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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148023
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】血管内留置医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20231005BHJP
   A61M 29/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B17/12
A61M29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055845
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 北斗
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD54
4C160DD65
4C160MM33
4C267AA05
4C267AA28
4C267AA58
4C267AA80
4C267BB02
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB33
4C267BB36
4C267BB40
4C267CC08
4C267EE20
4C267GG24
4C267GG46
4C267HH08
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することが可能な構造の血管内留置医療器具を提供する。
【解決手段】血管内留置医療器具100は、血管360内に留置されて当該血管360を閉塞する血管内留置医療器具であり、血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体籠10と、1つ以上の血流通過部30を有し、本体籠10内に配置されており、血流を通過可能に抑制して血栓320の成長を促す血栓促進部20と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体籠と、
1つ以上の血流通過部を有し、前記本体籠内に配置されており、血流を通過可能に抑制して血栓の成長を促す血栓促進部と、
を備える血管内留置医療器具。
【請求項2】
当該血管内留置医療器具がガイドカテーテルによる拘束から解除されて前記本体籠が径方向に展開する際に前記血栓促進部を前記本体籠の径方向に展開する展開機構を備える請求項1に記載の血管内留置医療器具。
【請求項3】
前記展開機構は、弾性片を含み、
前記弾性片は、一端部が前記本体籠の基端部に固定されており、他端部が前記血栓促進部の周縁部に固定されており、当該周縁部を径方向外側に付勢している請求項2に記載の血管内留置医療器具。
【請求項4】
前記弾性片の前記他端部は、前記本体籠に対して固定されている請求項3に記載の血管内留置医療器具。
【請求項5】
前記弾性片の前記他端部は、前記本体籠に対して非固定状態とされている請求項3に記載の血管内留置医療器具。
【請求項6】
前記展開機構は、複数の前記弾性片を含み、
前記複数の弾性片には、前記他端部が前記本体籠に対して固定されている第1弾性片と、前記他端部が前記本体籠に対して非固定状態とされている第2弾性片と、が含まれている請求項3に記載の血管内留置医療器具。
【請求項7】
前記展開機構は、複数の前記第1弾性片と、複数の前記第2弾性片と、を含む請求項6に記載の血管内留置医療器具。
【請求項8】
前記本体籠の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
当該血管内留置医療器具は、前記連結部材から先端側に向けて前記本体籠の内部に延出している棒状部材を更に備える請求項2から7のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項9】
前記本体籠の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
当該血管内留置医療器具は、前記連結部材から先端側に向けて前記本体籠の内部に延出している棒状部材を更に備え、
前記弾性片の前記一端部は、前記棒状部材の基端部に固定されることによって、前記本体籠の基端部に固定されている請求項3から7のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項10】
前記展開機構は、前記棒状部材の周囲に配置されている複数の前記弾性片を有する請求項9に記載の血管内留置医療器具。
【請求項11】
前記血栓促進部の展開後の外形は、前記本体籠の展開後の内径と略等しい外径の円形状であり、
前記血栓促進部の中心部には、前記棒状部材が挿通可能な挿通孔が形成されており、
少なくとも、前記血栓促進部が展開した状態では、前記棒状部材が前記挿通孔を貫通する請求項8から10のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項12】
前記血栓促進部の展開後の外形は、前記本体籠の展開後の内径と略等しい外径の円形状であり、
前記血栓促進部は、前記円形状の周方向に並ぶ複数の開口部を有する請求項2から11のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項13】
前記血栓促進部は、多孔膜により構成されている請求項1から12のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項14】
前記血栓促進部は、多孔の各々の開口径よりも大寸法の開口部を有する請求項13に記載の血管内留置医療器具。
【請求項15】
前記血栓促進部は、開口部を有する不透水膜により構成されている請求項1から12のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
【請求項16】
前記血栓促進部は、開口と、前記開口を開閉可能な弁部と、を有する弁部材により構成されている請求項1に記載の血管内留置医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内留置医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の血管内留置医療器具(同文献には、閉塞デバイスと記載)は、メッシュ状の複数の本体籠(同文献には、メッシュキャリッジと記載)と、プッシャワイヤ(同文献には、コアワイヤと記載)が連結される連結部材(同文献には、マーカーと記載)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-120028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1に記載の血管内留置医療器具は、血管内の所望の部位を短時間で閉塞する観点から、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することが可能な構造の血管内留置医療器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体籠と、
1つ以上の血流通過部を有し、前記本体籠内に配置されており、血流を通過可能に抑制して血栓の成長を促す血栓促進部と、
を備える血管内留置医療器具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、血管内の所望の部位をより短時間で閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る血管内留置医療器具の側面図であり、血管内留置医療器具がガイドカテーテル内に収容された状態を示す。
図2図2(a)、図2(b)及び図2(c)は第1実施形態に係る血管内留置医療器具の側面図であり、このうち図2(a)は血管内留置医療器具の縮径状態を示し、図2(c)は血管内留置医療器具の自然状態を示し、図2(b)は血管内留置医療器具が図2(a)に示す縮径状態から図2(c)に示す自然状態に切り替わる途中の状態を示す。
図3図3(a)、図3(b)及び図3(c)は第1実施形態に係る血管内留置医療器具を先端側から視た図であり、このうち図3(a)は血管内留置医療器具の縮径状態を示し、図3(c)は血管内留置医療器具の自然状態を示し、図3(b)は血管内留置医療器具が図3(a)に示す縮径状態から図3(c)に示す自然状態に切り替わる途中の状態を示す。
図4図4(a)及び図4(b)は血管内留置医療器具を血管に留置する際の一連の動作を説明する側面図であり、このうち図4(a)は血管内留置医療器具がガイドカテーテル内に収容された状態を示し、図4(b)は血管内留置医療器具がガイドカテーテルによる拘束から解除された状態を示す。
図5図5(a)及び図5(b)は血管内留置医療器具を血管に留置する際の一連の動作を説明する先端側から視た図であり、このうち図5(a)は血管内留置医療器具がガイドカテーテル内に収容された状態を示し、図5(b)5は血管内留置医療器具がガイドカテーテルによる拘束から解除された状態を示す。
図6図6(a)、図6(b)及び図6(c)は第1実施形態における血管内留置医療器具の側面図であり、血管に留置された状態を示す。
図7図7(a)及び図7(b)は第2実施形態に係る血管内留置医療器具の側面図であり、このうち図7(a)は血管内留置医療器具の縮径状態を示し、図7(b)は血管内留置医療器具の自然状態を示す。
図8図8(a)及び図8(b)は第2実施形態に係る血管内留置医療器具を先端側から視た図であり、このうち図8(a)は血管内留置医療器具の縮径状態を示し、図8(b)は血管内留置医療器具の自然状態を示す。
図9】第2実施形態の変形例に係る血管内留置医療器具を先端側から視た図であり、当該血管内留置医療器具の自然状態を示す。
図10】第3実施形態における血管内留置医療器具の側面図であり、当該血管内留置医療器具の自然状態を示す。
【0009】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図6(c)を用いて第1実施形態を説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また、本発明の血管内留置医療器具100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要は無く、一つの構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0010】
図1図4(b)及び図5(b)等に示すように、本実施形態に係る血管内留置医療器具100は、血管360内に留置されて当該血管360を閉塞する血管内留置医療器具である。
血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体籠10と、血流を通過可能に抑制して血栓320の成長を促す血栓促進部20と、を備える。
血栓促進部20は、1つ以上の血流通過部30を有し、本体籠10内に配置されている。
なお、ここで「血流を通過可能に抑制する」とは、血流が通過することを許容しつつも、通過する血流の大きさを抑制することを意味している。
また、図1から図6(c)において、本体籠10の内部構造を見やすくするために、便宜的に当該本体籠10の編み目を点線で図示している。
【0011】
血管内留置医療器具100は、後述するガイドカテーテル210に収容された状態で血管360内における所望の部位に搬送される。
血管内留置医療器具100の外径は、ガイドカテーテル210の内径よりも大きい寸法に設定されている。このため、ガイドカテーテル210に収容されている間は、血管内留置医療器具100は、当該血管内留置医療器具100の外径及び内径が相対的に小さい縮径状態(図1図2(a)、図3(a)及び図4(a)等参照)となっている。そして、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、血管内留置医療器具100は縮径状態から拡径状態(図2(c)、図3(c)及び図4(c)参照)へと弾性復元する。これにより、血管内留置医療器具100は、血管360内における所望の部位に留置される(固定される)。そして、血管内留置医療器具100の内部及びその周囲に血栓320が形成されることによって、血管360の所望の部位が閉塞される(図6(a)、図6(b)及び図6(c)参照)。更に、血管内留置医療器具100の留置後、数日から数週間経過すると、血管360の内壁において、血管内留置医療器具100の周囲が器質化することにより、当該血管内留置医療器具100が血管360内における所望の部位に対してより強固に固定される。
なお、血管内留置医療器具100の縮径状態とは、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている状態を意味している。また、血管内留置医療器具100の拡径状態とは、少なくとも縮径状態よりも拡径した状態を意味しており、例えば、血管内留置医療器具100の自然状態である。
また、以下の説明において、血管内留置医療器具100の各部の形状の説明は、特に断りが無い限り、外力が付与されていない自然状態での形状を説明したものである。
【0012】
本実施形態によれば、血管内留置医療器具100は、メッシュ状の本体籠10に加えて、本体籠10内に配置されており、血栓320の成長を促す血栓促進部20を更に備えている。
これにより、血管内留置医療器具100の留置後に、メッシュ状の本体籠10の編み目内と、血栓促進部20と、に血栓320が形成されるようにできるので、血管内留置医療器具100が血栓促進部20を備えていない場合と比較して、より短時間で血管360内の所望の部位を閉塞することができる。
また、血栓促進部20は血流通過部30を有し、血管内留置医療器具100を留置した直後は、血流は血流通過部30を介して血栓促進部20を通過可能となっている。そして、時間の経過とともに、血栓促進部20において血栓320が徐々に成長し、成長した血栓320によって血流通過部30が閉塞される。
このため、血管内留置医療器具100の内部及びその周囲における血栓の成長に伴って、血管内留置医療器具100が血流から受ける圧力が徐々に高まるようにできる(血管内留置医療器具100が血流から急に大きな圧力を受けないようにできる)ので、血管内留置医療器具100が、血管360に対して相対的に変位してしまうことを抑制できる。すなわち、血管内留置医療器具100が血管360内の所望の部位に留置された状態を維持することができるので、当該所望の部位をより確実に閉塞することができる。
【0013】
血管内留置医療器具100は、デリバリー装置200(図1図4(a)及び図4(b)参照)によって血管360内における所望の部位に搬送及び留置される。なお、図1図4(a)及び図4(b)においては、ガイドカテーテル210を当該ガイドカテーテル210の軸方向に沿った断面図で示している。
デリバリー装置200は、例えば、血管内留置医療器具100が収容される上述のガイドカテーテル210と、血管内留置医療器具100と連結されるプッシャワイヤ220と、を備えている。
ガイドカテーテル210は、例えば、一方向に長尺な管状に形成されている。ガイドカテーテル210の基端部には不図示の操作部が設けられている。
ガイドカテーテル210は、血管内留置医療器具100に対して軸方向に摺動させることによって抜去可能に当該血管内留置医療器具100に外挿される。
ガイドカテーテル210に収容されている間は、血管内留置医療器具100はガイドカテーテル210によって外周囲を拘束され、ガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている。
プッシャワイヤ220は、例えば、一方向に長尺なワイヤ部材によって構成されている。プッシャワイヤ220の先端部221には、例えば、後述する連結部材61に対して螺合によって着脱可能に装着される装着部222が設けられている。本実施形態の場合、装着部222の外周面にはねじ山が形成されており、装着部222は雄ねじ形状となっている。装着部222を介して、プッシャワイヤ220の先端部221は本体籠10の基端部12と連結される。血管内留置医療器具100が連結されたプッシャワイヤ220をガイドカテーテル210内に挿入し、基端側から先端側へと押し込んでいくことによって、血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210における所望の部位まで搬送することができる。
【0014】
ガイドカテーテル210の材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレンなどの摩擦抵抗が低いフッ素系樹脂であることが好ましい。これにより、生体器官内を移動する際において、ガイドカテーテル210の、血管360の内壁に対する摺動抵抗を低減することができる。
プッシャワイヤ220の材料は、特に限定されないが、例えば、ニチノールなどの超弾性合金であることが挙げられる。
【0015】
例えば、ガイドカテーテル210の外周面には、親水性剤がコーティングされていることも好ましい。これにより、血管360の内壁に対するガイドカテーテル210の摺動抵抗を低減することができ、ガイドカテーテル210の操作性が良好となる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の場合、本体籠10の全体は、例えば、複数本のワイヤ部材によって中空の円柱状に編組されている。
本体籠10を構成するワイヤ部材の材料は、特に限定されないが、例えば、ニチノールなどの超弾性合金であることが挙げられる。ただし、本体籠10を構成するワイヤ部材の材料は、例えば、樹脂材料であってもよい。
本体籠10の外径及び内径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定である。ただし、本発明において、本体籠10の内径及び外径の各々は、軸方向において変化していてもよい。
上述のように、血管内留置医療器具100を血管360内における所望の部位に搬送する際には、血管内留置医療器具100はガイドカテーテル210内に収容される。この状態では、本体籠10は当該ガイドカテーテル210によって拘束され、ガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている(縮径状態となっている)(図1等参照)。そして、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、本体籠10を構成しているワイヤ部材の弾性復元力及び後述する展開機構40の弾性復元力によって、当該本体籠10は拡径状態(図2(c)等参照)に弾性復元する。より詳細には、縮径状態から拡径状態に弾性復元力する際に、本体籠10は、径方向外側に拡径する一方で、軸方向内側に収縮する。
【0017】
以下の説明において、本体籠10の周方向を単に周方向と称し、本体籠10の軸方向を単に軸方向と称し、本体籠10の径方向を単に径方向と称する場合がある。また、先基端方向とは、本体籠10の長手方向である。軸心とは、本体籠10の長手方向に沿った中心軸を意味する。
【0018】
図1図4(a)及び図4(b)に示すように、本体籠10の基端部12には、例えば、血管内留置医療器具100をプッシャワイヤ220に対して連結するための連結部材61が設けられている。
連結部材61は、例えば、本体籠10の基端部12の中心(軸中心)に配置されている。連結部材61は、例えば、本体籠10の基端面15から基端側に向けて突出している円筒状に形成されている。連結部材61は、例えば、本体籠10の基端面15の中心部に配置されている。連結部材61は、本体籠10と同軸に配置されている。
連結部材61は、例えば、プッシャワイヤ220の装着部222に対して着脱可能に螺合する雌ねじ形状のものである。連結部材61が装着部222に対して螺合することによって、本体籠10はプッシャワイヤ220の先端部221に対して連結される。すなわち、連結部材61を介して、血管内留置医療器具100とプッシャワイヤ220とが互いに連結されている。また、連結部材61と装着部222との螺合を解除することによって、血管内留置医療器具100とプッシャワイヤ220との連結を解除することができる。
【0019】
図2(a)から図3(c)に示すように、血管内留置医療器具100は、例えば、連結部材61から先端側に向けて本体籠10の内部に延出している棒状部材66を備えている。
棒状部材66は、例えば、一方向に長尺な丸棒状に形成されており、本体籠10と同軸に配置されている。棒状部材66は、本体籠10の基端(連結部材61の先端)から当該本体籠10の軸方向における中間部に亘って延在している。より詳細には、棒状部材66の基端面は、連結部材61と直接又は間接的に接続されている。棒状部材66の先端面は、例えば、軸方向において本体籠10の先端面14よりも基端側に配置されている。
棒状部材66の外径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。棒状部材66の外径は、例えば、連結部材61の外径よりも大きい寸法に設定されている一方で、本体籠10の内径よりも小さい寸法に設定されている。より詳細には、例えば、本体籠10の縮径状態及び拡径状態の各々において、棒状部材66の外周面と本体籠10の内周面との間に間隙が形成されている。
棒状部材66の基端部68には、後述する複数の弾性片50が固定されている。
なお、棒状部材66の外径は上記の例に限定されず、棒状部材66の外径は、例えば、連結部材61の外径よりも小さい寸法に設定されていてもよい。
【0020】
本実施形態の場合、血栓促進部20は、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、後述する展開機構40によって、本体籠10が径方向に展開する際に本体籠10の径方向に展開されるように構成されている。
より詳細には、図1等に示すように、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210に収容された状態では、血栓促進部20は、本体籠10の縮径に追従して折り畳まれた収縮状態となっている。そして、図2(b)、図2(c)、図3(b)及び図3(c)に示すように、本体籠10が径方向に展開(拡径)する際に、当該本体籠10の展開に追従して血栓促進部20は径方向に展開された展開状態となる。
図3(c)に示すように、血栓促進部20の展開後の外形は、先端側から視たときに、本体籠10の展開後の内径と略等しい外径の円形状となっている。
このような構成によれば、血栓促進部20に対して血流が十分に接触するようにできるので、血栓促進部20における血栓320の成長がより促進される。
【0021】
また、血栓促進部20の中心部には、棒状部材66が挿通可能な挿通孔26が形成されている。後述するように、少なくとも、血栓促進部20が展開した状態では、棒状部材66が挿通孔26を貫通する。以下、血栓促進部20の形状の説明は、特に断りが無い限り、展開状態での形状を説明したものである。
血栓促進部20は、本体籠10と同軸に配置されており、当該血栓促進部20の先端面20a及び基端面20bの各々の面直方向は軸方向となっている。図2(a)~図2(c)に示すように、血栓促進部20は、軸方向における本体籠10の中間部に配置されている。
図3(c)に示すように、血栓促進部20の外径は、例えば、本体籠10の内径と略等しい寸法又は当該寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。また、挿通孔26の内径は棒状部材66の外径と略等しい寸法に設定されている。
挿通孔26に棒状部材66が挿通された状態では、血栓促進部20は、棒状部材66に沿って軸方向に摺動可能となっている。
【0022】
本実施形態の場合、血栓促進部20は、例えば、多孔膜により構成されている。
これにより、多孔膜の多孔(不図示)を介して血流が血栓促進部20を通過することができるので、血管内留置医療器具100において血栓320が十分に成長するまでの間、血管内留置医療器具100が血流から受ける圧力をより低減することができる。
また、血栓促進部20は、例えば、円形状の周方向に並ぶ複数の開口部24(図3(a)~図3(c)参照)を有する。
これにより、複数の開口部24を介して血流が血栓促進部20を通過することができるので、血管内留置医療器具100において血栓320が十分に成長するまでの間、血管内留置医療器具100が血流から受ける圧力をより一層低減することができる。
本実施形態の場合、血栓促進部20の血流通過部30は、多孔膜の多孔と、開口部24と、によって構成されている。
図3(a)~図3(c)に示す例では、血栓促進部20は、例えば、6つの開口部24を有する。各開口部24は、血栓促進部20を厚み方向に貫通している。先端側から視たときに、各開口部24は、例えば、周方向において略等間隔に配置されている。
本実施形態の場合、各開口部24は、例えば、上記多孔膜の多孔(不図示)の各々の開口径よりも大寸法に設定されている。
これにより、各開口部24を介して血流がより良好に通過するようにできる。
なお、本発明において、血栓促進部20が有する開口部24の数は特に限定されず、例えば、1つでもよい。また、血栓促進部20は、例えば、開口部24を有していなくてもよい。この場合であっても、血栓促進部20の多孔を介して血流は当該血栓促進部20を通過することができる。
【0023】
図2(a)~図3(c)に示すように、展開機構40は、例えば、棒状部材66の周囲に配置されている複数の弾性片50を含む。
各弾性片50の一端部(本実施形態の場合、基端部52)は、例えば、本体籠10の基端部12に固定されており、各弾性片50の他端部(本実施形態の場合、先端部51)は、例えば、血栓促進部20の周縁部(本変形例の場合、外周縁部21)に固定されている。そして、各弾性片50は、血栓促進部20の周縁部を径方向外側に付勢している。
これにより、ガイドカテーテル210による拘束から解除されると、弾性片50の付勢力にしたがって、血栓促進部20が径方向外側に展開するようにできる。また、弾性片50の付勢力によって、血栓促進部20の展開状態を良好に維持することができる。
【0024】
本実施形態の場合、各弾性片50の一端部(基端部52)は、例えば、それぞれ棒状部材66の基端部68に固定されることによって、本体籠10の基端部12に固定されている。
また、各弾性片50の他端部(先端部51)は、例えば、それぞれ本体籠10に対して固定されている。
より詳細には、一例として、展開機構40は、4つの弾性片50を有する。ただし、本発明において、展開機構40が含む弾性片50の数はこの例に限定されない。
図3(c)等に示すように、先端側から視たときに、各弾性片50の先端部51は、例えば、周方向において約90度間隔で、血栓促進部20の外周縁部21及び本体籠10に対して固定されている。同様に、先端側から視たときに、各弾性片50の基端部52は、例えば、周方向において約90度間隔で棒状部材66の基端部68に固定されている。
また、各弾性片50の先端部51には、例えば、それぞれ溶着部53が形成されており、当該溶着部53を介して、各先端部51は血栓促進部20の外周縁部21及び本体籠10のワイヤ部材に対して固定(溶着)されている。同様に、各弾性片50の基端部52には、例えば、それぞれ溶着部(不図示)が形成されており、当該溶着部を介して、各基端部52が棒状部材66の基端部68の外周面に対して固定(溶着)されている。
また、側面視において、図2(c)に示すように、各弾性片50は、基端側から先端側に向けて徐々に径方向外側に変位する形に傾斜している。各弾性片50は、例えば、当該弾性片50の各々の基端部52を揺動軸として、径方向に揺動可能となっている。
各弾性片50は、一例として、板バネである。各弾性片50の板面は、例えば、それぞれ径方向を向いて配置されている。
板バネの材料は、特に限定されないが、例えば、ニチノールなどの超弾性合金であることが挙げられる。
【0025】
図1に示すように、ガイドカテーテル210に収容されている間は、ガイドカテーテル210の内壁によって押圧されて、各弾性片50の先端部51は棒状部材66に沿うように径方向内側に弾性変形している。
図2(b)及び図2(c)に示すように、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、各弾性片50の先端部51は、その弾性復元力によって、当該先端部51の基端部52を揺動軸として径方向外側に揺動する。
これにより、血栓促進部20は、弾性片50の付勢力にしたがって、折り畳まれた収縮状態(図1図2(a)及び図3(a))から、径方向外側に展開された展開状態(図2(c)及び図3(c)参照)となる。この際に、血栓促進部20の挿通孔26に棒状部材66が挿通され、当該血栓促進部20は棒状部材66に沿って軸方向に摺動し、本体籠10の先端部11に対して基端側に相対的に変位する。このようにして、血栓促進部20が、本体籠10と同軸となるように展開される。
ここで、上述のように、弾性片50の先端部51は、本体籠10に固定されている。このため、本体籠10の弾性復元力によって、弾性片50の先端部51が径方向外側に揺動する動作を補助することができる。よって、本体籠10が展開する際に血栓促進部20がより速やかに展開するようにできるとともに、当該血栓促進部20の展開状態をより確実に維持することができる。
【0026】
このように、血管内留置医療器具100は、例えば、当該血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されて本体籠10が径方向に展開する際に血栓促進部20を本体籠10の径方向に展開する展開機構40を備えている。
これにより、血栓促進部20が良好に血流と接触するようにできるので、血栓促進部20における血栓320の成長がより促進される。
【0027】
また、展開機構40は、弾性片50を含み、弾性片50は、一端部が本体籠10の基端部12に固定されており、他端部が血栓促進部20の周縁部に固定されており、当該周縁部を径方向外側に付勢している。
これにより、ガイドカテーテル210による拘束から解除されると、弾性片50の付勢力によって、血栓促進部20が径方向外側に展開するようにできる。また、弾性片50の付勢力によって、血栓促進部20の展開状態を良好に維持することができる。
【0028】
また、本体籠10の基端部12には、当該血管内留置医療器具100をプッシャワイヤ220に対して連結するための連結部材61が設けられており、当該血管内留置医療器具100は、連結部材61から先端側に向けて本体籠10の内部に延出している棒状部材66を更に備えている。弾性片50の一端部は、棒状部材66の基端部68に固定されることによって、本体籠10の基端部12に固定されている。
【0029】
以下、図4(a)から図6(c)を用いて、血管内留置医療器具100を血管360内の所望の部位に留置する際の動作の一例を説明する。なお、図6(a)~図6(b)において、血流の流れを矢印で示している。なお、図4(a)から図6(c)において、血管360を縦断面図で示している。
また、予め血管360内にガイドカテーテル210を案内する不図示のガイドワイヤが挿入されている状態から説明する。
先ず、ガイドカテーテル210を、ガイドワイヤに沿って導入する。より詳細にはガイドカテーテル210をガイドワイヤに外挿し、ガイドカテーテル210をガイドワイヤの軸方向に沿って基端側から先端側に摺動させながら、ガイドカテーテル210の先端部211を血管360内における所望の部位まで送り込む。ガイドカテーテル210の先端部211が当該所望の部位に到達したら、ガイドワイヤを抜去する。
続いて、血管内留置医療器具100が連結されたプッシャワイヤ220を、ガイドカテーテル210内に挿入し、基端側から先端側へと押し込んでいく。これにより、縮径状態(図4(a)及び図5(a)参照)の血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210の内周面に沿って基端側から先端側に摺動させながら、当該血管内留置医療器具100をガイドカテーテル210の先端部211まで押し込むことができる。
次に、この状態で血管内留置医療器具100を血管360内における所望の部位に留置する。より詳細には、ガイドカテーテル210を血管内留置医療器具100に対して相対的に後退させることによって、当該ガイドカテーテル210を血管内留置医療器具100から取り外す。これにより、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除され、本体籠10及び展開機構40の弾性片50は、各々の弾性復元力により、自然状態の形状(図4(b)及び図5(b))参照)、もしくは当該自然状態に近い形状に復元する。この際に、血栓促進部20も、本体籠10の弾性復元力及び弾性片50の付勢力(弾性復元力)によって展開状態となる。図4(b)及び図5(b)に示すように、血管内留置医療器具100の拡径状態(自然状態)において、本体籠10の内周面は、例えば、血管360の内壁に対して密着する。そして、連結部材61対するプッシャワイヤ220の連結を解除して、プッシャワイヤ220及びガイドカテーテル210をそれぞれ血管360から抜去する。
このようにして、血管内留置医療器具100が血管360内における所望の部位に留置される。なお、血管360において、血管内留置医療器具100は、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の下流側、基端側が血流の上流側に配置された姿勢で留置される。そして、本体籠10、血栓促進部20及びそれらの周囲に血栓320が形成されることによって、血管360内の所望の部位が閉塞され、血流が遮断される。
より詳細には、図6(a)に示すように、血管内留置医療器具100を留置した直後においては、血流は、血栓促進部20の開口部24や不図示の多孔を介して、本体籠10の内部を基端側から先端側に通過する。このため、上述のように、血管内留置医療器具100が血流から急に大きな圧力を受けないようにできるので、血管内留置医療器具100が、血管360に対して相対的に変位してしまうことを抑制できる。
続いて、図6(b)に示すように、時間の経過とともに、本体籠10の基端部12や、血栓促進部20の基端面20b側に血栓320が形成され、当該血栓320によって開口部24や多孔が徐々に閉塞される。これにより、血管内留置医療器具100の基端側において血栓320の成長が促進される。
そして、図6(c)に示すように、本体籠10、血栓促進部20、本体籠10の外周面17と血管360の内壁との間などに血栓320が形成されて、血管360における血管内留置医療器具100の配置領域が閉塞される。すなわち、血管内留置医療器具100によって、基端側から先端側への血流が遮断される。
図6(c)に示す例では、本体籠10の基端面15、血栓促進部20の基端面20b及びその周囲、開口部24の近傍、本体籠10の先端面14と血管360の内壁との境界部等に血栓320が形成されている。
【0030】
このように、本実施形態によれば、より短時間で、血管360内の所望の部位をより確実に閉塞することができる。
【0031】
〔第2実施形態〕
次に、図7(a)から図8(b)を用いて第2実施形態を説明する。なお、図7(a)から図8(b)において、本体籠10の内部構造を見やすくするために、便宜的に当該本体籠10の編み目を点線で図示している。
【0032】
図7(a)から図8(b)に示すように、本実施形態の場合、弾性片50の他端部(先端部51)が、本体籠10に対して非固定状態とされている点において上記の第1実施形態に係る血管内留置医療器具100と相違しており、その他の点においては上記の第1実施形態に係る血管内留置医療器具100と同様に構成されている。
このような構成によっても、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除され本体籠10が展開する際に、各弾性片50もその弾性復元力によって、径方向外側に揺動するようにできる。すなわち、本体籠10の弾性復元力と弾性片50の付勢力とによって、血栓促進部20を速やかに径方向に展開するようにできるとともに、血栓促進部20が展開された状態を良好に維持することができる。
【0033】
なお、本実施形態の場合も、第1実施形態と同様に、各弾性片50の先端部51は、例えば、血栓促進部20の外周縁部21に対して固定されている。ただし、本実施形態の場合、各先端部51は、例えば、不図示の接着剤を介して血栓促進部20に対して固定されている。
【0034】
<変形例>
次に、図9を用いて第2実施形態の変形例を説明する。
本変形例の場合、複数の弾性片50には、他端部(先端部51)が本体籠10に対して固定されている第1弾性片56と、当該他端部が本体籠10に対して非固定状態とされている第2弾性片57と、が含まれている。
このような構成によっても、血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除され本体籠10が展開する際に、各弾性片50もその弾性復元力によって、径方向外側に揺動するようにできる。すなわち、本体籠10の弾性復元力と弾性片50の付勢力とによって、血栓促進部20を速やかに径方向に展開するようにできるとともに、血栓促進部20が展開された状態を良好に維持することができる。
【0035】
より詳細には、展開機構40は、例えば、複数の第1弾性片56と、複数の第2弾性片57と、を含む。
本変形例の場合、一例として、展開機構40は、2つの第1弾性片56と、2つの第2弾性片57と、を含む。
図9に示す例では、周方向において、第1弾性片56と第2弾性片57とが交互に90度間隔で配置されている。
各第1弾性片56は、例えば、溶着部53を介して血栓促進部20の外周縁部21と本体籠10とに固定(溶着)されている。
【0036】
〔第3実施形態〕
次に、図10を用いて第3実施形態を説明する。なお、図10において、本体籠10の内部構造を見やすくするために、便宜的に当該本体籠10の編み目を点線で図示している。
【0037】
図10に示すように、本実施形態の場合、血栓促進部20は、開口82と、開口82を開閉可能な弁部84と、を有する弁部材80により構成されている。
このような構成によっても、血流が開口82を介して血栓促進部20を通過することができるので、血管内留置医療器具100において血栓320が十分に形成されるまでの間、血管内留置医療器具100が血流から受ける圧力を低減することができる。よって、血管内留置医療器具100が血管360内の所望の部位に留置された状態を維持することができる。
【0038】
弁部材80は、柔軟に構成されており弾性変形可能となっている。血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210に収容されている間は、弁部材80は当該ガイドカテーテル210によって拘束され、ガイドカテーテル210内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている(縮径状態となっている)。血管内留置医療器具100がガイドカテーテル210による拘束から解除されると、弁部材80はその弾性復元力によって拡径状態(図10)となる。
弁部材80は、一方向へ流体の流動を許容する一方で、当該一方向に対する反対方向への流体の流動を規制する。本実施形態の場合、弁部材80は、本体籠10内において、基端側から先端側への血流を許容する姿勢で配置される。
本実施形態の場合、弁部材80は、一例として、一般的なダックビル弁である。
より詳細には、弁部材80の弁部84は、例えば、それぞれ弾性変形可能な一対の嘴状部分86を有し、一対の嘴状部分86の各々の先端部の合わせ目が開口82を構成している。
図10に示すように、弁部84の内腔は、先端側に向けて徐々に窄まっている。
【0039】
本実施形態の場合、一対の嘴状部分86の各々が弾性変形することによって、開口82が開状態となり、一対の嘴状部分86の各々が弾性復元することによって、開口82が閉状態となる。
血管内留置医療器具100を留置した直後は、血流に押圧されて一対の嘴状部分86の各々が弾性変形し、開口82が開状態となる。このため、血流は開口82を介して弁部材80(血栓促進部20)を基端側から先端側に向けて通過可能となる。
続いて、時間の経過とともに血栓320が血管内留置医療器具100の基端側において成長すると、基端側から先端側に向けて開口82を通過する血流が少なくなる。すなわち、弁部材80が血流から受ける圧力が徐々に低減するので、一対の嘴状部分86の各々は徐々に弾性復元し、開口82が閉状態となる。そして、弁部材80の内部や、開口82及びその周縁部においても血栓320が形成され、血管360における血管内留置医療器具100の配置領域が閉塞される。すなわち、血管内留置医療器具100によって、基端側から先端側への血流が遮断される。
【0040】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0041】
例えば、上記の第1実施形態では、血流通過部30が、開口部24を有する多孔膜により構成されている例を説明したが、本発明において、血流通過部30は、少なくとも血流を通過可能に構成されていればよい。したがって、例えば、血流通過部30は、例えば、多孔膜の代わりに、開口部24を有する不透水膜により構成されていてもよい。この場合であっても、血流は開口部24を介して血流通過部30を通過することができる。
【0042】
また、上記においては、血管360において、血管内留置医療器具100が、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の下流側、基端側が血流の上流側に配置された姿勢で留置される例を説明した。ただし、本発明において、血管内留置医療器具100が留置される際の姿勢はこの例に限定されず、血管内留置医療器具100は、例えば、当該血管内留置医療器具100の先端側が血流の上流側、基端側が血流の下流側に配置された姿勢で留置されてもよい。
このような場合でも、血管内留置医療器具100と、血管内留置医療器具100の内部及びその周囲に形成される血栓と、によって、血管360内の所望の部位を閉塞し、血流を遮断することができる。
【0043】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)血管内に留置されて当該血管を閉塞する血管内留置医療器具であって、
メッシュ状の本体籠と、
1つ以上の血流通過部を有し、前記本体籠内に配置されており、血流を通過可能に抑制して血栓の成長を促す血栓促進部と、
を備える血管内留置医療器具。
(2)当該血管内留置医療器具がガイドカテーテルによる拘束から解除されて前記本体籠が径方向に展開する際に前記血栓促進部を前記本体籠の径方向に展開する展開機構を備える(1)に記載の血管内留置医療器具。
(3)前記展開機構は、弾性片を含み、
前記弾性片は、一端部が前記本体籠の基端部に固定されており、他端部が前記血栓促進部の周縁部に固定されており、当該周縁部を径方向外側に付勢している(2)に記載の血管内留置医療器具。
(4)前記弾性片の前記他端部は、前記本体籠に対して固定されている(3)に記載の血管内留置医療器具。
(5)前記弾性片の前記他端部は、前記本体籠に対して非固定状態とされている(3)に記載の血管内留置医療器具。
(6)前記展開機構は、複数の前記弾性片を含み、
前記複数の弾性片には、前記他端部が前記本体籠に対して固定されている第1弾性片と、前記他端部が前記本体籠に対して非固定状態とされている第2弾性片と、が含まれている(3)に記載の血管内留置医療器具。
(7)前記展開機構は、複数の前記第1弾性片と、複数の前記第2弾性片と、を含む(6)に記載の血管内留置医療器具。
(8)前記本体籠の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
当該血管内留置医療器具は、前記連結部材から先端側に向けて前記本体籠の内部に延出している棒状部材を更に備える(2)から(7)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(9)前記本体籠の基端部には、当該血管内留置医療器具をプッシャワイヤに対して連結するための連結部材が設けられており、
当該血管内留置医療器具は、前記連結部材から先端側に向けて前記本体籠の内部に延出している棒状部材を更に備え、
前記弾性片の前記一端部は、前記棒状部材の基端部に固定されることによって、前記本体籠の基端部に固定されている(3)から(7)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(10)前記展開機構は、前記棒状部材の周囲に配置されている複数の前記弾性片を有する(9)に記載の血管内留置医療器具。
(11)前記血栓促進部の展開後の外形は、前記本体籠の展開後の内径と略等しい外径の円形状であり、
前記血栓促進部の中心部には、前記棒状部材が挿通可能な挿通孔が形成されており、
少なくとも、前記血栓促進部が展開した状態では、前記棒状部材が前記挿通孔を貫通する(8)から(10)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(12)前記血栓促進部の展開後の外形は、前記本体籠の展開後の内径と略等しい外径の円形状であり、
前記血栓促進部は、前記円形状の周方向に並ぶ複数の開口部を有する(2)から(11)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(13)前記血栓促進部は、多孔膜により構成されている(1)から(12)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(14)前記血栓促進部は、多孔の各々の開口径よりも大寸法の開口部を有する(13)に記載の血管内留置医療器具。
(15)前記血栓促進部は、開口部を有する不透水膜により構成されている(1)から(12)のいずれか一項に記載の血管内留置医療器具。
(16)前記血栓促進部は、開口と、前記開口を開閉可能な弁部と、を有する弁部材により構成されている(1)に記載の血管内留置医療器具。
【符号の説明】
【0044】
10 本体籠
11 先端部
12 基端部
14 先端面
15 基端面
17 外周面
20 血栓促進部
20a 先端面
20b 基端面
21 外周縁部
24 開口部
26 挿通孔
30 血流通過部
40 展開機構
50 弾性片
51 先端部
52 基端部
53 溶着部
56 第1弾性片
57 第2弾性片
61 連結部材
66 棒状部材
68 基端部
80 弁部材
82 開口
84 弁部
86 嘴状部分
100 血管内留置医療器具
200 デリバリー装置
210 ガイドカテーテル
211 先端部
220 プッシャワイヤ
221 先端部
222 装着部
320 血栓
360 血管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10