(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147863
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】接合部材、柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20231005BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/58 505S
E04B1/58 508S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055602
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大致
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG57
2E125BB18
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】 異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能な接合部材等を提供する。
【解決手段】 接合部材3は、柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、平面視において略正方形の外形を有する。接合部材3は、複数の分割片5a、5bが接合されて一体化して構成される。分割片5aでは、突出部11は、高さ方向の略中央部に形成される。分割片5bでは、突出部11は、高さ方向の一方の端部側(下端)において、長手方向の全長にわたって形成される。すなわち、分割片5aと分割片5bとは、突出部11の形成される高さが異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱への梁の接合部材であって、
柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、
少なくとも二面において外方に突出し、梁のフランジ部が接合される突出部を具備し、
少なくとも二面における前記突出部が形成される高さ位置が異なることを特徴とする接合部材。
【請求項2】
複数の分割片が接合されて一体化していることを特徴とする請求項1記載の接合部材。
【請求項3】
四つの前記分割片が接合されて一体化していることを特徴とする請求項2記載の接合部材。
【請求項4】
少なくとも二面において、一の前記分割片の前記突出部と、一方の側に隣り合う他の前記分割片の側端面が露出し、前記突出部の外面と前記側端面とが略同一平面に形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の接合部材。
【請求項5】
少なくとも一つの面には、前記突出部が形成されていないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合部材。
【請求項6】
対向して配置される二つの長尺分割片と、前記長尺分割片同士の間に配置される二つの平板状分割片とが接合されて一体化しており、
前記長尺分割片の外周面には前記突出部が形成され、前記平板状分割片には前記突出部が形成されていないことを特徴とする請求項5記載の接合部材。
【請求項7】
前記突出部の形成面において、前記突出部の形成方向と直交する方向に、梁のウェブが挿入される溝が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の接合部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の接合部材を用いた柱と梁との接合構造であって、
柱へ前記接合部材が接合され、前記接合部材の異なる面に、異なる高さの梁が配置され、前記梁の上部及び/または下部のフランジ部が前記突出部に接合されることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管柱に対して、異なる高さの梁を接合するための接合部材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角形鋼管柱を用いた構造物において、H形鋼からなる梁を接合する場合がある。柱と梁とを接合する場合には、接合部において、梁からの応力を柱に効率良く伝達させる必要があり、このためには、梁のフランジ部の高さに応じた通しダイアフラムを形成する必要がある。通しダイアフラムは、柱と柱の間に溶接等で接合される板状部材である。通しダイアフラムを用いた場合には、梁のフランジ部は、通しダイアフラムの側面で突きあわされて溶接される。
【0003】
しかし、柱に接合される梁のサイズ(高さ)が全ての方向で同じではない場合がある。例えば、一方向の梁のみ、高さが低い梁を接合する場合がある。このような場合には、当該梁の上下のフランジ部の内、少なくとも一方は他の梁が接合される通しダイアフラムと接合することができない。
【0004】
このような高さの異なる梁を接合するための柱梁接合構造としては、左右の梁のフランジに段差が生じる場合に、夫々のフランジの位置に複数のダイアフラムを設け、変形性能等の力学的特性に優れた構造とするために梁の端部にスカラップ(溶接用の切り欠き)を設けないノンスカラップ溶接により梁を接合する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、柱内部に内ダイアフラムを設ける作業は、溶接量が多く、作業性が悪いという問題がある。また、特許文献1に記載の構造では、柱梁接合部を一体成型する必要があり、金物の質量が大きくなるとともに高価なものとなる。
【0007】
また、内ダイアフラムを柱に接合するためには、溶接のための作業スペースが必要となる。しかし、例えば、接合する梁の高さが異なる際に、その違いが小さい場合、内ダイアフラムと通しダイアフラムとが近接して、十分な溶接作業のためのスペースが確保できない。このような場合には、内ダイアフラムを接合することができない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能な接合部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、柱への梁の接合部材であって、柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、少なくとも二面において外方に突出し、梁のフランジ部が接合される突出部を具備し、少なくとも二面における前記突出部が形成される高さ位置が異なることを特徴とする接合部材である。
【0010】
複数の分割片が接合されて一体化していてもよい。
【0011】
四つの前記分割片が接合されて一体化していてもよい。
【0012】
少なくとも二面において、一の前記分割片の前記突出部と、一方の側に隣り合う他の前記分割片の側端面が露出し、前記突出部の外面と前記側端面とが略同一平面に形成されてもよい。
【0013】
少なくとも一つの面には、前記突出部が形成されていなくてもよい。
【0014】
対向して配置される二つの長尺分割片と、前記長尺分割片同士の間に配置される二つの平板状分割片とが接合されて一体化しており、前記長尺分割片の外周面には前記突出部が形成され、前記平板状分割片には前記突出部が形成されていなくてもよい。
【0015】
前記突出部の形成面において、前記突出部の形成方向と直交する方向に、梁のウェブが挿入される溝が形成されてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、略矩形の環状部材において、少なくとも二面(二方向)に梁のフランジが接合される突出部を形成し、突出部が配置される高さ位置を、方向によって変えることで、異なるサイズの梁を接合することができる。
【0017】
また、接合部材が、複数の分割片が接合されて一体化することで形成されれば、最小限の種類の分割片を組み合わせることによって、多くのバリエーションに対応することができる。
【0018】
特に、四つの分割片が接合されて一体化されれば、それぞれの四面(四方向)に対して、それぞれ梁の接合位置を変えることができる。
【0019】
突出部の外面と隣り合う他の分割片の側端面とが略同一平面に形成されれば、梁を接合部材の全長にわたって接合することができる。
【0020】
また、対向して配置される二つの長尺の分割片を組み合わせてもよく、この場合には、長尺の分割片同士の間に二つの平板状分割片を接合してもよい。このようにすることで、梁の接合されない方向に対しては、通常の板状部材を用いることができるためコストを削減することができる。
【0021】
このように、少なくとも一つの面には、突出部が形成さずに、梁の接合される方向に対してのみ突出部を設けることで、材料コストを削減することができる。
【0022】
また、突出部の形成面において、突出部の形成方向と直交する方向に、梁のウェブが挿入される溝を形成することで、梁と接合部材との位置合わせが容易である。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる接合部材を用いた柱と梁との接合構造であって、柱へ前記接合部材が接合され、前記接合部材の異なる面に、異なる成の梁が配置され、前記梁の上部及び/または下部のフランジ部が前記突出部に接合されることを特徴とする柱と梁との接合構造である。
【0024】
第2の発明によれば、柱に接合された接合部材の異なる面に、異なる高さの梁が配置された接合構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能な接合部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】(a)は分割片5aを示す斜視図、(b)は分割片5bを示す斜視図。
【
図4】(a)、(b)は、異なる方向から見た際の、接合部材3と梁7a、7bの接合構造を示す図。
【
図5】(a)、(b)は、突出部11の他の形態を示す図。
【
図7】接合部材3aと梁7bとの接合構造を示す図。
【
図9】(a)は、接合部材3cを示す斜視図、(b)は、接合部材3dを示す斜視図。
【
図10】(a)は、接合部材3eを示す斜視図、(b)は、接合部材3fを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態にかかる柱と梁の接合構造1について説明する。
図1は、柱と梁の接合構造1を示す斜視図である。柱と梁の接合構造1は、柱6の側面に複数の梁7a、7bが接合された構造である。
【0028】
柱6は中空の角形鋼管柱であり、梁7a、7bはH形鋼である。梁7aと梁7bとは、梁の高さが異なる。なお、
図1の例では、梁7aが柱6の一方向に形成され、梁7bがこれと隣り合う他の三方向に形成される例を示すが、これには限られず、梁7aを複数方向に設けてもよい。
【0029】
柱6には、ダイアフラム9が接合される。なお、ダイアフラム9は、柱6の外方に突出する通しダイアフラムである。柱6に対して、ダイアフラム9とは所定の間隔をあけて接合部材3が設けられる。接合部材3とダイアフラム9の平面視におけるサイズは略同一である。すなわち、柱6の側面に対して、ダイアフラム9と接合部材3の突出量は略同一である。なお、図示した例ではダイアフラム9が上方に設けられ、接合部材3が下方に設けられるが、この逆であってもよく、または、ダイアフラム9に代えて、一対の接合部材3を所定の間隔をあけて上下に配置してもよい。
【0030】
梁7aの上下のフランジ部の端部は、それぞれダイアフラム9と接合部材3と溶接によって接合される。同様に、梁7bの上下のフランジ部の端部は、それぞれダイアフラム9と接合部材3と溶接によって接合される。すなわち、ダイアフラム9及び接合部材3が、柱6への梁7a、7bを接合する部材となる。
【0031】
図2は、接合部材3の斜視図であり、
図3(a)は分割片5aを示す斜視図、
図3(b)は分割片5bを示す斜視図である。接合部材3は、柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、平面視において略正方形の外形を有する。接合部材3は、複数の分割片5a、5bが接合されて一体化して構成される。図示した例では、四つの板状の分割片5a、5bが接合されて一体化する。なお、分割片5a、5bは、溶接によって接合されるため、例えば外面側又は内面側に溶接のための開先等を形成してもよい。
【0032】
図3(a)に示すように、分割片5aの内面側(突出部11の形成される面とは逆側の面)の一部には柱6の角部の曲面形状に対応した曲面部を有し、外面側には、外方に向けて突出する突出部11が形成される。突出部11は、長手方向の全長にわたって形成される。ここで、図中Aを高さ方向とし、図中Bを厚み方向とする。すなわち、突出部11は、他の部位に対して厚みが厚くなる部位である。また、分割片5aでは、突出部11は、高さ方向の略中央部に形成される。
【0033】
図3(b)に示すように、分割片5bも、分割片5aと同様に、内面側の一部には柱6の角部の曲面形状に対応した曲面部を有し、外面側には外方に向けて突出する突出部11が形成される。分割片5bでは、突出部11は、高さ方向の一方の端部側(下端)において、長手方向の全長にわたって形成される。すなわち、分割片5aと分割片5bとは、突出部11が形成される高さ(突出部11の高さ方向の中心の高さ位置)が異なる。
【0034】
図2に示すように、四つの略同一長さの分割片5a、5bを組み合わせることで、略矩形の環状部材となる。この際、分割片5a、5bは、長手方向の一方の側(内面に曲面が形成される側)の側端面17が、当該一方の側に接合される隣り合う他の分割片5a、5bの突出部11の形成面側にはみ出すように露出する。また、分割片5a、5bの長手方向の他方の側(内面に曲面が形成されていない側)の側端面は、当該他方の側に接合される隣り合う他の分割片5a、5bのはみだした位置に突き合せられる。すなわち、接合部材3の各辺の外面は、当該面に配置される分割片5a、5bの外面と、隣り合う他の分割片5a、5bの一部(側端面17)とで構成される。
【0035】
なお、接合部材3の上下面が、柱6が接合される柱接合部13となる。この際、接合部材3の内面側には、柱6の形状に対応した曲面形状が形成されるため、柱6の厚みと各分割片5a、5bの厚み(突出部11を除く厚み)を近づけることができる。また、突出部11は、外方に向けて配置され、それぞれ梁7a又は梁7bが接合される梁接合部15となる。
【0036】
図4(a)は、梁7b側から見た際の柱と梁との接合構造を示す図であり、
図4(b)は、梁7a側から見た際の柱と梁との接合構造を示す図である。前述したように、梁7a、7bは、一対のフランジ部19と、フランジ部19同士を接合するウェブ部21とからなるH形鋼である。
【0037】
梁7a、7bの上方のフランジ部19は、ダイアフラム9と溶接によって接合される。また、梁7a、7bの下方のフランジ部19は、接合部材3と溶接によって接合される。すなわち、柱6のそれぞれの方向(側面)に対して、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が、梁7a、7bのフランジ部19同士の間隔と一致する。
【0038】
前述したように、分割片5aと分割片5bとは、突出部11の形成される高さが異なる。また、突出部11は、梁7a、7bのフランジ部19の接合部となる。すなわち、分割片5aが配置される方向と、分割片5bが配置される方向とでは、フランジ部19が接合される高さが異なる。このため、分割片5aが配置される方向は、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が相対的に狭く、高さの低い梁7aが接合される。また、分割片5bが配置される方向は、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が相対的に広く、高さの高い梁7aが接合される。このように、柱と梁の接合構造1は、接合部材3の異なる面に、異なる高さの梁7a、7bが配置され、梁7a、7bの上部及び/または下部のフランジ部19が突出部11に接合される。
【0039】
なお、
図2に示すように、分割片5a、5bを組み合わせた際に、突出部11が形成されている面において、一の分割片5a又は分割片5bの突出部11と、一方の側に隣り合う他の分割片5a又は分割片5bの側端面17が露出し、突出部11の外面と側端面17とが略同一平面に形成される。すなわち、突出部11と側端面17との間には大きな段差が形成されず、梁接合部15は、突出部11と側端面17にまたがるように形成される。このため、梁7a、7bのフランジ部19を、接合部材3の略全長にわたって接合することができる。このため、梁7a、7bからの応力を柱6に確実に伝達することができる。
【0040】
ここで、分割片5a、5bにおける突出部11が形成される高さの差は、例えば100mm以下であり、さらに50mm以下であってもよい。このように、本実施形態では、内ダイアフラムを設置することが困難な、梁7a、7bの高さの差が100mm以下、さらには50mm以下となるような場合に、特に有効である。
【0041】
なお、突出部11の断面形状は、略長方形でなくてもよい。例えば、
図5(a)に示すように、厚み方向(図中B)の先端側(図中右側)に行くにつれて、突出部11の高さ方向(図中A方向)の長さが略直線状に短くなるような台形状であってもよい。または、
図5(b)に示すように、厚み方向(図中B)の先端側に行くにつれて、突出部11の高さ方向(図中A方向)の長さが曲線状に短くなるようにしてもよい。すなわち、突出部11は、先端から基部に向かって幅が徐々に変わるような形状であってもよい。なお、突出部11の形態は、分割片5a、5bで同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、柱6に対して、高さの異なる梁7a、7bを接合して、梁7a、7bからの応力を柱6に効率良く伝達させることができる。また、内ダイアフラムなどが設置できないような、梁7a、7bの高さの差が小さい場合でも適用することができる。
【0043】
また、接合部材3は、異なる分割片5a、5bが組み合わせられて接合して一体化されるため、それぞれの柱6の方向に対して、梁7a、7bの配置に応じて、使用する分割片5a、5bを選択すればよく、少ない部品点数で多くのバリエーションに適用することができる。なお、前述した実施形態では、2種類の分割片5a、5bを組み合わせたが、突出部11の高さが異なる3種類以上の分割片を組み合わせてもよい。
【0044】
また、突出部11の外面と、隣接する他の分割片5a、5bの側端面17とが同一面で形成されるため、接合部材3の辺の略全長を梁接合部15として利用することができる。
【0045】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる接合部材3aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能等を奏する構成については、
図1~
図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
接合部材3aは、接合部材3と略同様であるが、分割片5c、5dが用いられる点で異なる。分割片5c、5dは、分割片5a、5bに対して、溝23が形成される点で異なる。溝23は、接合部材3aの平面視において、それぞれの辺の略中央部に形成される。また、溝23は、突出部11を除く部位の全高にわたって形成される。すなわち、溝23は、突出部11の形成面において、突出部11の形成方向と直交する方向に形成される。
【0047】
図7は、接合部材3aに対して梁7bが接合された状態を示す断面図である。前述したように、フランジ部19は突出部11と接合される。この際、ウェブ部21は、接合部材3aの外周面の溝23に挿入される。このように、接合される梁の端部において、ウェブ部21をフランジ部19に対して突出させ、接合部材3aの外面の溝23に挿入することで、梁の位置決めが容易である。なお、この場合には、接合部材3aの上下面において、溝23よりも内側が柱接合部13となる。
【0048】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、溝23を設け、梁7a、7bのウェブ部21を溝23に挿入することで、梁7a、7bの位置決めが容易となる。
【0049】
次に、第3の実施形態について説明する。
図8は、第3の実施形態にかかる接合部材3bを示す斜視図である。接合部材3bは、接合部材3と略同様であるが、分割片5e、5fが用いられる点で異なる。分割片5e、5fは、分割片5a、5bに対して、内面側に柱6の内面形状に対応した曲面が形成されず、長手方向に対して、同一断面で形成される。
【0050】
柱6の角部に曲面形状がない場合やRが小さい場合などは、接合部材3bのように、柱6の形状に対応した内面形状を形成しなくてもよい。肉厚を少し厚くする必要はあるが、同一断面形状で形成されるため、例えば長尺の押し出し材を所定の長さに切断して分割片5e、5fを形成することができる。このため、同一の素材から、複数のサイズの接合部材3bを形成することもできる。
【0051】
また、分割片5fは、高さ方向の一端側に突出部11が形成されるため、上下を反転させて使用することで、突出部11を下端側に配置することもできるし上端側に配置することもできる。このため、2種類の分割片5e、5fを組み合わせた際に、3種類の高さ位置に突出部11を形成することもできる。なお、接合部材3bは、同一形状の分割片5fのみで構成することもできる。この場合には、接合部材3bの各方向において、少なくとも一方向における分割片5fの上下の向きを他の方向に対して反転して使用すればよい。
【0052】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、分割片5e、5fは、長手方向に対して断面形状が一定であるため、素材として長尺の押し出し材を使用し、所定の長さに切断するのみで分割片5e、5fを得ることができる。また、分割片5fは、突出部11が形成される位置が、高さ方向の中央ではないため、上下反転して使用することで、突出部11の高さの位置を変えることができる。
【0053】
次に、第4の実施形態について説明する。
図9(a)は、第4の実施形態にかかる接合部材3cを示す斜視図である。接合部材3cは、接合部材3と略同様であるが、分割片5g、5hが用いられる点で異なる。
【0054】
前述した各実施形態における接合部材は、板状の四つの分割片を組み合わせることで略矩形の環状の接合部材を構成したが、接合部材3cは、二つのL字形の分割片5g、5hを組み合わせることで構成される。分割片5g、5hは、それぞれ、相対的に長さの長い長辺側と相対的に長さの短い短辺側を有する。分割片5g、5hの長辺側の長さは、接合部材3dの辺の長さと略一致し、長辺側のみで接合部材3cの一辺を構成し、短辺側の長さと隣り合う他の分割片5g、5hの厚み(側端面17)によって、接合部材3dの他の辺が構成される。
【0055】
分割片5gは、分割片5aと同様に、突出部11が、高さ方向の略中央に形成される。また、分割片5hは、分割片5bと同様に、突出部11が、高さ方向の一端側に形成される。このため、分割片5g、5hを組み合わせると、隣り合う一組の突出部11の高さが同一であり、当該隣り合う一組の突出部11の高さと、隣り合う他の一組の突出部11の高さとが異なる。
【0056】
なお、
図9(b)に示すように、1種類の分割片5iを組み合わせてもよい。分割片5iは、略L字状であり、一方の辺側(長い辺側)の突出部11が、高さ方向の略中央に形成され、他方の辺側(短い辺側)の突出部11は、高さ方向の一端側に形成される。なお、突出部11の配置は、長辺側と短辺側とで逆であってもよい。接合部材3dでは、対向する一組の突出部11の高さが同一であり、当該対向する一組の突出部11の高さと、これと直交する方向に対向する他の一組の突出部11の高さとが異なる。
【0057】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、分割片5g、5h、5iが略L字状であるため、接合する部材数を減らすことができる。
【0058】
次に、第5の実施形態について説明する。
図10(a)は、第5の実施形態にかかる接合部材3eを示す斜視図である。接合部材3eは、接合部材3と略同様であるが、分割片5jが用いられる点で異なる。分割片5jは、略コの字状の部材であり、互いの端面同士を突き合せるように接合することで、略矩形の接合部材3eが構成される。
【0059】
分割片5jは、互いに対向する短辺側と、短辺側同士を接続する長辺側とを有する。分割片5jでは、長辺側の突出部11は高さ方向の略中央に形成され、短辺側の突出部11は、高さ方向の一端側に形成される。なお、
図10(b)に示す接合部材3fのように、長辺側の突出部11は高さ方向の一端側に形成され、短辺側の突出部11は、高さ方向の略中央に形成される分割片5kを用いてもよい。この場合、一方の分割片5kを上下反転させて使用することもできる。
【0060】
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、分割片5j、5kが略コの字状であるため、接合する部材数を減らすことができる。
【0061】
次に、第6の実施形態について説明する。
図11は、第6の実施形態にかかる接合部材3gを示す斜視図である。接合部材3gは、分割片5l、5mで構成される。分割片5lは、分割片5mよりも長さが長く、分割片5lのみで接合部材3gの一辺が構成される。分割片5mは、両側から分割片5lによって挟まれて、両側の分割片5lの厚み分と分割片5mによって、接合部材3gの一辺が構成される。
【0062】
なお、図示した例では、分割片5lは、突出部11が高さ方向の略中央に形成され、分割片5mは、突出部11が高さ方向の一端側に形成されるが、逆であってもよい。分割片5l、5mは、長手方向に対して断面形状が一定であるため、前述した接合部材3bと同様に、長尺の押し出し材を切断することで分割片5l、5mを製造することができる。
【0063】
第6の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、分割片の組み合わせ方は特に限定されず、長さの異なる分割片5l、5m同士を組み合わせてもよい。
【0064】
次に、第7の実施形態について説明する。
図12は、第7の実施形態にかかる接合部材3hを示す斜視図である。接合部材3hは、接合部材3等と略同様の構成であるが、分割片5n、5o、5pで構成される点で異なる。接合部材3gと同様に、長さの長い長尺の分割片5n、5pと、長さの短い分割片5oとが組み合わせられて、対向して配置される二つの長尺の分割片5n、5pの間に、分割片5oが挟み込まれて接合されて一体化する。
【0065】
分割片5nの外周部には、突出部11が高さ方向の略中央に形成される。分割片5pの外周部には、突出部11が高さ方向の一端側に形成される。分割片5n、5pは互いに対向するように配置されるため、接合部材3hは、互いに対向する一組の辺において、互いに高さの異なる突出部11が形成される。一方、分割片5oは、突出部11が形成されない平板状の部材である。すなわち、接合部材3hは、突出部11が形成される方向と直交する、互いに対向する一組の辺において、突出部11が形成されない。
【0066】
図13は、接合部材3hを用いた、柱と梁の接合構造1aを示す図である。前述したように、柱6には、所定の位置にダイアフラム9が接合され、ダイアフラム9の下方に、所定の間隔をあけて接合部材3hが配置される。柱と梁の接合構造1aでは、柱6に対して、互いに対向する方向に一対の梁7a、7bが接合され、これと直交する方向には梁は接合されない。このような場合には、梁の接合されない方向に対して突出部11を形成しなくてもよい。
【0067】
第7の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、突出部11は、梁が接合される方向に対してのみ形成されればよい。すなわち、接合部材は、少なくとも二面において外方に突出する突出部11を有し、少なくとも二面における突出部11が形成される高さ位置が異なればよい。このように、少なくとも一面には、突出部11が形成されなくてもよい。
【0068】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、前述した各実施形態における構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、接合部材は、複数の分割片を組み合わせて構成したが、一体で製造してもよい。また、突出部11の形成面とは逆側の面であって、柱接合部13以外の部位を除肉してもよい。また、接合される柱6は、全て同一サイズの例を示したが、例えば、接合部材又はダイアフラム9の上下に接合される柱のサイズを変えてもよい。
【0070】
また、それぞれの分割片に対して、突出部11の高さ方向の長さ(
図3のA方向の長さ)を長くして、一つの突出部11で、異なる高さ位置にフランジ部19を接合可能としてもよい。また、一つの分割片に対して、異なる高さ位置に複数の突出部11を配置してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1、1a………柱と梁の接合構造
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h………接合部材
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k、5l、5m、5n、5o、5p………分割片
6………柱
7a、7b………梁
9………ダイアフラム
11………突出部
13………柱接合部
15………梁接合部
17………側端面
19………フランジ部
21………ウェブ部
23………溝