IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTN株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147973
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】センサ付き軸受及び軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20231005BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20231005BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C33/76 Z
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055786
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩義
【テーマコード(参考)】
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB01
3J216AB31
3J216BA27
3J216BA30
3J216CA05
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB18
3J216EA03
3J216EA05
3J216FA09
3J217JA02
3J217JA15
3J217JA16
3J217JA24
3J217JA32
3J217JA37
3J217JA38
3J217JA39
3J217JA43
3J217JA47
3J217JB14
3J217JB26
3J217JB34
3J217JB56
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701BA73
3J701EA74
3J701FA22
3J701FA24
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】転がり軸受が交換される場合でも少なくともセンサユニットの再利用が可能なセンサ付き軸受装置を提供する。
【解決手段】センサ付き軸受は、回転輪、固定輪及び転動体を含む軸受と、センサユニットとを備えている。回転輪は、周方向に沿って延在している回転輪軌道面を有する。固定輪は、周方向に沿って延在し、かつ径方向において回転輪軌道面と間隔を空けて対向している固定輪軌道面を有する。転動体は、回転輪軌道面と固定輪軌道面との間に配置されている。センサユニットは、固定輪に着脱可能に取り付けられており、かつ回転輪の回転に伴って誘導起電圧を発生させる発電コイルと、物理量又は化学量を電気信号として出力するセンサと、センサの出力を外部に無線送信する無線通信モジュールとを有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転輪、固定輪及び転動体を含む軸受と、
センサユニットとを備え、
前記回転輪は、周方向に沿って延在している回転輪軌道面を有し、
前記固定輪は、前記周方向に沿って延在し、かつ径方向において前記回転輪軌道面と間隔を空けて対向している固定輪軌道面を有し、
前記転動体は、前記回転輪軌道面と前記固定輪軌道面との間に配置されており、
前記センサユニットは、前記固定輪に着脱可能に取り付けられており、かつ前記回転輪の回転に伴って誘導起電圧を発生させる発電コイルと、物理量又は化学量を電気信号として出力するセンサと、前記センサの出力を外部に無線送信する無線通信モジュールとを有する、センサ付き軸受。
【請求項2】
前記回転輪に着脱可能に取り付けられている磁気リングをさらに備え、
前記磁気リングには、N極及びS極が前記周方向に沿って交互に着磁されており、
前記センサは、前記回転輪の回転状態を検出して電気信号として出力する、請求項1に記載のセンサ付き軸受。
【請求項3】
前記センサユニットは、前記磁気リングの回転に伴い、前記発電コイルに誘導起電圧を発生させるとともに、前記発電コイルで発生した誘導起電圧の波形に基づいて前記回転輪の回転数を検出する、請求項2に記載のセンサ付き軸受。
【請求項4】
前記センサユニットは、前記固定輪に着脱可能に取り付けられており、かつ前記発電コイルが搭載されている環状のステータを有し、
前記ステータは、前記周方向に沿って延在しており、かつ前記径方向において前記磁気リングと間隔を空けて対向しているステータ内周面を有し、
前記ステータ内周面には、前記周方向に沿って間隔を空けて並んでいる複数の櫛歯部が形成されており、
前記櫛歯部は、前記磁気リングからの磁束の磁路を構成しており、
前記磁気リングの磁極の数は、前記櫛歯部の数に等しい、請求項2又は請求項3に記載のセンサ付き軸受。
【請求項5】
前記ステータは、前記磁気リングからの磁束が前記櫛歯部から前記発電コイルの周囲を通るように構成されている、請求項4に記載のセンサ付き軸受。
【請求項6】
リング状の第1止め金具をさらに備え、
前記センサユニットは、前記第1止め金具からの前記径方向に沿う弾性反発力により前記固定輪に着脱可能に取り付けられている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項7】
前記第1止め金具は、前記周方向において間隔を空けて並んでいる複数の第1付勢部を有し、
前記センサユニットは、前記第1付勢部からの前記径方向に沿う弾性反発力により前記固定輪に着脱可能に取り付けられている、請求項6に記載のセンサ付き軸受。
【請求項8】
リング状の第2止め金具をさらに備え、
前記磁気リングは、前記第2止め金具からの前記径方向に沿う弾性反発力により前記回転輪に着脱可能に取り付けられている、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項9】
前記第2止め金具は、前記周方向において間隔を空けて並んでいる複数の第2付勢部を有し、
前記磁気リングは、前記第2付勢部からの前記径方向に沿う弾性反発力により前記回転輪に着脱可能に取り付けられている、請求項8に記載のセンサ付き軸受。
【請求項10】
リング状のゴム部材をさらに備え、
前記センサユニットは、前記ゴム部材からの前記径方向に沿う弾性反発力により前記固定輪に着脱可能に取り付けられている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項11】
圧縮コイルばねをさらに備え、
前記センサユニットは、前記圧縮コイルばねからの前記径方向に沿う弾性反発力により前記固定輪に着脱可能に取り付けられている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項12】
前記センサ及び前記無線通信モジュールは、前記発電コイルで発生した誘導起電圧により駆動される、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項13】
前記無線通信モジュールは、連続的又は間欠的に、前記センサからの出力で搬送波を変調して外部に無線送信する、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項14】
前記センサユニットの開放部は、樹脂材により密閉されている、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項15】
前記センサは、振動センサであり、
前記センサユニットは、前記センサの検出方向が前記軸受の荷重方向と一致するように前記固定輪に着脱可能に取り付けられており、
前記センサユニットには、前記センサの検出方向と前記軸受の荷重方向とを一致させるための目印が設けられている、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項16】
回転輪、固定輪及び転動体を含む軸受と、
センサユニットとを備え、
前記回転輪は、周方向に沿って延在している回転輪軌道面を有し、
前記固定輪は、前記周方向に沿って延在し、かつ径方向において前記回転輪軌道面と間隔を空けて対向している固定輪軌道面を有し、
前記転動体は、前記回転輪軌道面と前記固定輪軌道面との間に配置されており、
前記センサユニットは、加締め、溶接部又は接着剤により前記固定輪に固定されており、かつ前記回転輪の回転に伴って誘導起電圧を発生させる発電コイルと、物理量又は化学量を電気信号として出力するセンサと、前記センサの出力を外部に無線送信する無線通信モジュールとを有する、センサ付き軸受。
【請求項17】
加締め、溶接部又は接着剤により前記回転輪に取り付けられている磁気リングをさらに備え、
前記磁気リングには、N極及びS極が前記周方向に沿って交互に着磁されており、
前記センサは、前記回転輪の回転状態を検出して電気信号として出力する、請求項16に記載のセンサ付き軸受。
【請求項18】
軸と、
ハウジングと、
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の前記センサ付き軸受とを備え、
前記回転輪及び前記固定輪の一方は前記軸に嵌め合わされており、
前記回転輪及び前記固定輪の他方は前記ハウジングに嵌め合わされている、軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付き軸受及び軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2005-256892号公報(特許文献1)には、センサ付き軸受が記載されている。特許文献1に記載のセンサ付き軸受は、転がり軸受と、磁気リングと、センサユニットとを有している。
【0003】
転がり軸受は、内輪と、外輪と、転動体と、保持器とを有している。磁気リングは、芯金と、磁性ゴム層とを有している。芯金の内周面には、内輪が圧入されている。磁性ゴム層は、芯金の外周面上に配置されている。センサユニットは、外環と、センサハウジングとを有している。外環は、外輪の内周面に圧入されている。センサハウジングは、外環の内周面上に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-256892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、特許文献1に記載のセンサ付き軸受では、磁気リング及びセンサユニットがそれぞれ圧入により内輪及び外輪に固定されているため、磁気リングを内輪から取り外すことができず、センサユニットを外輪から取り外すことができない。そのため、転がり異常等により転がり軸受を交換する際に、磁気リング及びセンサユニットも併せて交換しなければならない。このことを別の観点から言えば、特許文献1に記載のセンサ付き軸受では、磁気リング及びセンサユニットの再利用ができない。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、転がり軸受が交換される場合でも少なくともセンサユニットの再利用が可能なセンサ付き軸受装置及び軸受装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサ付き軸受は、回転輪、固定輪及び転動体を含む軸受と、センサユニットとを備えている。回転輪は、周方向に沿って延在している回転輪軌道面を有する。固定輪は、周方向に沿って延在し、かつ径方向において回転輪軌道面と間隔を空けて対向している固定輪軌道面を有する。転動体は、回転輪軌道面と固定輪軌道面との間に配置されている。センサユニットは、固定輪に着脱可能に取り付けられており、かつ回転輪の回転に伴って誘導起電圧を発生させる発電コイルと、物理量又は化学量を電気信号として出力するセンサと、センサの出力を外部に無線送信する無線通信モジュールとを有する。
【0008】
上記のセンサ付き軸受は、回転輪に着脱可能に取り付けられている磁気リングをさらに備えていてもよい。磁気リングには、N極及びS極が周方向に沿って交互に着磁されていてもよい。センサは、回転輪の回転状態を検出して電気信号として出力してもよい。
【0009】
上記のセンサ付き軸受において、センサユニットは、磁気リングの回転に伴い、発電コイルに誘導起電圧を発生させるとともに、発電コイルで発生した誘導起電圧の波形に基づいて回転輪の回転数を検出してもよい。
【0010】
上記のセンサ付き軸受において、センサユニットは、固定輪に着脱可能に取り付けられており、かつ、発電コイルが搭載されている環状のステータを有していてもよい。ステータは、周方向に沿って延在しており、かつ、径方向において磁気リングと間隔を空けて対向しているステータ内周面を有していてもよい。ステータ内周面には、周方向に沿って間隔を空けて並んでいる複数の櫛歯部が形成されていてもよい。櫛歯部は、磁気リングからの磁束の磁路を構成していてもよい。磁気リングの磁極の数は、櫛歯部の数に等しくてもよい。
【0011】
上記のセンサ付き軸受において、ステータは、磁気リングからの磁束が櫛歯部から発電コイルの周囲を通るように構成されていてもよい。
【0012】
上記のセンサ付き軸受は、リング状の第1止め金具をさらに備えていてもよい。センサユニットは、第1止め金具からの径方向に沿う弾性反発力により固定輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0013】
上記のセンサ付き軸受において、第1止め金具は、周方向において間隔を空けて並んでいる複数の第1付勢部を有していてもよい。センサユニットは、第1付勢部からの径方向に沿う弾性反発力により固定輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0014】
上記のセンサ付き軸受は、リング状の第2止め金具をさらに備えていてもよい。磁気リングは、第2止め金具からの径方向に沿う弾性反発力により回転輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0015】
上記のセンサ付き軸受において、第2止め金具は、周方向において間隔を空けて並んでいる複数の第2付勢部を有していてもよい。磁気リングは、第2付勢部からの径方向に沿う弾性反発力により回転輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0016】
上記のセンサ付き軸受は、リング状のゴム部材をさらに備えていてもよい。センサユニットは、ゴム部材からの径方向に沿う弾性反発力により固定輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0017】
上記のセンサ付き軸受は、圧縮コイルばねをさらに備えていてもよい。センサユニットは、圧縮コイルばねからの径方向に沿う弾性反発力により固定輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0018】
上記のセンサ付き軸受において、センサ及び無線通信モジュールは、発電コイルで発生した誘導起電圧により駆動されてもよい。
【0019】
上記のセンサ付き軸受において、無線通信モジュールは、連続的又は間欠的に、センサからの出力で搬送波を変調して外部に無線送信してもよい。
【0020】
上記のセンサ付き軸受において、センサユニットの開放部は、樹脂材により密閉されていてもよい。
【0021】
上記のセンサ付き軸受において、センサは、振動センサであってもよい。センサユニットは、センサの検出方向が軸受の荷重方向と一致するように固定輪に着脱可能に取り付けられていてもよい。センサユニットには、センサの検出方向と軸受の荷重方向とを一致させるための目印が設けられていてもよい。
【0022】
本発明の軸受装置は、軸と、ハウジングと、センサ付き軸受とを備える。回転輪及び固定輪の一方は、軸に嵌め合わされている。回転輪及び固定輪の他方は、ハウジングに嵌め合わされている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のセンサ付き軸受及び本発明の軸受装置によると、転がり軸受が交換される場合でも少なくともセンサユニットの再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】センサ付き軸受100の断面図である。
図1B】センサユニット20及び磁気リング30が転がり軸受10から取り外された際のセンサ付き軸受100の断面図である。
図2図1A中のIIにおける拡大図である。
図3図1A中のIII-IIIにおける断面図である。
図4A図3中のIVにおける第1拡大図である。
図4B図3中のIVにおける第2拡大図である。
図5図4A中のV-Vにおける断面図である。
図6図4B中のVI-VIにおける断面図である。
図7A】付勢部51の近傍における変形例1に係るセンサ付き軸受100の第1拡大断面図である。
図7B】付勢部51の近傍における変形例1に係るセンサ付き軸受100の第2拡大断面図である。
図8】変形例2に係るセンサ付き軸受100の断面図である。
図9図8中のIXにおける拡大図である。
図10】変形例3に係るセンサ付き軸受100の断面図である。
図11図10中のXIにおける拡大図である。
図12】変形例4に係るセンサ付き軸受100の断面図である。
図13図12中のXIIIにおける拡大図である。
図14】センサ付き軸受100Aの断面図である。
図15図14中のXVにおける拡大図である。
図16】変形例1に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。
図17図16中のXVIIにおける拡大図である。
図18】変形例2に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。
図19図18中のXIXにおける拡大図である。
図20】変形例3に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。
図21図20中のXXIにおける拡大図である。
図22】センサ付き軸受100Bの断面図である。
図23図22中のXXIIIにおける拡大図である。
図24】変形例1に係るセンサ付き軸受100Bの断面図である。
図25図24中のXXVにおける拡大図である。
図26】変形例2に係るセンサ付き軸受100Bの断面図である。
図27図26中のXXVIIにおける拡大図である。
図28】センサ付き軸受100Cの断面図である。
図29図28中のXXIX-XXIXにおける断面が示されている。
図30図29に蓋26を重ねて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るセンサ付き軸受(以下「センサ付き軸受100」)を説明する。
【0027】
<センサ付き軸受100の構成>
以下に、センサ付き軸受100の構成を説明する。
【0028】
図1Aは、センサ付き軸受100の断面図である。図1Aには、内輪11の中心軸(中心軸A)を通り、かつ軸方向に平行な断面が示されている。図1Bは、センサユニット20及び磁気リング30が転がり軸受10から取り外された際のセンサ付き軸受100の断面図である。図2は、図1A中のIIにおける拡大図である。図3は、図1A中のIII-IIIにおける断面図である。図1A図1B図2及び図3に示されるように、センサ付き軸受100は、転がり軸受10と、センサユニット20と、磁気リング30と、第1止め金具40と、第2止め金具50とを有している。
【0029】
中心軸Aに沿う方向を、軸方向とする。中心軸Aを通り、かつ軸方向に直交している方向を、径方向とする。軸方向に沿って見た際に中心軸Aを中心とする円周に沿う方向を、周方向とする。
【0030】
転がり軸受10は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受10は、これに限られるものではない。転がり軸受10は、内輪11と、外輪12と、複数の転動体13と、保持器14とを有している。転がり軸受10は、シール15をさらに有していてもよい。内輪11は回転輪であり、外輪12は固定輪である。
【0031】
内輪11は、第1端面11aと、第2端面11bと、内周面11c(内輪内周面)と、外周面11d(内輪外周面)とを有している。第1端面11a及び第2端面11bは、軸方向における内輪11の端面である。第2端面11bは、軸方向における第1端面11aの反対面である。
【0032】
内周面11cは、周方向に沿って延在している。内周面11cは、中心軸A側を向いている。内周面11cの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、第1端面11a及び第2端面11bに連なっている。外周面11dは、周方向に沿って延在している。外周面11dは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面11dは、径方向における内周面11cの反対面である。外周面11dの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、第1端面11a及び第2端面11bに連なっている。
【0033】
外周面11dは、内輪軌道面11daを有している。内輪軌道面11daは、転動体13に接触する外周面11dの部分である。外周面11dは、内輪軌道面11daにおいて内周面11c側に窪んでいる。内輪軌道面11daは、軸方向における外周面11dの中央部にある。周方向に直交する断面視において、内輪軌道面11daは、部分円弧状になっている。
【0034】
外輪12は、第1端面12aと、第2端面12bと、内周面12c(外輪内周面)と、外周面12d(外輪外周面)とを有している。第1端面12a及び第2端面12bは、軸方向における外輪12の端面である。第2端面12bは、軸方向における第1端面12aの反対面である。
【0035】
内周面12cは、周方向に沿って延在している。内周面12cは、中心軸A側を向いている。内周面12cの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、第1端面12a及び第2端面12bに連なっている。外輪12は、内周面12cが外周面11dと径方向において間隔を空けて対向するように配置されている。外周面12dは、周方向に沿って延在している。外周面12dは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面12dは、径方向における内周面12cの反対面である。外周面12dの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、第1端面12a及び第2端面12bに連なっている。
【0036】
内周面12cは、外輪軌道面12caを有している。外輪軌道面12caは、転動体13に接触する内周面12cの部分である。内周面12cは、外輪軌道面12caにおいて外周面12d側に窪んでいる。外輪軌道面12caは、軸方向における内周面12cの中央部にある。周方向に直交する断面視において、外輪軌道面12caは、部分円弧状になっている。
【0037】
転動体13は、球状である。複数の転動体13は、外周面11dと内周面12cとの間に配置されている。より具体的には、複数の転動体13は、内輪軌道面11daと外輪軌道面12caとの間で、周方向に沿って並んでいる。
【0038】
保持器14は、周方向において隣り合っている2つの転動体13の間の間隔が一定範囲内となるように、複数の転動体13を保持している。保持器14は、例えば、環状部14aと、複数の柱部14bとを有している。柱部14bは、転動体13を保持している。柱部14bの軸方向における一方側(図1A中の右側)は、開口されている。環状部14aは、複数の柱部14bを周方向に沿って並ぶように接続している。このことを別の観点から言えば、保持器14は、例えば冠形の保持器である。保持器14は、ガラス繊維により強化されたポリアミド等の熱可塑性樹脂により形成されている樹脂成形品であることが好ましい。
【0039】
外周面11dと内周面12cとの間の空間を、軸受空間とする。シール15は、軸方向における他方側(図1A中の左側)から、軸受空間を閉塞している。内周面12cには、溝12cbが形成されている。溝12cbは、周方向に沿って環状に延在している。溝12cbは、軸方向において、第2端面12bと外輪軌道面12caとの間にある。シール15は、環状である。シール15の外周縁は、溝12cbに挿入されている。シール15の内周縁は、外周面11dに接触している。シール15は、例えば、芯金に耐油性ゴム(NBR、HNBR、FKM、ACM等)を加硫接着することにより形成されている。シール15は、芯金の表面に防錆処理が施されたものであってもよい。軸受空間には、潤滑剤が封入されている。
【0040】
センサ付き軸受100は、内輪11が内周面11cにおいて軸に嵌め合わされるとともに、外輪12が外周面12dにおいてハウジングに嵌め合わされることにより、軸受装置を構成する。
【0041】
センサユニット20は、ステータ21と、発電コイル22と、回路基板23と、センサ24と、無線通信モジュール25とを有している。
【0042】
ステータ21は、周方向に沿って延在している環状である。ステータ21は、第1部材21aと、第2部材21bとを有している。第1部材21aは、周方向に沿って延在している環状である。第1部材21aは、径方向において、第1環状部21aaと、第2環状部21abと、第3環状部21acとに区分されている。第1環状部21aaは最も径方向内側にあり、第3環状部21acは最も径方向外側にある。第2環状部21abは、第1環状部21aaと第3環状部21acとの間にある。
【0043】
第1環状部21aaには、発電コイル22が配置されている。発電コイル22は、コイルボビン22aに収納されている。発電コイル22は、例えばエナメル線を巻回することにより形成されている。コイルボビン22aは、例えば樹脂材料により形成されている。発電コイル22の巻き数や線径は、発電される電力、自己発熱量、占有断面積等を考慮して適宜決定される。
【0044】
第2部材21bは、第1環状部21aa上に配置されている。これにより、発電コイル22が配置される空間が画されている。第1部材21a及び第2部材21bは、好ましくは、磁性材料により形成されている。
【0045】
第2環状部21abは、周方向において、第1領域21abaと、第2領域21abbとに区分されている。第1領域21aba上には、回路基板23が配置されている。回路基板23は、周方向に沿って延在している。回路基板23の基材は、例えばガラス繊維を含むエポキシ樹脂により形成されている。回路基板23の基材は、振動センサの検出精度を向上する観点から、340MPa以上500MPa以下の圧縮強度及び390MPa以上550MPa以下の曲げ強度を有していることが好ましい。回路基板23上には、複数の電子部品23aが配置されている。
【0046】
複数の電子部品23aは、電源部と、変換部とを構成している。電源部は、発電コイル22で発生した誘導起電圧(交流)を直流に変換する。変換部は、発電コイル22で発生した誘導起電圧の交流波形をパルス波形に変換することにより、内輪11の回転数を検出する。回路基板23上には、蓄電部がさらに配置されている。蓄電部は、発電コイル22で発生され、かつ電源部で直流に変換された電力を蓄電する。電源部は、例えば交流を整流して平滑化する回路や昇圧回路により構成されている。変換部は、例えばコンパレータ回路により構成されている。蓄電部は、例えば電気二重層キャパシタや二次電池により構成されている。
【0047】
センサ24は、回路基板23上に配置されている。センサ24の数及び種類は、複数であってもよい。センサ24には、例えば温度センサ、振動センサが含まれている。温度センサには、MEMS、白金抵抗体、サーミスタ、熱電対、熱電素子等が用いられる。振動センサには、MEMS又は静電容量式、渦電流式、圧電素子式若しくは歪ゲージ式のものが用いられる。振動センサは、1軸の振動を検出するものであってもよく、2軸又は3軸の振動を検出するものであってもよい。センサ24は、内輪11の回転状態(例えば、温度、振動)を検知し、当該回転状態に応じた信号を出力する。センサ24は、物理量又は化学量を電気信号として出力するものであればよい。
【0048】
複数の電子部品23aは、メモリ部と、処理部とをさらに構成している。メモリ部は、センサ24からの出力を保存する。処理部は、センサ24からの出力を所定の閾値と比較する処理や所定の判断基準に基づいてセンサ24の出力から内輪11の回転状態を判定する処理を行う。メモリ部及び処理部は、例えば、マイクロコントローラにより構成されている。
【0049】
無線通信モジュール25は、回路基板23上に配置されている。無線通信モジュール25は、処理部で所定の処理が行われたセンサ24の出力を外部に無線送信する。より具体的には、無線通信モジュール25は、搬送波を処理部で所定の処理が行われたセンサ24の出力で変調し、変調された搬送波をアンテナから送出する。このアンテナは、無線通信モジュール25に内蔵されていてもよく、無線通信モジュール25に外付けされていてもよい。無線通信モジュール25は、例えば、Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)、IrDA(登録商標)の通信規格に準拠している。
【0050】
複数の電子部品23aには、外部からの有害な電気的ノイズを減衰又は遮断するための電子部品が含まれていてもよい。これらの電子部品は、例えば、コモンモードフィルタ、シングルモードフィルタ、セラミックフィルタ、EMIフィルタ、抵抗器、コンデンサ、コイル、バリスタ、インダクタ、フェライトビーズ等である。
【0051】
回路基板23の上方に蓋26が配置されることにより、回路基板23の外部への露出が防止されてもよい。第2領域21abb上には、モールド樹脂27が充填されていてもよい。電子部品23aをマイグレーションから保護するために、回路基板23の表面に防湿被膜が設けられていてもよい。
【0052】
第3環状部21acは、外輪12への取り付けに供される部分である。第1端面12aには、段差部12aaと、段差部12abと、溝12acとが形成されている。段差部12aa、段差部12ab及び溝12acは、周方向に沿って環状に延在している。段差部12aaは、第1端面12aの内周面12c側の端にある。段差部12abは、段差部12aaの径方向外側にある。段差部12abは、段差部12aaよりも軸方向における一方側(図1A中の右側)に突出した位置にある。溝12acは、段差部12aaとは反対側の段差部12abの端に形成されている。第2環状部21abの第3環状部21ac側の端部は、段差部12aa上にある。第3環状部21acは、溝12ac及び溝12acと段差部12aaとの間にある第1端面12aの部分の形状に沿っている。
【0053】
ステータ21の内周面には、複数の櫛歯部28が形成されていてもよい。複数の櫛歯部28は、周方向において間隔を空けて並んでいる。櫛歯部28は、隣り合っている2つの櫛歯部28の間にあるステータ21の内周面よりも径方向内側に向かって突出している。
【0054】
磁気リング30は、芯金31と、磁性ゴム32とを有している。芯金31は、第1部分31aと、第2部分31bとを有している。第1部分31aは、軸方向に沿って延在している筒状である。第2部分31bは、第1部分31aの軸方向における一方端(図1A中の右側の端)から径方向内側に向かって延在している。
【0055】
芯金31は、例えば、薄板に対する深絞り加工を含むプレス成形を行うことにより形成される。この薄板は、例えば、軟鋼又はステンレス鋼により形成されている。軟鋼の具体例としては、SPCC、SPCCT、SPCD、SPCE、SPCEN等が挙げられる。ステンレス鋼の具体例としては、SUS430、SUS201、SUS304、SUS316、SUS321、SUS403、SUS410等が挙げられる。芯金31は、好ましくは磁性材料により形成されている。
【0056】
磁性ゴム32は、少なくとも第1部分31aの外周面上に配置されている。磁性ゴム32は、ゴム材及び磁性粉を混錬して加硫し、その際に芯金31上に接着されることにより形成される。なお、磁性ゴム32を接着するために、芯金31には予め接着剤が塗布されていることが好ましい。ゴム材には、例えば、NBR、HNBR、FKM、ACM等が用いられる。磁性粉には、例えば、フェライト系、ネオジム系、サマリウム系の磁性粉が用いられる。
【0057】
磁性ゴム32は、N極及びS極が周方向に沿って交互に着磁されている。磁性ゴム32に着磁される磁極の数は、特に限定されない。磁性ゴム32は、径方向において、発電コイル22と間隔を空けて対向している。
【0058】
芯金31と磁性ゴム32とが一体化された後、磁気リング30は、着磁装置の回転チャック(取り付け治具)に装着される。着磁装置は、回転チャックを回転させることにより磁性ゴム32にN極及びS極を交互に着磁させる。この際、磁性ゴム32と対向するように、着磁コイル及びヨークが配置されている。着磁コイルに流れる電流の方向を回転チャックの回転に同期して交互に切り替えることにより、磁性ゴム32にN極及びS極が交互に着磁されることになる。
【0059】
第1止め金具40は、例えば、サークリップである。すなわち、第1止め金具40は、周方向に沿って延在しており、周方向において間隔を空けて互いに対向している両端部を有している。第1止め金具40は、縮径されながら、ステータ21が外輪12に取り付けられている状態で溝12ac内に配置される。第1止め金具40が溝12ac内に配置されると、第1止め金具40は、元の形状に戻ろうとして、外輪12に接触する。この際の径方向に沿った弾性反発力により第1止め金具40が外輪12に取り付けられ、ステータ21(センサユニット20)が外輪12から取り外せなくなる。他方で、第1止め金具40を再び縮径して溝12ac内から取り出せば、ステータ21(センサユニット20)を外輪12から取り外せるようになる。このように、センサユニット20は、第1止め金具40の弾性反発力により、外輪12に着脱可能に取り付けられている(図1B参照)。
【0060】
第2止め金具50は、周方向に沿って延在している環状である。第2止め金具50は、複数の付勢部51を有している。複数の付勢部51は、周方向に沿って間隔を空けて並んでいる。付勢部51は、例えば、板ばねになっている。外周面11dには、溝11dbが形成されている。溝11dbは、周方向に沿って延在している。溝11dbは、軸方向において、内輪軌道面11daと第1端面11aとの間にある。溝11db内には、第2止め金具50が配置されている。
【0061】
第1端面11aには、段差部11aaが形成されている。段差部11aaは、周方向に沿って延在している。段差部11aaは、外周面11dに連なっている。磁気リング30は、第1部分31aの内周面と外周面11dとが対向している状態で、軸方向における一方側(図1A中の右側)から軸方向における他方側(図1A中の左側)に向かって、第2部分31bが段差部11aaに接触するまで、付勢部51からの弾性反発力に抗して押し込まれる。この弾性反発力により、磁気リング30は、内輪11に取り付けられる。
【0062】
他方で、上記の弾性反発力に抗して磁気リング30を引き抜くことにより、磁気リング30が内輪11から取り外される。このようにして、磁気リング30は、第2止め金具50の弾性反発力により、着脱可能に内輪11に取り付けられていることになる(図1B参照)。
【0063】
上記のように、磁気リング30は、内輪11に着脱可能に取り付けられているため、内輪11と共に回転する。また、磁気リング30は、径方向において発電コイル22と間隔を空けて対向しており、かつ周方向に沿ってN極及びS極が交互に着磁されている磁性ゴム32を有している。そのため、内輪11の回転に伴って交番磁束が発電コイル22の周囲に発生し、発電コイル22に誘導起電圧が発生する。
【0064】
図4Aは、図3中のIVにおける第1拡大図である。図4Bは、図3中のIVにおける第2拡大図である。図4Bには、図4Aから磁気リング30が回転した際の状態が示されている。図4A及び図4B中では、磁束が点線の矢印により示されている。図5は、図4A中のV-Vにおける断面図である。図6は、図4B中のVI-VIにおける断面図である。図5中及び図6中では、磁束が点線の矢印により示されている。図4A図4B図5及び図6に示されるように、磁性ゴム32に着磁されている磁極から発生する磁束は、櫛歯部28から発電コイル22の周囲にあるステータ21を通る。これにより、発電コイル22には、誘導起電圧が発生することになる。
【0065】
<センサ付き軸受100の効果>
以下に、センサ付き軸受100の効果を説明する。
【0066】
センサ付き軸受100では、使用時に転がり軸受10に転がり異常等が発生すると、転がり軸受10を交換する必要がある。センサ付き軸受100では、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているとともに磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられているため、転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。その結果、センサ付き軸受100によると、使用継続に伴うコストを低減することができる。
【0067】
<変形例1>
以下に、変形例1に係るセンサ付き軸受100を説明する。ここでは、センサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0068】
図7Aは、付勢部51の近傍における変形例1に係るセンサ付き軸受100の第1拡大断面図である。図7Bは、付勢部51の近傍における変形例1に係るセンサ付き軸受100の第2拡大断面図である。図7A及び図7Bに示されるように、変形例1に係るセンサ付き軸受100では、付勢部51の板ばね形状がセンサ付き軸受100と異なっている。すなわち、付勢部51の板ばね形状は、径方向に沿って弾性反発力を発生させることができるものであれば、特に限定されない。
【0069】
変形例1に係るセンサ付き軸受100でも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているとともに、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられているため、転がり異常等に起因して転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0070】
<変形例2>
以下に、変形例2に係るセンサ付き軸受100を説明する。ここでは、センサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0071】
図8は、変形例2に係るセンサ付き軸受100の断面図である。図8には、図1Aに対応する断面が示されている。図9は、図8中のIXにおける拡大図である。図8及び図9に示されるように、変形例2に係るセンサ付き軸受100では、外周面11dに溝11dbが形成されていない。また、変形例2に係るセンサ付き軸受100では、段差部11aaに、溝11abが形成されている。溝11abは、周方向に沿って延在している。溝11abは、径方向において、外周面11dとは反対側の段差部11aaの端に形成されている。
【0072】
変形例2に係るセンサ付き軸受100では、芯金31が、第3部分31cをさらに有している。第3部分31cは、第1部分31aとは反対側の第2部分31bの端から、軸方向に沿って、筒状に延在している。第3部分31cの外周面は、径方向において、第1部分31aの内周面と間隔を空けて対向している。第3部分31cは、溝11ab内に配置されている。
【0073】
変形例2に係るセンサ付き軸受100では、第2止め金具50が、溝11abの外周面11d側の側面に取り付けられている。より具体的には、第2止め金具50が、溝11abの外周面11d側の側面と第3部分31cの外周面との間に配置されている。また、変形例2に係るセンサ付き軸受100では、付勢部51からの弾性反発力が、径方向内側に向かって第3部分31cに加わっている。すなわち、変形例2に係るセンサ付き軸受100では、付勢部51から第2止め金具50に加わる弾性反発力の方向が、センサ付き軸受100と逆になっている。
【0074】
変形例2に係るセンサ付き軸受100でも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているとともに、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられているため、転がり異常等に起因して転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0075】
<変形例3>
以下に、変形例3に係るセンサ付き軸受100を説明する。ここでは、変形例2に係るセンサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0076】
図10は、変形例3に係るセンサ付き軸受100の断面図である。図10には、図8に対応する断面が示されている。図11は、図10中のXIにおける拡大図である。図10及び図11に示されるように、変形例3に係るセンサ付き軸受100では、第2止め金具50が、溝11abの内周面11c側の側面に取り付けられている。より具体的には、第2止め金具50が、溝11abの内周面11c側の側面と第3部分31cの内周面との間に配置されている。また、変形例3に係るセンサ付き軸受100では、付勢部51からの弾性反発力が、径方向外側に向かって第3部分31cに加わっている。すなわち、変形例3に係るセンサ付き軸受100では、付勢部51から第2止め金具50に加わる弾性反発力の方向が、センサ付き軸受100と同一になっている。
【0077】
変形例3に係るセンサ付き軸受100でも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているとともに、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられているため、転がり異常等に起因して転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0078】
<変形例4>
以下に、変形例4に係るセンサ付き軸受100を説明する。ここでは、変形例2に係るセンサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0079】
図12は、変形例4に係るセンサ付き軸受100の断面図である。図12には、図8に対応する断面が示されている。図13は、図12中のXIIIにおける拡大図である。図12及び図13に示されるように、変形例4に係るセンサ付き軸受100では、第2止め金具50が、サークリップである。
【0080】
変形例4に係るセンサ付き軸受100では、第2止め金具50が、拡径された上で、溝11abに配置されている。そのため、第2止め金具50は、縮径しようとする弾性反発力により、溝11abの内周面11c側の側面に取り付けられていることになる。変形例4に係るセンサ付き軸受100では、第2止め金具50が取り外されている状態で磁気リング30を内輪11から取り外すことができるが、第2止め金具50が取り付けられている状態で磁気リング30を内輪11から取り外すことができない。そのため、変形例4に係るセンサ付き軸受100でも、磁気リング30は、内輪11に着脱可能に取り付けられていることになる。
【0081】
変形例4に係るセンサ付き軸受100でも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているとともに、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられているため、転がり異常等に起因して転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るセンサ付き軸受(以下「センサ付き軸受100A」)を説明する。ここでは、センサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0083】
<センサ付き軸受100Aの構成>
以下に、センサ付き軸受100Aの構成を説明する。
【0084】
図14は、センサ付き軸受100Aの断面図である。図14には、中心軸Aを通り、かつ、軸方向に平行な断面が示されている。図15は、図14中のXVにおける拡大図である。図14及び図15に示されているように、センサ付き軸受100Aは、転がり軸受10と、センサユニット20と、磁気リング30と、第1止め金具40とを有している。この点に関して、センサ付き軸受100Aの構成は、センサ付き軸受100の構成と共通している。
【0085】
センサ付き軸受100Aは、第2止め金具50を有していない。また、センサ付き軸受100Aでは、磁気リング30は、圧入により、内輪11に取り付けられている。すなわち、センサ付き軸受100Aでは、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられていない。これらの点に関して、センサ付き軸受100Aの構成は、センサ付き軸受100の構成と異なっている。
【0086】
<センサ付き軸受100Aの効果>
センサ付き軸受100Aでは、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているため、転がり軸受10を交換する場合でも、センサユニット20を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。通常、センサユニット20のコストは、磁気リング30のコストよりも高い。そのため、センサ付き軸受100Aによると、センサユニット20の再利用が可能であることにより、磁気リング30の再利用ができなくても、使用継続に伴うコストの低減が可能である。
【0087】
<変形例1>
以下に、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aを説明する。ここでは、センサ付き軸受100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0088】
図16は、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。図16には、図14に対応する断面が、示されている。図17は、図16中のXVIIにおける拡大図である。図16及び図17に示されるように、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aでは、第1止め金具40に代えて、ゴム部材60が用いられている。ゴム部材60は、リング状である。ゴム部材60は、例えばOリングである。
【0089】
変形例1に係るセンサ付き軸受100Aでは、ステータ21の外周面に、溝21cが形成されている。溝21cは、周方向に沿って環状に延在している。また、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aでは、段差部12aaに連なっており、かつステータ21の外周面に対向している内周面12cの部分に、溝12ccが形成されている。溝12ccは、径方向において溝21cと対向しており、かつ周方向に沿って環状に延在している。
【0090】
ゴム部材60は、溝12cc内及び溝21c内に配置されている。溝21cにおけるステータ21の外径は、ゴム部材60の内径よりも大きい。そのため、溝12cc内及び溝21c内においてゴム部材60は径方向に沿って圧縮されており、この圧縮に伴うゴム部材60からの径方向に沿う弾性反発力により、センサユニット20(ステータ21)が着脱可能に外輪12に取り付けられることになる。
【0091】
変形例1に係るセンサ付き軸受100Aでも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているため、センサユニット20を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0092】
<変形例2>
以下に、変形例2に係るセンサ付き軸受100Aを説明する。ここでは、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0093】
図18は、変形例2に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。図18には、図16に対応する断面が示されている。図19は、図18中のXIXにおける拡大図である。図18及び図19に示されるように、変形例2に係るセンサ付き軸受100Aでは、ゴム部材60に代えて、複数のプランジャ70が用いられている。
【0094】
プランジャ70は、ステータ21の外周面に形成されている穴に挿入されることによりセンサユニット20に取り付けられている。複数のプランジャ70は、周方向に沿って間隔を空けて並んでいる。プランジャ70は、ピン71と、圧縮コイルばね72とを有している。プランジャ70がセンサユニット20に取り付けられた状態で、ピン71は、ステータ21の外周面から径方向外側に突出した位置にある。ピン71を径方向内側に向かって移動させると、圧縮コイルばね72は、ピン71に対して、径方向外側に向かう弾性反発力を発生させる。
【0095】
プランジャ70は、ピン71が径方向内側に押し込まれた状態で、段差部12aaに連なっており、かつステータ21の外周面に対向している内周面12cの部分に接触している。そのため、センサユニット20は、圧縮コイルばね72からピン71に加わる径方向外側への弾性反発力により、着脱可能に外輪12に取り付けられることになる。
【0096】
変形例2に係るセンサ付き軸受100Aでも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているため、センサユニット20を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0097】
<変形例3>
以下に、変形例3に係るセンサ付き軸受100Aを説明する。ここでは、変形例1に係るセンサ付き軸受100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0098】
図20は、変形例3に係るセンサ付き軸受100Aの断面図である。図20には、図16に対応する断面が示されている。図21は、図20中のXXIにおける拡大図である。図20及び図21に示されるように、変形例3に係るセンサ付き軸受100Aでは、ゴム部材60に代えて、第1止め金具40が用いられている。しかしながら、変形例3に係るセンサ付き軸受100Aでは、第1止め金具40がサークリップではなく、第1止め金具40が複数の付勢部41を有している。
【0099】
複数の付勢部41は、周方向に沿って間隔を空けて並んでいる。付勢部41は、例えば板ばねである。変形例3に係るセンサ付き軸受100Aでは、第1止め金具40が、段差部12aaに連なっている内周面12cの部分とステータ21の外周面との間に配置されており、付勢部41から径方向内側に向かって弾性反発力がステータ21の外周面に加わる。これにより、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられる。
【0100】
変形例3に係るセンサ付き軸受100Aでも、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられているため、センサユニット20を転がり軸受10から取り外して再利用することができる。
【0101】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るセンサ付き軸受(以下「センサ付き軸受100B」)を説明する。ここでは、センサ付き軸受100Aと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0102】
<センサ付き軸受100Bの構成>
以下に、センサ付き軸受100Bの構成を説明する。
【0103】
図22は、センサ付き軸受100Bの断面図である。図22には、中心軸Aを通り、かつ軸方向に平行な断面が示されている。図23は、図22中のXXIIIにおける拡大図である。図22及び図23に示されているように、センサ付き軸受100Bは、転がり軸受10と、センサユニット20と、磁気リング30とを有している。センサ付き軸受100Bは、第2止め金具50を有しておらず、磁気リング30が着脱可能に内輪11に取り付けられていない。これらの点に関して、センサ付き軸受100Bの構成は、センサ付き軸受100Aの構成と共通している。
【0104】
センサ付き軸受100Bは、第1止め金具40を有しておらず、センサユニット20が着脱可能に外輪12に取り付けられていない。より具体的には、センサ付き軸受100Bでは、ステータ21が外輪12に加締められることにより、センサユニット20が外輪12に取り付けられている。この点に関して、センサ付き軸受100Bの構成は、センサ付き軸受100Aの構成と異なっている。なお、センサ付き軸受100Bでは、芯金31が内輪11に加締められることにより、磁気リング30が内輪11に取り付けられていてもよい。
【0105】
<センサ付き軸受100Bの効果>
以下に、センサ付き軸受100Bの効果を説明する。
【0106】
センサ付き軸受100Bでは、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられておらず、磁気リング30が内輪11に着脱可能に取り付けられていないため、転がり軸受10を交換する場合に、センサユニット20及び磁気リング30を転がり軸受10から取り外して再利用することができない。しかしながら、センサ付き軸受100Bでは、センサユニット20により転がり軸受10の異常(例えば、転走面の剥離や微小剥離等)の傾向を検出可能である。そのため、センサ付き軸受100Bによると、転がり軸受10を機能不全(例えば、焼き付きによる回転不能)に至る前に交換することができる。
【0107】
<変形例1>
以下に、変形例1に係るセンサ付き軸受100Bを説明する。ここでは、センサ付き軸受100Bと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0108】
図24は、変形例1に係るセンサ付き軸受100Bの断面図である。図24には、図22に対応する断面が示されている。図25は、図24中のXXVにおける拡大図である。図24及び図25に示されるように、変形例1に係るセンサ付き軸受100Bでは、溶接部81でステータ21が外輪12に固定されることにより、センサユニット20が外輪12に取り付けられている。また、変形例1に係るセンサ付き軸受100Bでは、溶接部82で芯金31が内輪11に固定されることにより、磁気リング30が内輪11に取り付けられている。
【0109】
溶接部81及び溶接部82は、ビーム溶接により形成されている。ビーム溶接には、例えば、レーザ溶接及び電子ビーム溶接が含まれている。レーザ溶接に用いられるレーザの具体例としては、YAGレーザ、COレーザが挙げられる。
【0110】
変形例1に係るセンサ付き軸受100Bでも、センサユニット20により転がり軸受10の異常の傾向を検出可能であるため、転がり軸受10を機能不全に至る前に交換することができる。また、溶接部81及び溶接部82がビーム溶接により形成されているため、変形例1に係るセンサ付き軸受100Bでは、内輪11及び外輪12に対する熱影響を最小限に抑えることができる。
【0111】
<変形例2>
以下に、変形例2に係るセンサ付き軸受100Bを説明する。ここでは、センサ付き軸受100Bと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0112】
図26は、変形例2に係るセンサ付き軸受100Bの断面図である。図26には、図22に対応する断面が示されている。図27は、図26中のXXVIIにおける拡大図である。図26及び図27に示されるように、変形例2に係るセンサ付き軸受100Bでは、接着剤83でステータ21が外輪12に固定されることにより、センサユニット20が外輪12に取り付けられている。また、変形例2に係るセンサ付き軸受100Bでは、接着剤84で芯金31が内輪11に固定されることにより、磁気リング30が内輪11に取り付けられている。
【0113】
接着剤83及び接着剤84は、例えば、嫌気性の接着剤又はエポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン系若しくはフェノール樹脂系の接着剤である。接着剤83及び接着剤84は、特に限定されるものではない。
【0114】
変形例2に係るセンサ付き軸受100Bでも、センサユニット20により転がり軸受10の異常の傾向を検出可能であるため、転がり軸受10を機能不全に至る前に交換することができる。
【0115】
<変形例3>
以下に、変形例3に係るセンサ付き軸受100Bを説明する。ここでは、センサ付き軸受100Bと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0116】
変形例3に係るセンサ付き軸受100Bでは、図示されていないが、圧入でステータ21が外輪12に固定されることにより、センサユニット20が外輪12に取り付けられている。変形例3に係るセンサ付き軸受100Bでも、センサユニット20により転がり軸受10の異常の傾向を検出可能であるため、転がり軸受10を機能不全に至る前に交換することができる。
【0117】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るセンサ付き軸受(以下「センサ付き軸受100C」)を説明する。ここでは、センサ付き軸受100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0118】
<センサ付き軸受100Cの構成>
以下に、センサ付き軸受100Cの構成を説明する。
【0119】
図28は、センサ付き軸受100Cの断面図である。図28には、中心軸Aを通り、かつ軸方向に平行な断面が示されている。図29は、図28中のXXIX-XXIXにおける断面が示されている。図30は、図29に蓋26を重ねて示した図である。図28図29及び図30に示されるように、センサ付き軸受100Cは、転がり軸受10と、センサユニット20と、磁気リング30と、第1止め金具40と、第2止め金具50とを有している。この点に関して、センサ付き軸受100Cの構成は、センサ付き軸受100の構成と共通している。
【0120】
センサ付き軸受100Cでは、センサ24が振動センサである。センサ付き軸受100Cでは、センサ24の振動検出方向(図29中の点線の矢印)が転がり軸受10の荷重負荷方向(図29中の実線の矢印)と一致するように、センサユニット20が外輪12に着脱可能に取り付けられている。
【0121】
センサ付き軸受100Cでは、蓋26に目印26aが設けられている。軸方向に沿って見た際に、目印26aはセンサ24に重なっている。図30に示される例では、丸印を描くことにより目印26aが設けられているが、目印26aの付け方はこれに限られない。なお、モールド樹脂27が回路基板23上にも配置される場合、目印26aは、モールド樹脂27に設けられてもよい。
【0122】
<センサ付き軸受100Cの効果>
以下に、センサ付き軸受100Cの効果を説明する。
【0123】
センサ24の振動検出方向と転がり軸受10の荷重負荷方向とが一致することにより、センサ24により検出される振動値の信頼性が向上する。センサ付き軸受100Cでは、外輪12に取り付ける際に目印26aの位置を確認しながらセンサユニット20を中心軸A回りに回転させることにより、センサ24の振動検出方向と転がり軸受10の荷重負荷方向とを容易に一致させることができる。そのため、センサ付き軸受100Cによると、センサ24により検出される振動値の信頼性を向上させることができる。
【0124】
(その他の実施形態)
上記の各実施形態においては、内輪が回転輪であるとともに外輪が固定輪であるセンサ付き軸受を説明したが、内輪が固定輪であってもよく、外輪が回転輪であってもよい。つまり、内輪及び外輪の一方が回転輪であり、内輪及び外輪の他方が固定輪であればよい。
【0125】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
100,100A,100B,100C センサ付き軸受、10 転がり軸受、11 内輪、11a 第1端面、11aa 段差部、11ab 溝、11b 第2端面、11c 内周面、11d 外周面、11db 溝、11da 内輪軌道面、11db 溝、12 外輪、12a 第1端面、12aa,12ab 段差部、12ac 溝、12b 第2端面、12c 内周面、12ca 外輪軌道面、12cb,12cc 溝、12d 外周面、13 転動体、14 保持器、14a 環状部、14b 柱部、15 シール、20 センサユニット、21 ステータ、21a 第1部材、21aa 第1環状部、21ab 第2環状部、21aba 第1領域、21abb 第2領域、21b 第2部材、21c 溝、22 発電コイル、22a コイルボビン、23 回路基板、23a 電子部品、24 センサ、25 無線通信モジュール、26 蓋、26a 目印、27 モールド樹脂、28 櫛歯部、30 磁気リング、31 芯金、31a 第1部分、31b 第2部分、31c 第3部分、32 磁性ゴム、40 第1止め金具、41 付勢部、50 第2止め金具、51 付勢部、60 ゴム部材、70 プランジャ、71 ピン、72 圧縮コイルばね、81,82 溶接部、83,84 接着剤、A 中心軸。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30