(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147983
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】圧電膜集積デバイス、その製造方法、及び音響振動センサ
(51)【国際特許分類】
H10N 30/80 20230101AFI20231005BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231005BHJP
H04R 17/02 20060101ALI20231005BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20231005BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20231005BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20231005BHJP
H10N 30/076 20230101ALI20231005BHJP
H10N 30/079 20230101ALI20231005BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L41/04
H04R17/00
H04R17/02
H04R31/00 Z
H04R17/00 332B
H01L41/113
H01L41/187
H01L41/316
H01L41/319
H01L41/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055799
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522127678
【氏名又は名称】I-PEX Piezo Solutions株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】古田 裕典
(72)【発明者】
【氏名】小酒 達
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴人
(72)【発明者】
【氏名】谷川 兼一
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】北島 由隆
(72)【発明者】
【氏名】小▲西▼ 晃雄
(72)【発明者】
【氏名】金森 広晃
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 猛
【テーマコード(参考)】
5D004
5D019
【Fターム(参考)】
5D004AA01
5D004BB01
5D004DD01
5D004DD02
5D004EE00
5D004GG00
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB17
5D019FF01
5D019HH01
(57)【要約】
【課題】同一基板上に2種類以上の単結晶圧電膜を設けることで圧電膜集積デバイスの性能を向上させる。
【解決手段】圧電膜集積デバイスは、基板(33)と、基板(33)上に設けられた第1の電極(34a)と、基板(33)上に設けられた第2の電極(34b)と、第1の電極(34a)上に設けられた第1の単結晶圧電膜(15)としての単結晶PZT膜と、第2の電極(34b)上に設けられ、第1の単結晶圧電膜(15)の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜(25)としての単結晶AlN膜と、第1の単結晶圧電膜(15)上に設けられた第3の電極(16)と、第2の単結晶圧電膜(25)上に設けられた第4の電極(26)とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1の電極と、
前記基板上に設けられた第2の電極と、
前記第1の電極上に設けられた第1の単結晶圧電膜と、
前記第2の電極上に設けられ、前記第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜と、
前記第1の単結晶圧電膜上に設けられた第3の電極と、
前記第2の単結晶圧電膜上に設けられた第4の電極と、
を有することを特徴とする圧電膜集積デバイス。
【請求項2】
前記基板は、前記第1の単結晶圧電膜及び前記第2の単結晶圧電膜の下部領域に設けられた振動板を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項3】
前記基板は、Si基板とSiO2部と単結晶Si部とを有するSOI基板であり、
前記振動板は、前記SiO2部と前記単結晶Si部とを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項4】
前記第1の単結晶圧電膜は、単結晶PZT膜、又は単結晶KNN膜、又は単結晶チタン酸バリウム膜であり、
前記第2の単結晶圧電膜は、単結晶AlN膜、又は単結晶タンタル酸リチウム膜、又は単結晶ニオブ酸リチウム膜である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項5】
前記第1の単結晶圧電膜は、前記第1の電極の表面に平行な結晶面である(001)面を持つエピタキシャル成長膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項6】
前記第1の単結晶圧電膜は、前記第1の電極の表面に平行な結晶面である(001)面を持ち、前記第1の電極の表面に貼り付けられているエピタキシャル成長膜である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項7】
前記第1の電極上に形成されているSRO膜を更に有し、
前記第1の単結晶圧電膜は、前記SRO膜の表面に平行な結晶面である(001)面を持ち、前記SRO膜の表面上に形成されているエピタキシャル成長膜である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項8】
前記第2の単結晶圧電膜は、前記第2の電極の表面に平行な結晶面である(0001)面を持つエピタキシャル成長膜であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項9】
前記第2の単結晶圧電膜は、前記第2の電極の表面に平行な結晶面である(0001)面を持ち、前記第2の電極の表面に貼り付けられているエピタキシャル成長膜である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項10】
前記第2の電極上に形成されているSRO膜を更に有し、
前記第2の単結晶圧電膜は、前記SRO膜の表面に平行な結晶面である(0001)面を持ち、前記SRO膜の表面上に形成されているエピタキシャル成長膜である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項11】
前記第1の単結晶圧電膜の結晶c軸方向と前記第2の単結晶圧電膜の結晶c軸方向とは平行関係にある
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の前記圧電膜集積デバイスを有し、
前記第1の単結晶圧電膜は、音波及び超音波の少なくとも一方からなる音響振動波を出力し、
前記第2の単結晶圧電膜は、前記音響振動波の反射波を検出する
ことを特徴とする音響振動センサ。
【請求項13】
成長基板の第1の結晶面上に、第1の単結晶圧電膜を含む第1のエピタキシャル成長膜を成長させ、
他の成長基板の第2の結晶面上に、前記第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜を含む第2のエピタキシャル成長膜を成長させ、
電極を有する基板上に前記成長基板から剥がされた前記第1のエピタキシャル成長膜を貼り付け、前記基板上に前記他の成長基板から剥がされた前記第2のエピタキシャル成長膜を貼り付ける
ことを特徴とする圧電膜集積デバイスの製造方法。
【請求項14】
電極を有する基板の第1の結晶面上に、第1の単結晶圧電膜を含む第1のエピタキシャル成長膜を成長させ、
成長基板の第2の結晶面上に、前記第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜を含む第2のエピタキシャル成長膜を成長させ、
前記基板の前記電極上に前記成長基板から剥がされた前記第2のエピタキシャル成長膜を貼り付ける
ことを特徴とする圧電膜集積デバイスの製造方法。
【請求項15】
成長基板の第1の結晶面上に、前記第1の単結晶圧電膜を含む第1のエピタキシャル成長膜を成長させ、
電極を有する基板の第2の結晶面上に、前記第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜を含む第2のエピタキシャル成長膜を成長させ、
前記基板の前記電極上に前記成長基板から剥がされた前記第1のエピタキシャル成長膜を貼り付ける
ことを特徴とする圧電膜集積デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記第1の単結晶圧電膜の結晶c軸方向と前記第2の単結晶圧電膜の結晶c軸方向とは平行関係にある
ことを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の圧電膜集積デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電膜集積デバイス、その製造方法、及び音響振動センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる種類の多結晶圧電膜を同一基板上に形成し、超音波センサを構成するものが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置において、同一基板上に複数の多結晶圧電膜を配置した場合には、高性能な圧電膜集積デバイスを得ることができない。
【0005】
本開示は、同一基板上に2種類以上の単結晶圧電膜を設けた高性能な圧電膜集積デバイス及びその製造方法、並びに、圧電膜集積デバイスを有する音響振動センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の圧電膜集積デバイスは、基板と、前記基板上に設けられた第1の電極と、前記基板上に設けられた第2の電極と、前記第1の電極上に設けられた第1の単結晶圧電膜と、前記第2の電極上に設けられ、前記第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜と、前記第1の単結晶圧電膜上に設けられた第3の電極と、前記第2の単結晶圧電膜上に設けられた第4の電極と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、同一基板上に2種類以上の単結晶圧電膜を設けることで圧電膜集積デバイス及び音響振動センサの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す上面図である。
【
図3】
図2の圧電膜集積デバイスをS3-S3線で切る断面図である。
【
図4】
図1の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す下面図である。
【
図5】単結晶圧電膜である単結晶PZT膜を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図5の単結晶PZT膜の結晶構造を示す図である。
【
図7】
図5のエピタキシャル成長膜の結晶構造を概略的に示す図である。
【
図8】単結晶圧電膜である単結晶AlN膜を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図9】(A)は、
図8の単結晶SRO膜、単結晶Pt、及び単結晶ZrO
2の結晶の(111)面を概略的に示す図であり、(B)は、単結晶SROの結晶の格子定数を示す図である。
【
図10】(A)は、
図8の単結晶AlN膜の結晶構造を概略的に示す図であり、(B)は、単結晶AlNの結晶の格子定数を示す図である。
【
図11】
図1の圧電膜集積デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】(A)及び(B)は、
図11のステップST102における第1の電極及び第2の電極の構造を概略的に示す断面図及び上面図である。
【
図13】(A)及び(B)は、
図11のステップST103における第1のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す上面図及び断面図である。
【
図14】(A)及び(B)は、
図11のステップST104における第1のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す上面図及び断面図である。
【
図15】
図11のステップST105における第1のエピタキシャル成長膜の保持プロセスを概略的に示す断面図である。
【
図16】
図11のステップST105における犠牲層のエッチングプロセスを概略的に示す断面図である。
【
図17】(A)及び(B)は、
図11のステップST106における第2のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す上面図及び断面図である。
【
図18】(A)及び(B)は、
図11のステップST107における第2のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す上面図及び断面図である。
【
図19】
図11のステップST108における第2のエピタキシャル成長膜の保持プロセスを概略的に示す断面図である。
【
図20】
図11のステップST108における犠牲層のエッチングプロセスを概略的に示す断面図である。
【
図21】
図11のステップST109における第1のエピタキシャル成長膜と第2のエピタキシャル成長膜の貼り付けプロセスを概略的に示す断面図である。
【
図22】
図11のステップST110における圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す断面図である。
【
図23】第1の単結晶圧電膜である単結晶PZT膜の結晶c軸と第2の単結晶圧電膜である単結晶AlN膜の結晶c軸を示す図である。
【
図24】実施の形態1に係る半導体集積デバイスを用いた音響振動センサの構成を概略的に示す図である。
【
図25】音響振動センサの動作原理を示す図である。
【
図26】実施の形態1の変形例に係る圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す側面図である。
【
図27】
図26の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す上面図である。
【
図28】
図27の圧電膜集積デバイスをS28-S28線で切る断面図である。
【
図29】
図26の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す下面図である。
【
図30】実施の形態2に係る圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す側面図である。
【
図31】
図30の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す上面図である。
【
図32】
図31の圧電膜集積デバイスをS32-S32線で切る断面図である。
【
図33】
図30の圧電膜集積デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図34】
図33のステップST203における第1のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図35】
図33のステップST204における第1のエピタキシャル成長膜(個片)の構造を概略的に示す断面図である。
【
図36】
図33のステップST208における第1のエピタキシャル成長膜(個片)と第2のエピタキシャル成長膜(個片)の構造を概略的に示す断面図である。
【
図37】
図33のステップST209における圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す断面図である。
【
図38】実施の形態3に係る圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す側面図である。
【
図39】
図38の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す上面図である。
【
図40】
図39の圧電膜集積デバイスをS40-S40線で切る断面図である。
【
図41】
図38の圧電膜集積デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図42】
図41のステップST303における第2のエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図43】
図41のステップST304における第2のエピタキシャル成長膜(個片)の構造を概略的に示す断面図である。
【
図44】
図41のステップST308における第1のエピタキシャル成長膜(個片)と第2のエピタキシャル成長膜(個片)の構造を概略的に示す断面図である。
【
図45】
図41のステップST309における圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す断面図である。
【
図46】単結晶PZT膜を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図47】単結晶AlN膜を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
【
図48】実施の形態1の変形例1に係る圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す断面図である。
【
図49】
図48の圧電膜集積デバイスの構造を概略的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る圧電膜集積デバイス、その製造方法、及び音響振動センサを、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。本出願において、圧電膜集積デバイスは、同じ基板上に2個以上の単結晶圧電膜を設けたデバイスである。また、本出願において、音響振動センサは、音響振動波を出力し、音響振動波の反射波を検出することで検出対象物の状態(例えば、距離、形状、動きなど)を検出するセンサである。音響振動センサは、「超音波センサ」とも呼ばれる。一般には、また、本出願において、音響振動波は、音波及び超音波の少なくとも一方からなる。すなわち、音響振動波は、音波、又は超音波、又は音波及び超音波の両方からなる。
【0010】
《1》実施の形態1
《1-1》圧電膜集積デバイス100の構造
図1は、実施の形態1に係る圧電膜集積デバイス100の構造を概略的に示す側面図である。
図2は、圧電膜集積デバイス100の構造を概略的に示す上面図である。
図3は、
図2の圧電膜集積デバイス100をS3-S3線で切る断面図である。
図4は、圧電膜集積デバイス100の構造を概略的に示す下面図である。
【0011】
圧電膜集積デバイス100は、基板としてのSOI基板33と、SOI基板33上に設けられた第1の電極としての白金(Pt)膜34aと、SOI基板33上に設けられた第2の電極としてのPt膜34bとを有している。
図2に示されるように、Pt膜34a及び34bは、SOI基板33に形成された配線層を通してコネクタ40に接続されている。SOIは、Silicon On Insulatorである。また、SOI基板33内には、圧電膜集積デバイス100を駆動して音響振動波を発生させるための駆動回路及び音響振動波の検出信号を用いた処理を行う処理回路などが形成されてもよい。
【0012】
圧電膜集積デバイス100は、Pt膜34a上に設けられた第1の単結晶圧電膜としての単結晶PZT膜15と、Pt膜34b上に設けられ、第1の単結晶圧電膜の結晶構造と異なる結晶構造を持つ第2の単結晶圧電膜としての単結晶AlN膜25とを有している。PZTは、チタン酸ジルコン酸鉛である。AlNは、窒化アルミニウムである。第1の単結晶圧電膜としては、単結晶PZT膜15の代わりに、単結晶ニオブ酸カリウムナトリウム(単結晶KNN)膜又は単結晶チタン酸バリウム(単結晶BaTiO3)膜などのような他の単結晶材料からなる圧電膜を用いてもよい。第2の単結晶圧電膜としては、単結晶AlN膜25の代わりに、単結晶タンタル酸リチウム(単結晶LiTaO3)膜又は単結晶ニオブ酸リチウム(単結晶LiNbO3)膜などのような他の単結晶材料の圧電膜を用いてもよい。第1の単結晶圧電膜は、音響振動波を発生させる圧電体であり、第2の単結晶圧電膜の振動振幅より大きい振動振幅が得られる圧電体であることが望ましい。第2の単結晶圧電膜は、音響振動波(又はその反射波)を検出する圧電体であり、第1の単結晶圧電膜の検出感度より高い検出感度の圧電体であることが望ましい。
【0013】
また、圧電膜集積デバイス100は、単結晶PZT膜15上に設けられた第3の電極としてのPt膜16と、単結晶AlN膜25上に設けられた第4の電極としてのPt膜26とを有している。さらに、圧電膜集積デバイス100は、絶縁膜35a及び35bと、その上に形成された配線膜36a及び36bを有している。
【0014】
SOI基板33は、Si基板30と、絶縁膜としての酸化シリコン(SiO2)部31と、単結晶シリコン(単結晶Si)部32とを有している。SiO2部31及び単結晶シリコン(単結晶Si)部32の単結晶PZT膜15及び単結晶AlN膜25の下部領域(すなわち、圧電膜に重なる領域)にSi基板30をエッチングすることで穴71及び穴72が形成され、穴71、72(キャビティ)が形成された領域に位置するSiO2部31及び単結晶シリコン(単結晶Si)部32が振動板としての機能を持つ。また、Si基板30と異なる材料である酸化シリコン(SiO2)部31を形成し、エッチングストップ層としての機能を持たせることで、エッチングの影響による振動板の厚みのばらつきを防止することができる。基板として、SOI基板33の代わりに、ガラス基板又は有機膜基板のような他の材料からなる基板を用いてもよい。SOI基板33のSi基板30には、SiO2部31を露出させる穴71及び72が形成されている。穴71及び72は、単結晶PZT膜15及び単結晶AlN膜25の形状にそれぞれ対応する開口形状である円形に形成されている。単結晶PZT膜15で発生した音響振動波は、穴71から出力され、単結晶AlN膜25は穴72を通して音響振動波の反射波を検出する。
【0015】
単結晶PZT膜15は、Pt膜34aの表面に平行な結晶面である(001)面を持ち、Pt膜34aの表面に貼り付けられているエピタキシャル成長膜である。単結晶AlN膜25は、Pt膜34bの表面に平行な結晶面である(0001)面を持ち、Pt膜34bの表面に貼り付けられているエピタキシャル成長膜である。単結晶PZT膜15の厚さは、一般には、10nm~10μmの範囲内であり、望ましくは、100nm~5μmの範囲内である。また、単結晶AlN膜25の厚さは、一般には、10nm~10μmの範囲内であり、望ましくは、100nm~2μmの範囲内である。Pt膜34aとPt膜34bとは、同じSOI基板33の上面に形成されている。Pt膜34aの表面とPt膜34bの表面とは、互いに平行関係にある。Pt膜34aの表面(上面)と単結晶PZT膜15の結晶面である(001)面とは、分子間力によって接合されている。Pt膜34bの表面(上面)と単結晶AlN膜25の結晶面である(0001)面とは、分子間力によって接合されている。これらの接合には、接着剤を用いる必要はない。これらを分子間力により良好に接合するためには、Pt膜34aとPt膜34bの表面粗さが、10nm以下であることが望ましい。このために、Pt膜34aとPt膜34bの表面を平滑化する処理を行ってもよい。
【0016】
また、単結晶PZT膜15の結晶c軸方向と単結晶AlN膜25の結晶c軸方向とは平行関係にある。これに関しては、
図23を用いて後述される。
【0017】
《1-2》単結晶PZT膜の構造
図5は、単結晶PZT膜15を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
図6は、
図5の単結晶PZT膜15の結晶構造を示す図である。
図7は、
図5のエピタキシャル成長膜の結晶構造を概略的に示す図である。なお、
図7において、縦方向の寸法は横方向の寸法より大きく縮小されている。
【0018】
図5のエピタキシャル成長膜は、単結晶Si基板である成長基板11上に形成される。
図5のエピタキシャル成長膜は、単結晶の酸化ジルコニウム(ZrO
2)膜12、単結晶のPt膜13、単結晶のSRO膜14、単結晶PZT膜15、及び単結晶のPt膜16を、この順に積層させた構造を持つ。成長基板11は、その上面が(100)面である基板の一例である。ZrO
2膜12は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、上面が(100)面である配向膜の一例である。Pt膜13は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、上面が(100)面である導電膜の一例である。SRO膜14は、SrRuO
3膜(ルテニウム酸ストロンチウム膜)であり、配向膜の一例である。単結晶PZT膜15は、振動出力用の単結晶圧電膜の一例である。単結晶PZT膜15が、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を含む場合に、単結晶PZT膜15を、成長基板11上で、正方晶表示で(001)配向させ、エピタキシャル成長させることができる。単結晶PZT膜15上には、さらに、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したPt膜16がエピタキシャル成長される。
【0019】
「ZrO2膜12が(100)配向している」とは、立方晶の結晶構造を有するZrO2膜12の(100)面が、成長基板11の(100)面に沿って形成されていること、すなわち、成長基板11の(100)面に平行であることを意味する。また、「平行である」とは、成長基板11の上面とZrO2膜12の(100)面とのなす角度が20°以下である場合を含む。また、「配向」の意味は、他の膜の間でも同様である。
【0020】
成長基板11の単結晶Siの格子定数、ZrO2膜12のZrO2の格子定数、Pt膜13のPtの格子定数、SRO膜14のSROの格子定数、及び、単結晶PZT膜15の単結晶PZTの格子定数を、表1に示す。
【0021】
【0022】
Siの格子定数は、0.543nmであり、ZrO
2の格子定数は、0.511nmであり、Siの格子定数に対するZrO
2の格子定数の不整合は、6.1%と小さいため、Siの格子定数に対するZrO
2の格子定数の整合性がよい。そのため、模式図である
図7に示されるように、配向膜であるZrO
2膜12を、成長基板11の(100)面よりなる主面にエピタキシャル成長させることができる。したがって、ZrO
2膜12を、成長基板11の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、ZrO
2膜12の結晶性を向上させることができる。
【0023】
ZrO2膜12は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜である場合、ZrO2膜12は、成長基板11の主面である上面に沿った<100>方向が、成長基板11の上面に沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
【0024】
なお、ZrO2膜12の、成長基板11の上面に沿った<100>方向が、成長基板11の上面に沿った<100>方向と平行であるとは、ZrO2膜12の<100>方向が基板11の上面に沿った<100>方向と完全に平行な場合のみならず、酸化ジルコニウム膜12の<100>方向と成長基板11の上面に沿った<100>方向とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。また、ZrO2膜12のみならず、他の層の膜の面内の配向についても同様である。
【0025】
一方、表1に示されるように、ZrO2の格子定数は、0.511nmであり、Ptの格子定数は、0.392nmであるが、Ptが平面内で45°回転すると、対角線の長さは、0.554nmとなり、ZrO2の格子定数に対する当該対角線の長さの不整合は、8.1%と小さい。このため、Pt膜13を、ZrO2膜12の(100)面上にエピタキシャル成長させることができる。
【0026】
また、表1に示されるように、Ptの格子定数は、0.392nmであり、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、Ptの格子定数に対する単結晶PZTの格子定数の不整合は、0.5%以下と小さい。このため、Ptの格子定数に対するSROの格子定数の整合性がよく、
図7に示されるように、SRO膜14を、Pt膜13の(100)面上にエピタキシャル成長させることができる。したがって、SRO膜14を、Pt膜13の(100)面上に、擬立方晶表示で(100)配向させることができ、SRO膜14の結晶性を向上させることができる。
【0027】
単結晶PZT膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZT膜を含む場合、チタン酸ジルコン酸鉛膜は、チタン酸ジルコン酸鉛膜の成長基板11上面に沿う<100>方向が、成長基板11の上面に沿うの<100>方向と平行になるように、配向する。
【0028】
(001)配向した単結晶PZT膜15上に、Pt膜16を(100)配向のエピタキシャル成長を行い、電極として成膜する。単結晶PZT膜15上の電極膜は、最上層であるから、他の製造方法で形成してもよい。
【0029】
《1-3》単結晶AlN膜の構造
図8は、単結晶圧電膜である単結晶AlN膜25を含むエピタキシャル成長膜の構造を概略的に示す断面図である。
図9(A)は、単結晶のSRO膜、単結晶のPt膜、及び単結晶のZrO
2膜の結晶の(111)面を概略的に示す図であり、
図9(B)は、単結晶SROの結晶の格子定数を示す図である。
図10(A)は、単結晶AlN膜25の結晶構造を概略的に示す図であり、
図10(B)は、単結晶AlN膜25の結晶の格子定数を示す図である。
【0030】
図8のエピタキシャル成長膜は、例えば、単結晶Si基板である成長基板21上に形成される。エピタキシャル成長膜は、ZrO
2膜22、Pt膜23、SRO膜24、単結晶AlN膜25、及びPt膜26を、この順に積層させた構造を持つ。成長基板21は、その上面が(111)面である基板の一例である。ZrO
2膜22は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、上面は(111)面である配向膜の一例である。Pt膜23は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、上面は(111)面である導電膜の一例である。SRO膜24は、SrRuO
3膜である。単結晶AlN膜25は、振動検出用(すなわち、入力用)の単結晶圧電膜の一例である。Pt膜26は、上部電極の一例である。
図9(A)には、SRO立方晶の(111)面を上から俯瞰した形状が示されている。また、
図10(A)には、AlN六方晶の結晶面である(0001)面を上から俯瞰した形状が示されている。
【0031】
単結晶AlN膜25が窒化アルミニウムの六方晶で構成される場合、単結晶AlN膜25を成長基板21上で、六方晶表示で(0001)配向させ、エピタキシャル成長させることができる。単結晶AlN膜25上には、さらに、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したPt膜26をエピタキシャル成長させることができる。
【0032】
「ZrO2膜22が(111)配向している」とは、立方晶の結晶構造を有するZrO2膜22の(111)面が、成長基板21の(111)面に沿っていること、すなわち、成長基板21の(111)面に平行であることを意味する。また、「平行」とは、ZrO2膜22の(111)面が成長基板21の主面とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。また、他の層の間の配向についても同様である。
【0033】
Siの格子定数、ZrO2の格子定数、Ptの格子定数、SROの格子定数、及び単結晶AlNの格子定数を、表2に示す。
【0034】
【0035】
Siの格子定数は、0.543nmであり、ZrO
2の格子定数は、0.511nmであり、Siの格子定数に対するZrO
2の格子定数の不整合は、6.1%と小さいため、Siの格子定数に対するZrO
2の格子定数の整合性がよい。そのため、ZrO
2膜22を、成長基板21の(111)面よりなる主面にエピタキシャル成長させることができる。したがって、ZrO
2膜22を、成長基板21の(111)面上に、立方晶の結晶構造で(111)配向させることができ、ZrO
2膜22の結晶性を向上させることができる。
図9(A)に立方晶の(111)面を示す。
【0036】
配向膜であるZrO2膜22が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(111)配向した酸化ジルコニウム膜である場合、ZrO2膜12は、成長基板21の主面である上面に沿う<111>方向が、成長基板21の上面に沿う<111>方向と平行になるように、配向する。
【0037】
なお、ZrO2膜22の、成長基板21の上面に沿う<111>方向が、成長基板21の上面に沿う<111>方向と平行であるとは、ZrO2膜22の<111>方向が成長基板21の上面に沿う<111>方向と完全に平行な場合のみならず、ZrO2膜22の<111>方向と成長基板21の上面に沿う<111>方向とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。また、他の層の膜の間の配向についても同様である。
【0038】
一方、ZrO2の格子定数は、0.511nmであり、Ptの格子定数は、0.392nmであるが、Ptが平面内で45°回転すると、対角線の長さは、0.554nmとなり、ZrO2の格子定数に対する当該対角線の長さの不整合は、8.1%と小さいため、Pt膜23を、ZrO2膜22の(111)面上にエピタキシャル成長させることができる。
【0039】
また、Ptの格子定数は、0.392nmであり、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、Ptの格子定数に対するSROの格子定数の整合性がよい。そのため、
図9(A)及び(B)5に示されるように、SRO膜24を、Pt膜23の(111)面上にエピタキシャル成長させることができる。したがって、SRO膜24を、Pt膜23の(111)面上に、擬立方晶表示で(111)配向させることができ、SRO膜24の結晶性を向上させることができる。SRO膜の(111)面の対角線の長さは、0.552~0.556nmであり、
図8に示されるように、AlN六方晶の幅0.539nmに対する不整合は、2.8%と小さく、単結晶AlN膜25をSRO膜24(111)面上に(0001)配向でエピタキシャル成長させることができる。
【0040】
単結晶AlN膜25が、六方晶の結晶構造を有し、且つ、(0001)配向した窒化アルミニウム膜を含む場合、単結晶AlN膜25の成長基板21上面に沿う<111>方向が、成長基板21の上面の<111>方向と平行になるように、配向する。
図10(A)及び(B)に、六方晶の(0001)面を示す。(0001)配向した単結晶AlN膜25上にさらに、Pt膜26を(111)配向のエピタキシャル成長を行い電極として成膜する。単結晶AlN膜25上の電極膜は、最上層であるから、他の製法で形成してもよい。
【0041】
《1-4》製造方法
単結晶Siの上面が(100)面である成長基板11に成膜した単結晶PZT膜15と、単結晶Siの上面が(111)面である成長基板21に成膜した単結晶AlN膜25とを用いて、圧電膜集積デバイス100を製造する方法を説明する。
【0042】
【0043】
先ず、デバイス基板であるSOI基板33に配線層を形成する(ステップST101)。次に、
図12(A)及び(B)に示されるように、SOI基板33の主面に第1の電極としてのPt膜34a及び第2の電極としてのPt膜34bを形成する。
【0044】
また、
図13(A)及び(B)に示されるように、第1の成長基板である成長基板11上に、SRO膜14、単結晶PZT膜15、Pt膜16をエピタキシャル成長させ(ステップST103)、
図14(A)及び(B)に示されるように、単結晶PZT膜15の形状をエッチングにより円形状にする(ステップST104)。その後、
図15に示されるように、単結晶PZT膜15とPt膜16からなる個片を保持部材としてのスタンプ80で保持し、
図16に示されるように、犠牲層であるSRO膜14をエッチングして、個片を剥がし、デバイス基板であるSOI基板33上に移動する(ステップST105)。
【0045】
また、
図17(A)及び(B)に示されるように、第2の成長基板である成長基板21上に、SRO膜24、単結晶AlN膜25、Pt膜26をエピタキシャル成長させ(ステップST106)、
図18(A)及び(B)に示されるように、単結晶AlN膜25の形状をエッチングにより円形状にする(ステップST107)。その後、
図19に示されるように、単結晶AlN膜25とPt膜26からなる個片を保持部材としてのスタンプ80で保持し、
図20に示されるように、犠牲層であるSRO膜24をエッチングして、個片を剥がし、SOI基板33上に移動する(ステップST108)。
【0046】
次に、
図21に示されるように、第1の電極であるPt膜34a上に単結晶PZT膜15とPt膜16からなる個片(第1のエピタキシャル成長膜)を貼り付け、第2の電極であるPt膜34b上に単結晶AlN膜25とPt膜26からなる個片(第2のエピタキシャル成長膜)を貼り付ける(ステップST109)。次に、単結晶PZT膜15とPt膜16上に絶縁膜35aと配線膜36aとを形成し、単結晶AlN膜25とPt膜26上に絶縁膜35bと配線膜36bとを形成する。
【0047】
図23は、第1の単結晶圧電膜である単結晶PZT膜15と第2の単結晶圧電膜である単結晶AlN膜25の結晶c軸を示す図である。
図23に示されるように、貼り付けの際に、AlNの六方晶とPZTの立方晶の位相関係が図のようにc軸が平行となるように配置することで単結晶PZT膜15の圧電振動駆動と単結晶AlN膜25の圧電振動受信の効率が最大化される。
【0048】
貼り付け後に、SOI基板33上に絶縁膜35a及び35bを形成し、各電極に配線膜36a及び36bを形成して所定の配線パターンに接続する。
【0049】
図24に示されるように、SOI基板33をSiO
2部31までエッチングすることで圧電素子の裏側を薄くし、振動板を生成する。振動板の厚みは、SOI基板33の各層厚をコントロールすることで所望の厚さにすることが可能である。
【0050】
《1-5》音響振動センサ
図24は、実施の形態1に係る半導体集積デバイスを用いた音響振動センサの構成を概略的に示す。
図25は、音響振動センサの動作原理を示す。単結晶PZT膜15の上下電極が駆動受信回路41に接続され、単結晶PZT膜15の電極に対して可聴域の周波数又は可聴域より高い周波数の交流バイアスを印加することで、単結晶PZT膜15が厚み方向に振動し、SiO
2部31も同様に振動する。それに伴い、音響振動波が、放射され、検知対象物90で跳ね返された反射波が単結晶AlN膜25の貼り付けられたSOI基板33の振動板を振動させる。振動により単結晶AlN膜25に励起される電荷を駆動受信回路41で増幅し、制御回路42は、反射波を受ける時間差Δtにより検知対象物90までの距離を演算する。制御回路42及び駆動受信回路41は、電気回路又は情報処理装置によって構成される。
【0051】
《1-6》変形例
図26は、実施の形態1の変形例に係る圧電膜集積デバイス100aの構造を概略的に示す側面図である。
図27は、圧電膜集積デバイス100aの構造を概略的に示す上面図である。
図28は、
図27の圧電膜集積デバイス100aをS28-S28線で切る断面図である。
図29は、圧電膜集積デバイス100aの構造を概略的に示す下面図である。SOI基板33をSiO
2部31までエッチングする際に、穴73、74の形状を四角形などの円形以外の形状にしてもよい。穴73、74の形状は、圧電素子の平面形状に対応する形状であることが望ましい。
【0052】
《1-7》効果
以上説明したように、格子定数及び結晶構造が異なるという理由で、同一のSOI基板33上にエピタキシャル成長させるのが困難な単結晶PZT膜15と単結晶AlN膜25を、別個の成長基板上で単結晶エピタキシャル成長させ、成長基板から剥離して、共通のSOI基板33上に貼り付けることで、高性能な圧電膜集積デバイス100を作成することが可能である。
【0053】
また、単結晶PZT膜15は、多結晶PZT膜に比べて圧電定数が高いので、振動の振幅を容易に大きくすることができる。
【0054】
また、単結晶AlN膜25は、多結晶AlN膜に比べて比誘電率が低いので、振動の受信感度を高くすることができる。
【0055】
また、従来は、異種圧電膜を形成するためには、保護層で一旦片方の圧電膜を覆い、もう片方の圧電膜形成後に保護層を削除するなどの工程が複雑で、かつ各工程での処理で熱を加えることにより圧電膜に残留応力歪が残ってセンサとしての効率悪化を招いた。実施の形態1の製造方法では、単結晶圧電膜であるエピタキシャル成長膜の貼り付けを用いているので、残留応力歪が無い状態で圧電膜集積デバイス及び音響振動センサを構成可能である。
【0056】
《2》実施の形態2
《2-1》構造
図30は、圧電膜集積デバイス200の構造を概略的に示す側面図である。
図31は、圧電膜集積デバイス200の構造を概略的に示す上面図である。
図32は、
図31の圧電膜集積デバイス200をS32-S32線で切る断面図である。
【0057】
実施の形態1では、単結晶PZT膜15及び単結晶AlN膜25の両方を、成長基板11及び21でそれぞれ成長させ、SOI基板33のPt膜上に貼り付けたが、実施の形態2では、単結晶PZT膜15をSOI基板50上でエピタキシャル成長させる。SOI基板50は、上面が(100)面よりなる。よって、実施の形態1の場合と同様の処理で、単結晶PZT膜15の単結晶をエピタキシャル成長させることが可能である。
【0058】
《2-2》製造方法
図33は、圧電膜集積デバイス200の製造方法を示すフローチャートである。
図34は、
図33のステップST201、ST202を示し、
図35は、
図33のステップST203を示す。
図36は、
図33のステップST208を示し、
図37は、
図33のステップST209を示す。
【0059】
先ず、
図34に示されるように、デバイス基板であるSOI基板50の主面にZrO
2膜12、電極層としてのPt膜13を形成する(ステップST201)。次に、
図34に示されるように、Pt膜13上に、SRO膜14、単結晶PZT膜15、Pt膜16をエピタキシャル成長させて、SRO膜14と単結晶PZT膜15とPt膜16とからなるエピタキシャル成長膜を形成する(ステップST202)。次に、
図35に示されるように、単結晶PZT膜15を含むエピタキシャル成長膜の形状をエッチングにより所望の形状(例えば、円形状)にする(ステップST203)。次に、電極層としてのPt膜13をエッチングして、第1の電極としてのPt膜34a及び第2の電極としてのPt膜34bを形成する。
【0060】
次に、単結晶AlN膜25とPt膜26からなる個片を保持部材としてのスタンプ80で保持し、
図36に示されるように、犠牲層であるSRO膜24をエッチングして、個片を剥がし、デバイス基板であるSOI基板50上に移動して、貼り付ける(ステップST205~ST208)。ここでは、実施の形態1で説明した単結晶AlN膜25を別途形成したものを電極上に貼り付ける。貼り付ける際は、単結晶PZT膜15の結晶方位を検査等で確認し、
図23に示されるように、単結晶PZT膜15の結晶方位と単結晶AlN膜25の結晶方位を揃うようにする。単結晶PZT膜15の方向は、SOI基板50上で固定されるので単結晶AlN膜25の貼り付け角度を調整する。また、
図35で示すエッチング工程の際に結晶方位を確認した後に実施の形態1と同じ方向となるようにマスクして圧電膜を形成してもよい。
図37に示されるように、単結晶PZT膜15とPt膜16上に絶縁膜35aと配線膜(引出配線)36aとを形成し、単結晶AlN膜25とPt膜26上に絶縁膜35bと配線膜(引出配線)36bとを形成する。
【0061】
その後、実施の形態1の場合と同様にSOI基板50をエッチングして、
図30から
図32に示される圧電膜集積デバイス200を製造する。
【0062】
《2-3》効果
実施の形態2においては、エピタキシャル成長させた単結晶PZT膜15のあるSOI基板50上のPt膜34b上に単結晶AlN膜25を含むエピタキシャル成長膜を貼り付けることにより、実施の形態1の場合と同様に、単結晶で高性能な圧電膜集積デバイスを得ることが可能となる。
【0063】
実施の形態2においては、実施の形態1に比べて、単結晶PZT膜15のアラインメント精度が向上する。したがって、実施の形態2においては、実施の形態1及び3に比べて、音響振動波の出力性能が向上する。
【0064】
上記以外に関して、実施の形態2は、実施の形態1と同じである。
【0065】
《3》実施の形態3
《3-1》構造
図38は、圧電膜集積デバイス300の構造を概略的に示す側面図である。
図39は、圧電膜集積デバイス300の構造を概略的に示す上面図である。
図40は、
図39の圧電膜集積デバイスをS40-S40線で切る断面図である。
【0066】
実施の形態1では、単結晶PZT膜15及び単結晶AlN膜25の両方を、成長基板11及び20でそれぞれ成長させ、SOI基板33のPt膜上に貼り付けたが、実施の形態3では、単結晶AlN膜25をSOI基板60上でエピタキシャル成長させる。SOI基板60は、上面が(111)面よりなる。よって、実施の形態1の場合と同様の処理で、単結晶AlN膜25の単結晶をエピタキシャル成長させることが可能である。
【0067】
《3-2》製造方法
図41は、圧電膜集積デバイス300の製造方法を示すフローチャートである。
図42は、
図41のステップST301、ST302を示し、
図43は、
図41のステップST303を示し、
図44は、
図41のステップST308を示し、
図45は、
図41のステップST309を示す。
【0068】
先ず、
図42に示されるように、デバイス基板であるSOI基板60の主面にZrO
2膜22、電極層としてのPt膜23を形成する(ステップST301)。次に、
図42に示されるように、Pt膜23上に、SRO膜24、単結晶AlN膜25、Pt膜26をエピタキシャル成長させて、SRO膜24と単結晶AlN膜25とPt膜26とからなるエピタキシャル成長膜を形成する(ステップST302)。次に、
図43に示されるように、単結晶AlN膜25を含むエピタキシャル成長膜の形状をエッチングにより所望の形状(例えば、円形状)にする(ステップST303)。次に、電極層としてのPt膜23をエッチングして、第1の電極としてのPt膜34a及び第2の電極としてのPt膜34bを形成する。
【0069】
次に、単結晶PZT膜15とPt膜16からなる個片を保持部材としてのスタンプ80で保持し、
図44に示されるように、犠牲層であるSRO膜14をエッチングして、個片を剥がし、デバイス基板であるSOI基板60上に移動して、貼り付ける(ステップST305~ST308)。ここでは、実施の形態1で説明した単結晶PZT膜15を別途形成したものを電極上に貼り付ける。貼り付ける際は、単結晶AlN膜25の結晶方位を検査等で確認し、
図23に示されるように、単結晶PZT膜15の結晶方位と単結晶AlN膜25の結晶方位を揃うようにする。単結晶AlN膜25の方向は、SOI基板60上で固定されるので単結晶PZT膜15の貼り付け角度を調整する。また、
図43で示すエッチング工程の際に結晶方位を確認した後に実施の形態1と同じ方向となるようにマスクして圧電膜を形成してもよい。
【0070】
絶縁膜35a及び35bを形成し、配線膜(引出配線)36a及び36bで電極パターンに圧電膜の電極を接続する。その後、実施の形態1の場合と同様にSOI基板60をエッチングして、
図38から
図40に示される圧電膜集積デバイス300を製造する。
【0071】
《3-3》効果
実施の形態3においては、エピタキシャル成長させた単結晶AlN膜25のあるSOI基板60上の電極に単結晶PZT膜15を貼り付けることにより、実施の形態1と同様に単結晶で高性能な圧電膜集積デバイス300を得ることが可能となる。
【0072】
実施の形態3においては、実施の形態1に比べて、単結晶AlN膜25のアラインメント精度が向上する。したがって、実施の形態3においては、実施の形態1及び2に比べて、音響振動波の検出感度、S/N比が向上する。
【0073】
上記以外に関して、実施の形態3は、実施の形態1又は2と同じである。
【0074】
《4》変形例1
変形例1の圧電膜集積デバイス500は、SOI基板33上のPt膜(第1の電極)34a上に貼り付けられているエピタキシャル成長膜がPt膜116と単結晶PZT膜15とPt膜16とから構成され且つSOI基板33上のPt膜(第2の電極)34b上に貼り付けられているエピタキシャル成長膜がPt膜126と単結晶AlN膜25とPt膜26とから構成されている点が、Pt膜34a上に貼り付けられているエピタキシャル成長膜が単結晶PZT膜15とPt膜16とから構成され且つPt膜34b上に貼り付けられているエピタキシャル成長膜が単結晶AlN膜25とPt膜26とから構成されている実施の形態1に係る圧電膜集積デバイス100と異なる。この点以外に関し、変形例1の圧電膜集積デバイス500は、実施の形態1に係る圧電膜集積デバイス100と同じである。
【0075】
図46は、Si基板11上のZrO2膜12上に、Pt膜13、SRO膜14、Pt膜116、単結晶PZT膜15、及びPt膜16を順にエピタキシャル成長させた状態を示す断面図である。
図47は、Si基板21上のZrO2膜22上に、Pt膜23、SRO膜24、Pt膜126、単結晶AlN膜25、及びPt膜26を順にエピタキシャル成長させた状態を示す断面図である。
【0076】
図48は、変形例1の圧電膜集積デバイス500の構造を概略的に示す断面図である。
図49は、
図48の圧電膜集積デバイス500の構造を概略的に示す上面図である。
図48及び
図49において、
図1から
図4(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、
図1から
図4における符号と同じ符号が付されている。変形例1の圧電膜集積デバイス500では、Pt膜116と単結晶PZT膜15とPt膜16とから構成されたエピタキシャル成長膜(
図46に示される)がPt膜34aに貼り付けられ、Pt膜126と単結晶AlN膜25とPt膜26とから構成されたエピタキシャル成長膜(
図47に示される)がPt膜34aに貼り付けられている。この点以外に関し、変形例1の圧電膜集積デバイス500は、実施の形態1に係る圧電膜集積デバイス100と同じである。
【0077】
なお、Pt膜116と単結晶PZT膜15とPt膜16とから構成されたエピタキシャル成長膜(
図46に示される)を、実施の形態2に係る圧電膜集積デバイス200(
図30から
図32に示される)の単結晶PZT膜15とPt膜16とから構成されるエピタキシャル成長膜の代わりに用いることも可能である。また、Pt膜126と単結晶AlN膜25とPt膜26とから構成されたエピタキシャル成長膜(
図47に示される)を、実施の形態2に係る圧電膜集積デバイス200(
図30から
図32、
図42から
図45に示される)の単結晶AlN膜15とPt膜16とから構成されるエピタキシャル成長膜の代わりに用いることも可能である。
【0078】
《5》変形例2
実施の形態に係る圧電膜集積デバイス100、200、300及び音響振動センサ400は、距離センサだけでなく、指紋センサ、静脈(脈波)センサ、などのような他のセンサとして利用可能である。
【0079】
また、単結晶PZT膜15と単結晶AlN膜25の対を、マトリクス状に配列した圧電膜集積デバイスによれば、検出対象物の面形状を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
100、100a、200、300、500 圧電膜集積デバイス、 400 音響振動センサ、 11、21 成長基板(単結晶Si基板)、 15 単結晶PZT膜(第1の単結晶圧電膜)、 16 Pt膜(第3の電極)、 14、24 SRO膜(配向膜)、 25 単結晶AlN膜(第2の単結晶圧電膜)、 26 Pt膜(第4の電極)、 31 SiO2部、 32 単結晶Si部、 33、50、60 SOI基板(基板)、 34a Pt膜(第1の電極)、 34b Pt膜(第2の電極)、 71~74 穴、 116 Pt膜、 126 Pt膜。