(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147971
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231005BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231005BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/66 T
C23C16/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055784
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 貴文
(72)【発明者】
【氏名】目見田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕
(72)【発明者】
【氏名】浅見 綾香
【テーマコード(参考)】
4K030
4M106
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA01
4K030KA39
4K030LA15
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5F045GB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子デバイス製造装置内において、インジケータの基板として電子デバイス製造装置で使用される基板を用いる場合であっても、実際の量産工程のプラズマ強度において、プラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能なインジケータを提供する。
【解決手段】プラズマインジケータは、電子デバイス製造装置に用いられ、電子デバイス製造装置で使用される基板と、基板上に隣接して積層された着色層1と、着色層1上に隣接して積層された着色層2とから構成されている。着色層1の色相1と、着色層2の色相2との関係が、色相を20分割して示されるマンセル色相環において、色相2は、色相1の物理補色の色相を中心とする連続する11色相のうち、物理補色の色相を除く10色相のいずれかである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータであって、
(1)前記プラズマインジケータは、前記電子デバイス製造装置で使用される基板と、前記基板上に隣接して積層された着色層1と、前記着色層1上に隣接して積層された着色層2とから構成されており、
(2)前記着色層1の色相1と、前記着色層2の色相2との関係が、色相を20分割して示されるマンセル色相環において、前記色相2は前記色相1の物理補色の色相を中心とする連続する11色相のうち、前記物理補色の色相を除く10色相のいずれかである、
ことを特徴とする、プラズマインジケータ。
【請求項2】
前記色相1と前記色相2との色差を、L*a*b*表色系におけるΔE*abで表した場合に、ΔE*ab≧60である、請求項1に記載のプラズマインジケータ。
【請求項3】
前記基板が半導体ウエハである、請求項1又は2に記載のプラズマインジケータ。
【請求項4】
前記半導体ウエハがシリコンウエハである、請求項3に記載のプラズマインジケータ。
【請求項5】
前記基板に対してプラズマ処理により成膜、エッチング、アッシング、不純物添加及び洗浄からなる群から選ばれる少なくとも一種の工程を行う電子デバイス製造装置に用いられる、請求項1~4のいずれかに記載のプラズマインジケータ。
【請求項6】
プラズマ処理によって前記着色層2がエッチング作用により除去されて前記着色層1が露出することにより前記プラズマ処理が完了したことを示す、請求項1~5のいずれかに記載のプラズマインジケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイスを製造するために、基板(被処理基板)に対して各処理を行う。例えば、電子デバイスが半導体である場合、半導体ウエハ(単に「ウエハ」ともいう)を投入した後、絶縁膜や金属膜を成長する成膜工程、フォトレジストパターンを形成するフォトリソグラフィ工程、フォトレジストパターンを使って膜を加工するエッチング工程、半導体ウエハに導電層を形成する不純物添加工程(ドーピング、又は拡散工程ともいう)、凹凸のある膜の表面を研磨して平坦にするCMP工程(化学的機械的研磨)等を経て、パターンのでき映えや電気特性をチェックする半導体ウエハ電気特性検査を行う(ここまでの工程を総称して前工程ともいう)。この後、半導体チップを形成する後工程に移行する。
【0003】
前工程では、上述した工程の他、プラズマ、オゾン、紫外線等での洗浄工程;プラズマ、ラジカル含有ガス等によるフォトレジストパターンの除去工程(アッシング又は灰化除去ともいう);などの工程が含まれる。また、上記成膜工程においては、ウエハ表面で反応性ガスを化学反応させて成膜するCVDや、金属膜を形成するスパッタリング等があり、また上記エッチング工程においては、プラズマ中での化学反応によるドライエッチング、イオンビームによるエッチング等が挙げられる。ここで、プラズマとはガスが電離した状態を意味し、イオン、ラジカル、及び電子がその内部に存在する。
【0004】
このような前工程では、各処理のウエハ面内均一性が重要になる。これは面内均一性が損なわれる場合、半導体ウエハに複数の半導体チップを形成していくため各チップの性能のバラツキ(ここで、「バラツキ」とは、測定した数値などが平均値や標準値の前後に不規則に分布することを意味する)の原因となり歩留りに影響するためである。このため、各処理の面内均一性を確認するために、個別に上記各処理を実施し、ウエハの面内均一性を評価する手法がとられ、この手法によってプロセス条件の最適化がなされる。
【0005】
上記に関連し、本願出願人は、電子デバイス製造装置内において、プラズマ等の処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能なインジケータを提案している(特許文献1)。特許文献1では、特にインジケータの形状を電子デバイス製造装置で使用される基板の形状と同一とし、変色層の変色の面内分布をL*a*b*表色系における色差(ΔE*ab)で表すことに各処理の面内均一性を確認している。なお、特許文献1では、プラズマ等の処理による化学変化により変色層自体が変色するインジケータを開示しており、基板全体でのプラズマの濃淡(面内分布)を変色層の変色により確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、プラズマ処理は、半導体製造装置内で半導体ウエハ全体に対して均一に行われる必要があり、半導体以外の電子デバイス(発光ダイオード(LED)、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、半導体レーザ、パワーデバイス等)を製造する上においても同様に、上記処理が基板全体に対して均一に行われる必要がある。ここで、プラズマ処理はそれがエッチングを目的とするか否かにかかわらず、プラズマの特性として基板表面はエッチングされる。そして、このエッチングの面内分布(本明細書ではエッチング深さの面内分布を意味する)を確認することにより、基板全体にプラズマ処理が均一に行われれているかを確認することができる。
【0008】
近時の半導体製造工程において、ウエハのプラズマ処理によるエッチングの面内分布は、実際の量産工程のプラズマ強度において数分の処理で1~5%のレベルであり、この分布をインジケータで確認するためには色差の面内分布としてΔE*ab>3を確保することが望ましいが、これは容易なことではない。特許文献1では基板全体でのプラズマの濃淡(面内分布)を変色層の変色により示しているが、プラズマの種類によっては、実際の量産工程のプラズマ強度よりも強度を高くしたり時間を長くして濃淡(面内分布)を調べる場合も含まれる。また、インジケータの基板として実際の半導体ウエハ等を用いる場合、半導体ウエハ等自体が無彩色であるため、インジケータの変色過程中に無彩色又はこれに類似する色を経る場合には半導体ウエハ等の表面と区別がつき難くプラズマ処理の完了を正確に把握できないという問題がある。
【0009】
したがって、インジケータの基板として電子デバイス製造装置で使用される基板(実際の半導体ウエハ等)を用いる場合であっても、実際の量産工程のプラズマ強度において、プラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能な技術の開発が望まれている。
【0010】
よって、本発明は、電子デバイス製造装置内において、インジケータの基板として電子デバイス製造装置で使用される基板(実際の半導体ウエハ等)を用いる場合であっても、実際の量産工程のプラズマ強度において、プラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能なインジケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の技術を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータに関する。
1.電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータであって、
(1)前記プラズマインジケータは、前記電子デバイス製造装置で使用される基板と、前記基板上に隣接して積層された着色層1と、前記着色層1上に隣接して積層された着色層2とから構成されており、
(2)前記着色層1の色相1と、前記着色層2の色相2との関係が、色相を20分割して示されるマンセル色相環において、前記色相2は前記色相1の物理補色の色相を中心とする連続する11色相のうち、前記物理補色の色相を除く10色相のいずれかである、
ことを特徴とする、プラズマインジケータ。
2.前記色相1と前記色相2との色差を、L*a*b*表色系におけるΔE*abで表した場合に、ΔE*ab≧60である、上記項1に記載のプラズマインジケータ。
3.前記基板が半導体ウエハである、上記項1又は2に記載のプラズマインジケータ。
4.前記半導体ウエハがシリコンウエハである、上記項3に記載のプラズマインジケータ。
5.前記基板に対してプラズマ処理により成膜、エッチング、アッシング、不純物添加及び洗浄からなる群から選ばれる少なくとも一種の工程を行う電子デバイス製造装置に用いられる、上記項1~4のいずれかに記載のプラズマインジケータ。
6.プラズマ処理によって前記着色層2がエッチング作用により除去されて前記着色層1が露出することにより前記プラズマ処理が完了したことを示す、上記項1~5のいずれかに記載のプラズマインジケータ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラズマインジケータによれば、電子デバイス製造装置内において、インジケータの基板として電子デバイス製造装置で使用される基板(実際の半導体ウエハ等)を用いる場合であっても、実際の量産工程のプラズマ強度において、プラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知する、即ち直接感知することができる。例えば、上記基板が半導体ウエハである場合、コストダウンのために半導体ウエハを大口径化させて1枚の半導体ウエハからより多くの半導体チップを得ようとする近年において、半導体ウエハに対する上記処理の面内均一性が重要であるところ、本発明のインジケータは基板が実際の半導体ウエハである場合でも上記面内均一性を簡便に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】色相を20分割して示されるマンセル色相環の一例を示す図である。
【
図2】プラズマエッチング装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータについて、詳細に説明する。なお、本明細書における電子デバイスとは、半導体、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、パワーデバイス、太陽電池、液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイを意味する。
【0016】
本発明のプラズマインジケータは、電子デバイス製造装置に用いられるプラズマインジケータであって、
(1)前記プラズマインジケータは、前記電子デバイス製造装置で使用される基板と、前記基板上に隣接して積層された着色層1と、前記着色層1上に隣接して積層された着色層2とから構成されており、
(2)前記着色層1の色相1と、前記着色層2の色相2との関係が、色相を20分割して示されるマンセル色相環において、前記色相2は前記色相1の物理補色の色相を中心とする連続する11色相のうち、前記物理補色の色相を除く10色相のいずれかである、
ことを特徴とする。
【0017】
なお、詳細は後述するが、本明細書における、色相を20分割して示されるマンセル色相環と当該色相環に含まれる一つの(一種の)色相との関係は次の通りである。
図1を用いて説明すると、本明細書におけるマンセル色相環の一つの(一種の)色相は、色相角で18°の範囲を有する。例えば5BGの色相は2.5BG~7.5BGの範囲(色相角18°)で特定される色相である。但し、20分割された隣り合う色相の境界に位置する色相については、例えば2.5BGは5BGの色相に属すると定義し、7.5BGは10BGの色相に属すると定義する。また、例えば5BGの色相の物理補色の色相は5BGの真正面に位置する5Rの色相であり、5Rの色相は2.5R~7.5Rの範囲(色相角18°)で特定される色相である。よって、本発明において、色相1を例えば5BGとすると色相2は色相1(5BG)の物理補色の色相(5R)を中心とする連続する11色相(時計回りに10PB~10Yの範囲)のうち、前記物理補色の色相(5R)を除く10色相(10PB、5P、10P、5RP、10RP、10R、5YR、10YR、5Y及び10Y)のいずれかとなる。本発明の解釈においては当該定義に基づいて解釈する。
【0018】
上記特徴を有する本発明のプラズマインジケータによれば、電子デバイス製造装置内において、インジケータの基板として電子デバイス製造装置で使用される基板(実際の半導体ウエハ等)を用いる場合であっても、実際の量産工程のプラズマ強度において、プラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知する、即ち直接感知することができる。例えば、上記基板が半導体ウエハである場合、コストダウンのために半導体ウエハを大口径化させて1枚の半導体ウエハからより多くの半導体チップを得ようとする近年において、半導体ウエハに対する上記処理の面内均一性が重要であるところ、本発明のインジケータは基板が実際の半導体ウエハである場合でも上記面内均一性を簡便に検知することができる。
【0019】
プラズマインジケータの構成
本発明のプラズマインジケータは、電子デバイス製造装置で使用される基板と、前記基板上に隣接して積層された着色層1と、前記着色層1上に隣接して積層された着色層2とから構成されている。そして、詳細は後述するが、本発明のプラズマインジケータは、プラズマ処理によって着色層2がエッチング作用により除去されて着色層1が露出することにより所定のプラズマ処理が完了したことを示す。
【0020】
電子デバイス製造装置で使用される基板は、その表面に電子デバイスを形成する実際の土台(被処理基板)を意味し、その材質としては例えば、シリコン、ガリウムヒ素、炭化ケイ素、サファイア、ガラス、窒化ガリウム、ゲルマニウム等が挙げられる。なお、一般的に、(a)電子デバイスが半導体である場合は、基板がシリコン、ガリウムヒ素、炭化ケイ素等であり、(b)電子デバイスがLEDである場合は、基板がサファイア、窒化ガリウム、ガリウムヒ素等であり、(c)電子デバイスが半導体レーザである場合は、基板がガリウムヒ素、窒化ガリウム、サファイア等であり、(d)電子デバイスがパワーデバイスである場合は、基板が炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン等であり、(e)電子デバイスが太陽電池である場合は、基板がシリコン、ガラス、ゲルマニウム等であり、(f)電子デバイスが液晶ディスプレイである場合は、基板がガラスであり、(g)電子デバイスが有機ELディスプレイである場合は、基板がガラスである。但し、本発明では上記(a)~(g)の態様に限定されるものではない。以上から分かる通り、本発明のプラズマインジケータの形状は、基板の形状と同一である。これにより、本発明のプラズマインジケータがいわゆるダミー基板として、簡便にプラズマ処理が基板全体に対して均一に行われているかどうかを検知することが可能となる。
【0021】
本発明において、電子デバイスが半導体である場合、基板(即ち、半導体ウエハ)とは、ダイシング工程によって一個一個の半導体チップに分離される前の半導体ウエハ全てを指す。例えば、当該本発明における半導体ウエハは、半導体チップの原材料である(未処理の)半導体ウエハ、当該未処理の半導体ウエハに対して洗浄した後の半導体ウエハ、成膜工程後の半導体ウエハ、リソグラフィ工程後の半導体ウエハ、エッチング工程後の半導体ウエハ、平坦化工程後の半導体ウエハ、半導体ウエハ電気特性検査工程後、等のいずれの半導体ウエハも包含する。即ち、トランジスタなどの素子や配線をつくり込むためにパターンを順番に形成する工程における半導体ウエハは、いずれも本発明における半導体ウエハに相当する。また、電子デバイスがLED、半導体レーザ又はパワーデバイスである場合、基板とはダイシングの前の基板全てを指し、電子デバイスが太陽電池又は有機ELディスプレイである場合、基板とは封止工程の前の基板全てを指し、電子デバイスが液晶ディスプレイである場合、基板とはアレイ工程の基板全てを指すものとする。
【0022】
これらの基板(被処理基板)は、いずれも表面の一部又は全部が無彩色である態様を含むものであるが、本発明のプラズマインジケータによれば、このように基板の一部又は全部が無彩色である場合でもプラズマ処理の面内均一性を簡便に検知することができる。
【0023】
上記基板上には、上記基板に隣接して積層された着色層1と、前記着色層1上に隣接して積層された着色層2とが設けられている。着色層1及び着色層2を形成する方法は限定されないが、例えば着色層1は上記基板上に後述するインキ組成物を直接印刷又は塗布した後に乾燥(及び/又は加熱)することにより形成することができ、着色層2は前記着色層1上に後述するインキ組成物を直接印刷又は塗布した後に乾燥(及び/又は加熱)することにより形成することができる。印刷方法又は塗布方法としては、例えばスピンコート、スリットコート、ゾルゲル、スプレー、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法;公知の塗布方法等が挙げられる。
【0024】
着色層1及び着色層2を形成するインキ組成物には、着色剤及びバインダー樹脂を含有するものが使用でき、着色剤としてはプラズマ処理によりそれ自体が変色及び消色しないいわゆる顔料及び/又は非変色色素が使用できる。着色剤の含有量は、着色剤の種類、所望の色相等に応じて適宜決定できるが、一般的にはインキ組成物中0.05~5重量%程度、特に0.1~1重量%とすることが望ましい。なお、本発明では、後述する着色層1の色相1と、前記着色層2の色相2との関係を満たすように着色層1、2に用いる着色剤の種類及び含有量を設定すればよい。
【0025】
バインダー樹脂としては、基材の種類等に応じて適宜選択すれば良く、例えば筆記用、印刷用等のインキ組成物に用いられている公知の樹脂成分をそのまま採用できる。具体的には、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。上記バインダー樹脂は1種又は2種以上で使用することができる。
【0026】
本発明では、特にセルロース系樹脂を好適に用いることができる。セルロース系樹脂を用いることによって、インキ組成物に増量剤(シリカ等)が含まれていても優れた定着性を得ることができ、基板からの脱落、剥離等を効果的に防止することができる。
【0027】
本発明では、特にポリイミド樹脂を好適に用いることができる。ポリイミド樹脂を用いることによって、着色層1及び着色層2に耐熱性を付与することができ、高温条件下でも使用可能となり、強力なプラズマ処理に対する耐性を付与することができる。バインダー樹脂をポリイミド樹脂とする場合には、インキ組成物の状態ではポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を使用し、加熱処理によりポリアミド酸をポリイミド樹脂に転化することによって着色層1及び着色層2を形成してもよい。
【0028】
バインダー樹脂の含有量は、バインダー樹脂の種類、用いる着色剤の種類等に応じて適宜決定できるが、一般的にはインキ組成物中50重量%程度以下、特に5~35重量%とすることが望ましい。
【0029】
インキ組成物は、必要に応じて溶剤、増量剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の公知のインキに用いられている成分を適宜配合することができる。
【0030】
本発明で使用できる溶剤としては、通常、印刷用、筆記用等のインキ組成物に用いられる溶剤であればいずれも使用できる。例えば、アルコール又は多価アルコール系、エステル系、エーテル系、ケトン系、炭化水素系、グリコールエーテル系等の各種溶剤が使用でき、使用する色素、バインダー樹脂の溶解性等に応じて適宜選択すれば良い。上記溶剤は1種又は2種以上で使用することができる。特に着色層2を形成するための溶剤として、バインダー樹脂の良溶媒と貧溶媒とを併用することにより、相分離による多孔化を行い、着色層2を多孔質体から構成することができる。着色層2を多孔質体とすることにより、着色層1の反射色を隠蔽する(着色層1の反射色を透けないようにする)効果が得られ易くなる。また、着色層1には基板の反射色を隠蔽する(基板の反射色を透けないようにする)ことが求められるため着色層2と同様に多孔質体から構成されることが好ましいが、着色層1の表面に孔が存在する場合には着色層2を形成するためのインキ組成物が浸透する可能性があるため、着色層1は表面に孔のない多孔質体であるか、又は基板の反射色の隠蔽性の高い非多孔質体であることが好ましい。
【0031】
溶剤の含有量は、用いる溶剤や着色剤の種類等に応じて適宜決定できるが、一般的にはインキ組成物中40~95重量%程度、特に60~90重量%とすることが望ましい。
【0032】
本発明におけるインキ組成物の各成分は、同時に又は順次に配合し、ホモジナイザー、ディゾルバー等の公知の攪拌機を用いて均一に混合すれば良い。例えば、まず溶剤に前記着色剤、並びにバインダー樹脂、カチオン系界面活性剤及び増量剤の少なくとも1種(必要に応じてその他の添加剤)を順に配合し、攪拌機により混合及び攪拌すればよい。
【0033】
本発明のプラズマインジケータは、プラズマ処理によって着色層2がエッチング作用により除去されて着色層1が露出することにより前記プラズマ処理が完了したことを示すものであるため、着色層1及び着色層2の厚さ(特に表層である着色層2の厚さ)は所定のプラズマ処理の完了時に着色層2がエッチング作用により除去されて着色層1が露出する限りにおいてそれぞれ設定することができる。
【0034】
着色層2の厚さは、前述の前提の下、プラズマ処理の種類及び着色層2の多孔性の程度に応じて適宜調整することができる。厚さは限定的ではないが、例えば上限値は10.0μm以下、9.5μm以下、9.0μm以下と設定することができる。また、例えば下限値は0.5μm以上、1.0μm以上、1.5μm以上と設定することができる。着色層2の厚さが10.0μmを超える場合には、プラズマ処理の種類にもよるが、処理時間が短い場合、プラズマ強度が小さい場合等ではプラズマ処理の完了を精度よく示すことができないおそれがある。また、着色層2の厚さが0.5μm未満の場合には、着色層2自体の着色が不足する(層厚が薄すぎる)ことによりプラズマ処理の完了を精度よく示すことができないおそれがある。
【0035】
着色層1の厚さは、前述の前提の下、プラズマ処理の種類に応じて適宜調整することができる。厚さは限定的ではないが、変色層2の厚さより厚いことが好ましい。これにより、基材層の色調による着色層1への影響を抑制することができ、変色層2の厚さの条件との組み合わせによりプラズマ処理の完了を精度よく示すことができる。着色層1の厚さは、例えば下限値は変色層2の厚さの1.1倍以上、1.2倍以上、1.5倍以上と設定することができる。また、例えば上限値は変色層2の厚さの10.0倍以下、5.0倍以下と設定することができる。一例として、着色層1の厚さを20.0~25.0μmに設定し、着色層2の厚さを5.0~10.0μmに設定することができる。
【0036】
基板上に着色層1と着色層2とを順に形成する方法としては、具体的には、
(1)基板上に着色層1を形成するインキ組成物を直接印刷又は塗布した後に乾燥(及び/又は加熱)することにより着色層1を形成後、着色層1上に着色層2を形成するインキ組成物を直接印刷又は塗布した後に乾燥(及び/又は加熱)することにより着色層2を形成する方法、
(2)上記(1)の方法において、着色層2を形成するインキ組成物に含まれる溶媒として、バインダー樹脂の良溶媒と貧溶媒とを併用することにより、相分離による多孔化を行い、着色層2を特に多孔質体から形成する方法、
(3)基板上に着色層1を形成するインキ組成物を直接印刷又は塗布した後に乾燥(及び/又は加熱)することにより着色層1を形成後、着色層1上に表面の開孔部と連通する内部空間を有するベース材料(着色層2の骨格となる多孔性構造体であり樹脂多孔質体が好ましい)を設けた後に着色層2を形成するインキ組成物をベース材料に塗布、含浸、噴霧等して乾燥(及び/又は加熱)することにより着色層2を形成する方法、
等を挙げることができる。
【0037】
着色層1の色相1と、着色層2の色相2との関係
本発明のプラズマインジケータは、着色層1の色相1と、着色層2の色相2との関係が、色相を20分割して示されるマンセル色相環(
図1参照)において、前記色相2は前記色相1の物理補色の色相を中心とする連続する11色相のうち、前記物理補色の色相を除く10色相のいずれかであることを特徴とする。なお、ここでは色相1を基準として色相2の採り得る範囲を説明しているが、逆も同じであり、色相2を基準として色相1の採り得る範囲を説明する場合としても表記することができる。
【0038】
図1は色相を20分割して示されるマンセル色相環の一例を示す図である。具体的には、「R(赤),Y(黄),G(緑),B(青),P(紫)」を基本5色相として時計回りに等間隔に配置し、その間に「YR(黄赤),GY(黄緑),BG(青緑),PB(青紫),RP(赤紫)」を等間隔に挿入して合計10色の主要10色相とし、更に主要10色相をそれぞれ2分割(例えばYであれば5Yと10Yに2分割、GYであれば5GYと10GYに2分割等)することにより色相を20分割して示している。ここで、本明細書におけるマンセル色相環の一つの(一種の)色相は色相角で18°の範囲を有し、上記20分割された色相のそれぞれが一つの(一種の)色相であると定義する。
【0039】
上記マンセル色相環において、例えば5BGの色相は2.5BG~7.5BGの範囲(色相角18°)で特定される色相である。但し、20分割された隣り合う色相の境界に位置する色相については、例えば2.5BGは5BGの色相に属すると定義し、7.5BGは10BGの色相に属すると定義する。また、例えば5BGの色相の物理補色(合わせると無彩色になる色相)の色相は5BGの真正面に位置する5Rの色相であり、5Rの色相は2.5R~7.5Rの範囲(色相角18°)で特定される色相である。よって、本発明において、色相1を例えば5BGとすると色相2は色相1(5BG)の物理補色の色相(5R)を中心とする連続する11色相(時計回りに10PB~10Yの範囲)のうち、前記物理補色の色相(5R)を除く10色相(10PB、5P、10P、5RP、10RP、10R、5YR、10YR、5Y及び10Y)のいずれかとなる。このような色相1と色相2との関係は色相角を用いて表記することもでき、「色相2は色相1の物理補色の色相を中心とする色相角198°の色相のうち、前記物理補色の色相を中心とする色相角18°の色相を除いた残りの色相のいずれかである」とも表記できる。
【0040】
更に他の一例を示すと、着色層1の具体的な色相が例えば7.5RPであれば、色相1は10RPとなり、色相2は色相1(10RP)の物理補色の色相(10G)を中心とする連続する11色相(時計回りに5Y~5PBの範囲)のうち、前記物理補色の色相(10G)を除く10色相(5Y、10Y、5GY、10GY、5G、5BG、10BG、5B、10B及び5PB)のいずれかとなる。
【0041】
本発明のプラズマインジケータは、上記関係において着色層1の色相1と、着色層2の色相2とを設定することによって、プラズマ処理により表層の着色層2がエッチング作用により徐々に厚さが薄くなり下層の着色層1の色相1の影響を受けて当該色相1に近づきながら着色層2がエッチング作用により除去されて着色層1の色相1が露出する段階まで、変色過程において無彩色(つまりマンセル色相環の中心及びその近傍)を通過することなく色相2から色相1に変化することができる。インジケータの基板として実際の半導体ウエハ等を用いる場合、半導体ウエハ等自体が無彩色であるため、インジケータの変色過程中に無彩色又はこれに類似する色を経る場合には半導体ウエハ等の表面と区別がつき難くプラズマ処理の完了を正確に把握できない(過度にエッチングされて半導体ウエハ等の表面色の影響を受けた場合と区別できない)という問題があるが、本発明のプラズマインジケータは変色過程において無彩色を経由しないため半導体ウエハ等の基板表面と色相との関係でプラズマ処理の完了を正確に把握できないという問題が回避されている。
【0042】
前述の関係を満たすように着色層1の色相1と、着色層2の色相2とを設定した場合、色相1と色相2との色差を、L*a*b*表色系におけるΔE*abで表した場合に、ΔE*ab≧60となり、好ましくはΔE*ab≧65となり、より好ましくはΔE*ab≧70となり、更に好ましくはΔE*ab≧75となり、最も好ましくはΔE*ab≧80となる。ここで、近時の半導体製造工程において、ウエハのプラズマ処理によるエッチングの面内分布は数分の処理で1~5%のレベルであり、この分布をインジケータで確認するためには面内分布の色差としてΔE*ab>3を確保することが望まれる。この点、本発明のプラズマインジケータの色相1と色相2との色差がΔE*ab≧60であれば、面内分布の色差としてΔE*ab>3を確保することができる。また、マンセル色相環において色相1及び/又は色相2の彩度を50%程度まで小さくした場合でも上記同様の結果を得ることが可能となる。
【0043】
本発明のプラズマインジケータを適用できるプラズマ処理
プラズマとしては、特に限定されず、プラズマ発生用ガスによって発生するプラズマを使用することができる。プラズマの中でも、酸素、窒素、水素、塩素、アルゴン、シラン、アンモニア、臭化硫黄、水蒸気、亜酸化窒素、テトラエトキシラン、四フッ化炭素、トリフルオロメタン、四塩化炭素、四塩化ケイ素、六フッ化硫黄、四塩化チタン、ジクロロシラン、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム等から選ばれた一種以上のプラズマ発生用ガスによって発生するプラズマが好ましい。
【0044】
プラズマは、プラズマ処理装置(プラズマ発生用ガスを含有する雰囲気下で交流電力、直流電力、パルス電力、高周波電力、マイクロ波電力等を印加してプラズマを発生させることによりプラズマ処理を行う装置)により発生させることができる。
【0045】
具体的には、電子デバイスが半導体である場合、プラズマ処理は、主に成膜工程、エッチング工程、アッシング工程、不純物添加工程、洗浄工程等で使用される。
【0046】
成膜工程としては、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Depositon,化学気相成長)において、プラズマと熱エネルギーを併用し、400℃以下の低温で比較的速い成長速度で半導体ウエハ上に膜を成長させることができる。具体的には、材料ガスを減圧した反応室に導入し、プラズマ励起によりガスをラジカルイオン化して反応させる。プラズマCVDとしては、容量結合型(陽極結合型、平行平板型)、誘導結合型、ECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)型のプラズマが挙げられる。
【0047】
別の成膜工程としては、スパッタリングによる成膜工程が挙げられる。具体的な例示としては、高周波放電スパッタ装置において、1Torr~10-4Torr程度の不活性ガス(たとえばAr)中で半導体ウエハとターゲット間に数10V~数kVの電圧を加えると、イオン化したArがターゲット向かって加速及び衝突し、ターゲットの物質がスパッタされて半導体ウエハに堆積される。このとき、同時にターゲットから高エネルギーのγ-電子が生じ、Ar原子と衝突する際にAr原子をイオン化(Ar+)させ、プラズマを持続させる。
【0048】
また、別の成膜工程としては、イオンプレーティングによる成膜工程が挙げられる。具体的な例示としては、内部を10-5 Torr~10-7Torr程度の高真空状態にしてから不活性ガス(たとえばAr)もしくは反応性ガス(窒素、炭化水素等)を注入し、加工装置の熱電子発生陰極(電子銃)から電子ビームを蒸着材に向けて放電を行い、イオンと電子に分離したプラズマを発生させる。次いで、電子ビームにより、金属を高温に加熱・蒸発させた後、蒸発した金属粒子は、正の電圧をかけることによりプラズマ中で電子と金属粒子と衝突して金属粒子がプラスイオンとなり、被加工物に向かって進むとともに金属粒子と反応性ガスが結びついて化学反応が促進される。化学反応が促進された粒子は、マイナス電子の加えられた被加工物へ向かって加速され、高エネルギーで衝突し、金属化合物として表面へ堆積される。なお、イオンプレーティングと類似する蒸着法も成膜工程として挙げられる。
【0049】
さらに、酸化工程、又は窒化工程として、ECRプラズマ、表面波プラズマ等によるプラズマ酸化によって半導体ウエハ表面を酸化膜に変換させる方法や、アンモニアガスを導入し、プラズマ励起によって前記アンモニアガスを電離・分解・イオン化して、半導体ウエハ表面を窒化膜に変換する方法等が挙げられる。
【0050】
エッチング工程では、例えば、反応性イオンエッチング装置(RIE)において、円形平板電極を平行に対向し、減圧反応室(チャンバ)に反応ガスを導入し、プラズマ励起により導入ガスを中性ラジカル化やイオン化して電極間に生成し、これらのラジカルやイオンと半導体ウエハ上の材料との化学反応によって揮発物質化するエッチングと物理的なスパッタリングの両方の効果を利用する。また、プラズマエッチング装置として、上記平行平板型の他、バレル型(円筒型)も挙げられる。
【0051】
別のエッチング工程としては、逆スパッタリングが挙げられる。逆スパッタリングは、前記スパッタリングと原理は類似するが、プラズマ中のイオン化したArが半導体ウエハに衝突し、エッチングする方法である。また、逆スパッタリングと類似するイオンビームエッチングもエッチング工程として挙げられる。
【0052】
アッシング工程では、例えば、減圧下で酸素ガスをプラズマ励起させた酸素プラズマを用いて、フォトレジストを分解・揮発する。
【0053】
不純物添加工程では、例えば、減圧チャンバ内にドーピングする不純物原子を含んだガスを導入してプラズマを励起させて不純物をイオン化し、半導体ウエハにマイナスのバイアス電圧をかけて不純物イオンをドーピングする。
【0054】
洗浄工程は、半導体ウエハに各工程を行う前に、半導体ウエハに付着した異物を半導体ウエハにダメージを与えることなく除去する工程であり、例えば、酸素ガスプラズマで化学反応させるプラズマ洗浄や、不活性ガス(アルゴンなど)プラズマで物理的に除去するプラズマ洗浄(逆スパッタ)等が挙げられる。
【0055】
電子デバイスが半導体以外のLED、半導体レーザ、パワーデバイス又は液晶ディスプレイである場合でも、電子デバイスが半導体である場合と同様、処理工程として成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、アッシング工程、洗浄工程等がある。電子デバイスが太陽電池又は有機ELディスプレイである場合は、上記電子デバイスが半導体である場合と同様、処理工程として成膜工程、洗浄工程等がある。つまり、電子デバイスがLED、半導体レーザ、パワーデバイス、液晶ディスプレイ、太陽電池又は有機ELディスプレイである場合も本発明のプラズマインジケータを使用することができる。
【0056】
本発明のプラズマインジケータをプラズマ処理装置内に置く工程については、基板に対して酸化、窒化、成膜、不純物添加、洗浄及びエッチングからなる群から選ばれた少なくとも1種の工程を行う電子デバイス製造装置で行うことが好ましい。
【0057】
プラズマインジケータの使用に際しては、電子デバイスを製造する際に上記処理を行う各電子デバイス製造装置内の基板の設置箇所に本発明のプラズマインジケータを置けばよい。例えば、ウエハステージ、ヒータ、真空チャックテーブル等に対して水平(横)に寝かせるように配置してもよく、また、ウエハボート等を用いて垂直(縦)に配置してもよい。これは一例であって、製造されている基板と同一形状であることから全く制限されるものでなく、基板と同様に設置できることを意味する。この場合、装置内に置かれたプラズマインジケータがプラズマ処理に曝露され、着色層2がエッチング作用により除去されて着色層1が露出することにより前記プラズマ処理が完了したことに加えてプラズマ処理の面内均一性についても簡便に検知することができる。
【実施例0058】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【0059】
実施例1、比較例1及び比較例2
(プラズマインジケータの作製)
基板として12インチシリコン基板を準備し、アンモニア水及び過酸化水素を使用して常法により基板をAPM処理した。APM処理は、基板表面のパーティクルを除去して着色層1及び着色層2の密着性を向上させるために行った。APM処理後の基板のL*a*b*表色系で表した色相は(62,1,-3)であった。
【0060】
着色層1を形成するインキ組成物は、染料、バインダー樹脂(ポリイミド樹脂)の前駆体としてのポリアミド酸、及び溶媒(N-メチル-2-ピロリドン)の混合物とした。
【0061】
着色層2を形成するインキ組成物は、染料、バインダー樹脂(ポリイミド樹脂)の前駆体としてのポリアミド酸、及び溶媒(N-メチル-2-ピロリドン及びテトラエチレングルコールジメチルエーテルの混合溶媒であり、前記ポリアミド酸の良溶媒と貧溶媒との組み合わせとした)の混合物とした。
【0062】
基板上に着色層1を形成するインキ組成物を塗布し、130℃でプリベークした後、300℃でポストベークすることによりポリアミド酸をポリイミドに転化させて着色層1(色相はそれぞれ表1に示す通りとした)を形成した。
【0063】
次いで、着色層1上に着色層2を形成するインキ組成物を塗布し、130℃でプリベークした後、300℃でポストベークすることによりポリアミド酸をポリイミドに転化させて着色層2(色相はそれぞれ表1に示す通りとした)を形成した。これにより、プラズマインジケータを作製した。
【0064】
【0065】
(プラズマ処理)
各インジケータをプラズマ処理に供した。
【0066】
図2にプラズマエッチング装置の構成図を示す。本装置は、真空容器内に平行平板型の電極が設置されており、上部電極がシャワー構造となっており、反応性ガスがシャワー状に被処理物に供給される。下部電極には被処理物(各インジケータ)が載置され、プラズマ励起のための高周波電力の供給機構、及び非処理物を加熱するヒーターが具備されている。実際にエッチングを実施する場合は、真空容器内に上部電極シャワー部から反応性ガスを導入し、また下部電極より供給した高周波電力により、平行平板電極内の空間にプラズマを発生させ、発生した励起種により被処理物表面を化学反応によりエッチングする。
【0067】
プラズマ処理強度は下記の通りとした。
・平行平板方式(電極間距離40mm)
・ガス種:CF4とO2との混合ガス
・ガス流量:CF4及びO2ともに100sccm
・処理圧:25[Pa]
・パワー:50[W]
・処理時間:10[min]。
【0068】
実施例1のプラズマインジケータは着色層1(色相1)と着色層2(色相2)との色差(ΔE*ab)が107であり、エッチングの面内分布の色差(ΔE*ab)も約5.5が得られている。ウエハのプラズマ処理によるエッチングの面内分布は数分の処理で1~5%のレベルであり、この分布をインジケータで確認するためには面内分布の色差としてΔE*ab>3を確保することが必要であるが、実施例1のプラズマインジケータは色相1と色相2との色差(ΔE*ab)が60以上であることにより面内分布の色差(ΔE*ab)としてΔE*ab>3を確保できており、エッチングの面内分布をインジケータの変色の程度により確認することができる。また、色相2から色相1への変色過程に無彩色を経由しないため、インジケータの色変化は基板色(無彩色)と区別されている。
【0069】
これに対して、比較例1のプラズマインジケータは着色層1(色相1)と着色層2(色相2)との色差(ΔE*ab)が45であり、エッチングの面内分布の色差(ΔE*ab)も約2.2しか得られていない。このため、エッチングの面内分布をインジケータの変色の程度により確認することが困難である。なお、色相2から色相1への変色過程に無彩色を経由しないため、インジケータの色変化は基板色(無彩色)と区別されている。
【0070】
また、比較例2のプラズマインジケータは着色層1(色相1)と着色層2(色相2)との色差(ΔE*ab)が111であり、エッチングの面内分布の色差(ΔE*ab)も約5.5が得られている。このため、エッチングの面内分布をインジケータの変色の程度により確認することができる。しかしながら、色相2から色相1への変色過程に無彩色を経由するため、インジケータの色変化は基板色(無彩色)と区別されておらず、プラズマ処理の完了を正確に把握できない。
【0071】
試験例1
基準色相(色相2;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を太字5Rとし、色相(色相1;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を変えた場合に色相2と色相1との色差(ΔE*ab)がどのように推移するかを表2に示した。着色層2(色相2)を太字5Rとする場合、着色層1(色相1)を本発明の規定に沿って10Y,5GY,10GY,5G,10G,10BG,5B,10B,5PB及び10PBから選択することによりΔE*ab≧60を確保できることが分かる。
【0072】
【0073】
試験例2(試験例1において各色相の彩度Cを2/3とした例)
基準色相(色相2;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を太字5Rとし、色相(色相1;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を変えた場合に色相2と色相1との色差(ΔE*ab)がどのように推移するかを表3に示した。着色層2(色相2)を太字5Rとする場合、着色層1(色相1)を本発明の規定に沿って10Y,5GY,10GY,5G,10G,10BG,5B,10B,5PB及び10PBから選択することによりΔE*ab≧60を確保できることが分かる。
【0074】
【0075】
試験例3(試験例2において基準色相を太字5Yとした例)
基準色相(色相2;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を太字5Yとし、色相(色相1;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を変えた場合に色相2と色相1との色差(ΔE*ab)がどのように推移するかを表4に示した。着色層2(色相2)を太字5Yとする場合、着色層1(色相1)を本発明の規定に沿って10G,5BG,10BG,5B,10B,10PB,5P,10P,5RP及び10RPから選択することによりΔE*ab≧60を確保できることが分かる。
【0076】
【0077】
試験例4(試験例2において基準色相の彩度Cのみを最大とした例)
基準色相(色相2;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を太字5Rとし、色相(色相1;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を変えた場合に色相2と色相1との色差(ΔE*ab)がどのように推移するかを表5に示した。着色層2(色相2)を太字5Rとする場合、着色層1(色相1)を本発明の規定に沿って10Y,5GY,10GY,5G,10G,10BG,5B,10B,5PB及び10PBから選択することによりΔE*ab≧60を確保できることが分かる。
【0078】
【0079】
試験例5(試験例1において基準色相を除く各色相の彩度Cを1/2とし、基準色相の彩度Cのみを2/3とした例)
基準色相(色相2;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を太字5Rとし、色相(色相1;明度、彩度及びL*a*b*を併記)を変えた場合に色相2と色相1との色差(ΔE*ab)がどのように推移するかを表6に示した。着色層2(色相2)を太字5Rとする場合、着色層1(色相1)を本発明の規定に沿って10Y,5GY,10GY,5G,10G,10BG,5B,10B,5PB及び10PBから選択することによりΔE*ab≧60を確保できることが分かる。
【0080】