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特開2023-147959混紡糸およびそれを用いた繊維構造物、衣服
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147959
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】混紡糸およびそれを用いた繊維構造物、衣服
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/04 20060101AFI20231005BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20231005BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231005BHJP
   D03D 15/587 20210101ALI20231005BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20231005BHJP
   D03D 15/44 20210101ALI20231005BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20231005BHJP
   A41D 31/04 20190101ALN20231005BHJP
【FI】
D02G3/04
D04B1/16
D03D15/283
D03D15/587
D03D15/47
D03D15/44
A41D31/00 502A
A41D31/00 503G
A41D31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055752
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】大平 慎一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸敏
【テーマコード(参考)】
4L002
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB04
4L002AC00
4L002AC05
4L002BA01
4L002DA01
4L002EA03
4L002EA07
4L002FA01
4L036MA05
4L036MA35
4L036MA40
4L036PA19
4L036PA31
4L036PA33
4L036UA09
4L036UA25
4L048AA20
4L048AB01
4L048AB05
4L048AB12
4L048AC01
4L048AC06
4L048AC18
4L048CA00
4L048DA01
4L048EB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた吸水性を発揮する混紡糸、その混紡糸を用いた繊維構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】異なる2種以上の短繊維群が長手方向に断続的に切り替わる混紡糸であって、低融点ポリエステル系繊維が含まれている短繊維群と、低融点ポリエステル系繊維が含まれていない短繊維群とを含む混紡糸。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2種以上の短繊維群が長手方向に断続的に切り替わる混紡糸であって、低融点ポリエステル系繊維が含まれている短繊維群と、低融点ポリエステル系繊維が含まれていない短繊維群とを含む混紡糸。
【請求項2】
前記低融点ポリエステル系繊維が含まれている1種の短繊維群中に、低融点ポリエステル系繊維が3質量%以上、30質量%以下含まれている請求項1に記載の混紡糸。
【請求項3】
低融点ポリエステル系繊維が存在しない部分が混紡糸の縦列方向に断続的に存在する請求項1に記載の混紡糸。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の混紡糸を用いてなる繊維構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維構造物を用いた衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に断続的に繊維種が切替る混紡糸およびそれを用いた繊維構造物、衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紡績糸を用いた織編物においては、紡績糸特有の自然な毛羽感、質感、ムラ感が好まれる他、さまざまな繊維種と混綿ができることでアイテムの多様性や、豊かな発色性、光沢感など織編物の表面感に変化をもたせることができることから多種多様な用途で使用されている。
【0003】
特に、スポーツ用途ではパフォーマンス性維持向上のために、発汗した汗を素早く生地が吸収し肌面をドライに保ち肌離れ性が高いものが特に好まれるため、吸水拡散、吸水速乾機能を付与した紡績糸使いの製品が種々提案されている。
【0004】
一方で、吸水性紡績糸としては、高異形断面繊維や、丸断面と異形断面繊維との組み合わせ、コットンやレーヨンなどのセルロース繊維を用いる素材設計、紡績糸と加工糸、紡績糸と紡績糸とで撚糸する方法にて紡績糸内の繊維間空隙での毛細管現象による吸水性が高められるが、繊維間の空隙に保水された水分がそのまま残り、肌離れ性の悪化、吸水した汗による肌冷えを感じてしまい着用時の快適性を阻害するため好ましくない。
【0005】
また、吸水即乾機能を発揮する方法として、紡績糸や布帛に吸水剤を付与し、加工剤の力を利用した機能付与も用いられているが、加工賃増加や、洗濯を繰り返すことによって吸水剤が脱落し、機能が低下することもあり余り好ましくない。
織編物などに適度なシャリ感を施す目的で、低融点ポリエステルを混紡させて熱融着によるシャリ味のある風合いを得る方法(特許文献1)であったり、芯鞘構造で混紡された紡績糸の紡績後に水溶性低融点繊維を溶かし出して中空紡績糸を得る方法(特許文献2)などが多数提案されている。また、ヒートセット性やシャリ味感を付与する方法として全体的に低融点繊維を混綿する提案もされている(特許文献3,4)。特許文献5では、2種のフィラメントを用い、低融点ポリエステルを鞘側に等ピッチで巻き付かせ、布帛後の熱加工時に鞘側低融点ポリエステルを溶融させ、間欠的に低融点ポリエステルが巻き付いていない部分を露出させることで適度なシャリ感と吸水性が得られるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第0301414号
【特許文献2】特許第6761686号
【特許文献3】特開1995-305243号公報
【特許文献4】特開1997-119034号公報
【特許文献5】特開2014-210988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~4のような手法で得られた低融点繊維混紡紡績糸および布帛では、紡績糸全体が融着されて、紡績糸の長さ方向、織編地での水分移動が生じないため、紡績糸内で保水してしまい、優れた吸水性、速乾性を発揮することができない。
【0008】
特許文献5の技術では、巻付きピッチが等間隔で、溶融部分が表面に全て露出しておりシャリ味が強すぎるという欠点も有する。
【0009】
そこで、本発明は、優れた吸水性と速乾性を発揮する混紡糸、その混紡糸を用いた繊維構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の混紡糸およびそれを用いてなる繊維構造物は、前記課題を解決するため次の構成を有する。
1.異なる2種以上の短繊維群が長手方向に断続的に切り替わる混紡糸であって、低融点ポリエステル系繊維が含まれている短繊維群と、低融点ポリエステル系繊維が含まれていない短繊維群とを含む混紡糸。
2.前記低融点ポリエステル系繊維が含まれている1種の短繊維群中に、低融点ポリエステル系繊維が3質量%以上、30質量%以下含まれている前記1記載の混紡糸。
3.低融点ポリエステル系繊維が存在しない部分が混紡糸の縦列方向に断続的に存在する前記1記載の混紡糸。
4.前記1~3のいずれかに記載の混紡糸を用いてなる繊維構造物。
5.前記4記載の繊維構造物を用いた衣服。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、異形断面繊維の使用や布帛後の吸水加工に拠らずとも、糸設計のみで紡績糸の長手方向へ優れた吸水性、速乾性が発揮できる混紡糸および繊維構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の混紡糸について説明する。
本発明の混紡糸は、異なる2種以上の短繊維群が長手方向に断続的に切り替わる混紡糸であって、低融点ポリエステル系繊維が含まれている短繊維群(「熱融着繊維混綿繊維群」ということがある)と、低融点ポリエステル系繊維を含まない短繊維群(「熱融着繊維非混綿繊維群」ということがある)とが含まれている。
本発明において「長手方向に断続的に切り替わる」とは、それぞれの繊維種が合わさる部分が存在し、紡績糸の長さ方向に対して垂直の断面において、特定の短繊維群が50重量%未満の部分が存在することをいう。さらには、それぞれの繊維種が存在しない部分を有すること、即ち、特定の短繊維群のみで形成される部分を有することが好ましい。それぞれの繊維種による特徴をより発揮させるためである。
【0013】
低融点ポリエステル系繊維が溶融することによって紡績糸内の空隙が少なくなり、一方低融点ポリエステル系繊維が含まれない部分における単繊維間の空隙が存在し、これらが交互に配列されることで水の空間移動性能を高めることができるのである。
【0014】
本発明において低融点ポリエステル系繊維とはイソフタル酸を主原料とし、一般的なポリエステル繊維の融点が250~260℃であるのに対し、融点が150℃以下と低いものを言う。低融点ポリエステル系繊維は延伸工程も経ないもので結晶性も有しない。
【0015】

低融点ポリエステル系繊維は短繊維群のうち1種の短繊維群に含有されていることが好ましく、また低融点ポリエステル系繊維が含まれている1種の短繊維群中に、低融点ポリエステル系繊維が3質量%以上、30質量%以下の範囲で含まれていることが好ましい。用いる繊維の繊度や特性、布帛後の地合い、表面感によって任意に含有比率を変更すれば良く、特に上記範囲内にあれば優れた風合い、吸水性、意匠性が得られる。
【0016】
低融点ポリエステル系繊維以外の短繊維は、低融点繊維よりも融点が高い繊維であり、合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、再生セルロース系繊維、木綿、絹、動物繊維(羊毛)などの天然繊維などが挙げられ、これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。熱特性の点から合成繊維を用いることが好ましく、疎水性である合成繊維であればなお好ましい。ここでいう疎水性繊維とは、その分子構造中に水酸基を持たず水との親和性が低い、すなわち吸湿、吸水しにくい繊維を指す。繊維表面を水分が覆うように空気間隙を移動するようになるのであり、ポリエチレンテレフタレート繊維の他にナイロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維が好ましく用いられる。
【0017】
疎水性の繊維であれば水の凝集力が得られやすく毛細管現象効果を発揮し易くなるため、繊維内部自体に吸水、保水しやすい天然繊維や半合性繊維よりも好ましく用いることができる。
【0018】
混紡糸を構成する単繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、中実断面、中空断面、丸型断面、三角断面、十字断面などの異型断面や葉型断面、または扁平断面等、何れの断面であっても構わない。
混紡糸の単繊維の繊維長は特に限定されるものではなく、通常、紡績糸で適用される範囲であれば問題なく用いることができる。中でも、紡績手法や風合い、用いる原綿によって異なるが、35~51mmの範囲内で糸設計を考えることが良い。特に、繊維長と単繊維繊度とのアスペクト比が以下の計算式で計算した際に≦1.5とすることで、衣料用途に適した風合いの布帛が得られ好ましい。
最適アスペクト比 = 繊維長(インチ)/繊度(デニール) = ≦1.5
使用する単繊維繊度は布帛にした際の着用感、吸水性面から0.6~3.0dtexの範囲内とすることが好ましいが、余りにも短繊維繊度が細いとネップの発生リスクが生じやすいため、より好ましくは0.8~2.0dtexの範囲である。
混紡糸の糸番手は、1~50番手(綿式)の範囲が好ましいが、吸水性を発揮させ、着用感を得るためには、10~40番手(綿式)がより好ましい。カーペットなどのパイル織物、タオルやバスマットなどのアメニティー用途であれば3~30番手(綿式)がより好ましい。
本発明の混紡糸の撚係数Kは、2.0~5.0の範囲が好ましいが、用途に応じて適宜選ぶことができ、吸水性を発揮させるのに紡績糸撚数によっても紡績糸内の空隙が変わり吸水性が変化するため、布帛風合い、機能面から撚数設計を任意に変更しても構わない。
撚数および紡績糸の糸番手の算出は次の公式により求められる。
撚数(t/inch(2.54cm))=Ne1/2×撚り係数(K)
ここで、tは糸の回転数、Neは綿式糸番手を意味する。
糸番手(綿式Ne)=(長さ(m)/重量(g))×0.591
撚係数に関しては、撚によって紡績糸内の空隙構造が変化するため、繊度による空隙率変化が乏しい場合は、撚数を変化させて空隙率差を発現させても構わない。
紡績糸へ撚を加えると、紡績糸内で存在していた空隙が強撚させるごとに減少していくため、空隙を多く保ちたい箇所へは甘撚りに、少しの空隙で良ければ強撚にすることで、意識的に空隙率に差を持たすことが可能となる。
【0019】
前記混紡糸において、空隙率調整のために各短繊維群の撚り係数比を調整することでも吸水性や風合い変化ができ、2種の短繊維群であれば、その撚り係数比が1.1~1.6の範囲にあることが好ましい。中でも衣料用生地に適した風合いを発揮できることから1.2~1.5であることがより好ましい。
【0020】
本発明においては、熱融着繊維混綿繊維群と、熱融着繊維非混綿繊維群とで切替ピッチ長を変化させることにより、布帛全体での空隙率の細かな比率調整ができる。吸水拡散性がより発揮できる空隙率差であるピッチ長比としては熱融着繊維混綿繊維群のピッチ長:熱融着繊維非混綿繊維群のピッチ長が1:9~9:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは3:7~7:3の範囲である。これにより長手方向のそれぞれの繊維群内での空隙率が変化し、水分が移動し易い空隙率比が紡績糸構造内にできるため毛細管現象を発現し易くなり吸水拡散性が高まる。
【0021】
なお「ピッチ長」とは、1種の短繊維群の一単位の長さをいう。
【0022】
切替ピッチ長については、特に限定されないが、40mm~1500mmの範囲が好ましく、更に好ましくは50mm~1000mmの範囲である。切替ピッチが40mm未満だと、紡績糸内の空隙が極端に小さくなり毛細管現象による水の空間移動が発生し難くなり布帛にした際の吸水性、水分拡散性が低下する場合がある。また1500mmを超えると、同じ素材が長く続くため、空隙変化が少なくなり同様に水空間移動による吸水性、水分拡散性に乏しい繊維構造物となる場合がある。
【0023】
次に、本発明の混紡糸を使用した繊維構造物について説明する。
【0024】
本発明の混紡糸を使用した繊維構造物の形態は、パイル織物を含めた織物や編物などが挙げられる。
【0025】
例えば織物に用いる場合は、織物の経糸および/または緯糸として使用することができ、通常の製織工程で製織することができる。また編物として、通常の丸編地や、経編地として用いられ、通常の編み工程により編成される。
【0026】
製織編工程において、織機および編機の種類は特に限定されない。
【0027】
また、織編物の組織、密度は、求められる風合いや物性および機能性により選択され限定されるものではない。
【0028】
得られた生機は、使用される素材によって選別されるが、一般的な染色工程、条件で染色仕上げ加工され、最終の仕上げにより織編物となる。また必要に応じて染色した原綿や製織編工程前の紡績糸を染色しても構わない。
【0029】
また本発明の混紡糸は繊維構造物の一部に使っても構わないし、全体に使用しても構わず、その用途や目的に沿って決めれば良い。
【0030】
繊維構造物としては、衣服、衛生材料、産業資材、水回り用マット等に好適に用いられる。
【実施例0031】
以下に、本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
【0032】
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)吸水性評価(拡散性残留水分率)
吸水性評価として編物を作製し、水を生地中央に0.3ml滴下し、水分の拡散乾燥にともなう、試験片重量を5分間隔で測定し、生地内部への残留水分率を以下の式によって求める。
拡散性残留水分率(%)=(任意の時間の水分重量(g)/測定開始時の水分重量(g))×100
(2)空隙率
空隙率測定として、低融点ポリエステルを含む紡績糸部分の断面写真を(株)キーエンス製 デジタルマイクロスコープ(VHX-2000)を用いて撮影し、繊維が存在する部分の面積と空間部分の面積を求め、空間部分の紡績糸全体における比率を算出する。
【0033】
断面積の撮影には樹脂包埋法を用いて、紡績糸の横断面を写真撮影して構成本数を数える。包埋の方法は、紡績糸一本を真直ぐな状態にしてエポキシ系十須で包埋して、ミクロトームを用いて繊維軸に直角に糸断面の切片を切り出す。光学顕微鏡を使用して切出した繊維断面を写真撮影する。この写真における糸断面を形成している繊維本数を目視で数える。測定回数n=5とし、上記の通り空隙率を求める。なお、この樹脂包埋は、繊維断面写真を撮るための一般的な方法を用いればよい。
【0034】
空隙率=空間部分の面積/(Σ単繊維の断面積+空間部分の面積)
(3)ピリング(ICI5時間法)
ピリング測定として、JIS L 1076:2012 A法(ICI試験法5HR)にて測定し、布帛表面の毛玉の大きさ、数について評価する。
判定は、同JISに記載のとおり、評価者が「ピリング判定標準写真」を参考に、判定基準表により、1級~5級、0.5級刻みの級により判定する。
(4)スナッグ
スナッグ測定として、JIS L 1058:2011 D法(ICI形ピリング試験機法)を用いる。操作は,次による。
a)試料から、100mm×120mmの試験片を、織物では経糸および緯糸方向に、編物ではウェールおよびコース方向にそれぞれ2枚採取し、短辺方向に張力を与えないように自然な状態で、JIS L 1076:2012の7.1に規定するゴム管に巻き付け、試験片が重ならないように余分な試料を切り取って縫い糸で縫い付け、両端を幅約18mmのビニル粘着テープで、ゴム管の端が隠れないように止める。
b) ゴム管に巻いた試験片を4本一組として回転箱に入れ、回転数60min-1±2min-1によって、次のいずれかの方法で操作する。
1)D-1法(ダメージ棒を回転箱に取り付ける方法) 7.3.1a) の装置を用い、研磨布を用いる場合は1時間、サーフェイスを用いる場合は30分間操作する。4枚の試験結果を7.3.3によって判定する。
判定は、評価者が「スナッグ判定標準写真」を参考に、1級~5級の0.5級刻みで級判定する。
さらに、平均値を算出し7.1.2d) の方法によって、小数点以下を0または5に丸める。
<判定および照明条件>
判定は、JIS L 1076:2012の9.1(判定条件)に規定する判定ボックスを使用し、試験後の試験片とスナッグ判定標準写真2とを並べて比較して行う。
(5)吸水性(滴下法)
吸水速度測定として、JIS L 1907:2010 1)滴下法にて、200×200mmの試験片を型枠に保持し、JIS R 3505に規定するビュレットも用いて、水の鏡面反射が目で確認できる500lx~1000lxの明るさの光源の下、ビュレットから水を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達したときから、その試験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え、湿潤だけが残った状態までストップウォッチで1秒単位まで測定する。
試験結果は、5枚の試験片の平均値を、JIS Z 8401の規則によって整数に丸めて表す。
(実施例1)
繊維種(1)として繊度が1.45dtex、繊維長が38mmのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))短繊維(東レ(株)製、原綿タイプT403)を用いた繊維群を用いた。
繊維種(2)に用いる低融点ポリエステル(ポリエステル系繊維)原綿(繊度が2.2dtex、融点150℃以下、繊維長が51mm、東レ(株)製、原綿タイプT9615)を準備した。繊維種(2)の繊維構成としては、繊維種(1)を90質量%、繊維種(2)を20質量%の割合で用い、混綿によって低融点繊維によって部分的に繊維同士を接着し、空隙率が一定間隔で変化するように繊維構成設計し、通常の紡績工程を経て、200ゲレン/30ydの粗糸(A)を作製した。
繊維種(1)を100質量%使用し、通常の紡績工程を経て、180ゲレン/30ydの粗糸(B)を作製した。粗糸(A)、(B)を用い、豊田自動織機(株)製のモザイクヤーンシステムを有する精紡機で、粗糸(A)をミドルローラーから、粗糸(B)をバックローラーからそれぞれ供給し、粗糸(A)部分の紡績糸でのピッチ長を70~100mm間でランダムピッチになるように供給し、17.53t/2.54cm(K=3.2)の撚りを加え、粗糸(B)は紡績糸でのピッチ長を50mmで固定し、15.34t/2.54cm(K=2.8)の撚を加え、綿方式の番手で30‘Sの混紡糸を得た。糸切れの発生も少なく、紡績性は良好だった。
【0035】
得られた混紡糸を用いて28Gシングル丸編機で145g/mの天竺編地を編成した。その後、通常のポリエステル編物と同様の染色工程にて染色、熱セットをして得られた編物は、低融点PET着色部が他のPETと比べ濃色に染色され、かつ、複合紡績糸の長手方向に繊維群Aと繊維群Bとが断続的に変化し、濃色部がメランジ調となる編物であった。
得られた編物は、風合いおよび外観品位が良く、吸水即乾性、抗ピリング性に優れた編物が得られた。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、素糸(B)として、繊維種(1)を80質量%、繊維種(2)の混紡率を20質量%とした以外は、同じ工程を経て、同じ撚り数、同じピッチ長の30‘S番手の紡績糸を得た。
【0037】
この混紡糸も糸切れの発生も少なく、紡績性は良好だった。
【0038】
得られた紡績糸も実施例1と同様に28Gシングル丸編機で145g/mの天竺編地を編成し、ポリエステル100%編物と同様の染色工程にて染色、熱セットをした編地を得た。
結果を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様の繊維種(1)を100質量%使用し、カーディング工程で通常の梳綿をした後、通常の紡績工程を経て、180ゲレン/30ydの粗糸(A)を作製した。その粗糸を通常のリング精紡機に仕掛け、綿方式の番手で30‘Sの紡績糸を得た。この混紡糸も糸切れの発生も少なく、紡績性は良好だった。
得られた紡績糸を緯糸に用い、実施例1と同様の方法にて編物を得た。
結果を表1に示す。
【0040】
(比較例2)
繊維種(1)を用いず、実施例2における低融点ポリエステルが20質量%混綿された素糸(B)を100質量%用いた以外は、比較例1と同様にして、編物を得た。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】