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  • 特開-粘着フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148003
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231005BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231005BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231005BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231005BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/08
C09J11/06
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055823
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 麻由
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 彩佳
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA02
4J004AA08
4J004AA10
4J004AA15
4J004AA16
4J004AB01
4J004AC01
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA01
4J040DA001
4J040DD022
4J040DF001
4J040DF002
4J040ED001
4J040ED002
4J040EG002
4J040KA05
4J040KA38
4J040LA11
4J040MA02
4J040MA06
4J040MB09
4J040NA06
4J040NA12
4J040NA16
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】圧力などをかけてマイクロカプセルを破壊することで粘着性を発現させる場合に、面内での粘着性発現の差が少なく、浮きの発生が抑制される粘着フィルムを提供する。
【解決手段】基材および粘着剤層を有する粘着フィルムであって、前記粘着剤層は、酸水溶液を内包するマイクロカプセルAと、ポリエステル、ポリアミドおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される樹脂を含むシェル層に粘着剤が内包されてなるマイクロカプセルBと、を有する、粘着フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
前記粘着剤層は、酸水溶液を内包するマイクロカプセルAと、ポリエステル、ポリアミドおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される樹脂を含むシェル層に粘着剤が内包されてなるマイクロカプセルBと、
を有する、粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層は、最表層に配置される、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記マイクロカプセルAのシェル層が、アクリル系樹脂を含む、請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層はさらにバインダー樹脂を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記酸水溶液のpHが2~5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記酸が、ギ酸、酢酸、プロパン酸および酪酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤がアクリル系粘着剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層の厚さが150μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルムの製造時には、粘着剤層にごみなどが付着して粘着性が低減することを防止するために、通常粘着剤層上に剥離ライナーが付与される。該剥離ライナーは、粘着フィルムを被着体へ貼付する際に剥離される。このため、剥離ライナーは廃棄物となる。
【0003】
環境問題への関心の高まりから、廃棄物の低減が求められており、剥離ライナーを用いない技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、粘着剤を含む粘着剤層に、可塑剤を内包するカプセル型粒子を包含させ、圧力によりカプセル型粒子の殻を破壊すると、可塑剤が放出され、粘着性を発現する技術が開示されている。当該構成とすることで、使用前には粘着性を示さないため、剥離ライナーを不要とすることができるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-172725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、カプセル型粒子を用いて粘着性を発現しようとした場合、粘着剤層面内でのカプセル型粒子の破壊が均一に起こらず、面内で粘着性の発現に差が生じる場合があった。その結果、被着体に貼付した粘着フィルムに浮きが発生する場合があった。
【0007】
そこで本発明は、圧力などをかけてマイクロカプセルを破壊することで粘着性を発現させる場合に、面内での粘着性発現の差が少なく、浮きの発生が抑制される粘着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2種のマイクロカプセルを粘着剤層に含有させ、粘着剤を内包したマイクロカプセルのシェルを壊す機能を有する酸を他方のマイクロカプセルが内包する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧力等をかけてマイクロカプセルを破壊することで粘着性を発現させる場合に、面内で粘着性発現の差が少なく、浮きの発生が抑制された粘着フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の粘着フィルムを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一実施形態は、基材および粘着剤層を有する粘着フィルムであって、前記粘着剤層は、酸水溶液を内包するマイクロカプセルAと、ポリエステル、ポリアミドおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される樹脂を含むシェル層に粘着剤が内包されてなるマイクロカプセルBと、を有する、粘着フィルムである。
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
本明細書において、「フィルム」の概念には、テープ、ラベル、シート等と称されるものが包含される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の粘着フィルムを示す断面模式図である。図1の粘着フィルム10は、基材11、および粘着剤層12から構成される。粘着剤層12は粘着フィルム10の最表層である。本実施形態においては、粘着剤層が初期には粘着性をほぼ有していない。ゆえに、本実施形態の粘着フィルムによれば、被着体への施工時に粘着性を有していないため、粘着剤層にごみが付着することによる粘着性能の低下や、意図せぬ粘着剤層の他の部材への付着を抑制することができる。
【0015】
また、一部に加圧や加熱等を施して部分的にマイクロカプセルを崩壊させることで、部分的に粘着力を発現させることが可能となる。このため、任意の場所で、仮止めが可能となり、位置合わせが簡単になる。ゆえに、大面積の1枚張りが可能となる。
【0016】
さらに、本実施形態の粘着フィルムによれば、粘着剤層が初期には粘着性をほぼ有していないために、剥離紙や剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム)などの剥離ライナーが不要となる。剥離ライナーが不要であることで、粘着剤層を最表層とすることが可能となり、作業性が向上する。
【0017】
そして、粘着フィルム10の被着体への位置合わせが完了した後、全体を加圧および/または加熱する。これにより、粘着剤層に含有されるマイクロカプセルA 13が壊され、マイクロカプセルB 14のシェル層の破壊を助ける。これにより、マイクロカプセルB 14の割れ残りが減少し、面内での粘着性が均一となる。ゆえに、被着体に貼付した後の粘着フィルムの浮きが発生しにくい。
【0018】
第一実施形態の粘着フィルム10は、その他の機能層を基材表面、または基材と粘着剤層との間に有していてもよい。
【0019】
その他の機能層としては、ハードコート層、防汚層、熱線遮蔽層、反射防止層、紫外線遮蔽層、印刷層などが挙げられる。
【0020】
粘着フィルムは、透明であっても不透明であってもよい。また、粘着フィルムは、無色であっても有色であってもよい。
【0021】
粘着フィルムにおける、マイクロカプセルが破壊される前の粘着力(粘着性が発現する前の粘着力)は、1N/25mm以下(下限0N/25mm)であることが好ましく、0.5N/25mm以下であることがより好ましく、0.1N/25mm以下であることがさらにより好ましい。また、マイクロカプセルが破壊された後の粘着力(粘着性が発現した後の粘着力)は、8N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましい。粘着力は、塗装被着体に貼付した後、引張試験機により、180°方向に試験速度300mm/分でフィルムを引き剥がし、粘着力を測定する。数値は、幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。
【0022】
以下、本実施形態の粘着フィルムの構成部材について以下説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を指し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を指す。
【0023】
<基材>
基材を形成する材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0024】
ポリウレタンとしては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などを用いることができる。破断伸度が大きいことから、ジイソシアネート、鎖延長剤である分子量500以下の低分子量ジオール及び分子量500~4000の高分子量ジオールを重合することで得られる熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0025】
また、基材には、必要に応じて、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、軟化剤、金属粉、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等を適宜に含有していてもよい。安定剤としては、例えば、Ba-Zn系、Ca-Zn系等のものが用いられ、或いはこれらがエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等と併用されていてもよい。また、軟化剤としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素共重合体等が用いられていてもよい。
【0026】
基材の厚みは、機能性を考慮して、20~500μmであることが好ましく、100~200μmであることがより好ましい。
【0027】
<粘着剤層>
粘着剤層は、マイクロカプセルAおよびマイクロカプセルBを含む。また、好適にはバインダー樹脂を含む。粘着剤層には、必要に応じ、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、タッキファイヤー、乳化剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
【0028】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、30~400μmである。マイクロカプセルが表面に露出して被着体への接触面積が少なくなって、位置直しがしやすくなることから、粘着剤層の厚みは、150μm以下であることが好ましい。
【0029】
粘着剤層の形成方法としては、バインダー樹脂および溶媒の混合物に、マイクロカプセルAおよびマイクロカプセルBを分散、混合した混合物を、基材上に塗布することで形成することができる。溶媒としては、公知の有機溶媒を用いることができる。
【0030】
塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。混合物を基材上に塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層が形成される。
【0031】
(マイクロカプセルA)
マイクロカプセルAは、酸水溶液が内包されてなる。酸水溶液のpHは、1~6であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。かようなpHの酸水溶液を用いることで、マイクロカプセルBのシェル層を一層破壊しやすくなる。
【0032】
酸としては、過ヨウ素酸、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、2-メチル酪酸、ヘキサン酸、3,3-ジメチル-酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、ヒドロキシ酢酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0033】
これらの酸は、1種または2種以上併用してもよい。
【0034】
酸としては、マイクロカプセルBのシェル層が一層破壊されやすくなることから、ギ酸、酢酸、プロパン酸および酪酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ギ酸または酢酸であることがより好ましく、ギ酸であることがさらにより好ましい。
【0035】
酸水溶液中の酸の固形分濃度は、マイクロカプセルBのシェル層の破壊を考慮すると、20~60質量%であることが好ましい。
【0036】
なお、酸水溶液における水溶液とは、溶媒の100質量%が水に限定されず、水溶性有機溶媒を10質量%以下(下限0質量%)含む形態であってもよい。水溶性有機溶媒としては、エタノールなどの低級アルコールが挙げられる。
【0037】
マイクロカプセルAのシェル層は、酸水溶液を内包できる材料であれば特に限定されない。安定性を考慮すると、マイクロカプセルAのシェル層が、アクリル系樹脂、およびポリウレタンを含むことが好ましく、保存安定性の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0038】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とする単量体成分から形成される。また、単量体成分は、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いてもよい。ここで、主成分とは、単量体中30質量%以上(上限100質量%)であることを指す。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸のC1~C24アルキルエステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸のC1~C4アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチルがより好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチルがさらにより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。最も好適には、メタクリル酸メチルを全単量体中、30~80重量%含む。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと組み合わせて、カルボキシル基含有単量体またはその無水物および/または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを用いることが好ましい。カルボキシル基含有単量体またはその無水物の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。中でも、カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸であることが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、ジエチレングリコールモノアクリレートなどが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの全単量体中の含有量は、例えば、20~100質量%であり、30~95質量%であってもよく、30~80質量%であってもよい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの全単量体中の含有量は、70~100質量%であってもよい。
【0042】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと組み合わせて、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いてもよい。2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は架橋剤として作用する。2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、好ましくは、ポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートなどが挙げられる。2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、1,4-ブタンジオールジアクリレートであることが好ましい。
【0043】
3つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは、ポリオールとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。3つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートであることが好ましい。
【0044】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能なその他の共重合性単量体を用いてもよい。このような単量体の例としては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体としては、単量体全量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0045】
一形態として、単量体成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基含有単量体またはその無水物および/または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとを含む。この場合、単量体成分は、例えば、30~90質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;70~10質量%のカルボキシル基含有単量体またはその無水物および/または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;0~10質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体から構成される。
【0046】
また、他の一形態として、単量体成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、を含む。この場合、単量体成分は、例えば、70~95質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;5~30質量%の2つ以上のエチレン性不飽和基を有する1つ以上のモノマー:0~10質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体から構成される。
【0047】
また、他の一形態として、単量体成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基含有単量体またはその無水物および/または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、から構成される。この場合、単量体成分は、例えば、30~70質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;10~50質量%のカルボキシル基含有単量体またはその無水物および/または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;10~50質量%の2つ以上のエチレン性不飽和基を有する1つ以上のモノマー:0~10質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステと共重合可能なその他の単量体から構成される。
【0048】
マイクロカプセルAの大きさ(粒径)は、例えば、3~300μmである。かようなサイズであれば圧力または加熱によりマイクロカプセルの殻(シェル層)を破壊しやすく、必要なときに粘着性を発現するというメリットを向上させる。なお、マイクロカプセルの大きさ(粒径)は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD-2300)を用いて測定することができる。
【0049】
マイクロカプセルAのコアには、発泡剤を含有させてもよい。加熱によって発泡剤が発泡しカプセルの崩壊を助けることができる。発泡剤としては、熱分解によってガスが発生する有機および無機発泡剤が用いられる。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソメチレンペンタミン、4,4-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド等の単体または混合系が用いられる。
【0050】
また、マイクロカプセルAのコアには、添加剤を添加してもよい。一実施形態としては、マイクロカプセルAのコアは、酸水溶液のみからなる。
【0051】
マイクロカプセルAにおいては、コア材料100質量部に対し、シェル材料を5~40質量部とすることが好ましい。シェル材料の含有量をかような範囲とすることで、適度に破壊されやすく、また、マイクロカプセルとしての性能を維持しやすい。
【0052】
マイクロカプセルAおよびマイクロカプセルBの質量含有比は、粘着性および浮きの低減の観点から、マイクロカプセルA:マイクロカプセルB=1:9~3:7であることが好ましく、1:3~1:7であることがより好ましい。
【0053】
また、マイクロカプセルAのシェル層の厚さは、マイクロカプセルBのシェル層の厚さよりも薄いことが好ましい。このように設計することで、マイクロカプセルAのほうがマイクロカプセルBよりも容易に崩壊しやすくなる。なお、マイクロカプセルのシェル層は、製造時のシェルを構成する材料の添加量、重合時間、重量比によって制御することができる。また、シェル層の厚さは、電子顕微鏡によって測定することができる。
【0054】
酸水溶液を内包したマイクロカプセルAは、例えば、特表2016-529088号公報に記載の製造方法などを参酌して製造することができる。具体的には、連続層の疎水性有機溶媒、分散相の酸水溶液、およびシェル層を構成する単量体を含む油中水型エマルジョンを作製する。エマルションの安定化のために、公知の界面活性剤/分散剤を用いることができ、この際、特表2016-529088号公報に開示のような両親媒性ポリマーを用いてもよい。次いで、単量体を重合する。用いることができる重合開始剤としては、例えば、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物が挙げられる。また、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。重合温度は、20~100℃にて、好ましくは40~95℃で行われる。重合時間は、通常、1~10時間であり、好ましくは2~5時間である。得られたマイクロカプセルは、疎水性溶媒を除去することによって単離することができる。これは、例えば、疎水性溶媒を蒸発除去することによって、又は不活性ガス雰囲気中での適当な噴霧乾燥プロセスによって行うことができる。
【0055】
(マイクロカプセルB)
マイクロカプセルBのシェル層は、マイクロカプセルAが内包する酸水溶液によって破壊される。これにより、粘着剤層に分散しているマイクロカプセルBが均一に崩壊し、面内の粘着性の発現のばらつきが低減される。
【0056】
マイクロカプセルBのシェル層は、ポリエステル、ポリアミドおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される樹脂を含む。好ましくは、マイクロカプセルBのシェル層は、ポリアミドを含む。より好ましくは、マイクロカプセルBのシェル層は、ポリアミドのみからなる。これらの樹脂は1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0057】
ポリエステルは、マイクロカプセルAに含まれる酸水溶液と接触することで、加水分解により破壊されると考えられる。
【0058】
ポリエステルは、単量体としてのポリオールと多価カルボン酸および/またはカルボン酸無水物(本実施形態において「カルボン酸成分」ともいう。)とが共重合してなるエステル結合を主鎖中に有する重合体である。
【0059】
上記のポリオールの具体例として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0060】
一方、上記のカルボン酸成分の具体例として、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の多価カルボン酸およびこれらの多価カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0061】
これらのポリオールおよびカルボン酸成分の組み合わせは限定されず、ポリエステルは、一種類の組み合わせに係る重合体であってもよいし、複数種類の組み合わせに係る重合体であってもよい。
【0062】
ポリアミドは、マイクロカプセルAに含まれる酸水溶液と接触することで、加水分解により破壊されると考えられる。ポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/6T、ポリアミド6I/6T、ポリアミドMXD6、芳香族ポリアミド(アラミド)などが挙げられる。
【0063】
ポリビニルアルコールは、マイクロカプセルAに含まれる酸水溶液と接触することで、溶解することで破壊されると考えられる。
【0064】
粘着剤としては、特に制限はなく、従来粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。中でも、粘着力が高く、耐候性・耐熱性等の耐久性が高いことから、アクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0065】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。
【0066】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、粘着性発現の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸ブチルおよび/またはアクリル酸2-エチルヘキシルを用いることが好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)として、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体などを挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)としてカルボキシル基含有単量体を用いる形態は好ましい形態である。
【0068】
その他の共重合性単量体としては、酢酸ビニル、スチレンなどを挙げることができる。
【0069】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、10万~100万であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0070】
アクリル系ポリマーは架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、未架橋のアクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.01~0.5質量部であることがより好ましい。なお、アクリル系ポリマーは未架橋であってもよく、当該形態は製造上の観点から好ましい形態である。
【0071】
マイクロカプセルBの大きさ(粒径)は、例えば、1~300μmである。かようなサイズであれば圧力または加熱によりマイクロカプセルの殻を破壊しやすく、必要なときに粘着性を発現するというメリットを向上させる。
【0072】
また、マイクロカプセルBのコアには、顔料、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤などの添加剤を添加してもよい。一実施形態としては、マイクロカプセルBのコアは、粘着剤のみからなる。
【0073】
マイクロカプセルBにおいては、コア材料100質量部に対し、シェル材料を5~20質量部とすることが好ましい。シェル材料の含有量をかような範囲とすることで、適度に破壊されやすく、また、マイクロカプセルとしての性能を維持しやすい。
【0074】
マイクロカプセルは、混合コアセルベーションなどの相分離法、界面重合法、in-situ法などの公知の方法を用いて製造することができる。中でも界面重合法を用いることが好ましい。
【0075】
より具体的には、マイクロカプセルBは例えば下記の方法により製造することができる。
【0076】
マイクロカプセルBの製造方法としては、例えば、粘着剤を構成するモノマーを予め非粘着性シェルでマイクロカプセル化し、次いで上記モノマーをマイクロカプセル内部で重合させる。この方法は、例えばシェル形成成分の重合条件と、粘着成分用モノマーの重合条件とに差があるような場合、特に有用である。例えば、重合温度、溶解性、pH、触媒等に差がある場合はその条件設定を行なうことにより、予めシェル形成成分のみを重合し、次いでシェル内部の粘着成分用モノマーを重合させることが可能である。この様な方法は、粘着成分用モノマーの種類、非粘着性シェルの種類や性質に応じて界面重合やインサイチュ重合等を採用することにより行なうことができる。粘着成分用モノマーには所望により、非重合性の粘着成分、例えばブチルゴム、松脂等を溶解して用いてもよく、あるいは他の成分を配合しておいてもよい。
【0077】
本発明のマイクロカプセル化粘着剤を得る別の方法としては粘着成分用モノマーを予めエマルジョン重合し、次いで非粘着性シェル形成用モノマーを上記エマルジョン中で重合させ、粘着剤をマイクロカプセル化する方法がある。この方法は最も汎用性があるが粘着成分用モノマーの重合と非粘着性シェル用モノマーの重合条件が近似し、最初に記載した方法が使用できないときに有用である。また重合を二段階に分けて行なうため、副反応が生じない。
【0078】
さらにまた別の方法としては、シェル形成と粘着成分の重合を同時に行なう方法である。この方法は、粘着成分用モノマーの親水性とシェル形成成分用モノマーの親水性に差がある場合等に有用である。
【0079】
界面重合法に用いられる乳化剤としては、公知の分散剤/界面活性剤を用いることができる。
【0080】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えば、アニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0081】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(バインダー樹脂)
粘着剤層は結着樹脂としてバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は粘着性をほぼ有していない。バインダー樹脂としては、具体的には、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。マイクロカプセルの結着性を考慮するとバインダー樹脂はポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0083】
ポリエステル系樹脂としては、エステル結合を主鎖中に有する樹脂であれば特に限定されず、非晶性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。マイクロカプセルの結着性を考慮するとバインダー樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0084】
ポリエステルは、単量体としてのポリオールと多価カルボン酸および/またはカルボン酸無水物(本実施形態において「カルボン酸成分」ともいう。)とが共重合してなるエステル結合を主鎖中に有する重合体である。
【0085】
上記のポリオールの具体例として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0086】
一方、上記のカルボン酸成分の具体例として、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の多価カルボン酸およびこれらの多価カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0087】
これらのポリオールおよびカルボン酸成分の組み合わせは限定されず、ポリエステルは、一種類の組み合わせに係る重合体であってもよいし、複数種類の組み合わせに係る重合体であってもよい。
【0088】
さらに、ポリエステルは、ウレタン変性ポリエステルであってもよい。ウレタン変性ポリエステルの具体例として、上記のポリオールとカルボン酸成分とを縮重合させて得られた重合体の末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールに、各種のポリイソシアネート化合物を反応させて得られた重合体(ポリエステルウレタン)などを挙げることができる。
【0089】
ウレタン変性ポリエステルである場合には、架橋剤を用いてもよい。すなわち、一実施形態として、バインダー樹脂が、ウレタン変性ポリエステル樹脂および架橋剤を含むコーティング液を用いて形成されてなる形態が挙げられる。
【0090】
架橋剤としては、公知の架橋剤が使用できる。例えば、以下に制限されないが、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0091】
架橋剤の添加量は、ウレタン変性ポリウレタン樹脂に対して、1~10質量%であることが好ましい。
【0092】
ポリエステル系樹脂は、市販品を用いてもよく、非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、バイロン(登録商標)200、バイロン(登録商標)600、バイロン(登録商標)630(以上、東洋紡社製)等が挙げられる。ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、バイロン(登録商標)UR-1400、バイロン(登録商標)UR-4800、バイロン(登録商標)UR-8300(以上、東洋紡社製)等が挙げられる。ポリエステル系樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
バインダー樹脂の含有量は、粘着剤層中、マイクロカプセルの結着性の観点から、3質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。また、バインダー樹脂の含有量は、粘着剤層中、マイクロカプセルによる粘着性発現の観点からは、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0094】
(粘着フィルムの被着体への貼付方法)
粘着フィルムの被着体への貼付方法は特に限定されるものではないが、例えば、部分的に粘着性を発現させて被着体への位置決めをした後、フィルムに加熱や加圧を施すことで粘着フィルムを被着体に貼付することができる。
【0095】
加熱の方法としては、ヘアドライヤー、赤外線・電子線等のヒーター、ヒートガン、アイロンなどの方法が挙げられる。
【0096】
また、加圧の方法としては、スキージでフィルム表面を順次均一に擦りつける方法が挙げられる。この工程において、粘着フィルムと被着体の間に生じた気泡を押し出し、粘着フィルムに生じたしわを伸ばすことができる。
【0097】
また、被着体への貼付方法は、水系媒体を用いる水貼りであっても、水系媒体を用いないいわゆるドライ貼りであってもよい。
【0098】
(用途)
第一実施形態の粘着フィルムの用途は、特に限定されず、具体的には、各種保護フィルム、ウインドウフィルム、装飾フィルムなどが挙げられる。より具体的には、壁紙などの内装材;看板、広告、交通標識等のマーキングフィルム;塗膜保護フィルム、チッピングフィルムなどの保護フィルムなどが挙げられる。
【0099】
特に大面積へ一枚張りする必要のある移動体用途の粘着フィルムであることも好適な一実施形態である。移動体としては、特に限定されるものではないが、例えば、車両、航空機、船舶、ブルドーザ、ショベルカー、トラッククレーン、フォークリフト等の移動体が挙げられる。車両としては、ガソリンやバイオエタノール等を燃料とする自動車、二次電池や燃料電池を利用した電気自動車、ハイブリッド自動車等の四輪自動車(乗用車、トラック、バス等);二輪のバイク、自転車;鉄道車両(電車、ハイブリッド電車、機関車等)などが挙げられる。
【実施例0100】
本発明の効果を、以下の実施例を用いて説明する。特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0101】
(実施例1)
(マイクロカプセルAの製造)
メタクリル酸メチル:メタクリル酸ステアリル=2:3(質量比)をシェル材料とし、シェル20質量部、固形分30%のギ酸水溶液100質量部を混ぜ、重合開始剤(tert-Butyl Hydroperoxide )を用いて、in situ重合法によりマイクロカプセル化した。ろ過で分離し、乾燥してマイクロカプセルAを得た。
【0102】
(マイクロカプセルBの製造)
シェル材料として二塩化イソフタロイル及びp-フェニレンジアミン、シェル材料100質量部に対して粘着剤を構成するモノマー(アクリル酸ブチル:アクリル酸=95:5(質量比))10質量部、および重合開始剤(AIBN)を混ぜ、界面重合法によりシェル材料を重合させて、粘着剤を構成するモノマーをマイクロカプセル化した。次いで上記モノマーをマイクロカプセル内部で重合させ、ろ過で分離し、乾燥してシェルがポリアミドでアクリル系粘着剤を内包するマイクロカプセルBを得た。
【0103】
(塗工液の製造)
バインダー樹脂(固形分)(バイロン(登録商標)UR-1400)100質量部に対して、マイクロカプセルA 20質量部、マイクロカプセルB 80質量部を配合し、撹拌・混合して粘着剤組成物を調製した。
【0104】
上記粘着剤組成物を、ウレタンフィルムに塗工し、80℃で乾燥させて溶媒を揮発させ、厚さ40μmの粘着剤層を形成して、粘着剤フィルムを得た。
【0105】
(比較例1)
マイクロカプセルAを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤フィルムを得た。
【0106】
(評価方法)
摺りガラスに実施例で得られた粘着フィルムを均一圧力(2kgローラー)で圧着貼付し、貼付後5分後に粘着剤面側からデジタル顕微鏡にて面積接着率(%)を観察した。各粘着フィルム5枚について上記評価を行い、平均値を算出した。
【0107】
実施例1は、88%、比較例1は、30%であった。
【0108】
以上の結果より、マイクロカプセルAを含むことで、面積接着率が向上していることがわかる。これにより、実施例の粘着フィルムは、被着体に貼付した後の浮き・剥がれが抑制されることがわかる。
【符号の説明】
【0109】
10 粘着フィルム、
11 基材、
12 粘着剤層、
13 マイクロカプセルA、
14 マイクロカプセルB。
図1