(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147902
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】モータ制御システム及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20231005BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02P29/02
G05B9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055669
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391008515
【氏名又は名称】株式会社アイエイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴掛 広樹
(72)【発明者】
【氏名】村松 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】村澤 敦志
【テーマコード(参考)】
5H209
5H501
【Fターム(参考)】
5H209AA05
5H209BB08
5H209CC01
5H209CC03
5H209GG20
5H209HH04
5H501BB08
5H501DD01
5H501EE08
5H501FF04
5H501FF05
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501KK06
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL35
5H501MM01
5H501MM11
(57)【要約】
【課題】モータ制御装置と安全機能装置との組み合わせにより安全機能を実現する際の故障率の増加を抑える。
【解決手段】モータ制御システム1はモータ制御装置20と安全機能装置10とを備える。安全機能装置10は、第1安全要求信号SR1を受信する受信回路11と、第1安全要求信号SR1をモータ制御装置20に送信する送信回路とを備える。モータ制御装置20は、第2安全要求信号SR2を受信する受信回路21と、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されているときには第1安全要求信号SR1を選択し、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されていないときには第2安全要求信号SR2を選択する選択回路22と、選択回路22が選択した第1安全要求信号SR1または第2安全要求信号SR2がモータ3の停止を示す信号であるとき、モータ3に流す電流を遮断する遮断回路231と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御するモータ制御装置と、安全機能装置と、を備え、
前記安全機能装置は、
第1安全要求信号を受信する第1受信手段と、
前記第1受信手段が受信した前記第1安全要求信号を前記モータ制御装置に送信する第1送信手段と、
を備え、
前記モータ制御装置は、
第2安全要求信号を受信し、前記安全機能装置から前記第1安全要求信号を受信する第2受信手段と、
前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されているときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されていないときには前記第2安全要求信号を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、前記モータに流す電流を遮断する遮断手段と、
を備える、
モータ制御システム。
【請求項2】
前記モータ制御装置は、前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、STO(Safe Torque Off)による前記モータの停止と、SS1(Safe Stop 1)による前記モータの減速制御及び停止と、の一方を実行するように構成されている、
請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記モータ制御装置は、前記モータ制御装置の機種を識別する識別信号を前記安全機能装置に送信する第2送信手段をさらに備え、
前記安全機能装置はさらに、前記安全機能装置と連動可能なモータ制御装置の機種を示す連動機種情報を保存する記憶手段を備え、
前記安全機能装置の前記第1受信手段はさらに、前記モータ制御装置から前記識別信号を受信し、
前記安全機能装置の前記第1送信手段は、前記第1受信手段が受信した識別信号にて示される機種が前記連動機種情報にて示される機種に含まれるとき、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能であることを示す信号を前記モータ制御装置の前記選択手段に送信し、前記第1受信手段が受信した識別信号にて示される機種が前記連動機種情報にて示される機種に含まれていないとき、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能でないことを示す信号を前記モータ制御装置の前記選択手段に送信し、
前記モータ制御装置の前記選択手段は、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能であることを示す信号を受信したときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能でないことを示す信号を受信したときには前記第2安全要求信号を選択する、
請求項1または2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
モータを制御するモータ制御装置であって、
第2安全要求信号を受信し、安全機能装置から第1安全要求信号を受信する受信手段と、
前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されているときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されていないときには前記第2安全要求信号を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、前記モータに流す電流を遮断する遮断手段と、
を備えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御システム及びモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御の分野においては、安全機能の充実が求められている。このような事情に関連して、例えば特許文献1には、モータ(電動機)を制御する制御基板と安全機能基板とを含む安全装置が開示されている。安全機能基板と制御基板との連動により、外部から安全関連系の信号を受信したときに、信号に応じて、例えば、IEC61800-5-2などの安全規格に準拠する安全トルクオフ(STO:Safe Torque Off)によるモータの停止、モータの回転速度の減速制御後のモータの停止(SS1:Safe Stop 1)等、複数の安全機能を実現することができる。また、特許文献1には、安全装置を複数の装置として実現することについて示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の示唆に基づき、例えば、モータ制御装置とこれに接続された外部装置(以下、「安全機能装置」)との組み合わせにて、STO及びSS1に加えて他の安全機能を実行可能とする一方、モータ制御装置のみでもSTO及びSS1を実行可能とすることが考えられる。これにより、最低限必要な安全機能のみを低コストにて欲するユーザにはモータ制御装置のみを提供し、多数の安全機能を欲するユーザにはモータ制御装置と安全機能装置との両方を提供することにより、双方のユーザのニーズを満たすことができる。
【0005】
しかし、上記のようにモータ制御装置と安全機能装置とを組み合わせることにより安全機能が実現されるものとすると、安全機能を実現する回路とその回路に影響を与える回路(以下、これらを安全関連部という)を構成する部品の数が増加し、システム全体の故障率が増加してしまうおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、上記の事情に鑑み、モータ制御装置と安全機能装置との組み合わせにより安全機能を実現する際の故障率の増加を抑えることができるモータ制御システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の第1の観点に係るモータ制御システムは、
モータを制御するモータ制御装置と、安全機能装置と、を備え、
前記安全機能装置は、
第1安全要求信号を受信する第1受信手段と、
前記第1受信手段が受信した前記第1安全要求信号を前記モータ制御装置に送信する第1送信手段と、
を備え、
前記モータ制御装置は、
第2安全要求信号を受信し、前記安全機能装置から前記第1安全要求信号を受信する第2受信手段と、
前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されているときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されていないときには前記第2安全要求信号を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、前記モータに流す電流を遮断する遮断手段と、
を備える。
【0008】
前記モータ制御装置は、前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、STO(Safe Torque Off)による前記モータの停止と、SS1(Safe Stop 1)による前記モータの減速制御及び停止と、の一方を実行するように構成されている、
ものであってもよい。
【0009】
前記モータ制御装置は、前記モータ制御装置の機種を識別する識別信号を前記安全機能装置に送信する第2送信手段をさらに備え、
前記安全機能装置はさらに、前記安全機能装置と連動可能なモータ制御装置の機種を示す連動機種情報を保存する記憶手段を備え、
前記安全機能装置の前記第1受信手段はさらに、前記モータ制御装置から前記識別信号を受信し、
前記安全機能装置の前記第1送信手段は、前記第1受信手段が受信した識別信号にて示される機種が前記連動機種情報にて示される機種に含まれるとき、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能であることを示す信号を前記モータ制御装置の前記選択手段に送信し、前記第1受信手段が受信した識別信号にて示される機種が前記連動機種情報にて示される機種に含まれていないとき、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能でないことを示す信号を前記モータ制御装置の前記選択手段に送信し、
前記モータ制御装置の前記選択手段は、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能であることを示す信号を受信したときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置と前記モータ制御装置とが連動可能でないことを示す信号を受信したときには前記第2安全要求信号を選択する、
ものであってもよい。
【0010】
上記の目的を達成するため、本開示の第2の観点に係るモータ制御装置は、
モータを制御するモータ制御装置であって、
第2安全要求信号を受信し、安全機能装置から第1安全要求信号を受信する受信手段と、
前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されているときには前記第1安全要求信号を選択し、前記安全機能装置が前記モータ制御装置に接続されていないときには前記第2安全要求信号を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記第1安全要求信号または前記第2安全要求信号が前記モータの停止を示す信号であるとき、前記モータに流す電流を遮断する遮断手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、モータ制御装置と安全機能装置との組み合わせにより安全機能を実現する際の故障率の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係るモータ制御システムの全体構成を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係るモータ制御システムの全体構成の別例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態の変形例に係る安全機能装置の構成を示す図
【
図4】本開示の実施の形態の変形例に係るモータ制御システムの全体構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態に係るモータ制御システムを説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0014】
(実施の形態)
図1を参照しながら、実施の形態に係るモータ制御システム1を説明する。実施の形態において、モータ制御システム1はモータ3を制御するモータ制御システムである。モータ制御システム1は、安全機能装置10とモータ制御装置20とを備える。モータ制御システム1は、安全機能装置10とモータ制御装置20とが連動することにより安全機能を実現する。モータ制御システム1は、本開示に係るモータ制御システムの一例である。
【0015】
以下、安全機能装置10、モータ制御装置20及びモータ3を概略的に説明する。安全機能装置10及びモータ制御装置20の詳細構成については後述する。
【0016】
モータ制御装置20は、図示しないプログラマブルロジックコントローラなどからの信号に基づいてモータ3を制御するモータ制御装置である。モータ制御装置20は、安全機能装置10に接続されていないときには、安全機能としてSTOによりモータ3を停止させる機能を有する。モータ制御装置20は、
図1のように安全機能装置10に接続されているときには、安全機能装置10との連動により、STOのみでなくSS1、SS2(Safe Stop 2)、SOS(Safe Operating Stop)、SLS(Safety Limited Speed)などの安全規格に基づく複数の安全機能の実現が可能となる。モータ制御装置20は、本開示に係るモータ制御装置の一例である。
【0017】
安全機能装置10は、
図1のようにモータ制御装置20に接続されているときには、モータ制御装置20と連動して前述の複数の安全機能を実現する。安全機能装置10は、本開示に係る安全機能装置の一例である。
【0018】
モータ3は、モータ制御装置であるモータ制御装置20により駆動制御されて動作するモータである。モータ3は、例えばモータ制御装置20から三相交流の電力を供給されることにより動作するものであってもよいし、ステッピングモータであってもよい。また、モータ3は、モータ制御装置20がフィードバック制御をするために必要なエンコーダ31を備える。エンコーダ31は、モータ3の回転子の回転速度、位置(回転角)などモータ3の状態を示すエンコーダ信号SEをモータ制御装置20に出力する。モータ制御装置20は、モータ3に供給する電流IDを示す電流信号SIとエンコーダ信号SEとに基づいて、モータ3に印加する電圧及びモータ3に供給する電流IDを適宜変化させることによりモータ3を駆動制御する。モータ3は、本開示に係るモータの一例である。
【0019】
モータ制御装置20は、電流信号SIとエンコーダ信号SEとに基づいて、モータ3の減速制御等を実行するための制御信号SPを生成する。モータ制御装置20は、生成した制御信号SPに基づいてモータ3を制御することにより、モータ3の減速制御等を実行することができる。
【0020】
次に、安全機能装置10の構成を説明する。安全機能装置10は、受信回路11と補助制御部12と受信回路13とを備える。また、補助制御部12は、安全機能を実現するための安全機能モジュール121を備える。
【0021】
受信回路11は、非常停止スイッチやライトカーテンやセーフティドアロック等のスイッチ及びセンサ類から第1安全要求信号SR1を受信する。第1安全要求信号SR1は、STO又はSS1を実行するか否かを示す信号である。スイッチ及びセンサ類は、例えばモータ3が使用されている生産現場での異常の発生などモータ3を停止させるべき状況を検出したときに、第1安全要求信号SR1をオンにして安全機能装置10に送信する。第1安全要求信号SR1がオンであるとき、STO又はSS1の実行によりモータ3の停止を行うべきことを示す。第1安全要求信号SR1は、例えばLow信号であるときオンであることを示し、High信号であるときオフであることを示す。また、受信回路11がスイッチ及びセンサ類と接続されていないときには、図示しないプルアップ回路により、第1安全要求信号SR1はHigh信号となる。受信回路11は、本開示に係る第1受信手段の一例である。
【0022】
なお、安全機能装置10とモータ制御装置20との間での信号の送受信について、
図1では各構成同士が直接接続されているものとして表記しているが、実際には図示しない送信回路あるいは受信回路を介して信号の送受信が行われているものとする。これらの図示しない送信回路及び受信回路はそれぞれ、本開示に係る第1送信手段及び第1受信手段の一例である。
【0023】
受信回路13は、非常停止スイッチやライトカーテンやセーフティドアロック等のスイッチ及びセンサ類から第3安全要求信号SR3を受信する。第3安全要求信号は、SS2、SOS、SLSなどの安全規格に基づく安全機能であってモータ制御装置20単体では実行できない安全機能を実行するか否かを示す信号である。後述するように、第3安全要求信号がオンのとき、補助制御部12とモータ制御装置20との協働によりSS2、SOS、SLSなどの安全機能を実行する。第1安全要求信号SR1がオンとなる基準と、第3安全要求信号SR3がオンとなる基準は、一般的には異なる。
【0024】
補助制御部12は、例えば安全機能装置10が図示しないコネクタ等を介してモータ制御装置20に接続されたことを契機として、Low信号となっている接続信号SCをモータ制御装置20の後述するプロセッサ232に継続的に送信する。これにより、プロセッサ232は、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されたことを認識する。また、補助制御部12は、受信回路11が受信した第1安全要求信号SR1がオンのとき、安全機能モジュール121により当該信号SR1のオンに従って実行が予定される安全機能の種別、すなわち、STO又はSS1を認識させるための信号を生成して、モータ制御装置20に送信する。
【0025】
また、補助制御部12は、受信回路11が受信した第1安全要求信号SR1の種別(オンまたはオフ)を示す信号SQをモータ制御装置20に送信する。信号SQは、第1安全要求信号SR1がオンであれば、Low信号となり、第1安全要求信号SR1がオフであればHigh信号となる。
【0026】
ここで、安全機能モジュール121は、ユーザにより第1安全要求信号SR1がオンのときにSTOを実行するように選択されているときは信号SQを即座にモータ制御装置20に送信する。
【0027】
一方、安全機能モジュール121は、ユーザにより第1安全要求信号SR1がオンのときにSS1を実行するように選択されているときは信号SQをモータ制御装置20に即座には送信せず、所定時間の経過後に送信する。所定時間とは、例えば、詳細を後述するモータ制御装置20によるモータ3の減速制御によりモータ3の速度が十分に低下するのに必要な時間である。
【0028】
また、補助制御部12は、Low信号となっている選択信号SAをモータ制御装置20の後述する選択回路22に継続的に送信する。また、補助制御部12は、受信回路13が受信した第3安全要求信号SR3がオンのとき、当該信号SR3のオンに従って実行が予定される安全機能の種別、すなわち、SS2、SOS、SLSなどの実行をモータ制御装置20に認識させるための信号を生成してモータ制御装置20に送信する。
【0029】
次に、モータ制御装置20の構成を説明する。モータ制御装置20は、受信回路21と選択回路22と制御部23と電流センサ24とを備える。また、制御部23は、遮断回路231とプロセッサ232と駆動回路233とを備える。
【0030】
受信回路21は、非常停止スイッチやライトカーテンやセーフティドアロック等のスイッチ及びセンサ類から第2安全要求信号SR2を受信する。第2安全要求信号SR2は、第1安全要求信号SR1と同内容の信号であるが、信号が伝達する経路が異なる。安全機能装置10の受信回路11の場合と同様に、スイッチ及びセンサ類は、例えばモータ3が使用されている生産現場での異常の発生などモータ3を停止させるべき状況を検出したときに、第2安全要求信号SR2をオンにしてモータ制御装置20に送信する。第2安全要求信号SR2がオンであるとき、STOを実行すべきこと、すなわち、モータ3の停止を行うべきことを示す。第1安全要求信号SR1の場合と同様に、第2安全要求信号SR2は、例えばLow信号であるときオンであることを示し、High信号であるときオフであることを示す。また、受信回路21がスイッチ及びセンサ類と接続されていないときには、図示しないプルアップ回路により、第2安全要求信号SR2はHigh信号となる。受信回路21は、本開示に係る第2受信手段の一例である。
【0031】
なお、安全機能装置10の場合と同様に、モータ制御装置20と安全機能装置10との間での信号の送受信について、
図1では各構成同士が直接接続されているものとして表記しているが、実際には図示しない送信回路あるいは受信回路を介して信号の送受信が行われているものとする。これらの図示しない送信回路及び受信回路はそれぞれ、本開示に係る第2送信手段及び第2受信手段の一例である。
【0032】
選択回路22は、入力されている選択信号SAがLow信号であるとき、つまり安全機能装置10からLow信号である選択信号SAを受信しているときには、安全機能装置10から受信した信号SQ(つまり、第1安全要求信号SR1の種別(オンまたはオフ)と同内容を示す)を選択する。選択回路22は、選択信号SAがHigh信号であるとき、つまり安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されていないときには、受信回路21が受信した第2安全要求信号SR2を選択する。ただし、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されていないとき、選択回路22に入力される選択信号SAが図示しないプルアップ回路によりHigh信号になるものとする。選択回路22は、例えばデジタル回路であり、マルチプレクサである。選択回路22は、選択した信号SQ(第1安全要求信号SR1)または第2安全要求信号SR2の種別(オンまたはオフ)を示す遮断可否信号SBを、遮断回路231に出力する。選択回路22は、選択信号SAがLow信号であるときには、受信回路21が受信した第2安全要求信号SR2を選択しないので、選択回路22は、選択信号SAがLow信号であるときには受信回路21を無効とするものである、ともいえる。選択回路22は、本開示に係る選択手段の一例である。
【0033】
駆動回路233は、後述のプロセッサ232から遮断回路231を介して受信する制御信号SPに基づいてモータ3に電力を供給することにより、モータ3を駆動制御する。より詳細には、駆動回路233は、遮断回路231から受信する制御信号SPに基づいてモータ3に印加する電圧とモータ3に供給する電流を調整してモータ3を駆動制御する。後述のように遮断回路231が制御信号SPを遮断したときには、モータ3への電力供給が停止される。これによりSTOが実現できる。
【0034】
電流センサ24は、駆動回路233がモータ3に供給する駆動電流IDを検出し、検出した駆動電流IDを示す電流信号SIをプロセッサ232に出力する。電流センサ24は、例えば駆動回路233とモータ3との電流路の近傍に設けられたホール素子による電流センサである。なお、
図1では電流路を1本の線にて記載しているが、モータ3が三相交流電力により駆動する場合又はステッピングモータである場合には実際の電流路は複数となり、対応する電流センサ24も複数個の素子により構成される。
【0035】
プロセッサ232は、モータ3の駆動制御を統括する。プロセッサ232は、例えば図示しないメモリに保存されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)である。あるいは、プロセッサ232は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)により構成されるものであってもよい。
【0036】
プロセッサ232は、図示しないプログラマブルロジックコントローラ等からの信号と、電流センサ24が出力する電流信号SIと、エンコーダ31が出力するエンコーダSEとに基づいて、モータ3を動作させるための制御信号SPを生成して遮断回路231に出力する。また、プロセッサ232は、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されているとき、補助制御部12から第1安全要求信号SR1又は第3安全要求信号SR3のオンに従って実行が予定される安全機能の種別を示す信号を受信する。プロセッサ232は、受信した安全機能の種別を示す信号に応じて実行予定の安全機能を認識する。
【0037】
遮断回路231は、選択回路22が選択した信号SQ(第1安全要求信号)又は第2安全要求信号SR2がオフであるとき、すなわち、選択回路22から入力した遮断可否信号SBが、信号SQ又は第2安全要求信号SR2がオフであることを示すものであったとき、プロセッサ232から受信する制御信号SPを遮断することなく駆動回路233に出力する。一方、遮断回路231は、選択回路22が選択した信号SQ(第1安全要求信号SR1)または第2安全要求信号SR2がオンであるとき、すなわち、選択回路22から入力した遮断可否信号SBが、信号SQ又は第2安全要求信号SR2がオンであることを示すものであったとき、プロセッサ232から受信した制御信号SPを遮断する。このような遮断回路231としては、例えば、フォトカプラが挙げられるが、これに限定されるものではない。これにより、駆動回路233からモータ3への電力供給が停止し、モータ3をSTOにより停止させることができる。また、安全機能装置10がモータ制御装置20に接続されており(選択回路22は信号SQを選択)、ユーザによりSS1の実行が選択されている場合において、第1安全要求信号SR1がオンであるときは、所定時間の経過後に信号SQがオンであることを示す遮断可否信号SBが選択回路22に出力されて制御信号SPが遮断される。これにより、減速制御を実行したのちにモータ3を停止させる安全機能であるSS1を実行することが可能となる。遮断回路231は、本開示に係る遮断手段の一例である。
【0038】
なお、モータ制御装置20は
図2に示すように構成してもよい。以下に説明するように、モータ制御装置20を
図2のように構成することにより、
図1に示すように構成される場合と異なり、モータ制御装置20が単独でSS1を実行できるようになる。
【0039】
図2において、モータ制御装置20は、遅延回路25をさらに備える。受信回路21は、受信した第2安全要求信号SR2を遅延回路25及びプロセッサ232に出力する。遅延回路25は、受信回路21が出力した第2安全要求信号SR2を、所定時間だけ遅延させて選択回路22に出力する。プロセッサ232は、受信回路21が出力した第2安全要求信号SR2がオンであるとき、モータ3の減速制御を開始する。
【0040】
このようにモータ制御装置20を構成することにより、モータ制御装置20と安全機能装置10とが接続されていない場合において、受信回路21が出力した第2安全要求信号SR2がオンであるときには、選択回路22は、モータ3の減速制御が開始してから所定時間経過後に第2安全要求信号SR2を入力して第2安全要求信号SR2がオンであることを示す遮断可否信号SBを遮断回路231に出力する。これにより、モータ3の減速制御が開始してから所定時間経過後に遮断回路231が駆動回路233への制御信号SPを遮断することとなる。つまり、モータ制御装置20が単独でSS1を実行できることとなる。
【0041】
次に、上記のように安全機能装置10及びモータ制御装置20を構成することにより、モータ制御装置と安全機能装置との組み合わせにより安全機能を実現する際の故障率の増加を抑制できることについて説明する。
【0042】
一般的に、2装置により構成されるシステム全体の故障率は、各装置が備える部品の故障率の積算となる。
【0043】
一方、モータ制御システム1においては、安全機能装置10とモータ制御装置20とが接続されているときには、モータ制御装置20の選択回路22は、安全機能装置10から受信した信号SQを選択し、信号SQ(つまり、第1安全要求信号SR1)の種別を示す遮断可否信号SBを遮断回路231に出力する。
【0044】
そのため、モータ制御システム1においては、受信回路21が故障してもシステム全体は動作し続けることが可能であるため、受信回路21の故障率をシステム全体の故障率として考慮しなくてよい。すなわち、安全機能装置10と
図1に示すように構成されたモータ制御装置20とが接続されているときには、受信回路21は、安全機能であるSTOあるいはSS1を実現する回路及びその回路に影響を与える回路(安全関連部)から分離される。したがって、モータ制御システム1によれば、モータ制御装置と安全機能装置との組み合わせにより安全機能を実現する際の故障率の増加を抑えることができる。同様に、安全機能装置10と
図2に示すように構成されたモータ制御装置20とが接続されているときには、受信回路21と遅延回路25とは、安全関連部から分離され、安全機能を実現する際の故障率の増加を抑えることができる。
【0045】
(変形例)
より高い安全性レベルを達成するために、
図3に示すように安全機能装置10の受信回路11及び安全機能モジュール121を多重化してもよい。目標とする安全性レベルによっては多重化が要求されることもあるが、このような構成により当該安全性レベルを達成することができる。なお、
図3においては安全機能装置10とモータ制御装置20との間で通信される信号に関する記載を省略しているが、これらの信号の通信線、送受信回路等については、目標とする安全性レベルに応じて多重化するかしないかを定めてもよい。ただし、通信線、送受信回路等を多重化する場合にはモータ制御装置20も多重化に対応させる必要がある。
【0046】
実施の形態において、安全機能装置10を複数種類のモータ制御装置20に連動させることが考えられる。この場合において、安全機能装置10にモータ制御装置20の機種を識別する機能を設け、安全機能装置10が識別したモータ制御装置20の機種が連動可能なモータ制御装置20である場合にのみLow信号となっている選択信号SAを送信するように構成することが考えられる。
【0047】
例えば
図4に示すように、モータ制御装置20のプロセッサ232は、安全機能装置10が接続されると、補助制御部12が出力した接続信号SCを入力し、モータ制御装置20自身の機種を識別する識別信号SDを安全機能装置10に送信する。安全機能装置10の補助制御部12は、記憶部122をさらに備える。記憶部122は、安全機能装置10と連動可能なモータ制御装置20の機種を示す連動機種情報を保存する。補助制御部121は、モータ制御装置20から受信した識別信号SDが示す機種が、連動機種情報が示す機種に含まれるときにのみ、Low信号となっている選択信号SAをモータ制御装置20に送信する。ここで、選択信号SAは、連動機種情報が示す機種に識別信号SDが示す機種が含まれるときにのみ(つまりモータ制御装置20の機種が安全機能装置10と連動可能な機種であるときにのみ)Lowとなるので、選択信号SAは、安全機能装置10とモータ制御装置20とが連動可能か否かを示す信号となる。このような構成とすることにより、モータ制御装置20の機種が連動可能なモータ制御装置20である場合にのみ選択回路22が信号SQを選択することが可能となるので、受信回路21(及び遅延回路25が設けられている場合は遅延回路25)を安全関連部から分離(無効化)することができる。したがって、安全機能装置10にこれと連動可能でないモータ制御装置が誤って接続されても正常に機能させないことで不正な態様で使用されることを抑制することができる。この変形例における記憶部122は、本開示に係る記憶手段の一例である。
【符号の説明】
【0048】
1 モータ制御システム
10 安全機能装置
11 受信回路
12 補助制御部
121 安全機能モジュール
122 記憶部
13 受信回路
20 モータ制御装置
21 受信回路
22 選択回路
23 制御部
231 遮断回路
232 プロセッサ
233 駆動回路
24 電流センサ
25 遅延回路
3 モータ
31 エンコーダ
SR1 第1安全要求信号
SR2 第2安全要求信号
SR3 第3安全要求信号
SQ 信号
SC 接続信号
SA 選択信号
SB 遮断可否信号
SI 電流信号
SE エンコーダ信号
SP 制御信号
SD 識別信号
ID 駆動電流