーンの周辺を飛行することによって前記クレーンの作業を支援するクレーン作業支援システム。
【請求項2】
前記配置部は、当該配置部の下方に配置された磁性体から上方に離れて設置されている請求項1に記載のクレーン作業支援システム。
【請求項3】
前記飛行体は、前記クレーンの作業の支援の後に前記ステーションに着陸する
請求項1又は2に記載のクレーン作業支援システム。
【請求項4】
前記クレーンまたはその周辺に設けられ、異常磁場を検出する第二の磁気センサを更に備え、
前記第二の磁気センサが異常磁場を検出した場合に、前記飛行体が前記第二の磁気センサの周辺に進入しないように飛行する
請求項1から3のいずれか一項にクレーン作業支援システム。
【請求項5】
前記配置部は、前記クレーンのクローラよりも高い位置に設置されている
請求項1から4のいずれか一項に記載のクレーン作業支援システム。
【請求項6】
前記配置部は、当該配置部の高さを調整可能または前記クレーンの周辺を移動可能に設けられている
請求項1から5のいずれか一項に記載のクレーン作業支援システム。
【請求項7】
前記配置部に設けられる第三の磁気センサを更に備える
請求項1から6のいずれか一項に記載のクレーン作業支援システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のクレーンの作業支援システムに使用される配置部。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のクレーンの作業支援システムのプログラムであって、
前記飛行体が前記配置部から離陸し、前記クレーンの周辺を飛行する飛行工程を実行するためのプログラム。
【請求項10】
磁性体から上方に離れた非磁性体の配置部から、磁気センサを有する飛行体を離陸させる飛行体離陸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン作業支援システム、配置部、プログラム及び飛行体離陸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドローンといわれる飛行体をクレーンの周辺に飛行させて、ドローンを利用してクレーンを点検する技術が開示する。飛行体は磁気型方位センサを有し、磁気型方位センサの測定値が飛行の制御のために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クレーンを用いた作業の現場には、アタッチメント、資材及び工機等が保管されており、アタッチメント、資材及び工機等の多くは鉄鋼材等の磁性体を原材料とする。磁性体は磁場に影響を及ぼすことから、飛行体の磁気型方位センサの測定精度が低下する。そのため、磁性体は飛行体の飛行制御に悪影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、飛行体が飛行する際の磁性体からの影響を小さくできるクレーン作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
磁気センサを有し、当該磁気センサを利用して飛行する飛行体と、
クレーン又はその周辺に設けられ、前記飛行体を配置可能な配置部と、
を備えるクレーン作業支援システムであって、
前記配置部は、非磁性体からなり、
前記飛行体は、前記配置部から離陸し、前記クレーンの周辺を飛行することによって前記クレーンの作業を支援する。
【0007】
本発明は、
磁性体から上方に離れた非磁性体の配置部から、磁気センサを有する飛行体を離陸させる飛行体離陸方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛行体が飛行する際の磁性体からの影響を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ステーション装置及び飛行体の斜視図である。
【
図3】飛行体及び作業支援装置のブロック図である。
【
図4】変形例におけるクレーン作業システムの図面である。
【
図5】変形例におけるクレーン作業システムのクレーンの要部の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、各実施形態について詳細に説明する。
【0011】
<1. クレーン作業支援システムの概要>
図1は、クレーン作業支援システムを示す図である。
【0012】
クレーン作業支援システムは、敷鉄板10、ステーション装置20、クレーン30、磁気センサ50、飛行体60及び作業支援装置80を備える。なお、飛行体60、ステーション装置20及び作業支援装置80はクレーン30よりも非常に小型であるが、
図1では、飛行体60、ステーション装置20及び作業支援装置80を図示するために、飛行体60、ステーション装置20及び作業支援装置80を大きく図示する。また、敷鉄板10の厚さはクレーン30の高さと比較して十分に小さいが、
図1では、敷鉄板10を図示するために敷鉄板10を厚く図示する。
【0013】
<2. 敷鉄板>
敷鉄板10は、作業現場の地盤の保護及び作業足場の確保を目的として、作業現場の地面2に敷設されている。敷鉄板10は作業現場の作業床として利用され、クレーン30は敷鉄板10上を走行し、作業員は敷鉄板10上で作業を行う。敷鉄板10は磁性体から構成されている。磁性体とは、強磁性を示す物質をいう。磁性体からなる敷鉄板10の周辺の磁場は、敷鉄板10の影響を受ける。例えば、敷鉄板10がその周辺の磁場及び地磁気を乱すため、敷鉄板10の周辺の磁場は、敷鉄板10が無い場合の地磁気から変化したものである。一方、非磁性体はその周辺の磁場及び地磁気を乱さない。非磁性体とは、磁性体以外の物質をいい、反磁性体及び常磁性体も非磁性体である。銅、木材及びアルミニウム等は非磁性体である。以下において、地磁気でない磁場のことを異常磁場といい、地磁気から乱れた磁場も異常磁場という。
【0014】
<3. ステーション装置>
ステーション装置20は、飛行していない飛行体60を敷鉄板10から上方に離間させた状態で飛行体60をその下から支持する台である。また、ステーション装置20は、飛行体60が離着陸する台である。ステーション装置20は、敷鉄板10上において移動可能であるとともに、高さ調整可能である。
【0015】
図2に示すように、ステーション装置20は、ステーション21、高さ調整器22、台車23及び磁気センサ24を備える。ステーション21は、高さ調整器22、特にその上端に取り付けられている。高さ調整器22、特にその下端は、台車23に取り付けられている。
【0016】
ステーション21は、飛行体60を配置可能な配置部である。ステーション21には、飛行前の飛行体60が載置される。ステーション21は、非磁性体、特に樹脂材料又はアルミニウムからなる。そのため、ステーション21は、その周辺の磁場及び地磁気を乱さない。
図2に示す例では、ステーション21が板状に設けられている。ただし、ステーション21の形状は、それに飛行体60を載置可能であれば、板状に限るものではない。
【0017】
高さ調整器22は、例えば上下方向に伸縮可能な伸縮棒、油圧シリンダ、エアシリンダ、ジャッキ又はリンク機構を有するリフトである。高さ調整器22は、原動機(例えば電動機、内燃機関、蒸気機関、油圧機器又はタービン)の動力、バネの弾性力、油圧、空気圧又は人力を利用して、上方に伸張するとともに下方に収縮する。高さ調整器22は、その伸縮動作によりステーション21を昇降させるとともに、伸縮動作の停止によりステーション21の高さを保持する。これにより、高さ調整器22は、ステーション21の上下方向に移動させて、ステーション21の高さを調整する。高さ調整器22によるステーション21の昇降範囲の最上位置は、特に限定するものではないが、後述の下部走行体31の高さよりも高くてもよいし、下部走行体31の高さよりも低くてもよい。
【0018】
台車23は、敷鉄板10上において移動可能である。台車23は、原動機(例えば電動機、内燃機関、蒸気機関、油圧機器又はタービン)の動力又は人力を利用して、敷鉄板10上において移動する。
【0019】
磁気センサ24は、ステーション21上、特にステーション21の上面の周縁部に設けられている。磁気センサ24は、その周辺の磁界の向きを測定する。磁気センサ24は、例えばアナログ式又はデジタル式のコンパスであり、測定した磁界の向きを例えば針又は表示器等により表示する。ユーザは磁気センサ24の表示を見て、ステーション21の周辺の磁界の向きを把握することができ、さらにはステーション21の周辺に異常磁場が発生しているか否かを調べられる。ユーザは、磁気センサ24によって測定された磁界の向きが地磁気の向きと同じであることを確認したら、飛行体60をステーション21から離陸させる。一方、ユーザは、磁気センサ24によって測定された磁界の向きが地磁気の向きとは異なること、つまり異常磁場の発生を確認したら、磁気センサ24によって測定された磁界の向きが地磁気の向きと同じになるまでステーション装置20及び飛行体60を移動させる。この際、必要に応じて、高さ調整器22によりステーション21の高さを高く調整し、ステーション21及び飛行体60を敷鉄板10から更に離す。
【0020】
なお、ユーザは、磁気センサ24の代わりに飛行体60の後述の磁気センサ66を利用して、ステーション21の周辺の異常磁場の発生及び磁界の向きを把握してもよい。この場合、磁気センサ66が、検出した磁界の向き及び大きさを表示装置に出力し、表示装置が、磁気センサ66によって検出された磁界の向き及び大きさを表示すれば、ユーザが磁気センサ66によって検出された磁界の向き及び大きさを把握することができる。
【0021】
<4. クレーン>
図1に示すように、クレーン30は、移動式のタワークレーンである。クレーン30の殆どの部品・材料は、磁性体からなる。クレーン30は、下部走行体31、上部旋回体32、キャブ33、ハウス34、カウンタウエイト35、タワーブーム36、タワージブ37、タワーストラット38、ブーム起伏ウインチ(図示略)、ジブ起伏ウインチ40、主巻ウインチ41及び吊荷フック42を備える。
【0022】
下部走行体31は、自走可能なクローラである。下部走行体31は、敷鉄板10上で走行する。上部旋回体32は、下部走行体31上に旋回可能に搭載されている。キャブ33は、上部旋回体32の前部に搭載されている。キャブ33内には、運転席が設けられているとともに、クレーン30を操縦するための各種操作装置が設けられている。ハウス34は、キャブ33の後方において上部旋回体32に搭載されている。ハウス34には、油圧機器及び電装品等が収容されている。カウンタウエイト35は、上部旋回体32の後部に搭載されている。タワーブーム36は、上部旋回体32に起伏可能に連結されている。
【0023】
タワーブーム36は、起伏可能に上部旋回体32に連結されている。タワージブ37は、タワーブーム36の先端、つまりタワーブーム36の上端に起伏可能に連結されている。タワーストラット38は、タワーブーム36の上部に揺動可能に取り付けられている。ブーム起伏ウインチは、キャブ33の後方において上部旋回体32に搭載されている。ブーム起伏ウインチは、ロープの巻き取り及び繰り出しを行い、これによりタワーブーム36を起伏させる。ジブ起伏ウインチ40は、タワーブーム36の下部に取り付けられている。ジブ起伏ウインチは、ロープの巻き取り及び繰り出しを行い、これによりタワーストラット38を揺動させるとともにタワージブ37を起伏させる。主巻ウインチ41は、タワーブーム36の下部に取り付けられている。主巻ウインチ41から引き出された主巻ロープ41aは、タワーブーム36及びタワージブ37に取り付けられた各種のシーブによってタワージブ37の先端まで案内されて、タワージブ37の先端から垂下する。主巻ロープ41aの垂下した下端には、吊荷フック42が取り付けられている。主巻ウインチ41は、主巻ロープ41aの巻き取り及び繰り出しを行い、これにより吊荷フック42及び荷を昇降させる。
【0024】
<5. 磁気センサ>
磁気センサ50は、クレーン30に取り付けられている。
図1に示す例では、磁気センサ50の取付位置がタワーブーム36であるが、これに限るものではなく、例えばタワージブ37であってもよい。また、磁気センサ50は、クレーン30の周囲に設置されてもよい。例えば、磁気センサ50は、クレーン30の周囲に構築された建造物に取り付けられてもよい。
【0025】
磁気センサ50は、異常磁場の有無を検出する。磁気センサ50が異常磁場を検出した場合、飛行体60は、磁気センサ50の周辺に進入しないように飛行する。例えば、磁気センサ50は送信機を有し、異常磁場を検出した場合に異常信号を飛行体60に送信する。飛行体60が磁気センサ50から異常信号を受信したら、その磁気センサ50の周辺に進入しないように飛行する。
【0026】
<6. 飛行体>
飛行体60は、いわゆるドローンと呼称される無人マルチコプターである。飛行体60は、ステーション装置20、特にステーション21から離陸し、その後、クレーン30の周辺を飛行し、その後、ステーション装置20、特にステーション21に着陸する。飛行体60がステーション21から離陸してからステーション21に着陸するまでの飛行経路は、後述の飛行経路プログラムによって実現される。
【0027】
図3に示すように、飛行体60は、クレーン30の周辺の飛行中に、クレーン30の荷吊り作業等を支援する目的で補助的な作業を行う。補助的な作業の例としては、撮影、観察、監視、点検、照明、荷吊り補助、運搬、計測、測量、清掃、掃除、誘導又は警報等が挙げられるが、これらに限られない。「クレーンの作業を支援する」ことには、クレーンの作業中の支援のみならず、クレーンの作業の前又は後の支援も含み、クレーンの作業とクレーンの次の作業との間の支援も含む。つまり、本発明において、「クレーンの作業を支援する」とは、クレーンの作業時にその作業を直接的に支援する場合(撮影、観察、監視、照明、荷吊り補助など)だけでなく、クレーンの作業前に(作業後に次の作業に備えてを含む)クレーンの作業に備えた支援をする場合(点検、計測、測量など)や、クレーンの作業後に片付け作業を支援する場合を含む。飛行体60の飛行とは、上下前後左右の移動、転回及びホバリングのことをいう。転回とは、ヨーイングのことをいう。
【0028】
飛行体60は、複数のプロペラ61、複数の駆動部62、角加速度センサ63、加速度センサ64、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67、三次元測距センサ68、制御部69、カメラ70、記憶部71、通信部72及び照明器73を備える。
【0029】
プロペラ61は、駆動部62にそれぞれ連結されている。駆動部62は、プロペラ61を個別に駆動する。プロペラ61が駆動されることによって、飛行体60が空中を飛行する。
【0030】
角加速度センサ63は、飛行体60の姿勢、つまりヨー角、ロール角及びピッチ角を測定する姿勢測定部である。具体的に説明すると、角加速度センサ63は、互いに直交する三軸回りの角加速度を検出する。また、角加速度センサ63は、検出した角加速度の時間積分処理により三軸回りの角速度を検出する速度センサでもある。そして、角加速度センサ63は、検出した角加速度及び角速度のうち少なくとも1つから飛行体60の姿勢、つまりヨー角、ロール角及びピッチ角を算出する。角加速度センサ63は、測定した姿勢を制御部69に転送する。
【0031】
加速度センサ64は、飛行体60の上下前後左右の移動速度を測定する速度測定部である。具体的に説明すると、加速度センサ64は、互いに直交する三軸方向の加速度を検出する。また、加速度センサ64は、検出した速度の時間積分処理により三軸方向の速度を検出する速度センサでもある。加速度センサ64は、検出した加速度及び速度のうち少なくとも1つから飛行体60の上下前後左右の移動速度を算出する。加速度センサ64は、飛行体60の測定速度を制御部69に転送する。
【0032】
衛星航法受信器65は、衛星電波を受信することによって、飛行体60の位置を測定する測位センサである。また、衛星航法受信器65は、飛行体60の位置の変化に基づいて、飛行体60の移動速度及び向きを測定する。
【0033】
磁気センサ66は、磁界の向き及び大きさを検出して、磁界の向き及び大きさから飛行体60の向きの方角を測定する。磁気センサ66は、測定方角を制御部69に転送する。なお、磁気センサ66の測定値はその周辺の磁性体の影響を受け、磁気センサ66が磁性体に近くなるにつれて、磁気センサ66の測定値の誤差が大きくなる。
【0034】
気圧センサ67は、気圧を検出して、飛行体60の高度を測定する。気圧センサ67は、測定高度を制御部に転送する。気圧センサ67によって測定される高度の基準は、離陸時の飛行体60の高度である。つまり、飛行体60の離陸時における気圧センサ67の測定高度がゼロとなるように、気圧センサ67の測定高度が校正される。上述のように、飛行体60はステーション装置20のステーション21から離陸するため、気圧センサ67の測定高度はステーション21の高さを基準とする。
【0035】
三次元測距センサ68は、レーザー光又は超音波を用いて飛行体60の周辺の障害物までの距離を測定する。三次元測距センサ68は、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)を採用したものでもよい。三次元測距センサ68は、測定距離を制御部69に転送する。ここでいう障害物には地面も含まれ、飛行体60の高度も三次元測距センサ68によって測定される。三次元測距センサ68によって測定される高度の基準は、離陸時の飛行体60の高度である。つまり、飛行体60の離陸時における三次元測距センサ68の測定高度がゼロとなるように、三次元測距センサ68の測定高度が校正される。上述のように、飛行体60はステーション装置20のステーション21から離陸するため、三次元測距センサ68の測定高度はステーション21の高さを基準とする。なお、飛行体60の高度が低い場合には、三次元測距センサ68によって測定される高度が利用され、飛行体60の高度が高い場合には、気圧センサ67によって測定される高度が利用される。
【0036】
制御部69は、CPU、RAM及び記憶媒体等からなるマイクロコンピューターである。制御部69は、角加速度センサ63、加速度センサ64、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の中の1又は2以上のセンサによって測定された測定値(つまり、ヨー角、ロール角、ピッチ角、移動速度、位置、向き、方角、高度、距離の中の1又は2以上の測定値)に基づいて、駆動部62を制御する。駆動部62は、制御部69によって制御されることによってプロペラ61を個別に駆動する。プロペラ61が駆動されることによって、飛行体60の姿勢が制御されるとともに、飛行体60が空中を飛行する。なお、制御部69が駆動部62を制御するにあたって、角加速度センサ63、加速度センサ64、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の全てが利用されてもよいし、これらの中の一部のみが利用されてもよい。
【0037】
制御部69は、緯度、経度及び高度を時系列で配列してなる飛行経路プログラムを記憶媒体に有する。緯度、経度及び高度の時系列が飛行体60の飛行経路であり、その飛行経路は、飛行体60がステーション21から離陸してからステーション21に着陸するまでの経路である。
【0038】
制御部69は、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の測定値を監視しながら、飛行経路プログラムに基づいて駆動部62を制御することによって、飛行体60に飛行経路を辿らせる。なお、飛行経路プログラムにおける高度の基準は地面ではなく、後述のステーション21の上面である。つまり、飛行経路プログラムにおける高度は、ステーション21の上面からの高さで表される。
【0039】
カメラ70は、飛行体60に搭載されている。カメラ70は、チルト若しくはパン又はこれらの両方の動きが可能であってもよいし、向きが固定されていてもよい。カメラ70は、そのカメラ70が向けられた先の像を撮影する。カメラ70は、レンズ、撮像素子及び信号処理部を備える。レンズは、そのレンズが向けられた先の像を撮像素子に結像する。レンズは、単焦点レンズであってもよいし、ズームレンズであってもよい。撮像素子は、レンズにより結像された像を光電変換によりキャプチャーする。信号処理部は、撮像素子によりキャプチャーされた像を信号処理して、静止画若しくは動画又はこれらの両方を生成する。なお、カメラ70が感光する波長帯域は、可視光帯域、紫外線帯域若しくは赤外線帯域又はこれらの2以上を含む広波長帯域である。
【0040】
制御部69は、カメラ70によって撮影された静止画若しくは動画又はこれらの両方を記憶部71に記録する。制御部69は、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の測定値を時系列で記憶部71に記録する。制御部69は、カメラ70によって撮影された静止画の作業支援装置80への即時送信を通信部72に行わせる。制御部69は、カメラ70によって撮影された動画のストリーミングの作業支援装置80への即時送信を通信部72に行わせる。制御部69は、衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の測定値を作業支援装置80へ時系列で即時送信する。なお、飛行体60の飛行後に、制御部69が、記憶部71に記録された静止画、動画及び測定値の送信を通信部72に行わせてもよい。
【0041】
通信部72は作業支援装置80のほか、磁気センサ50の送信機と無線通信可能である。磁気センサ50の送信機が異常信号を送信し、通信部72が異常信号を受信して、それを制御部69に転送する。飛行体60の飛行中に制御部69が異常信号を入力したら、飛行経路プログラムを補正する。具体的には、飛行経路プログラム中の緯度、経度及び高度が磁気センサ50を中心に所定半径の範囲内にあれば、緯度、経度及び高度がその範囲から外れるように制御部69が飛行経路プログラムを補正する。制御部69が補正後の飛行経路プログラムに基づいて駆動部62を制御することによって、飛行体60が磁気センサ50の周辺に進入しないように飛行する。
【0042】
照明器73は、カメラ70の向きと同じ向きとなるように、飛行体60に搭載されている。照明器73は、そのカメラ70が向けられた方へ照明光を投射して、カメラ70が向けられた先を照明する。照明器73の照明対象は、カメラ70の撮影対象であり、例えばクレーン30の一部又は吊り荷である。
【0043】
<7. 作業支援装置>
作業支援装置80はクレーン30の周辺の地上にある。
図1に示す例では、作業支援装置80が屋外にある。ただし、作業支援装置80は、例えば、キャブ33内又はクレーン30の近くの事務所内にあってもよい。作業支援装置80は、据え付け型であってもよいし、携帯型であってもよい。
【0044】
作業支援装置80は、コンピュータ81、表示部82及び入力部83を備える。
表示部82は、コンピュータ81に接続されている。表示部82は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイであって、コンピュータ81から転送された映像信号に従った映像を表示する。
入力部83は、コンピュータ81に接続されている。入力部83は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル若しくは押しボタン又はこれらの2つ以上の組み合わせである。入力部83は、使用者によって操作されることによって、その操作内容に応じた信号をコンピュータ81に転送する。これにより、ユーザは入力部83を介して各種の情報をコンピュータ81に入力することができ、コンピュータ81は使用者によって入力された情報を取得することができる。
【0045】
コンピュータ81は、ハードウェアとしてのCPU、RAM、GPU、記憶装置、システムバス及び通信部等を備える。コンピュータ81の通信部は、飛行体60の通信部72と通信する。コンピュータ81の記憶装置には、CPUが実行可能なプログラムが格納されている。
【0046】
飛行体60の飛行前にコンピュータ81のCPUがプログラムを実行することによって、コンピュータ81の飛行経路作成機能が実現される。具体的には、ユーザが入力部83を操作することによって、コンピュータ81がその操作に従って、緯度、経度及び高度を時系列で配列してなる飛行経路プログラムを生成する。この際、ユーザが入力部83によりステーション21の高さ情報を入力すると、コンピュータ81がその高さ情報を取得して、地面基準の高度から高さ情報を減算し、それにより得られた差分を高度として飛行経路プログラムを生成する。コンピュータ81がその飛行経路プログラムを飛行体60の通信部72に送信すると、通信部72が飛行経路プログラムを受信して、制御部69が飛行経路プログラムを記憶する。なお、上述のように制御部69が飛行経路プログラムに基づいて駆動部62を制御することによって、飛行体60が飛行経路を辿るように飛行する。
【0047】
飛行体60の飛行中にコンピュータ81のCPUがプログラムを実行することによって、コンピュータ81の記録及び表示の機能が実現される。具体的には、コンピュータ81は、飛行体60の通信部72によって送信された静止画若しくは動画又はこれらの両方を記録するとともに、静止画若しくは動画又はこれらの両方を表示部82に表示させる。また、コンピュータ81は、飛行体60の通信部72によって送信された測定値を記録するとともに、測定値を表示部82に表示させる。
【0048】
飛行体60の飛行中又は飛行後に、コンピュータ81は、静止画、動画若しくは測定値又はこれらの2以上の組み合わせに基づいて、補助的な作業(つまり撮影、観察、監視、点検、照明、荷吊り補助、運搬、計測若しくは測量)に関する演算処理を実行する。
【0049】
<8. 有利な効果>
以上に説明したように、飛行体60が非磁性体のステーション21から離陸するため、飛行体が飛行する際に磁気センサ66が磁性体から受ける影響を小さくできる。
【0050】
非磁性体からなるステーション21が敷鉄板10から上方に離れており、飛行体60がそのステーション21から離陸するため、磁気センサ66が敷鉄板10から悪影響を受けづらくなり、飛行体60が敷鉄板10の磁気的作用を受けずにステーション21から離陸する。離陸後、飛行体60が敷鉄板10から更に離れるため、飛行体60の飛行の制御は敷鉄板10の影響を受けづらい。
【0051】
飛行体60がステーション21に着陸することから、飛行体60の離陸点と着陸点は一致する。そのため、再離陸の前に飛行体60の各種センサ63~68の再キャリブレーションを行わずとも、各種センサ63~68の測定精度が高く維持され、再離陸後の飛行体60の飛行の制御が良好に行われる。
【0052】
クレーン30に取り付けられた磁気センサ50が異常磁場を検出したら、飛行体60がその磁気センサ50の周辺に進入しないように飛行するため、飛行体60及び磁気センサ66は磁気センサ50の周辺の異常磁場の影響を受けない。そのため、飛行体60の飛行の制御が良好に行われる。
【0053】
磁気センサ24がステーション21上に設けられているため、ユーザは離陸前に飛行体60の周辺の異常磁場を確認することができる。
【0054】
離陸前に飛行体60の周辺の異常磁場が発生する場合、ステーション装置20の位置調整若しくは高さ調整又はこれらの両方により、飛行体60の周辺の異常磁場を消失させることができる。
【0055】
<9. 変形例>
以上に実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。以下に、前述の実施形態からの変更点について説明する。以下に説明する少なくとも2つの変更点を組み合わせて適用してもよい。
【0056】
前述の実施形態では、ステーション装置20が敷鉄板10上において水平方向に移動する。それに対して、
図4に示すように、ステーション装置20がクレーン30の周辺の鉄筋コンクリート造の構造物100、例えばビルディングの屋上において水平方向に移動する。構造物100の屋上のスラブには鉄筋が埋設されているものの、ステーション装置0のステーション21がスラブ内部の鉄筋から上方に離れている。そのため、磁気センサ66が鉄筋から悪影響を受けづらくなり、飛行体60が鉄筋の磁気的作用を受けずにステーション21から離陸する。
【0057】
前述の実施形態では、ステーション装置20が敷鉄板10上において水平方向に移動する。それに対して、
図5に示すように、ステーション装置20がクレーン30の上部旋回体32に設けられた床面の上において水平方向に移動する。床面とは、例えば上部旋回体32に設けられた足場又はハウス34の頂面である。床面は、クレーン30の構成要素であるとともに、磁性体からなる。ステーション装置20のステーション21は磁性体の床面から上方に離れている。そのため、磁気センサ66が足場又はハウス34の頂面から悪影響を受けづらくなり、飛行体60が足場又はハウス34の頂面の磁気的作用を受けずにステーション21から離陸する。
【0058】
前述の実施形態では、ステーション装置20が移動式且つ高さ調整式である。それに対して、台車23の代わりに走行不能な基台が採用され、ステーション装置20が移動不能であってもよい。また、高さ調整器22の代わりに伸縮不能な支柱が採用され、ステーション装置20が高さ調整不能であってもよい。また、ステーション装置20がテーブルであり、そのテーブルの天板が非磁性体からなるステーションであってもよい。
【0059】
前述の実施形態では、制御部69が衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の測定値を監視しながら、飛行経路プログラムに基づいて駆動部62を制御することによって、飛行体60が飛行経路を辿る。このような制御部69の機能が、飛行体60から離れた遠隔操縦機能付きのコンピュータによって実現されてもよい。この場合、制御部69は衛星航法受信器65、磁気センサ66、気圧センサ67及び三次元測距センサ68の測定値を通信部72によりコンピュータに即時送信し、コンピュータが通信部72から受信した測定値を監視しながら飛行経路プログラムに基づいて指令信号を即時生成し、コンピュータが指令信号を通信部72に即時送信し、制御部69が受信した指令信号に基づいて駆動部62を制御する。
【0060】
前述の各実施形態では、クレーンの一例として、タワー式のアタッチメントを設けたクローラクレーンであるタワークレーン30を例示したがこれに限らない。例えばタワークレーン30の代わりに、クレーン式のアタッチメントを設けたクローラクレーン等その他のアタッチメントを設けたクローラクレーンホイールクレーン及びトラッククレーン等の移動式クレーンを採用しても良いし、港湾クレーン、天井クレーン、門型クレーン及びアンローダ等の固定式クレーンを採用してもよい。クレーン30の代わりに採用されるクレーンは、アタッチメントしてのフックを備えるクレーンに限らず、マグネット及びアースドリルバケット等のアタッチメントを吊下するクレーンであってもよい。
【0061】
前述の実施形態では、飛行体60に搭載されるカメラ70はいわゆる単眼カメラであったが、ステレオカメラなどように複眼カメラであってもよい。また、カメラ70は、静止画及び動画の両方を撮影可能なカメラであったが、スチルカメラとビデオカメラのいずれであってもよい。
【0062】
飛行体60に搭載された各種センサは、飛行体60の飛行制御以外のために、例えばクレーン30の作業の支援のために利用されてもよい。例えば、三次元測距センサ68は測量のため、例えばクレーン30若しくは周辺地形又はこれら両方の三次元形状を測定するために利用されてもよい。
【0063】
飛行体60には、クレーン30の作業を支援するために用いる工具が搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 敷鉄板(磁性体)
21 ステーション(配置部)
24 磁気センサ(第三の磁気センサ)
30 クレーン
31 下部走行体(クローラ)
34 ハウス(磁性体)
50 磁気センサ(第二の磁気センサ)
60 飛行体
66 磁気センサ
100 構造物