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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147977
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20231005BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20231005BHJP
   F16C 33/41 20060101ALI20231005BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   G08C 17/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C33/76 Z
F16C33/41
G08C17/00 B
G08C17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055790
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智昭
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
【テーマコード(参考)】
2F073
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F073AA35
2F073AA40
2F073AB02
2F073AB11
2F073BB02
2F073BC02
2F073CC01
2F073EE11
2F073FF01
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG05
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB01
3J216AB31
3J216BA30
3J216CA02
3J216CA05
3J216CA06
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB18
3J216CB19
3J216EA03
3J216EA05
3J217JA02
3J217JA15
3J217JA16
3J217JA24
3J217JA32
3J217JA37
3J217JA38
3J217JA39
3J217JA43
3J217JA47
3J217JB14
3J217JB26
3J217JB34
3J217JB55
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701BA25
3J701BA44
3J701BA73
3J701BA77
3J701FA22
3J701FA24
3J701FA41
3J701FA53
(57)【要約】
【課題】軸受の外部への電波の無線送信が安定に可能であるとともに、ガスセンサの検出感度の低下が抑制された軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受装置1は、軸受2と、保持部材12とを備える。保持部材12は、外輪3および内輪4のいずれか一方に固定される。回路基板13は、軸方向について、側板部12Aの表面12fに固定される。回路基板13には、軸受2の状態を検出する少なくとも1つのガスセンサSSRと、上記ガスセンサSSRの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路とが実装される。側板部12Aには貫通孔42が形成され、貫通孔42を覆うように多孔質膜41が装着される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪および転動体を含む軸受と、
保持部材とを備え、
前記保持部材は、前記外輪および前記内輪のいずれか一方に固定され、
前記保持部材は、径方向に幅を有し周方向に沿って延びる側板部を含み、
前記保持部材には、電力を生成可能な電源の少なくとも一部と、回路基板とが固定され、
前記回路基板は、軸方向について、前記側板部の、前記保持部材の前記転動体と対向しない側の面に固定され、
前記回路基板には、前記軸受の状態を検出する少なくとも1つのガスセンサと、前記ガスセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路とが実装され、
前記側板部には、前記転動体に対向する第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面とを結ぶ貫通孔が形成され、
前記貫通孔を覆うように多孔質膜が装着された、軸受装置。
【請求項2】
前記回路基板は非金属の蓋で覆われる、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記多孔質膜は、前記貫通孔の延びる方向に交差する断面を塞ぐように、前記貫通孔内に配置される、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記貫通孔内に前記ガスセンサが配置され、
前記多孔質膜は、前記貫通孔と平面的に重なる位置において、前記貫通孔と間隔をあけて前記貫通孔を覆うように配置される、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記多孔質膜はフッ素樹脂を主成分とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記ガスセンサは、炭素数が8以下のアルデヒドおよびカルボン酸の少なくともいずれかを検出する、請求項1~5のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記軸受は、前記転動体を前記周方向に間隔をあけて複数保持する保持器をさらに含み、
前記保持器は、前記軸方向の一方の端面側が開放され、他方の端面側が連結された形状であり、
前記保持部材は、前記保持器の、前記転動体よりも前記一方の端面側の位置に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記保持部材は金属製である、請求項1~7のいずれか1項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
装置保全のために転がり軸受の状態を監視する目的で、軸受に隣接する位置にセンサを設けた軸受装置が用いられる。当該軸受装置は、センサで検出されたデータを利便性高く送信する目的で、上記データを無線送信可能な構成を有する場合がある。
【0003】
上記軸受装置の一例が、たとえば特開2017-72170号公報(特許文献1)に開示されている。特開2017-72170号公報では、軸受を構成する保持器の、軸方向の一方の端面に多極リング磁石が設けられ、内輪と外輪との間を塞ぐ環状シールが設置され、環状シールの多極リング磁石と対向する側の面に発電用のコイルおよび無線処理回路が設置される。
【0004】
また、上記軸受装置のセンサが、軸受に用いられる潤滑剤の劣化を検出するガスセンサである例が、たとえば国際公開第2017/188314号(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-72170号公報
【特許文献2】国際公開第2017/188314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2017-72170号公報の軸受装置は、仮に環状シールが金属製であれば、無線処理回路から発信される電波が遮断され、軸受の外部に送信できない。発電用のコイルおよび無線処理回路が軸方向の内側(転動体側)を向くように設置されるためである。一方、環状シールを樹脂などの非金属製とするか、あるいは電波が通過するためのスリット等を十分に環状シールに設けることにより、軸受の外部への電波の送信ができる。しかしこの場合、環状シールが樹脂製であるために環状シールの剛性が低下する。このため、軸受装置が振動している状態での軸受装置の作動が阻害される恐れがある。
【0007】
次に、国際公開第2017/188314号公報では、ガスセンサは、軸受を納める筐体の外部に、筐体と距離をあけて設置される。ただしこの場合にはガスセンサと軸受との間隔が広くなるため、ガスセンサの検出感度が低下する恐れがある。
【0008】
本開示は上記の課題に鑑みなされたものである。本開示の目的は、軸受の外部への電波の無線送信が安定に可能であるとともに、ガスセンサの検出感度の低下が抑制された軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従った軸受装置は、軸受と、保持部材とを備える。軸受は、外輪、内輪および転動体を含む。保持部材は、外輪および内輪のいずれか一方に固定される。保持部材は、径方向に幅を有し周方向に沿って延びる側板部を含む。保持部材には、電力を生成可能な電源の少なくとも一部と、回路基板とが固定される。回路基板は、軸方向について、側板部の、転動体と対向しない側の面に固定される。回路基板には、軸受の状態を検出する少なくとも1つのガスセンサと、ガスセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路とが実装される。側板部には、転動体に対向する第1面と、第1面と反対側に位置する第2面とを結ぶ貫通孔が形成される。貫通孔を覆うように多孔質膜が装着される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、軸受の外部への電波の無線送信が安定に可能であるとともに、ガスセンサの検出感度の低下が抑制された軸受装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1の軸受装置の断面図である。
図2】実施の形態2の軸受装置全体の斜視図である。
図3】軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
図4】保持器を説明するための図である。
図5】軸受装置をセンサユニット側から見た図である。
図6】実施の形態2におけるセンサユニットの分解斜視図である。
図7】実施の形態2におけるセンサユニットの組立て後の斜視図である。
図8】実施の形態1における図1のセンサユニットを抜き取った拡大断面図である。
図9】実施の形態3における図10のセンサユニットを抜き取った拡大断面図である。
図10】実施の形態3の第1例における軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
図11】実施の形態3の第2例における軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本実施の形態について説明する。
【0013】
(実施の形態1)
<軸受装置の構成>
図1は、実施の形態1の軸受装置の断面図である。これは、たとえば後述する実施の形態2の図2における回転軸Oを含む平面における断面図に相当する。また図1中にて保持部材12に固定される各部材の位置は実際の位置と必ずしも整合しない。図1を参照して、本実施の形態の軸受装置1は、軸受2と、センサユニット6とを備える。ここで、軸受2は、軸方向の寸法が特定の規格に記載の標準軸受である。標準軸受とは、例えば、ISO規格・JIS規格に記載がある寸法の軸受である。軸受2は、ラジアル軸受であり、軸受2の軸方向の一方の端部から他方の端部までの寸法は、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法である。以下では、軸受2のことを標準軸受2とも称する。
【0014】
軸受2は、外輪3と、内輪4と、転動体8と、保持器9と、シール10とを含む。軸受2は、例えば、外輪3が静止輪となり、内輪4が回転輪となる。軸受2は、深溝玉軸受を一例として説明するが、軸受2の種類は深溝玉軸受に限定されない。軸受2は、軸受2の端面11と転動体8との距離Wがセンサユニット6を収納可能な標準軸受の型番のサイズから選択すればよい。端面11は、外輪3の端面でもある。
【0015】
転動体8は、軸受2の周方向(図1の奥行方向)に間隔をあけて複数配置される。それら複数の転動体8を保持するのが保持器9である。保持器9は樹脂製部材である。保持器9は、軸方向である図1の左右方向の一方の端面側(図1の右側)が開放されている。保持器9は、軸方向の他方の端面側(図1の左側)が連結された形状である。このため図1では、概ね転動体8の中心よりも左側の領域のみに保持器9が配置され、転動体8の中心よりも右側の領域には保持器9が配置されない。
【0016】
センサユニット6は、保持部材12と、回路基板13と、蓋14とを含む。保持部材12は、磁性体材料であり、金属製である。保持部材12は、保持器9の、転動体8よりも一方の端面側(図1の右側)の位置に配置される。すなわち保持部材12は、軸方向について保持器9が開放され保持器9が配置されない側に配置される。保持部材12は、本来保持器9が配置されるべき位置に配置される。
【0017】
保持部材12は、側板部12Aを含む。側板部12Aは、軸受2の径方向(図1の上下方向)に、外輪3から内輪4に至るだけの幅を有する。側板部12Aは、周方向に沿って、すなわち円環状を描くように延びている。すなわち側板部12Aは周方向に(1周分)連続するように延びている。保持部材12は、側板部12Aと、径方向についての外径面、内径面とにより形成される。
【0018】
側板部12Aは保持部材12のうち軸方向の最も転動体8に近い位置(軸受2内における内側)に、転動体8に隣接するように配置される。側板部12Aは転動体8と対向する側の裏面12b(第1面)と、裏面12bと反対側(すなわち転動体8と対向しない側)の表面12f(第2面)とを有する。言い換えれば裏面12bは軸受2の内側を向き、表面12fは軸受2の外側を向く。
【0019】
側板部12Aには、裏面12bと表面12fとを結ぶ貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、軸受2の内部の転動体8に隣接する空間に連なる。貫通孔42を覆うように、多孔質膜41が装着されている。ここでは特に、多孔質膜41は、貫通孔42を軸方向における転動体8側(裏面12b側)から覆うことで、貫通孔42を塞ぐ態様となっている。つまり多孔質膜41は軸方向について貫通孔42を塞いでいる。
【0020】
多孔質膜41は、フッ素樹脂を主成分とする。すなわち多孔質膜41は微量のフッ素樹脂以外の材料を含んでもよいが、その大部分がフッ素樹脂により形成される。多孔質膜41に含まれる孔のサイズ(最大部の径)は、たとえば10nm以上100μm以下であることが好ましく、その中でも100nm以上10μm以下であることがより好ましい。図1において、多孔質膜41は、貫通孔42の延びる方向(軸方向)に交差する断面を塞ぐように、貫通孔42内に配置される。
【0021】
保持部材12には、電力を生成可能な電源PWRの少なくとも一部と、回路基板13とが固定される。なお図1の電源PWRは、たとえば以降の各実施の形態2~4のいずれかにおける電源であってもよいし、それ以外の種類の電源であってもよい。つまり図1の電源PWRは種類を問わない、電源の総称である。回路基板13は、保持部材12の側板部12Aの表面12fに固定される。
【0022】
回路基板13には、軸受2の状態を監視し検出するガスセンサSSRが1つ以上実装されている。なお図1のガスセンサSSRの種類は問わない。ガスセンサSSRは、ガスを検出可能なセンサの総称である。回路基板13には、さらに、ワイヤレス通信回路18が実装されている。
【0023】
ガスセンサSSRとしては、たとえばMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)技術を応用したセンサが用いられる。当該ガスセンサSSRは、特定のガスに反応する感応膜が複数の検知部で支持される構造である。ガスセンサSSRは、感応膜にガスが吸着すれば感応膜が変形する。ガスセンサSSRは、その変形によって誘起される検知部のひずみ(電気抵抗変化)によってガスを検出する。
【0024】
軸受2に用いられる潤滑剤の劣化(酸化)は光、熱、金属などの影響によりアルキルラジカルを生成する反応から始まる。一次生成物および二次生成物として、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルなどが生成される。上記のガスセンサSSRは、上記の生成物を検出可能なセンサである限り、種類は任意である。たとえばガスセンサSSRは、軸受2の潤滑剤が劣化した際に生じる臭いの主成分である、微小量のカルボニル化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)を高精度に検出できるものであってもよい。
【0025】
その中でもガスセンサSSRは、炭素数が8以下のアルデヒドおよびカルボン酸の少なくともいずれかを検出するものであることが好ましい。
【0026】
蓋14は、回路基板13を覆う非金属(樹脂製)の封止部材である。蓋14は、保持部材12に固定される回路基板13を保護し、センサユニット6の内部を保護する。蓋14の代わりに樹脂封止材を用いて回路基板13を封止してもよい。また蓋14は、回路基板13以外の側板部12Aの表面12fに固定された部材(たとえばワイヤレス通信回路18、ガスセンサSSRなど)を併せて保護する。
【0027】
保持部材12の径方向外側の外径面は、外輪3に形成された第1の切欠き部3aに嵌合して固定される。なお特に内輪4が静止輪である場合には、保持部材12は内輪4に固定されてもよい。保持部材12は、外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように、圧入または接着される。なお、保持部材12は、圧入と接着とを併用して固定されてもよいし、これら以外の方法で固定されてもよい。保持部材12を第1の切欠き部3aに固定した際、転動体8と保持部材12との間には一定の隙間が確保される。これにより、転動体8と保持部材12とは、アキシャル方向の変位が生じた場合も隙間により転動体8と保持部材12とが接触しないようにすることができる。
【0028】
保持部材12が外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように配置されることにより、保持部材12に固定された回路基板13および電源PWRも同様に、外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように配置される。なお保持部材12、回路基板13および電源PWRは、内輪4の端面20から軸方向の外側にはみ出さないように配置されることが好ましい。
【0029】
<作用効果>
本開示に係る軸受装置1は、軸受2と、保持部材12とを備える。軸受2は、外輪3、内輪4および転動体8を含む。保持部材12は、外輪3および内輪4のいずれか一方に固定される。保持部材12は、径方向に幅を有し周方向に沿って延びる側板部12Aを含む。保持部材12には、電力を生成可能な電源PWRの少なくとも一部と、回路基板13とが固定される。回路基板13は、軸方向について、側板部12Aの、転動体8と対向しない側の面(表面12f)に固定される。回路基板13には、軸受2の状態を検出する少なくとも1つのガスセンサSSRと、上記ガスセンサSSRの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路18とが実装される。側板部12Aには、転動体8に対向する第1面(裏面12b)と、第1面と反対側に位置する第2面(表面12f)とを結び、転動体8に隣接する空間に連なる貫通孔42が形成される。貫通孔42を覆うように多孔質膜41が装着される。
【0030】
上記軸受装置1において、貫通孔42は、軸受2の外輪3と内輪4との間に形成される内部空間と、ガスセンサSSRが配置された空間とを繋ぐように形成されてもよい。外輪3と内輪4との間に形成される内部空間は、転動体8が配置される空間である。
【0031】
回路基板13が表面12fに固定されることから、回路基板13は軸受2の外側を向くように保持部材12上に固定される。このため、たとえ保持部材12として樹脂よりも剛性の高い金属製のものを用いても、回路基板13に実装されたワイヤレス通信回路18などから発信される電波が遮断され、軸受2の外部に送信できないなどの不具合を抑制できる。つまり軸受2の外部への電波の無線送信が安定に行なえる。
【0032】
ガスセンサSSRの出力信号を受信し、それを無線で外部に送信するワイヤレス通信回路18により、軸受2の外部への電波の無線送信が安定に行なえる。
【0033】
さらに、軸受2の内部にてたとえば潤滑剤の酸化により生じたガスが、多孔質膜41に形成される孔を通過する。多孔質膜41は上記の生成物のガスを通すが、軸受2の内部における摩耗粉、粉塵、油分の侵入を防ぐ。多孔質膜41が側板部12Aの貫通孔42に装着されることで、生成物のガスのみを、軸受2の内部から側板部12Aの表面12f側に通すことができる。これにより、表面12f側のたとえば回路基板13に実装されたガスセンサSSRへ、ガスを供給することができる。したがってガスセンサSSRは高い精度で潤滑剤の生成するガスのみを検出できる。
【0034】
また上記の多孔質膜41の機能により、本実施の形態では、金属異物および潤滑剤が表面12f側の回路基板13(に実装されたワイヤレス通信回路18など)に侵入し、当該回路が短絡または劣化するなどの不具合を抑制できる。
【0035】
以上より本開示に従えば、保持部材12の材質にかかわらず、ガスセンサSSRの検出感度の低下が抑制され、軸受2の外部への電波の無線送信が安定に行なえる軸受装置1を提供できる。
【0036】
上記軸受装置1において、回路基板13は非金属の蓋14で覆われる。これにより、軸受2の内部で生じたガスが回路基板13に実装されたガスセンサSSRへ流れた後に、意図せずガスセンサSSRから逃げることを抑制できる。蓋14がガスの流れをブロックするためである。このため軸受2の内部で生じたガスをより確実にガスセンサSSRに供給することができる。よってガスセンサSSRにおけるガスの検出感度がいっそう高められる。
【0037】
上記軸受装置1において、多孔質膜41は、貫通孔42の延びる方向に交差する断面を塞ぐように、貫通孔42内に配置されることが好ましい。これにより多孔質膜41を通るガスは、貫通孔42を貫通してガスセンサSSRの方へ流れやすくなる。
【0038】
貫通孔42内における多孔質膜41の軸方向の位置は任意である。すなわち多孔質膜41は、図1における貫通孔42内のうち表面12f側(右側)に配置されてもよいし、中央部に配置されてもよい。ただし多孔質膜41は、貫通孔42内のうち裏面12b側(左側)に配置されることがより好ましい。このようにすれば、多孔質膜41は軸受2の内部である外輪3、内輪4、転動体8により近い位置に配置される。このため多孔質膜41は軸受2の内部にて潤滑剤などにより生じたガスが多孔質膜41に達しやすくなる。したがって多孔質膜41から貫通孔42内およびガスセンサSSR側へのガスの侵入がより容易になる。
【0039】
上記軸受装置1において、上記多孔質膜41はフッ素樹脂を主成分とすることが好ましい。このようにすれば、多孔質膜41は軸受2の潤滑剤の酸化により生じたガスのみを通し、回路基板13に実装されたガスセンサSSR側へ侵入させることができる。つまり多孔質膜41は軸受2の内部における摩耗粉、粉塵、油分の、ガスセンサSSRおよび回路基板13上のワイヤレス通信回路18などへの侵入を防ぐ。
【0040】
上記軸受装置1において、ガスセンサSSRは、炭素数が8以下のアルデヒドおよびカルボン酸の少なくともいずれかを検出する。具体的には、ガスセンサSSRが検出するのは、次の表1(鎖状脂肪族アルデヒド)および表2(カルボン酸)に示す化合物のガスであることが好ましい。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1および表2には、低分子量である鎖状脂肪族アルデヒドおよびカルボン酸が示される。これらの化合物は、炭素数が少ないほど沸点が低い(つまり揮発しやすい)。このため炭素数が少ない化合物のガスは、ガスセンサの検出対象に適する。軸受2が使用される温度条件は様々である。転がり軸受の代表的材料は軸受用炭素鋼SUJ2である。SUJ2に標準的熱処理を施し製造される軸受の許容上限温度は120℃程度である。しかし寸法安定化処理を施すことにより、当該軸受は200℃以上でも使用可能となる。このような一般的な軸受の運転条件を考慮すれば、潤滑剤の酸化を検出するための対象生成物としては、炭素数が8以下のアルデヒドおよびカルボン酸が特に好適である。
【0044】
上記軸受装置1において、軸受2は、上記転動体8を周方向に間隔をあけて複数保持する保持器9を含む。保持器9は、軸方向の一方の端面側が開放され、他方の端面側が連結された形状である。保持部材12は、保持器9の、転動体8よりも一方の端面側の位置に配置される。
【0045】
上記軸受装置1では保持器9の軸方向の一方の端面が開放されるため、開放された部分(本来保持器9が配置される部分)に、回路基板13および電源PWRなどを配置するスペースが設けられる。つまり回路基板13および電源PWRを配置するための空間を軸受2の内部に有効に設けられる。また上記スペースに、軸受2の潤滑剤の劣化などの状態を検出するガスセンサSSRを配置することができる。これにより、ガスセンサSSRを軸受2に非常に近い位置に配置できるため、ガスセンサSSRによる確度の高い軸受2の異常の検出ができる。
【0046】
潤滑剤のうち、特に熱および金属(摩耗粉)の影響を受け酸化しやすいのは、軸受2の外輪3、内輪4、転動体8に近い位置に存在する潤滑剤である。このため上記スペースにガスセンサSSRが配置されれば、潤滑剤の酸化による劣化を高精度に検出できる。
【0047】
上記軸受装置1において、保持部材12は金属製であってもよい。
【0048】
保持部材12が金属製であるため、保持部材12は、高い剛性を有するように回路基板13およびそこに設置されるガスセンサSSRを保持できる。したがって振動する軸受2に保持部材12が直接固定されても、ガスセンサSSRの誤作動を抑制できる。このため軸受装置1は、振動が印加する使用環境であっても、ガスセンサSSRによる潤滑剤の劣化の監視、およびガスセンサSSRで検出されたデータの無線送信を安定に行なえる。
【0049】
(実施の形態2)
<軸受装置の構成>
以降の各実施の形態における軸受装置の説明において、既出の実施の形態の軸受装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、特に構成および機能に差異がなければその説明を繰り返さない。実施の形態2では、実施の形態1の軸受装置1に備えられる電源PWRとして、電磁誘導式発電機が用いられる。図2は、実施の形態2の軸受装置全体の斜視図である。図2を参照して、軸受装置1は、軸受2と、センサユニット6と、磁気リング7とを備える。
【0050】
センサユニット6は、保持部材12と、回路基板13と、蓋14と、ステータ5とを含む。保持部材12の側板部12Aのうち、径方向の外側の領域には回路基板13が固定され、保持部材12の全体を含むようにステータ5が配置される。
【0051】
蓋14は、非金属の樹脂製部材であり、センサユニット6の内部を保護する。本実施の形態の蓋14は、図3のようにステータ5以外の領域を覆うように配置されてもよい。あるいは蓋14は、ステータ5を含めて覆うように配置されてもよい。いずれにせよ蓋14は回路基板13を覆う。なお、ガスセンサSSRによるガス検出感度をより高める観点から、ガスセンサSSRと貫通孔42との距離がより近いことが好ましい。このため次に述べる図3では他図でのワイヤレス通信回路18の位置にガスセンサSSRを示している。ただし図3およびそれ以降の各断面図も図1と同様に、保持部材12内の各部材の位置は必ずしも実際の位置を表わさない。
【0052】
ステータ5は、2つの磁性体部材21,22と、ボビン23と、コイル24とを含む。保持部材12の部分が、ステータ5の磁性体部材21として用いられる。
【0053】
磁気リング7は、N極とS極とを周方向に交互に着磁した磁性体部材である。ステータ5は、外輪3に固定され、磁気リング7は、内輪4に固定される。ステータ5と磁気リング7とによって発電機Gが構成される。発電機Gは、クローポール型の発電機であるが、他の構造の発電機であってもよい。図2の一点鎖線は、軸受2の回転軸Oである。
【0054】
図3は、軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図3を参照して、外輪3の一方端の内周面には、実施の形態1と同様に段付きの第1の切欠き部3aが形成される。さらに内輪4の一方端の外周面には、第1の切欠き部3aと対向するように段付きの第2の切欠き部4aが形成される。軸受2の軸方向(アキシャル方向とも称する)において、外輪3から内輪4に亘り、第1の切欠き部3aおよび第2の切欠き部4aにより転動体8へ向けて切欠いた環状の凹部50が形成される。
【0055】
磁気リング7は、芯金7aと、多極磁石7bとを含む。多極磁石7bは、例えば、磁性粉とゴムとを混錬した磁性体材料を芯金7aに加硫接着してから、N極とS極とを軸受2の周方向に交互に着磁したものである。磁気リング7の芯金7aは、剛性を高めるためにフランジ部7cを有している。磁気リング7は、内輪4の外径面4bに圧入等により固定される。フランジ部7cは、内輪4に形成される第2の切欠き部4aに収まる。磁気リング7は、内輪4の端面20からはみ出さないように配置される。
【0056】
環状の凹部50の内部には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が軸受2の径方向に互いに重ならないように配置される。これにより、環状の凹部50の内部に各部品を配置できるため軸受2の軸方向の厚みを抑えることができる。さらに、軸受装置1は、例えば、磁気リング7が内輪4に固定され、対向する位置の外輪3にステータ5が固定される。内輪4および外輪3は、軸受2の軸方向への変動が保持器9と比較し小さいため、発電機Gによって安定した発電量を確保することができる。
【0057】
図4は、保持器を説明するための図である。図4を参照して、保持器9には、環状の保持器本体の軸方向の端面91の周方向に沿って所定ピッチで凹部93が形成される。凹部93の周方向に対向する開口端から突出するように一対の爪部94,94が形成される。凹部93と一対の爪部94,94とによって図3に示す転動体8が収納されるポケット95が形成される。このように、保持器9の形状は、一方の端面91側が開放され、他方の端面92が連結された形状である。保持器9は、樹脂製部材であり、開放側にセンサユニット6と磁気リング7とが端面11および端面20からはみ出さないように配置される。
【0058】
図5は、軸受装置をセンサユニット側から見た図である。図5では、センサユニット6の内部が分かるように蓋14の一部を省略して図示している。図5を参照して、回路基板13には、軸受2の状態を監視するガスセンサSSRが1つ以上実装されている。その他にも、例えば、回路基板13には、加速度センサ15と温度センサ16とが実装されてもよい。
【0059】
回路基板13には、さらに、電源回路17と、ワイヤレス通信回路18とが実装されている。電源回路17は、発電機Gで生成される交流電力を整流して直流電力に変換する。つまり電源回路17は、電源PWR(図1参照)すなわち本実施の形態における発電機G(電磁誘導式発電機)とはまったく別である。ガスセンサSSR、加速度センサ15、温度センサ16、およびワイヤレス通信回路18では、電源回路17によって変換された直流電力が使用される。回路基板13には、端子25が配置されている。
【0060】
ワイヤレス通信回路18は、アンテナ部18aを含む。ワイヤレス通信回路18は、軸受2の潤滑剤の劣化などの状態を監視するガスセンサSSRの出力をアンテナ部18aを用いて無線で外部に送信する。回路基板13は、複数のねじ19により保持部材12に固定されている。なお、回路基板13は、保持部材12に対し接着固定されてもよい。ワイヤレス通信回路18を実装した回路基板13は、樹脂製の蓋14と対向して配置される。これにより、ワイヤレス通信回路18は、金属などの導電性材料で密閉されない構造となる。このため、ワイヤレス通信回路18内のアンテナ部18aを用いて無線通信が可能となる。
【0061】
ワイヤレス通信回路18は演算部18bを含んでもよい。演算部18bは、ガスセンサSSRが検出したガスの成分を分析処理する、たとえば一般公知のCPU(Central Processing Unit)である。図5においては見やすくする観点から、演算部18bはワイヤレス通信回路18の本体に隣接するように配置される。しかしこのような態様に限られない。演算部18bはワイヤレス通信回路18の本体内に、外から見えないように搭載されてもよい。演算部18bは、ガスセンサSSRから受信したガス分析結果のデータを、外部に無線送信する。
【0062】
図6は、実施の形態2におけるセンサユニットの分解斜視図である。図7は、実施の形態2におけるセンサユニットの組立て後の斜視図である。図6および図7を参照して、回路基板13は、保持部材12の側板部12Aの、転動体8と対向しない側の表面12fに固定される。回路基板13は、表面12fのうち径方向の比較的外側の領域に配置される。ステータ5は、ステータ5Aと、ステータ5Bとを含む。ステータ5Aは保持部材12に相当し、磁性体部材21に相当する。ステータ5Bは磁性体部材22に相当する。言い換えれば、ステータ5Aと保持部材12と磁性体部材21とは同一であり、ステータ5Bと磁性体部材22とは同一である。
【0063】
磁性体部材21,22の断面はU字状である。ただし磁性体部材21が保持部材12の全体を占めるのに対し、磁性体部材22は保持部材12の径方向内側の領域に配置される。磁性体部材21のU字状の断面のうち径方向の内側の領域が、磁性体部材22のU字状の断面と互いに対向する。互いに対向する磁性体部材21,22の間に、磁性体部材21,22に囲まれるように、ボビン23を含むコイル24が装着される。磁性体部材21の内周部には、複数の爪部21aが形成される。磁性体部材22の内周部には、複数の爪部22aが形成される。ボビン23の円周方向に設けられた溝には、マグネットワイヤを複数回巻いたコイル24が配置される。ボビン23は省略してもよい。
【0064】
なお先述の実施の形態1における図7のセンサユニットの斜視図に相当するものは、ステータ5、複数の爪部21aおよび爪部22aを有さないが、その他は基本的に図7と同様の態様となる。
【0065】
ステータ5の組立方法について以下に述べる。まず、コイル24を巻いたボビン23を磁性体部材22の内部に挿入した状態で、磁性体部材21の複数の爪部21aと磁性体部材22の複数の爪部22aとが周方向に隙間を開けて交互に配置されるように組立てる。次いで、磁性体部材22の外周面22bを、その端部が磁性体部材21の側板部12Aの表面12fに接触するように固定する。このとき磁性体部材21と磁性体部材22との開口部が互いに対向し、その開口部内にボビン23およびコイル24が収納される態様となる。
【0066】
磁性体部材21の複数の爪部21aおよび磁性体部材22の複数の爪部22aは、図3に示す磁気リング7の多極磁石7bとの隙間が確保された状態で、対向して配置される。ステータ5における磁性体部材21の複数の爪部21aおよび磁性体部材22の複数の爪部22aと磁気リング7とによってクローポール型の発電機Gが構成される。複数の爪部21a,22aを合わせた数は、多極磁石7bの極数(N極とS極を合わせた数)と等しい。
【0067】
多極磁石7bのN極から出た磁束は、例えば、磁極である複数の爪部21a(または複数の爪部22a)から磁性体部材21(または磁性体部材22)に入り、コイル24の周りを回って隣接する複数の爪部22a(または複数の爪部21a)を経由し多極磁石7bのS極に戻る。内輪4の回転によって多極磁石7bのN極とS極との位置が入れ替わると磁束の向きが逆になる。このようにして発生する交番磁界により、コイル24の両端に交流電力が発生する。
【0068】
ステータ5から引き出されたコイル24の巻き始めおよび巻き終わりの図示しない各端部は、回路基板13に設けられた端子25に接続される。内輪4が回転することによって発電機Gから出力される交流電力は、電源回路17によって直流電力に変換される。
【0069】
軸受装置1のセンサユニット6は、隔壁(図示しない)により保持部材12の径方向について、領域が2分割されてもよい。この場合も上記と同様、径方向の外側の領域には回路基板13が配置され、内側の領域にはクローポール型の発電機Gにおけるステータ5が配置される。磁気リング7は、ステータ5と対向する内径側に配置される。
【0070】
<作用効果>
本実施の形態において、実施の形態1と同様に、多孔質膜41および貫通孔42を有し、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。すなわち、回路基板13は非金属の蓋14で覆われる。これにより、軸受2の内部で生じたガスが回路基板13に実装されたガスセンサSSRへ流れた後に、意図せずガスセンサSSRから逃げることを抑制できる。蓋14がガスの流れをブロックするためである。
【0071】
本実施の形態の軸受装置1において、電源PWR(図1参照)は、外輪3および内輪4のいずれか一方とは異なる他方に固定される磁気リング7と、磁気リング7と軸受2の径方向に対向するように保持部材12に装着されるコイル24とを有する電磁誘導式発電機(発電機G)である。磁気リング7には、多極磁石7bとして、複数の永久磁石が固定されてもよいし、複数の磁極を有する磁性体が固定されてもよい。
【0072】
軸受装置1は、ラジアル方向にステータ5と磁気リング7とが配置されクローポール型の発電機Gを構成する。このため、ステータ5および磁気リング7は、発電機Gによって安定した発電量を確保することができる。ここで発電された電力はワイヤレス通信回路18で使用可能となるため、軸受2の外部への電波の無線送信が安定に可能となる。
【0073】
なお本実施の形態に係る軸受装置1は、保持部材12には、電力を生成可能な電源の一部のみが固定される。電源としての発電機Gとは電磁誘導式発電機であるが、これは磁気リング7とステータ5とを含む。ステータ5は保持部材12に固定される。保持部材12がステータ5の一部であるステータ5Aであり、ステータ5を構成するボビン23,コイル24が保持部材12に固定されるためである。一方、磁気リング7はステータ5と対向し、回転輪である内輪4側に固定される。つまり磁気リング7は保持部材12には固定されない。したがって発電機Gのうち磁気リング7を除く部材のみが保持部材12に固定される。
【0074】
本実施の形態の軸受装置1において、ワイヤレス通信回路18は演算部18bを含む。ワイヤレス通信回路18は保持部材12に固定される回路基板13に実装され、保持部材12は軸受2に含まれる外輪3および内輪4のいずれか一方に固定される。このため演算部18bは保持器9の開放されたスペースに配置される。演算部18bは、ガスセンサSSRから受信したガス分析結果のデータを、外部に無線送信する。保持器9の開放されたスペースにガスセンサSSRと演算部18bとの双方が配置されるため、ガスセンサSSRから演算部18bまでの距離が短くなる。このため演算部18b(ワイヤレス通信回路18)から外部に送信されるガス分析結果のデータの信頼性が高められる。演算部18bでのデータの受信感度が高まるためである。
【0075】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態1における図1のセンサユニットを抜き取った拡大断面図である。図9は、実施の形態3における図10のセンサユニットを抜き取った拡大断面図である。図8および図9を参照して、実施の形態1と実施の形態3とは、裏面12bから表面12fまで側板部12Aを貫通する貫通孔42が形成され、軸方向について多孔質膜41が貫通孔42を覆うように装着される点において共通する。ただし実施の形態1では、多孔質膜41は貫通孔42内に配置されるのに対し、実施の形態3では、多孔質膜41は貫通孔42の外側に、貫通孔42と間隔をあけて配置されている。この点において実施の形態3は実施の形態1とは異なる。
【0076】
図10は、実施の形態3の第1例における軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図10を参照して、実施の形態3ではガスセンサSSRが、貫通孔42内に配置される。このようにするために、ガスセンサSSRは、側板部12Aの固定される回路基板13の、(裏面12bと同じく)転動体8に対向する側の面上に実装されている。この点において実施の形態3は、ガスセンサSSRが回路基板13の(表面12fと同じく)転動体8に対向する側と反対側の面上に実装される実施の形態1と異なっている。
【0077】
本実施の形態では、多孔質膜41は、貫通孔42に対して浮かぶように形成されている。つまり裏面12bのうち貫通孔42に隣接する領域の上に多孔質膜41が接合される。この多孔質膜41は貫通孔42を軸方向における転動体8側から覆っている。ただし多孔質膜41は貫通孔42と重なる領域においては貫通孔42に隣り合う裏面12b上の領域に比べて裏面12bから離れるように屈曲した断面形状である。これにより多孔質膜41は、貫通孔42と平面的に重なる位置において、貫通孔42と軸方向について間隔をあけて貫通孔42を覆うように配置される。
【0078】
図11は、実施の形態3の第2例における軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図11を参照して、図10の第1例では図1と同様の電源PWRが示されるのに対し、図11の第2例では図3と同様のクローポール型の発電機Gが用いられる。ただし図11の多孔質膜41およびガスセンサSSRは図10と同様である。
【0079】
本実施の形態の各例のように、ガスセンサSSRは、保持部材12の側板部12Aに設けた貫通孔42から挿入され、外輪3の第1の切欠き部3aの端面に近接(または接触)させるように、回路基板13の裏面(軸受2の内側にある転動体8を向く面)に実装してもよい。これにより、ガスセンサSSRが外輪3に近づき、軸受2の潤滑剤の劣化を正確に検出することができる。多孔質膜41による作用効果は、実施の形態1,2と同様である。
【0080】
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 軸受装置、2 軸受、3 外輪、3a 第1の切欠き部、4 内輪、4a 第2の切欠き部、4b 外径面、5,5A,5B ステータ、6 センサユニット、7 磁気リング、7a 芯金、7b 多極磁石、7c フランジ部、8 転動体、9 保持器、10 シール、11,20,91,92 端面、12 保持部材、12A 側板部、12b 裏面、12f 表面、13 回路基板、14 蓋、15 加速度センサ、16 温度センサ、17 電源回路、18 ワイヤレス通信回路、18a アンテナ部、18b 演算部、19 ねじ、21,22 磁性体部材、21a,22a 爪部、23 ボビン、24 コイル、25 端子、31 蓄電池、41 多孔質膜、42 貫通孔、50 環状の凹部、93 凹部、94 爪部、95 ポケット、PWR 電源、SSR ガスセンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11