(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148088
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電磁波反射器
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/28 20060101AFI20231005BHJP
H01Q 13/28 20060101ALI20231005BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01Q19/28
H01Q13/28
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055943
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】500541265
【氏名又は名称】大内 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】大内 和幸
【テーマコード(参考)】
5J020
5J045
5J097
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA01
5J020BC08
5J020BD04
5J020DA03
5J045AA26
5J045CA01
5J097AA01
5J097BB01
5J097DD14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反射特性を大幅に改善するようにした電磁波反射器を提供する。
【解決手段】電磁波の反射器は、相互に垂直な3方向をx方向、y方向及びz方向、電磁波の進行方向をz方向、nを奇数の整数としたとき、x方向又はy方向に延びる2以上の金属片10が電磁波進行方向zに相互に中心周波数の波長λのn・λ/4の間隔をあけて並べられ、大きなインピーダンスの金属片10列によって構成されている。電磁波が音波や弾性波を含む。金属片の間に金属が充填される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に垂直な3方向をx方向、y方向及びz方向、電磁波の進行方向をz方向、nを奇数の整数としたとき、x方向又はy方向に延びる2以上の金属片(10)が電磁波進行方向zに相互に中心周波数の波長λのn・λ/4の間隔をあけて並べられており、大きなインピーダンスの金属片列によって電磁波の反射器が構成されていることを特徴とする電磁波反射器。
【請求項2】
上記電磁波が音波、弾性波を含む請求項1記載の電磁波反射器。
【請求項3】
上記金属片(10)の間に金属が充填されている請求項1記載の電磁波反射器。
【請求項4】
上記金属片(10)が空気中、誘電体中その他の媒質中に配列されている請求項1記載の電磁波反射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電磁波反射器に関し、特に反射特性を大幅に改善するようにした電磁波反射器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波を用いた衛星通信や情報通信などの分野において、導波や送受信を効率よく行う上で、電磁波の反射技術は重要な要素である。
【0003】
例えば、放射素子と、電磁波の中心周波数(共振周波数)の波長λのほぼλ/4離間して配置される反射素子を、放射素子の給電点からほぼλ/4の位置の外導体に接続することにより、反射素子を漏洩電流を阻止するスタブとしても機能させるようにし、平衡放射素子に直接同軸給電線を接続しても、アンテナ特性の劣化しないようにした八木宇田アンテナが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の反射技術ではその
図4のビーム特性に示されるように、反射特性に改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み、反射特性を大幅に改善するようにした電磁波反射器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る電磁波反射器は、相互に垂直な3方向をx方向、y方向及びz方向、電磁波の進行方向をz方向、nを奇数の整数としたとき、x方向又はy方向に延びるに2以上の金属片が電磁波進行方向zに相互に中心周波数の波長λのn・λ/4の間隔をあけて並べられており、大きなインピーダンスの金属片列によって電磁波の反射器が構成されていることを特徴とする。
【0008】
図1に示されるように、電磁波の伝搬周波数の波長をλとしたとき、x方向に延びる複数個、例えば2個の金属片10を電磁波進行方向zに相互にλ/4の間隔をあけて並べると、金属片列の電磁波入射方向の抵抗は極大値を示し、入射した電磁波は金属片列を伝搬しにくいため反射される。
【0009】
例えば、導波金属によって伝搬する電磁波に対し、導波金属の間隔P(λ/2)の間隔の1/2の間隔(λ/4)で金属片(導波金属と同じでも異なっていてもよい)を電磁波進行方向に並べて反射器を構成する。導波金属と反射器の間隔はP、P/2、0でもよい。間隔が0の場合は導波金属と反射器の間は絶縁してもよく、短絡してもよい。また、λ/4の間隔で並べた反射器は金属片を金属体で接続し、あるいは金属片間に金属材料を充填することによって短絡するが、短絡しなくてもよい。短絡しない場合は金属片列は単純な抵抗として機能し、多数並べることで大きな抵抗の反射器として機能する。
【0010】
電磁波進行方向の距離lのインピーダンスZ
wは
電磁波の減衰定数:α、 距離lのときの電磁波の共振周波数:ω
0、特性インピーダンス:Z
0
と表すことができる。
金属片10は短絡体で相互に短絡する。
金属片10、10間の間隔は、3λ/4、5λ/4・・・n・λ/4であってもよい。
【0011】
上述のインピーダンス(抵抗)は
図2に示されるような特性となり、インピーダンスは共振周波数(放射素子間隔で決まる共振周波数の2倍の周波数)で極大となり、進行方向zとは逆の方向からくる電磁波は金属片列で反射され、金属片列の進行方向zと逆側における電磁波はほとんどゼロとなり、進行方向z側には電磁波がそのまま反射されることとなる。
【0012】
また、金属片は2個以上をλ/4の間隔をあけて電磁波進行方向zに並べ、相互に短絡しないようにしても、優れた反射特性を得ることができる。
【0013】
さらに、弾性表面波(音波)の反射器は既に提案され実用化されているが、理論的に明確にされていない。弾性表面波の波長をλとすると、弾性表面波の場合、金属片の間隔はλ/2であり、金属片の本数を増大させても、インピーダンスはせいぜい特性インピーダンスになるだけである。実際には200~300本の金属片を設置している。
【0014】
これに対し、本発明では金属片の間隔をλ/4のとき、最大のインピーダンス、例えば10000~100000倍のインピーダンスが得られ、特性がよくなるとともに、反射器の長さを短くできる。
【0015】
本発明において「電磁波」というときは「音波」「弾性波」を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る電磁波反射器の原理を説明するための図である。
【
図2】本発明に係る電磁波反射器における周波数と抵抗の特性を示す図である。
【
図3】本発明に係る電磁波反射器の実施形態を示す図である。
【
図9】金属片を短絡する場合の接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
〔実施例1〕
図3は第1の実施例を示す。本例では導波金属20が電磁波進行方向zに間隔P(λ/2)で並べられ、最終の導波金属20に対して間隔P/2をあけて反射器が設けられている。反射器ではx方向に延びる複数の金属片10が電磁波進行方向zに間隔P/2(λ/4)で並べられ、複数の金属片10は短絡されている。
【0018】
〔実施例2〕
図4は第2の実施例を示す。本例では導波金属20と反射器の金属片10の間の間隔がPとなっている以外、第1の実施例と同様である。導波金属20と反射器の金属片10の間は絶縁してもよく、同電位であってもよい。
【0019】
〔実施例3〕
図5は第3の実施例を示す。本例では導波金属20と反射器の金属片10の間の間隔がP/2となっている以外、第1の実施例と同様である。
【0020】
〔実施例4〕
図6は第4の実施例を示す。本例では導波金属20と反射器の金属片10の間の間隔が0となっており、反射器の金属片10を短絡していない以外、第1の実施例と同様である。導波金属20と反射器の金属片10の間は絶縁してもよく、同電位であってもよい。
【0021】
〔実施例5〕
図7は第5の実施例を示し、これは弾性表面波の反射器に適用した例である。図において、30は水晶基板、31は電圧印加電極、32は反射器を構成する金属片であり、金属片32の間はλ/4に設定されている。
【0022】
〔実施例6〕
図8は第6の実施例を示す。本例では反射器を構成する金属片10の間に金属40を介在させることによって金属片10を短絡させている。反射器の金属片10の間に減衰率の大きい材料を充填すると、Q値が減少し、反射器を造りやすくできるとともに、反射効率をさらに向上できることが期待できる。
電磁波の場合、減衰率が小さくQ値が大きくなりすぎることがある。金属片10間のQ値が高くなる場合、金属片間の距離を大きくするか、金属片間に電磁波減衰材料を詰めるなどの方法によって、Q値を下げる必要がある場合がある。距離lを大きくとる方法として、l=λ/4だけでなく、3λ/4、5λ/4・・・が要ることもある。
【0023】
反射器の金属片10を短絡する場合、
図9の(a)に示されるように2本の金属片10、10の間を短絡片11で接続するようにしてもよく、
図9の(b)に示されるように複数の金属片10・・・の間を短絡片11で接続するようにしてもよく、
図9の(c)に示されるように2本の金属片10、10の間を短絡片11で接続し、この金属片11の組合せを繰り返すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 金属片
20 導波金属