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特開2023-148060内接歯車ポンプ、液圧装置および車高調整機能付き緩衝器
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  • 特開-内接歯車ポンプ、液圧装置および車高調整機能付き緩衝器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148060
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ、液圧装置および車高調整機能付き緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20231005BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   F16F 9/56 20060101ALI20231005BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04C2/10 341H
F04C15/00 J
F16F9/56 A
F16F9/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055897
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】粥川 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏友
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
3J069
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB04
3H041CC20
3H041DD05
3H041DD10
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC19
3H044DD05
3H044DD19
3J069AA54
3J069AA66
3J069CC10
3J069DD16
3J069EE38
(57)【要約】
【課題】モータの小型化を可能とする内接歯車ポンプ、内接歯車ポンプを備えていても小型化が可能な液圧装置および車高調整機能付き緩衝器を提供する。
【解決手段】
本発明における内接歯車ポンプ1は、ケース2と、環状であって内周に設けられた内歯3aと外周に設けられた外歯3bとを有してケース2内に周方向に回転可能に収容されるアウターロータ3と、ケース2内に収容されるとともにアウターロータ3の内周側に挿入されてアウターロータ3に歯合する外歯車でなるインナーロータ4と、アウターロータ3の外歯3bに歯合する駆動用歯車5と、駆動用歯車を駆動するモータ6とを備え、駆動用歯車5の歯数がアウターロータ3の外歯3bの歯数よりも少ないことを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
環状であって内周に設けられた内歯と外周に設けられた外歯とを有して、前記ケース内に周方向に回転可能に収容されるアウターロータと、
前記ケース内に収容されるとともに前記アウターロータの内周側に挿入されて前記アウターロータに歯合する外歯車でなるインナーロータと、
前記アウターロータの外歯に歯合する駆動用歯車と、
前記駆動用歯車を駆動するモータとを備え、
前記駆動用歯車の歯数は、前記アウターロータの外歯の歯数よりも少ない
ことを特徴とする内接歯車ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の内接歯車ポンプと、
前記ケースに一体化されて前記内接歯車ポンプからの液体の給排を受ける機器とを備え、
前記機器が筒状である
ことを特徴とする液圧装置。
【請求項3】
シリンダと、前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、前記伸側室内に挿入されて前記シリンダに対して軸方向へ移動可能であって前記ピストンに連結されるピストンロッドと、前記シリンダを覆う外筒とを有する緩衝器本体と、
前記ケースが前記外筒に連結されて前記シリンダ内に液体を給排する請求項1に記載の内接歯車ポンプとを備え、
前記外筒を軸方向から見て、前記アウターロータの一部が前記外筒の外周よりも内側に配置されている
ことを特徴とする車高調整機能付き緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内接歯車ポンプ、伸縮装置および車高調整機能付き緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
内接歯車ポンプは、ケースと、環状であって前記ケース内に周方向に回転可能に収容される内歯車でなるアウターロータと、ケース内に収容されるとともにアウターロータの内周側に挿入されてアウターロータに歯合する外歯車でなるインナーロータと、インナーロータを駆動するモータとを備えている。
【0003】
より詳しくは、インナーロータの回転軸は、アウターロータの回転中心から偏心した位置に配置されており、モータでインナーロータを回転駆動すると、インナーロータに歯合されたアウターロータもインナーロータとともに駆動される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成された内接歯車ポンプでは、インナーロータとアウターロータの回転に伴ってインナーロータとアウターロータとの間のキャビティの隙間の容積が変化することを利用して液体の吸込と吐出とを連続して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-197709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように構成された内接歯車ポンプでは、インナーロータの外歯の歯数とアウターロータの内歯の歯数との組み合わせに制限があり減速比を大きくできないため、インナーロータを駆動するためのモータには大きなトルクの出力が求められる。よって、従来の内接歯車ポンプでは、モータを小型化することが難しい。
【0007】
また、内接歯車ポンプを機器に一体に設けた液圧装置では、モータの小型化が難しいので内接歯車ポンプの機器への取り付けにモータが邪魔となり、液圧装置全体の小型化も難しくなる。
【0008】
さらに、車高調整機能付き緩衝器では、内接歯車ポンプからシリンダ内に液体を給排することによって緩衝器本体を伸縮させて車高調整を可能とするものがあるが、モータの小型化が難しいので内接歯車ポンプの緩衝器本体への取り付けにモータが邪魔となり、車高調整機能付き緩衝器全体の小型化も難しくなる。
【0009】
そこで、本発明は、モータの小型化を可能とする内接歯車ポンプ、内接歯車ポンプを備えていても小型化が可能な液圧装置および車高調整機能付き緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段における内接歯車ポンプは、ケースと、環状であって内周に設けられた内歯と外周に設けられた外歯とを有してケース内に周方向に回転可能に収容されるアウターロータと、ケース内に収容されるとともにアウターロータの内周側に挿入されてアウターロータに歯合する外歯車でなるインナーロータと、アウターロータの外歯に歯合する駆動用歯車と、駆動用歯車を駆動するモータとを備え、駆動用歯車の歯数がアウターロータの外歯の歯数よりも少ないことを特徴としている。
【0011】
このように構成された内接歯車ポンプは、アウターロータとインナーロータとを駆動するために駆動用歯車とアウターロータとで減速機を構成しており、アウターロータとインナーロータとを駆動するために駆動用歯車を駆動するトルクが小さくて済むため、モータを小型化できる。また、内接歯車ポンプでは、モータを小型化できるため、内接歯車ポンプから液体の供給をうける機器に一体にして液圧機器を構成する場合であってもモータが邪魔にならないので、機器への搭載性が向上するとともに液圧機器の小型化も図れる。
【0012】
さらに、インナーロータ、アウターロータおよび駆動用歯車がケース内に収容されて、ポンプと減速機とが一体構造となるので、内接歯車ポンプをコンパクトにできる。
【0013】
また、内接歯車ポンプと、ケースに一体化されて内接歯車ポンプからの液体の給排を受ける機器とを備え、機器が筒状となっていてもよい。このように、内接歯車ポンプから液体の供給をうける機器が筒状であっても、モータで直接駆動するのはアウターロータの外周側に配置される駆動用歯車であるため、内接歯車ポンプのアウターロータとインナーロータとで構成されたポンプ部分を機器の至近に配置しても駆動用歯車と同軸のモータを機器に干渉しない位置に無理なく配置できる。
【0014】
さらに、車高調整機能付き緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室内に挿入されてシリンダに対して軸方向へ移動可能であってピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダを覆う外筒とを有する緩衝器本体と、ケースが外筒に連結されてシリンダ内に液体を給排する内接歯車ポンプとを備え、外筒を軸方向から見て、アウターロータの一部が外筒の外周よりも内側に配置されている。このように構成された車高調整機能付き緩衝器によれば、アウターロータの一部が外筒の外周よりも内側に配置されるので、内接歯車ポンプのポンプ部分を緩衝器本体の至近に配置して、内接歯車ポンプ含めた全体の外径をより一層小型化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車高調整機能付き緩衝器によれば、車高調整機能を備えていても小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態の内接歯車ポンプが適用された車高調整機能付き緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体の平面図である。
図3】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケースの蓋の底面図である。
図4】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体の断面図である。
図5】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体のチェック弁部分の一部断面図である。
図6】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体のチェック弁部分の一部断面図ある。
図7】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体のオペレートチェックバルブ部分の一部断面図である。
図8】一実施の形態の内接歯車ポンプにおけるケース本体のリリーフ弁部分の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した各実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における内接歯車ポンプ1は、図1から図4に示すように、ケース2と、環状であって内周に設けられた内歯3aと外周に設けられた外歯3bとを有してケース2内に周方向に回転可能に収容されるアウターロータ3と、ケース2内に収容されるとともにアウターロータ3の内周側に挿入されてアウターロータ3に歯合する外歯車でなるインナーロータ4と、アウターロータ3の外歯3bに歯合する駆動用歯車5と、駆動用歯車5を駆動するモータ6とを備えている。また、本実施の形態の内接歯車ポンプ1は、図1に示すように、緩衝器本体Dに一体に装着されて緩衝器本体Dに対して液体を給排可能となっている。内接歯車ポンプ1と緩衝器本体Dは、車高調整機能付き緩衝器SAを構成しており、緩衝器本体Dは、懸架ばねSとともに図外の車両の車体と車輪との間に介装されて使用される。
【0018】
まず、内接歯車ポンプ1について説明する。ケース2は、図1から図4に示すように、アウターロータ3、インナーロータ4および駆動用歯車5を収容するケース本体7と、ケース本体7に重ねられる蓋8とを備えている。
【0019】
ケース本体7は、本実施の形態では、アウターロータ3およびインナーロータ4を内部に収容する円形状の凹部でなるポンプ室7a1を備えたポンプ部7aと、ポンプ部7aの側方に連なり駆動用歯車5を収容する円形状の凹部でなる歯車室7b1を備えた歯車収容部7bと、ポンプ部7aの側方に連なり後述する緩衝器本体Dに連結される環状の取付部7cとを備えている。
【0020】
本実施の形態では、図1および図2に示すように、平面視でポンプ部7a、歯車収容部7bおよび取付部7cは、ともに外周形状が略円形状となっているが、外周形状については任意に設計変更可能である。
【0021】
また、ポンプ部7aにおけるポンプ室7a1と、歯車収容部7bにおける歯車室7b1とは、互いに連通されており、平面視で2つの円の一部分を重ねてできる形状となっている。
【0022】
平面視でポンプ室7a1の形状は、前述した通り円形となっており、ポンプ室7a1の直径は、アウターロータ3の外歯3bの先端が摺接するがアウターロータ3のポンプ室7a1内での周方向の回転を妨げない程度の径に設定されている。他方の歯車室7b1の形状は、ポンプ室7a1と同様に円形状とされており、歯車室7b1の内径は、駆動用歯車5の外径よりも大径となっていて歯車室7b1内に収容される駆動用歯車5の回転を妨げない。なお、歯車室7b1の形状は、歯車室7b1内に収容される駆動用歯車5の回転を許容する限りにおいて任意に設計変更可能であるが、歯車室7b1の形状を円形とすることで歯車収容部7bの外形もこれと同心の円形にして歯車収容部7bを小型にできる。
【0023】
また、ポンプ部7aは、図2および図4に示すように、ポンプ室7a1の中心から偏心した位置に開口し後述するインナーロータ4のシャフト4bが挿入される孔7a2と、外周にボルト挿通孔を有する円環状のブラケット7a3とを備えている。歯車収容部7bは、図2および図4に示すように、歯車室7b1の中心から開口し後述する駆動用歯車5のシャフト5bが挿入される孔7b2と、外周の2箇所にボルト挿通孔を有する円環状のブラケット7b3とを備えている。
【0024】
取付部7cは、円環状であってポンプ部7aの側方に連なっており、4つの弁孔7c1,7c2,7c3,7c4と、5つのボルト挿通孔7c5と、内周の上方側に設けられた環状凹部7c6と、内周であって環状凹部7c6よりも下方側に設けられた環状のシール溝7c7と、弁孔7c1,7c2,7c3,7c4およびボルト挿通孔7c5を周方向で避ける位置に設けられて環状凹部7c6に通じる扇状の4つの凹部7c8とを備えている。また、取付部7cは、図4に示したように、下方へ突出する円形の凸部7c9を備えている。
【0025】
弁孔7c1は、図5に示すように、取付部7cの上端から開口して環状凹部7c6に通じている。弁孔7c2は、図6に示すように、取付部7cの下端から開口してポンプ室7a1内に通じている。弁孔7c3は、図7に示すように、取付部7cを軸方向となる上下方向に貫通するとともに途中で分岐して環状凹部7c6に通じている。さらに、弁孔7c4は、図8に示すように、取付部7cを軸方向となる上下方向に貫通している。
【0026】
また、取付部7cの内周のシール溝7c7内には、後述する緩衝器本体Dにおけるシリンダ30の外周に密着してケース2とシリンダ30との間をシールするシールリング10が装着されている。
【0027】
さらに、ケース本体7におけるポンプ部7a、歯車収容部7bおよび取付部7cの上端の縁に沿ってポンプ室7a1、歯車室7b1、弁孔7c1,7c2,7c3,7c4および凹部7c8を取り囲む環状のシール溝7dが設けられている。
【0028】
蓋8は、図3に示すように、外周形状がケース本体7に符合する形状となっており、ケース本体7に重ねられると、ケース本体7のポンプ室7a1および歯車室7b1を閉塞する。具体的には、蓋8は、本実施の形態では、ケース本体7におけるポンプ部7aに重ねられてポンプ室7a1を蓋する中央部8aと、中央部8aの側方に連なり歯車収容部7bに重ねられて歯車室7b1の開口を蓋するとともにモータ6が取り付けられる先端部8bと、中央部8aの側方に連なり後述する取付部7cに重ねられる環状の基端部8cとを備えている。
【0029】
中央部8aは、図3に示すように、ケース本体7のポンプ部7aに重ねた状態で、ポンプ室7a1の中心から偏心した位置に開口する孔7a2に上下方向で対向する位置に後述するインナーロータ4のシャフト4bが挿入される孔8a2と、外周のブラケット7a3に対向する位置にボルト挿通孔を有する円環状のブラケット8a3とを備えている。先端部8bは、図3に示すように、ケース本体7の歯車収容部7bに重ねた状態で、孔7b2に上下方向で対向する位置に開口して駆動用歯車5のシャフト5bが挿入される孔8b2と、外周の2箇所のブラケット7b3に対向する位置にボルト挿通孔を有する円環状のブラケット8b3とを備えている。また、中央部8aと先端部8bの外周には、モータ6を取り付けるために3つの取付片8eが設けられている。取付片8eには、図4に示すように、蓋8の上方から開口する螺子孔8e1が設けられており、モータ6が螺子締結によってケース2に固定される。
【0030】
また、基端部8cは、円環状であって、内径がケース本体7の環状凹部7c6の内径より大径に設定された隔壁部8c1と、隔壁部8c1に設けられてケース本体7の取付部7cに重ねた状態で凹部7c8に上下方向で対向する扇状の4つの凹部8c2と、隔壁部8c1の図4中で上端から上方へ突出して前記凹部8c2を取り囲む円環状のソケット8c3と、隔壁部8c1に設けられてケース本体7の取付部7cに重ねた状態で弁孔7c4に上下方向で対向する通路孔8c4と、ボルト挿通孔7c5に上下方向で対向する5つのボルト挿通孔8c5とを備えている。
【0031】
さらに、蓋8は、ケース本体7に重ねられるとシール溝7dに対向するシール溝8fを備えている。そして、シール溝7d,8f内にシールリング11を挿入して蓋8をケース本体7に重ねて、ボルト挿通孔7c5,8c5およびブラケット7a3,7b3,8a3,8b3内に図示しないボルトを挿通し、当該ボルトにナットを螺着して締め付けることでケース本体7と蓋8とがシールリング11によってシールされた状態で結合される。
【0032】
また、蓋8は、ケース本体7側を向く端部に中央部8aから基端部8cにかけて形成されてポンプ室7a1に通じる溝8dを備えている。溝8dは、蓋8をケース本体7に重ねると、弁孔7c1および弁孔7c3に対向する円弧状凹部8d1と、円弧状凹部8d1から中央部8a側へ延びてポンプ室7a1に通じる連絡凹部8d2とを備えている。
【0033】
ケース2は、図1に示すように、後述する緩衝器本体Dのシリンダ30の中間部の外周にケース本体7の内周を嵌合させるとともにシリンダ30を覆う外筒33を形成する上方筒33aと下方筒33bとの間に介装されて、緩衝器本体Dに装着されている。また、ケース2におけるケース本体7の取付部7cは、シリンダ30と外筒33との間に形成される環状隙間を図1中で上方側のタンクTとリザーバ室Rとに仕切っている。
【0034】
このようにケース2を緩衝器本体Dのシリンダ30に嵌合させて、ケース2が外筒33における上方筒33aと下方筒33bとの間に介装されると、図2に示すように、アウターロータ3、シリンダ30および外筒33を軸方向から見てアウターロータ3の一部がシリンダ30と外筒33との間に配置される。
【0035】
さらに、ケース2における蓋8の基端部8cとソケット8c3の内周には、バッフルプレート20が取り付けられている。バッフルプレート20は、環状であって内径がケース本体7の取付部7cの内径と同一に設定されるとともに内周に複数の切欠20a1を有する本体部20aと、本体部20aの外周から図4中上方へ立ち上がりソケット8c3の内周に嵌合する環状の嵌合部20bとを備えている。
【0036】
このようにバッフルプレート20は、緩衝器本体DのタンクTに臨んでおり、切欠20a1を介してタンクTとケース本体7の環状凹部7c6との連通を許容する。バッフルプレート20は、内接歯車ポンプ1の駆動や緩衝器本体Dに入力される振動によって、タンクT内の液面に気泡が生じた場合に内接歯車ポンプ1内に気泡が侵入するのを妨げる。なお、バッフルプレート20は、不要であれば省略してもよい。
【0037】
アウターロータ3は、環状であって内周に設けられた内歯3aと外周に設けられた外歯3bとを備えている。内歯3aの形状は、トロコイド曲線歯形となっており、外歯3bの形状は、インボリュート曲線歯形となっている。なお、内歯3aと外歯3bの形状は、前記したものに限定されない。アウターロータ3は、ケース本体7におけるポンプ室7a1に収容され、外歯3bの外周面がポンプ室7a1を形成する凹部の側壁に摺接している。よって、アウターロータ3は、ケース本体7におけるポンプ部7aに対してガタなく周方向へ回転できる。
【0038】
インナーロータ4は、円盤状であって外周にアウターロータ3の内歯3aに歯合する外歯4a1を備えた本体4aと、本体4aの中心を貫くシャフト4bとを備えている。外歯4a1の形状は、アウターロータ3の内歯3aに歯合するトロコイド曲線歯形とされている。また、シャフト4bは、本体4aの上下方向両側に延びており、一端がケース本体7のポンプ部7aに設けられた孔7a2内に回転可能に挿入され、他端が蓋8の中央部8aに設けられた孔8a2内に回転可能に挿入されて、ポンプ室7a1内に収容されている。シャフト4bは、孔7a2,8a2の内周に摺接しており、インナーロータ4は、ケース2によって支持されてポンプ室7a1内で周方向へ回転できる。また、孔7a2,8a2は、アウターロータ3の回転中心から偏心した位置に設けられているので、インナーロータ4は、アウターロータ3に対して偏った位置に配置されて外歯4a1を内歯3aに歯合している。そして、アウターロータ3が回転すると、アウターロータ3に歯合するインナーロータ4も回転する。インナーロータ4がアウターロータ3に対して偏心しているので、アウターロータ3とインナーロータ4の回転に伴い、アウターロータ3の内歯3aとインナーロータ4の外歯4a1との間の隙間の空隙の容積が変化する。
【0039】
駆動用歯車5は、円盤状であってアウターロータ3の外周側に配置されて外周にアウターロータ3の外歯3bに歯合する外歯5a1を備えた本体5aと、本体5aの中心を貫くシャフト5bとを備えている。外歯5a1の形状は、アウターロータ3の外歯3bに歯合するインボリュート曲線歯形とされている。なお、駆動用歯車5における外歯5a1とアウターロータ3の外歯3bの歯形は、インボリュート曲線歯形とされているがこれに限定されない。駆動用歯車5の外歯5a1の歯数は、アウターロータ3の外歯3bの歯数よりも少なく、駆動用歯車5とアウターロータ3とで減速機を構成している。さらに、駆動用歯車5とアウターロータ3との間の減速比は、インナーロータ3とアウターロータ4との間の減速比よりも大きくなるように設定されている。
【0040】
シャフト5bは、本体5aの上下方向両側に延びており、一端がケース本体7の歯車収容部7bに設けられた孔7b2内に回転可能に挿入され、他端が蓋8の孔8b2内に回転可能に挿入されている。シャフト5bは、孔7b2,8b2の内周に摺接しており、駆動用歯車5は、ケース2によって支持されて周方向に回転できる。
【0041】
モータ6は、蓋8の取付片8eにボルト止めされてケース2に固定されている。モータ6における出力シャフト6aは、駆動用歯車5のシャフト5bに連結されている。よって、モータ6を駆動すると、駆動用歯車5が回転駆動されて、駆動用歯車5が歯合するアウターロータ3も回転駆動され、さらに、アウターロータ3に歯合するインナーロータ4も回転駆動される。
【0042】
モータ6を駆動してアウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させると、アウターロータ3の回転中心とインナーロータ4の回転中心とを結ぶ線Lを基準として線Lの右側では、アウターロータ3とインナーロータ4との回転の進行により、アウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が拡大し、線Lの左側では、アウターロータ3とインナーロータ4との回転の進行により、アウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が縮小する。他方、モータ6を駆動してアウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で反時計回りに回転させると、アウターロータ3の回転中心とインナーロータ4の回転中心とを結ぶ線Lを基準として線Lの右側では、アウターロータ3とインナーロータ4との回転の進行により、アウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が縮小し、線Lの左側では、アウターロータ3とインナーロータ4との回転の進行により、アウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が拡大する。線Lの右側の空隙は、蓋8の円弧状凹部8d1を介して弁孔7c1および弁孔7c3に連通され、線Lの左側の空隙は、弁孔7c2に連通されている。
【0043】
ケース2における弁孔7c1は、図5に示すように、蓋8に形成された円弧状凹部8d1を介してポンプ室7a1に連通されるとともに環状凹部7c6に連通されている。環状凹部7c6は、緩衝器本体DにおけるタンクTに連通されているので、弁孔7c1は、ポンプ室7a1とタンクTとを連通して、内接歯車ポンプ1における吸込通路P1を形成している。ケース2における弁孔7c2は、ポンプ室7a1と緩衝器本体Dのリザーバ室Rとを連通して、内接歯車ポンプ1における吐出通路P2を形成している。
【0044】
そして、図5に示すように、弁孔7c1の内径は上方側が拡径されており、弁孔7c1の拡径部位の内に、球状の弁体を備えたチェックバルブ21が上下方向へ移動可能に収容されている。弁孔7c1に収容されたチェックバルブ21は、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させると、円弧状凹部8d1に連通された線Lの右側におけるアウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が拡大するため、ポンプ室7a1内の圧力がタンクT内の圧力よりも低下して、弁孔7c1内で上方へ移動して吸込通路P1を開放してタンクTをポンプ室7a1に連通させる。他方、弁孔7c1に収容されたチェックバルブ21は、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で反時計回りに回転させる状態では、弁孔7c1の拡径部位内で最下方に配置されて吸込通路P1を遮断し、弁孔7c1を介してのポンプ室7a1とタンクTとの連通を断つ。
【0045】
また、図6に示すように、弁孔7c2の内径は下方側が拡径されており、弁孔7c2の拡径部位の内に、球状の弁体を備えたチェックバルブ22が上下方向へ移動可能に収容されている。弁孔7c2に収容されたチェックバルブ22は、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させると、弁孔7c2内に連通された線Lの左側におけるアウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が縮小するため、ポンプ室7a1内の圧力がリザーバ室R内の圧力よりも高圧となり、弁孔7c2内で下方へ移動して吸込通路P1を開放してタンクTをポンプ室7a1に連通させる。なお、図示はしないが、ケース本体7には、チェックバルブ22の弁体が弁孔7c2から脱落しないように弁体の抜け止めが設けられる。
【0046】
他方、弁孔7c2に収容されたチェックバルブ22は、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で反時計回りに回転させるか、或いは、モータ6を停止させた状態では、リザーバ室R内の圧力によって押圧されてチェックバルブ22は弁孔7c2の拡径部位内で最上方に配置されて吐出通路P2を遮断し、弁孔7c2を介してのポンプ室7a1とリザーバ室Rとの連通を断つ。
【0047】
よって、モータ6を駆動してアウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させるとチェックバルブ21,22が開弁して、内接歯車ポンプ1は、タンクTから液体を吸い込んでリザーバ室Rへ吐出する。
【0048】
ケース2における弁孔7c3は、図7に示すように、蓋8に形成された円弧状凹部8d1を介してポンプ室7a1に連通されるとともに環状凹部7c6に連通されている。弁孔7c3は、取付部7cを上下方向に貫通するとともに下方側の内径が拡径された縦孔7c31と、縦孔7c31の途中と環状凹部7c6とを連通する斜め孔7c32とを備えている。弁孔7c3は、縦孔7c31の下方側と斜め孔7c32とでリザーバ室RとタンクTとを連通する排出通路P3を形成している。
【0049】
そして、弁孔7c3内には、図7に示すように、縦孔7c31の内周に摺接して縦孔7c31内を上下方向へ移動可能なスプール23aと、縦孔7c31の斜め孔7c32の接続点よりも下方であって拡径部位の内方に上下方向へ移動可能に収容されてスプール23aの下端に当接する球状の弁体23bとを備えたオペレートチェックバルブ23が収容されている。弁体23bは、縦孔7c31に拡径部位を設けたことによって形成される環状の段部7c33に着座すると縦孔7c31を閉塞し、段部7c33から離間すると縦孔7c31を開放する。
【0050】
よって、オペレートチェックバルブ23は、弁体23bが縦孔7c31の拡径部位の内方で最上方に位置して段部7c33に着座すると縦孔7c31を閉塞する閉弁状態となる。また、オペレートチェックバルブ23は、弁体23bが縦孔7c31の段部7c33から離間して拡径部位の内方で最上方よりも下方に位置すると縦孔7c31を開放する開弁状態となり、縦孔7c31と斜め孔7c32とを通じてリザーバ室RとタンクTとを連通する。なお、図示はしないが、ケース本体7には、弁体23bが縦孔7c31から脱落しないように弁体23bの抜け止めが設けられる。
【0051】
アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させると、チェックバルブ21が開弁して、弁孔7c1を通じて弁孔7c3に通じる円弧状凹部8d1がタンクTに連通されるため、円弧状凹部8d1内の圧力がタンクTの圧力と等しくなる。すると、スプール23aが弁体23bとともにリザーバ室Rの圧力によって上方側に押し上げられて、弁体23bが縦孔7c31の拡径部位の内方で最上方に配置され、排出通路P3は遮断される。また、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに回転させてからモータ6を停止させると、チェックバルブ21が閉弁するが、円弧状凹部8d1の圧力も低いままとなるので、オペレートチェックバルブ23は排出通路P3を遮断した状態を維持する。
【0052】
他方、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で反時計回りに回転させると、線Lより右側のアウターロータ3とインナーロータ4との間の空隙が縮小して当該空隙に通じる円弧状凹部8d1内に液体が供給されて円弧状凹部8d1内の圧力が高くなる。円弧状凹部8d1は弁孔7c1および弁孔7c3に連通されており、円弧状凹部8d1内の圧力が高くなると弁孔7c1内のチェックバルブ21を閉弁させる一方、オペレートチェックバルブ23のスプール23aが縦孔7c31内で押し下げられて、弁体23bがスプール23aに押されて縦孔7c31の拡径部位の内方で最上方よりも下方に移動して排出通路P3を開放してリザーバ室RとタンクTとを連通させる。オペレートチェックバルブ23を閉弁させるには、アウターロータ3およびインナーロータ4を図2中で時計回りに駆動してモータ6を停止させればよい。
【0053】
つづいて、図8に示すように、弁孔7c4と弁孔7c4に対向する通路孔8c4とは、リザーバ室RとタンクTとを連通するリリーフ通路P4を形成している。弁孔7c4内には、弁体24aと、弁体24aを付勢するばね24bとを備えたリリーフバルブ24が収容されている。リリーフバルブ24は、リザーバ室R内の圧力が開弁圧に達するとリザーバ室Rの圧力を受けて弁体24aがばね24bを押し縮めて弁孔7c4内で上方へ移動して開弁してリリーフ通路P4を開放し、リザーバ室RとタンクTとを連通する。リリーフバルブ24は、リザーバ室R内の圧力が開弁圧に達しない状態では弁体24aがばね24bによって弁孔7c4内で最下方に位置決めされて閉弁し、リリーフ通路P4を遮断する。このようにリリーフバルブ24は、リザーバ室Rが開弁圧以上になると開弁したリザーバ室R内の液体をタンクTへ逃がしてリザーバ室R内の圧力が過剰となるのを防止する。
【0054】
次に、緩衝器本体Dについて説明する。緩衝器本体Dは、シリンダ30と、シリンダ30内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ30内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン31と、伸側室R1内に挿入されてシリンダ30に対して軸方向へ移動可能であってピストン31に連結されるピストンロッド32と、シリンダ30を覆う外筒33と、シリンダ30と外筒33との間の環状隙間を内接歯車ポンプ1のケース2で上下に仕切って形成されたタンクTとリザーバ室Rと、シリンダ30の下端に設けられてリザーバ室Rと圧側室R2とを区画するバルブケース34と、ピストンロッド32の上端に設けられた上方ばね受40と、外筒33のケース2よりも上方に設けられた下方ばね受41とを備えている。
【0055】
シリンダ30の上端には、環状であって内周にピストンロッド32が摺動自在に挿入されるロッドガイド35が嵌合している。ロッドガイド35の図1中上方には、外筒33の上端内周に取り付けられたキャップ36が嵌合されている。キャップ36は、ピストンロッド32の外周をシールする環状のシール部材36aと、外筒33の上端内周に密着する環状のシール部材36bとを備えており、シリンダ30および外筒33の上端を密閉している。シリンダ30の下端には、バルブケース34が嵌合されている。ピストンロッド32は、ロッドガイド35およびキャップ36の内周に挿通されており、下端がピストン31に連結されるとともに上端がシリンダ30の上方へ突出しており、伸側室R1の軸方向の全長に亘って挿通されているが、圧側室R2には挿入されていない。ピストンロッド32の下端の一部が圧側室R2に挿入されていても構わないが、ピストンロッド32は、圧側室R2の軸方向の全長に亘って挿入されることはない。また、ピストンロッド32の上端には、車両の車体への取り付けを可能とするエンドボルト32aが設けられるとともに、上端近傍の外周には環状の上方ばね受40が取り付けられている。
【0056】
また、シリンダ30の中間部の外周には、内接歯車ポンプ1のケース2が嵌合している。具体的には、ケース2におけるケース本体7の取付部7cの図1中下方側の内周にシリンダ30の外周が嵌合されるとともに、蓋8の基端部8c内にシリンダ30が挿通されている。なお、前述した通り、ケース本体7の取付部7cの内周に設けたシール溝7c7内に装着されてシリンダ30の外周に密着するシールリング10によって、ケース2とシリンダ30との間がシールされている。
【0057】
外筒33は、上方筒33aと下方筒33bとを備えている。上方筒33aの上端には、キャップ36が取り付けられており、上方筒33aの下端内には、シリンダ30の外周に嵌合する内接歯車ポンプ1のケース2における蓋8の基端部8cのソケット8c3が嵌合されている。下方筒33bは、下端が図示しない車両への取り付けを可能とするブラケット37aを備えたボトムキャップ37によって閉塞されており、上端がケース本体7における取付部7cの凸部7c9の外周に嵌合している。また、内接歯車ポンプ1のケース2と上方筒33a、およびケース2と下方筒33bは、溶接等によって結合されている。
【0058】
このように、外筒33とシリンダ30との間の環状隙間は、ケース2によって上下に仕切られており、シリンダ30の上方側を覆う上方筒33aとシリンダ30との間の環状隙間でタンクTが形成され、シリンダ30の下方側を覆う下方筒33bとシリンダ30との間の環状隙間でリザーバ室Rが形成されている。
【0059】
タンクT内には、液体が充填される他に気体が充填されている。なお、タンクTに充填される気体は、窒素等の不活性ガスであること好ましいが、大気等とされてもよい。
【0060】
また、リザーバ室R内には筒状のブラダ38が収容されている。ブラダ38の上端とブラダ38の下端は、それぞれ環状の止め輪39a,39bとシリンダ30との間で挟持されており、ブラダ38はリザーバ室Rを気体が封入された気室RGと液体が充填された液室RLとに仕切っている。ブラダ38で仕切られた気室RG内には、圧縮された気体が封入されており、常時、リザーバ室R内を加圧している。
【0061】
また、上方筒33aの外周には、環状の下方ばね受41が取り付けられている。ピストンロッド32の上端に設けられた上方ばね受40と上方筒33aの外周に設けられた下方ばね受41との間には、ピストンロッド32の外周に配置されたコイルばねでなる懸架ばねSが介装されている。よって、車高調整機能付き緩衝器SAを車両の車体と車輪との間に介装すると、懸架ばねSにより車体が弾性支持される。
【0062】
ピストン31は、シリンダ30内に摺動自在に挿入されてシリンダ30に対して軸方向となる図1中上下方向に移動可能とされるとともに、シリンダ30内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン31は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側減衰通路31aと圧側通路31bと、伸側減衰通路31aに設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ31cと、圧側通路31bに設けられて圧側室R2から伸側室R1向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ31dとを備えている。
【0063】
バルブケース34は、シリンダ30の下端に嵌合しており、シリンダ30およびロッドガイド35とともに、外筒33に装着されたキャップ36とボトムキャップ37とで挟持されて外筒33内で不動に固定されている。また、バルブケース34は、シリンダ30内の圧側室R2とリザーバ室R内の液室RLとを区画している。また、バルブケース34は、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路34aと伸側吸込通路34bと、圧側減衰通路34aに設けられて圧側室R2からリザーバ室Rへ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ34cと、伸側吸込通路34bに設けられてリザーバ室Rから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブ34dとを備えている。
【0064】
以上のように、本実施の形態の内接歯車ポンプ1は、緩衝器本体Dに装着されて緩衝器本体Dとともに車高調整機能付き緩衝器SAを構成している。つづいて、車高調整機能付き緩衝器SAの作動について説明する。まず、シリンダ30に対してピストン31が図1中上方へ移動する車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時の作動について説明する。シリンダ30に対してピストン31が上方へ移動すると、伸側室R1が圧縮されるため、液体が伸側室R1から拡大する圧側室R2へ伸側減衰通路31aおよび伸側減衰バルブ31cを介して移動する。液体が伸側減衰バルブ31cを通過する際に抵抗が与えられるため、伸側室R1内の圧力が上昇する。車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時には、ピストンロッド32がシリンダ30内から退出し、圧側室R2内で拡大する容積に対して伸側室R1から圧側室R2内に流入する液体の体積が不足するため、伸側チェックバルブ34dが開弁してリザーバ室Rから伸側吸込通路34bおよび伸側チェックバルブ34dを介して圧側室R2に不足分の液体が供給される。このように、リザーバ室Rは、シリンダ30内から退出するピストンロッド32の体積を補償している。そして、車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時には、伸側室R1内の圧力が上昇する一方で圧側室R2内の圧力はリザーバ室R内の圧力と略等しくなり、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて、車高調整機能付き緩衝器SAは緩衝器本体Dの伸長を妨げる減衰力を発生する。
【0065】
他方、シリンダ30に対してピストン31が図1中下方へ移動する車高調整機能付き緩衝器SAの収縮時では、圧側室R2が圧縮されるため、液体が圧側室R2から拡大する伸側室R1へ圧側通路31bおよび圧側チェックバルブ31dを介して移動する。圧側チェックバルブ31dは、液体の流れに抵抗を然程与えないため、車高調整機能付き緩衝器SAの収縮時では、圧側室R2と伸側室R1の圧力は略等しくなる。また、車高調整機能付き緩衝器SAの収縮時では、シリンダ30内にピストンロッド32が侵入するため、ピストンロッド32がシリンダ30内に侵入する体積分の液体がシリンダ30内で過剰となり、この過剰分の液体が圧側減衰通路34aおよび圧側減衰バルブ34cを介してリザーバ室Rへ移動する。このように、リザーバ室Rは、シリンダ30内に侵入するピストンロッド32の体積を補償している。そして、圧側減衰バルブ34cは、液体の流れに抵抗を与えるため、シリンダ30内の圧力が上昇し、ピストン31の伸側室R1に面する受圧面積よりも圧側室R2に面する受圧面積がピストンロッド32の断面積分だけ大きいため、車高調整機能付き緩衝器SAは緩衝器本体Dの収縮を妨げる減衰力を発生する。
【0066】
つづいて、内接歯車ポンプ1を駆動して車高調整機能付き緩衝器SAによる車高調整時の作動について説明する。まず、リザーバ室Rは、前述した通り、ブラダ38内に封入された圧縮された気体によって加圧されており、伸側吸込通路34bおよび圧側通路31bを通じてリザーバ室R内の圧力がシリンダ30内に伝搬しており、車高調整機能付き緩衝器SAが静止した状態では、シリンダ30内の圧力はリザーバ室R内の圧力と略同じ圧力となっている。つまり、シリンダ30内もブラダ38内に封入された圧縮された気体によって常時加圧されている。
【0067】
圧側室R2内の圧力は、ピストン31を図1中で押し上げる方向に作用しており、伸側室R1内の圧力は、ピストン31を図1中で押し下げる方向に作用している。前述した通り、ピストン31の圧側室R2の圧力を受ける受圧面積は、ピストン31の伸側室R1の圧力を受ける受圧面積よりもピストンロッド32の断面積分だけ大きいことから、ピストン31は、常時、シリンダ30内の圧力にピストンロッド32の断面積を乗じた値の力によって図1中上方へ向けて付勢されている。このピストン31を図1中上方へ向けて付勢する力は、シリンダ30内の圧力に比例することから、内接歯車ポンプ1を駆動してリザーバ室Rを通じてシリンダ30内に液体を供給すればシリンダ30内の圧力を上昇させてピストン31を上方へ向けて付勢する力を増大させて緩衝器本体Dを伸長させ得る。
【0068】
内接歯車ポンプ1は、モータ6の駆動によって図2中でアウターロータ3とインナーロータ4とがともに時計回りに駆動されると、チェックバルブ21,22が開弁して、吸込通路P1を通じてタンクTから液体を吸い込んで吐出通路P2を介してリザーバ室Rへ液体を吐出する。内接歯車ポンプ1が供給した液体によってリザーバ室R内の圧力が上昇するため、伸側チェックバルブ34dが開弁してリザーバ室Rから圧側室R2にも液体が供給される。さらに、圧側室R2内への液体の流入によってピストン31が上方へ押し上げられるので、容積が減少する伸側室R1から伸側減衰バルブ31cが開弁して伸側減衰通路31aを介して伸側室R1から圧側室R2へ液体が移動する。よって、内接歯車ポンプ1を駆動してタンクTから液体をリザーバ室Rに供給すると、リザーバ室R内およびシリンダ30内の圧力が略等しく上昇する。シリンダ30内の圧力の上昇によって、車高が所望する高さになった後、内接歯車ポンプ1を停止させれば、チェックバルブ21,22が閉弁してリザーバ室Rとシリンダ30内の液体量を維持できるので車高も維持される。
【0069】
前述とは逆に、リザーバ室RからタンクTへ液体を排出すれば、シリンダ30内の圧力が減少するので、ピストン31を上方へ向けて付勢する力を減少させて車高を降下させ得る。
【0070】
内接歯車ポンプ1は、モータ6の駆動によって図2中でアウターロータ3とインナーロータ4とがともに反時計回りに駆動されると、チェックバルブ21,22を閉弁させて、オペレートチェックバルブ23を開弁させる。すると、排出通路P3を介してリザーバ室RとタンクTとが連通されるので、リザーバ室R内から液体がタンクTへ移動する。
【0071】
リザーバ室Rから液体がタンクTへ移動すると、リザーバ室R内の圧力が減少して、圧側減衰バルブ34cが開弁して圧側室R2からリザーバ室Rへ液体が移動し、さらに、圧側室R2内の液体の減少によって伸側減衰バルブ31cが開弁して伸側室R1から圧側室R2に液体が移動する。よって、内接歯車ポンプ1を駆動してリザーバ室RからタンクTへ液体を排出させると、リザーバ室R内およびシリンダ30内の圧力が略等しく下降する。車高が所望する高さになった後、モータ6を駆動して図2中でアウターロータ3とインナーロータ4とをともに時計回りに駆動して停止すれば、オペレートチェックバルブ23が閉弁して排出通路P3を通じてのリザーバ室RとタンクTとの連通が断たれ、チェックバルブ21,22も閉弁するのでリザーバ室Rとシリンダ30内の液体量を維持でき車高も維持される。
【0072】
なお、緩衝器本体Dの収縮或いは内接歯車ポンプ1からリザーバ室Rへの液体の供給により、リザーバ室R内の圧力が過大となる場合には、リリーフバルブ24が開弁してリリーフ通路P4を介してリザーバ室Rの液体をタンクTへ逃がして、リザーバ室R内の圧力が過大となるのを防止でき、緩衝器本体D内からの液体の漏洩を防止できる。
【0073】
以上、本実施の形態の内接歯車ポンプ1は、ケース2と、環状であって内周に設けられた内歯3aと外周に設けられた外歯3bとを有してケース2内に周方向に回転可能に収容されるアウターロータ3と、ケース2内に収容されるとともにアウターロータ3の内周側に挿入されてアウターロータ3に歯合する外歯車でなるインナーロータ4と、アウターロータ3の外歯3bに歯合する駆動用歯車5と、駆動用歯車を駆動するモータ6とを備え、駆動用歯車5の歯数がアウターロータ3の外歯3bの歯数よりも少ないことを特徴としている。
【0074】
駆動用歯車5の歯数がアウターロータ3の外歯3bの歯数より少ないので、駆動用歯車5とアウターロータ3とで減速機を構成して、アウターロータ3とインナーロータ4とを駆動するために駆動用歯車5を駆動するモータ6に要求されるトルクを小さくできる。このように構成された内接歯車ポンプ1は、アウターロータ3とインナーロータ4とを駆動するために駆動用歯車5を駆動する際に要求されるトルクが小さくて済むため、モータ6を小型化できる。また、本実施の形態の内接歯車ポンプ1では、モータ6を小型化できるため、内接歯車ポンプ1から液体の供給をうける機器に一体にして液圧機器を構成する場合であってもモータ6が邪魔にならないので、機器への搭載性が向上するとともに液圧機器の小型化も図れる。
【0075】
さらに、インナーロータ4、アウターロータ3および駆動用歯車5がケース2内に収容されて、ポンプと減速機とが一体構造となるので、内接歯車ポンプ1をコンパクトにできる。
【0076】
また、内接歯車ポンプ1と、ケース2に一体化されて内接歯車ポンプ1からの液体の給排を受ける緩衝器本体(機器)Dとを備え、緩衝器本体(機器)Dが筒状となっている。内接歯車ポンプ1から液体の供給をうける緩衝器本体(機器)Dが筒状であっても、モータ6で直接駆動するのはアウターロータ3の外周側に配置される駆動用歯車5であるため、内接歯車ポンプ1のアウターロータ3とインナーロータ4とで構成されたポンプ部分を緩衝器本体(機器)Dの至近に配置しても駆動用歯車5と同軸のモータ6を緩衝器本体(機器)Dに干渉しない位置に無理なく配置できる。なお、本実施の形態の内接歯車ポンプ1では、ケース2におけるシリンダ30に嵌合する部分(ケース本体の取付部7cおよび蓋8の基端部8c)と、ポンプ部分(アウターロータ3、インナーロータ4およびケース2におけるこれらを収容する部分)と、駆動用歯車5と駆動用歯車5と同軸に配置されるモータ6とでなる駆動部分とが、略一直線上に並んで配置されているが、駆動部分は、図2中でアウターロータ3の回転中心を中心としてアウターロータ3の外周に沿って設置位置を変更可能であるので、緩衝器本体(機器)Dの仕様や緩衝器本体(機器)Dが設置される車両の搭載スペースに応じて駆動部分のポンプ部分に対する配置を任意に変更できる。
【0077】
なお、本実施の形態では、内接歯車ポンプ1が適用される機器を緩衝器本体Dとしているが、機器は内接歯車ポンプ1から液体の供給を受け得るものであればよいので、緩衝器本体D以外にも液圧ジャッキやアクチュエータといった機器に適用されてもよい。さらに、本実施の形態では、内接歯車ポンプ1が緩衝器本体(機器)Dに一体化されている例を用いて内接歯車ポンプ1の構造を説明しているが、機器へ一体化の必要がない場合、ケース2におけるケース本体7の取付部7cおよび蓋8の基端部8cを省略してもよい。また、オペレートチェックバルブ23に代えて緩衝器本体(機器)Dからポンプ室7a1へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブとポンプ室7a1からタンクTへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブを設けて、リザーバ室RからタンクTへ液体を排出する場合にモータ6でアウターロータ3とインナーロータ4とを反時計回りに駆動してリザーバ室Rから液体を吸い込んでタンクTへ液体を吐出するように内接歯車ポンプ1を構成してもよい。
【0078】
さらに、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAは、シリンダ30と、シリンダ30内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ30内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン31と、伸側室R1内に挿入されてシリンダ30に対して軸方向へ移動可能であってピストン31に連結されるピストンロッド32と、シリンダ30を覆う外筒33とを有する緩衝器本体Dと、ケース2が外筒33に連結されてシリンダ30内に液体を給排する内接歯車ポンプ1とを備え、シリンダ30と外筒33との間の環状隙間がケース2によって、液体を貯留するタンクTと、圧側室R2に連通されてシリンダ30内にピストンロッド32が出入りする体積を補償するリザーバ室Rとに区画され、内接歯車ポンプ1は、リザーバ室Rを介してシリンダ30内に液体を給排させることを特徴としている。
【0079】
このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAでは、伸縮時に減衰力を発揮して車両の車体の振動を抑制できるだけでなく、内接歯車ポンプ1を駆動してタンクTから液体をリザーバ室Rへ吐出することで緩衝器本体Dを伸長させて車高を上昇させ得るとともに、内接歯車ポンプ1を利用してリザーバ室RからタンクTへ液体を排出させることで緩衝器本体Dを収縮させて車高を降下させ得る。また、内接歯車ポンプ1は、ケース2によってタンクTとリザーバ室Rとを仕切っているので、ポンプ部分を緩衝器本体Dの至近に配置して、タンクTから液体をリザーバ室Rへ供給する吸込通路P1および吐出通路P2と、リザーバ室Rから液体をタンクTへ排出する排出通路P3とをケース2に集約できるとともに単純化できる。よって、車高調整機能付き緩衝器SAによれば、内接歯車ポンプ1を備えていても小型化でき、製造コストを低減できる。また、このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAでは、内接歯車ポンプ1がシリンダ30の下端より上方のシリンダ30の中間部分に装着されるので、車両の走行中の飛び石や冠水路走行時の水しぶきからモータ6を保護できる。
【0080】
また、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、外筒33を軸方向から見て、アウターロータ3の一部が外筒33の外周よりも内側に配置されている。このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、アウターロータ3の一部が外筒33の外周よりも内側に配置されるので、内接歯車ポンプ1のポンプ部分を緩衝器本体Dの至近に配置して、内接歯車ポンプ1含めた全体の外径を小型化できる。また、アウターロータ3の一部が外筒33の外周よりも内側に配置されるので、ポンプ室7a1を軸方向から見てリザーバ室RとタンクTとに至近に設置できるから、タンクTから液体をリザーバ室Rへ供給する吸込通路P1および吐出通路P2を極短くすることができるとともにより一層単純な形状の孔で構成できるようになる。したがって、このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、より一層小型化できる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・内接歯車ポンプ、2・・・ケース、3・・・アウターロータ、3a・・・内歯、3b・・・外歯、4・・・インナーロータ、5・・・駆動用歯車、6・・・モータ、30・・・シリンダ、31・・・ピストン、32・・・ピストンロッド、33・・・外筒、D・・・緩衝器本体(機器)、SA・・・車高調整機能付き緩衝器、T・・・タンク
図1
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図8