(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147868
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】接合部材、接合部材の製造方法、柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20231005BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/58 505S
E04B1/58 508S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055610
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大致
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG57
2E125BB18
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】 異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能であり、異なるサイズの柱に対しても対応が容易な接合部材等を提供する。
【解決手段】 接合部材3は、柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、平面視において略正方形の外形を有する。接合部材3は、四つの角部分割片4と、四つの板状分割片5a、5bが接合されて一体化して構成される。板状分割片5aでは、突出部11は、高さ方向の略中央部に形成される。板状分割片5bでは、突出部11は、高さ方向の一方の端部側(下端)において、長手方向の全長にわたって形成される。すなわち、板状分割片5aと板状分割片5bとは、突出部11の形成される高さが異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱への梁の接合部材であって、
柱の側面に対応する四つの板状分割片と、柱の角部に対応する四つの角部分割片とが接合された、略矩形の環状部材であり、
少なくとも二つの前記板状分割片には、外方に突出し、梁のフランジ部が接合される突出部が形成され、
少なくとも二つの前記板状分割片における前記突出部が形成される高さ位置が互いに異なることを特徴とする接合部材。
【請求項2】
前記角部分割片の外面の一部には平坦面が形成され、前記角部分割片の前記平坦面と、前記板状分割片の前記突出部の外面が略同一平面であることを特徴とする請求項1記載の接合部材。
【請求項3】
前記角部分割片の前記板状分割片との接合面には、突起が形成され、
前記突起が前記板状分割片と接触することで、前記角部分割片と前記板状分割片との位置決めが可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合部材の製造方法であって、
同一断面形状で長さの異なる前記板状分割片を用意し、
前記角部分割片を共有部材とし、柱のサイズに応じて、長さの異なる前記板状分割片を選択することで、サイズの異なる接合部材を製造可能であることを特徴とする接合部材の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の接合部材の製造方法であって、
前記板状分割片の内面側には開先が形成され、
前記突起を前記板状分割片の外面と接触させ、前記板状分割片の内面側から溶接する際に、前記突起を前記開先の裏当てとして機能させることを特徴とする接合部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合部材を用いた柱と梁との接合構造であって、
前記接合部材が柱へ接合され、前記接合部材の異なる方向に、異なる高さの梁が配置され、前記梁の上部及び/または下部のフランジ部が前記突出部に接合されることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管柱に対して、異なる高さの梁を接合するための接合部材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角形鋼管柱を用いた構造物において、H形鋼からなる梁を接合する場合がある。柱と梁とを接合する場合には、接合部において、梁からの応力を柱に効率良く伝達させる必要があり、このためには、梁のフランジ部の高さに応じた通しダイアフラムを形成する必要がある。通しダイアフラムは、柱と柱の間に溶接等で接合される板状部材である。通しダイアフラムを用いた場合には、梁のフランジ部は、通しダイアフラムの側面で突きあわされて溶接される。
【0003】
しかし、柱に接合される梁のサイズ(高さ)が全ての方向で同じではない場合がある。例えば、一方向の梁のみ、高さが低い梁を接合する場合がある。このような場合には、当該梁の上下のフランジ部の内、少なくとも一方は他の梁が接合される通しダイアフラムと接合することができない。
【0004】
このような高さの異なる梁を接合するための柱梁接合構造としては、左右の梁のフランジに段差が生じる場合に、夫々のフランジの位置に複数のダイアフラムを設け、変形性能等の力学的特性に優れた構造とするために梁の端部にスカラップ(溶接用の切り欠き)を設けないノンスカラップ溶接により梁を接合する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、柱内部に内ダイアフラムを設ける作業は、溶接量が多く、作業性が悪いという問題がある。また、特許文献1に記載の構造では、柱梁接合部を一体成型する必要があり、金物の質量が大きくなるとともに高価なものとなる。
【0007】
また、内ダイアフラムを柱に接合するためには、溶接のための作業スペースが必要となる。しかし、例えば、接合する梁の高さが異なる際に、その違いが小さい場合、内ダイアフラムと通しダイアフラムとが近接して、十分な溶接作業のためのスペースが確保できない。このような場合には、内ダイアフラムを接合することができない。
【0008】
また、梁を接合するダイアフラムは、通常、柱のサイズに応じて使い分けられる。このため、複数の柱のサイズに対応するためには、それぞれのサイズのダイアフラムが必要となる。このため、部材の種類が多くなり、部材の在庫管理や現場での取り扱いが困難となる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能であり、異なるサイズの柱に対しても対応が容易な接合部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、柱への梁の接合部材であって、の側面に対応する四つの板状分割片と、柱の角部に対応する四つの角部分割片とが接合された、略矩形の環状部材であり、少なくとも二つの前記板状分割片には、外方に突出し、梁のフランジ部が接合される突出部が形成され、少なくとも二つの前記板状分割片における前記突出部が形成される高さ位置が互いに異なることを特徴とする接合部材である。
【0011】
前記角部分割片の外面と、前記板状分割片の前記突出部の外面位置が略一致していてもよい。
【0012】
前記角部分割片の前記板状分割片との接合面には、突起が形成され、前記突起が前記板状分割片と接触することで、前記角部分割片と前記板状分割片との位置決めが可能であってもよい。
【0013】
第1の発明によれば、略矩形の環状部材において、少なくとも二面(二方向)に梁のフランジが接合される突出部を形成し、突出部が配置される高さ位置を、方向によって変えることで、異なるサイズの梁を接合することができる。
【0014】
また、接合部材が、複数の板状分割片と角部分割片が接合されて一体化することで形成されるため、最小限の種類の分割片を組み合わせることによって、多くのバリエーションに対応することができる。この際、四つの板状分割片が接合されて一体化されるため、それぞれの四面(四方向)に対して、それぞれ梁の接合位置を変えることができる。
【0015】
また、角部分割片の外面と、板状分割片の突出部の外面位置が略一致すれば、梁を角部分割片と板状分割片にまたがるように接合することができる。このため、梁の接合長を長くすることができ、梁から柱への応力伝達を効率よく行うことができる。
【0016】
また、角部分割片の板状分割片との接合面に突起を形成し、突起を板状分割片と接触させることで、角部分割片と板状分割片との位置決めが容易となる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明にかかる接合部材の製造方法であって、同一断面形状で長さの異なる前記板状分割片を用意し、前記角部分割片を共有部材とし、柱のサイズに応じて、長さの異なる前記板状分割片を選択することで、サイズの異なる接合部材を製造可能であることを特徴とする接合部材の製造方法である。
【0018】
第2の発明によれば、長尺の押し出し材から、同一断面形状で長さの異なる板状分割片を用意し、角部分割片を共有部材とすることで、柱のサイズに応じて、長さの異なる板状分割片を選択することができる。このため、サイズの異なる接合部材を容易に製造可能である。
【0019】
第3の発明は、第1の発明にかかる接合部材の製造方法であって、前記板状分割片の内面側には開先が形成され、前記突起を前記板状分割片の外面と接触させ、前記板状分割片の内面側から溶接する際に、前記突起を前記開先の裏当てとして機能させることを特徴とする接合部材の製造方法である。
【0020】
第3の発明によれば、板状分割片の内面側に開先を形成し、角部分割片の突起を板状分割片の外面と接触させることで、角部分割片と板状分割片との位置決めが容易である。また、板状分割片の内面側から溶接する際に、突起を溶接の裏当てとして機能させることができる。
【0021】
第4の発明は、第1の発明にかかる接合部材を用いた柱と梁との接合構造であって、前記接合部材が柱へ接合され、前記接合部材の異なる方向に、異なる高さの梁が配置され、前記梁の上部及び/または下部のフランジ部が前記突出部に接合されることを特徴とする柱と梁との接合構造である。
【0022】
第4の発明によれば、柱に接合された接合部材の異なる面に、異なる高さの梁が配置された接合構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、梁の高さの違いが小さい場合でも対応することが可能であり、異なるサイズの柱に対しても対応が容易な接合部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】(a)は板状分割片5aを示す斜視図、(b)は板状分割片5bを示す斜視図。
【
図4】(a)は角部分割片4を示す斜視図、(b)は角部分割片4の平面図。
【
図5】(a)、(b)は、異なる方向から見た際の、接合部材3と梁7a、7bの接合構造を示す図。
【
図6】(a)、(b)は、突出部11の他の形態を示す図。
【
図7】(a)は、角部分割片素材23を示す図、(b)は、板状分割片素材24aを示す図、(c)は、板状分割片素材24bを示す図。
【
図8】(a)、(b)は、異なるサイズの接合部材3を示す図。
【
図10】(a)~(c)は、角部分割片4aを用いた、接合部材の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態にかかる柱と梁の接合構造1について説明する。
図1は、柱と梁の接合構造1を示す斜視図である。柱と梁の接合構造1は、柱6の側面に複数の梁7a、7bが接合された構造である。
【0026】
柱6は中空の角形鋼管柱であり、梁7a、7bはH形鋼である。梁7aと梁7bとは、梁の高さが異なる。なお、
図1の例では、梁7aが柱6の一方向に形成され、梁7bがこれと隣り合う他の三方向に形成される例を示すが、これには限られず、梁7aを複数方向に設けてもよい。
【0027】
柱6には、ダイアフラム9が接合される。なお、ダイアフラム9は、柱6の外方に突出する通しダイアフラムである。柱6に対して、ダイアフラム9とは所定の間隔をあけて接合部材3が設けられる。接合部材3とダイアフラム9の平面視におけるサイズは略同一である。すなわち、柱6の側面に対して、ダイアフラム9と接合部材3の突出量は略同一である。なお、図示した例ではダイアフラム9が上方に設けられ、接合部材3が下方に設けられるが、この逆であってもよく、または、ダイアフラム9に代えて、一対の接合部材3を所定の間隔をあけて上下に配置してもよい。
【0028】
梁7aの上下のフランジ部の端部は、それぞれダイアフラム9と接合部材3と溶接によって接合される。同様に、梁7bの上下のフランジ部の端部は、それぞれダイアフラム9と接合部材3と溶接によって接合される。すなわち、ダイアフラム9及び接合部材3が、柱6への梁7a、7bを接合する部材となる。
【0029】
図2は、接合部材3の斜視図であり、
図3(a)は板状分割片5aを示す斜視図、
図3(b)は板状分割片5bを示す斜視図、
図4(a)は角部分割片4を示す斜視図である。接合部材3は、柱の側面に対応する四つの面を有する略矩形の環状部材であり、平面視において略正方形の外形を有する。接合部材3は、四つの板状分割片5a、5bと、四つの角部分割片4が接合されて一体化して構成される。板状分割片5a、5bは、柱6の側面の各面に対応し、角部分割片4は、柱6の角部に対応する。なお、角部分割片4と板状分割片5a、5bは、溶接によって接合されるため、例えば外面側又は内面側に溶接のための開先等を形成してもよい。
【0030】
図3(a)に示すように、板状分割片5aの外面側には、外方に向けて突出する突出部11が形成される。突出部11は、長手方向の全長にわたって形成される。ここで、図中Aを高さ方向とし、図中Bを厚み方向とする。すなわち、突出部11は、他の部位に対して厚みが厚くなる部位である。また、板状分割片5aでは、突出部11は、高さ方向の略中央部に形成される。
【0031】
図3(b)に示すように、板状分割片5bも、板状分割片5aと同様に、外面側には外方に向けて突出する突出部11が形成される。板状分割片5bでは、突出部11は、高さ方向の一方の端部側(下端)において、長手方向の全長にわたって形成される。すなわち、板状分割片5aと板状分割片5bとは、突出部11が形成される高さ(突出部11の高さ方向の中心の高さ位置)が異なる。
【0032】
また、
図4(a)に示すように、角部分割片4は、内外面側に、柱6の角部の曲面形状に対応した曲面部を有する。ここで、
図4(b)に示すように、角部分割片4の外面側には、曲面部に連続する平坦面17が形成される。詳細は後述するが、平坦面17は、梁との接合部の一部となる。
【0033】
ここで、板状分割片5a、5bは、いずれも長手方向(
図3(a)、
図3(b)のC方向)に対して、それぞれ同一断面形状である。また、角部分割片4は、高さ方向(
図4(a)のA方向)に対して、同一断面形状である。
【0034】
図2に示すように、四つの略同一長さの板状分割片5a、5bと、角部分割片4を組み合わせることで、略矩形の環状部材となる。ここで、全ての角部分割片4、板状分割片5a、5bの高さは略同一である。接合部材3の上下面が、柱6が接合される柱接合部13となる。この際、接合部材3の内面側には、柱6の形状に対応した曲面形状が形成されるため、柱6の厚みと各板状分割片5a、5bの厚み(突出部11を除く厚み)を近づけることができる。
【0035】
図5(a)は、梁7b側から見た際の柱と梁との接合構造を示す図であり、
図5(b)は、梁7a側から見た際の柱と梁との接合構造を示す図である。前述したように、梁7a、7bは、一対のフランジ部19と、フランジ部19同士を接合するウェブ部21とからなるH形鋼である。
【0036】
梁7a、7bの上方のフランジ部19は、ダイアフラム9と溶接によって接合される。また、梁7a、7bの下方のフランジ部19は、接合部材3と溶接によって接合される。すなわち、柱6のそれぞれの方向(側面)に対して、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が、梁7a、7bのフランジ部19同士の間隔と一致する。
【0037】
前述したように、板状分割片5aと板状分割片5bとは、突出部11の形成される高さが異なる。また、突出部11は、梁7a、7bのフランジ部19の接合部となる。すなわち、板状分割片5aが配置される方向と、板状分割片5bが配置される方向とでは、フランジ部19が接合される高さが異なる。このため、板状分割片5aが配置される方向は、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が相対的に狭く、高さの低い梁7aが接合される。また、板状分割片5bが配置される方向は、ダイアフラム9と、接合部材3の突出部11との間隔が相対的に広く、高さの高い梁7aが接合される。このように、柱と梁の接合構造1は、接合部材3の異なる面に、異なる高さの梁7a、7bが配置され、梁7a、7bの上部及び/または下部のフランジ部19が突出部11に接合される。
【0038】
なお、
図2に示すように、突出部11は、外方に向けて配置され、それぞれ梁7a又は梁7bが接合される梁接合部15となる。ここで、角部分割片4の側端部の長さ(
図4(b)のD)と、板状分割片5a、5bの突出部11における全厚は略同一である。このため、角部分割片4の外面と、板状分割片5a、5bの突出部11の外面位置が略一致し、突出部11と角部分割片4との間には大きな段差が形成されない。
【0039】
また、前述したように、角部分割片4の外面側に、所定の長さの平坦面17が形成される。すなわち、突出部11の外面と角部分割片4の平坦面17とは、同一の平面を形成する。すなわち、角部分割片4の外面の一部には平坦面17が形成され、角部分割片4の平坦面17と、板状分割片5a又は板状分割片5bの突出部11の外面が略同一平面となる。このため、梁接合部15は、板状分割片5a、5bの突出部11と角部分割片4の平坦面17にまたがるように形成される。このため、梁7a、7bのフランジ部19を、板状分割片5a、5bと角部分割片4にまたがるように接合することができる。この結果、梁7a、7bのフランジ部19の接合長を確保することができ、梁7a、7bからの応力を柱6に確実に伝達することができる。
【0040】
ここで、板状分割片5a、5bにおける突出部11が形成される高さの差は、例えば100mm以下であり、さらに50mm以下であってもよい。このように、本実施形態では、内ダイアフラムを設置することが困難な、梁7a、7bの高さの差が100mm以下、さらには50mm以下となるような場合に、特に有効である。
【0041】
なお、突出部11の断面形状は、略長方形でなくてもよい。例えば、
図6(a)に示すように、厚み方向(図中B)の先端側(図中右側)に行くにつれて、突出部11の高さ方向(図中A方向)の長さが略直線状に短くなるような台形状であってもよい。または、
図6(b)に示すように、厚み方向(図中B)の先端側に行くにつれて、突出部11の高さ方向(図中A方向)の長さが曲線状に短くなるようにしてもよい。すなわち、突出部11は、先端から基部に向かって幅が徐々に変わるような形状であってもよい。なお、突出部11の形態は、板状分割片5a、5bで同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
次に、接合部材の製造方法について説明する。
図7(a)は、角部分割片素材23を示す図、
図7(b)は、板状分割片素材24aを示す図、
図7(c)は、板状分割片素材24bを示す図である。角部分割片素材23、板状分割片素材24a、24bは、いずれも長手方向に対して同一の断面形状を有する押し出し材である。角部分割片素材23、板状分割片素材24a、24bを所定長さに切断することで、角部分割片4、板状分割片5a、5bを形成することができる。
【0043】
なお、前述したように、角部分割片4の高さ(角部分割片素材23の長さ方向に対応)は板状分割片5a、5bの高さ(板状分割片素材24a、24bの幅方向に対応)は略同一である。このため、角部分割片4の高さは、組み合わせる板状分割片5a、5bに応じて決定される。一方、板状分割片5a、5bの長さ(板状分割片素材24a、24bの長さ方向に対応)は、同一の角部分割片4に対して変えることができる。
【0044】
図8(a)と
図8(b)は、同一の角部分割片4に対して、互いに長さの異なる板状分割片5a、5bと接合した接合部材3を示す図である。このように、板状分割片素材24a、24bから、角部分割片4を共有部材とし、長さの異なる板状分割片5a、5bを用意し、柱のサイズに応じて長さの異なる板状分割片5a、5bを選択することで、サイズの異なる接合部材3を製造可能である。このように、サイズの異なる接合部材3の製造に対して、同一の角部分割片素材23と板状分割片素材24a、24bを使用することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、柱6に対して、高さの異なる梁7a、7bを接合して、梁7a、7bからの応力を柱6に効率良く伝達させることができる。また、内ダイアフラムなどが設置できないような、梁7a、7bの高さの差が小さい場合でも適用することができる。
【0046】
また、接合部材3は、角部分割片4と、突出部11の高さが異なる板状分割片5a、5bが組み合わせられて接合して一体化されるため、それぞれの柱6の方向に対して、梁7a、7bの配置に応じて、使用する板状分割片5a、5bを選択すればよく、少ない部品点数で多くのバリエーションに適用することができる。なお、前述した実施形態では、2種類の板状分割片5a、5bを組み合わせたが、突出部11の高さが異なる3種類以上の分割片を組み合わせてもよい。
【0047】
また、板状分割片5bは、突出部11が形成される位置が、高さ方向の中央ではないため、上下反転して使用することで、突出部11の高さの位置を変えることができる。例えば、2種類の板状分割片5a、5bであっても、突出部11の高さを下部、中央部、上部の3通りの高さから選択することができる。
【0048】
また、突出部11の外面と、角部分割片4の外面とが同一面で形成されるため、接合部材3の辺の略全長を梁接合部15として利用することができる。
【0049】
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、第2の実施形態にかかる角部分割片4aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能等を奏する構成については、
図1~
図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0050】
角部分割片4aは、角部分割片4と略同様の構成であるが、角部分割片4aの板状分割片5a、5bとの接合面に、突起25が形成される点で異なる。なお、図示した例では、突起25は、高さ方向の中央部を除く部位に形成される。
【0051】
図10(a)~
図10(c)は、角部分割片4aを用いた接合部材の製造工程を示す図である。まず、
図10(a)に示すように、一対の角部分割片4aの間には板状分割片5aが配置される。
【0052】
次に、
図10(b)に示すように、角部分割片4aの内側から、板状分割片5aが突起25に接触するように配置する。この際、板状分割片5aの突出部11は、角部分割片4aの突起25の切り欠きによって、突起25と突出部11とが干渉することがない。このように、板状分割片5aを突起25に接触させることで、突出部11の外面と、角部分割片4aの外面とが略同一面となる。すなわち、突起25によって、角部分割片4aに対して、板状分割片5aの位置決めが容易である。
【0053】
ここで、板状分割片5aの両端部の内面側(突出部11の形成面とは逆側の面)には、開先27が形成される。開先27は、板状分割片5aと角部分割片4aとの溶接のための部位である。
【0054】
図10(c)に示すように、突起25を板状分割片5aの外面(突出部11以外の外面)と接触させ、板状分割片5aの内面側から開先27において溶接することで、板状分割片5aと角部分割片4aとを接合することができる。この際、突起25は、開先27の背面側に位置するため、溶接時の裏当てとして機能させることができる。
【0055】
なお、上述した例では、板状分割片5aを接合する方法について説明したが、板状分割片5bと接合する際には、
図9において、突起25を、板状分割片5bの突出部11に対応する高さ方向の一端側を除き形成すればよい。また、一つの角部分割片4aの両側部に、板状分割片5aと板状分割片5bをそれぞれ接合する場合には、突起25の切り欠き位置を、角部分割片4aの二つの方向(接合面)によって変えてもよい。例えば、角部分割片4aの一方の端部側では、突起25が高さ方向の略中央部を除き形成され、角部分割片4aの他方の端部側では、突起25が高さ方向の一端側を除き形成されればよい。
【0056】
なお、角部分割片4aとしては、前述したように、同一断面形状の角部分割片素材23から製造し、接合する板状分割片5a、5bの突出部11の部位にのみ切り欠きを形成(突起25を切除)すればよい。このようにすることで、角部分割片4aを容易に製造することができる。
【0057】
また、角部分割片4aに対しては、突起25を全高にわたって形成しておき、接合対象の板状分割片5a、5b側に、突起25との干渉を避ける切り欠きを形成してもよい。この場合には、角部分割片4aの突起25を、上下方向から板状分割片5a、5bの切り欠き溝へスライド挿入すればよい。
【0058】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、角部分割片4aの端面に突起25を形成することで、板状分割片5a、5bと角部分割片4aとの位置決めが容易である。また、突起25との接触面とは逆側の面において、板状分割片5a、5bに開先27を設けることで、溶接する際に、突起25を溶接の裏当てとして機能させることができる。
【0059】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、前述した各実施形態における構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、突出部11の形成面とは逆側の面であって、柱接合部13以外の部位を除肉してもよい。また、接合される柱6は、全て同一サイズの例を示したが、例えば、接合部材又はダイアフラム9の上下に接合される柱のサイズを変えてもよい。
【0061】
また、突出部11は、梁が接合される方向に対してのみ形成されればよい。すなわち、接合部材は、少なくとも二面において外方に突出する突出部11を有する板状分割片で構成し、少なくとも二面における突出部11が形成される高さ位置が異なればよい。このように、少なくとも一面は、突出部11が形成されていない板状分割片(平板)で構成してもよい。
【0062】
また、それぞれの分割片に対して、突出部11の高さ方向の長さ(
図3のA方向の長さ)を長くして、一つの突出部11で、異なる高さ位置にフランジ部19を接合可能としてもよい。また、一つの分割片に対して、異なる高さ位置に複数の突出部11を配置してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1………柱と梁の接合構造
3………接合部材
4、4a………角部分割片
5a、5b………板状分割片
6………柱
7a、7b………梁
9………ダイアフラム
11………突出部
13………柱接合部
15………梁接合部
17………平坦面
19………フランジ部
21………ウェブ部
23………角部分割片素材
24a、24b………板状分割片素材
25………突起
27………開先