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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147957
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コスト最適化システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20231005BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F28F27/00 501E
F25B49/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055749
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 研一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 諭
(72)【発明者】
【氏名】斉木 健吏
(72)【発明者】
【氏名】今福 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康央
(57)【要約】
【課題】冷却塔の補給水量のコストを含む冷却塔系のトータルコストの最小化を実現する。
【解決手段】コスト最適化システムは、冷却塔のファン電力コストと冷却水ポンプの電力コストと冷凍機のコンプレッサ電力を推定する動力コスト計算部85と、冷却塔の補給水量コストを推定する補給水量コスト計算部86と、冷却塔のファン周波数と冷却水の流量を変化させながら、冷却塔出口温度推定部80と冷凍機出口温度推定部81と冷却塔動力推定部82と冷却水ポンプ動力推定部83と冷凍機動力推定部84と動力コスト計算部85と補給水量コスト計算部86に処理を実行させることにより、冷却塔のファン電力コストと冷却水ポンプの電力コストと冷凍機のコンプレッサ電力コストと冷却塔の補給水量コストとの和が最小になる冷却塔のファン周波数と冷却水の流量を求める求解部87を備える。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔の入口条件を冷却塔プロセスモデルに入力して前記冷却塔の冷却水の出口温度の推定値と前記冷却水の出口流量の推定値とを得るように構成された冷却塔出口温度推定部と、
冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力とを冷凍機プロセスモデルに入力して前記冷凍機の冷却水の出口温度の推定値を得るように構成された冷凍機出口温度推定部と、
前記冷却塔のファン周波数を冷却塔動力モデルに入力して前記冷却塔のファン動力の推定値を得るように構成された冷却塔動力推定部と、
前記冷却水の流量を冷却水ポンプ動力モデルに入力して冷却水ポンプの動力の推定値を得るように構成された冷却水ポンプ動力推定部と、
前記冷凍機の冷却水の出口温度を冷凍機動力モデルに入力して前記冷凍機のコンプレッサ動力の推定値を得るように構成された冷凍機動力推定部と、
前記冷却塔動力推定部と前記冷却水ポンプ動力推定部と前記冷凍機動力推定部のそれぞれの計算結果に基づいて前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力の推定値とを算出するように構成された動力コスト計算部と、
前記冷却塔の冷却水の入口流量と前記冷却塔出口温度推定部によって得られた冷却水の出口流量の推定値との差を前記冷却塔の補給水量の推定値とし、前記冷却塔の補給水量コストの推定値を算出するように構成された補給水量コスト計算部と、
前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量のうち少なくとも1つを変化させながら、前記冷却塔出口温度推定部と前記冷凍機出口温度推定部と前記冷却塔動力推定部と前記冷却水ポンプ動力推定部と前記冷凍機動力推定部と前記動力コスト計算部と前記補給水量コスト計算部とに処理を実行させることにより、前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力コストの推定値と前記冷却塔の補給水量コストの推定値との和が最小になる前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量とを求めるように構成された求解部とを備えることを特徴とするコスト最適化システム。
【請求項2】
請求項1記載のコスト最適化システムにおいて、
前記冷却塔の入口条件と前記冷却塔の冷却水の出口温度との関係をモデル化した前記冷却塔プロセスモデルと、
前記冷却塔のファン周波数と前記冷却塔のファン動力との関係をモデル化した前記冷却塔動力モデルと、
前記冷却水の流量と前記冷却水ポンプの動力との関係をモデル化した前記冷却水ポンプ動力モデルと、
前記冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力と前記冷凍機の冷却水の出口温度との関係をモデル化した前記冷凍機プロセスモデルと、
前記冷凍機の冷却水の出口温度と前記冷凍機のコンプレッサ動力との関係をモデル化した前記冷凍機動力モデルとをさらに備えることを特徴とするコスト最適化システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のコスト最適化システムにおいて、
前記冷却塔の入口条件は、前記冷却塔の入口空気の温度と、入口空気の相対湿度と、前記冷却塔のファン回転数から計算される入口空気の流量と、前記冷却水の流量と、前記冷却水の入口温度とを含むことを特徴とするコスト最適化システム。
【請求項4】
冷却塔の入口条件を冷却塔プロセスモデルに入力して前記冷却塔の冷却水の出口温度の推定値と前記冷却水の出口流量の推定値とを得る第1のステップと、
冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力とを冷凍機プロセスモデルに入力して前記冷凍機の冷却水の出口温度の推定値を得る第2のステップと、
前記冷却塔のファン周波数を冷却塔動力モデルに入力して前記冷却塔のファン動力の推定値を得る第3のステップと、
前記冷却水の流量を冷却水ポンプ動力モデルに入力して冷却水ポンプの動力の推定値を得る第4のステップと、
前記冷凍機の冷却水の出口温度を冷凍機動力モデルに入力して前記冷凍機のコンプレッサ動力の推定値を得る第5のステップと、
前記第3のステップと前記第4のステップと前記第5のステップのそれぞれの計算結果に基づいて前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力の推定値とを算出する第6のステップと、
前記冷却塔の冷却水の入口流量と前記第1のステップによって得られた冷却水の出口流量の推定値との差を前記冷却塔の補給水量の推定値とし、前記冷却塔の補給水量コストの推定値を算出する第7のステップと、
前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量のうち少なくとも1つを変化させながら、前記第1のステップから前記第7のステップの処理を実行することにより、前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力コストの推定値と前記冷却塔の補給水量コストの推定値との和が最小になる前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量とを求める第8のステップとを含むことを特徴とするコスト最適化方法。
【請求項5】
請求項4記載のコスト最適化方法において、
前記冷却塔プロセスモデルは、前記冷却塔の入口条件と前記冷却塔の冷却水の出口温度との関係をモデル化したものであり、
前記冷凍機プロセスモデルは、前記冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力と前記冷凍機の冷却水の出口温度との関係をモデル化したものであり、
前記冷却塔動力モデルは、前記冷却塔のファン周波数と前記冷却塔のファン動力との関係をモデル化したものであり、
前記冷却水ポンプ動力モデルは、前記冷却水の流量と前記冷却水ポンプの動力との関係をモデル化したものであり、
前記冷凍機動力モデルは、前記冷凍機の冷却水の出口温度と前記冷凍機のコンプレッサ動力との関係をモデル化したものであることを特徴とするコスト最適化方法。
【請求項6】
請求項4または5記載のコスト最適化方法において、
前記冷却塔の入口条件は、前記冷却塔の入口空気の温度と、入口空気の相対湿度と、前記冷却塔のファン回転数から計算される入口空気の流量と、前記冷却水の流量と、前記冷却水の入口温度とを含むことを特徴とするコスト最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに使用される冷却塔系のコストを最適化するコスト最適化システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビルなどの施設における空調制御では、冷房を行うための冷水を得る装置として冷凍機が用いられている。図14に示すような空調システムにおいて、冷凍機100は冷水を生成する。冷凍機100によって生成された冷水は、空調機101に供給される。空調機101によって冷却された空気が制御対象空間(室内)へ送られる。一方、空調機101へ送られた冷水は、温められて冷凍機100に戻される。冷凍機100は、空調機101から戻された水を再度冷却して空調機101へ送る。
【0003】
また、冷凍機100は、冷水を生成する際に発生した熱(冷水製造熱量)を、冷却塔102から供給される冷却水に与え、その冷却水を冷却塔102に戻している。冷却塔102は、ファンを回転させて冷却水に与えられた熱を外気に放出し、温度が下げられた冷却水を冷凍機100に供給する。冷却塔102から冷凍機100に供給する冷却水は、冷却水ポンプ103により循環させられる。
【0004】
図14に示した空調システムでは、冷却水ポンプ103の電力消費を抑えるために冷却水量を下げると、冷凍機100内のコンプレッサの動力が増えて電力消費が増える。また、冷却塔102のファンの電力消費を抑えるために冷却塔102の風量を下げると、冷凍機100内のコンプレッサの動力が増えて電力消費が増える。このように、冷凍機100と冷却塔102と冷却水ポンプ103の電力消費のトレードオフをどのようにバランスをとるかという冷却塔最適化問題が存在する。
【0005】
冷却塔最適化問題では、冷却塔102の風量と冷却水ポンプ103の流量とを調整することにより、冷凍機100で製造する冷水の熱量を維持しつつ、冷却塔120のファン動力と冷却水ポンプ103の動力と冷凍機100のコンプレッサ動力との和が最小になるようにする。
【0006】
具体的には、冷却塔102のファン動力と冷却水ポンプ103の動力と冷凍機100のコンプレッサ動力との和を目的関数とする。また、実績データから回帰分析によって求められた、冷却塔102のファン動力と冷却塔102のファン周波数との関係を示す関数、実績データから回帰分析によって求められた、冷却水ポンプ103の動力と冷却水流量との関係を示す関数、冷凍機100のコンプレッサ動力と冷却水流量と冷却水温度と製造熱量との関係を示す関数(製造熱量一定(現在値)の状態)、冷却水温度変化と湿球温度と冷却塔102のファン周波数との関係を示す関数(湿球温度一定(現在値)の状態)とを、制約式とする。
【0007】
こうして、最適化問題を定式化し、目的関数が最小になる冷却塔102のファン周波数と冷却水ポンプ103の流量とを導く(非特許文献1参照)。
非特許文献1に開示された従来の技術では、冷却水の流量、冷却水の温度、空気量、空気温度、湿度のうち少なくとも1つが変化すると、冷却水の蒸発量が変わる。すなわち、冷却塔102から高湿度の空気が排出され、冷却水が蒸発する分だけ冷却塔102への水の補給が必要となる。冷却水の蒸発量が変わることは補給水量が変わることを意味し、補給水量のコストを含む冷却塔系のトータルコストが変化することを意味する。しかしながら、従来の技術では、冷却塔102の補給水量のコストを含むトータルコストの最小化を実現できていないという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Khin Zaw,Kenichi Matsuoka,“Minimizing primary energy consumption in district cooling system: a showcase of the impact of online optimization control”,ASHRAE ANNUAL CONFERENCE 2016 JUNE 25-29,2016 ST.LOUIS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、冷却塔の補給水量のコストを含む冷却塔系のトータルコストの最小化を実現することができるコスト最適化システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコスト最適化システムは、冷却塔の入口条件を冷却塔プロセスモデルに入力して前記冷却塔の冷却水の出口温度の推定値と前記冷却水の出口流量の推定値とを得るように構成された冷却塔出口温度推定部と、冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力とを冷凍機プロセスモデルに入力して前記冷凍機の冷却水の出口温度の推定値を得るように構成された冷凍機出口温度推定部と、前記冷却塔のファン周波数を冷却塔動力モデルに入力して前記冷却塔のファン動力の推定値を得るように構成された冷却塔動力推定部と、前記冷却水の流量を冷却水ポンプ動力モデルに入力して冷却水ポンプの動力の推定値を得るように構成された冷却水ポンプ動力推定部と、前記冷凍機の冷却水の出口温度を冷凍機動力モデルに入力して前記冷凍機のコンプレッサ動力の推定値を得るように構成された冷凍機動力推定部と、前記冷却塔動力推定部と前記冷却水ポンプ動力推定部と前記冷凍機動力推定部のそれぞれの計算結果に基づいて前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力の推定値とを算出するように構成された動力コスト計算部と、前記冷却塔の冷却水の入口流量と前記冷却塔出口温度推定部によって得られた冷却水の出口流量の推定値との差を前記冷却塔の補給水量の推定値とし、前記冷却塔の補給水量コストの推定値を算出するように構成された補給水量コスト計算部と、前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量のうち少なくとも1つを変化させながら、前記冷却塔出口温度推定部と前記冷凍機出口温度推定部と前記冷却塔動力推定部と前記冷却水ポンプ動力推定部と前記冷凍機動力推定部と前記動力コスト計算部と前記補給水量コスト計算部とに処理を実行させることにより、前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力コストの推定値と前記冷却塔の補給水量コストの推定値との和が最小になる前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量とを求めるように構成された求解部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコスト最適化システムの1構成例は、前記冷却塔の入口条件と前記冷却塔の冷却水の出口温度との関係をモデル化した前記冷却塔プロセスモデルと、前記冷却塔のファン周波数と前記冷却塔のファン動力との関係をモデル化した前記冷却塔動力モデルと、前記冷却水の流量と前記冷却水ポンプの動力との関係をモデル化した前記冷却水ポンプ動力モデルと、前記冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力と前記冷凍機の冷却水の出口温度との関係をモデル化した前記冷凍機プロセスモデルと、前記冷凍機の冷却水の出口温度と前記冷凍機のコンプレッサ動力との関係をモデル化した前記冷凍機動力モデルとをさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のコスト最適化システムの1構成例において、前記冷却塔の入口条件は、前記冷却塔の入口空気の温度と、入口空気の相対湿度と、前記冷却塔のファン回転数から計算される入口空気の流量と、前記冷却水の流量と、前記冷却水の入口温度とを含むものである。
【0012】
また、本発明のコスト最適化方法は、冷却塔の入口条件を冷却塔プロセスモデルに入力して前記冷却塔の冷却水の出口温度の推定値と前記冷却水の出口流量の推定値とを得る第1のステップと、冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力とを冷凍機プロセスモデルに入力して前記冷凍機の冷却水の出口温度の推定値を得る第2のステップと、前記冷却塔のファン周波数を冷却塔動力モデルに入力して前記冷却塔のファン動力の推定値を得る第3のステップと、前記冷却水の流量を冷却水ポンプ動力モデルに入力して冷却水ポンプの動力の推定値を得る第4のステップと、前記冷凍機の冷却水の出口温度を冷凍機動力モデルに入力して前記冷凍機のコンプレッサ動力の推定値を得る第5のステップと、前記第3のステップと前記第4のステップと前記第5のステップのそれぞれの計算結果に基づいて前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力の推定値とを算出する第6のステップと、前記冷却塔の冷却水の入口流量と前記第1のステップによって得られた冷却水の出口流量の推定値との差を前記冷却塔の補給水量の推定値とし、前記冷却塔の補給水量コストの推定値を算出する第7のステップと、前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量のうち少なくとも1つを変化させながら、前記第1のステップから前記第7のステップの処理を実行することにより、前記冷却塔のファン電力コストの推定値と前記冷却水ポンプの電力コストの推定値と前記冷凍機のコンプレッサ電力コストの推定値と前記冷却塔の補給水量コストの推定値との和が最小になる前記冷却塔のファン周波数と前記冷却水の流量とを求める第8のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のコスト最適化方法の1構成例において、前記冷却塔プロセスモデルは、前記冷却塔の入口条件と前記冷却塔の冷却水の出口温度との関係をモデル化したものであり、前記冷凍機プロセスモデルは、前記冷凍機の冷却水の入口温度と前記冷却水の流量と前記冷凍機のコンプレッサ動力と前記冷凍機の冷却水の出口温度との関係をモデル化したものであり、前記冷却塔動力モデルは、前記冷却塔のファン周波数と前記冷却塔のファン動力との関係をモデル化したものであり、前記冷却水ポンプ動力モデルは、前記冷却水の流量と前記冷却水ポンプの動力との関係をモデル化したものであり、前記冷凍機動力モデルは、前記冷凍機の冷却水の出口温度と前記冷凍機のコンプレッサ動力との関係をモデル化したものである。
また、本発明のコスト最適化方法の1構成例において、前記冷却塔の入口条件は、前記冷却塔の入口空気の温度と、入口空気の相対湿度と、前記冷却塔のファン回転数から計算される入口空気の流量と、前記冷却水の流量と、前記冷却水の入口温度とを含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動力コスト計算部によって冷却塔のファン電力コストと冷却水ポンプの電力コストと冷凍機のコンプレッサ電力コストとを推定し、補給水量コスト計算部によって冷却塔の補給水量コストを推定して、冷却塔のファン電力コストの推定値と冷却水ポンプの電力コストの推定値と冷凍機のコンプレッサ電力コストの推定値と冷却塔の補給水量の推定値との和が最小になる冷却塔のファン周波数と冷却水の流量の解を求めるので、冷却塔の補給水量コストを含む冷却塔系のトータルコストの最小化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施例に係るコスト最適化システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る冷却塔プロセスモデルの入出力を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る冷却塔プロセスモデルを示す図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る冷却塔プロセスモデルの冷却塔最上部のモデルを示す図である。
図5図5は、本発明の実施例に係る冷却塔効率推定部の動作を説明する図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る冷却塔効率推定部の動作を説明するフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施例に係る冷凍機内における冷却水システムにおけるエネルギーバランスの概念図である。
図8図8は、本発明の実施例に係るバイアス補正熱量推定部の動作を説明する図である。
図9図9は、本発明の実施例に係るバイアス補正熱量推定部の動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施例に係るコスト最小化計算部の動作を説明する図である。
図11図11は、本発明の実施例に係るコスト最小化計算部の動作を説明するフローチャートである。
図12図12は、圧縮式冷凍機の構成を示す図である。
図13図13は、本発明の実施例に係るコスト最適化システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図14図14は、空調システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係るコスト最適化システムの構成を示すブロック図である。空調システムの構成は従来と同様なので、空調システムの各構成については図14の符号を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例のコスト最適化システムは、冷却塔プロセスモデル1と、冷却塔動力モデル2と、冷却水ポンプ動力モデル3と、冷凍機プロセスモデル4と、冷凍機動力モデル5と、冷却塔効率推定部6と、バイアス補正熱量推定部7と、コスト最小化計算部8とを備えている。
【0018】
冷却塔102の熱力学モデルである冷却塔プロセスモデル1は、冷却塔102の入口条件(冷却塔102の冷却水の入口温度、冷却水の流量、冷却塔102の入口空気の温度、入口空気の相対湿度)と冷却塔102の冷却水の出口温度との関係をモデル化した数学モデルである。
【0019】
冷却塔動力モデル2は、冷却塔102のファン周波数と冷却塔102のファン動力との関係をモデル化した数学モデルである。冷却塔102のファン周波数と冷却塔102のファン動力との関係は、従来と同様に実績データから回帰分析によって予め求めることができる。
【0020】
冷却水ポンプ動力モデル3は、冷却水の流量と冷却水ポンプ103の動力との関係をモデル化した数学モデルである。冷却水の流量と冷却水ポンプ103の動力との関係は、従来と同様に実績データから回帰分析によって予め求めることができる。
【0021】
冷凍機100の冷却水のエネルギーバランスモデルである冷凍機プロセスモデル4は、冷凍機100の冷却水の入口温度と冷却水の流量と冷凍機100のコンプレッサ動力と冷凍機100の冷却水の出口温度との関係をモデル化した数学モデルである。
【0022】
冷凍機動力モデル5は、冷凍機100の冷却水の出口温度と冷凍機100のコンプレッサ動力との関係をモデル化した数学モデルである。冷凍機100の冷却水の出口温度と冷凍機100のコンプレッサ動力との関係は、実績データから回帰分析によって予め求めることができる。
【0023】
最初に、冷却塔プロセスモデル1について説明する。冷却塔プロセスモデル1は、冷却塔102への入口条件(冷却水、冷却用空気)と冷却塔102の冷却水の出口温度との関係を、冷却塔102内の空気と冷却水間の気液平衡関係、物質収支、熱収支式(単位操作式)に基づいてモデル化したものである。
【0024】
図2は冷却塔プロセスモデル1の入出力を説明する図である。図2の例では、10台の冷却塔102-1~102-10があるものとして記載している。図2において、Tcw,out[degC]は冷却塔102の冷却水の出口温度(推定値)、Tcw,in[degC]は冷凍機100から冷却塔102への冷却水の戻り温度(実績値)、Fcw,act[m3/h]は冷凍機100から冷却塔102への冷却水の戻り流量(実績値)、T[degC]は冷却塔102の入口空気の温度(実績値)、H[%]は冷却塔102の入口空気の相対湿度(実績値)、Fair[m3/h]は冷却塔102への空気の流量である。前提条件として、以下の(I)~(V)が定められている。
【0025】
(I)各冷却塔102-1~102-10は、同じ冷却性能特性を有するものとする。
(II)冷却水流量は、冷却塔102-1~102-10の運転台数(実績値)に応じて均等配分されるものとする。
(III)冷却塔102-1~102-10の入口空気は、実乾球温度および相対湿度データに基づき水分量が設定される。
(IV)冷却塔102-1~102-10への空気流量Fairは、冷却塔102-1~102-10のファン回転数計測値から計算される。
(V)冷却塔効率(推定値)を設定する。
【0026】
冷却塔効率は、直近の冷却塔廻りのプロセスデータ(毎分)に基づく冷却塔廻り物質・熱バランス計算に基づく内部推定値であり、以下で説明するように時々刻々その数値の更新が行われる。
【0027】
図3は冷却塔プロセスモデル1を示す図である。ここでは、冷却塔プロセスモデル1を、冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2,Tray#3を経て冷却塔最下部Tray#4へと至る、高さ方向に4分割されたモデルとしている。冷却塔最上部Tray#1には、冷凍機100からの温度の高い冷却水が供給され、冷却塔最下部Tray#4には、冷たい空気が供給される。
【0028】
図3において、x1(1)[m3/h]は外部から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気の流量、x1(2)[m3/h]は冷凍機100から冷却塔最上部Tray#1に流入する冷却水の流量、x1(3)[degC]は冷凍機100から冷却塔最上部Tray#1に流入する冷却水の入口温度、h1(1)[kcal/kg]は外部から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気のエンタルピー、h1(2)[kcal/kg]は冷凍機100から冷却塔最上部Tray#1に流入する冷却水のエンタルピーである。
【0029】
ただし、本実施例では、外部から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気はないものとし、空気の流量x1(1),空気のエンタルピーh1(1)は0に設定される。
【0030】
x1(22)[m3/h]は外部から冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気の流量、x1(23)[m3/h]は外部から冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分量、x1(24)[degC]は外部から冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気の乾球温度、h1(22)[kcal/kg]は外部から冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気のエンタルピー、h1(23)[kcal/kg]は外部から冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分のエンタルピーである。
【0031】
x2(22)[m3/h]は冷却塔最下部Tray#4から流出する空気の流量、x2(23)[m3/h]は冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の出口流量、x2(24)[degC]は冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の出口温度、h2(22)[kcal/kg]は冷却塔最下部Tray#4から流出する空気のエンタルピー、h2(23)[kcal/kg]は冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水のエンタルピーである。
【0032】
また、x2(1)[m3/h]は冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気の流量、x2(2)[m3/h]は冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気中の水分量、x2(3)[degC]は冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気の乾球温度、h2(1)[kcal/kg]は冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気のエンタルピー、h2(2)[kcal/kg]は冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気中の水分のエンタルピーである。
【0033】
冷却塔プロセスモデル1の冷却塔最上部Tray#1について注目すると図4のように記載できる。
図4において、x1(4)は中段Tray#2から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気の流量、x1(5)は中段Tray#2から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気中の水分量、x1(6)は中段Tray#2から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気の乾球温度、h1(4)は中段Tray#2から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気のエンタルピー、h1(5)は中段Tray#2から冷却塔最上部Tray#1に流入する空気中の水分のエンタルピーである。
【0034】
x2(4)は冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ流出する空気の流量、x2(5)は冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ流出する冷却水の流量、x2(6)は冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ流出する冷却水の温度、h2(4)は冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ流出する空気のエンタルピー、h2(5)は冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ流出する冷却水のエンタルピーである。
【0035】
ただし、本実施例では、冷却塔最上部Tray#1から中段Tray#2へ空気が流出することはないので、x2(4),h2(4)は0に設定される。
【0036】
図4の冷却塔最上部Tray#1のモデルにおける水の物質収支から次の式(1)が得られる。
x1(1)+x1(4)=x2(1)+x2(4) ・・・(1)
【0037】
式(1)を変形すると、次式が得られる。
f(1)={x1(1)+x1(4)}-x2(1)+x2(4)} ・・・(2)
【0038】
図4の冷却塔最上部Tray#1のモデルにおける空気の物質収支から次の式(3)が得られる。
x1(2)+x1(5)=x2(2)+x2(5) ・・・(3)
【0039】
式(3)を変形すると、次式が得られる。
f(2)={x1(2)+x1(5)}-{x2(2)+x2(4)} ・・(4)
【0040】
図4の冷却塔最上部Tray#1のモデルにおける熱収支から次の(5)式が得られる。
h1(1)×x1(1)+h1(2)×x1(2)+h1(4)×x1(4)+h1(5)×x1(5)
=h2(1)×x2(1)+h2(2)×x2(2)+h2(4)×x2(4)+h2(5)×x2(5) ・・・(5)
【0041】
式(5)を変形すると、次式が得られる。
f(3)={h1(1)×x1(1)+h1(2)×x1(2)+h1(4)×x1(4)+h1(5)×x1(5)}-{h2(1)×x2(1)+h2(2)×x2(2)+h2(4)×x2(4)+h2(5)×x2(5)} ・・・(6)
【0042】
図4の冷却塔最上部Tray#1のモデルにおける空気と冷却水間の気液平衡関係から次の式(7)が得られる。
a(1)×x2(1)=a(2)×x2(2)×efficiency ・・(7)
【0043】
式(7)のa(1),a(2)は式(8)、式(9)のようになる。
a(1)=(1-yH2O(1))/MWH2O ・・・(8)
a(2)=yH2O(1)/Mwair ・・・(9)
【0044】
MWH2Oは水の既知の分子量、Mwairは空気の既知の分子量である。気相における水のモル分率yH2Oはラウールの法則により、次式のようになる。
yH2O[mole-fraction]=H2Ovaporpressure(T)/totalpressure×xH2O[mole-fraction]
・・・(10)
【0045】
H2Ovaporpressure(T)は平衡温度Tにおける既知の水蒸気圧、totalpressureは全圧の実績値、xH2Oは液相における水の既知のモル分率である。式(7)におけるefficiencyは冷却塔の効率である。式(7)を変形すると、次式が得られる。
f(4)={a(1)+x2(1)}-{a(2)+x2(2)} ・・・(11)
【0046】
f(1)~f(4)は評価関数である。冷却塔最上部Tray#1~冷却塔最下部Tray#4の各段について、式(2)、式(4)、式(6)、式(11)と同様の式を設定することができる。
【0047】
そして、冷却塔最上部Tray#1~冷却塔最下部Tray#4の各段のそれぞれについて評価関数f(1)~f(4)が0となるように計算することにより、冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の流量x2(23)と、冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の出口温度x2(24)と、冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水のエンタルピーh2(23)と、冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気の流量x2(1)と、冷却塔最上部Tray#1から流出する空気中の水分量x2(2)と、冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気の乾球温度x2(3)と、冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気のエンタルピーh2(1)と、冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気中の水分のエンタルピーh2(2)とを算出することができる。
【0048】
なお、実際の計算は、冷却塔最上部Tray#1~冷却塔最下部Tray#4の各段の評価関数の式をまとめた行列式を用いて行われる。
【0049】
また、冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の出口温度x2(24)は、冷却水の流量x2(23)と冷却水のエンタルピーh2(23)とに基づいて算出することができる。冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気の乾球温度x2(3)は、出口空気の流量x2(1)と出口空気のエンタルピーh2(1)とに基づいて算出することができる。出口空気の相対湿度は、出口空気中の水分量x2(2)と、出口空気の乾球温度x2(3)と、乾球温度x2(3)における既知の飽和水蒸気量とに基づいて算出することができる。
【0050】
冷却塔最適化問題の解を求めるためには、事前に冷却塔効率推定部6によって冷却塔102の効率efficiencyを推定して、冷却塔プロセスモデル1に設定する必要がある。
【0051】
冷却塔効率推定部6は、冷却塔102の入口条件(空気、冷却水)の実績値と冷却塔102の冷却水の出口温度の実績値とに基づいて、冷却塔102の冷却水蒸発量および出口空気の相対湿度を算出する。冷却塔102の出口空気の相対湿度は、理論的には100%を超えることは無い。最大効率(100%)として、現状運転における冷却塔102の出口空気の相対湿度を現状運転における冷却塔102の効率efficiencyとして設定する。
【0052】
図5は冷却塔効率推定部6の動作を説明する図、図6は冷却塔効率推定部6の動作を説明するフローチャートである。
冷却塔効率推定部6は、冷却塔102の冷却塔最上部Tray#1に流入する空気の流量x1(1)=0と、冷凍機100から冷却塔102に流入する冷却水の流量x1(2)の実績値(上記のFcw,act)と、冷凍機100から冷却塔102に流入する冷却水の入口温度x1(3)の実績値(上記のTcw,in)と、冷却塔最上部Tray#1に流入する空気のエンタルピーh1(1)=0と、冷凍機100から冷却塔102に流入する冷却水のエンタルピーh1(2)の実績値と、冷却塔102の冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気の流量x1(22)の値(上記のFair)と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分量x1(23)の実績値と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気の乾球温度x1(24)の実績値と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気のエンタルピーh1(22)の実績値と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分のエンタルピーh1(23)の実績値と、冷却塔最下部Tray#4から冷凍機100へ流出する冷却水の出口温度x2(24)の実績値(上記のTcw,outの実績値)とを冷却塔プロセスモデル1に入力し(図6ステップS100)、冷却塔102の冷却塔最上部Tray#1から流出する出口空気中の水分量x2(2)の推定値と、出口空気の乾球温度x2(3)の推定値とを冷却塔プロセスモデル1から得る(図6ステップS101)。
【0053】
冷却塔効率推定部6は、冷却塔102の入口空気の流量x1(22)の実績値を、冷却塔102のファン回転数(ファン周波数FRfan)計測値から計算することができる。
冷却塔効率推定部6は、冷凍機100から冷却塔102に流入する冷却水のエンタルピーh1(2)の実績値を、冷却水の流量x1(2)の実績値と冷却水の温度x1(3)の実績値とに基づいて算出することができる。
【0054】
冷却塔効率推定部6は、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分量x1(23)の実績値を、入口空気の流量x1(22)の設計値と、入口空気の乾球温度x1(24)の実績値と、入口空気の相対湿度H[%]の実績値と、乾球温度x1(24)における既知の飽和水蒸気量とに基づいて算出することができる。
【0055】
冷却塔効率推定部6は、入口空気のエンタルピーh1(22)の実績値を、入口空気の流量x1(22)の設計値と入口空気の乾球温度x1(24)の実績値とに基づいて算出することができる。
【0056】
冷却塔効率推定部6は、入口空気中の水分のエンタルピーh1(23)の実績値を、入口空気中の水分量x1(23)の実績値と入口空気の乾球温度x1(24)の実績値とに基づいて算出することができる。
【0057】
なお、ノイズ除去のため、冷却塔効率推定部6は、冷却塔102の入口条件(x1(1),x1(2),x1(3),h1(1),h1(2),x1(22),x1(23),x1(24),h1(22),h1(23),x2(24))の実績値を、冷却塔プロセスモデル1に入力する前に一次フィルタ処理することが望ましい。
【0058】
冷却塔効率推定部6は、ステップS101で得られた出口空気中の水分量x2(2)の推定値と、出口空気の乾球温度x2(3)の推定値と、乾球温度x2(3)における既知の飽和水蒸気量とに基づいて、冷却塔102の出口空気の相対湿度の推定値を算出する(図6ステップS102)。
【0059】
冷却塔効率推定部6は、冷却塔102の入口条件(x1(1),x1(2),x1(3),h1(1),h1(2),x1(22),x1(23),x1(24),h1(22),h1(23),x2(24))の実績値と、この入口条件と同一の日時における冷却水の出口温度x2(24)の実績値とのデータの組毎にステップS100~S102の処理を行って冷却塔102の出口空気の相対湿度の推定値を得る。
【0060】
そして、冷却塔効率推定部6は、入力したデータの組毎に得られた出口空気の相対湿度の推定値を指数平滑フィルタ処理した結果を、冷却塔102の効率efficiencyとする(図6ステップS103)。冷却塔効率推定部6は、ステップS103で算出した効率efficiencyの値を冷却塔プロセスモデル1に設定する(図6ステップS104)。
【0061】
冷却塔効率推定部6は、以上のようなステップS100~S104の処理を一定時間毎(例えば1分毎)に行うようにすればよい。なお、ステップS101の初回の算出では、冷却塔102の効率efficiencyが設定されていないため、予め定められた値を効率efficiencyとして冷却塔プロセスモデル1に設定し、ステップS101の算出を行うようにすればよい。
【0062】
次に、冷凍機プロセスモデル4について説明する。冷凍機100内の冷却水システムにおけるエネルギーバランスをモデル化した冷凍機プロセスモデル4を図7に示す。Tcws[degC]は冷凍機100に流入する冷却水の入口温度(冷却塔102の冷却水の出口温度Tcw,out)、Fcw[m3/h]は冷凍機100に流入する冷却水の流量(冷却塔102の冷却水の出口流量)、Tcwr[degC]は冷凍機100から流出する冷却水の出口温度(冷却塔102の冷却水の入口温度Tcw,in)、Qcomp[kcal/h]は冷凍機100のコンプレッサの動力量(エネルギー伝達量)、Qchw[kcal/h]は冷水製造熱量(エネルギー伝達量)である。冷水製造熱量Qchwは、次の熱バランス式で表すことができる。
Qchw=Fcw×(Tchwr-Tchws) ・・・(12)
ここで、Tchws[degC]は冷凍機100の蒸発器から流出する冷水の出口温度、Tchwr[degC]は蒸発器に流入する冷水の入口温度である。
【0063】
冷凍機100における冷却水への排熱は、理論的にはコンプレッサ動力量Qcompと冷水製造熱量Qchwとの和に基づくが、現実的には計測できないその他雑多なエネルギー量が冷凍機100の冷却水系統へ排出される。そこで、本実施例では、冷凍機100の冷却水系統へ排出される熱量の補正値をバイアス補正熱量Qbias[kcal/h]とする。このとき、次の熱バランス式が成立する。
Qcw=Qcomp+Qchw+Qbias ・・・(13)
Qcw=Cp×Fcw×(Tcwr-Tcws) ・・・(14)
【0064】
Cpは冷却水の既知の比熱である。冷凍機排熱量Qcwとバイアス補正熱量Qbiasを除いては、全て既知の値(計測値)であるので、式(13)、式(14)よりバイアス補正熱量Qbiasを次の式(15)によって算出することができる。
Qbias=Cp×Fcw×(Tcwr-Tcws)-(Qcomp+Qchw) ・・・(15)
【0065】
冷却塔最適化問題の解を求めるためには、事前にバイアス補正熱量推定部7によって上記のバイアス補正熱量Qbiasを推定して、冷凍機プロセスモデル4に設定する必要がある。図8はバイアス補正熱量推定部7の動作を説明する図、図9はバイアス補正熱量推定部7の動作を説明するフローチャートである。
【0066】
バイアス補正熱量推定部7は、冷凍機100に流入する冷却水の入口温度Tcwsの実績値と、冷凍機100に流入する冷却水の流量Fcwの実績値と、冷凍機100から流出する冷却水の出口温度Tcwrの実績値と、冷凍機100のコンプレッサの動力量Qcompの実績値と、冷凍機100の既知の冷水製造熱量Qchwと、冷却水の既知の比熱Cpとに基づいて、式(15)によりバイアス補正熱量Qbiasを算出する(図9ステップS200)。
【0067】
なお、ノイズ除去のため、バイアス補正熱量推定部7は、冷却水の入口温度Tcwsの実績値と冷却水の流量Fcwの実績値と冷却水の出口温度Tcwrの実績値とコンプレッサの動力量Qcompの実績値とを、バイアス補正熱量Qbiasの算出の前に一次フィルタ処理することが望ましい。
【0068】
バイアス補正熱量推定部7は、冷却水の入口温度Tcwsの実績値と冷却水の流量Fcwの実績値と冷却水の出口温度Tcwrの実績値とコンプレッサの動力量Qcompの実績値とを日時が同一のデータ毎に組にして、データの組毎にステップS200の処理を行ってバイアス補正熱量Qbiasの推定値を得る。そして、バイアス補正熱量推定部7は、入力したデータの組毎に得られたバイアス補正熱量Qbiasを一次フィルタ処理した結果を、最終的なバイアス補正熱量Qbiasとする。
【0069】
バイアス補正熱量推定部7は、ステップS200で得られたバイアス補正熱量Qbiasを冷凍機プロセスモデル4に設定する(図9ステップS201)。バイアス補正熱量推定部7は、以上のようなステップS200,S201の処理を冷却塔最適化問題の解を求める前に1回行えばよい。
【0070】
次に、冷凍機プロセスモデル4においては、バイアス補正熱量Qbiasを冷熱製造負荷量変化には影響を受けないプロセス値と仮定し、冷却塔最適化問題の解の算出中に冷却塔102のファン周波数の変更と冷却塔102の台数の変更のうち少なくとも一方によって冷凍機100に流入する冷却水の入口温度Tcwsが変化した場合、もしくは冷凍機100に流入する冷却水の流量Fcwが変化した場合の冷凍機100の冷却水の出口温度Tcwrを推定する。
【0071】
バイアス補正熱量推定部7によってバイアス補正熱量Qbiasが設定され、冷凍機100の冷水製造熱量Qchwが既知の場合、次式が成立する。
Qcw*=Qcomp*+Qchw+Qbias ・・・(16)
Qcw*=Cp×Fcw*×(Tcwr*-Tcws*) ・・・(17)
【0072】
*印が付与された変数はプロセス状態変更後の状態値である。式(16)、式(17)より冷凍機100の冷却水の出口温度Tcwr*を次式によって算出することができる。
Tcwr*=Tcws*+(Qcomp*+Qchw+Qbias)/(Cp×Fcw*) ・・・(18)
【0073】
次に、コスト最小化計算部8について説明する。図10はコスト最小化計算部8の動作を説明する図、図11はコスト最小化計算部8の動作を説明するフローチャートである。
コスト最小化計算部8は、冷却塔出口温度推定部80と、冷凍機出口温度推定部81と、冷却塔動力推定部82と、冷却水ポンプ動力推定部83と、冷凍機動力推定部84と、動力コスト計算部85と、補給水量コスト計算部86と、求解部87とを備えている。
【0074】
コスト最小化計算部8の冷却塔出口温度推定部80は、冷却塔102の冷却塔最上部Tray#1に流入する空気の流量x1(1)=0と、冷却塔102に流入する冷却水の入口流量Fcw(上記のx1(2))と、冷却塔102に流入する冷却水の入口温度Tcw,in(上記のx1(3))と、冷却塔最上部Tray#1に流入する空気のエンタルピーh1(1)=0と、冷却塔102に流入する冷却水のエンタルピーh1(2)と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気の流量Fair(上記のx1(22))と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分量x1(23)と、図示しない温度センサによって計測された入口空気の乾球温度T(上記のx1(24))の現在値と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気のエンタルピーh1(22)と、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分のエンタルピーh1(23)とを冷却塔プロセスモデル1に入力し、冷却塔102の冷却水の出口温度Tcw,out(上記のx2(24))の推定値と冷却水の出口流量x2(23)の推定値とを冷却塔プロセスモデル1から得る(図11ステップS300)。
【0075】
なお、冷却塔最適化問題では、冷却塔102のファン周波数FRfanと冷却水の流量Fcwと冷却塔102の台数Nctとを変化させながら、冷却塔102のファン動力Qfanの推定値と冷却水ポンプ103の動力Qpompの推定値と冷凍機100のコンプレッサ動力Qcompの推定値とを計算することを繰り返す。
【0076】
したがって、冷却塔102に流入する冷却水の入口温度Tcw,inの値としては、最適化問題の解の算出中に、冷凍機出口温度推定部81によって直前に算出された冷凍機100の冷却水の出口温度Tcwrの推定値を使用すればよい。また、初回の計算では、予め定められた値を入口温度Tcw,inの値として使用すればよい。
【0077】
冷却塔出口温度推定部80は、冷却塔102の入口空気の流量Fairを、冷却塔102のファン回転数(ファン周波数FRfan)から計算することができる。
冷却塔出口温度推定部80は、冷却塔102に流入する冷却水のエンタルピーh1(2)を、冷却水の流量Fcwと冷却水の入口温度Tcw,inとに基づいて算出することができる。
【0078】
また、冷却塔出口温度推定部80は、冷却塔最下部Tray#4に流入する入口空気中の水分量x1(23)を、入口空気の流量Fairと入口空気の乾球温度Tの現在値と図示しない湿度センサによって計測された入口空気の相対湿度H[%]の現在値と乾球温度Tにおける既知の飽和水蒸気量とに基づいて算出することができる。
【0079】
また、冷却塔出口温度推定部80は、入口空気のエンタルピーh1(22)を、入口空気の流量Fairと入口空気の乾球温度Tの現在値とに基づいて算出することができる。
【0080】
さらに、冷却塔出口温度推定部80は、入口空気中の水分のエンタルピーh1(23)を、入口空気中の水分量x1(23)と入口空気の乾球温度Tの現在値とに基づいて算出することができる。
【0081】
冷却塔102の冷却水の出口温度Tcw,outは、冷却塔102のファン回転数、乾球温度T、入口空気の相対湿度H[%]、冷却水の入口温度Tcw,in、冷却水の流量Fcwに依存して変化する。そのため、これらの実データから冷却水の出口温度Tcw,outを推定する回帰モデルを構築することは困難であった。
【0082】
この問題を解消するため、本実施例では、冷却塔102の熱力学モデル(冷却塔プロセスモデル1)を構築し、冷却塔プロセスモデル1内の冷却塔効率を実データを使用して随時補正して、運用することにより、冷却塔102のファン回転数変化による冷却水の出口温度Tcw,outの変化量を精度良く算出することができる。
【0083】
次に、コスト最小化計算部8の冷凍機出口温度推定部81は、冷凍機100に流入する冷却水の入口温度Tcwsと、冷却水の流量Fcwと、冷凍機100のコンプレッサ動力Qcompと、冷凍機100の既知の冷水製造熱量Qchwと、冷却水の既知の比熱Cpとを冷凍機プロセスモデル4(式(18))に入力し、冷凍機100の冷却水の出口温度Tcwrの推定値を冷凍機プロセスモデル4から得る(図11ステップS301)。
【0084】
冷却水の入口温度Tcwsとしては、ステップS300で算出した冷却塔102の冷却水の出口温度Tcw,outを使用すればよい。冷凍機100のコンプレッサ動力Qcompとしては、最適化問題の解の算出中に、冷凍機動力推定部84によって直前に算出されたコンプレッサ動力Qcompの推定値を使用すればよい。また、初回の計算では、予め定められた値をコンプレッサ動力Qcompの値として使用すればよい。
【0085】
次に、コスト最小化計算部8の冷却塔動力推定部82は、冷却塔102のファン周波数FRfanを冷却塔動力モデル2に入力し、冷却塔102のファン動力Qfanの推定値を冷却塔動力モデル2から得る(図11ステップS302)。
【0086】
コスト最小化計算部8の冷却水ポンプ動力推定部83は、冷却水の流量Fcwを冷却水ポンプ動力モデル3に入力し、冷却水ポンプ103の動力Qpompの推定値を冷却水ポンプ動力モデル3から得る(図11ステップS303)。
【0087】
コスト最小化計算部8の冷凍機動力推定部84は、冷凍機100の冷却水の出口温度Tcwrを冷凍機動力モデル5に入力し、冷凍機100のコンプレッサ動力Qcompの推定値を冷凍機動力モデル5から得る(図11ステップS304)。冷却水の出口温度Tcwrとしては、ステップS301で算出された値を使用すればよい。
【0088】
図12は圧縮式の冷凍機100の構成を示す図である。冷凍機100は、冷媒を蒸発させる蒸発器1000と、蒸発器1000内で気化した低温・低圧の冷媒ガスを圧縮するコンプレッサ1001と、高温・高圧の冷媒ガスを冷却して凝縮変化させる凝縮器1002と、凝縮器1002内で液化した冷媒を蒸発しやすい状態にまで圧力を下げる減圧弁1003とを備えている。
【0089】
従来、動力最適化演算の中で行なわれる、コンプレッサ動力Qcompの算出には、凝縮器1002への冷却水の入口温度別に冷凍機負荷とコンプレッサ動力Qcompの相関カーブが使用されていた。しかしながら、実際の冷却塔102の運転では、凝縮器1002への冷却水の入口温度だけでなく、冷却水流量も変化しており、コンプレッサ動力Qcompに影響を与えている。凝縮器1002における冷媒状態(冷媒温度、圧力)は、排熱量(主に蒸発器1000の動作によって生じる熱=冷水製造熱量)と凝縮器1002の冷却水の出口温度に大きく依存する。例えば、凝縮器1002における冷却水の入口温度を下げたとしても、凝縮器1002の冷却水流量を下げると、冷却水の出口温度が上昇し、凝縮器1002内の冷媒圧力が上昇し、コンプレッサ動力Qcompが上昇してしまう。
【0090】
冷凍機100への冷却水の入口温度と冷却水流量と冷凍機製造熱量の実績データとからコンプレッサ動力Qcompを求める従来の方法では、計測点も多く、計測誤差もあり、実用的な回帰モデルの構築は困難であった。
そこで、本実施例では、従来の問題を解決するために、冷却水流量と冷凍機100への冷却水の入口温度と排熱量(冷凍機製造熱量+コンプレッサ動力Qcomp)とにより一意に決まる冷凍機100の冷却水の出口温度別に冷凍機負荷の実績データと、コンプレッサ動力Qcompとの実績データの回帰を実施する。これにより、コンプレッサ動力Qcompを推定する実用的な回帰モデル(冷凍機動力モデル5)を構築することができる。
【0091】
プロセス的には、冷却水出口温度→凝縮器冷媒温度→凝縮器冷媒圧力(=コンプレッサ吐出圧力)の相関性は非常に高い。したがって、冷凍機100の冷却水の出口温度とコンプレッサ動力Qcompの高い相関性に基づき、冷凍機動力モデル5を構築することが可能となる。
【0092】
コスト最小化計算部8の動力コスト計算部85は、冷却塔動力推定部82と冷却水ポンプ動力推定部83と冷凍機動力推定部84のそれぞれの計算結果に基づいて、冷却塔102のファン電力コストの推定値と冷却水ポンプ103の電力コストの推定値と冷凍機100のコンプレッサ電力の推定値とを算出する(図11ステップS305)。
【0093】
具体的には、動力コスト計算部85は、冷却塔動力推定部82によって算出された冷却塔102のファン動力Qfan[kcal/h]の推定値をファン消費電力Wfan[kW]に換算し、ファン消費電力Wfan[kW]に電力単価[円/kWh]を乗算して、1時間あたりの冷却塔102のファン電力コストCfan[円]の推定値を算出する。
【0094】
また、動力コスト計算部85は、冷却水ポンプ動力推定部83によって算出された冷却水ポンプ103の動力Qpomp[kcal/h]の推定値をポンプ消費電力Wpomp[kW]に換算し、ポンプ消費電力Wpomp[kW]に電力単価[円/kWh]を乗算して、1時間あたりの冷却水ポンプ103の電力コストCpomp[円]の推定値を算出する。
【0095】
また、動力コスト計算部85は、冷凍機動力推定部84によって算出された冷凍機100のコンプレッサ動力Qcomp[kcal/h]の推定値をコンプレッサ消費電力Wcomp[kW]に換算し、コンプレッサ消費電力Wcomp[kW]に電力単価[円/kWh]を乗算して、1時間あたりの冷凍機100のコンプレッサ電力コストCcomp[円]の推定値を算出する。
【0096】
上記のとおり、冷却塔102から流出する冷却水の出口流量x2(23)[m3/h]を冷却塔プロセスモデル1によって推定することが可能である。
コスト最小化計算部8の補給水量コスト計算部86は、冷却塔102に流入する冷却水の入口流量Fcw[m3/h](ステップS300において冷却塔プロセスモデル1に入力されるx1(2))と、ステップS300において冷却塔プロセスモデル1によって得られた冷却水の出口流量x2(23)[m3/h]の推定値との差を、冷却塔102の補給水量Fsupplyの推定値として算出する(図11ステップS306)。
Fsupply=Fcw-x2(23) ・・・(19)
【0097】
そして、補給水量コスト計算部86は、算出した補給水量Fsupplyに水量単価[円/m3]を乗算して、1時間あたりの冷却塔102の補給水量コストCsupply[円]の推定値を算出する(図11ステップS307)。
なお、冷却塔102には、図示しない自動給水装置によってFsupplyの量だけ自動的に水が補給される。
【0098】
コスト最小化計算部8の求解部87は、冷却塔102のファン周波数FRfanと冷却水の流量Fcwと冷却塔102の台数Nctのうち少なくとも1つを変化させながら(図11ステップS308)、ステップS300~S307の計算を繰り返させ、目的関数(冷却塔102のファン電力コストCfanの推定値と冷却水ポンプ103の電力コストCpompの推定値と冷凍機100のコンプレッサ電力コストCcompの推定値と冷却塔102の補給水量コストCsupplyの推定値との和)が最小になる冷却塔102のファン周波数FRfanと冷却水の流量Fcwと冷却塔102の台数Nctとを得る(図11ステップS309,S310)。
【0099】
こうして、冷却塔102のファン周波数FRfanと冷却水の流量Fcwと冷却塔102の台数Nctの最適な解を得ることができる。本実施例では、動力コスト計算部85によって冷却塔102のファン電力コストCfanと冷却水ポンプ103の電力コストCpompと冷凍機100のコンプレッサ電力コストCcompとを推定し、補給水量コスト計算部86によって冷却塔102の補給水量コストCsupplyを推定して、冷却塔102のファン電力コストCfanの推定値と冷却水ポンプ103の電力コストCpompの推定値と冷凍機100のコンプレッサ電力コストCcompの推定値と冷却塔102の補給水量コストCsupplyの推定値との和が最小になる解を求めるので、冷却塔102の補給水量コストを含む冷却塔系のトータルコストの最小化を実現することができる。冷却塔102で蒸発する冷却水量は、冷却水流量、冷却水温度、空気量、その乾球温度と湿度に依存する。本実施例では、冷却塔102で蒸発する冷却水量を熱力学モデルを使用して算出することが可能である。
【0100】
本実施例で説明したコスト最適化システムは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図13に示す。
【0101】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、温度センサ、湿度センサ、冷却塔冷却水入口温度センサ、冷却塔冷却水出口温度センサ、冷凍機冷却水入口温度センサ、冷凍機冷却水出口温度センサ、流量センサ等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のコスト最適化方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、空調システムのコストを最適化する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…冷却塔プロセスモデル、2…冷却塔動力モデル、3…冷却水ポンプ動力モデル、4…冷凍機プロセスモデル、5…冷凍機動力モデル、6…冷却塔効率推定部、7…バイアス補正熱量推定部、8…コスト最小化計算部、80…冷却塔出口温度推定部、81…冷凍機出口温度推定部、82…冷却塔動力推定部、83…冷却水ポンプ動力推定部、84…冷凍機動力推定部、85…動力コスト計算部、86…補給水量コスト計算部、87…求解部、100…冷凍機、101…空調機、102…冷却塔、103…冷却水ポンプ。
図1
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