(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147999
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 21/08 20060101AFI20231005BHJP
F02M 26/49 20160101ALI20231005BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F02D21/08 301C
F02M26/49
F02D45/00 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055816
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】竹原 一明
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G062FA12
3G062FA19
3G062GA15
3G062GA18
3G062GA26
3G092AA17
3G092DC08
3G092FA06
3G092FB06
3G092HB01Z
3G092HC05Y
3G092HC09Y
3G092HD05Y
3G384BA27
3G384DA04
3G384DA42
3G384FA14Z
3G384FA33Z
3G384FA40Z
3G384FA52Z
(57)【要約】
【課題】EGRバルブの異常をその他の異常と切り分けて特定しやすくする。
【解決手段】排気通路を吸気通路に連通させるEGR通路と、EGR通路を開閉するEGRバルブとを有する排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関を制御するものであって、排気通路を流れるガスの空燃比を目標空燃比に追従させる空燃比フィードバック制御による燃料噴射量の補正量、及び気筒におけるノッキングの発生による点火タイミングの遅角補正量に基づき、EGRバルブを通過するEGRガスの流量の低下の度合いを算出し、算出した結果を記憶する内燃機関の制御装置を構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路を吸気通路に連通させるEGR通路と、前記EGR通路を開閉するEGRバルブとを有する排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関を制御するものであって、
前記排気通路を流れるガスの空燃比を目標空燃比に追従させる空燃比フィードバック制御による燃料噴射量の補正量、及び気筒におけるノッキングの発生による点火タイミングの遅角補正量に基づき、前記EGRバルブを通過するEGRガスの流量の低下の度合いを算出し、算出した結果を記憶する、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記EGRガスの流量の低下の度合いを、故障診断機に向けて送信する、請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置が付帯した内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関には、気筒の燃焼室内での混合気の燃焼温度を低下させてNOxの排出量を削減しつつ、ポンピングロスの低減を図るべく、EGR装置が付随していることが多い。EGR装置は、内燃機関の排気通路と吸気通路とをEGR通路を介して接続し、気筒から排出される燃焼ガスの一部をEGR通路経由で吸気通路に還流させて吸入空気(新気)に混交するものである。EGR通路上には、これを開閉するEGRバルブが設けられており、このEGRバルブの開度操作を通じてEGRガスの還流量を調節することができる。
【0003】
EGRバルブに故障が生じると、適正なEGR制御の妨げとなり、燃焼の不安定化やエミッションの悪化、あるいはノッキングの発生につながる。故に、車両には、EGRバルブの故障の有無をオンラインで診断し、故障を検出した暁にはその事実を運転者に告知するとともに記憶装置に記録を残すダイアグノーシス(自己診断)機構が実装される。例えば、気筒への燃料供給を一時中断する燃料カット中にEGRバルブを敢えて開閉操作し、閉弁時及び開弁時の吸気通路内の吸気圧力をそれぞれ計測して、これを基にEGRバルブの故障の有無の判定を行う。典型的には、双方の吸気圧の差が判定閾値以上であればEGRバルブが正常であると判断し、判定閾値を下回っていればEGRバルブが異常であると判断する。(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EGRバルブの弁体を駆動するステッピングモータ(ステッパモータ)またはサーボモータに与える制御入力と、その制御入力を与えたときのEGRバルブの実開度、換言すれば実際にEGR通路経由で吸気通路に流入するEGRガスの流量との関係は、恒常的に一定ではない。EGRバルブの弁体や弁座に異物(デポジット)付着し堆積する経年変化により、EGRガスの流量は徐々に減少してゆく。
【0006】
それもあって、EGRバルブのダイアグノーシスにおける判定閾値は、かなり甘めに設定されている。判定閾値を辛く設定すると、依然として内燃機関を安定的に運転できるにもかかわらず、早々にエンジンチェックランプを点灯させてしまい、不必要なメンテナンスコストの増大を招き、不便を与えるからである。EGRバルブを通過するEGRガスの流量が幾分減少したとしても、電子制御装置(Electronic Control Unit)において燃料噴射量を増量補正したり、点火タイミングを遅角補正したりすることで対応が可能である。
【0007】
しかしながら、点火タイミングの遅角補正にも限度があり、EGRガスの流量が著しく減少すると、ノッキングが頻発するようになる。だが、ノッキングを惹起する要因は複数あり、それがEGRバルブに起因しているかどうかは、直ちに判然としない。一般的に、ノッキングが頻発する内燃機関に対しては、気筒の燃焼室内に堆積したカーボン等の異物を洗浄することで対処するが、それでもなおノッキングが収まらないとすると、内燃機関全体を交換することになりかねない。
【0008】
以上の問題に着目してなされた本発明は、EGRバルブの異常をその他の異常と切り分けて特定しやすくすることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、排気通路を吸気通路に連通させるEGR通路と、前記EGR通路を開閉するEGRバルブとを有する排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関を制御するものであって、前記排気通路を流れるガスの空燃比を目標空燃比に追従させる空燃比フィードバック制御による燃料噴射量の補正量、及び気筒におけるノッキングの発生による点火タイミングの遅角補正量に基づき、前記EGRバルブを通過するEGRガスの流量の低下の度合いを算出し、算出した結果を記憶する内燃機関の制御装置を構成した。
【0010】
その上で、前記EGRガスの流量の低下の度合いを、故障診断機に向けて送信できるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内燃機関におけるEGRバルブの異常をその他の異常と切り分けて特定しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。
【
図2】同実施形態の内燃機関の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒エンジン。
図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0014】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0015】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0016】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)に接続している。
【0017】
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
【0018】
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速(または、車輪の回転速度)を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、気筒1を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号f、気筒1から排出され排気通路4を流れるガスの空燃比を検出する空燃比センサから出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
【0019】
ECU0の出力インタフェースからは、内燃機関の点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号k、EGRバルブ23の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号l等を出力する。
【0020】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関及び車両の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0021】
ECU0は、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,サージタンク33内吸気圧(または、アクセル開度等)]に応じて、インジェクタ11から気筒1に対し噴射する燃料の基本量TPを決定する。基本噴射量TPは、気筒1に吸入される空気(新気)量に比例した、目標空燃比(通常、理論空燃比またはその近傍の値)を具現するために必要な燃料の量である。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域と基本噴射量TPとの関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、基本噴射量TPを得る。加えて、内燃機関の運転状況や環境条件等に応じて定まる各種補正係数Kを、基本噴射量TPに乗じる。
【0022】
混合気の空燃比をフィードバック制御する際には、さらに、上記の基本噴射量TPを、排気通路4における触媒41の上流側及び/または下流側のガスの空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。フィードバック補正係数FAFは、空燃比センサを介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
【0023】
最後に、インジェクタ11の無効噴射時間TAUVを加味して、最終的な燃料噴射時間Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×K×FAF+TAUV
となる。ECU0は、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを通電し、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
【0024】
また、ECU0は、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,サージタンク33内吸気圧(または、アクセル開度等)]に応じて、点火プラグ12による混合気への火花点火の基本タイミングを決定する。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域と基本点火タイミングとの関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、基本点火タイミングを得る。
【0025】
さらに、ECU0は、ノックセンサが出力する振動信号fを参照して各気筒1におけるノッキングの発生の有無を判定し、その判定結果に応じた点火タイミングの補正を行う、いわゆるノックコントロールシステムの制御を実施する。ECU0は、内燃機関の気筒1またはシリンダブロックの振動の強度を示す振動信号fの現在のサンプリング値をノック判定値と比較し、前者が後者を上回ったならば、当該気筒1にてノッキングが起こったと判定する。翻って、振動信号fのサンプリング値がノック判定値以下であるならば、当該気筒1にてノッキングは起こっていないと判定する。
【0026】
気筒1におけるノッキングの発生を感知した場合には、以後ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、換言すれば基本点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる。他方、ノッキングの発生を感知していない場合には、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させ、即ち基本点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させて、点火タイミングを可及的にMBT(Minimum advance for Best Torque)に近づけ、内燃機関の熱効率の向上を図る。このノッキングの有無の判定及び点火タイミングの遅角/進角補正は、各気筒1毎に個別に行うことができる。
【0027】
並びに、ECU0は、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,サージタンク33内吸気圧(または、アクセル開度等)]に応じて、EGRバルブ23の開度を決定する。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域とEGRバルブ23に開度操作信号lとして与える制御入力(例えば、弁体を駆動するステッピングモータに与える駆動パルスの数であるステップ数)との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、EGRバルブ23に与える制御入力lを得る。
【0028】
上掲の燃料噴射量、点火タイミング及びEGRバルブ23開度のマップデータは、何れも、EGRバルブ23の入出力特性が公称値(公差の中央値)通りであることを前提として作成されている。EGRバルブ23の入出力特性とは即ち、EGRバルブ23に与える制御入力lと、その制御入力lを与えたときのEGRバルブ23の実効的な開度、換言すれば実際にEGR通路21経由で吸気通路3に流入するEGRガスの流量との関係のことである。
【0029】
だが、EGRバルブ23の入出力特性は、恒常的に一定ではない。個体差が存在する上に、異物がEGRバルブ23の弁体または弁座に付着し堆積する経年変化の影響を受ける。燃料噴射量は、吸気に占めるEGRガスの割合が少ないほど(新気の割合が多いほど)増量補正される。さもなくば、空燃比が不当にリーン化する。また、点火タイミングは、吸気に占めるEGRガスの割合が少ないほど遅角補正される。EGR率が低下すると、着火燃焼しやすくなる反面、ノッキングに代表される異常燃焼が惹起されやすくなるからである。
【0030】
なお、ECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、気筒1への燃料供給を中断する燃料カットを実行する、即ちインジェクタ11からの燃料噴射を停止する。ECU0は、少なくとも、アクセルペダルの踏込量が0または0に近い閾値以下となり、かつエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上に高いことを以て、燃料カット条件が成立したものと判断する。燃料カット中は、スロットルバルブ32をアクセルペダルの踏込量(0または0に近い)に依拠しない所定の開度に開いておくか、スロットルバルブ32を全閉する。
【0031】
ECU0は、燃料カットの開始後、所定の燃料カット終了条件が成立したときに、燃料カットを終了する、即ちインジェクタ11からの燃料噴射を再開する。ECU0は、アクセルペダルの踏込量が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数まで低下した等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したものと判断する。燃料カット終了条件の成立以後は、スロットルバルブ32の開度をアクセルペダルの踏込量に応じた開度に追従させることは言うまでもない。
【0032】
ECU0は、燃料カット中に、EGRバルブ23のダイアグノーシスを実施する。このダイアグノーシスでは、燃料カット中にEGRバルブ23を敢えて開閉操作し、EGRバルブ23が全閉しているときのサージタンク33内吸気圧、及びEGRバルブ23が所定開度に開いているときのサージタンク33内吸気圧を各々計測する。そして、計測した吸気圧を基に、EGRバルブ23の故障の有無を判定する。典型的には、双方の吸気圧の差が判定閾値以上であればEGRバルブ23が正常であると判定し、判定閾値を下回っていればEGRバルブ23が異常であると判定する。EGRバルブ23が異常であると判定したECU0は、その旨を示す情報(ダイアグノーシスコード)をメモリに記憶保持するとともに、その旨を車両の運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様で報知する。例えば、コックピットのエンジンチェックランプを点灯させたり、ディスプレイの画面に表示したり、警告音を出力したりする。
【0033】
上述のダイアグノーシスに加えて、本実施形態のECU0は、
図2に示すように、空燃比フィードバック制御における燃料噴射量の補正量FAF(ステップS1)と、ノックコントロールシステムにおける点火タイミングの遅角補正量(ステップS2)との両方に基づき、EGRバルブ23を通過するEGRガスの流量の公称値からの低下の度合いを求め、これをメモリに記憶保持する(ステップS3)。
【0034】
EGRバルブ23に異物が付着、堆積し、EGRバルブ23を通過するEGRガスの流量が想定よりも低減すると、気筒1に充填される混合気のEGR率が低下、即ちEGRガスの割合が減少して新気の割合が増加する。結果、基本噴射量TPだけでは燃料が不足気味となり空燃比がリーン化するので、燃料噴射量の補正量FAFが大きくなる。並びに、ノッキングがより起こりやすくなるので、点火タイミングを基本タイミングから遅角させる補正量が大きくなる。それら補正量の増分が大きいほど、EGRバルブ23を通過するEGRガスの流量の低下率が大きいことになる。
【0035】
ECU0のメモリには予め、燃料噴射量の補正量FAF及び点火タイミングの遅角補正量と、EGRガスの流量の低下率との関係を規定したマップデータまたは関数式が格納されている(このマップデータまたは関数式は、そのときの内燃機関の運転領域に応じて個別に設定されていることがあり得る)。ステップS3にて、ECU0は、現在の両補正量をキーとして当該マップを検索し、または現在の両補正量を当該関数式に代入して、EGRガスの流量の低下率を求め、その流量の低下率をメモリに記憶保持する。
【0036】
燃料噴射量の補正量FAF、点火タイミングの遅角補正量の両方を参照するのは、一方だけであるとインジェクタ11の噴孔の詰まり、燃料ポンプが圧送する燃料圧力の低下、点火プラグ12のくすぶり(カーボン等の付着、堆積)と切り分けができないからである。
【0037】
メモリに記憶保持したEGRガスの流量の低下の度合いを示す値、即ち低下率は、既存の故障診断機(スキャンツール)に向けて送信することができる。故障診断機は、有線または無線にてECU0に接続することが可能である。接続するためのインタフェースは、例えば、既知のOBD(On Board Diagnosis)用のDLC(Data Link Coupler)である。
【0038】
因みに、ステップS3にて求めたEGRガスの流量の低下率(の絶対値)が上限を上回る場合に、ECU0は、EGRバルブ23が異常である旨を車両の運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様で報知することがある。例えば、コックピットのエンジンチェックランプを点灯させたり、ディスプレイの画面に表示したり、警告音を出力したりする。
【0039】
本実施形態によれば、内燃機関の気筒1においてノッキングが頻発するような場合に、それがEGRバルブ23の異常によるものか、他の異常によるものかを切り分けて特定しやすくなる。EGRバルブ23の異常であるならば、EGRバルブ23のみを交換すればよく、メンテナンスコストの低下を見込める。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限定されない。各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
12…点火プラグ
2…排気ガス再循環(EGR)装置
32…EGRバルブ
3…吸気通路
32…スロットルバルブ
4…排気通路
b…クランク角信号
c…アクセル開度信号
d…吸気温・吸気圧信号
f…振動信号
g…空燃比信号
i…点火信号
j…燃料噴射信号
k…スロットルバルブ開度操作信号
l…EGRバルブ開度操作信号