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特開2023-147859ウインチドラムの監視装置及びウインチドラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147859
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ウインチドラムの監視装置及びウインチドラム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20231005BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055596
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石田 大祐
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA01
3F204CA05
3F204FB04
3F204FC01
(57)【要約】
【課題】ウインチドラムのワイヤロープの層数をより高精度に検出する。
【解決手段】ウインチドラム361の状態を監視するウインチドラムの監視装置であって、ウインチドラム361を撮像する撮像部628を備え、ウインチドラム361は、ワイヤロープ32が巻き回される巻き回し部362と、巻き回し部362の両側に設けられたフランジ部363,364とを有し、フランジ部363,364の内側面に第1印45が設けられ、撮像部により撮像された撮像画像における第1印45を検出することでワイヤロープ32が巻き回し部362に巻き回された層数を特定する特定部611を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチドラムの状態を監視するウインチドラムの監視装置であって、
前記ウインチドラムを撮像する撮像部を備え、
前記ウインチドラムは、ワイヤロープが巻き回される巻き回し部と、前記巻き回し部の両側に設けられたフランジ部とを有し、
前記フランジ部の内側面に第1印が設けられ、
前記撮像部により撮像された撮像画像における前記第1印を検出することで前記ワイヤロープが前記巻き回し部に巻き回された層数を特定する特定部を有するウインチドラムの監視装置。
【請求項2】
前記第1印は、前記フランジ部の表面色と異なる色である
請求項1に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項3】
前記第1印は、前記ウインチドラムに積層して巻かれた前記ワイヤロープの複数の層に対応する複数の印である
請求項1又は2に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項4】
前記第1印は、前記フランジ部の一方に設けられ前記ワイヤロープの所定巻き層に対応する内層印と、前記フランジ部の他方に設けられ前記所定巻き層よりも外側の巻き層に対応する外層印と、含む
請求項3に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項5】
前記第1印は、対応する層のワイヤロープ径の中心部よりも前記ウインチドラムの径方向の内側に設けられている
請求項3又は請求項4に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項6】
前記ウインチドラムの回転位相を検出する検出手段を有し、
前記特定部は、前記検出手段により特定の回転位相が検出されたときの撮像画像に基づいて前記層数を特定する
請求項1から5のいずれか一項に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項7】
前記ウインチドラムの回転位相によって、前記ウインチドラムに巻き回されたワイヤロープが前記ウインチドラムの軸方向に対して傾斜する第1領域と、前記ウインチドラムに巻き回されたワイヤロープがウインチドラムの軸方向に対して第1領域よりも垂直に近い第2領域とを有し、前記特定の回転位相は前記第2領域に含まれる
請求項6に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項8】
前記フランジ部の内側面に形成された窪みの内側に前記第1印が設けられている
請求項1から7のいずれか一項に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項9】
前記第1印は、前記ウインチドラムの周方向に沿って円弧形状の部分を有する
請求項1から8のいずれか一項に記載のウインチドラムの監視装置。
【請求項10】
ワイヤロープが巻き回される巻き回し部と、前記巻き回し部の両側に設けられたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部の内側面に、前記巻き回し部に巻き回されたワイヤロープの層数を特定するための第1印が設けられている、ウインチドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチドラムの監視装置及びウインチドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのようなウインチドラムによってワイヤの巻き取り巻き出しを行う作業機械において、従来は、ウインチドラムをカメラで撮影して巻かれたワイヤロープの層数を検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、ワイヤロープの汚れや油の付着等の外乱要素の影響が生じた場合に精度良く層数を検出することはできなかった。
【0005】
本発明は、ウインチドラムのワイヤロープの層数を精度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ウインチドラムの状態を監視するウインチドラムの監視装置であって、
ワイヤロープを監視する撮像装置を備え、
前記ウインチドラムは、巻き胴と、前記巻き胴の両側に設けられたフランジ部とを有し、
前記フランジ部の内側面に第1印が設けられ、
前記第1印を前記撮像装置によって検出することでワイヤロープの層数を判断する、という構成としている。
【0007】
また、本発明は、ウインチドラムであって、
ワイヤロープが巻き回される巻き回し部と、前記巻き回し部の両側に設けられたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部の内側面に、前記巻き回し部に巻き回されたワイヤロープの層数を特定するための第1印が設けられている、という構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウインチドラムに巻かれたワイヤロープの層数をより精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るウインチドラムの監視装置を搭載したクレーンの側面図である。
図2】クレーンの制御装置及びその周辺の構成を示すブロック図である。
図3】ウインチドラムの斜視図である。
図4】巻上ロープの積層状態を示すウインチドラムの軸方向断面図である。
図5】ウインチドラムのフランジ部の第1印の形成位置における拡大断面図である。
図6】ウインチドラムに巻かれた巻上ロープを軸方向から見た平行部と交差部の範囲を示す説明図である。
図7】監視処理部による監視処理のフローチャートである。
図8】クレーンの各部の情報を表示する表示画面の表示例である。
図9図9(A)及び図9(B)は第1印の他の例が付されたウインチドラムの斜視図である。
図10】最終列の巻上ロープによって隠される第1印によって層数を求める例を適用した巻上ロープの積層状態を示すウインチドラムの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[クレーンの概略]
図1は本発明の実施形態に係るウインチドラムの監視装置を搭載した作業機械としてのクレーンの側面図である。
クレーン1は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。クレーン1の記載に関して、車両前進方向を「前」、後退方向を「後」とし、前を向いた状態で左手側を「左」(図1紙面奥側)、右手側を「右」(図1紙面手前側)とする。また、走行を行う下部走行体2とその上で旋回を行う上部旋回体3とを備えるが、特に言及しない場合には、原則として、下部走行体2と上部旋回体3とは前後方向が一致した状態(基準姿勢とする)にあるものとして各部の方向を説明する。
【0011】
図1に示すように、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に起伏可能に取付けられたブーム4とを含んで構成されている。
【0012】
下部走行体2は、本体ボディ21と、本体ボディ21の左,右両側に設けられたクローラ22とを備えている。左,右のクローラ22は、それぞれ図示しない走行用油圧モータによって回転駆動される。
【0013】
上部旋回体3の前側には、ブーム4が起伏可能に取り付けられている。ブーム4の上側の先端近傍には、ワイヤロープとしての巻上ロープ32をガイドするシーブ43が回転可能に取付けられている。
また、上部旋回体3におけるブーム4よりも後側には、マスト31の下端部が支持されている。
また、上部旋回体3は、図示しない旋回用油圧モータによって下部走行体2に対して鉛直上下方向の軸回りに旋回駆動される。
【0014】
上部旋回体3の右前側にはキャブ33が配置されている。
また、上部旋回体3の後部には、ブーム4及び吊荷Lとの重量バランスをとるカウンタウエイト5が取付けられる。カウンタウエイト5は、必要に応じて枚数を増減させることができる。
【0015】
カウンタウエイト5近傍には、ブーム4の起伏動作を行う起伏ウインチ42が配設され、その前側には、巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しを行う巻上ウインチ36が配設されている。巻上ウインチ36は、巻上用油圧モータ(図示略)により、巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しを行い、フック34及び吊荷の昇降を行う。なお、巻上ウインチ36に使用されるウインチドラム361の詳細な構成については後述する。
【0016】
マスト31は、上端部に上部スプレッダ35を備え、上部スプレッダ35は、一端部がブーム4の上端部に接続されたペンダントロープ44の他端部に接続されている。上部スプレッダ35の下方には下部スプレッダ(図示略)が設けられ、これらの間に複数回掛け回されたワイヤロープとしての起伏ロープ37が起伏ウインチ42により巻き取られ又は巻き出されると上部スプレッダ35と下部スプレッダとの間隔が変化してブーム4が起伏する。起伏ウインチ42は、起伏用油圧モータ(図示略)により駆動する。
【0017】
[クレーンの制御系]
上部旋回体3のキャブ33等には、クレーン1の制御装置60が併設されている。図2は制御装置60及びその周辺の構成を示すブロック図である。制御装置60は、クレーン1に搭載された制御端末であり、クレーン1の走行、旋回、巻上ロープ32の巻き取り、巻き出し等の各種動作の制御に加えて、巻上ウインチ36による巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しの監視処理を行う。
制御装置60は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されているコントローラ61を備えている。
コントローラ61は、後述する巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しの監視処理を行う監視処理部611のソフトウェアモジュールを備える。なお、監視処理部611は、ハードウェアから構成してもよい。
【0018】
コントローラ61には、入力部621、表示装置622、操作レバー624、メモリ625が接続され、これらが制御装置60を構成している。
さらに、コントローラ61には、ロードセル631、ブーム角度センサ632、旋回量センサ633、コントロールバルブ635、撮像装置628が接続されている。
なお、撮像装置628は、画像処理装置629を介してコントローラ61に接続されている。
【0019】
上記監視処理部611、表示装置622、画像処理装置629及び撮像装置628は、巻上ウインチ36のウインチドラム361の状態を監視するウインチドラムの監視装置を構成する。
監視処理部611の機能の詳細については後述する。
【0020】
入力部621は、キャブ33内に設けられ、例えば、タッチパネルのような入力インターフェイスであり、操作者からの操作に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。操作者は、入力部621を操作してブーム4の長さ、フックの種類(重量)、その他の各種の設定や操縦に必要な各種の入力を行うことができる。
表示装置622は、キャブ33内に設けられ、例えば、入力部621としても利用されるタッチパネル式のディスプレイを備え、コントローラ61から出力される制御信号に基づいて、表示画面に吊荷の重量、ブーム角度、上部旋回体3の旋回角度等の情報を表示する(図8参照)。また、表示装置622は、後述する監視処理部611によって表示による報知を行う報知手段として機能する。
【0021】
操作レバー624は、キャブ33内に設けられ、例えば、クレーン1に各種の動作を行わせる操作を手動入力し、操作レバー624の操作量に対応する制御信号をコントローラ61に入力する。
例えば、操作レバー624は、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、ブーム4の起伏動作、巻上ウインチ36による巻上ロープ32の巻き取り、巻き出しの操作入力を行うことができる。
【0022】
ロードセル631は、上部スプレッダ35と下部スプレッダに複数回掛け回された起伏ロープ37の末端に取付けられており、ブーム4を起伏させる際に起伏ロープ37に作用する張力を検出し、検出した張力に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。
なお、ロードセル631は、ブーム4の起伏力を間接的に計測できればどこに配置されていてもよい。例えば、ブーム4先端のペンダントロープ44の取付位置(不図示)に設けて、ペンダントロープ44に掛かる張力を検出してもよい。
【0023】
ブーム角度センサ632は、ブーム4の基端側に取付けられており、ブーム4の起伏角度(以下、ブーム角度とも記す)を検出し、検出したブーム角度に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。ブーム角度センサ632は、例えば、水平面に対する角度である対地角をブーム角度として検出する。
【0024】
旋回量センサ633は、下部走行体2と上部旋回体3の間に取付けられており、上部旋回体3の旋回角度を検出し、検出した旋回角度に対応する制御信号をコントローラ61に出力する。旋回量センサ633は、例えば、垂直軸回りの角度を旋回角度として検出する。
【0025】
コントロールバルブ635は、コントローラ61からの制御信号に応じて切り替えが可能な複数のバルブから構成されている。
例えば、コントロールバルブ635は、下部走行体2の左右のクローラ22の回転駆動を制御するバルブ、上部旋回体3の旋回動作を制御するバルブ、起伏ウインチ42の回転駆動を制御するバルブ、巻上ウインチ36の回転駆動を制御するバルブ等を含んでいる。
【0026】
[撮像装置]
撮像装置628は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサと光学系とを有するカメラである。
また、撮像装置628は、カラーフィルタを備え、カラー画像の撮像を行うことが可能である。つまり、この撮像装置628は、撮像範囲内における所定の対象物の色を識別して検出することが可能である。
なお、撮像装置628は、カラーフィルタを使用せずにイメージセンサが複数の色彩を検出可能とするものを搭載する構成としてもよい。
【0027】
画像処理装置629は、撮像装置628の検出画像をデジタルデータ化する。また、画像処理装置629は、デジタルデータ化された検出画像に対して、画像の加工処理や所定の対象の検出等の処理を行う。
【0028】
[ウインチドラム]
図3はウインチドラム361の斜視図、図4は巻上ロープ32の積層状態を示すウインチドラム361の軸方向断面図である。なお、以下の記載において、「軸方向」とは、ウインチドラム361の中心軸に沿った方向を示し、「径方向」とはウインチドラム361の中心軸に直交する方向を示すものとする。
【0029】
図3及び図4に示すように、ウインチドラム361は、巻上ロープ32が巻き回される巻き回し部としての巻き胴362と、巻き胴362の両端部に設けられた二つの鍔状のフランジ部363,364とを有し、中心軸回りに回転可能に支持されている。そして、ウインチドラム361の巻き胴362には、一方のフランジ部363側に向かって巻上ロープ32が巻かれた層と他方のフランジ部364側に向かって巻上ロープ32が巻かれた層とが交互に繰り返し積層されている。そして、二つのフランジ部363,364の間で巻上ロープ32の一番外側までの層数が「層列状態」における「層数」となる。また、一番外側の巻上ロープ32が端からロープ繰り出し部まで巻かれた巻き数が「層列状態」における「列数」となる。
【0030】
図4において、符号aは、各層における初列(一列目)の巻上ロープ32の位置を示している。例えば、巻上ロープ32の奇数番目の層では、初列aは他方のフランジ部364側(図4の例では左側のフランジ部)となる。また、偶数番目の層では、初列aは一方のフランジ部363側(図4の例では右側のフランジ部)となる。
【0031】
そして、ウインチドラム361の両側のフランジ部363,364の内側面(フランジ部363,364同士の対向面)には、撮像装置628によって巻上ロープ32の層数を検出させるための第1印45が設けられている。
第1印45は複数設けられ、その一つ一つが巻上ロープ32の各層に対応している。
第1印45は、各層の初列aに巻かれた巻上ロープ32によって隠れるように配置されている。従って、各層について巻上ロープ32が初列aまで巻かれると、第1印45が視覚的、光学的に検出されない状態となる。このように、第1印45は、その非検出状態から、各層の巻上ロープ32が最終列まで巻かれていることを検出可能としている。
なお、初列aの巻上ロープ32に第1印45が隠されるということは、少なくとも、当該初列aの属する層の一つ内側の層の最終列まで巻上ロープ32が巻かれていることを示す。
【0032】
なお、以下の説明では、複数の層に個別に対応する複数の第1印45を総括的に説明する場合には、「第1印45」と記載し、巻上ロープ32の任意の層に対応する第1印45を個別に説明する場合には、符号の一桁目に層数を加えて記載する。例えば、巻上ロープ32の2層目の対応する第1印の場合には、「第1印452」と記載する。
【0033】
図5は、各フランジ部363,364の第1印45の形成位置における拡大断面図である。
第1印45は、当該第1印45の周囲の各フランジ部363,364の内側面の表面色(以下、周囲色とする)と異なる色が付されている。
なお、第1印45における周囲色と異なる色とは、撮像装置628により、周囲色と識別可能な色を示す。例えば、第1印45は、周囲色と色の三属性である色相、彩度、明度の少なくとも一つが異なっていればよい。
【0034】
例えば、色相を異ならせる場合には、周囲色に対して、マンセル表色系やオストワルト表色系等の12色相環において一つ以上離れた色相を選択することが好ましい。
また、彩度、明度を異ならせる場合には、マンセル色票において対となる度数とすることが好ましい。
また、第1印45における周囲色と異なる色には、透明色や構造色も含まれる。
さらに、第1印45は、特定波長帯域の波長光を反射可能な反射材で形成してもよい。
【0035】
それぞれの第1印45は、対応する層(初列aの巻上ロープ32が第1印45を隠す層)に位置する巻上ロープ32の断面の中心部32cよりもウインチドラム361の径方向内側に配置されている。また、各第1印45は、対応する層よりも二層内側となる層に位置する巻上ロープ32の断面の中心部32cよりもウインチドラム361の径方向外側に配置されている。
これにより、それぞれの第1印45は、対応する層の巻上ロープ32の初列aが巻かれると、当該巻上ロープ32に覆われて、ウインチドラム361の径方向外側からは見えない状態となる。
つまり、撮像装置628は、ウインチドラム361の径方向外側から撮像を行い、その撮像範囲内に第1印45が検出されるか否かによって、巻上ロープ32の対応する層の一つ内側の層について全列まで巻かれているか否かを認識することができる。
【0036】
前述したように、巻上ロープ32は、巻き取り動作において、各フランジ部363,364で折り返して外側の層に移行するので、各層の初列aは、偶数番目の層についてはフランジ部363側となり、奇数番目の層についてはフランジ部364側となる。
従って、図4に示すように、偶数番目の層である2番目と4番目の層に対応する第1印452,454は、フランジ部363の内側面に設けられ、奇数番目の層である3番目と5番目の層に対応する第1印453,455は、フランジ部364の内側面に設けられている。
なお、偶数番目の層である2番目と4番目の層に対応する第1印452,454は、フランジ部363に設けられ巻上ロープ32の所定巻き層(偶数の巻き層)に対応する内層印に相当し、奇数番目の層である3番目と5番目の層に対応する第1印453,455は、フランジ部364に設けられ所定巻き層(偶数の巻き層)よりも外側の巻き層(奇数の巻き層)に対応する外層印に対応する。
また、奇数番目の層である3番目と5番目の層に対応する第1印453,455と内層印、偶数番目の層である2番目と4番目の層に対応する第1印452,454を外層印とみなすこともできる。
【0037】
なお、本実施形態に示すクレーン1では、原則として、ウインチドラム361の1層目の全列に巻かれた巻上ロープ32は、それ以上繰り出されることなく常に巻かれたままの状態を維持する運用が行われる。
このような運用下では、巻上ロープ32の1層目に対応する第1印45は、常に、1層目の初列aの巻上ロープ32に隠れた状態となり、外部から認識されることがないので、1層目に対応する第1印45を省略することができる。
但し、1層目に対応する第1印45をフランジ部364に設けてもよいことは言うまでもない。
【0038】
また、図5に示すように、第1印45は、凹形状又は凹座凸形状を呈しており、各フランジ部363,364の内側面にする窪み45aの内側底部に設けられている。これにより、巻上ロープ32との接触が抑制され、第1印45の表面が削られることによる被検出性の低下を抑制できる。
なお、窪み45aの内側に巻上ロープ32が侵入しないように、窪み45aの内径と第1印45の外径は巻上ロープ32の外径よりも小さくすることが好ましい。
【0039】
図4に示すように、撮像装置628は、ウインチドラム361の径方向外側であってウインチドラム361の軸方向における中央部において、その光軸がウインチドラム361の回転軸に概ね直交するように配置されている。
また、後述する監視処理部611は、撮像装置628に対するウインチドラム361の位相(回転角度)が規定の位相である場合の撮像画像に基づいて、ウインチドラム361の層列状態の監視を行う。
【0040】
上記既定の位相は、巻上ロープ32に隠されていない全ての第1印45が、撮像装置628から良好に撮像できる位相とすべきである。
前述した各第1印45は、それぞれのフランジ部363,364の内側面において、ウインチドラム361の同一の位相となる半径上に並んで一列に配置されている(例えば、図4における紙面に沿った上下方向)。
これに対して、各第1印45が撮像装置628側に向かって並び、各第1印45が並ぶ半径方向と撮像装置628の光軸の方向とが平行となる位相を既定の位相とする。
ウインチドラム361が上記既定の位相である場合に、撮像装置628側から見て、ウインチドラム361の各フランジ部363,364の内側面上の各第1印45は、撮像装置628側に向かって一列に並んだ配置となり、撮像装置628が各第1印45を良好に撮像可能な状態となる。
【0041】
そして、ウインチドラム361には、一方のフランジ部363の外周部に、撮像装置628によって上述した規定の位相を検出させるための第2印46が設けられている。この第2印46は、フランジ部363の外周面上であって、前述した各第1印45が並ぶ半径方向の延長線上となる位置に設けられている。
なお、この場合、撮像装置628は、第2印46により既定の位相を検出する検出手段としても機能する。
【0042】
第2印46は、フランジ部363の外周部の表面色とは異なる色が付されている。この場合も、第2印46は、撮像装置628により、フランジ部363の外周部の表面色と識別可能な色(例えば、第1印45と周囲色の関係と同じ関係)であればよい。
【0043】
フランジ部363は、周方向の外径が均一な円形である。そして、ウインチドラム361が回転している状態で、第2印46がフランジ部363の直径方向の中央に位置する状態が既定の位相となる。
監視処理部611は、撮像装置628の撮像画像から、上記フランジ部363の中央に位置する第2印46が検出されることにより、既定の位相であることを認識することができる。
【0044】
また、ウインチドラム361のフランジ部363には、外部との接触を回避するために外周面を覆うカバー367が装着されている。回転を行うフランジ部363に対して、カバー367は、クレーン1側に固定装備されている。
そして、カバー367には、第2印46が前述した既定の位相を示す位置となる場合に、第2印46を外部に露出させる開口部368が形成されている。当該開口部368は、第2印46よりも一回り大きく開口した切り欠きであり、撮像装置628による既定の位相における第2印46の撮像を妨げない。
なお、第2印46とカバー367の表面色とは異なる色(例えば、第1印45と周囲色の関係と同じ関係)とすることが好ましい。
【0045】
なお、他方のフランジ部364は、ウインチドラム361の制動を行うために一定の形状が周期的に繰り返される形状(例えば、略多角形状、略歯車形状等)に形成されている場合があるが、このフランジ部364に第2印46を設けてもよい。
【0046】
また、上記既定の位相は、ウインチドラム361に巻かれた巻上ロープ32における平行部321の範囲内に設定することが好ましい。
図6はウインチドラム361に巻かれた巻上ロープ32を軸方向から見た平行部321と交差部322の範囲を示す説明図である。
図示のように、ウインチドラム361に巻かれた巻上ロープ32は、半周ごとに平行部321と交差部322とにより既定の比率で交互に繰り返される構成となっている。
【0047】
この平行部321とは、ウインチドラム361に巻かれた巻上ロープ32におけるその外周の径が一定となる区間を示し、交差部322とは、外周の径が変化を生じる区間を示す。
上記交差部322は、「前記ウインチドラム(361)の回転位相によって、前記ウインチドラム(361)に巻き回されたワイヤロープ(巻上ロープ32)が前記ウインチドラム(361)の軸方向に対して傾斜する第1領域」に相当する。
上記平行部321は、「前記ウインチドラム(361)に巻き回されたワイヤロープ(巻上ロープ32)がウインチドラム(361)の軸方向に対して第1領域(交差部322)よりも垂直に近い第2領域」に相当する。
【0048】
巻上ロープ32は、各層ごとに緩やかな螺旋を描いてウインチドラム361の巻き胴362の外周に巻かれている。平行部321は、内側の層の螺旋状の巻上ロープ32の螺旋に沿った溝状の凹部に嵌合して巻かれている状態であるため、その区間内では外周の径が安定して一定となる。
一方、巻上ロープ32の内外に接する二つの層は巻きの回転方向は同じだが、進行方向が異なっている。このため、一巻きにつき二回、内側の層の螺旋溝から外れて下の層の巻上ロープ32を乗り越える区間が発生する。これが交差部322であり、その区間では、巻上ロープ32の外周の径は増減を生じる。
平行部321と交差部322は、図6に示すように、一巻きにつき二回ずつ、毎回同じ位相間隔で発生する。
【0049】
前述したように、第1印45は、対応する層の巻上ロープ32によって撮像されないようにより確実に遮蔽される配置とすることが好ましい。従って、既定の位相を平行部321の範囲内とすることにより、第1印45を設ける目標位置をウインチドラム361の中心から一定の径の範囲内にすることができ、目標位置が定めやすく、適正に遮蔽される配置に第1印45を形成することが容易となる。
これに対して交差部322は、ウインチドラム361の中心から一定とはならないので、巻上ロープ32を巻いて実測して第1印45を設ける位置を決めることが必要となる場合もある。さらに、巻上ロープ32のロープ径に公差が設定されている場合、交差部322の軌跡を正確に求めることが難しく、第1印45を好適な配置することが難しいという問題もある。
【0050】
従って、前述した既定の位相は、平行部321の範囲内に設定されている。
また、平行部321は、二つあるが、初列aの場合は、交差部322で列が巻上ロープ32のロープ径の半分だけ横にスライドするので、交差部322に入る前の平行部321の範囲内を既定の位相とすると、フランジ部363,364に対するすき間が生じない状態で撮像が行われるので、より好ましい。
図6において、符号Sは、1層目の初列aの巻上ロープ32がウインチドラム361に対する巻き付けが開始される位相であり、位相Sに対して矢印Y方向に巻上ロープ32が巻き付けられる(即ち、ウインチドラム361は矢印Yと逆方向に回転する)。
初列aが第1印45を隠す前提の場合、二つの平行部321の内、位相Sのすぐ下流側となる平行部321の範囲内を既定の位相とすると、フランジ部363,364に対するすき間が生じないので、より好ましい。
【0051】
[ウインチドラムの監視処理]
コントローラ61の監視処理部611による監視処理について説明する。
監視処理部611は、撮像装置628の撮像画像に基づいてウインチドラム361に巻かれた巻上ロープ32の層数を求める監視処理を行う。
図7は監視処理部611による監視処理のフローチャートである。これに基づいて監視処理を詳細に説明する。
【0052】
監視処理部611は、ウインチドラム361が回転すると(ステップS1)、撮像装置628によってウインチドラム361の撮像を行い(ステップS3)、画像処理装置629を通じて撮像画像から第2印46の検出を行う(ステップS5)。
第2印46は、ウインチドラム361が既定の位相であるときにのみカバー367の開口部368から露出するので、第2印46の検出は規定位相であることを示す。
また、第2印46は、フランジ部363の外周面と色が異なるので、画像処理装置629は、撮像画像内から第2印46の色を抽出する処理を行うことで、容易に第2印46を検出することができる。
【0053】
監視処理部611は、上記第2印46を検出すると、その時の撮像画像から第1印45の検出を実行する(ステップS7)。第1印45は、フランジ部363,364の内側面と色が異なるので、画像処理装置629は、撮像画像内から第1印45の色を抽出する処理を行うことで、容易に第1印45を検出することができる。
これにより、監視処理部611は、特定部として機能する。
【0054】
既定の位相において、全ての第1印45は、撮像装置628による撮像範囲内となるように配置されている。そして、全ての第1印45の数は既知である。
監視処理部611は、既定の位相における撮像画像から検出された第1印45の数を数え、第1印45の全体数と比較する。そして、第1印45の全体数に対する検出数の差に基づいて現在の巻上ロープ32の巻かれている層数を導出する(ステップS9)。
【0055】
なお、1層目に対応する第1印45を設けていない場合には、第1印45の全体数に対する検出数の差に1を加算した数が現在の巻上ロープ32の巻かれている層数となる(最終列まで巻上ロープ32が巻かれている層数については、全体数に対する検出数の差となる)。
また、第1印45の検出数と現在の巻上ロープ32の巻かれている層数との対応を示すテーブルデータを予め用意し、第1印45の検出数が得られたらテーブルデータを参照して現在の巻上ロープ32の巻かれている層数を導出してもよい。
【0056】
図8は表示装置622においてクレーン1における各種の設定値や検出値等の稼働情報を表示する状態画面Gの表示例である。
監視処理部611は、表示装置622に対して、状態画面G中の枠W内に導出した現在の巻上ロープ32の層数を表示する表示制御を実行して(ステップS11)、監視処理を終了する。
なお、監視処理部611は、表示装置622によって現在の巻上ロープ32の層数を表示する表示制御に替えて、又は、表示制御に併せて、キャブ33内に設けられたスピーカ等の音声出力装置によって、現在の巻上ロープ32の層数を音声で報知する制御を行ってもよい。
【0057】
また、監視処理部611は、現在の巻上ロープ32の層数の表示だけでなく、巻上ロープ32の層数が1になった場合又は1に近くなった場合に報知する報知処理を行ってもよい。
例えば、監視処理によって、現在の巻上ロープ32の層数が1まで低減した場合には、例えば、図8の状態画面Gにおいて、巻上ロープ32の層数が1になったことを報知するアイコンN1等の表示を行って操作者に報知してもよい。また、音声で報知する制御を行ってもよい。
また、巻上ロープ32の層数が1に近くなったときに報知する場合には、現在の巻上ロープ32の層数が2と1との場合で段階的な報知を行ってもよい。その場合、例えば、図8の状態画面Gにおいて、巻上ロープ32の層数が2であることを報知する色彩(例えば、黄色)と巻上ロープ32の層数が1であることを報知する色彩(例えば、赤色)とでそれぞれアイコンN1等の表示を行って操作者に報知してもよい。また、音声で報知する場合には、音調を段階的に変化させる制御を行ってもよい。
【0058】
[発明の実施形態の技術的効果]
以上のように、クレーン1のウインチドラム361の状態を監視するウインチドラムの監視装置は、ウインチドラム361のフランジ部363,364の内側面に第1印45が設けられ、監視処理部611が第1印45を撮像装置628によって検出することで巻上ロープ32の層数を判断している。
上記監視装置は、固有の外観を有する第1印45を撮像の対象とするので、巻上ロープの撮像画像から層数を判断する場合に比べて、巻上ロープ32の汚れや油の付着等の外乱要素の影響が生じた場合であっても、第1印45を明確に検出可能であり、精度良く安定的に巻上ロープ32の層数を検出することが可能となる。
特に、第1印45は、フランジ部363,364の表面色と異なる色とするため、周囲の画像に埋もれることなくより的確に第1印45を検出することができ、精度良く巻上ロープ32の層数を検出することが可能となる。
【0059】
また、各第1印45は、ウインチドラム361に積層して巻かれた巻上ロープ32の複数の層に対応しているので、個々の第1印45の検出数から巻上ロープ32の層数を求めることができ、巻上ロープ32の層数の検出精度をさらに高いものとすることが可能である。
【0060】
また、ウインチドラム361は、巻上ロープ32の内側の層に対応する第1印45から外側の層に対応する第1印45までが順番に両側のフランジ部363,364に互い違いに配置されている。
このため、一方のフランジ部363側への巻き取りと他方のフランジ部364側への巻き取りとを交互に進めるウインチドラム361に対して、巻上ロープ32の層数の検出を適正に行うことが可能となる。
【0061】
また、各第1印45は、対応する層の巻上ロープ32のロープ径の中心部32cよりもウインチドラム361の径方向の内側に設けられている。このため、第1印45は、対応する層の巻上ロープ32が巻かれると巻上ロープ32のロープ径の最大部分よりも内側となり、効果的に第1印45を覆い隠すことができる。
従って、第1印45の有無が明確に検出され、巻上ロープ32の層数の検出精度のさらに高めることが可能となる。
【0062】
また、監視装置は、撮像装置628が第2印46によりウインチドラム361の回転位相を検出する検出手段として機能して、位相の検出手段を有する構成なので、既定の位相における撮像画像を用いて巻上ロープ32の層数を求めることができる。
このため、位相の違いによる巻かれた巻上ロープ32の状態変化の影響を低減し、巻上ロープ32の層数の検出をより精度良く行うことが可能となる。
また、監視処理部611は、既定の位相の検出時の撮像画像に基づいて層数を特定する処理を行うので、当該処理を常に行う必要がなく、処理負担の軽減を図ることが可能となる。
【0063】
また、ウインチドラム361では、既定の位相を巻上ロープ32の平行部321の範囲内に設定することに伴い、各第1印45が巻上ロープ32の平行部321の範囲内に設けられる。
このため、第1印45を設ける目標位置をウインチドラム361の中心から一定の径の範囲内にすることができ、目標位置が定めやすく、巻上ロープ32によって適正に遮蔽される配置に第1印45を形成することが容易となる。
また、第1印45が交差部322を避けた配置となるので、ウインチドラム361の中心から一定とはならない交差部322の軌跡の算出や巻上ロープ32の実測により第1印45の配置を決めることが不要となり、各第1印45を適正な位置に容易に形成することが可能となる。
特に、使用される巻上ロープ32のロープ径に公差が設定されている場合、交差部322の軌跡を正確に求めることは困難を極めるが、そのような問題を回避して各第1印45を適正な位置に容易に形成することが可能となる。
【0064】
また、第1印45は、フランジ部363,364の内側面に形成された窪み45aの内側に設けられているので、巻上ロープ32との摺接を抑制することができ、第1印45の外観や色の不鮮明化を抑制し、良好な検出を維持することが可能となる。
【0065】
また、ウインチドラム361は、フランジ部363,364の内側面に、巻き胴362に巻き回された巻上ロープ32の層数を特定するための第1印45が設けられているので、第1印45に基づいて、精度良く巻上ロープ32の層数を検出させることが可能となる。
【0066】
[第1印の他の態様]
図9(A)及び図9(B)は第1印の他の例を示す。以下、それぞれの第1印について説明する。
図9(A)に示す例は、巻上ロープ32の層数に拘わらず、一つの第1印45Aが設けられる場合を示す。
第1印45Aは、フランジ部363の内側面において、ウインチドラム361の半径方向に沿って長尺な単一の印である。第1印45Aは、第1印45の場合と同様に、フランジ部363の内側面と異なる色で形成される。
なお、第1印45Aは、軸方向から見て、ウインチドラム361に巻かれる各層の全ての巻上ロープ32に対して交差すればよく、その範囲で、ウインチドラム361の半径方向に対して幾分傾斜して設けてもよい。
【0067】
また、既定の位相を示す第2印46は、第1印45Aと同じ半径方向の延長線上となる配置でフランジ部363の外周面上に設けることが好ましい。
【0068】
この第1印45Aの場合、巻上ロープ32の層数に応じて半径方向内側の端部側から順に巻上ロープ32に隠される。このため、撮像装置628によって撮像された第1印45の長さ又は面積から現在の巻上ロープ32の層数を求めることが可能である。
【0069】
図9(B)に示す例は、巻上ロープ32の各層に対応する各第1印45Bが各層の巻上ロープ32に沿った円弧状とする場合を示す。この場合、複数の第1印45Bは、等しい位相範囲となる円弧状とする。また、第2印46Bも第1印45Bと等しい位相範囲となる円弧状とすることが好ましい。
この場合、第1印45Bを撮像するための既定の位相範囲を広く拡大することができるので、ウインチドラム361の毎回の回転時に複数回の層数の取得を行うことができ、より高精度に巻上ロープ32の層数を求めることが可能となる。
【0070】
[最終列の巻上ロープによって隠される第1印によって層数を求める例]
なお、前述した実施形態では、初列aが第1印45を隠す例を示したが、図10に示すように、各層における最終列bによって隠される第1印45によって層数を求めることも可能である。
この場合、最終列bは、巻上ロープ32の偶数層では他方のフランジ部364側(図10の例では左側のフランジ部)となり、奇数層では一方のフランジ部363側(図10の例では右側のフランジ部)となる。
従って、偶数層の最終列bに対応する第1印452,454はフランジ部364に設けられ、奇数層の最終列bに対応する第1印453,455はフランジ部363に設けられる。また、一層目の最終列bに対応する第1印451は、省略しないでフランジ部363に設けることが好ましい。
【0071】
また、最終列bが第1印45を隠す前提の場合、監視処理部611によって監視が行われる既定の位相は、最終列bの場合も、前述した図6の平行部321の範囲内とすることが好ましい。
但し、最終列bの場合は、列が巻上ロープ32のロープ径の半分だけ横にスライドした後の状態でフランジ部に接触するので、交差部322に入った後の平行部321の範囲内を既定の位相とすると、フランジ部363,364に対するすき間が生じない状態で撮像がおこなわれるので、より好ましい。例えば、図6において、二つの平行部321の内、位相Sのすぐ下流側ではない平行部321の範囲内を既定の位相とすると、フランジ部363,364に対するすき間が生じないので、より好ましい。
【0072】
また、最終列bが第1印45を隠す前提の場合、1層目に対応する第1印451を設けているとすると、第1印45の全体数に対する検出数の差に1を加算した数が現在の巻上ロープ32の巻かれている層数となる(最終列まで巻上ロープ32が巻かれている層数については、全体数に対する検出数の差となる)。この場合も、テーブルデータを参照して現在の巻上ロープ32の巻かれている層数を導出してもよい。
【0073】
[その他]
上記発明の実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、巻上ロープ32の各層に対応して複数の第1印45を設ける場合、各層の第1印45ごとに異なる色としてもよい。これにより、撮像によって検出された第1印45の色を識別することで、巻上ロープ32の層数を容易に求めることが可能となる。
また、第1印45は、ARマーカに利用されるような簡易な2次元コードを利用してもよい。
【0074】
また、上記監視装置では、ウインチドラム361の回転位相を検出する検出手段として撮像装置628を例示しているが、ウインチドラム361の回転位相を検出可能な専用のセンサ等を別途有する構成としてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、巻上ウインチ36のウインチドラム361に対する監視装置を例示したが、起伏ウインチ42のウインチドラムにも同じ構成からなる監視装置を設けてもよい。
また、上記実施形態では、クローラクレーンのウインチドラムに監視装置を設ける例を示したが、クローラクレーンに限らず、タワーアタッチメントを付けたクレーン、ホイールクレーン、トラッククレーン等の他の移動式クレーンに加えて、港湾クレーン、天井クレーン、ジブクレーン、門型クレーン、アンローダ、固定式クレーン等、ウインチドラムを有するあらゆるクレーンに適用可能である。
また、吊荷フックを備えるクレーンに限らず、マグネット、アースドリルバケット等のアタッチメントを吊下するクレーンも本発明の適用の対象である。
【0076】
また、第1印は、連続する各層ごとに設けなくともよい。例えば、二層ごと、三層ごと等のように均一間隔ごとに第1印を設けてもよい。
その場合、特定された層数を、例えば、前述した状態画面G等に表示する場合には、「1~2層」、「3~4層」のようにまとめた層数で表示すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 クレーン
32 巻上ロープ(ワイヤロープ)
32c 中心部
36 巻上ウインチ
37 起伏ロープ(ワイヤロープ)
42 起伏ウインチ
45,452,453,454,455,45A,45B 第1印
45a 窪み
46,46B 第2印
60 制御装置
61 コントローラ
321 平行部
322 交差部
361 ウインチドラム
362 巻き胴(巻き回し部)
363,364 フランジ部
367 カバー
368 開口部
611 監視処理部
622 表示装置
628 撮像装置(撮像部)
629 画像処理装置
G 状態画面
N1 アイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10