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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147980
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】微細気泡発生器
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/23 20220101AFI20231005BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20231005BHJP
   B01F 25/312 20220101ALI20231005BHJP
   B01F 25/45 20220101ALI20231005BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
B01F23/23
B01F23/2373
B01F25/312
B01F25/45
B01F25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055793
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】湯地 実
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB04
4G035AB20
4G035AB27
4G035AC23
4G035AC26
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】管径に関わらず良好な微細気泡を発生させる。
【解決手段】流路形成空間Cの内面に設けられ下流側に向かって縮径する第1テーパ部12と、下流側に向かって拡径する第2テーパ部15と、第1テーパ部12及び第2テーパ部15に対向して配置される上流側部材30と、上流側部材30よりも下流側に配置される下流側部材40とを備え、上流側部材30は、その外面に下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部31を備えて、第1テーパ部12との間で第1流路部51を、第2テーパ部15との間で第2流路部52を構成し、下流側部材40は、その外面に下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部43を備えて、第2テーパ部15との間で第4流路部54を構成し、第2流路部52と第4流路部54との間に、流路の断面積が大きく流路内に負圧を発生させる第3流路部53を備えている微細気泡発生器とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間(C)を有するケーシング(11)と、
前記流路形成空間(C)の内面に設けられ上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部(12)と、
前記流路形成空間(C)の内面の前記第1テーパ部(12)よりも下流側に設けられ上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部(15)と、
前記第1テーパ部(12)及び前記第2テーパ部(15)に対向して配置される上流側部材(30)と、
前記上流側部材(30)よりも下流側に配置される下流側部材(40)と、
を備え、
前記上流側部材(30)は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部(31)を備えて、前記第1テーパ部(12)との間で第1流路部(51)を、前記第2テーパ部(15)との間で第2流路部(52)を構成し、
前記下流側部材(40)は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部(43)を備えて、前記第2テーパ部(15)との間で第4流路部(54)を構成し、
前記第2流路部(52)と前記第4流路部(54)との間に、前記第2流路部(52)及び前記第4流路部(54)よりも流路の断面積が大きく流路内に負圧を発生させる第3流路部(53)を備えている微細気泡発生器。
【請求項2】
前記上流側部材(30)と前記下流側部材(40)とを結ぶ連結部(35)を備え、
前記連結部(35)の外面(36)は、前記上流側外周テーパ部(31)及び前記下流側外周テーパ部(43)よりも前記第2テーパ部(15)から遠い位置にあり、
前記第3流路部(53)は、前記連結部(35)の外面(36)、前記第2テーパ部(15)、前記上流側部材(30)の下流側端面(33)、及び、前記下流側部材(40)の上流側端面(42)との間に形成されている請求項1に記載の微細気泡発生器。
【請求項3】
前記第3流路部(53)における前記上流側部材(30)の下流側端面(33)と前記上流側外周テーパ部(31)の母線との成す角(α,β)は鋭角である請求項2に記載の微細気泡発生器。
【請求項4】
前記上流側部材(30)の下流側端面(33)は、前記第2テーパ部(15)から遠ざかるにつれて上流側に近づく傾斜面(34)である請求項2又は3に記載の微細気泡発生器。
【請求項5】
弁装置(60)の上流側に第1流体通路(74)が、下流側に第2流体通路(77)が接続され、
前記第1流体通路(74)から引き出された流入管(1)に微細気泡発生器(10)の上流側端が接続され、前記第2流体通路(77)から引き出された流出管(2)に前記微細気泡発生器(10)の下流側端が接続されている微細気泡発生器付き弁装置ユニット。
【請求項6】
前記弁装置(60)の下流側におけるキャビテーションの発生を防止するために、外部からの気体を導入する気体導入管(78)が前記第2流体通路(77)に接続されている請求項5に記載の微細気泡発生器付き弁装置ユニット。
【請求項7】
前記第2流体通路(77)の管軸方向に対する前記第2流体通路(77)と前記流出管(2)との接続位置は、前記第2流体通路(77)の管軸方向に対する前記第2流体通路(77)と前記気体導入管(78)との接続位置と重複している請求項5又は6に記載の微細気泡発生器付き弁装置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細気泡を利用して、水質浄化や養殖場における生物の発育促進等を図る技術が増えつつある。微細気泡とは、液体中に介在する微細な径の気泡の集合であり、一般に直径100μm以下の気泡を有するものをいう。また、微細気泡はその気泡の大きさにより区別され、例えば、直径1~100μmの気泡はマイクロバブル、さらに微細な気泡は、マイクロナノバブルやナノバブル等と呼ばれている。
【0003】
微細気泡を発生させる装置として、例えば、特許文献1、2に記載された微細気泡発生器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-28305号公報
【特許文献2】特開2008-246441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、従来の微細気泡発生器は、その装置が大掛かりなものとなってしまうという問題点があった。具体的には、
(1)給気をする必要がある。
(2)小口径管にのみ用いられる。
という問題があった。
【0006】
特許文献1は、装置本体の入口と出口との間に、ジェット噴出孔とキャビテーション発生室、排出孔を備えたものである。ジェット噴出孔の内径を、入口側の流路の内径よりも小さく絞ったので、入口から装置本体の内部に導入された液体は、ジェット噴出孔からキャビテーション発生室に勢いよく流れ込む。これにより、キャビテーション発生室内では静圧が著しく低下してキャビテーションが発生し、内部に溶け込んでいた空気と液体の蒸気とからなる微細な気泡が生成するとされている。この技術では給気を行っていないので、上記(1)の問題は解消している。しかし、大口径管には対応できないため、上記(2)の問題は解決されていない。
【0007】
また、特許文献2は、液体を流す管路内に第1の加速部材と第2の加速部材を備えている。第1の加速部材は、その外周面に管路の内部断面積を次第に狭めることにより、液体を高速流となす傾斜面を有している。第2の加速部材は、第1の加速部材の下流側に位置し、管路内に負圧を発生させる空隙部を半径方向に有する小径なくびれ部を備えている。高速流が、空隙部と第2の加速部材の終端の設置位置を通過するのに伴って負圧が発生し、その負圧によってキャビテーションが発生するとされている。しかし、この技術も同様に大口径管には対応できないため、上記(2)の問題は解決されていない。
【0008】
そこで、この発明の課題は、管径に関わらず良好な微細気泡を発生できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間を有するケーシングと、前記流路形成空間の内面に設けられ上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部と、前記流路形成空間の内面の前記第1テーパ部よりも下流側に設けられ上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部と、前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部に対向して配置される上流側部材と、前記上流側部材よりも下流側に配置される下流側部材とを備え、前記上流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部を備えて、前記第1テーパ部との間で第1流路部を、前記第2テーパ部との間で第2流路部を構成し、前記下流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部を備えて、前記第2テーパ部との間で第4流路部を構成し、前記第2流路部と前記第4流路部との間に、前記第2流路部及び前記第4流路部よりも流路の断面積が大きく流路内に負圧を発生させる第3流路部を備えている微細気泡発生器を採用した。
【0010】
ここで、前記上流側部材と前記下流側部材とを結ぶ連結部を備え、前記連結部の外面は、前記上流側外周テーパ部及び前記下流側外周テーパ部よりも前記第2テーパ部から遠い位置にあり、前記第3流路部は、前記連結部の外面、前記第2テーパ部、前記上流側部材の下流側端面、及び、前記下流側部材の上流側端面との間に形成されている構成を採用することができる。
【0011】
このとき、前記第3流路部における前記上流側部材の下流側端面と前記上流側外周テーパ部の母線との成す角は鋭角であることが望ましい。
【0012】
また、前記上流側部材の下流側端面は、前記第2テーパ部から遠ざかるにつれて上流側に近づく傾斜面であることがさらに望ましい。
【0013】
これらの各態様からなる微細気泡発生器、あるいは、その他の微細気泡発生器を用い、以下の各構成からなる弁装置ユニットを採用することができる。すなわち、弁装置の上流側に第1流体通路が、下流側に第2流体通路が接続され、前記第1流体通路から引き出された流入管に、前述の下記態様のいずれかからなる微細気泡発生器の上流側端が接続され、前記第2流体通路から引き出された流出管に前記微細気泡発生器の下流側端が接続されている微細気泡発生器付き弁装置ユニットである。
【0014】
上記の態様において、さらに、前記弁装置の下流側におけるキャビテーションの発生を防止するために、外部からの気体を導入する気体導入管が前記第2流体通路に接続されている構成を採用することができる。
【0015】
また、前記第2流体通路の管軸方向に対する前記第2流体通路と前記流出管との接続位置が、前記第2流体通路の管軸方向に対する前記第2流体通路と前記気体導入管との接続位置と重複している構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、管径に関わらず良好な微細気泡を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の第1の実施形態を示す縦断面図
図2】同実施形態の斜視図
図3】この発明の第2の実施形態を示す縦断面図
図4図3の内部部材を示す斜視図
図5】微細気泡発生器を用いた弁装置ユニットの斜視図
図6】弁装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、この発明の第1の実施形態を、図3及び図4は、この発明の第2の実施形態を示している。
【0019】
微細気泡発生器10は、その内部に上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間Cを有するケーシング11を、上流側流路1(流入管1)と下流側流路2(流出管2)との間に介在させることによって、容易に設置することができる。ケーシング11と上流側流路及び下流側流路2との接続構造は、図1に示すような圧入の形態でもよいし、その他の周知の構造を採用してよい。流路形成空間Cには、水等の液体が流通する。
【0020】
ケーシング11は、その流路の方向(以下、流路の軸心方向、又は、単に軸心方向と称する)に沿って、上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部12と、上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部15を備えている。第2テーパ部15は第1テーパ部12よりも下流側に設けられ、第1テーパ部12と第2テーパ部15との間は、内径側へ向かって(流路の軸心側へ向かって)鈍角状に突出する稜線部18となっている。稜線部18は、軸心を通る任意の縦断面において、滑らかな円弧状である。この第1テーパ部12、稜線部18、及び、第2テーパ部15によって、流路形成空間Cの内面を構成している。なお、流路形成空間Cの軸心方向両端部は、上流側流路1及び下流側流路2の各流路空間3,4の内面に連続する円筒面16,17となっている。
【0021】
この流路形成空間C内に、内部部材20が配置されている。この実施形態では、内部部材20をケーシング11とは別体の部材として成型した上で、その内部部材20を、接着等の周知の手法でケーシング11に一体に固定しているが、これを、ケーシング11と一体の部材として成型してもよい。
【0022】
内部部材20は、第1テーパ部12及び第2テーパ部15に対向して配置される上流側部材30と、上流側部材30よりも下流側に配置される下流側部材40とを備えている。上流側部材30は、第1テーパ部12から第2テーパ部15にかけて跨って対向配置されているが、下流側部材40は、第2テーパ部15のみに対向して配置されている。また、上流側部材30と下流側部材40とは連結部35で連結されている。連結部35は、第2テーパ部15のみに対向して配置されている。
【0023】
上流側部材30は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部31と、その上流側外周テーパ部31の裾部を閉じる下流側端面33を備えた円錐状の部材である。上流側外周テーパ部31の先端(上流側端部)32は、先鋭な形状となっている。ただし、この先端32の形状を滑らかな球面状としてもよい。この実施形態では、上流側外周テーパ部31は、上流側部材30の先端32から下流側端面33の外縁まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。上流側外周テーパ部31の上流寄りの部分は、それに対向する第1テーパ部12との間で第1流路部51を構成している。上流側外周テーパ部31の下流寄りの部分は、それに対向する第2テーパ部15との間で第2流路部52を構成している。この実施形態では、第2テーパ部15と第2流路部52とは、その母線同士が互いに平行になるように設定されている。
【0024】
第1流路部51は、流路の流れ方向に沿って徐々に縮径する第1テーパ部12と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部31との間で、しだいに流路の断面積が縮小する形態となっている。また、第2流路部52は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部15と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部31との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部15の母線と上流側外周テーパ部31の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、流れ方向に沿って徐々に外径側へ移動するからである。
【0025】
下流側部材40は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部43と、その下流側外周テーパ部43の裾部を閉じる下流側端面45、下流側外周テーパ部43の上流側端部に設けられる上流側端面42を備えた円錐台状の部材である。この実施形態では、下流側外周テーパ部43は、下流側部材40の上流側端から下流側端まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。また、その下流側外周テーパ部43の周方向に沿って、断続的に複数の保持部44が設けられている。下流側外周テーパ部43は、それに対向する第2テーパ部15との間で第4流路部54を構成している。第4流路部54は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部15と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する下流側外周テーパ部43との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部15の母線と下流側外周テーパ部43の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、徐々に外径側へ移動するからである。ただし、第4流路部54は、周方向に沿って断続的に設けられた複数の保持部44によって、複数の流路部に分断されている。
【0026】
保持部44は、図1及び図2に示すように、流れ方向に沿って円弧状に伸びる側面44aを対に備え、その側面44a,44a同士がつながる上流側端44cが鋭角状に形状された舟形を成している。これにより、流体の流れを阻害しないようになっている。なお、この実施形態では、保持部44の下流側端も鋭角状を成している。保持部44の頂面44bは第2テーパ部15に当接して、下流側部材40の軸心がケーシング11の軸心に一致するように保持している。この実施形態では、保持部44の頂面44bと第2テーパ部15とを接着固定している。
【0027】
第2流路部52と第4流路部54との間には、第2流路部52及び第4流路部54よりも流路の断面積が大きく、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる第3流路部53を備えている。
【0028】
第3流路部53は、上流側部材30と下流側部材40とを結ぶ連結部35の外面36と、第2テーパ部15、上流側部材30の下流側端面33、及び、下流側部材40の上流側端面42との間に形成されている。連結部35の外面36は、上流側外周テーパ部31及び下流側外周テーパ部43よりも第2テーパ部15から遠い位置にある。すなわち、連結部35の外面36は、上流側外周テーパ部31及び下流側外周テーパ部43よりも、流路の軸心に近い位置にある。このため、第2流路部52から第3流路部53に流体が流れ込む際に、第2流路部52から第3流路部53へと流路の断面積が急激に大きくなるので、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる。この特徴の組み合わせにより、ある程度の流体圧(水圧)の流れがあれば、簡単に多量なキャビテーションが発生し、内部に溶け込んでいた空気と液体の蒸気とからなる微細な気泡を大量に生じさせることができる。すなわち、従来のような小口径管に限定されず、任意の口径の流路において、良好な微細気泡の生成を行うことができる。
【0029】
ここで、流体が第3流路部53に至るまでに、第1流路部51は、流路の流れ方向に沿って、しだいに流路の断面積が縮小する形態であり、この断面の縮小により、流体が下流側へ流れ込む勢いが高められている。続く第2流路部52は、流路の軸心方向への長さは第1流路部51よりも短いものの、流路の流れ方向に沿ってやや外径方向に広がりながら(やや流路の断面積が拡大しながら)、第3流路部53に向かって流体をスムーズに誘導する。このような形態も、多量のキャビテーションの発生に寄与している。また、互いに逆勾配で構成された第1テーパ部12と第2テーパ部15がベンチュリ機構を構成して、そのベンチェリ機構のすぐ下流側に、第3流路部53を構成する段差(上流側部材30の上流側外周テーパ部31と下流側端面33、及び、連結部35の外面36等で構成された段差)を設けたことも、多量のキャビテーションの発生に寄与している。
【0030】
ここで、第3流路部53における上流側部材30の下流側端面33と、上流側外周テーパ部31の母線との成す角は鋭角であることが望ましい。流路が鋭角に屈曲することで負圧の発生状況がより顕著となる。また、この第1の実施形態では、上流側部材30の下流側端面33は、第2テーパ部15から遠ざかるにつれて上流側に近づく傾斜面34を備えた構成としているので、その鋭角をさらに小さくして(図1中の鋭角α参照)、キャビテーションの発生度合いを高めている。なお、この実施形態では、傾斜面34を下流側端面33の軸回り全周に設けているが、傾斜面34を下流側端面33の軸回り一部の方位にのみ設けてもよい。
【0031】
この発明の第2の実施形態を、図3及び図4に基づいて説明する。装置の主たる構成は前述の実施形態と共通するので、以下、その差異点を中心に説明する。
【0032】
この実施形態の微細気泡発生器10は、ケーシング11と下流側流路2とが、フランジ5,6を介して接続されている。フランジ5,6間は面接触状態でボルト及びナット等で締め付け固定されている。また、フランジ5,6間にパッキンを配置しているので、内部の液密性が高められている。ケーシング11と上流側流路1との接続構造は、第1の実施形態と同様であるが、ケーシング11と上流側流路1も、下流側と同様のフランジ接続としてもよい。
【0033】
内部部材20の下流側部材40は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部43と、その下流側外周テーパ部43の下流側に設けられた外周円筒面46を備えた形態となっている。また、保持部44は、その外周円筒面46の周方向に沿って、断続的に複数設けられている。保持部44がケーシング11に設けられた周方向凹部19に入り込むことで、下流側部材40はケーシング11に保持されている。
【0034】
ここで、第3流路部53における上流側部材30の下流側端面33と、上流側外周テーパ部31の母線との成す角は鋭角(図3中の鋭角β参照)となっている。ただし、下流側端面33に、第1の実施形態のような傾斜面34を設定していないが、この第2の実施形態においても、下流側端面33に傾斜面34を設定することで、鋭角βをさらに小さな鋭角α(α<β)にすることができる。
【0035】
なお、上記の各実施形態では、内部部材20を構成する上流側部材30、下流側部材40及び連結部35を一体の部材として成型したが、これらを別体の部材として成型し、それを互いに接続して一体化してもよい。
【0036】
上記の各実施形態等からなる微細気泡発生器10を用いた弁装置ユニットの構成について説明する。
【0037】
図5に示すように、弁装置60の上流側に第1流体通路74が、下流側に第2流体通路77が接続されている。上流側から下流側に向かって、第1流体通路74、弁装置60、第2流体通路77は、流体通路の一部を構成している。実施形態では、流体通路として水を排出する排水路を想定している。
【0038】
第1流体通路74から引き出された流入管1に微細気泡発生器10の上流側端が接続されている。また、第2流体通路77から引き出された流出管2に前記微細気泡発生器10の下流側端が接続されている。すなわち、弁装置60を通る流体通路と、微細気泡発生器10を通る流体通路とはそれぞれ別ルート、すなわち並列に配置されている。
【0039】
ここで、流入管1及び流出管2の管径(直径)は、第2流体通路77から下流側へ向かう流体(実施形態では水)に、必要な量の微細気泡を導入することができる大きさに決定される。通常は、流入管1及び流出管2の管径(直径)は、第1流体通路74及び第2流体通路77の管径(直径)に対して充分に小さいものとなっている。また、実施形態では、図5に示すように、流出管2が2本並列に設置されているので、微細気泡発生器10から流出する微細気泡入りの流体が、第2流体通路77内の流体に円滑に分散するようになっている。流出管2は、1本であってもよいし、必要に応じて実施形態のように2本あるいは3本以上というように、複数本設けることも可能である。
【0040】
図6に、弁装置60の一例を示す。ここでは、弁装置60として流量調整弁を採用し、特に、スリーブ弁(リンクスリーブ弁)を採用している。ただし、弁装置60としては、それ以外にも、例えば、偏心バタフライ弁等の各種の弁装置60を採用できる。
【0041】
スリーブ弁からなる弁装置60は、図6に示すように、円筒状を成す弁箱61の一端に流入側である第1流体通路74が、他端に流出側である第2流体通路77が接続されている。弁箱61内に、第1流体通路74側が閉塞されたシリンダ62が同一軸に設けられている。シリンダ62内に周壁一部が多孔(複数の弁孔)63cを有するスリーブ弁体63が同一軸上に移動可能に設けられている。弁箱61内に流体の流れ方向に直交して弁軸65が挿入されている。弁軸65は、図示しないハンドルや駆動機によって軸回りに回転される。
【0042】
スリーブ弁体63は円筒状であって、上流側がシリンダ62に嵌って摺動するガイド部63aであり、下流側がその外周部に複数の弁孔63cが螺旋状に配列された多孔部63bとなっている。ガイド部63aは多孔部63bよりも僅かに大径であり、その境が下流側へ向かって下り勾配の段差となっている。この下り勾配の段差がスリーブ弁体63の弁座64aとなっている。弁座64aは、スリーブ弁体63の移動により、同一傾斜面の弁箱弁座64bに当接することによって、スリーブ弁を閉弁するようになっている。
【0043】
弁軸65には、その径方向(軸周り)のクランク67aが固着され、そのクランク67aの先端にコンロッド67bが回転自在に連結されてリンク機構67を構成している。コンロッド67bの先端はスリーブ弁体63のボス68に回転自在に連結されている。このため、弁軸65が軸回りに回転すると、リンク機構67を介してスリーブ弁体63は、流路の流れ方向に沿って(図6の左右方向)に移動する。この移動に伴い、スリーブ弁体63の弁孔63cがスリーブ弁体63の軸方向移動で順々に開閉され、弁座64a及び弁箱弁座64bが当接していない開弁状態では、第1流体通路74からの流体が、弁箱61内周面とシリンダ62の外周面との間隙66から、弁孔63cを通ってスリーブ弁体63内に流れ込んで第2流体通路77へに流出していく。なお、図6では、弁軸65の軸心、すなわち、弁軸65へのクランク67aの固定点(回転中心)が、弁箱61の配管方向中心線c上にあり、クランク67aとコンロッド67bの連結点a、及び、コンロッド67bとぼる68との連結点bは、配管方向中心線cから一方向側へずれている(オフセットしている)態様となっている。これらの弁軸65へのクランク67aの固定点(回転中心)、連結点a、連結点bの配置、あるいは、リンク機構67の構成は、適宜変更できる。
【0044】
この実施形態では、弁装置60の下流側におけるキャビテーションの発生を防止するために、外部からの気体を導入する気体導入管78が、第2流体通路77に接続されている。気体導入管78は、第2流体通路77から上方に立ち上がり、管外の気体供給源に接続されている。実施形態では、管内に空気を導入することを想定しており、気体導入管78の上流側は大気開放されている。なお、必要に応じて、気体導入管78に開閉弁を取り付けてもよい。
【0045】
ここで、第2流体通路77の管軸方向に対する第2流体通路77と流出管2との接続位置と、第2流体通路77の管軸方向に対する第2流体通路77と気体導入管78との接続位置は、第2流体通路77の管軸方向に対して重複するように設定されている。図5では、第2流体通路77への接続部における流出管2の管軸を符号xで示し、第2流体通路77への接続部における気体導入管78の管軸を符号yで示している。図5の実施形態では、第2流体通路77への接続部における流出管2の管軸xと、第2流体通路77への接続部における気体導入管78の管軸yが、第2流体通路77の管軸方向に対して一致している。これにより、微細気泡入りの流体の第2流体通路77内の流体への分散が、さらに円滑になる。ただし、管軸xと管軸yが完全に一致していなくとも、第2流体通路77への流出管2の開口範囲(接続位置)と、第2流体通路77への気体導入管78の開口範囲(接続位置)が、第2流体通路77の管軸方向に対して重複していれば、上記の分散円滑化の効果が期待できる。なお、弁装置60が流路の末端付近に設置される場合や、キャビテーション発生の危惧が少ない場合は、気体導入管78の設置を省略できる。ここで、微細気泡発生器10は、各実施形態や図1図4に示す態様には限定されず、それ以外の各種の微細気泡発生装置や微細気泡生成器等も適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 上流側流路(流入管)
2 下流側流路(流出管)
10 微細気泡発生器
11 ケーシング
12 第1テーパ部
15 第2テーパ部
20 内部部材
30 上流側部材
31 上流側外周テーパ部
33 下流側端面
34 傾斜面
35 連結部
36 外面
40 下流側部材
42 上流側端面
43 下流側外周テーパ部
51 第1流路部
52 第2流路部
53 第3流路部
54 第4流路部
60 弁装置
74 第1流体通路
77 第2流体通路
78 気体導入管
図1
図2
図3
図4
図5
図6