(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147918
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホース
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20231005BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20231005BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20231005BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L1/00
C08L97/00
C08K3/04
C08K5/103
F16L11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055698
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】平 真由香
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇貴
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA13
3H111CB01
3H111DB01
3H111DB19
3H111DB25
3H111EA04
4J002AC071
4J002AC091
4J002AC121
4J002AC141
4J002AH002
4J002AJ002
4J002BB271
4J002BD041
4J002BG001
4J002BL011
4J002CH041
4J002DA036
4J002EH047
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002GJ02
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】伸び物性等のゴム製品に要求される性能を損なうことなく、石油由来の原料の割合を減らすことが可能な、ゴム組成物、ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホースを提供する。
【解決手段】下記の(A)~(D)を含有するゴム組成物により、課題を解決する。
(A)ゴム系ポリマー。
(B)植物由来フィラー。
(C)カーボンブラック。
(D)ジアセチルモノデカノイルグリセリド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)を含有するゴム組成物。
(A)ゴム系ポリマー。
(B)植物由来フィラー。
(C)カーボンブラック。
(D)ジアセチルモノデカノイルグリセリド。
【請求項2】
前記(C)が、DBP吸油量60~200cm3/100gのカーボンブラックである、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記(A)が、極性基を有するゴム系ポリマーである、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記(A)が、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド二元共重合体、エピクロロヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、および、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマーからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(B)が、セルロース、リグニン、バイオマスプラスチックの粒状体、種子の殻を粉砕してなる粒状体、および、果実の核を粉砕してなる粒状体からなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物が架橋されてなるゴム製品。
【請求項7】
単層ないし複数の層からなるホースであって、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物の架橋体からなる層を備えているホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホースに関するものであり、詳しくは、カーボンニュートラル化に向けて脱石油由来の原料を採用した、ゴム組成物ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製品の一般的な補強材としては、石油由来であるカーボンブラック等が使用されている(例えば、特許文献1等参照)。
そのようななか、近年の世界的なカーボンニュートラルに向けた動きを受け、ゴム製品においても、石油由来の原料の割合を減らし、脱石油由来の原料を採用することが検討されている。
その一環として、例えば、セルロース繊維等の植物由来のフィラーをゴム製品の充填剤として用いるといったことが検討されている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-15123号公報
【特許文献2】特開2020-055951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植物由来フィラーは、一般的に、カーボンブラックに比べて表面に極性基(水酸基)が多いことからゴム中に分散しにくい。そのことに起因し、ゴム製品における伸び物性を著しく阻害するため、植物由来フィラーを使用した場合、ゴム製品に要求される性能が発現しにくいといった問題を生じやすい。
また、単に石油由来の原料の割合を減らすだけでは、ゴム製品における補強性や加硫収縮性等に悪影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、伸び物性等のゴム製品に要求される性能を損なうことなく、石油由来の原料の割合を減らすことが可能なゴム組成物、ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホースの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、ゴム系ポリマー(A)に対し、植物由来フィラー(B)とカーボンブラック(C)とを併用し、さらに、ゴム系ポリマー(A)中に、植物由来フィラー(B)やカーボンブラック(C)を分散させやすい植物由来の可塑剤である、ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)を加え、ゴム組成物を調製することを検討した。このようにしたところ、植物由来フィラー(B)やカーボンブラック(C)の分散性が高められ、伸び物性の低下を改善することができ、さらに、植物由来フィラー(B)やジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)の使用により、石油由来の原料の割合を減らすことが可能となるため、所期の目的が達成できることを見いだした。
【0007】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[7]を、その要旨とする。
[1] 下記の(A)~(D)を含有するゴム組成物。
(A)ゴム系ポリマー。
(B)植物由来フィラー。
(C)カーボンブラック。
(D)ジアセチルモノデカノイルグリセリド。
[2] 前記(C)が、DBP吸油量60~200cm3/100gのカーボンブラックである、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記(A)が、極性基を有するゴム系ポリマーである、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] 前記(A)が、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド二元共重合体、エピクロロヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、および、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマーからなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5] 前記(B)が、セルロース、リグニン、バイオマスプラスチックの粒状体、種子の殻を粉砕してなる粒状体、および、果実の核を粉砕してなる粒状体からなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物が架橋されてなるゴム製品。
[7] 単層ないし複数の層からなるホースであって、[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物の架橋体からなる層を備えているホース。
【発明の効果】
【0008】
以上のことから、本発明のゴム組成物ならびにそれを用いて得られるゴム製品およびホースは、伸び物性等のゴム製品に要求される性能を損なうことなく、石油由来の原料の割合を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0010】
本発明のゴム組成物(以下、「本ゴム組成物」と示す。)は、下記の(A)~(D)を含有するものである。
(A)ゴム系ポリマー。
(B)植物由来フィラー。
(C)カーボンブラック。
(D)ジアセチルモノデカノイルグリセリド。
【0011】
以下に、前記各成分について詳しく説明する。
【0012】
[ゴム系ポリマー(A)]
本ゴム組成物に用いられるゴム系ポリマー(A)としては、特に限定されるものではないが、植物由来フィラーとの相溶性がよいことから、好ましくは極性基を有するゴム系ポリマーが用いられる。
【0013】
前記のような極性基を有するゴム系ポリマーとしては、具体的には、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン単独重合体(CO),エピクロロヒドリン-エチレンオキシド二元共重合体(ECO),エピクロロヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO),エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO))、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマー(NBR-PVC)等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、植物由来フィラーとの相溶性に優れることから、エピクロロヒドリンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムが好ましい。
【0014】
また、前記ゴム系ポリマーのSP値は、植物由来フィラー(B)やカーボンブラック(C)の分散性に優れることから、8.5~10.5であることが好ましく、より好ましくは9~10の範囲である。
ここで、SP値とは、溶解性パラメータともいわれ、物質の極性を示す指標であり、下記の式(1)により求めることができる。
【0015】
【0016】
[植物由来フィラー(B)]
前記植物由来フィラー(B)としては、例えば、セルロース、リグニン、ポリ乳酸等のバイオマスプラスチックの粒状体、種子の殻を粉砕してなる粒状体、果実の核を粉砕してなる粒状体等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、調達性に優れることから、セルロース、リグニンが好ましく用いられる。
【0017】
前記植物由来フィラー(B)のもととなる植物資材としては、例えば、木材(アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹や、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹など)、竹、サトウキビ、種子毛繊維〔綿繊維(コットンリンター)、カポックなど〕、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維〔マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻(ロープーマ)など〕、果実繊維(やし)、いぐさ、麦わら等が挙げられる。
【0018】
前記植物由来フィラー(B)が、セルロース繊維やセルロースナノ繊維の場合、その平均繊維長は、好ましくは50~500μm、より好ましくは50~200μmである。このように設定することにより、補強性、分散性、伸び物性等に優れるようになる。
なお、前記平均繊維長は、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)によって120本程度の繊維の繊維長を測定し、その平均を算出したものである。
【0019】
また、市販の植物由来フィラー(B)としては、例えば、セライト社製の「Fibra・Cel(商品名)」、中越パルプ工業社製の「ナノフォレスト(商品名)」、スギノマシン社製の「BiNFi-s(ビンフィス:商品名)」、日本製紙社製の「セレンピア(商品名)」、ダイセルファインケム社製の「セリッシュ(商品名)」、大阪ガスケミカル社製の「フルオレンセルロース(商品名)」、日本製紙社製の「KCフロック(商品名)」、旭化成社製の「セオラス(商品名)」、トスコ社製の「トスコ麻セルロースパウダー、トスコシルクパウダー、バンブーパウダー(いずれも商品名)」、ティーディーアイ社製の「セルロースパウダー(商品名)」等が挙げられる。
【0020】
そして、本ゴム組成物における前記植物由来フィラー(B)の含有割合は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対し、10~80質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは20~60質量部、さらに好ましくは20~40質量部の範囲である。すなわち、前記植物由来フィラー(B)が少なすぎると、補強性や加硫収縮性等に悪影響を及ぼす傾向がみられ、植物由来フィラー(B)が多すぎると、ゴムの伸びが劣る傾向がみられるようになるからである。
【0021】
[カーボンブラック(C)]
前記カーボンブラック(C)としては、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、MAF-HS級、FEF級、GPF級、SRF級、SRF-HS級、FT級、MT級等のグレードのものが挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、補強性に優れることから、SRF-HS級のカーボンブラックが好ましく用いられる。
【0022】
また、前記カーボンブラック(C)のDBP吸油量は、補強性の観点から、60~200cm3/100gであることが好ましく、より好ましくは90~200cm3/100g、さらに好ましくは110~200cm3/100gの範囲である。
なお、前記カーボンブラック(C)のDBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャを、カーボンブラック100gに対するDBP(ジブチルフタレート)の吸収量(cm3/100g)で表した値である。そして、前記DBP吸油量は、JIS K 6217-4に準拠して測定された値である。
【0023】
そして、本ゴム組成物における前記カーボンブラック(C)の含有割合は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対し、5~80質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは15~40質量部の範囲である。すなわち、前記カーボンブラック(C)が少なすぎると、ゴム組成物の強度等が劣る傾向がみられ、前記カーボンブラック(C)が多すぎると、石油由来の原料の割合を減らすといった本発明の趣旨から好ましくないからである。
【0024】
[ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)]
本ゴム組成物における前記ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)の含有割合は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対し、5~60質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部、さらに好ましくは15~30質量部の範囲である。すなわち、前記ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)が少なすぎると、植物由来フィラー(B)やカーボンブラック(C)の分散効果が十分に得られず、ゴムの伸び物性の低下を改善することが難しくなるおそれがあり、前記ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)が多すぎると、ゴム成形加工性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
【0025】
[その他の材料]
本ゴム組成物には、ゴム系ポリマー(A)、植物由来フィラー(B)、カーボンブラック(C)、ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)の他、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加工助剤、充填材(植物由来フィラー(B)およびカーボンブラック(C)を除く)、老化防止剤、遅延剤等が、適宜に配合される。また、有機過酸化物で架橋する場合には、架橋効率を高め、物性の改善をはかるために共架橋剤を併用しても差し支えない。
【0026】
前記加硫剤としては、例えば、1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン等のトリアジン化合物や、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物や、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン-シンナムアルデヒド付加物、アンモニウムベンゾエート、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-オキシフェニルジフェニルアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(o-クロロアニリン)等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、前記ゴム系ポリマー(A)が、NBR等のジエン系ゴムの場合、前記加硫剤としては、例えば、硫黄が用いられる。
【0027】
前記加硫剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.5~3質量部の範囲に設定され、好ましくは1~2質量部の範囲である。
【0028】
《加硫助剤》
前記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、活性亜鉛華、酸化マグネシウム等が挙げられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
前記加硫助剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.5~5質量部の範囲に設定され、好ましくは2~4質量部の範囲である。
【0030】
《加硫促進剤》
前記加硫促進剤としては、例えば、トリメチルチオウレア、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
前記加硫促進剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.5~5質量部の範囲に設定され、好ましくは1~3質量部の範囲である。
【0032】
《加工助剤》
前記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、n-オクタデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0033】
前記加工助剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.5~5質量部の範囲に設定され、好ましくは1~3質量部の範囲である。
【0034】
《充填材》
前記植物由来フィラー(B)およびカーボンブラック(C)以外の充填材としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、クレー、ガラスバルーン等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0035】
前記充填材の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、3~70質量部の範囲に設定され、好ましくは5~40質量部の範囲である。
【0036】
《老化防止剤》
前記老化防止剤としては、例えば、4,4’-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0037】
前記老化防止剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.5~5質量部の範囲に設定され、好ましくは1~2質量部の範囲である。
【0038】
《遅延剤》
前記遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N-ニトロソジフェニルアミン、N,N',N''-トリス(イソプロピルチオ)-N,N',N''-トリフェニルホスホリックトリアミド、N-シクロヘキシルチオフタルイミド、N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0039】
前記遅延剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.1~3質量部の範囲に設定され、好ましくは0.5~1.5質量部の範囲である。
【0040】
《有機過酸化物》
前記有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0041】
前記有機過酸化物の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.1~5質量部の範囲に設定され、好ましくは0.3~2質量部の範囲である。
【0042】
《共架橋剤》
前記共架橋剤としては、例えば、硫黄含有化合物、多官能性モノマー、マレイミド化合物、キノン化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
前記硫黄含有化合物としては、例えば、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド、メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。前記多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリメリテート、トリアリルトリシアヌレート等が挙げられる。また、前記マレイミド化合物としては、例えば、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等が挙げられる。前記キノン化合物としては、例えば、キノンジオキシム、ジベンゾイル-p-キノンジオキシム等が挙げられる。
【0044】
前記共架橋剤の含有量は、前記ゴム系ポリマー(A)100質量部に対して、通常、0.1~5質量部の範囲に設定され、好ましくは0.3~2質量部の範囲である。
【0045】
本ゴム組成物は、例えば、ゴム系ポリマー(A)、植物由来フィラー(B)、カーボンブラック(C)、ジアセチルモノデカノイルグリセリド(D)を配合し、さらに、必要に応じてその他の成分を配合し、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
そして、本ゴム組成物を、必要に応じ金型等を用い、所定形状にして架橋することにより、目的とするゴム製品を製造することができる。このようにして得られた本発明のゴム製品(以下、「本ゴム製品」と示す。)は、伸び物性等のゴム製品に要求される性能を損なうことなく、石油由来の原料の割合を減らすことができる。
本ゴム製品の一例としては、例えば、ホース、パッキン、オイルシール、OA機器用ロール、防振ゴム等が挙げられる。
【0046】
ここで、本ゴム製品の製造方法の一例として、ホースの製造方法を以下に示す。
すなわち、まず、前記のようにしてゴム組成物を調製した後、前記ゴム組成物を管状(円筒状)に押出成形し、未架橋のゴム層を形成する。なお、多層構造のホースとする場合、前記ゴム層(最内層)の外周に対して、各種のゴムや樹脂からなる層を押出成形等により形成する。また、補強糸層を形成する場合、前記ゴム層(最内層)の外周に対して、所定の引揃数および打込数で、補強糸をブレード編み等して補強糸層を形成する。このようにして得られた未架橋状態のホース構造体に、マンドレルを内挿する。なお、マンドレル表面には、必要に応じ、シリコーンオイル系等の離型剤を塗布してもよい。また、前記のように、未架橋状態のホース構造体(未架橋ゴムホース)に対しマンドレルを内挿するのではなく、前記ゴム組成物をマンドレル上に直接押出成形するようにしてもよい。そして、このようにしてマンドレル上に押出成形された未架橋ゴムホースを、加圧スチームにより架橋を行った後、マンドレルを抜き取り、さらに、必要に応じオーブンにて二次架橋を行うことにより、目的とするホースを作製することができる。
【0047】
このようにして得られた本発明のホース(以下、「本ホース」と示す。)は、単層構造であっても、2層以上の層が積層された多層構造であってもよい。
【0048】
本ホースにおいて、その全体の厚みは0.25~20mmが好ましく、より好ましくは0.5~10mmである。また、ホース内径は、2~100mmが好ましく、より好ましくは5~70mmである。
【0049】
本ホースは、特に限定はないが、伸び物性等を損なうことなく、石油由来の原料の割合を減らすことが要求される用途に好ましく用いられる。例えば、自動車用の燃料系ホース、エア系ホース、オイル系ホース等のホースとして用いることができる。
【実施例0050】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0052】
〔ECO〕
エピクロロヒドリンゴム、HYDRIN T3105B、日本ゼオン社製
【0053】
〔NBR〕
アクリロニトリル-ブタジエンゴム、Nipol DN101、日本ゼオン社製
【0054】
〔セルロース繊維〕
KCフロックW-400G、日本製紙社製
【0055】
〔カーボンブラック(i)〕
SRF-HS級カーボンブラック(DBP吸油量125cm3/100g)(SPHERON 5200 、キャボットジャパン社製)
【0056】
〔カーボンブラック(ii)〕
SRF級カーボンブラック(DBP吸油量68cm3/100g)(シーストS、東海カーボン社製)
【0057】
〔カーボンブラック(iii)〕
MAF-HS級カーボンブラック(DBP吸油量158cm3/100g)(シーストG-116HM、東海カーボン社製)
【0058】
〔可塑剤(i)〕
ジアセチルモノデカノイルグリセリド(BIOCIZER、理研ビタミン社製)
【0059】
〔可塑剤(ii)〕
ポリエーテルエステル系可塑剤(アデカサイザーRS966、ADEKA社製)
【0060】
[実施例1]
ECOを100質量部と、セルロース繊維を30質量部と、カーボンブラック(i)を15質量部と、可塑剤(i)を15質量部と、ステアリン酸(ビーズステアリン酸さくら、日油社製)を2質量部と、酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業社製)を3質量部と、老化防止剤(ノクラックNBC、大内新興化学工業社製)を1質量部と、加工助剤(リケマールXO-100、理研ビタミン社製)を1.5質量部と、遅延剤(リターダーCTP、東レ社製)を1質量部と、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(ZISNET F、三協化成社製)を1.5質量部とを配合し、5Lニーダーを用いて混練した後、これをオープンロールに移し、混練を続けることにより、ゴム組成物を調製した。
【0061】
[実施例2,3、比較例1~3]
実施例1における後記の表1に示す各材料の種類および配合量を、同表に示すように変更する以外は、実施例1に準じて、ゴム組成物を調製した。
【0062】
[実施例4]
NBRを100質量部と、セルロース繊維を30質量部と、カーボンブラック(i)を15質量部と、可塑剤(i)を15質量部と、ステアリン酸(ビーズステアリン酸さくら、日油社製)を2質量部と、酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業社製)を3質量部と、老化防止剤(ノクラックNBC、大内新興化学工業社製)を1質量部と、加工助剤(リケマールXO-100、理研ビタミン社製)を1.5質量部と、遅延剤(リターダーCTP、東レ社製)を1質量部と、硫黄(鶴見化学工業社製)を1質量部とを配合し、5Lニーダーを用いて混練した後、これをオープンロールに移し、混練を続けることにより、ゴム組成物を調製した。
【0063】
このようにして得られた実施例および比較例のゴム組成物を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1に併せて示した。
【0064】
≪伸び/強度物性≫
前記ゴム組成物を、引張物性測定用の厚み2mmのゴムシート状となるよう、プレス加硫機によりプレス成形して、加硫ゴムシートを作製した。つぎに、加硫ゴムシートから得られたサンプルに対し、JIS K 6251-2017(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って、引張強度TS(MPa)と伸びEB(%)を測定した。そして、下記の基準に従い、引張強度と伸びを評価した。
◎:引張強度TSが9.0MPa以上かつ伸びEBが350%以上
○:引張強度TSが5.0MPa以上かつ伸びEBが200%以上
×:引張強度TSが5.0MPa未満および/または伸びEBが200%未満
【0065】
≪カーボンニュートラル性≫
前記ゴム組成物全体に対する、その組成物に使用されているバイオマス由来材料の比率を算出し、下記の基準に従い、カーボンニュートラル性を評価した。
◎:バイオマス由来材料の比率が50質量%以上
○:バイオマス由来材料の比率が20質量%以上50質量%未満
×:バイオマス由来材料の比率が20質量%未満
【0066】
≪加硫収縮性≫
前記ゴム組成物を、内径30mm、肉厚4mmで管状(円筒状)に中空押出成形した後、長さ300mmにカットした。このようにして得られた未加硫ゴムホースを160℃で20分間スチームにて加圧加硫を行い、ゴムホースを得た。ゴムホースの加硫収縮率を、下記の式により求め、下記の基準に従い評価した。
加硫収縮率(%)=[(未加硫ゴムホースの長さ-加硫後のゴムホースの長さ)/未加硫ゴムホースの長さ]×100
◎:収縮率が2%未満
○:収縮率が2%以上8%未満
×:収縮率が8%以上
【0067】
【0068】
前記表1の結果より、実施例のゴム組成物は、いずれも、伸び/強度物性に優れ、カーボンニュートラル性を満たし、加硫収縮性にも優れる結果が得られた。
【0069】
これに対して、比較例1のゴム組成物は、セルロース繊維を含んでおらず、カーボンニュートラル性および加硫収縮性に劣る結果となった。比較例2のゴム組成物は、実施例と同じく、セルロース繊維とカーボンブラックを併用しているが、ジアセチルモノデカノイルグリセリドを含んでおらず、伸び/強度物性に劣る結果となった。比較例3のゴム組成物も、実施例と同じく、セルロース繊維とカーボンブラックを併用しているが、ジアセチルモノデカノイルグリセリドではないポリエーテルエステル系可塑剤を使用しており、伸び/強度物性の改善効果が認められない結果となった。
本ゴム組成物は、ホース、パッキン、オイルシール、OA機器用ロール、防振ゴム等の各種ゴム製品の材料として用いられる。好ましくは、自動車用の燃料系ホース、エア系ホース、オイル系ホース等のホースの形成材料として用いられる。そして、これらのホースは、自動車,トラクター,耕運機,船舶等の輸送機に、好ましく用いられる。