(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148031
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】メンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
H05B 45/58 20200101AFI20231005BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20231005BHJP
H05B 45/12 20200101ALI20231005BHJP
H05B 45/14 20200101ALI20231005BHJP
H05B 47/14 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
H05B45/58
H05B47/20
H05B45/12
H05B45/14
H05B47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055853
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】川崎 眞司
(72)【発明者】
【氏名】前田 惠司
(72)【発明者】
【氏名】中山 猛
(72)【発明者】
【氏名】八重尾 大介
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA05
3K273BA33
3K273BA37
3K273CA01
3K273EA03
3K273EA08
3K273EA25
3K273EA40
3K273FA03
3K273FA08
3K273FA14
3K273FA29
(57)【要約】
【課題】メンテナンス時期の予測精度を高めることができるメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】メンテナンス方法は、(a)光源駆動ドライバ20の出力の経時的変化、及び/又は、プロジェクタ4の使用条件に基づいて、プロジェクタ4のメンテナンス時期を予測するステップと、(b)光源ユニット14から発する光の輝度を検出するステップと、(c)前記(b)の検出結果に基づいて、前記(a)で予測したメンテナンス時期を更新するステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を備えた機器のメンテナンス方法であって、
(a)前記光源の出力の経時的変化、及び/又は、前記機器の使用条件に基づいて、前記機器のメンテナンス時期を予測するステップと、
(b)前記光源から発する光の輝度を検出するステップと、
(c)前記(b)の検出結果に基づいて、前記(a)で予測した前記メンテナンス時期を更新するステップと、を含む
メンテナンス方法。
【請求項2】
前記機器は、前記光源を含む複数の部品を備え、
前記メンテナンス方法は、さらに、
(d)前記複数の部品の各々の寿命を示す寿命データに基づいて、前記複数の部品の各々の交換タイミングが所定の期間に集約されるように、前記交換タイミングを決定するステップを含む
請求項1に記載のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記メンテナンス方法は、さらに、
(e)前記(c)で更新した前記メンテナンス時期を示すメンテナンスデータを出力するステップを含む
請求項1又は2に記載のメンテナンス方法。
【請求項4】
前記機器は、前記光源から発する光を投影面に投影するプロジェクタであり、
前記プロジェクタは、前記光源の出力が一定となるように前記光源を制御する第1のモード、及び、前記光源から発する光の輝度が一定となるように前記光源を制御する第2のモードのいずれかに切り替え可能であり、
前記(b)において、前記光源から発する光の輝度、及び、前記光源の出力を検出し、
前記(c)において、前記プロジェクタが前記第1のモードに切り替えられた場合には、前記(b)で検出された輝度に基づいて前記(a)で予測した前記メンテナンス時期を更新し、前記プロジェクタが前記第2のモードに切り替えられた場合には、前記(b)で検出された前記光源の出力に基づいて前記(a)で予測した前記メンテナンス時期を更新する
請求項1~3のいずれか1項に記載のメンテナンス方法。
【請求項5】
前記(b)において、前記光源から発する光の輝度として、前記投影面の輝度を検出する
請求項4に記載のメンテナンス方法。
【請求項6】
前記メンテナンス方法は、さらに、
(f)前記(b)で検出した前記投影面の輝度に基づいて、前記光源の出力、及び/又は、前記プロジェクタのガンマ値を補正するステップを含む
請求項5に記載のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源を備えた機器のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源を備えた機器のメンテナンス方法が知られている。特許文献1に開示されたメンテナンス方法では、光源の吸光度経時変動の標準値と実測値とを比較することにより、光源のメンテナンス時期を予測(算出)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のメンテナンス方法では、メンテナンス時期の予測精度に改善の余地がある。
【0005】
本開示は、メンテナンス時期の予測精度を高めることができるメンテナンス方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示におけるメンテナンス方法は、光源を備えた機器のメンテナンス方法であって、(a)前記光源の出力の経時的変化、及び/又は、前記機器の使用条件に基づいて、前記機器のメンテナンス時期を予測するステップと、(b)前記光源から発する光の輝度を検出するステップと、(c)前記(b)の検出結果に基づいて、前記(a)で予測した前記メンテナンス時期を更新するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示におけるメンテナンス方法によれば、メンテナンス時期の予測精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るメンテナンスシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】プロジェクタの第1のモードを説明するための図である。
【
図3】プロジェクタの第2のモードを説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係るメンテナンスシステムの動作の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】第1のモードにおける光源ユニットの寿命の予測方法を説明するための図である。
【
図6】第2のモードにおける光源ユニットの寿命の予測方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施の形態)
[1.メンテナンスシステムの構成]
まず、
図1を参照しながら、実施の形態に係るメンテナンスシステム2の構成について説明する。
図1は、実施の形態に係るメンテナンスシステム2の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、メンテナンスシステム2は、プロジェクタ4(機器の一例)と、端末装置6と、サーバ装置8と、端末装置10とを備えている。なお、説明の都合上、
図1では、プロジェクタ4を1台のみ図示しているが、実際には、複数台のプロジェクタ4が存在しているものとする。
【0013】
プロジェクタ4は、例えば博物館又はアミューズメントパーク等のオンサイト12に設置されており、画像(例えば、展示物等を解説するための画像)を表す光をスクリーン等の投影面に投影する。プロジェクタ4は、ネットワーク(図示せず)を介して端末装置6と通信可能であり、後述する管理会社38の顧客であるユーザにより使用される。プロジェクタ4は、光源ユニット14(光源の一例)と、投影レンズ16と、光センサ18と、光源駆動ドライバ20(光源の一例)と、マイクロコンピュータ22(以下、「マイコン22」と呼ぶ)と、メモリ24とを有している。
【0014】
光源ユニット14は、画像を表す光を発する。図示しないが、光源ユニット14は、例えば、青色レーザダイオード等のレーザダイオード、コンデンサレンズ及びダイクロイックミラー等を含む照明光学系と、DMD(Digital Mirror Device)や液晶表示素子等の画像表示素子とを備える。
【0015】
投影レンズ16には、光源ユニット14からの光が入射する。投影レンズ16は、入射した光を投影面に拡大投影する。なお、図示しないが、光源ユニット14と投影レンズ16との間における光路には、光源ユニット14の青色レーザダイオードからの青色光を蛍光励起により黄色光に変換するための蛍光体ホイールが配置されている。
【0016】
光センサ18は、光源ユニット14と投影レンズ16との間における光路に配置され、光源ユニット14からの光の輝度を検出する。光センサ18により検出される輝度は、例えば0%~100%の数値で表される。
【0017】
光源駆動ドライバ20は、光源ユニット14のレーザダイオードの駆動を制御する。光源ユニット14のレーザダイオードは、光源駆動ドライバ20から出力される電圧や電流によってその点灯が制御される。本明細書において、光源駆動ドライバ20の出力とは、光源駆動ドライバ20から出力され、光源ユニット14のレーザダイオードに入力される電圧又は電流を意味する。光源ユニット14に入力される電圧や電流は、例えば0%~100%の数値で制御される。
【0018】
マイコン22は、光センサ18により検出された輝度を示すデータである光センサログを所定の時間毎に取得する。また、マイコン22は、光源駆動ドライバ20の出力を示すデータである光源制御ログを所定の時間毎に取得する。マイコン22は、取得した光センサログ及び光源制御ログを、ネットワークを介して端末装置6に送信するとともに、メモリ24に格納する。
【0019】
上述したプロジェクタ4の動作は、第1のモードと第2のモードとに切り替え可能である。ここで、
図2を参照しながら、第1のモードについて説明する。
図2の(a)は、第1のモードにおける光源ユニット14からの光の輝度の時間的な変化を示すグラフであり、
図2の(b)は、第1のモードにおける光源駆動ドライバ20の出力の時間的な変化を示すグラフである。
【0020】
第1のモードは、光源駆動ドライバ20の出力が一定となるように光源駆動ドライバ20を制御するモードである。この第1のモードでは、
図2の(b)に示すように、光源駆動ドライバ20の出力は例えば100%で一定に維持されるが、
図2の(a)に示すように、光源ユニット14からの光の輝度は、光源ユニット14の経時的劣化により例えば100%から徐々に低下する。この時、輝度維持率は、100%から徐々に低下するようになる。ここで、輝度維持率とは、光源駆動ドライバ20の出力値を一定とした場合において、任意のタイミング(プロジェクタ4の工場出荷時点等)における光源ユニット14からの光の輝度に対する、当該任意のタイミングから所定期間経過した時点における光源ユニット14からの光の輝度の割合を意味する。第1のモードでは、
図2の(a)に示すように、光源ユニット14からの光の輝度が例えば時間T1で50%まで低下した場合に、この時間T1を光源ユニット14の寿命と判断する。なお、光源ユニット14が寿命と判断される輝度維持率は50%に限定されず、任意に設定され得る。
【0021】
次に、
図3を参照しながら、第2のモードについて説明する。
図3の(a)は、第2のモードにおける光源ユニット14からの光の輝度の時間的な変化を示すグラフであり、
図3の(b)は、第2のモードにおける光源駆動ドライバ20の出力の時間的な変化を示すグラフである。
【0022】
第2のモードは、光源ユニット14からの光の輝度が一定となるように光源駆動ドライバ20を制御するモードである。この第2のモードでは、
図3の(b)に示すように、光源駆動ドライバ20の出力を例えば80%から徐々に増大させることにより、
図3の(a)に示すように、光源ユニット14からの光の輝度は、例えば80%で一定に維持される。この時、輝度維持率は、100%から徐々に低下するようになる。
図3の(b)に示すように、光源駆動ドライバ20の出力が例えば時間T2で100%に到達した場合には、光源駆動ドライバ20の出力をそれ以上増大させることができないため、時間T2以降は、光源駆動ドライバ20の出力は100%で一定に維持される。その結果、
図3の(a)に示すように、光源ユニット14からの光の輝度は、時間T2で80%から低下し始めるようになる。第2のモードでは、上記時間T2を光源ユニット14の寿命と判断する。
【0023】
図1に戻り、端末装置6は、例えばパーソナルコンピュータであり、プロジェクタ4とともにオンサイト12に設置されている。端末装置6は、ネットワークを介してプロジェクタ4と通信可能であり、且つ、インターネット26を介してサーバ装置8と通信可能である。端末装置6は、監視アプリケーション28(以下、「監視アプリ28」と呼ぶ)と、メモリ30とを有している。
【0024】
監視アプリ28は、プロジェクタ4を監視するためのアプリケーションであり、プロジェクタ4から送信された光センサログ及び光源制御ログを受信する。監視アプリ28は、受信した光センサログ及び光源制御ログを、インターネット26を介してサーバ装置8にアップロードするとともに、メモリ30に格納する。
【0025】
サーバ装置8は、クラウド32に設置されている。サーバ装置8は、ウェブサーバ34と、データベース36とを有している。サーバ装置8は、インターネット26を介して、端末装置6及び端末装置10の各々と通信可能である。
【0026】
ウェブサーバ34は、端末装置6から送信された光センサログ及び光源制御ログを受信する。ウェブサーバ34は、受信した光センサログ及び光源制御ログをデータベース36に格納する。なお、データベース36には、プロジェクタ4毎に、光センサログ及び光源制御ログが格納されている。
【0027】
端末装置10は、例えばパーソナルコンピュータであり、オンサイト12から離れた場所にある管理会社38に設置されている。管理会社38は、プロジェクタ4を管理することにより、プロジェクタ4のメンテナンス計画を作成するための会社である。端末装置10は、インターネット26を介してサーバ装置8と通信可能である。
【0028】
端末装置10は、ウェブブラウザ40と、メンテナンスシミュレーションアプリケーション42(以下、「メンテナンスシミュレーションアプリ42」と呼ぶ)と、光源寿命予測アプリケーション44(以下、「光源寿命予測アプリ44」と呼ぶ)と、メモリ46とを有している。
【0029】
ウェブブラウザ40は、インターネット26を介して、サーバ装置8から光センサログ及び光源制御ログをダウンロードする。ウェブブラウザ40は、ダウンロードした光センサログ及び光源制御ログをメモリ46に格納する。
【0030】
メンテナンスシミュレーションアプリ42は、管理会社38の従業員等により入力された光源ユニット14の出力の経時的変化、及び/又は、プロジェクタ4の使用条件に基づいてシミュレーションを実行することにより、プロジェクタ4のメンテナンス時期(例えば、光源ユニット14の交換時期等)を予測する。本明細書において、光源ユニット14の出力の経時的変化とは、光源ユニット14からの光の輝度の劣化カーブ等を意味する。また、プロジェクタ4の使用条件とは、プロジェクタ4の使用時間やプロジェクタ4の設定輝度の固有条件と、プロジェクタ4の使用環境に起因する埃条件や環境温度等の外的条件とを意味する。
【0031】
メンテナンスシミュレーションアプリ42は、メモリ46に格納された光源寿命予測データ(後述する)に基づいて(すなわち、光センサログ又は光源制御ログに基づいて)、予測したメンテナンス時期を更新する。メンテナンスシミュレーションアプリ42は、更新したメンテナンス時期を示すメンテナンスデータとして、サマリーファイル及び個別ファイル(後述する)を出力する。
【0032】
光源寿命予測アプリ44は、メモリ46に格納された光センサログの最新値又は光源制御ログの最新値に基づいて、プロジェクタ4の光源ユニット14の寿命を予測する。光源寿命予測アプリ44は、予測した光源ユニット14の寿命を示す光源寿命予測データをメモリ46に格納する。
【0033】
[2.メンテナンスシステムの動作]
次に、
図4を参照しながら、実施の形態に係るメンテナンスシステム2の動作について説明する。
図4は、実施の形態に係るメンテナンスシステム2の動作の流れを示すシーケンス図である。
【0034】
図4に示すように、プロジェクタ4の光センサ18は、光源ユニット14からの光の輝度を検出し、マイコン22は、光源駆動ドライバ20の出力を取得する(S101)。プロジェクタ4のマイコン22は、光センサ18からの光センサログ及び光源駆動ドライバ20からの光源制御ログを取得し、取得した光センサログ及び光源制御ログを、ネットワークを介して端末装置6に送信する(S102)。
【0035】
端末装置6の監視アプリ28は、プロジェクタ4から送信された光センサログ及び光源制御ログを受信し(S103)、受信した光センサログ及び光源制御ログを、インターネット26を介してサーバ装置8にアップロードする(S104)。
【0036】
サーバ装置8のウェブサーバ34は、端末装置6から送信された光センサログ及び光源制御ログを受信し、受信した光センサログ及び光源制御ログをデータベース36に格納する(S105)。
【0037】
端末装置10のメンテナンスシミュレーションアプリ42は、管理会社38の従業員等により入力された光源ユニット14の出力の経時的変化、及び/又は、プロジェクタ4の使用条件に基づいてシミュレーションを実行することにより、プロジェクタ4のメンテナンス時期を予測する(S106)。例えば、メンテナンスシミュレーションアプリ42は、プロジェクタ4のメンテナンス時期として、光源ユニット14の交換時期を「2023年6月1日」と予測する。
【0038】
端末装置10のウェブブラウザ40は、インターネット26を介して、サーバ装置8から光センサログ及び光源制御ログをダウンロードし(S107)、ダウンロードした光センサログ及び光源制御ログをメモリ46に格納する(S108)。
【0039】
端末装置10の光源寿命予測アプリ44は、メモリ46に格納された光センサログの最新値又は光源制御ログの最新値に基づいて、プロジェクタ4の光源ユニット14の寿命を予測する(S109)。
【0040】
ここで、
図5を参照しながら、プロジェクタ4が第1のモードに切り替えられた場合における、光源ユニット14の寿命の予測方法について説明する。
【0041】
図5の(a)は、第1のモードにおける光源ユニット14からの光の輝度の時間的な変化を示すグラフである。
図5の(a)のグラフの横軸は、光源ユニット14の使用時間を表し、グラフの縦軸は、光センサログの値(実測値)を表している。
【0042】
図5の(b)は、本実施の形態における、光源ユニット14の劣化度合いをプロジェクタ4の使用条件のうち、プロジェクタ4の環境条件を意味する外的条件を要素毎に分解したグラフである。
図5の(b)の3つのグラフはそれぞれ、プロジェクタ4の光源ユニット14を構成する部品Aに付着した埃に起因する要素A、光源ユニット14を構成する部品Bに付着した埃に起因する要素B、及び、プロジェクタ4の内部に存在する上記以外の埃に起因する要素Cに基づく、光源ユニット14の劣化度合いを示すグラフである。
図5の(b)のグラフの横軸は、光源ユニット14の使用時間を表し、グラフの縦軸は、光源ユニット14の輝度維持率(理論値)を表している。なお、
図5の(b)のグラフを示すデータ(以下、「第1の劣化度合いデータ」と呼ぶ)は、端末装置10のメモリ46に予め格納されている。
【0043】
図5の(c)は、プロジェクタ4の使用条件のうち、使用時間や光源出力の設定値を意味する固有条件としての要件Dに起因する、光源ユニット14の劣化度合いを示すグラフである。
図5の(c)のグラフの横軸は、光源ユニット14の使用時間を表し、グラフの縦軸は、光源ユニット14の輝度維持率(理論値)を表している。なお、
図5の(c)のグラフを示すデータ(以下、「第2の劣化度合いデータ」と呼ぶ)は、端末装置10のメモリ46に予め格納されている。
【0044】
図5の(d)は、
図5の(a)のグラフに対して、光源ユニット14の寿命の予測結果を付加したグラフ(光源寿命予測データ)である。
【0045】
図5の(a)に示すように、第1のモードにおいて、光源ユニット14からの光の輝度は、光源ユニット14の経時的劣化により100%から徐々に低下し、現時点(18000時間)で62.5%であるとする。すなわち、光センサログの最新値は、62.5%である。なお、光源駆動ドライバ20の出力は、100%で一定に維持されているものとする。この場合、18000時間における光源ユニット14の輝度維持率は、62.5%(=62.5%/100%)である。
【0046】
光源寿命予測アプリ44は、メモリ46から光センサログの最新値「62.5%」を読み出す。次に、光源寿命予測アプリ44は、メモリ46から第1の劣化度合いデータを読み出し、
図5の(b)に示すように、18000時間に対応する、要素Aに基づく光源ユニット14の劣化度合いとして輝度維持率96%、要素Bに基づく光源ユニット14の劣化度合いとして輝度維持率91%、及び、要素Cに基づく光源ユニット14の劣化度合いとして輝度維持率83%をそれぞれ読み出す。
【0047】
次に、光源寿命予測アプリ44は、上述のように読み出した輝度維持率96%、91%、83%及び光センサログの最新値62.5%を用いて、要素Dに基づく光源ユニット14の劣化度合いとして、輝度維持率72%(=62.5%/(96%×91%×83%))を算出する。次に、光源寿命予測アプリ44は、メモリ46から第2の劣化度合いデータを読み出し、
図5の(c)に示すように、輝度維持率72%に対応する時間(15000時間)を読み出す。ここで、光源寿命予測アプリ44は、
図5の(c)のグラフにおける15000時間を18000時間として扱う、いわゆる時間ずらしを行う。そして、光源寿命予測アプリ44は、
図5の(b)の各グラフの18000時間以降の部分と、
図5の(c)のグラフの15000時間以降の部分とを掛け合わせて得られるグラフを、
図5の(a)のグラフに繋ぎ合わせることにより、
図5の(d)に示すグラフを光源寿命予測データとして生成する。
【0048】
図5の(d)のグラフにおいて、太線の部分が予測結果である。光源寿命予測アプリ44は、
図5の(d)のグラフにおいて、輝度50%に対応する時間T1(例えば20000時間)を、光源ユニット14の寿命として予測する。
【0049】
次に、
図6を参照しながら、プロジェクタ4が第2のモードに切り替えられた場合における、光源ユニット14の寿命の予測方法について説明する。
【0050】
図6の(a)は、第2のモードにおける光源ユニット14からの光の輝度の時間的な変化を示すグラフである。
図6の(a)のグラフの横軸は、光源ユニット14の使用時間を表し、グラフの縦軸は、光センサログの値(実測値)を表している。
【0051】
図6の(b)は、第2のモードにおける光源駆動ドライバ20の出力の時間的な変化を示すグラフである。
図6の(b)のグラフの横軸は、光源ユニット14の使用時間を表し、グラフの縦軸は、光源制御ログの値(実測値)を表している。
【0052】
図6の(c)は、光源ユニット14の寿命の予測結果を示すグラフ(光源寿命予測データ)である。
【0053】
図6の(a)に示すように、第2のモードにおいて、光源ユニット14からの光の輝度は、70%で一定に維持され、
図6の(b)に示すように、光源駆動ドライバ20の出力は70%から徐々に増大して現時点(18000時間)で80%であるとする。すなわち、光センサログの最新値は70%であり、光源制御ログの最新値は80%である。
【0054】
光源寿命予測アプリ44は、メモリ46から光源制御ログの最新値「80%」を読み出す。次に、光源寿命予測アプリ44は、光源制御ログの最新値に対応する光源ユニット14の寿命を予測するデータを読み出す。このデータは、
図6の(c)の実線のグラフに示すように、光源駆動ドライバ20の出力が80%から100%まで増大した後、100%で一定になる。すなわち、100%に到達するタイミングの時間を光源ユニット14の寿命のタイミングとして判断する。
【0055】
なお、本実施の形態では、
図6の(c)で示す光源ユニット14の寿命の予測結果を示すデータのグラフとして、光源制御ログの最新値が80%である例を用いて説明しているが、メモリ46は光源制御ログの最新値に応じて異なる複数のグラフを有しており、光源制御ログの最新値に応じて参照されるグラフが異なる。言い換えると、光源駆動ドライバ20の出力が100%になる時間T2は、光源制御ログの最新値に応じてそれぞれ異なる。
【0056】
図4に戻り、ステップS109の後、光源寿命予測アプリ44は、上述のように生成した光源寿命予測データをメモリ46に格納する。そして、メンテナンスシミュレーションアプリ42は、メモリ46に格納された光源寿命予測データに基づいて、ステップS106で予測したメンテナンス時期を更新する(S110)。例えば、メンテナンスシミュレーションアプリ42は、プロジェクタ4のメンテナンス時期として、光源ユニット14の交換時期を「2023年6月1日」から「2023年7月3日」に更新する。
【0057】
その後、メンテナンスシミュレーションアプリ42は、更新したメンテナンス時期を含むメンテナンスデータとして、サマリーファイル及び個別ファイルを出力する(S111)。出力されたサマリーファイル及び個別ファイルは、プロジェクタ4の使用者であるユーザに提供される。
【0058】
ここで、
図7を参照しながら、サマリーファイルの一例について説明する。
図7は、サマリーファイルの一例を示す図である。
【0059】
サマリーファイルは、複数のプロジェクタ4についてのメンテナンス時期を示すデータである。
図7に示すように、サマリーファイルは、プロジェクタ名と、プロジェクタの使用時間と、交換までの日数と、交換時期と、オーバーホール予定時期とが対応付けられたテーブルデータである。
【0060】
図7に示す例では、サマリーファイルの1行目には、プロジェクタ名「プロジェクタA」、プロジェクタの使用時間「990時間」、交換までの日数「796日」、交換時期「2023年7月3日」、オーバーホール予定時期「2025年1月15日」が格納されている。なお、プロジェクタAは、
図1に示すプロジェクタ4に対応しており、サマリーファイルにおける交換時期「2023年7月3日」は、上述したステップS110で更新されたメンテナンス時期に対応している。
【0061】
次に、
図8を参照しながら、個別ファイルの一例について説明する。
図8は、個別ファイルの一例を示す図である。
【0062】
個別ファイルは、1つのプロジェクタ4についてのメンテナンス時期を示すデータである。
図8に示すように、個別ファイルは、光源ユニット14からの光の輝度の時間的な変化の予測結果を示すグラフである。
図8に示す個別ファイルでは、「プロジェクタA」について、第2のモードにおいて、輝度が8000時間まで80%で一定に維持され、8000時間から低下し始めると予測されている。また、
図8に示す個別ファイルでは、輝度が80%から低下し始める8000時間が、光源ユニット14の交換時期であると予測されている。
【0063】
プロジェクタ4の使用者であるユーザは、提供されたサマリーファイル又は個別ファイルを閲覧することにより、光源ユニット14を適切な時期に交換することができる。
【0064】
[3.効果]
本実施の形態では、メンテナンス方法は、光源ユニット14を備えたプロジェクタ4のメンテナンス方法である。メンテナンス方法は、(a)光源駆動ドライバ20の出力の経時的変化、及び/又は、プロジェクタ4の使用条件に基づいて、プロジェクタ4のメンテナンス時期を予測するステップと、(b)光源ユニット14から発する光の輝度を検出するステップと、(c)前記(b)の検出結果に基づいて、前記(a)で予測したメンテナンス時期を更新するステップとを含む。
【0065】
これによれば、リアルタイムに検出した輝度に基づいてメンテナンス時期を更新することにより、メンテナンス時期の予測精度を高めることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、メンテナンス方法は、さらに、(e)前記(c)で更新したメンテナンス時期を示すメンテナンスデータを出力するステップを含む。
【0067】
これによれば、出力されたメンテナンスデータに基づいて、プロジェクタ4のメンテナンスを適切な時期に行うことができる。
【0068】
また、本実施の形態では、プロジェクタ4は、光源ユニット14から発する光を投影面に投影するプロジェクタである。プロジェクタ4は光源駆動ドライバ20の出力が一定となるように光源駆動ドライバ20を制御する第1のモード、及び、光源ユニット14から発する光の輝度が一定となるように光源駆動ドライバ20を制御する第2のモードのいずれかに切り替え可能である。前記(b)において、光源ユニット14から発する光の輝度、及び、光源駆動ドライバ20の出力を検出する。前記(c)において、プロジェクタ4が第1のモードに切り替えられた場合には、前記(b)で検出された輝度に基づいて前記(a)で予測したメンテナンス時期を更新し、プロジェクタ4が第2のモードに切り替えられた場合には、前記(b)で検出された光源駆動ドライバ20の出力に基づいて前記(a)で予測したメンテナンス時期を更新する。
【0069】
これによれば、プロジェクタ4が第1のモード及び第2のモードのいずれに切り替えられた場合であっても、メンテナンス時期を適切に更新することができる。
【0070】
[4.変形例]
上記実施の形態の構成に代えて、以下のように構成してもよい。
【0071】
例えば、プロジェクタ4は、光源ユニット14を含む複数の部品を備えている。メンテナンス方法は、さらに、(d)複数の部品の各々の寿命を示す寿命データに基づいて、複数の部品の各々の交換タイミングが所定の期間に集約されるように、交換タイミングを決定するステップを含むようにしてもよい。
【0072】
これによれば、例えば、寿命データが、部品Aの寿命「2023年1月15日」、部品Bの寿命「2023年3月20日」、部品Cの寿命「2023年4月10日」を示す場合に、部品A、部品B及び部品Cの各交換タイミングが所定の期間「2023年1月1日~1月31日」に集約されるように、部品A、部品B及び部品Cの各交換タイミングを決定することができる。その結果、部品A、部品B及び部品Cの各交換作業を、所定の期間に集約して行うことができる。
【0073】
また、前記(b)において、光源ユニット14から発する光の輝度として、投影面の輝度を検出してもよい。
【0074】
これによれば、プロジェクタ4の内部の要因だけでなく、プロジェクタ4の外部の要因をも考慮して、メンテナンス時期の予測精度をより一層高めることができる。
【0075】
また、メンテナンス方法は、さらに、(f)前記(b)で検出した投影面の輝度に基づいて、光源駆動ドライバ20の出力、及び/又は、プロジェクタ4のガンマ値を補正するステップを含む。
【0076】
これによれば、輝度の劣化を視覚的に認知され難くすることができる。
【0077】
(変形例等)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0078】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0079】
上記実施の形態では、機器をプロジェクタ4としたが、これに限定されず、光源を備える任意の機器としてもよい。
【0080】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態に係る端末装置10の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0082】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0083】
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0084】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示は、例えば博物館又はアミューズメントパーク等で用いられるプロジェクタのメンテナンス方法として適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
2 メンテナンスシステム
4 プロジェクタ
6,10 端末装置
8 サーバ装置
12 オンサイト
14 光源ユニット
16 投影レンズ
18 光センサ
20 光源駆動ドライバ
22 マイコン
24,30,46 メモリ
26 インターネット
28 監視アプリ
32 クラウド
34 ウェブサーバ
36 データベース
38 管理会社
40 ウェブブラウザ
42 メンテナンスシミュレーションアプリ
44 光源寿命予測アプリ