(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148044
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ガス分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20231005BHJP
G01N 21/61 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055867
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 謙
(72)【発明者】
【氏名】日野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】笹島 勝行
(72)【発明者】
【氏名】上釜 素直
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC13
2G059EE01
2G059EE02
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】コストアップを防止しつつ標準ガスボンベの設置場所まで出向くことなく標準ガスの残量を把握する。
【解決手段】ガス分析システム100は、標準ガスボンベ130a~130fに封入されている標準ガスを用いて測定系の検証又は校正を行うガス分析装置1と、標準ガスボンベ130a~130fから供給される標準ガスの流路を開閉する電磁弁128a~128fと、標準ガスボンベ130a~130fから供給される標準ガスの流量を測定する標準ガス流量計129と、電磁弁128a~128fによって流路が開放された時間又は標準ガス流量計129から取得した流量の少なくも一方、及び標準ガスが封入される標準ガスボンベ130a~130fの容量に基づいて、標準ガスボンベの標準ガスに関する情報を求める制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスに含まれる1又は複数の成分の濃度を測定し、1又は複数の標準ガスボンベに封入されている標準ガスを用いて測定系の検証又は校正を行うガス分析装置と、
前記標準ガスボンベから供給される前記標準ガスの流路上に配置され、前記流路を開閉する開閉手段と、
前記標準ガスボンベから供給される標準ガスの流量を測定する標準ガス流量測定手段と、
前記開閉手段及び前記標準ガス流量測定手段と通信可能に接続され、前記開閉手段による前記流路の開閉を制御し、前記標準ガス流量測定手段によって測定された前記標準ガスの流量を取得する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記開閉手段によって前記流路が開放された時間又は前記標準ガス流量測定手段から取得した前記流量の少なくとも一方、及び前記標準ガスが封入される前記標準ガスボンベの容量に基づいて、前記標準ガスボンベの標準ガスに関する情報を求める
ことを特徴とするガス分析システム。
【請求項2】
前記制御手段によって求めた前記標準ガスボンベの標準ガスに関する情報を表示する表示手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項3】
前記制御手段によって求めた前記標準ガスボンベの標準ガスに関する情報は、前記標準ガスボンベ内の前記標準ガスの残量、前記標準ガスボンベ内の前記標準ガスで実行可能な前記検証又は前記校正の残回数、前記標準ガスボンベの発注時期、または前記標準ガスの残量が少なくなったことを示すアラーム、のうち少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス分析システム。
【請求項4】
前記検証又は前記校正の残回数は、使用する1回あたりの標準ガスの使用量に基づいて算出された値であり、
前記1回あたりの標準ガスの使用量は、固定値又は前記標準ガス流量測定手段によって測定された前記標準ガスの流量に基づいて算出された値である
ことを特徴とする請求項3に記載のガス分析システム。
【請求項5】
前記発注時期に従って前記標準ガスボンベを発注する購買システムをさらに備える
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のガス分析システム。
【請求項6】
前記標準ガス流量測定手段は、前記開閉手段の下流側であって複数の前記標準ガスボンベに接続される複数の流路が合流した流路上に配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準ガスを用いて測定系の検証又は校正を行うガス分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全に対する関心は、国際的な規模で高まりを見せている。その流れの中でSO2、NOX、CO2、COなどによる大気汚染は重要な問題として捉えられ、これらの大気汚染成分の測定を行うガス分析装置は地球環境保全における重要な役割を担っている。
【0003】
ガス分析装置におけるガス成分の測定時、分析対象の試料ガスを測定系に供給して、試料ガスのガス成分を測定するが、時間とともに測定系の測定結果に誤差が生じる。そのため、ガス成分を測定する測定系の検証(バリデーション)や校正(キャリブレーション)のため、標準ガスが封入されたボンベを設置して、定期的に標準ガスの濃度を測定し、測定系の検証や校正をする必要がある。
【0004】
特許文献1には、ガス分析装置にボンベガス(標準ガス)を供給する複数のガスボンベを管理するボンベ管理システムが開示されている。特許文献1のボンベ管理システムは、複数のガスボンベのそれぞれの圧力を検出する複数の圧力センサと、各圧力センサの検出圧力から各ガスボンベのボンベ残量を算出する管理装置と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス分析装置では、測定対象のガス成分の種類に応じて、多い時には5種類の標準ガスが用いられる。標準ガスのガス残量が少なくなると、ユーザは標準ガスボンベを発注することになるが、標準ガスの種類によっては発注から納入までのリードタイムが長くなることもある。納入が遅れると、検証及び校正の定期的な周期に影響を与え、ガス分析装置を含めたシステム全体の運用に影響を及ぼす。
【0007】
ユーザは、標準ガスボンベに備えられた圧力センサの値を読み取り、標準ガスボンベ内の標準ガスの残量を確認し、標準ガスの残量が少なくなれば、標準ガスボンベを発注する。つまり、ユーザは、標準ガスの残量の確認のため、標準ガスボンベの設置場所まで出向き、圧力センサの値を読み取らなければならない。
【0008】
特許文献1では、圧力センサの値が有線又は無線の通信回線により管理装置に出力されるため、ユーザは標準ガスボンベの設置場所まで出向く必要は無い。しかし、特許文献1のシステムでは、標準ガスボンベ毎に通信機能を有する圧力センサを設けなければならず、ガス分析装置を含めたシステム全体のコストアップにつながっていた。
【0009】
そこで、本発明は、コストアップを防止しつつ標準ガスボンベの設置場所まで出向くことなく標準ガスの残量を把握することが可能なガス分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガス分析システムは、試料ガスに含まれる1又は複数の成分の濃度を測定し、1又は複数の標準ガスボンベに封入されている標準ガスを用いて測定系の検証又は校正を行うガス分析装置と、標準ガスボンベから供給される標準ガスの流路上に配置され、流路を開閉する開閉手段と、標準ガスボンベから供給される標準ガスの流量を測定する標準ガス流量測定手段と、開閉手段及び標準ガス流量測定手段と通信可能に接続され、開閉手段による流路の開閉を制御し、標準ガス流量測定手段によって測定された標準ガスの流量を取得する制御手段と、を備え、制御手段は、開閉手段によって流路が開放された時間又は標準ガス流量測定手段から取得した流量の少なくとも一方、及び標準ガスが封入される標準ガスボンベの容量に基づいて、標準ガスボンベの標準ガスに関する情報を求める。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストアップを防止しつつ標準ガスボンベの設置場所まで出向くことなく標準ガスの残量を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1のガス分析システムの概略構成図である。
【
図2】実施例1のガス分析装置の制御部のハードウェアブロック図である。
【
図3】実施例1の制御装置のハードウェアブロック図である。
【
図4】実施例1の残量アラームを発行するフローチャートである。
【
図5】実施例2のガス分析システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態に係るガス分析システムについて図面を用いて説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は、ガス分析システムの概略構成図である。ガス分析システム100は、試料ガスに含まれる1又は複数の成分(実施例1では、5成分)の濃度を測定するガス分析装置1と、通信回線3を介してガス分析装置1と通信可能に接続される制御装置2と、を備える。ガス分析装置1は、経時的要因によって測定値の変動が発生する。そこで、ガス分析装置1は、ガス分析装置1の測定系で測定された試料ガスの濃度の妥当性を検証するために標準ガスを用いて検証(バリデーション)を実行する。また、ガス分析装置1は、ガス分析装置1の測定系の測定値の偏りを補正するために、測定系の校正(キャリブレーション)を行う。実施例1のガス分析装置1は、複数の成分の濃度を測定するが、ガス分析装置1は1つ(単数)の成分の濃度を測定してもよい。
【0015】
(ガス分析装置1)
ガス分析装置1は、測定対象であるガス(以下、試料ガスと呼ぶ)や空気を導入するガス導入部110と、ガス導入部110によって導入された試料ガスや空気を調整して後段の分析部140に供給するサンプリングモジュール120と、分析部140の検証や校正(ゼロ校正、スパン校正)で使用される複数の標準ガスボンベ130a~130fと、試料ガスの濃度の測定を行う分析部140と、ジルコニア式酸素濃度計150とを備える。ガス分析装置1の測定対象は、ごみ焼却設備の煙道を通過するガスであってもよいし、船舶や車両の排ガスであってもよいが、測定対象はこれらに限定されない。実施例1のガス分析装置1は、SO2、NOX、CO2、CO、O2の5成分を測定可能であるが、測定する成分はこれらに限定されない。
【0016】
(ガス導入部110)
ガス導入部110は、試料ガス及び空気をガス分析装置1内に導入する。ガス導入部110は、図示しないガス採取器によって採取された試料ガスをガス分析装置1内に導入する試料ガス導入口111と、ガスコンディショナー112と、3方電磁弁113と、ポンプ114と、を有する。また、ガス導入部110は、空気をガス分析装置1内に吸入する空気吸入口115と、フィルタ116と、ポンプ117と、を有する。ガスコンディショナー112は、試料ガス中のドレン、ダスト、及びミストを除去し、試料ガスの圧力を調整する。3方電磁弁113は、電子制御によって流路を開閉し、流路を開放してガスコンディショナー112とポンプ114とを接続する。なお、3方電磁弁113は、大気とポンプ114とを接続することも可能である。ポンプ114は、試料ガスを吸引するためのポンプであり、ポンプ117は、空気を吸引するためのポンプである。
【0017】
図示しないガス採取器によって採取された試料ガスは、試料ガス導入口111、ガスコンディショナー112、3方電磁弁113、及びポンプ114を介してサンプリングモジュール120に導入される。また、空気吸入口115から吸入された空気は、フィルタ116、及びポンプ117を介してサンプリングモジュール120に導入される。
【0018】
(サンプリングモジュール120)
サンプリングモジュール120は、ニードル弁121、電子除湿器122、SO3ミストキャッチャ123、NO2/NOコンバータ124、比較ガス精製器125、複数(実施例1では3つ)のメンブレンフィルタ126a~126c、複数(実施例1では3つ)の流量計127a~127c、複数(実施例1では6つ)の電磁弁128a~128f、及び標準ガス流量計129を有する。
【0019】
ニードル弁121は、試料ガスの流量を一定に保つための流量調整器である。電子除湿器122は、サンプリングモジュール120に導入された試料ガス及び空気中の水分を除去する。SO3ミストキャッチャ123は、試料ガス中の硫酸ミストを除去する。NO2/NOコンバータ124は、NO2ガスをNOに変換する。比較ガス精製器125は、吸引した空気から比較ガスを精製する。メンブレンフィルタ126aは、比較ガスの流路上に配置され、比較ガス中の微細ダストを除去する。メンブレンフィルタ126b及び126cは、試料ガスの流路上に配置され、試料ガス中の微細ダストを除去する。流量計127aは、比較ガスの流量を測定し、流量計127b及び127cは、試料ガスの流量を測定する。複数の電磁弁128a~128fは、複数の標準ガスボンベ130a~130fのそれぞれに対応して設けられる。複数の電磁弁128a~128fは、複数の標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスを分析部140に導入するために使用される。複数の電磁弁128a~128fの各々は、標準ガスボンベ130a~130fに接続される流路上に配置され、電子制御によってそれらの流路を開閉する。
【0020】
標準ガス流量計129は、電磁弁128a~128fの下流側であって、複数の標準ガスボンベ130a~130fに接続される複数の流路が合流した流路上に配置される。この標準ガス流量計129は、合流した流路において標準ガスの流量を測定する。標準ガス流量計129は、通信機能を有し、標準ガス流量計129が測定した流量は、後述する制御部200に送信される。
【0021】
ガス導入部110から供給された試料ガスは、電子除湿器122、SO3ミストキャッチャ123、NO2/NOコンバータ124、メンブレンフィルタ126b、及び流量計127bを介して、分析部140に供給される。また、試料ガスは、電子除湿器122の後段で分岐して、メンブレンフィルタ126c、及び流量計127cを介して、ジルコニア式酸素濃度計150に供給される。また、ガス導入部110から供給された空気は、電子除湿器122、比較ガス精製器125、メンブレンフィルタ126a、及び流量計127aを介して、比較ガスとして分析部140に供給される。
【0022】
(標準ガスボンベ130a~130f)
標準ガスボンベ130a~130fは、分析部140の後述する赤外線分析計143及び144の検証及び校正(ゼロ校正、スパン校正)を行うための標準ガスを封入する。ゼロ校正によって、ゼロ点の調整が行われる。ゼロ校正には、標準ガスボンベ(Air)130aが使用される。また、スパン校正によって、スパン点の調整が行われる。スパン校正には、所定濃度以上の各ガス成分(NO,SO2,CO2,CO,O2)が封入された標準ガスボンベ(NO/N2,SO2/N2,CO2/N2,CO/N2,O2/N2)130b~130fが使用される。また、標準ガスボンベ130a~130fに封入される標準ガスは、上記した校正だけでなく、分析部140の検証にも使用される。標準ガスボンベ130a~130fに封入される標準ガスは、電磁弁128a~128f及び標準ガス流量計129を介して、分析部140及びジルコニア式酸素濃度計150に供給される。
【0023】
標準ガスボンベ130a~130fの各々には、圧力計が設けられるが、これらの圧力計は、通信機能を有しない。したがって、ユーザは、圧力計の計測値を確認するためには、標準ガスボンベ130a~130fの設置場所に出向く必要がある。後述するが、実施例1では、標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスの残量を予測することが可能であるので、ユーザは、標準ガスボンベ130a~130fの設置場所に出向かなくても、標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスの残量を知ることができる。
【0024】
(分析部140)
分析部140は、3方電磁弁141及び142と、赤外線分析計143及び144と、を有する。3方電磁弁141は、比較ガスの出力先を切り替えて、比較ガスを赤外線分析計143に供給したり、赤外線分析計144に供給したりする。また、3方電磁弁142も、試料ガスの出力先を切り替えて、試料ガスを赤外線分析計143に供給したり、赤外線分析計144に供給したりする。赤外線分析計143及び144は、非分散赤外線吸収法でガス成分の計測を行う。ガス成分の濃度の測定方法は、非分散赤外線吸収法に限定されず、例えばガスクロマトグラフ法であってもよい。赤外線分析計143は、SO2、CO、及びCO2の濃度を測定し、赤外線分析計144は、NOXの濃度を測定する。
【0025】
(ジルコニア式酸素濃度計150)
ジルコニア式酸素濃度計150は、試料ガス中の酸素濃度を測定する。酸素濃度の測定方法は、ジルコニア式に限定されず、例えば磁気式であってもよい。
【0026】
(制御部200)
図2は、ガス分析装置の制御部のハードウェアブロック図である。ガス分析装置1は、ガス分析装置1の各部を制御する制御部200を有する。
図2を参照して、ガス分析装置1の制御部200のハードウェア構成を説明する。制御部200は、プロセッサ201と、主記憶部202と、補助記憶部203と、入出力インタフェース(以下、インタフェースをI/Fと略記する)204と、通信I/F205と、上記した各モジュールを通信可能に接続するバス206と、を有する。
【0027】
プロセッサ201は、制御部200の各部の動作の制御を行う中央処理演算装置である。プロセッサ201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。プロセッサ201は、補助記憶部203に記憶されるプログラムを主記憶部202の作業領域に実行可能に展開して実行する。主記憶部202は、プロセッサ201が実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶部202は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等である。補助記憶部203は、例えば、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ(SSD、Solid State Drive)装置、ハードディスク(HDD、Hard Disk Drive)装置等である。
【0028】
入出力I/F204は、タッチセンサや各種ボタンなどを有する入力部210、及び測定結果や設定画面などを表示する表示部220と通信可能に接続される。また、入出力I/F204は、標準ガスボンベ130a~130fに封入される標準ガスの供給及び停止を行う電磁弁128a~128fと通信可能に接続される。また、入出力I/F204は、標準ガスの流量を測定する標準ガス流量計129と通信可能に接続される。制御部200は、電磁弁128a~128fをオン又はオフにして、標準ガスの流路の開閉を行い、標準ガスの供給及び停止を行う。また、制御部200は、標準ガス流量計129から標準ガスの流量を取得する。
【0029】
通信I/F205は、通信回線3を介して制御装置2と通信する。通信I/F205は、制御装置2と有線又は無線により通信可能に接続される。通信I/F205は、後述する標準ガスの使用量、標準ガスの残量、標準ガスの残量が少ないことを示すアラーム、検証又は校正の残回数、標準ガスボンベの発注時期などを制御装置2に送信する。
【0030】
制御部200は、電磁弁128a~128fのオン時間又は標準ガス流量計129から取得した標準ガスの流量の少なくとも一方に基づいて標準ガスの使用量を算出する。例えば、制御部200は、電磁弁128a~128fのオン時間と電磁弁128a~128fの開度とに基づいて標準ガスの使用量を算出する。また、制御部200は、標準ガス流量計129から取得した標準ガスの流量を標準ガスの使用量とする。そして、制御部200は、標準ガスの使用量の合計と標準ガスボンベの容量とに基づいて標準ガスの残量を算出し、標準ガスの残量が閾値より少ない場合にはアラームを発行する。また、制御部200は、算出した標準ガスの残量と検証又は校正において使用する1回あたりの標準ガスの使用量とに基づいて標準ガスボンベ内の標準ガスで実行可能な検証又は校正の残回数を算出する。また、制御部200は、算出した標準ガスの残量と標準ガスを使用する検証又は校正の実施時期とに基づいて標準ガスボンベの発注時期を算出する。
【0031】
(制御装置2)
制御装置2は、オペレータ室に設置されるコンピュータであり、ガス分析装置1と通信可能に接続される。
【0032】
図3は、制御装置のハードウェアブロック図である。
図3を参照して、制御装置2のハードウェア構成を説明する。制御装置2は、制御部300と、表示部310と、入力部320と、を有する。なお、
図2に示したガス分析装置1における制御部200のハードウェア構成と重複する説明は適宜省略する。制御部300は、プロセッサ301と、主記憶部302と、補助記憶部303と、入出力I/F304と、通信I/F305と、バス306と、を有する。通信I/F305は、通信回線3を介してガス分析装置1と通信する。通信I/F305は、ガス分析装置1から標準ガスの使用量、標準ガスの残量、標準ガスの残量が少ないことを示すアラーム、標準ガスボンベ内の標準ガスで実行可能な検証又は校正の残回数、標準ガスボンベの発注時期などを受信する。
【0033】
表示部310は、受信した標準ガスの使用量、標準ガスの残量、標準ガスの残量が少ないことを示すアラーム、標準ガスボンベ内の標準ガスで実行可能な検証又は校正の残回数、標準ガスボンベの発注時期などの標準ガスボンベの標準ガスに関する情報を表示する。
【0034】
入力部320は、キーボードやマウスなどであって、ユーザは、入力部320を用いて、標準ガスボンベ130a~130fの各々の容量、標準ガスの残量と比較される閾値、検証又は校正において使用される1回あたりの標準ガスの使用量、検証又は校正の実施時期を入力する。なお、1回あたりの標準ガスの使用量は、固定値であってもよいし、標準ガス流量計129の測定値を用いて1回あたりの標準ガスの使用量を算出又は補正してもよい。
【0035】
(標準ガスの残量についてのアラーム)
図4は、標準ガスの残量が少なくなったことを示すアラーム(以下、残量アラームと呼ぶ)を発行するフローチャートである。
図4を参照して、残量アラームを発行する方法を説明する。
図4のフローチャートの各ステップは、ガス分析装置1の制御部200が実行する。
【0036】
制御部200は、検証又は校正の実行タイミングになると(ステップS401)、標準ガスボンベ130a~130fに対応して設けられた電磁弁128a~128fをオンにして(ステップS402)、標準ガスの流路を開放する。これにより、標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスが分析部140に導入される。検証又は校正は、ユーザが指定したタイミング、又は予め設定したタイミング(例えば、N日毎、N時間毎(Nは自然数))で実行される。検証又は校正は、全ての成分を一括して行ってもよいし、成分毎に個別に行ってもよい。
【0037】
次に、制御部200は、今回の検証又は校正における電磁弁128a~128fのオン時間、及び標準ガス流量計129によって測定された流量を取得する(ステップS403)。制御部200は、ステップS403で取得したオン時間及び流量に基づいて標準ガスの使用量を算出する。そして、以前の検証又は校正において算出された標準ガスの使用量及び今回の検証又は校正において算出された標準ガスの使用量の合計と、標準ガスボンベ130a~130fの容量とに基づいて、標準ガスの残量を算出する。そして、制御部200は、算出した標準ガスの残量が閾値より小さいか否かを判定し(ステップS404)、算出した標準ガスの残量が閾値より小さい場合には(ステップS404:Yes)、残量アラームを発行する(ステップS405)。
【0038】
なお、制御部200は、残量アラーム以外に、検証又は校正の残回数や標準ガスボンベの発注時期を算出する。制御部200は、通信I/F205を介して、標準ガスの使用量、標準ガスの残量、残量アラーム、検証又は校正の残回数、及び標準ガスボンベの発注時期などを制御装置2に送信する。制御装置2は、制御部200から標準ガスの使用量、標準ガスの残量、残量アラーム、検証又は校正の残回数、及び標準ガスボンベの発注時期を受信して、表示部310に表示させる。表示部310は、受信した標準ガスの使用量、標準ガスの残量、残量アラーム、検証又は校正の残回数、及び標準ガスボンベの発注時期の全てを表示できなくてもよく、標準ガスの使用量、残量アラーム、検証又は校正の残回数、及び標準ガスボンベの発注時期の少なくとも1つを表示できればよい。
【0039】
(実施例1の効果)
制御部200は、電磁弁128a~128fによって流路が開放された時間(オン時間)、標準ガス流量計129から取得した流量、及び標準ガスが封入される標準ガスボンベ130a~130fの容量に基づいて、標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスの残量を算出する。標準ガスボンベ130a~130fに通信機能を有する圧力計を設けることなく、ユーザは、標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスの残量(予測値)を知ることができる。したがって、実施例1のガス分析システム100を用いれば、コストアップを防止しつつ標準ガスの残量を把握することが可能となる。さらに、標準ガスの残量を把握することによって、標準ガスボンベ130a~130fを適切なタイミングで発注することが可能となる。その結果、標準ガスボンベ130a~130fの不足によるシステムの停止を防止することが可能となり、効率的かつ信頼性のあるシステムの稼働が可能となる。
【0040】
制御装置2の表示部310には標準ガスの残量が表示されるので、ユーザは標準ガスボンベ130a~130fの設置場所に出向くことなく、オペレータ室で標準ガスの残量を把握することができる。
【0041】
制御部200は、標準ガスの残量、及び検証又は前記校正において使用する1回あたりの標準ガスの使用量に基づいて、標準ガスボンベ内の標準ガスで実行可能な検証又は校正の残回数を算出する。これにより、ユーザは、容易に標準ガスボンベ130a~130f内の標準ガスで実行可能な検証又は校正の残回数を把握することができる。
【0042】
1回あたりの標準ガスの使用量を固定値とすることによって、簡単な計算で検証又は校正の残回数を算出することができる。また、1回あたりの標準ガスの使用量を標準ガス流量計129によって測定された標準ガスの流量に基づいて算出又は補正することによって、正確な検証又は校正の残回数を算出することができる。
【0043】
また、制御部200は、標準ガスの残量、及び検証又は校正が実施される実施時期に基づいて標準ガスボンベ130a~130fの発注時期を算出する。これにより、ユーザは、容易に標準ガスボンベ130a~130fの発注時期を把握することができる。
【0044】
標準ガス流量計129を電磁弁128a~128fの下流側であって複数の標準ガスボンベ130a~130fに接続される複数の流路が合流した流路上に配置することによって、1つの流量計で各成分の標準ガスの流量を測定することが可能となる。
【0045】
<実施例2>
実施例1のガス分析装置1の標準ガス流量計129は、複数の標準ガスボンベ130a~130fに接続される複数の流路が合流した流路上に配置される。実施例2の標準ガス流量計529a~529fの各々は、複数の標準ガスボンベ130a~130fに接続される複数の流路上に配置される。標準ガス流量計529a~529fの各々は、通信機能を有し、標準ガス流量計529a~529fの各々が測定した流量は、制御部200に送信される。
【0046】
(実施例2の効果)
標準ガス流量計529a~529fが標準ガスボンベ130a~130fのそれぞれに設けられるので、成分毎に正確な標準ガスの流量を測定することができる。
【0047】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0048】
例えば、実施例1では、ガス分析装置1の制御部200が標準ガスの使用量、標準ガスの残量、検証又は校正の残回数、及び標準ガスボンベの発注時期を算出し、残量アラームを発行した。ここで、標準ガスの使用量、標準ガスの残量、検証又は校正の残回数、標準ガスボンベの発注時期、及び残量アラームを、標準ガスに関する情報と呼ぶ。標準ガスに関する情報の少なくとも1つを制御装置2の制御部300が算出/発行してもよい。また、標準ガスに関する情報の算出/発行を、ガス分析装置1の制御部200と制御装置2の制御部300とで分担してもよい。制御装置2の制御部300が標準ガスに関する情報の算出/発行を行う場合、制御部200は、標準ガスに関する情報の算出/発行に必要な情報(例えば、電磁弁128a~128fのオン時間や標準ガス流量計129から取得した標準ガスの流量)を、制御部300に送信する必要がある。
【0049】
また、制御部200又は制御部300は、標準ガスボンベ130a~130fの発注を行う購買システムに接続されてもよい。これにより、標準ガスボンベ130a~130fの納期と標準ガスの残量や検証又は校正の残回数とに基づいて、正確な発注時期を予測することができる。また、購買システムに接続することによって、残量が少ない標準ガスボンベ130a~130fの自動発注を行う仕組みを構築することができる。その結果、長期にわたって効率的で信頼性のあるシステムが稼働可能となる。
【0050】
また、実施例1では、制御装置2の表示部310に標準ガスに関する情報を表示したが、ガス分析装置1の表示部220に標準ガスに関する情報を表示してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:ガス分析装置、2:制御装置、100:ガス分析システム、128a~128f:電磁弁(開閉手段)、129:標準ガス流量計(標準ガス流量測定手段)、130a~130f:標準ガスボンベ、200:制御部(制御手段)、300:制御部(制御手段)