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  • 特開-減衰バルブおよび緩衝器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148059
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F16F9/348
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055896
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】村上 侑平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤次郎
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC13
3J069EE25
(57)【要約】
【課題】製造時間の短縮およびコストの低減が可能で、寸法管理も容易で開弁圧のチューニングに際して煩わしさのない減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】減衰バルブVは、ポート5cとポート5cの開口端の外周から立ち上がりポート5cを取り囲む弁座5eとを有する弁座部材5と、弁座部材5に対して遠近可能であって弁座5eに離着座するリーフバルブ11と、弁座部材5に対して遠近可能であって外形がリーフバルブ11よりも小形なシム12と、弁座部材5に対して遠近可能であって軸方向から見てリーフバルブ11の外周よりも内周側の範囲に軸方向に貫通するディスク側ポート13aを有してシム12の反弁座部材側に重ねられるディスク13と、ディスク13の反弁座部材側に配置されてディスク13、シム12およびリーフバルブ11を弁座部材5へ向けて付勢するばね部材14とを備えて構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートと、前記ポートの開口端の外周から立ち上がり前記ポートを取り囲む弁座とを有する弁座部材と、
環状で前記弁座部材に対して遠近可能であって、前記弁座に離着座するリーフバルブと、
前記弁座部材に対して遠近可能であって、前記リーフバルブの反弁座部材側に重ねられるとともに外形が前記リーフバルブよりも小形なシムと、
前記弁座部材に対して遠近可能であって、軸方向から前記リーフバルブの外周よりも内周側の範囲に軸方向に貫通するディスク側ポートを有して、前記シムの反弁座部材側に重ねられるディスクと、
前記ディスクの反弁座部材側に配置されて前記ディスク、前記シムおよび前記リーフバルブを前記弁座部材へ向けて付勢するばね部材とを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記ディスクの弁座部材側端は、平坦である
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
軸状であって前記弁座部材に対して軸方向へ延びて、外周に前記シムおよび前記ディスクが軸方向へ摺動可能に装着されるガイド部材を備え、
前記シムは、内周に前記ガイド部材との間に隙間を形成する切欠を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
環状の頂部と、前記頂部の外周から垂下される複数の脚部とを有して、前記脚部の下端が前記弁座部材の外周に嵌合されるばね受を備え、
前記ばね部材は、前記ばね受の前記頂部と前記ディスクとの間に介装され、
前記ばね部材の反弁座部材側端は、前記ばね受の前記頂部と前記脚部に当接しており、
前記ディスクの反弁座部材側端は、平坦である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターシェルに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰バルブは、車両のサスペンション等に利用される緩衝器のベースバルブ部等に用いられる。このような減衰バルブは、たとえば、緩衝器内に区画される圧側室とリザーバとの間を仕切るとともに圧側室とリザーバとを連通するポートとポートの外周を取り囲む環状弁座とを備えた環状のバルブケースと、バルブケースの内周側に挿通される円柱状のガイドロッドと、バルブケースに軸方向へ遠近可能に積層されてポートを開閉する環状のリーフバルブと、環状であってガイドロッドの外周に摺動自在に装着されてバルブケースに遠近可能であって前記リーフバルブの反バルブケース側の内周を支持する支持突起を有するディスクと、頂部と頂部の外周から垂下されてバルブケースの外周に嵌合される複数の脚部と備えてリーフバルブとディスクを収容するばね受と、ばね受けの頂部とディスクとの間に介装されてディクスとともにリーフバルブをバルブケースへ向けて付勢するコイルばねとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、リザーバから圧側室へ向かう作動油の流れに対しては、リーフバルブとディスクとがコイルばねを押し縮めてバルブケースから離間することで、ポートを開放する。
【0004】
反対に、圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れに対しては、ディスクの孔を通過しようとする作動油がリーフバルブの内周側をバルブケース側へ押して撓ませ、リーフバルブが支持突起から離間することでリーフバルブと支持突起との間にできた隙間を作動油が通過する。減衰バルブは、作動油がリーフバルブと支持突起との間にできた隙間を通過する流れに抵抗を与えて減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-69422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記減衰バルブでは、ディスクがリーフバルブの内周を支持するため環状の支持突起を備えており、ディスクのリーフバルブの外周が当接する面に対して支持突起のリーフバルブの内周が当接する面の方が支持突起の高さ分だけ高くなっている。
【0007】
そのため、圧側室の圧力を受けてディスクがバルブケース側へ移動すると支持突起によってリーフバルブの内周側が撓み、このリーフバルブの撓みによってリーフバルブが復元力を発揮して、リーフバルブがディスクの孔を開放する際の開弁圧が設定される。よって、従来の減衰バルブにおけるリーフバルブのディスクの孔を開放する際の開弁圧は、支持突起の高さによって設定される。
【0008】
このようにディスクは、内周に支持突起を備える特殊な形状となっており、加工に時間とコストがかかる切削加工によって製造される他なく、加工の際に支持突起の高さの寸法精度が求められるとともに、リーフバルブの開弁圧のチューニングのために支持突起が異なるディスクを都度製造しなければならない。
【0009】
つまり、従来の減衰バルブには、製造に時間とコストがかかり、高度な寸法管理が要求されるとともに、開弁圧のチューニングに際して高さが異なる支持突起を備えたディスクを都度製造する煩わしさがあった。
【0010】
そこで、本発明は、製造時間の短縮およびコストの低減が可能で、寸法管理も容易で開弁圧のチューニングに際して煩わしさのない減衰バルブおよびこの減衰バルブを利用した緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の減衰バルブは、ポートとポートの開口端の外周から立ち上がりポートを取り囲む環状の弁座とを有する弁座部材と、環状で弁座部材に対して遠近可能であって弁座に離着座するリーフバルブと、弁座部材に対して遠近可能であってリーフバルブの反弁座部材側に重ねられるとともに外形がリーフバルブよりも小形なシムと、弁座部材に対して遠近可能であって軸方向から見てリーフバルブの外周よりも内周側の範囲に軸方向に貫通するディスク側ポートを有してシムの反弁座部材側に重ねられるディスクと、ディスクの反弁座部材側に配置されてディスク、シムおよびリーフバルブを弁座部材へ向けて付勢するばね部材とを備えて構成されている。
【0012】
このように構成された減衰バルブでは、ディスクにシムを重ねることでリーフバルブに初期撓みを与える構造となっているため、ディスク自体にリーフバルブに初期撓みを与えるための支持突起を設ける必要がなく、ディスクの形状が簡素化されるとともに、異なる厚みを持つシムへ交換することでリーフバルブの開弁圧の調整を行える。
【0013】
さらに、減衰バルブにおけるディスクの弁座部材側端が平坦であってもよく、このように構成された減衰バルブによれば製造コストを安価にできる。
【0014】
また、減衰バルブは、軸状であって弁座部材に対して軸方向に延びて外周にシムおよびディスクが軸方向へ摺動可能に装着されるガイド部材を備え、シムが内周にガイド部材との間に隙間を形成する切欠を備えてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、シムがディスクに固定されていなくてもリーフバルブの内周が撓んで開弁した際にディスク側ポートとポートとの連通を切欠によって確保できる。また、このように構成された緩衝器によれば、シムとディスクとを固定する加工やシムの表面加工が不要となるので、より一層コストを低減できる。
【0015】
さらに、減衰バルブは、環状の頂部と頂部の外周から垂下される複数の脚部とを有して脚部の下端が弁座部材の外周に嵌合されるばね受を備え、ばね部材はばね受の頂部とディスクとの間に介装され、ばね部材の反弁座部材側端はばね受の頂部と脚部に当接しており、ディスクの反弁座部材側端は平坦であってもよい。このように構成された減衰バルブによれば、ばね部材がばね受の頂部と脚部に当接することで調心されるので、ディスクの反弁座部材側端が平坦であっても、ばね部材はディスクに軸ずれせずに安定した付勢力を付与できる。よって、減衰バルブによれば、ディスクにばね部材の軸ずれを防止するための嵌合部等を設けずともよく、ディスクの反弁座部材側端の形状も簡素化されるので、より一層ディスクの加工が容易となり製造コストも低減できる。
【0016】
また、緩衝器は、アウターシェルとアウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとアウターシェルに対するロッドの移動によって液体が行き来する2つの作動室とを有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器によれば、安価に製造可能な減衰バルブを備えているので、コストを低減できるとともに、シムの交換によって減衰力のチューニングも容易に行える。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバルブおよび緩衝器によれば、製造時間の短縮およびコストの低減を可能とするだけでなく、寸法管理も容易で開弁圧のチューニングに際して煩わしさを無くせる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の断面図である。
図2】一実施の形態の減衰バルブが適用されたピストン部の拡大断面図である。
図3】一実施の形態の減衰バルブにおけるシムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のバルブおよび緩衝器を図に基づいて説明する。一実施の形態における減衰バルブVは、図1に示すように、緩衝器Dのピストン部の減衰バルブとして利用されている。
【0020】
以下、減衰バルブVおよび緩衝器Dの各部について詳細に説明する。緩衝器Dは、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを備えた緩衝器本体1と、緩衝器本体1内に形成された2つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。
【0021】
緩衝器本体1は、シリンダ4と、シリンダ4内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン5と、シリンダ4内に挿入されてピストン5に連結されるロッド3と、シリンダ4を覆ってシリンダ4との間にリザーバ室Rを形成するアウターシェル2とを備えている。
【0022】
シリンダ4は、筒状であって内部には、前述したようにピストン5が移動自在に挿入されており、ピストン5の図1中上方に伸側室R1が、図1中下方には圧側室R2がそれぞれ区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0023】
また、シリンダ4は、外周側に配置される有底筒状のアウターシェル2内に収容されており、シリンダ4とアウターシェル2との間の環状隙間でリザーバ室Rが形成されている。このリザーバ室R内は、この場合、作動油と気体とが充填されており、液体を作動油とする場合、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとするとよい。
【0024】
そして、シリンダ4の図1中下端には、バルブケース6が嵌合されて設けられており、バルブケース6によって圧側室R2とリザーバ室Rとが仕切られており、また、シリンダ4の図1中上端には、ロッド3を摺動自在に軸支するロッドガイド8が嵌合されている。このロッドガイド8は、アウターシェル2の内周に嵌合され、アウターシェル2の上端を加締めることで、ロッドガイド8の図1中上方に積層されてアウターシェル2に固定される。このようにロッドガイド8をアウターシェル2に固定するとシリンダ4は、アウターシェル2の底部に載置されたバルブケース6とロッドガイド8とで挟持され、シリンダ4もバルブケース6とともにアウターシェル2内で固定される。なお、アウターシェル2の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップとアウターシェル2の底部とで、ロッドガイド8、シリンダ4およびバルブケース6を挟持して、これら部材をアウターシェル2内で固定してもよい。
【0025】
ピストン5は、環状であって図1および図2に示すように、減衰バルブVにおける弁座部材とされていてロッド3の一端となる図1中下端に固定されている。弁座部材としてのピストン5は、円環状の基部5aと、基部5aの外周に設けられてシリンダ4の内周に摺接する筒部5bと、基部5aに対して同一円周上に等間隔に設けられて基部5aを軸方向に貫いて伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート5cと、基部5aの図2中上端側に設けられて各ポート5cの開口端に通じる環状窓5dと、基部5aのポート5cにおける開口端よりも外周側から図2中上方へ向けて突出するように立ち上がって各ポート5cを取り囲む環状の弁座5eとを備えている。
【0026】
ポート5cは、ピストン5に複数設けられており、それぞれピストン5に対してピストン5の中心を中心とする同一円周上に配置されている。なお、ポート5cの設置数は任意であり単数であってもよい。
【0027】
また、環状窓5dは、基部5aに設けられた環状の凹部で形成されており、各ポート5cに通じている。また、環状窓5dは、各ポート5cよりも内周側から各ポート5cの外周までの幅で形成されており、環状窓5dにおける各ポート5cの内周側における部分の深さは、各ポート5cに正対している部分よりも深くなっている。弁座5eは、本実施の形態では、円環状であってピストン5の図2中上端であってポート5cの開口端に通じる環状窓5dの外周から立ち上がってポート5cの外周を取り囲んでいるが、ポート5cのそれぞれを独立して取り囲む花弁型の弁座であってもよい。
【0028】
また、図2にしめすように、筒部5bの外周に設けられた環状溝5b1内には、シリンダ4の内周に摺接してピストン5の外周とシリンダ4の内周との間をシールするピストンリング10が装着されている。
【0029】
減衰バルブVは、弁座部材としてのポート5cを備えたピストン5と、環状でピストン5に対して遠近可能であって弁座5eに離着座するリーフバルブ11と、円形でピストン5に対して遠近可能であってリーフバルブ11の反弁座部材側に重ねられるとともに外径がリーフバルブ11よりも小径なシム12と、円形でピストン5に対して遠近可能であって軸方向から見てシム12の外周よりも外周側であってリーフバルブ11の外周よりも内周側の範囲に軸方向に貫通するディスク側ポート13aを備えてシム12の反弁座部材側に重ねられるディスク13と、ディスク13の反弁座部材側に配置されてディスク13、シム12およびリーフバルブ11をピストン5へ向けて付勢するばね部材14と、筒状であってピストン5の基部5aの外周に嵌合してリーフバルブ11、シム12、ディスク13およびばね部材14を収容するばね受15と、軸状であってピストン5に対して軸方向に延びて外周にシム12およびディスク13が軸方向へ摺動可能に装着されるガイド部材16とを備えている。
【0030】
ガイド部材16は、円筒状のガイド筒16aと、ガイド筒16aの図2中上端の外周に設けられたフランジ16bとを備えている。また、本実施の形態では、ガイド部材16は、ガイド筒16aの下端をピストン5の基部5aのポート5cおよび環状窓5dよりも内周側の図2中上端に当接させてピストン5に重ねられて垂直に立ち上がっている。ガイド部材16は、ガイド筒16aの外周に装着されるシム12およびディスク13を径方向へ位置決めするとともに軸方向への移動を案内するガイドとして機能する。
【0031】
リーフバルブ11は、複数枚の環状板で形成された積層リーフバルブとして構成されている。リーフバルブ11を構成する各環状板の内径は、ガイド部材16のガイド筒16aの外径および環状窓5dの内径よりも大径とされており、各環状板の外径は、ピストン5の弁座5eの上端面の内周よりも大径となっている。また、リーフバルブ11は、軸方向へ移動可能となっておりピストン5に対して遠近できる。
【0032】
また、リーフバルブ11は、ピストン5に重ねられると外周が弁座5eに着座でき、弁座5eに着座した外周を支点として図2中で内周側のピストン5側となる下方への撓みが許容されている。ピストン5の基部5aには環状の凹部でなる環状窓5dが設けられており、環状窓5dのポート5cより内周側の部分の深さが深くなっているので、前述のようにリーフバルブ11の内周がピストン5側に撓んだ際に、リーフバルブ11の内周がピストン5の基部5aに当接してリーフバルブ11がポート5cを閉塞しないようにしている。
【0033】
なお、リーフバルブ11を構成する環状板の枚数は、所望する減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板でリーフバルブ11が構成されてもよい。
【0034】
シム12は、円環状であって、内径がガイド筒16aの外周に摺接可能な径に設定されるとともに、外径がリーフバルブ11の内径よりも大径に設定されている。よって、シム12は、リーフバルブ11に重ねられると外周側をリーフバルブ11の反ピストン側面の内周に当接させてリーフバルブ11の内周を支持できる。また、シム12は、図3に示すように、内周に3つの切欠12aを備えており、ガイド部材16のガイド筒16aの外周に摺接して、ガイド筒16aに案内されつつピストン5に対して軸方向へ遠近できる。切欠12aの外周を通る円の直径は、リーフバルブ11の内径よりも小さい。なお、本実施の形態では、シム12の内周に設けられた切欠12aと切欠12aとの間に3つの凸部12bが形成されており、ガイド筒16aの外周に摺接する凸部12bの先端が円弧形状となっている。なお、シム12の内径は、本実施の形態では、凸部12bの先端同士を通る円の直径となる。このように、切欠12aの周方向幅を広くしてシム12の内周側に円弧形状の凸部12bを形成して、凸部12bをガイド筒16aの外周に摺接させているので、シム12は、ガイド筒16aに対して滑らかに軸方向へ移動できる。なお、シム12に内周に設けられる切欠12aの設置数、周方向幅、シム12の周方向における設置箇所については任意に設計変更できる。また、シム12は円環状でなくともよく、径方向の調心が可能である限りにおいて任意の形状とすることができ、シム12の外形は、リーフバルブ11よりも小形であって、リーフバルブ11が撓んだ際に、シム12とリーフバルブ11との間の隙間を介してポート5cと後述のディスク側ポート13aとの連通を確保できる形状となっていればよい。
【0035】
ディスク13は、図2中下端面となるピストン側端面も反対側の図2中上端面となる反ピストン側面も平坦なシム12よりも厚肉の円環状とされており、軸方向から見てシム12の外周よりも外周側であってリーフバルブ11の外周よりも内周側の範囲に肉厚を貫く複数のディスク側ポート13aを備えている。ディスク側ポート13aは、本実施の形態では、ディスク13に対してディスク13の中心を中心とした同一円周上に等間隔に設けられているが、ディスク側ポート13aの設置数は任意に変更でき単数であってもよい。
【0036】
また、ディスク13は、ガイド部材16のガイド筒16aの外周に摺動可能に装着されており、ガイド筒16aに案内されつつピストン5に対して軸方向へ遠近できる。また、ディスク13は円環状でなくともよく、径方向の調心が可能である限りにおいて任意の形状とすることができる。
【0037】
ばね受15は、円環状の頂部15aと、頂部15aの外周から周方向で等間隔にピストン5側に向けて延びる横断面円弧状の複数の脚部15bとを備えている。脚部15bの図2中下端は、ピストン5の基部5aの外周に嵌合しており、頂部15aはガイド筒16aの外周に嵌合するとともに、上端をフランジ16bの下端に当接させている。そして、ばね受15の各脚部15bの内周には、リーフバルブ11、シム12、ディスク13およびばね部材14が収容されている。各脚部15bの内周を通る円の直径は、リーフバルブ11の外径よりも少し大径になっており、各脚部15bは、リーフバルブ11の外周が隙間を介して対向している。よって、ばね受15は、リーフバルブ11がピストン5に対して軸方向へ遠近を繰り返しても弁座5eに対して径方向へ外れてしまわない程度にリーフバルブ11を調心する。なお、各脚部15bの内周を通る円の直径は、ディスク13の外径よりも大径となっており、ばね受15は、ディスク13の軸方向への移動を妨げない。
【0038】
ばね部材14は、下方側となるピストン5側の径が上方側となる反ピストン側の径が大径なコイルばねとされており、ばね受15の頂部15aとディスク13との間に圧縮状態で介装されている。よって、ばね部材14は、ディスク13、シム12およびリーフバルブ11をピストン5へ向けて付勢している。ばね部材14の図2中上端となる反ピストン側端は、ばね受15の頂部15aと脚部15bとの双方に当接しているため、ばね部材14は、ばね受15によって径方向へ位置決めされている。したがって、ディスク13側にばね部材14の図2中下端に嵌合する嵌合部を設けなくとも、ばね部材14は、ディスク13に対して径方向にずれなく安定した付勢力を付与できる。
【0039】
このように構成された減衰バルブVは、ロッド3の先端に設けた小径部3aの外周に、ガイド部材16、ばね受15、ばね部材14、ディスク13、シム12、リーフバルブ11およびピストン5の順番で組付けられた後、小径部3aの先端に螺着されたピストンナット17とロッド3の小径部3aの終端に形成された段部3bとの間で挟持されてロッド3に固定される。なお、ガイド部材16、ばね受15、ばね部材14、ディスク13、シム12、リーフバルブ11およびピストン5は、ロッド3の小径部3aの外周へ組み付ける前に、仮組してアッセンブリ化しておいてもよい。
【0040】
前述したように、ばね部材14によって付勢され、他に圧力の負荷が無い状態では、ディスク13がシム12に当接し、シム12がリーフバルブ11の内周側に当接し、リーフバルブ11の外周側がピストン5の弁座5eに着座した状態となる。この状態では、ディスク13とシム12との当接、シム12とリーフバルブ11との当接によって、ピストン5のポート5cとディスク13のディスク側ポート13aとの連通が断たれて、減衰バルブVは閉弁状態となる。
【0041】
また、リーフバルブ11、シム12およびディスク13がピストン5から図2中上方側へ移動してリーフバルブ11が弁座5eから離座すると、減衰バルブVは、リーフバルブ11と弁座5e間に隙間を生じさせてポート5cを開放する。このように減衰バルブVが開弁する状態では、圧側室R2に連通されたポート5cをばね受15の脚部15b,15b間の隙間を介して伸側室R1に連通させる。
【0042】
さらに、伸側室R1側の圧力の作用で、リーフバルブ11、シム12およびディスク13がピストン5側へ向けて押圧されると、ディスク13の内周にしむ12が重ねられているために、リーフバルブ11の外周が当接するディスク13のレベル(高さ)とリーフバルブ11の内周側が当接するシム12のレベル(高さ)に差があるので、リーフバルブ11は、外周側がディスク13と弁座5eとで挟まれた状態でシム12の厚み分だけ内周側を撓ませる。リーフバルブ11は、シム12の厚み分だけ内周側が撓むと、自己の復元力でシム12およびディスク13をピストン5から離間する方向となる図2中上方側へ押し返そうとする付勢力を発揮する。よって、ディスク側ポート13aを通過しようとする作動油の圧力によってリーフバルブ11の内周側を図2中下方へと押圧する力が、リーフバルブ11の前記付勢力に打ち勝たないとリーフバルブ11はシム12から離間せずシム12をディスク13に密着させた状態に維持する。そして、ディスク側ポート13aを通過しようとする作動油の圧力によってリーフバルブ11の内周側を図2中下方へと押圧する力が、リーフバルブ11の前記付勢力に打ち勝つと、リーフバルブ11の内周側が撓んでシム12とリーフバルブ11との間或いはシム12とディスク13との間に隙間を生じさせて、減衰バルブVが開弁してディスク側ポート13aとポート5cとを連通させる。なお、シム12がリーフバルブ11に張り付いてリーフバルブ11と一体となって変位するような事態が生じても、シム12の内周に設けて切欠12aとガイド筒16aとの間に流路が形成されるので、リーフバルブ11の内周側が撓んで減衰バルブVが開弁する状態では、ディスク側ポート13aとポート5cとを確実に連通状態にできる。そして、ディスク側ポート13a側から圧力を受ける場合、前述したように、シム12によってリーフバルブ11が初期撓みを与えられる状態となるので、シム12の厚み(高さ)の調節によってリーフバルブ11の開弁圧を調節できる。
【0043】
つづいて、バルブケース6は、シリンダ4の下端に嵌合されてシリンダ4内の圧側室R2と、シリンダ4とアウターシェル2との間に形成されたリザーバ室Rとを区画している。バルブケース6は、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路6aおよび吸込通路6bを備えている。また、バルブケース6の図1中下端となるリザーバ室側端には、圧側減衰通路6aを開閉するとともに圧側減衰通路6aを通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブ20が設けられており、バルブケース6の図1中上端となる圧側室側端には、吸込通路6bを開閉して吸込通路6bをリザーバ室Rから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ21が設けられている。
【0044】
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ4に対してロッド3が図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して上方へ移動して、伸側室R1が圧縮されるとともに圧側室R2が拡大される。伸側室R1の圧縮に伴って伸側室R1内の圧力が上昇して、減衰バルブVにおけるディスク13、シム12およびリーフバルブ11は、ばね受15内に伝搬する伸側室R1の圧力によってピストン5へ向けて押圧される。すると、前述したように、リーフバルブ11の外周がディスク13と弁座5eとで挟持されるとともに、リーフバルブ11の内周がシム12の厚み分だけ下方へ撓んだ状態となって、リーフバルブ11に初期撓みが与えられる。
【0045】
伸側室R1内の圧力がリーフバルブ11の開弁圧に達しない状態では、リーフバルブ11の内周がシム12に当接してシム12をディスク13に密着させるので、リーフバルブ11はディスク側ポート13aを閉じた状態に維持する。他方、伸側室R1内の圧力がリーフバルブ11の開弁圧以上になると、リーフバルブ11の内周がシム12の厚み以上に撓んで、減衰バルブVは開弁する。
【0046】
減衰バルブVの開弁時に、リーフバルブ11がシム12から離間してシム12との間に隙間を生じさせる場合には、ディスク側ポート13aを通過した作動油はシム12とリーフバルブ11との間の隙間を介してピストン5のポート5cへ向かい、その後、圧側室R2へ流入する。この作動油の流れに対してリーフバルブ11が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。
【0047】
また、減衰バルブVの開弁時に、シム12がリーフバルブ11とともにディスク13から離間する場合には、シム12とディスク13との間に隙間を生じることになる。すると、ディスク側ポート13aを通過した作動油は、前記隙間を通過した後、シム12の内周側の切欠12aを通じてピストン5に設けたポート5cに向かい、その後、圧側室R2へ流入する。この作動油の流れに対してリーフバルブ11が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。
【0048】
このように、本実施の形態の減衰バルブVでは、シム12がディスク13に固定されていないので、シム12がディスク13に吸着していると、リーフバルブ11が撓むとシム12とリーフバルブ11との間に隙間が生じる状態となり、ディスク側ポート13aとポート5cとがシム12とリーフバルブ11との間に隙間を介して連通される。他方、シム12がリーフバルブ11に吸着していると、リーフバルブ11が撓むとシム12とリーフバルブ11とが一体となってディスク13から離間する場合がある。シム12が単なる円環状でシム12の内周が全周に亘ってガイド部材16のガイド筒16aの外周に摺接する場合、シム12とリーフバルブ11とが一体となってディスク13から離間すると、シム12とリーフバルブ11とでディスク側ポート13aからポート5cへ至る流路を閉塞してしまう。これに対して、本実施の形態の減衰バルブVでは、シム12の内周に設けた切欠12aが設けられており、シム12とガイド筒16aとの間に切欠12aによって流路が形成されるため、シム12とリーフバルブ11とが一体となってディスク13から離間しても、ディスク側ポート13aとポート5cとが確実に連通される。
【0049】
なお、シム12をディスク13に固定する場合や、シム12のリーフバルブ11に対向する表面の粗度を荒くしてシム12のリーフバルブ11への吸着を防止できる場合には、シム12の内周に切欠12aを設けずとも減衰バルブVの開弁時の流路の閉塞を防止できる。換言すれば、シム12の内周に切欠12aを設けると、シム12のディスク13への固定や表面の加工を要せずに、流路の閉塞を防止できる利点を享受できる。
【0050】
また、緩衝器Dの伸長時には、ロッド3がシリンダ4内から退出するため、シリンダ4内でロッド3が退出する体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、バルブケース6に設けたチェックバルブ21が開弁してリザーバ室Rからシリンダ4内に供給される。チェックバルブ21の開弁圧はごく低く設定してあり、シリンダ4内の圧力が大気圧以下になることがないように配慮されている。
【0051】
つづいて、シリンダ4に対してロッド3が図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇して、減衰バルブVにおけるディスク13、シム12およびリーフバルブ11は、ポート5cを通じて作用する圧側室R2の圧力によってピストン5から離間する方向へ向けて押圧される。リーフバルブ11は、前述した通り、ばね部材14によって付勢されて弁座5eに着座してポート5cを閉鎖しているが、圧側室R2の圧力によってディスク13、シム12およびリーフバルブ11を押し上げる力がばね部材14の付勢力に打ち勝つと、ばね部材14を押し縮めて弁座5eから離間して図2中上方へ移動する。
【0052】
リーフバルブ11がピストン5の弁座5eから離間すると、リーフバルブ11と弁座5eとの間に隙間が形成されて、圧側室R2の作動油は、ポート5cおよびリーフバルブ11と弁座5eとの間の隙間を通過して、ばね受15の脚部15b,15b間の隙間から伸側室R1へ移動する。本実施の形態の減衰バルブVでは、ばね部材14の付勢力をごく小さくしているため、リーフバルブ11がピストン5からリフトして開弁する際の減衰バルブVが作動油の流れに与える抵抗が極小さく、圧側室R2と伸側室R1との圧力差も小さい。
【0053】
緩衝器Dの収縮作動時には、ロッド3がシリンダ4内に侵入するために、シリンダ4内にロッド3が侵入した体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となり、この過剰分の作動油は、バルブケース6に設けた圧側リーフバルブ20が開弁して圧側減衰通路6aを介してリザーバ室Rへ排出される。この圧側減衰通路6aを通過する作動油の流れに対して圧側リーフバルブ20が抵抗を与えるため、シリンダ4内の圧力が上昇し、緩衝器Dは、収縮作動を抑制する減衰力を発生する。
【0054】
以上、減衰バルブVは、ポート5cとポート5cの開口端の外周から立ち上がる環状の弁座5eとを有するピストン(弁座部材)5と、環状でピストン(弁座部材)5に対して遠近可能であって弁座5eに離着座するリーフバルブ11と、ピストン(弁座部材)5に対して遠近可能であってリーフバルブ11の反ピストン側(反弁座部材側)に重ねられるとともに外形がリーフバルブ11よりも小形なシム12と、ピストン(弁座部材)5に対して遠近可能であって軸方向から見てシム12の外周よりも外周側であってリーフバルブ11の外周よりも内周側の範囲に軸方向に貫通するディスク側ポート13aを有してシム12の反ピストン側(反弁座部材側)に重ねられるディスク13と、ディスク13の反ピストン側(反弁座部材側)に配置されてディスク13、シム12およびリーフバルブ11をピストン(弁座部材)5へ向けて付勢するばね部材14とを備えて構成されている。
【0055】
このように構成された減衰バルブVでは、ディスク13にシム12を重ねることでリーフバルブ11に初期撓みを与える構造となっているため、ディスク13自体にリーフバルブ11に初期撓みを与えるための支持突起を設ける必要がなく、ディスク13の形状が簡素化されるとともに、異なる厚みを持つシム12へ交換することでリーフバルブ11の開弁圧の調整を行える。
【0056】
ディスク13の形状が簡素化される結果、ディスク13をたとえばプレス加工等の加工に時間がかからず、かつ、安価な加工方法の採用で製造できるようになり、プレス加工によって形成された比較的均一な厚みを持つシム12を利用することで高度な寸法管理も不要となり、厚みの異なるシム12を用意しておけばリーフバルブ11の開弁圧のチューニングも行えるので高価で複雑な形状のディスクを開弁圧のチューニングのために都度製造する必要もなくなる。
【0057】
以上より、本実施の形態の減衰バルブVによれば、製造時間の短縮とコストの低減が可能となるだけでなく、寸法管理が容易でリーフバルブ11の開弁圧のチューニングに際して煩わしさが無くなる。
【0058】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVでは、ディスク13のピストン側端(弁座部材側端)が平坦となっている。ディスク13が弁座5eに干渉せずディスク13のシム12およびリーフバルブ11が接触しない部位についての形状は任意に設計変更できるが、ピストン側端(弁座部材側端)の全体を平坦とすることにより、ディスク13の形状がより一層簡素化されるので減衰バルブVの製造コストも安価となる。
【0059】
また、本実施の形態の減衰バルブVは、軸状であってピストン(弁座部材)5に対して軸方向に延びて外周にシム12およびディスク13が軸方向へ摺動可能に装着されるガイド部材16を備え、シム12が内周にガイド部材16との間に隙間を形成する切欠12aを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、シム12がディスク13に固定されていなくてもリーフバルブ11の内周が撓んで開弁した際にディスク側ポート13aとポート5cとの連通を切欠12aによって確保できる。また、このように構成された減衰バルブVによれば、シム12とディスク13とを固定する加工やシム12の表面加工が不要となるので、より一層コストを低減できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、ガイド部材16を設けてガイド部材16の外周にシム12とディスク13とを摺動自在に装着しているので、シム12とディスク13とがともに軸ずれせずにピストン(弁座部材)5に対して軸方向へ移動できるので、減衰バルブVは、安定した減衰力を発揮できる。ガイド部材16は、前述した通り、ロッド3とは別体となっているが、ロッド3の小径部3aの外周に直接シム12およびディスク13を摺接させる場合には、ロッド3自体をガイド部材として利用することができる。
【0061】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVは、環状の頂部15aと頂部15aの外周から垂下される複数の脚部15bとを有して脚部15bの下端がピストン(弁座部材)5の外周に嵌合されるばね受15を備え、ばね部材14はばね受15の頂部15aとディスク13との間に介装され、ばね部材14の反ピストン側端(反弁座部材側端)はばね受15の頂部15aと脚部15bに当接しており、ディスク13の反ピストン側端(反弁座部材側端)は平坦である。このように構成された減衰バルブVによれば、ばね部材14がばね受15の頂部15aと脚部15bに当接することで調心されるので、ディスク13の反ピストン側端(反弁座部材側端)が平坦であっても、ばね部材14はディスク13に軸ずれせずに安定した付勢力を付与できる。よって、本実施の形態の減衰バルブVによれば、ディスク13にばね部材14の軸ずれを防止するための嵌合部等を設けずともよく、ディスク13の反ピストン側端(反弁座部材側端)の形状も簡素化されるので、より一層ディスク13の加工が容易となり製造コストも低減できる。そして、本実施の形態の減衰バルブVでは、ガイド部材16とばね受15とを備えているので、減衰バルブVをロッド3に組み付ける際に、減衰バルブVを構成する部品を仮組してアッセンブリ化することができるので、減衰バルブVをロッド3に組み付ける作業が容易となる。
【0062】
なお、前述したところでは、シム12の内周は支持されていないので、シム12がリーフバルブ11の内周側の撓み変形に追従して軸方向へ移動できるようになっているが、ガイド部材16のピストン5側端(弁座部材側端)の外周に突出する環状のフランジを設けて、当該フランジによってシム12のピストン5側(弁座部材側)の内周を支持してシム12のピストン5側(弁座部材側)への移動を規制してもよい。このようにすると、リーフバルブ11の内周側が撓んでディスク側ポート13aを開放する際に、シム12が前記フランジによって支持されてリーフバルブ11の内周から確実に離間してポート5cとディスク側ポート13aとの連通が確保される。よって、このようにガイド部材16にフランジを設ける場合、シム12の内周の切欠12aを廃止でき、また、切欠12aを廃止してシム12の外周に径方向へ向けてオリフィスとして機能する切欠を設けることで、減衰バルブVにオリフィスを容易に設けることができる。
【0063】
また、緩衝器Dは、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とアウターシェル2に対するロッド3の移動によって作動油(液体)が行き来する伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体1と、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、安価に製造可能な減衰バルブVを備えているので、コストを低減できるとともに、シム12の交換によって減衰力のチューニングも容易に行える。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、製造時間の短縮およびコストの低減を可能とするだけでなく、寸法管理も容易で開弁圧のチューニングに際して煩わしさを無くせる。
【0064】
なお、本実施の形態では、弁座部材をピストン5として、緩衝器Dのピストン部に減衰バルブVを設置しているが、緩衝器Dのバルブケース6を弁座部材として、2つの作動室として圧側室R2とリザーバ室Rとの間に減衰バルブVを設置してもよい。つまり、緩衝器Dのベースバルブ部に減衰バルブVを設置してもよい。バルブケース6を弁座部材とする場合、バルブケース6の通路構成を図2に示したピストン5の通路構成としておけばよいので、バルブケース6には作動油の双方向の通過を許容するポートを設けておけばよい。そして、バルブケース6を弁座部材とする場合、リーフバルブ11で圧側室R2からリザーバ室Rへ作動油(液体)が向かう際に抵抗を与えるようにして、リーフバルブ11を緩衝器Dの収縮作動時の減衰バルブとして利用するとともに、リザーバ室Rから圧側室R2へ作動油(液体)が移動する場合にはリーフバルブ11がピストン5から離間して開弁するように設置することができる。このように、減衰バルブVは、緩衝器D内に形成される2つの作動室間に設けれることで緩衝器Dにおける減衰力発生源として利用できる。
【0065】
また、減衰バルブVは、ピストン部およびベースバルブ部において天地逆向きに設置されてもよい。さらに、緩衝器Dは、アウターシェル2の内周にロッド3が連結されたピストンが摺動自在に挿入される単筒型の緩衝器であってもよい。このように単筒型に設定される緩衝器Dは、作動室が伸側室と圧側室の2つとなるので、減衰バルブVを緩衝器Dのピストン部に設ければよい。また、緩衝器Dの構成によって減衰バルブの設置箇所は変化するが、減衰バルブVは緩衝器Dの構成に応じて最適な箇所に設置されればよい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターシェル、3・・・ロッド、5・・・ピストン(弁座部材)、5c・・・ポート、5e・・・弁座、11・・・リーフバルブ、12・・・シム、12a・・・切欠、13・・・ディスク、13a・・・ディスク側ポート、14・・・ばね部材、15・・・ばね受、15a・・・頂部、15b・・・脚部、16・・・ガイド部材、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ室(作動室)、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V・・・減衰バルブ、
図1
図2
図3