(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148084
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】押出発泡体の製造方法及び成形金型
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20231005BHJP
B29C 44/22 20060101ALI20231005BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20231005BHJP
B29K 25/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B29C44/00 E
B29C44/22
B29C48/305
B29K25:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055938
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】伏見 達郎
【テーマコード(参考)】
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F207AA13
4F207AB02
4F207AB08
4F207AG02
4F207AG20
4F207AJ09
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA11
4F207KK04
4F207KL51
4F207KL86
4F214AA13
4F214AB02
4F214AB08
4F214AB16
4F214AG02
4F214AG20
4F214AJ09
4F214AR20
4F214UA11
4F214UB02
4F214UN04
4F214UP51
4F214UP86
(57)【要約】
【課題】成形金型の出口側における板状押出発泡体の帯電量を低減すること。
【解決手段】板状押出発泡体(S)の成形中に、成形金型(18)の上内表面に形成された第1蒸気孔(18h)から成形空間(18s)に蒸気を圧入すると共に、成形金型(18)の下内表面に形成された第2蒸気孔(18v)から成形空間(18s)に蒸気を圧入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機にて発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬した後に、前記押出機の先端部に設けられた押出金型の口金のスリット状の噴出孔から熱可塑性樹脂組成物を押出す押出工程と、
前記押出金型の直下流側に設けられた成形金型の成形空間内にて、前記押出金型から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ押出発泡体を成形する成形工程と、を含み、
前記成形工程は、前記成形金型の上内表面に形成された第1蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入すると共に、前記成形金型の下内表面に形成された第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入する蒸気圧入工程を含む、押出発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記蒸気圧入工程中に、前記成形金型の出口側における前記押出発泡体の帯電量が-7KV以上+7KVになるように、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入する、請求項1に記載の押出発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記蒸気圧入工程中に、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間における前記口金の前記噴出孔に対応する領域に蒸気をそれぞれ圧入する、請求項1又は2に記載の押出発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記成形金型の前記成形空間は、その入口部分に形成されかつ前記口金の前記噴出孔に連通しかつ前記成形金型の厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する拡大部と、出口部分に形成されかつ前記拡大部に連通しかつ前記押出発泡体の厚みを設定するためのストレート部とを有し、
前記蒸気圧入工程中に、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間における前記拡大部と前記ストレート部との境界部及び/又はその近傍に蒸気をそれぞれ圧入する、請求項1又は2に記載の押出発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記成形金型の前記成形空間の内壁面に、発泡した熱可塑性樹脂との摩擦を低減するための樹脂被膜が形成され、前記発泡剤は、可燃性ガスである、請求項1から4のいずれか1項に記載の押出発泡体の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の押出発泡体の製造方法に用いられる成形金型であって、
押出発泡体を成形するための成形空間を有し、前記成形空間は、その入口部分に形成されかつ前記成形金型の厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する拡大部と、出口部分に形成されかつ前記拡大部に連通しかつ前記押出発泡体の厚みを設定するためのストレート部とを有し、
前記上内表面に前記成形空間に蒸気を圧入するための第1蒸気孔が形成され、前記下内表面に前記成形空間に蒸気を圧入するための第2蒸気孔が形成されている、成形金型。
【請求項7】
前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔は、それぞれ、前記成形空間における入口側の開口幅に対応する領域に向かって開口されている、請求項6に記載の成形金型。
【請求項8】
前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔は、それぞれ、前記成形空間における前記拡大部と前記ストレート部との境界部及び/又はその近傍に向かって開口されている、請求項6に記載の成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出発泡体を製造するための製造方法及びその製造方法に用いられる成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬した後に、押出金型の口金のスリット状の噴出孔から熱可塑性樹脂組成物を押出して、成形金型の板状の成形空間内にて、押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に賦形することにより、板状押出発泡体を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。この製造方法においては、発泡した熱可塑性樹脂と成形金型の成形空間の内壁面との摩擦が大きくなると、成形金型の成形空間内において熱可塑性樹脂が詰まって、所望の板状押出発泡体を得ることができないことがある。その解決策として、成形金型の成形空間の内壁面に、熱可塑性樹脂との摩擦を低減するためのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被膜等の樹脂被膜を形成する方法が挙げられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-273775号公報
【特許文献2】特開平8-132466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂組成物に含まれる発泡剤としては、熱可塑性樹脂への溶解性、可塑性、及びコスト等の理由から、ブタン等の可燃性ガスが用いられることが多い。また、成形金型の成形空間内に熱可塑性樹脂組成物を押出して熱可塑性樹脂を発泡させる際に、発泡剤の一部が熱可塑性樹脂組成物から逸散する。そのため、成形金型の出口側における板状押出発泡体の帯電量が多くなると、板状押出発泡体の放電によって発泡剤の一部が着火して火災の原因になる。特に、成形金型の成形空間の内壁面に樹脂被膜が形成されている場合には、板状押出発泡体と樹脂被膜との摩擦によって、成形金型の成形空間の出口側における板状押出発泡体の帯電量がより多くなり、発泡剤の一部が着火する可能性が高くなる。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、成形金型の成形空間の出口側における押出発泡体の帯電量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、前述の課題を解決するため、試行錯誤を繰り返した結果、成形金型の成形空間にて熱可塑性樹脂を賦形する途中に、成形金型の上内表面に形成された第1蒸気孔及び成形金型の下内表面に形成された第2蒸気孔から、成形空間に蒸気を圧入することにより、成形空間の出口側における押出発泡体の帯電量を低減できるという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った(後述の実施例参照)。なお、本願の発明者は、第1蒸気孔及び第2蒸気孔から成形空間に蒸気を圧入することにより、押出発泡体の外観品質を良好に保つことできるという新規知見も見出した。
【0007】
本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法は、押出機にて発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬した後に、前記押出機の先端部に設けられた押出金型の口金のスリット状の噴出孔から熱可塑性樹脂組成物を押出す押出工程と、前記押出金型の直下流側に設けられた成形金型の成形空間内にて、前記押出金型から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ押出発泡体を成形する成形工程と、を含み、前記成形工程は、前記成形金型の上内表面に形成された第1蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入すると共に、前記成形金型の下内表面に形成された第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入する蒸気圧入工程を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法において、前記蒸気圧入工程中に、前記成形金型の出口側における前記押出発泡体の帯電量が-7KV以上+7KVになるように、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入してもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法において、前記成形金型の前記成形空間は、その入口部分に形成されかつ前記口金の前記噴出孔に連通しかつ前記成形金型の厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する拡大部と、出口部分に形成されかつ前記拡大部に連通しかつ前記押出発泡体の厚みを設定するためのストレート部とを有し、前記蒸気圧入工程中に、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間における前記拡大部と前記ストレート部との境界部及び/又はその近傍に蒸気をそれぞれ圧入してもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法において、前記蒸気圧入工程中に、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔から前記成形空間における前記口金の前記噴出孔に対応する領域に蒸気をそれぞれ圧入してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法において、前記成形金型の前記成形空間の内壁面に、発泡した熱可塑性樹脂との摩擦を低減するための樹脂被膜が形成され、前記発泡剤は、可燃性ガスであってもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る成形金型は、本発明の一態様に係る押出発泡体の製造方法に用いられる成形金型であって、押出発泡体を成形するための成形空間を有し、前記成形空間は、その入口部分に形成されかつ前記成形金型の厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する拡大部と、出口部分に形成されかつ前記拡大部に連通しかつ前記押出発泡体の厚みを設定するためのストレート部とを有し、前記上内表面に前記成形空間に蒸気を圧入するための第1蒸気孔が形成され、前記下内表面に前記成形空間に蒸気を圧入するための第2蒸気孔が形成されている。
【0013】
本発明の一態様に係る成形金型において、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔は、それぞれ、前記成形空間における入口側の開口幅に対応する領域に向かって開口されてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る成形金型において、前記第1蒸気孔及び前記第2蒸気孔は、それぞれ、前記成形空間における前記拡大部と前記ストレート部との境界部及び/又はその近傍に向かって開口されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、成形金型の出口側における押出発泡体の帯電量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を示す模式的な横断面図である。
【
図3】本実施形態の他の態様に係る板状押出発泡体の製造装置の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図4】従来例に係る板状押出発泡体の製造装置の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図5】従来例に係る板状押出発泡体の製造装置を示す模式的な横断面図である。
【
図6】比較例に係る板状押出発泡体の製造装置の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図7】比較例に係る板状押出発泡体の製造装置を示す模式的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る押出発泡体の製造方法は、押出機にて発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬した後に、前記押出機の先端部に設けられた押出金型の口金のスリット状の噴出孔から熱可塑性樹脂組成物を押出す押出工程と、前記押出金型の直下流側に設けられた成形金型の成形空間内にて、前記押出金型から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ押出発泡体を成形する成形工程と、を含み、前記成形工程は、前記成形金型の上内表面に形成された第1蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入すると共に、前記成形金型の前記下内表面に形成された第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入する蒸気圧入工程を含む。
【0018】
本実施形態に係る製造方法によれば、蒸気圧入工程にて、前記成形金型の上内表面に形成された第1蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入すると共に、前記成形金型の前記下内表面に形成された第2蒸気孔から前記成形空間に蒸気を圧入するので、成形金型の出口側における押出発泡体の帯電量を低減することができる。ここで、押出成形体は、前記押出工程、前記成形工程、および前記蒸気圧入工程を実現できる方法によって製造することができるものであれば、その構造等は特に限定されない。本実施形態に係る製造方法により製造され得る押出成形体は、例えば、板状押出成形体、断面矩形形状の棒状押出成形体等が挙げられる。好適には、本実施形態に係る製造方法は、板状押出成形体を製造する方法である。以下、本発明の実施形態として、板状押出成形体の製造方法および成形金型を例に挙げて説明する。
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲において、厚み方向とは、成形金型、押出金型、又は板状押出発泡体の厚み方向のことである。幅方向とは、成形金型、押出金型、又は板状押出発泡体の幅方向のことである。下流側とは、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂、又は板状押出発泡体の流れ方向から見て下流側のことをいう。図面中、「TD」は厚み方向(上下方向)、「TDa」は上側、「TDb」は下側、「WD」は幅方向をそれぞれ指している。「FD」は、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂、又は板状押出発泡体の流れ方向を指している。
【0020】
図1から
図3を参照して、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
図1においては、熱可塑性樹脂組成物C、熱可塑性樹脂P、及び板状押出発泡体Sの図示を省略している。
図2は、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10を示す模式的な横断面図である。
図3は、本実施形態の他の態様に係る板状押出発泡体の製造装置10の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
【0021】
(板状押出発泡体の製造装置10、押出機12)
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10は、例えば断熱材に用いられる板状押出発泡体Sを製造するための装置である。板状押出発泡体の製造装置10は、押出機12を備えており、押出機12は、詳細な図示は省略するが、第1押出機とその下流側に配置された第2押出機とを直列に連結したタンデム型押出機である。第1押出機は、造核剤を含む熱可塑性樹脂組成物Cを溶融する。第1押出機の途中において、発泡剤としてブタンやジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の可燃性ガスが熱可塑性樹脂組成物Cに圧入される。第1押出機は、発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物Cを溶融混錬して、第2押出機に送出す。第2押出機は、送出された熱可塑性樹脂Cを所望の温度に調整(冷却)して、大気圧下へ押出す。
【0022】
(押出金型14、口金16)
板状押出発泡体の製造装置10は、押出機12における第2押出機の先端部に設けられた押出金型14を備えている。押出金型14は、熱可塑性樹脂組成物Cを大気圧下に押出すための板状の押出空間14sを有している。押出金型14の押出空間14sの入口側から出口の手前側にかけて、厚み方向のギャップが一定になっている。押出金型14の押出空間14sの出口側は、厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に小さくなっている。
【0023】
押出金型14は、口金16を備えており、口金16は、熱可塑性樹脂組成物Cを大気圧下に噴出するためのスリット状の噴出孔16hを有している。口金16の噴出孔16hは、押出金型14の押出空間14sに連通している。口金16の噴出孔16hの入口部分は、厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に小さくなっている。口金16の噴出孔16hの出口部分は、厚み方向のギャップが一定になっている。
【0024】
(成形金型18、第1成形金型20、第2成形金型22)
板状押出発泡体の製造装置10は、押出金型14の直下流側に設けられた成形金型18を備えている。成形金型18は、板状押出発泡体Sを成形するための板状の成形空間18sを有しており、成形空間18sは、発泡した熱可塑性樹脂Pの流路になっている。成形金型18の成形空間18sは、口金16の噴出孔16hを介して押出金型14の押出空間14sに連通している。
【0025】
成形金型18は、押出金型14の直下流側に設けられた第1成形金型20を有しており、第1成形金型20は、押出金型14に直結されている。第1成形金型20は、通常のソリッドタイプの金型であり、例えばS45C等の炭素鋼などの金属からなる。第1成形金型20は、成形金型18の成形空間18sの一部を構成する拡大部20sを有しており、拡大部20sは、厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する。換言すれば、成形金型18の成形空間18sの入口部分(入口側)には、拡大部20sが形成されている。第1成形金型20の拡大部20sは、口金16の噴出孔16hに連通している。
【0026】
成形金型18は、第1成形金型20に接合された第2成形金型22を有している。第2成形金型22は、通常のソリッドタイプの金型であり、例えばS45C等の炭素鋼などの金属からなる。第2成形金型22は、成形金型18の成形空間18sの一部を構成しかつ板状押出発泡体Sの厚みを設定(規定)するためのストレート部22sを有しており、ストレート部22sは、厚み方向のギャップが略一定に保たれている。換言すれば、成形金型18の成形空間18sの出口部分(出口側)には、ストレート部22sが形成されている。第2成形金型22のストレート部22sは、第1成形金型20の拡大部20sに連通している。第2成形金型22のストレート部22sの内壁面は、平滑な面になっている。ここで、厚み方向のギャップが略一定とは、ストレート部22sにおける入口側の厚み方向のギャップと出口側の厚み方向のギャップとの差が±20mm以内であることをいう。
【0027】
成形金型18の成形空間18sの内壁面には、熱可塑性樹脂Pとの摩擦を低減するためのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被膜等の樹脂被膜24が形成されている。換言すれば、第1成形金型20の拡大部20sの内壁面から第2成形金型22のストレート部22sの内壁面に亘って、樹脂被膜24が形成されている。
【0028】
(第1蒸気孔18h、第2蒸気孔18v)
図1及び
図2に示すように、成形金型18の上内表面には、成形空間18sに蒸気を圧入するための複数の第1蒸気孔18h(1つの第1蒸気孔18hのみ図示)が幅方向に間隔を置いて形成されている。各第1蒸気孔18hは、成形金型18の外表面から成形空間18sの内壁面(成形金型18の内表面)にかけて貫通している。また、成形金型18の下内表面には、成形空間18sに蒸気を圧入するための複数の第2蒸気孔18vが幅方向に間隔を置いて形成されている。各第2蒸気孔18vは、成形金型18の外表面から成形空間18sの内壁面にかけて貫通している。複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vは、蒸気を供給する蒸気供給源26に複数の配管28を介して接続されている。なお、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの入口端には、配管28の一部がねじ込まれている。
【0029】
各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、それぞれ、成形金型18の成形空間18sにおける入口側の開口幅に対応する領域18saに向かって開口されている。換言すれば、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、それぞれ、成形金型18の成形空間18sにおける口金16の噴出孔16hに対応する領域18saに向かって開口されている。また、
図1に示すように、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、成形空間18sにおける拡大部20sに向かって開口されている。また、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、対応する領域18saに向かって開口される代わりに、
図3に示すように、成形空間18sにおける拡大部20sとストレート部22sとの境界部及び/又はその近傍に向かって開口されてもよい。
【0030】
各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの内径は、特に限定されるものではないが、0.8mm以上でかつ3mm以下であることが好ましい。各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの内径が0.8mm未満であると、成形金型18の成形空間18sに蒸気を圧入することが困難になるからである。各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの内径が3mmを超えると、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの開口端(出口端)によって板状押出発泡体Sに傷がつく恐れがあるからである。第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vの孔の個数は、1~7個が好ましく、3~5個がより好ましい。
【0031】
(成形ロール)
板状押出発泡体の製造装置10は、板状押出発泡体Sを引取るための成形ロール(不図示)を備えており、成形ロールは、成形金型18の下流側に回転可能に配設されている。
【0032】
続いて、
図1から
図3を参照して、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造方法について説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造方法は、板状押出発泡体Sを製造するための方法であって、押出工程と、成形工程とを含んでいる。本実施形態に係る板状押出発泡体の製造方法における押出工程は、蒸気圧入工程を含んでいる。そして、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造方法における各工程の具体的な内容は、次の通りである。
【0034】
(押出工程)
図1に示すように、押出機12の第1押出機は、造核剤を含む熱可塑性樹脂組成物Cを溶融する。第1押出機の途中において、発泡剤としてブタン等の可燃性ガスを熱可塑性樹脂組成物Cに圧入する。第1押出機は、発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物Cを溶融混錬して、押出機12の第2押出機に送出す。続いて、第2押出機は、送出された熱可塑性樹脂Cを所望の温度に調整して、口金16の噴出孔16hから大気圧下へ押出す。これにより、押出金型14の口金16の噴出孔16hから発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物Cを成形金型18の板状の成形空間18s内に連続的に押出すことができる。
【0035】
ここで、熱可塑性樹脂組成物Cに含まれる熱可塑性樹脂Pは、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリハロゲン化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である。これらの熱可塑性樹脂Pとして、国際公開2020/170694号公報、国際公開2009/75208号公報、特許第6612764号公報等に例示されている。
【0036】
本実施形態に用いられる物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタンなどの炭化水素類、HFC134a、HFC152aなどの代替フロン類、塩化メチル、塩化エチルなどの塩化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類、エチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、水等の無機ガス類等が、単独で、或いはそれらの混合ガスとして採用される。また、本実施形態に用いられる化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が、単独で、或いはそれらの混合ガスとして採用される。
【0037】
(成形工程)
図1に示すように、成形金型18の成形空間18s内にて、押出金型14から押出された熱可塑性樹脂組成物Cに含まれる熱可塑性樹脂Pを発泡させつつ、板状に連続的に賦形する。これにより、板状押出発泡体Sを連続的に成形することができる。板状押出発泡体Sの厚さは10mm~150mmが好ましく、15mm~120mmがより好ましい。
【0038】
(蒸気圧入工程)
図1及び
図2に示すように、板状押出発泡体Sの成形中に、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sに蒸気を圧入する。具体的には、成形金型18の出口側における板状押出発泡体Sの厚み方向の両面(上面及び下面)の帯電量が-7KV以上+7KV、好ましくは-5KV以上+5KVになるように、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形空間18sに蒸気を圧入する。これにより、板状押出発泡体Sの上面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間、及び板状押出発泡体Sの下面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間に蒸気層をそれぞれ形成することができる。なお、板状押出発泡体Sの上面及び下面の帯電量は、成形金型18の出口側に配置された静電気測定器(不図示)によって測定する。
【0039】
蒸気圧入工程中に、
図2に示すように、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sにおける口金16の噴出孔16hに対応する領域18saに蒸気をそれぞれ圧入する。このとき、
図1に示すように、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sにおける拡大部20sに蒸気をそれぞれ圧入する。又は、
図3に示すように、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sにおける拡大部20sとストレート部22sとの境界部及び/又はその近傍に蒸気をそれぞれ圧入する。
【0040】
各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vからの圧入される蒸気の圧力は、特に限定するものではないが、0.07MPa以上でかつ1.50MPa以下であることが好ましく、0.08MPa以上でかつ1.20MPa以下であることがより好ましい。蒸気の圧力が0.07MPa未満であると、板状押出発泡体Sの上面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間、及び板状押出発泡体Sの下面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間に十分な蒸気層を形成することが困難になるからである。蒸気の圧力が1.50MPaを超えると、蒸気の圧力によって板状押出発泡体Sの外観品質が低下するおそれがあるからである。
【0041】
各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vからの圧入される蒸気の温度は、特に限定するものではないが、90℃以上でかつ200℃以下であることが好ましい。90℃以未満であると、板状押出発泡体Sの表面が部分的に冷却固化することによって、板状押出発泡体Sの表面に凹凸等が発生し、板状押出発泡体Sの外観品質が低下するからである。蒸気の温度が200度を超えると、板状押出発泡体Sの表面の軟化が激しくなって、板状押出発泡体Sと成形金型18の成形空間18sの内壁面との間に十分な蒸気層を形成することが困難になるからである。
【0042】
(作用効果)
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0043】
前述のように、成形金型18の上内表面には、成形空間18sに蒸気を圧入するための第1蒸気孔18hが形成されている。成形金型18の下内表面には、成形空間18sに蒸気を圧入するための第2蒸気孔18vが形成されている。この場合には、板状押出発泡体Sの成形中に、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sに蒸気を圧入することができる。そのため、前述の新規知見を適用すると、板状押出発泡体Sの外観品質を良好に保ちつつ、成形金型18の出口側における板状押出発泡体Sの上面及び下面の帯電量を低減することができる。その結果、板状押出発泡体Sの放電によって発泡剤(可燃性ガス)の一部が着火することを防止することができる。特に、成形金型18の出口側における板状押出発泡体Sの上面及び下面の帯電量が-7KV以上+7KVである場合には、板状押出発泡体Sの放電によって発泡剤の一部が着火することを十分に防止することができる。
【0044】
また、前述のように、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、成形金型18の成形空間18sにおける入口側の開口幅に対応する領域18saに向かって開口されている。この場合には、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sにおける口金16の噴出孔16hに対応する領域18saに蒸気をそれぞれ圧入することができる。そのため、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから圧入された蒸気が対応する領域18saの幅方向外側に逃げることを抑えることができる。これにより、板状押出発泡体Sの上面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間、及び板状押出発泡体Sの下面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間に蒸気層を安定的に形成して、成形金型18の出口側における板状押出発泡体Sの上面及び下面の帯電量を十分に低減することができる。
【0045】
更に、前述のように、各第1蒸気孔18h及び各第2蒸気孔18vは、成形空間18sにおける拡大部20sとストレート部22sとの境界部及び/又はその近傍に向かって開口されている。この場合には、複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vから成形金型18の成形空間18sにおける拡大部20sとストレート部22sとの境界部及び/又はその近傍に蒸気を圧入することができる。そのため、板状押出発泡体Sの上面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間、及び板状押出発泡体Sの下面と成形金型18の成形空間18sの内壁面との間に十分な蒸気層を形成して、成形金型18の出口側における板状押出発泡体Sの上面及び下面の帯電量を十分に低減することができる。
【実施例0046】
以下、本発明の実施例について図面等を参照して説明する。
【0047】
(従来例に係る板状押出発泡体の製造装置30)
図4及び
図5を参照して、従来例に係る板状押出発泡体の製造装置30について説明する。
図4は、従来例に係る板状押出発泡体の製造装置30の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
図5は、従来例に係る板状押出発泡体の製造装置30を示す模式的な横断面図である。
図5においては、熱可塑性樹脂組成物C、熱可塑性樹脂P、及び板状押出発泡体Sの図示を省略している。
【0048】
図4及び
図5に示すように、従来例に係る板状押出発泡体の製造装置30は、成形金型18が複数の第1蒸気孔18h及び複数の第2蒸気孔18vを有していない点を除き、実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10と同様の構成を有している。説明の便宜上、板状押出発泡体の製造装置10にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
(比較例に係る板状押出発泡体の製造装置32)
図6及び
図7を参照して、比較例に係る板状押出発泡体の製造装置32について説明する。
図6は、比較例に係る板状押出発泡体の製造装置32の稼働状態を示す模式的な縦断面図である。
図7は、比較例に係る板状押出発泡体の製造装置32を示す模式的な横断面図である。
図7においては、熱可塑性樹脂組成物C、熱可塑性樹脂P、及び板状押出発泡体Sの図示を省略している。
【0050】
図6及び
図7に示すように、比較例に係る板状押出発泡体の製造装置32は、一部を除き、本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置10と同様の構成を有している。板状押出発泡体の製造装置32の構成のうち、板状押出発泡体の製造装置10の構成と異なる点についてのみ説明する。説明の便宜上、板状押出発泡体の製造装置10にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記している。
【0051】
板状押出発泡体の製造装置32における成形金型18は、第1成形金型20(
図1参照)に代えて、押出金型14の直下流側に設けられた他の第1成形金型34を有している。第1成形金型34は、多孔質タイプの金型であり、熱間静水圧加圧焼結法(HIP法)にて製造された気孔率23%、気孔径35μmのステンレス鋼製の多孔質金属からなる。第1成形金型34は、成形金型18の成形空間18sの一部を構成する拡大部34sを有しており、拡大部34sは、厚み方向のギャップが下流側に向かって徐々に拡大する。換言すれば、成形金型18の成形空間18sの入口部分には、拡大部34sが形成されている。なお、
図7において、第1成形金型20の拡大部34sの内壁側における気孔の図示を省略している。
【0052】
第1成形金型34の拡大部34sの内壁面には、熱可塑性樹脂Pとの摩擦を低減するための樹脂被膜24が形成されていない。換言すれば、成形金型18の成形空間18sの内壁面のうち、第2成形金型22のストレート部22sの内壁面にのみ、樹脂被膜24が形成されている。
【0053】
第1成形金型34の上内表面には、成形金型18内に流体を導入するための複数の第1導入管36(1つの第1導入管36のみ図示)が幅方向に間隔を置いて接合されている。第1成形金型34の下内表面には、第1成形金型34内に流体を導入するための複数の第2導入管38が幅方向に間隔を置いて接合されている。また、複数の第1導入管36及び複数の第2導入管38は、流体を供給する流体供給源40に複数の配管42を介して接続されている。第1成形金型34の外表面の気孔は切削加工によって塞がれているが、複数の第1導入管36と第1成形金型34の拡大部34sとの通気性及び複数の第2導入管38と第1成形金型34の拡大部34sとの通気性はそれぞれ確保されている。
【0054】
(実施例1の場合)
実施例1の場合において、
図1及び
図2に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機における第1押出機として口径65mm単軸押出機を用い、押出機における第2押出機として口径90mm単軸押出機を用いた。換言すれば、押出機として第1口径65mm単軸押出機と口径90mm単軸押出機を直列に連結したタンデム型押出機を用いた。開口幅50mm及び厚み方向の最小ギャップ2mmの噴出孔を有した口金を用いた。成形金型(第1成形金型及び第2成形金型)としてS45Cからなるソリッドタイプの成形金型を用いた。ソリッドタイプの成形金型の成形空間の内壁面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被膜を形成した。各第1蒸気孔及び各第2蒸気孔の内径を1.0mmとした。
【0055】
具体的には、ポリスチレン系樹脂(PSジャパン(株)製、商品名:G9401)100重量部に対し、造核剤としてタルク(林化成(株)製、商品名:タルカンパウダー)1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を132℃まで冷却して、3.0MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1蒸気孔及び複数の第2蒸気孔から、温度100℃である0.1MPaの蒸気を成形金型の成形空間に圧入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0056】
実施例1の場合において、板状押出発泡体の密度は28.5kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が1.5KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が-0.5KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。
【0057】
(実施例2の場合)
実施例2の場合において、
図1及び
図2に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機、口金、及び成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。
【0058】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を132℃まで冷却して、3.0MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1蒸気孔及び複数の第2蒸気孔から、温度107℃である0.13MPaの蒸気を成形金型の成形空間に圧入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、3時間であった。
【0059】
実施例2の場合において、板状押出発泡体の密度は27.3kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が3.3KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が2.0KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。
【0060】
(実施例3の場合)
実施例3の場合において、
図1及び
図2に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機及び成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。開口幅50mm及び厚み方向の最小ギャップ2.5mmの噴出孔を有した口金を用いた。
【0061】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を124℃まで冷却して、口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、3.8MPaの圧力にて口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1蒸気孔及び複数の第2蒸気孔から、温度105℃である0.12MPaの蒸気を成形金型の成形空間に圧入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0062】
実施例3の場合において、板状押出発泡体の密度は30.2kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が2.7KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が1.8KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。
【0063】
(実施例4の場合)
実施例4の場合において、
図1及び
図2に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機及び成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。開口幅50mm及び厚み方向の最小ギャップ2.2mmの噴出孔を有した口金を用いた。
【0064】
具体的には、ポリエチレン系樹脂(宇部丸善ポリエチレン(株)製、商品名:C470)100重量部に対し、造核剤として炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物マスターパッチ(永和化成工業(株)製、商品名:EE275F)2.4重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を35kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン4.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を106℃まで冷却して、2.8MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1蒸気孔及び複数の第2蒸気孔から、温度102℃である0.11MPaの蒸気を成形金型の成形空間に圧入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、6時間であった。
【0065】
実施例4の場合において、板状押出発泡体の密度は36.5kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が4.5KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が3.0KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。
【0066】
(実施例5の場合)
実施例5の場合において、
図1及び
図2に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。こここで、押出機及び成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。開口幅50mm及び厚み方向の最小ギャップ3.0mmの噴出孔を有した口金を用いた。
【0067】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.2重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を38kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン4.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を125℃まで冷却して、4.5MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1蒸気孔及び複数の第2蒸気孔から、温度109℃である0.14MPaの蒸気を成形金型の成形空間に圧入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、6時間であった。
【0068】
実施例5の場合において、板状押出発泡体の密度は15.3kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が-0.3KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が1.8KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。
【0069】
(従来例の場合)
従来例の場合において、
図4及び
図5に示す従来例に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機、口金、及び成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。
【0070】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を130℃まで冷却して、3.3MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0071】
従来例の場合において、板状押出発泡体の密度は30.0kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が13.2KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が6.5KVであった。板状押出発泡体の表面に微細な凹凸が発生して、板状押出発泡体の外観品質は良好でなかった。
【0072】
(比較例1の場合)
比較例1の場合において、
図6及び
図7に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機及び第2成形金型は、実施例1の場合と同じものを用いた。開口幅50mm及び厚み方向の最小ギャップ2.5mmの噴出孔を有した口金を用いた。第2成形金型としてステンレス鋼からなる多孔質タイプの成形金型を用いた。
【0073】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を130℃まで冷却して、3.2MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1導入管及び複数の第2導入管から、温度139℃である0.35MPaの蒸気を第1成形金型内に導入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0074】
比較例1の場合において、板状押出発泡体の密度は30.0kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が8.8KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が4.5KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。板状押出発泡体の表面に微細な凹凸が発生して、板状押出発泡体の外観品質は良好でなかった。第1成形金型の拡大部の内壁面の一部に熱可塑性樹脂の被膜が形成された。
【0075】
(比較例2の場合)
比較例2の場合において、
図6及び
図7に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機、口金、第2成形金型は、比較例1の場合と同じものを用いた。
【0076】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を128℃まで冷却して、3.4MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1導入管及び複数の第2導入管から温度85℃の水を0.3MPaの圧力にて第1成形金型内に導入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0077】
比較例2の場合において、板状押出発泡体の密度は30.0kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が7.7KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が7.8KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。板状押出発泡体の表面に微細な凹凸が発生して、板状押出発泡体の外観品質は良好でなかった。第1成形金型の拡大部の内壁面の一部に熱可塑性樹脂の被膜が形成された。
【0078】
(比較例3の場合)
比較例3の場合において、
図6及び
図7に示す本実施形態に係る板状押出発泡体の製造装置を用いた。ここで、押出機、口金、第2成形金型は、比較例1の場合と同じものを用いた。
【0079】
具体的には、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、造核剤としてタルク1.0重量部をドライブレンドして得られた熱可塑性樹脂組成物を50kg/hrにて口径65mm単軸押出機に供給した。口径65mm単軸押出機内にて約230℃に加熱溶融した熱可塑性組成物に、口径65mm単軸押出機の途中から発泡剤としてn-ブタン5.0重量部を圧入した。そして、口径65mm単軸押出機は、n-ブタンを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混錬して、口径90mm単軸押出機に送出した。その後、口径90mm単軸押出機は、熱可塑性樹脂組成物の温度を131℃まで冷却して、3.1MPaの圧力にて口金の噴出孔から大気圧下に押出した。これにより、成形金型の成形空間内にて、口金の噴出孔から押出された熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂を発泡させつつ、板状に連続的に賦形して、板状押出発泡体を成形した。板状押出発泡体は、成形ロールによって一定速度にて引き取った。また、板状押出発泡体の成形中に、複数の第1導入管及び複数の第2導入管から常温の空気を0.4MPaの圧力にて第1成形金型内に導入した。板状押出発泡体の製造装置の稼働時間、換言すれば、押出機の押出時間は、8時間であった。
【0080】
比較例3の場合において、板状押出発泡体の密度は30.0kg/m3であった。成形金型の出口側における板状押出発泡体上面の帯電量が11.5KVであり、成形金型の出口側における板状押出発泡体の下面の帯電量が6.6KVであった。板状押出発泡体の外観品質は良好であった。板状押出発泡体の表面に微細な凹凸が発生して、板状押出発泡体の外観品質は良好でなかった。第1成形金型の拡大部の内壁面の一部に熱可塑性樹脂の被膜が形成された。
【0081】
(まとめ)
実施例1~5の場合、従来例の場合、比較例1~3の場合についてまとめると、表1に示すようになる。
【0082】
【表1】
即ち、実施例1~5の場合には、従来例の場合及び比較例1~3の場合よりも、板状押出発泡体の外観品質を良好に保ちつつ、成形空間の出口側における板状押出発泡体の上面及び下面の帯電量を低減できた。つまり、第1蒸気孔及び第2蒸気孔から成形金型の成形空間に蒸気を圧入することにより、板状押出発泡体の外観品質を良好に保ちつつ、成形空間の出口側における板状押出発泡体の上面及び下面の帯電量を低減できることが分かった。比較例1、2の場合、8時間の押出時間で、第1成形金型34の多孔質金属の孔が水分により塞がってしまったために、板状押出発泡体の表面に微細な凹凸が発生したと考えられる。
【0083】
〔付記事項〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。