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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014810
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20230124BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230124BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118973
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】花村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】狩野 秀行
(72)【発明者】
【氏名】廣田 翔吾
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA04
5H770CA05
5H770DA01
5H770DA02
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA31
5H770DA37
5H770DA44
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Y
5H770JA17Z
5H770LA03Z
(57)【要約】
【課題】単相3線式の自立出力に対応しつつ、高効率で小型の電力変換装置を実現する。
【解決手段】フライングキャパシタ型のマルチレベルインバータ10は、直流電源2から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を単相3線式の配電線に出力する。バランス回路20は、直流電源2の両端間に直列に接続された第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2と、第1スイッチ部SW1と第2スイッチ部SW2との間の接続点と、単相3線式の配電線の中性線に接続されたマルチレベルインバータ10の中点との間に接続されるリアクトルL1を有する。制御部30は、マルチレベルインバータ10の中点の電圧が、直流電源2の電圧の1/2になるように、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を単相3線式の配電線に出力するフライングキャパシタ型のマルチレベルインバータと、
前記直流電源の両端間に直列に接続された第1スイッチ部及び第2スイッチ部と、
前記第1スイッチ部と前記第2スイッチ部との間の接続点と、前記単相3線式の配電線の中性線に接続された前記マルチレベルインバータの中点との間に接続されたリアクトルと、
を有するバランス回路と、
前記マルチレベルインバータの中点の電圧が、前記直流電源の電圧の1/2になるように、前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記バランス回路は、
前記直流電源の両端間に直列に接続された第1コンデンサ及び第2コンデンサをさらに有し、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間の接続点は、前記単相3線式の配電線の中性線に接続された前記マルチレベルインバータの中点に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記直流電源の電圧をEとするとき、
前記マルチレベルインバータは、
前記単相3線式の配電線の第1電圧線と前記中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力し、
前記単相3線式の配電線の第2電圧線と前記中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力し、
前記単相3線式の配電線の前記第1電圧線と前記第2電圧線間に、+Eから-Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記マルチレベルインバータは、
前記第1電圧線と前記中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、
前記第2電圧線と前記中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、
前記第1電圧線と前記第2電圧線間に、+E、+1/2E、0、-1/2E、-Eのいずれかを出力することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は系統連系モードと自立運転モードを有し、
前記自立運転モードにおいて、
前記第1電圧線と前記中性線間に接続される負荷の消費電力と、前記第2電圧線と前記中性線間に接続される負荷の消費電力が異なる場合、前記第1電圧線に流れる電流と前記第2電圧線に流れる電流の差分電流が、前記中性線を経由して前記マルチレベルインバータと前記バランス回路に流れることを特徴とする請求項3又は4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記マルチレベルインバータは、複数のスイッチング素子を含む第1レグと、複数のスイッチング素子を含む第2レグを有し、
前記自立運転モードにおいて、
前記制御部は、前記第1電圧線と前記中性線間の電圧が前記第1電圧線と前記第2電圧線間の電圧に対して1/2になるように、前記第1レグに含まれる複数のスイッチング素子を制御し、
前記第2電圧線と前記中性線間の電圧が前記第1電圧線と前記第2電圧線間の電圧に対して1/2になるように、前記第2レグに含まれる複数のスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記系統連系モードにおいて、
前記制御部は、前記電力変換装置の出力電流が目標電流値を維持するように、前記マルチレベルインバータに含まれる複数のスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項5又は6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記自立運転モードにおいて、
前記制御部は、前記マルチレベルインバータの中点の電圧が、前記直流電源の電圧の1/2になるように、前記バランス回路に含まれる前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部を制御し、
前記系統連系モードにおいて、
前記制御部は、前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部の動作を停止させることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、定置型蓄電池、車載蓄電池などの直流電源と、電力系統との間に接続される単相パワーコンディショナには一般的に、系統停電時に機能する自立運転モードが搭載されている。単相パワーコンディショナの自立出力には、単相2線式と単相3線式の2種類がある。単相2線式では100V機器のみが使用可能であり、単相3線式では、U-O間に100V機器、W-O間に100V機器、U-W間に200V機器を接続して使用可能である。
【0003】
近年では、自立出力にも単相3線式を採用することにより、停電/非停電に関係無く、分電盤につながる宅内負荷すべてに給電できることが望まれている。自立出力に単相3線式を実現する為には、U-O相とW-O相間の負荷アンバランス時に、相電圧100V/線間電圧200Vに調整する機能が必要となる。この電圧調整機能が無いと、負荷アンバランス時に相電圧の過電圧又は不足電圧で、パワーコンディショナの運転停止や負荷機器の故障が発生する可能性がある。
【0004】
電圧調整機能を実現する方法として、商用トランス方式とバランス回路方式がある。商用トランス方式は、単相2線式の1次巻線と単相3線式の2次巻線で構成されるトランスや、単巻トランスを追加する方式である。いずれのトランスも商用周波数で動作する。バランス回路方式は、U-O相電圧とW-O相電圧をバランスさせる回路をO相に追加する方式である(例えば、特許文献1参照)。商用トランス方式とバランス回路方式を比較すると、サイズ、重量、コストの面でバランス回路方式のほうが優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-27178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワーコンディショナは、高効率で小型なものが望まれる一方で、単相3線式の自立出力の搭載も望まれている。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、単相3線式の自立出力に対応しつつ、高効率で小型の電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を単相3線式の配電線に出力するフライングキャパシタ型のマルチレベルインバータと、前記直流電源の両端間に直列に接続された第1スイッチ部及び第2スイッチ部と、前記第1スイッチ部と前記第2スイッチ部との間の接続点と、前記単相3線式の配電線の中性線に接続された前記マルチレベルインバータの中点との間に接続されたリアクトルと、を有するバランス回路と、前記マルチレベルインバータの中点の電圧が、前記直流電源の電圧の1/2になるように、前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、単相3線式の自立出力に対応しつつ、高効率で小型の電力変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図2図1の電力変換装置における第1スイッチング素子-第24スイッチング素子の系統連系モードにおけるスイッチングパターンをまとめた図である。
図3図3(a)-(d)は、図2に示すスイッチングパターンの正の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。
図4図4(a)-(d)は、図2に示すスイッチングパターンの負の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。
図5】5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。
図6図5に示した疑似正弦波の各区間のマルチレベルインバータのU-W間の出力電圧Vinv_uw、U-O間の出力電圧Vinv_uo、W-O間の出力電圧Vinv_woをまとめた図である。
図7】第1負荷(U相負荷)と第2負荷(W相負荷)がバランスしている時の電力変換装置の出力電圧Vout、マルチレベルインバータの出力電圧Vinv、電力変換装置の出力電流Ioutのシミュレーション波形を示す図である。
図8】第1負荷(U相負荷)と第2負荷(W相負荷)がバランスしていない時の電力変換装置の出力電圧Vout、マルチレベルインバータの出力電圧Vinv、電力変換装置の出力電流Ioutのシミュレーション波形を示す図である。
図9図9(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
図10】N段のフライングキャパシタ回路を示す図である。
図11】2段のフライングキャパシタ回路を使用したマルチレベルインバータにより、7レベル(+E、+2/3E、+1/3E、0、-1/3E、-2/3E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。
図12図11に示した疑似正弦波の各区間のマルチレベルインバータのU-W間の出力電圧Vinv_uw、U-O間の出力電圧Vinv_uo、W-O間の出力電圧Vinv_woをまとめた図である。
図13】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図14】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
図15】実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。電力変換装置1は、直流電源2から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を電力系統3に出力する。直流電源2は例えば、分散型電源(太陽電池、蓄電池、燃料電池など)と、当該分散型電源の出力を制御可能なDC/DCコンバータ(不図示)により構成される。当該DC/DCコンバータと電力変換装置1との間は、直流バスで接続される。なお直流電源2は、分散型電源とDC/DCコンバータの組が複数、並列接続されて構成されていてもよい。
【0012】
電力変換装置1は、マルチレベルインバータ10、バランス回路20及び制御部30を含む。マルチレベルインバータ10は、直流電源2から供給される直流電圧をもとに、マルチレベル(図1の回路構成では5レベル)の電圧を有する疑似正弦波を生成することにより、直流電源2から供給される直流電圧を交流電圧に変換する。
【0013】
マルチレベルインバータ10は、複数のフライングキャパシタ回路を含み、5レベル以上の電位を出力可能なマルチレベル出力部(図1では、第1スイッチング素子Q1-第16スイッチング素子Q16、第1フライングキャパシタC1-第4フライングキャパシタC4で構成されている)と、マルチレベル出力部の2点間に流れる電流の向きを制御する極性切替部(図1では、第17スイッチング素子Q17-第24スイッチング素子Q24で構成されている)を有する。図1に示す例では、マルチレベル出力部は、第1フライングキャパシタ回路11、第2フライングキャパシタ回路12、第3フライングキャパシタ回路13及び第4フライングキャパシタ回路14を含む。極性切替部は、第1出力回路15及び第2出力回路16を含む。
【0014】
第1フライングキャパシタ回路11及び第2フライングキャパシタ回路12は直流電源2の両端間に直列に接続される。第3フライングキャパシタ回路13及び第4フライングキャパシタ回路14は直流電源2の両端間に直列に接続される。第1フライングキャパシタ回路11と第2フライングキャパシタ回路12との接続点と、第3フライングキャパシタ回路13と第4フライングキャパシタ回路14との接続点との間が中間配線Lmで接続される。中間配線Lmは、単相3線式の配電線の中性線(O相線)に接続される。
【0015】
第1フライングキャパシタ回路11は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4及び第1フライングキャパシタC1を含む。第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4は直列に接続され、直流電源2の正側バスと中間配線Lmの間に接続される。第1フライングキャパシタC1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との接続点と、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子Q1-第4スイッチング素子Q4により充放電される。
【0016】
第2フライングキャパシタ回路12は、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8及び第2フライングキャパシタC2を含む。第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7及び第8スイッチング素子Q8は直列に接続され、中間配線Lmと、直流電源2の負側バスの間に接続される。第2フライングキャパシタC2は、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6との接続点と、第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子Q5-第8スイッチング素子Q8により充放電される。
【0017】
第3フライングキャパシタ回路13は、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12及び第3フライングキャパシタC3を含む。第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11及び第12スイッチング素子Q12は直列に接続され、直流電源2の正側バスと中間配線Lmの間に接続される。第3フライングキャパシタC3は、第9スイッチング素子Q9と第10スイッチング素子Q10との接続点と、第11スイッチング素子Q11と第12スイッチング素子Q12との接続点との間に接続され、第9スイッチング素子Q9-第12スイッチング素子Q12により充放電される。
【0018】
第4フライングキャパシタ回路14は、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16及び第4フライングキャパシタC4を含む。第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第15スイッチング素子Q15及び第16スイッチング素子Q16は直列に接続され、中間配線Lmと直流電源2の負側バスの間に接続される。第4フライングキャパシタC4は、第13スイッチング素子Q13と第14スイッチング素子Q14との接続点と、第15スイッチング素子Q15と第16スイッチング素子Q16との接続点との間に接続され、第13スイッチング素子Q13-第16スイッチング素子Q16により充放電される。
【0019】
第1出力回路15は、第1フライングキャパシタ回路11の中点(具体的には、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3との接続点)と、第2フライングキャパシタ回路12の中点(具体的には、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7との接続点)との間に接続される。第1出力回路15は、直列に接続された第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第19スイッチング素子Q19及び第20スイッチング素子Q20を含む。第1出力回路15の中点(具体的には、第18スイッチング素子Q18と第19スイッチング素子Q19との接続点)は、単相3線式の配電線の第1電圧線(U相線)に接続される。
【0020】
第2出力回路16は、第3フライングキャパシタ回路13の中点(具体的には、第10スイッチング素子Q10と第11スイッチング素子Q11との接続点)と、第4フライングキャパシタ回路14の中点(具体的には、第14スイッチング素子Q14と第15スイッチング素子Q15との接続点)との間に接続される。第2出力回路16は、直列に接続された第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24を含む。第2出力回路16の中点(具体的には、第22スイッチング素子Q22と第23スイッチング素子Q23との接続点)は、単相3線式の配電線の第2電圧線(W相線)に接続される。
【0021】
第1フライングキャパシタ回路11の中点からは、第1スイッチング素子Q1の上側端子に印加されるE[V]と、第4スイッチング素子Q4の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が出力される。第1フライングキャパシタC1は1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路11からは、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が出力される。
【0022】
第2フライングキャパシタ回路12の中点からは、第5スイッチング素子Q5の上側端子に印加される1/2E[V]と、第8スイッチング素子Q8の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が出力される。第2フライングキャパシタC2は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路12からは、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0023】
第3フライングキャパシタ回路13の中点からは、第9スイッチング素子Q9の上側端子に印加されるE[V]と、第12スイッチング素子Q12の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が出力される。第3フライングキャパシタC3は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第3フライングキャパシタ回路13からは、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が出力される。
【0024】
第4フライングキャパシタ回路14の中点からは、第13スイッチング素子Q13の上側端子に印加される1/2E[V]と、第16スイッチング素子Q16の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が出力される。第4フライングキャパシタC4は1/4E[V]の電圧になるように初期充電され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第4フライングキャパシタ回路14からは、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が出力される。
【0025】
上記の第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にはそれぞれ、ダイオードが逆並列に形成又は接続される。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、150V耐圧のNチャネルMOSFETを使用する例を想定する。NチャネルMOSFETでは、ソースからドレイン方向に寄生ダイオードが形成される。
【0026】
なお、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタを使用してもよい。その場合、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に寄生ダイオードは形成されず、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24にそれぞれ外付けダイオードが逆並列に接続される。
【0027】
なお、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンド(C)などを使用したワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子を使用してもよい。
【0028】
第1出力回路15の中点(具体的には、第18スイッチング素子Q18と第19スイッチング素子Q19との接続点)と、第2出力回路16の中点(具体的には、第22スイッチング素子Q22と第23スイッチング素子Q23との接続点)から、マルチレベルの電圧(図1の回路構成では5レベルの電圧)が出力フィルタ(図1では、第1出力リアクトルL2、第2出力リアクトルL3、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8で構成されている)に出力される。レベル数が多いほど、より正規の正弦波に近い擬似正弦波となる。なお、本実施の形態では第1出力回路15の中点からU相の電力を出力し、第2出力回路16の中点からW相の電力を出力する。
【0029】
出力フィルタは、第1出力回路15及び第2出力回路16から出力される電圧及び電流の高調波成分を減衰させて、電力系統3の正弦波と同期した正弦波に近づける。出力フィルタは、第1出力リアクトルL2、第2出力リアクトルL3、第1出力コンデンサC7及び第2出力コンデンサC8を含む。第1出力リアクトルL2は、単相3線式の配電線の第1電圧線(U相線)に挿入される。第2出力リアクトルL3は、単相3線式の配電線の第2電圧線(W相線)に挿入される。第1出力コンデンサC7は、単相3線式の配電線の第1電圧線と中性線との間に接続される。第2出力コンデンサC8は、単相3線式の配電線の第2電圧線と中性線との間に接続される。
【0030】
出力フィルタと、単相3線式の電力系統3との間の配電線に第1リレーRY1が挿入される。出力フィルタと、単相3線式の自立出力端子との間の配電線に第2リレーRY2が挿入される。
【0031】
単相3線式の第1電圧線と中性線の自立出力端子間に第1負荷R1(U相負荷)が接続される。単相3線式の第2電圧線と中性線の自立出力端子間に第2負荷R2(W相負荷)が接続される。単相3線式の第1電圧線と第2電圧線の自立出力端子間に第3負荷R3(線間負荷)が接続される。第3負荷R3として、200V機器(例えば、IHクッキングヒータ、電気温水器など)が接続可能である。第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3は、系統停電時に優先的に電源供給を受けることができる特定負荷である。
【0032】
第1電圧センサ41は、電力変換装置1のU-O間の出力電圧Vout_uoを計測して制御部30に出力する。第2電圧センサ42は、電力変換装置1のW-O間の出力電圧Vout_woを計測して制御部30に出力する。第3電圧センサ43は、電力変換装置1のU-W間の出力電圧Vout_uwを計測して制御部30に出力する。
【0033】
第1電圧センサ41-第3電圧センサ43は、出力フィルタより後段に設置される。第1電圧センサ41-第3電圧センサ43のそれぞれは、例えば分圧抵抗と誤差増幅器を含んで構成される。
【0034】
第1電流センサ51は、単相3線式の配電線の第1電圧線に流れる出力電流Iout_Uを計測して制御部30に出力する。第2電流センサ52は、単相3線式の配電線の第2電圧線に流れる出力電流Iout_Wを計測して制御部30に出力する。第3電流センサ53は、単相3線式の配電線の中性線に流れる出力電流Iout_Oを計測して制御部30に出力する。第4電流センサ54は、第1出力リアクトルL2に流れるリアクトル電流IL_Uを計測して制御部30に出力する。第5電流センサ55は、第2出力リアクトルL3に流れるリアクトル電流IL_Wを計測して制御部30に出力する。第1電流センサ51-第5電流センサ55のそれぞれは、例えば、CTセンサやホールセンサを含んで構成される。
【0035】
バランス回路20は、直流電源2の正側バスと負側バスとの間に接続され、マルチレベルインバータ10の中点電圧を1/2Eに維持するための機能を有する。バランス回路20は、第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2、リアクトルL1、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6を含む。
【0036】
第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2はそれぞれ、一つのスイッチング素子(例えば、MOSFET)で構成されてもよいし、直列又は並列に接続された複数のスイッチング素子で構成されてもよい。
【0037】
直流電源2の正側バスと負側バスとの間に、第1スイッチ部SW1と第2スイッチ部SW2が直列に接続される。直流電源2の正側バスと負側バスとの間に、第1分割コンデンサC5と第2分割コンデンサC6が直列に接続される。第1スイッチ部SW1と第2スイッチ部SW2との間の第1接続点と、第1分割コンデンサC5と第2分割コンデンサC6との間の第2接続点との間にリアクトルL1が接続される。第2接続点には更に、単相3線式の配電線の中性線が接続され、中性線にはマルチレベルインバータ10の中点が接続される。
【0038】
制御部30は、電力変換装置1を統括的に制御する。制御部30は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコントローラ、DSP、ROM、RAM、FPGA、ASIC、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0039】
本実施の形態では制御部30は、マルチレベルインバータ10の第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24、バランス回路20の第1スイッチ部SW1、第2スイッチ部SW2、第1リレーRY1、第2リレーRY2のオン/オフを制御する。
【0040】
図2は、図1の電力変換装置1における第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24の系統連系モードにおけるスイッチングパターンをまとめた図である。
【0041】
図2に示すスイッチングパターンでは、第1スイッチング素子Q1、第5スイッチング素子Q5、第12スイッチング素子Q12、第16スイッチング素子Q16のグループと、第4スイッチング素子Q4、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第13スイッチング素子Q13のグループが相補関係となる。第2スイッチング素子Q2、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第15スイッチング素子Q15のグループと、第3スイッチング素子Q3、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第14スイッチング素子Q14のグループが相補関係となる。
【0042】
また、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22のグループは、基本波の負の半周期の期間に常時オンし、正の半周期の期間に常時オフする。日本では、基本波は50Hz/60Hzの正弦波である。
【0043】
図3(a)-(d)は、図2に示すスイッチングパターンの正の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。図4(a)-(d)は、図2に示すスイッチングパターンの負の半周期のスイッチングパターンを示す回路図である。なお、図面の簡略化のためMOSFETを単純なスイッチ記号で描いている。
【0044】
図3(a)に示すように、マルチレベルインバータ10から+0を出力する場合、制御部30は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0045】
図3(b)に示すように、直流電源2から第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4を充電しつつ、マルチレベルインバータ10から+1/2Eを出力する場合、制御部30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0046】
図3(c)に示すように、第1フライングキャパシタC1及び第4フライングキャパシタC4から電力系統3に放電しつつ、マルチレベルインバータ10から+1/2Eを出力する場合、制御部30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0047】
制御部30は、図3(b)に示すスイッチングパターンと、図3(c)に示すスイッチングパターンを交互に繰り返すことにより、マルチレベルインバータ10から+1/2Eを出力させることができる。
【0048】
図3(d)に示すように、マルチレベルインバータ10から+Eを出力する場合、制御部30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオフ状態に制御する。
【0049】
図4(a)に示すように、マルチレベルインバータ10から-0を出力する場合、制御部30は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0050】
図4(b)に示すように、直流電源2から第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3を充電しつつ、マルチレベルインバータ10から-1/2Eを出力する場合、制御部30は、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0051】
図4(c)に示すように、第2フライングキャパシタC2及び第3フライングキャパシタC3から電力系統3に放電しつつ、マルチレベルインバータ10から-1/2Eを出力する場合、制御部30は、第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第10スイッチング素子Q10、第12スイッチング素子Q12、第14スイッチング素子Q14、第16スイッチング素子Q16、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第11スイッチング素子Q11、第13スイッチング素子Q13、第15スイッチング素子Q15、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0052】
制御部30は、図4(b)に示すスイッチングパターンと、図4(c)に示すスイッチングパターンを交互に繰り返すことにより、マルチレベルインバータ10から-1/2Eを出力させることができる。
【0053】
図4(d)に示すように、マルチレベルインバータ10から-Eを出力する場合、制御部30は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21及び第22スイッチング素子Q22をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24をオフ状態に制御する。
【0054】
図5は、5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。図6は、図5に示した疑似正弦波の各区間のマルチレベルインバータ10のU-W間の出力電圧Vinv_uw、U-O間の出力電圧Vinv_uo、W-O間の出力電圧Vinv_woをまとめた図である。
【0055】
区間(a)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+1/2Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/4Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/4Eと0が交互に出力される。区間(b)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+Eと+1/2Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/2Eと+1/4Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/2Eと-1/4Eが交互に出力される。区間(c)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+1/2と0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/4Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/4Eと0が交互に出力される。
【0056】
区間(d)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-1/2と0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/4Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/4Eと0が交互に出力される。区間(e)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-Eと-1/2Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/2Eと-1/4Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/2Eと+1/4Eが交互に出力される。区間(f)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-1/2Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/4Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/4Eと0が交互に出力される。
【0057】
いずれの区間でも、U-O間の出力電圧Vinv_uo及びW-O間の出力電圧Vinv_woの絶対値は、U-W間の出力電圧Vinv_uwの1/2になる。このように、マルチレベルインバータ10は、単相3線式の配電線の第1電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、第2電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、第1電圧線と第2電圧線間に、+E、+1/2E、0、-1/2E、-Eのいずれかを出力する。
【0058】
電力変換装置1を系統連系モードで運転させる際、制御部30は、第1リレーRY1をオン状態及び第2リレーRY2をオフ状態に制御する。制御部30は、第4電流センサ54により計測される第1出力リアクトルL2に流れる電流、又は第5電流センサ55により計測される第2出力リアクトルL3に流れる電流が、目標電流値を維持するように、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24を制御する。より具体的には、制御部30は、計測される電流値が目標電流値を維持するように第1スイッチング素子Q1-第16スイッチング素子Q16をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0059】
系統連系モードでは、制御部30は、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2の動作を停止させる。系統連系モードでは、マルチレベルインバータ10からの出力電流がO相に電流が流れないため、第1分割コンデンサC5と第2分割コンデンサC6の分圧バランスは基本的に崩れず、バランス回路20を動作させる必要はない。
【0060】
電力変換装置1を自立運転モードで運転させる際、制御部30は、第1リレーRY1をオフ状態及び第2リレーRY2をオン状態に制御する。自立運転モードでは電力系統3と切断されるため、第1負荷R1-第3負荷R3の電圧を電力変換装置1で規定する必要がある。
【0061】
自立運転モードでは、制御部30は、第1電圧センサ41で計測される電力変換装置1のU-O間の出力電圧Vout_uoが、第3電圧センサ43で計測されるU-W間の出力電圧Vout_uwに対して1/2になるように、マルチレベルインバータ10のU相の第1スイッチング素子Q1-第8スイッチング素子Q8及び第17スイッチング素子Q17-第20スイッチング素子Q20をPWM制御する。同時に制御部30は、第2電圧センサ42で計測されるW-O間の出力電圧Vout_uoが、第3電圧センサ43で計測されるU-W間の出力電圧Vout_uwに対して1/2になるように、マルチレベルインバータ10のW相の第9スイッチング素子Q9-第16スイッチング素子Q16及び第21スイッチング素子Q21-第24スイッチング素子Q24をPWM制御する。
【0062】
自立運転モードでは、制御部30は、マルチレベルインバータ10の中点電圧(=第1分割コンデンサC5と第2分割コンデンサC6の中点電圧)が、1/2Eになるように、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2を制御する。制御部30は、第1分割コンデンサC5に並列に接続された電圧センサ(不図示)と、第2分割コンデンサC6に並列に接続された電圧センサ(不図示)の少なくとも一方で計測された電圧をもとに、マルチレベルインバータ10の中点電圧を計測する。
【0063】
マルチレベルインバータ10の中点電圧が1/2Eより高い場合、制御部30は、第1スイッチ部SW1がオフ状態で第2スイッチ部SW2がオン状態の期間を増加させて、マルチレベルインバータ10の中点電圧を低下させる。反対に、マルチレベルインバータ10の中点電圧が1/2Eより低い場合、制御部30は、第1スイッチ部SW1がオン状態で第2スイッチ部SW2がオフ状態の期間を増加させて、マルチレベルインバータ10の中点電圧を上昇させる。
【0064】
第1電圧線と中性線間に接続される第1負荷R1(U相負荷)の消費電力と、第2電圧線と中性線間に接続される第2負荷R2(W相負荷)の消費電力が異なる場合、第1電圧線に流れる電流と第2電圧線に流れる電流の差分電流が、中性線を経由してマルチレベルインバータ10とバランス回路20に流れる。具体的には当該差分電流が、中性線を経由して、マルチレベルインバータ10のU相レグ又はW相レグに流れる電流と、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6に流れる電流と、リアクトルL1に流れる電流に分かれる。
【0065】
図7は、第1負荷R1(U相負荷)と第2負荷R2(W相負荷)がバランスしている時の電力変換装置1の出力電圧Vout、マルチレベルインバータ10の出力電圧Vinv、電力変換装置1の出力電流Ioutのシミュレーション波形を示す図である。図7に示す例では、第1負荷R1(U相負荷)の消費電力が3kW、第2負荷R2(W相負荷)の消費電力が3kW、第3負荷R3(線間負荷)は非接続とし、直流電源2のバス電圧Vbusが400Vとする。
【0066】
この場合、電力変換装置1のU-O間の出力電圧Vout_uoは100Vrms、W-O間の出力電圧Vout_woは100Vrms、U-W間の出力電圧Vout_uwは200Vms、U相の出力電流Iout_Uは30Arms、W相の出力電流Iout_Wは30Arms、O相の出力電流Iout_oは0Armsになる。
【0067】
図8は、第1負荷R1(U相負荷)と第2負荷R2(W相負荷)がバランスしていない時の電力変換装置1の出力電圧Vout、マルチレベルインバータ10の出力電圧Vinv、電力変換装置1の出力電流Ioutのシミュレーション波形を示す図である。図8に示す例では、第1負荷R1(U相負荷)の消費電力が3kW、第2負荷R2(W相負荷)の消費電力が1kW、第3負荷R3(線間負荷)は非接続とし、直流電源2のバス電圧Vbusが400Vとする。
【0068】
この場合、電力変換装置1のU-O間の出力電圧Vout_uoは100Vrms、W-O間の出力電圧Vout_woは100Vrms、U-W間の出力電圧Vout_uwは200Vms、U相の出力電流Iout_Uは30Arms、W相の出力電流Iout_Wは10Arms、O相の出力電流Iout_oは20Armsになる。
【0069】
図7に示した第1負荷R1(U相負荷)と第2負荷R2(W相負荷)がバランスしている時と、図8に示した第1負荷R1(U相負荷)と第2負荷R2(W相負荷)がバランスしていない時のいずれにおいても、バランス回路20により、マルチレベルインバータ10の中点電圧Vmidが200Vに制御されている。
【0070】
図9(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。図9(a)は1段のフライングキャパシタ回路を示す。図9(a)に示すフライングキャパシタ回路は、直列接続された4つのスイッチング素子Q2a、Q1a、Q1b、Q2b及び1つのキャパシタCa1を備える。キャパシタCa1は、スイッチング素子Q2a、Q1a間の接続点とスイッチング素子Q1b、Q2b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa1には、1/4Eの電圧が充電される。
【0071】
図9(b)は2段のフライングキャパシタ回路を示す。2段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子Q3a、Q2a、Q1a、Q1b、Q2b、Q3b及び2つのキャパシタCa1、Ca2を備える。キャパシタCa1は、スイッチング素子Q2a、Q1a間の接続点とスイッチング素子Q1b、Q2b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa1には、1/6Eの電圧が充電される。キャパシタCa2は、スイッチング素子Q3a、Q2a間の接続点とスイッチング素子Q2b、Q3b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa2には、2/6Eの電圧が充電される。
【0072】
図9(c)は3段のフライングキャパシタ回路を示す。3段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された8つのスイッチング素子Q4a、Q3a、Q2a、Q1a、Q1b、Q2b、Q3b、Q4b及び3つのキャパシタCa1、Ca2、Ca3を備える。キャパシタCa1は、スイッチング素子Q2a、Q1a間の接続点とスイッチング素子Q1b、Q2b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa1には、1/8Eの電圧が充電される。キャパシタCa2は、スイッチング素子Q3a、Q2a間の接続点とスイッチング素子Q2b、Q3b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa2には、2/8Eの電圧が充電される。キャパシタCa3は、スイッチング素子Q4a、Q3a間の接続点とスイッチング素子Q3b、Q4b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa3には、3/8Eの電圧が充電される。
【0073】
図10は、N段のフライングキャパシタ回路を示す。N段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された(2N+2)個のスイッチング素子Q(n+1)a、Qna、・・・、Q4a、Q3a、Q2a、Q1a、Q1b、Q2b、Q3b、Q4b、・・・、Qnb、Q(n+1)b及びN個のキャパシタCa1、Ca2、Ca3、・・・、Canを備える。キャパシタCa1は、スイッチング素子Q2a、Q1a間の接続点とスイッチング素子Q1b、Q2b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa1には、1/(2N+2)Eの電圧が充電される。キャパシタCa2は、スイッチング素子Q3a、Q2a間の接続点とスイッチング素子Q2b、Q3b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa2には、2/(2N+2)Eの電圧が充電される。キャパシタCa3は、スイッチング素子Q4a、Q3a間の接続点とスイッチング素子Q3b、Q4b間の接続点との間に接続される。キャパシタCa3には、3/(2N+2)Eの電圧が充電される。キャパシタCanは、スイッチング素子Q(n+1)a、Qna間の接続点とスイッチング素子Qnb、Q(n+1)b間の接続点との間に接続される。キャパシタCanには、N/(2N+2)Eの電圧が充電される。
【0074】
図1に示したマルチレベルインバータ10には、図9(a)に示す1段のフライングキャパシタ回路を使用している。1段のフライングキャパシタ回路を使用するとマルチレベルインバータ10から5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧を出力可能となる。
【0075】
図9(b)に示す2段のフライングキャパシタ回路を使用する場合、マルチレベルインバータ10から7レベル(+E、+2/3E、+1/3E、0、-1/3E、-2/3E、-E)の電圧を出力可能となる。図9(c)に示す3段のフライングキャパシタ回路を使用する場合、マルチレベルインバータ10から9レベル(+E、+3/4E、+2/4E、+1/4E、0、-1/4E、-2/4E、-3/4E、-E)の電圧を出力可能となる。図10に示すN段のフライングキャパシタ回路を使用する場合、マルチレベルインバータ10から(2N+3)種類の電圧を出力可能となる。
【0076】
図11は、2段のフライングキャパシタ回路を使用したマルチレベルインバータ10により、7レベル(+E、+2/3E、+1/3E、0、-1/3E、-2/3E、-E)の電圧で生成される擬似正弦波を示す図である。図12は、図11に示した疑似正弦波の各区間のマルチレベルインバータ10のU-W間の出力電圧Vinv_uw、U-O間の出力電圧Vinv_uo、W-O間の出力電圧Vinv_woをまとめた図である。
【0077】
区間(a)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+1/3Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/6Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/6Eと0が交互に出力される。区間(b)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+2/3Eと+1/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/3Eと+1/6Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/3Eと-1/6Eが交互に出力される。区間(c)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+Eと+2/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/2Eと+1/3Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/2Eと-1/3Eが交互に出力される。区間(d)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+2/3Eと+1/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/3Eと+1/6Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/3Eと-1/6Eが交互に出力される。区間(e)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして+1/3Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして+1/6Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして-1/6Eと0が交互に出力される。
【0078】
区間(f)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-1/3Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/6Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/6Eと0が交互に出力される。区間(g)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-2/3Eと-1/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/3Eと-1/6Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/3Eと+1/6Eが交互に出力される。区間(h)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-Eと-2/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/2Eと-1/3Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/2Eと+1/3Eが交互に出力される。区間(i)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-2/3Eと-1/3Eが交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/3Eと-1/6Eが交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/3Eと+1/6Eが交互に出力される。区間(j)ではマルチレベルインバータ10から、U-W間の出力電圧Vinv_uwとして-1/3Eと0が交互に出力され、U-O間の出力電圧Vinv_uoとして-1/6Eと0が交互に出力され、W-O間の出力電圧Vinv_woとして+1/6Eと0が交互に出力される。
【0079】
いずれの区間でも、U-O間の出力電圧Vinv_uo及びW-O間の出力電圧Vinv_woは、U-W間の出力電圧Vinv_uwの1/2になる。このように、2段のフライングキャパシタ回路を使用したマルチレベルインバータ10は、単相3線式の配電線の第1電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/3E、+1/6E、0、-1/6E、-1/3E、-1/2Eのいずれかを出力し、第2電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/3E、+1/6E、0、-1/6E、-1/3E、-1/2Eのいずれかを出力し、第1電圧線と第2電圧線間に、+E、+2/3E、+1/3E、0、-1/3E、-2/3E、-Eのいずれかを出力する。
【0080】
上述したように、1段のフライングキャパシタ回路を使用したマルチレベルインバータ10は、単相3線式の配電線の第1電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、第2電圧線と中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、第1電圧線と第2電圧線間に、+E、+1/2E、0、-1/2E、-Eのいずれかを出力する。
【0081】
N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を使用したマルチレベルインバータ10は、単相3線式の配電線の第1電圧線と中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の(2N+3)種類の電圧を出力し、第2電圧線と中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の(2N+3)種類の電圧を出力し、第1電圧線と第2電圧線間に、+Eから-Eの範囲の(2N+3)種類の電圧を出力する。
【0082】
以上説明したように実施の形態1によれば、マルチレベルインバータ10とバランス回路20を組み合わせることにより、単相3線式の自立出力に対応しつつ、高効率で小型の電力変換装置1を実現できる。従って、系統停電時に100V機器と200V機器の両方を使用可能である。また、バランス回路20でU-O間電圧を100V、W-O間電圧を100V、U-W間電圧を200Vに制御することにより、商用トランス方式で制御する場合と比較して、小型化、軽量化、低コスト化を実現できる。
【0083】
また実施の形態1では、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24の耐圧を低下させることが可能となる。通常のHブリッジ構成のインバータでは4つのスイッチング素子に、600V耐圧のIGBTが使用されることが多い。これに対して、図1に示した5レベル出力のマルチレベルインバータ10では、第1スイッチング素子Q1-第24スイッチング素子Q24に、150V耐圧のMOSFETを使用できる。これにより、オン抵抗の減少とスイッチング速度tr/tfの高速化が可能となり、スイッチング素子の低損失化が可能となる。この場合、スイッチング素子の導通損失とスイッチング損失の両方を低減できる。
【0084】
スイッチング速度tr/tfの高速化により、スイッチング周波数を上昇させることが可能となる。例えば、600V耐圧のIGBTを150V耐圧のMOSFETに置き換えた場合、20kHzから60kHzに3倍の高周波化が可能となる。これにより、受動部品、特にACリアクトル(第1出力リアクトルL2及び第2出力リアクトルL3)の低損失化、小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。ACリアクトルの銅損と鉄損の両方を低減できる。
【0085】
スイッチング素子の低損失化により、冷却部品(例えば、ヒートシンク)の小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。又は、ファンレス化により、小型化、軽量化、低コスト化、長寿命化が可能となる。これにより、電力変換装置1の筐体を小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。
【0086】
スイッチング素子の低損失化及びスイッチング速度tr/tfの高速化により、電力変換損失を低減できるため、太陽電池の発電電力の自家消費又は売電を増加させることが可能となる。これにより、電気料金の節約又は売電料金の増加による経済メリットを享受できる。また、電力系統3から蓄電池への充電、又は蓄電池から宅内負荷への放電においても、電力変換損失を低減できるため、電気料金の節約による経済メリットを享受できる。
【0087】
図13は、実施の形態2に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態2に係る電力変換装置1は、図1に示した実施の形態1に係る電力変換装置1と比較して、マルチレベルインバータ10の構成が異なる。
【0088】
実施の形態2に係るマルチレベルインバータ10は、実施の形態1に係るマルチレベルインバータ10と比較して、第3フライングキャパシタ回路13、第4フライングキャパシタ回路14、第1出力回路15及び第2出力回路16が省略され、Hブリッジ回路17が追加された構成である。
【0089】
Hブリッジ回路17は、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第11スイッチング素子Q11及び第12スイッチング素子Q12を含む。第1フライングキャパシタ回路11の中点と第2フライングキャパシタ回路12の中点との間に、第9スイッチング素子Q9と第10スイッチング素子Q10が直列に接続され、更に第11スイッチング素子Q11と第12スイッチング素子Q12が直列に接続される。第9スイッチング素子Q9と第10スイッチング素子Q10との間の接続点が、単相3線式の配電線の第1電圧線(U相線)に接続され、第11スイッチング素子Q11と第12スイッチング素子Q12との間の接続点が、単相3線式の配電線の第2電圧線(W相線)に接続される。Hブリッジ回路17は、マルチレベルインバータ10の出力極性を切り替えることができる。
【0090】
第9スイッチング素子Q9及び第12スイッチング素子Q12は、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。第10スイッチング素子Q10及び第11スイッチング素子Q11は、基本波の正の半周期の期間に常時オフし、負の半周期の期間に常時オンする。
【0091】
図13に示す実施の形態2に係るマルチレベルインバータ10からも、図1に示した実施の形態1に係るマルチレベルインバータ10と同様に、5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧を出力することができる。
【0092】
以上説明したように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0093】
図14は、実施の形態3に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態3に係る電力変換装置1も、図1に示した実施の形態1に係る電力変換装置1と比較して、マルチレベルインバータ10の構成が異なる。
【0094】
実施の形態3に係るマルチレベルインバータ10は、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6及び第1フライングキャパシタC1で1段の第1フライングキャパシタ回路を構成する。同様に、第11スイッチング素子Q11、第12スイッチング素子Q12、第13スイッチング素子Q13、第14スイッチング素子Q14及び第2フライングキャパシタC2で1段の第2フライングキャパシタ回路を構成する。
【0095】
第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22、第23スイッチング素子Q23及び第24スイッチング素子Q24により、マルチレベルインバータ10の出力極性を切り替えることができる。
【0096】
第1フライングキャパシタ回路の上側に接続された第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第2フライングキャパシタ回路の下側に接続された第15スイッチング素子Q15、第16スイッチング素子Q16、第1フライングキャパシタ回路の下側と第2フライングキャパシタ回路の上側を結ぶ経路に挿入された第19スイッチング素子Q19、第20スイッチング素子Q20、第21スイッチング素子Q21、第22スイッチング素子Q22のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オンし、負の半周期の期間に常時オフする。
【0097】
第1フライングキャパシタ回路の下側に接続された第7スイッチング素子Q7、第8スイッチング素子Q8、第2フライングキャパシタ回路の上側に接続された第9スイッチング素子Q9、第10スイッチング素子Q10、第1フライングキャパシタ回路の上側と第2フライングキャパシタ回路の下側を結ぶ経路に挿入された第17スイッチング素子Q17、第18スイッチング素子Q18、第23スイッチング素子Q23、第24スイッチング素子Q24のグループは、基本波の正の半周期の期間に常時オフし、負の半周期の期間に常時オンする。
【0098】
図14に示す実施の形態3に係るマルチレベルインバータ10からも、図1に示した実施の形態1に係るマルチレベルインバータ10と同様に、5レベル(+E、+1/2E、0、-1/2E、-E)の電圧を出力することができる。
【0099】
以上説明したように実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0100】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0101】
図15は、実施の形態1の変形例に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。実施の形態1の変形例に係る電力変換装置1は、図1に示した実施の形態1の基本例に係る電力変換装置1と比較して、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6が省略された構成である。第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6が省略されると、O相に流れる電流の内、リアクトルL1に流れる電流が増加する。
【0102】
このように変形例では、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6を省略できるが、リアクトルL1に流れる電流が増加するため、リアクトルL1、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2での損失が大きくなる。これにより、バランス回路20の冷却部品(例えば、ヒートシンク)を大きくする必要がある。一方、図1に示した基本例では、第1分割コンデンサC5及び第2分割コンデンサC6を省略できないが、リアクトルL1、第1スイッチ部SW1及び第2スイッチ部SW2での損失を低減でき、バランス回路20の冷却部品を小さくできる。
【0103】
上記実施の形態2、3では、1段のフライングキャパシタ回路を使用する例を説明したが、上記実施の形態1と同様に、2段以上のフライングキャパシタを使用してもよい。また、上記実施の形態1-3に示した回路構成以外の、フライングキャパシタ型のマルチレベルインバータ10を使用してもよい。
【0104】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0105】
[項目1]
直流電源(2)から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を単相3線式の配電線に出力するフライングキャパシタ型のマルチレベルインバータ(10)と、
前記直流電源(2)の両端間に直列に接続された第1スイッチ部(SW1)及び第2スイッチ部(SW2)と、
前記第1スイッチ部(SW1)と前記第2スイッチ部(SW2)との間の接続点と、前記単相3線式の配電線の中性線に接続された前記マルチレベルインバータ(10)の中点との間に接続されたリアクトル(L1)と、
を有するバランス回路(20)と、
前記マルチレベルインバータ(10)の中点の電圧が、前記直流電源(2)の電圧の1/2になるように、前記第1スイッチ部(SW1)及び前記第2スイッチ部(SW2)を制御する制御部(30)と、
を備えることを特徴とする電力変換装置(1)。
これによれば、単相3線式の自立出力に対応しつつ、高効率で小型の電力変換装置(1)を実現できる。
[項目2]
前記バランス回路(20)は、
前記直流電源(2)の両端間に直列に接続された第1コンデンサ(C5)及び第2コンデンサ(C6)をさらに有し、
前記第1コンデンサ(C5)と前記第2コンデンサ(C6)との間の接続点は、前記単相3線式の配電線の中性線に接続された前記マルチレベルインバータ(10)の中点に接続されることを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、リアクトル(L1)に流れる電流を減少させることができ、バランス回路(20)における損失を低減できる。
[項目3]
前記直流電源(2)の電圧をEとするとき、
前記マルチレベルインバータ(10)は、
前記単相3線式の配電線の第1電圧線と前記中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力し、
前記単相3線式の配電線の第2電圧線と前記中性線間に、+1/2Eから-1/2Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力し、
前記単相3線式の配電線の前記第1電圧線と前記第2電圧線間に、+Eから-Eの範囲の5レベル以上の電圧を出力することを特徴とする項目1又は2に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、マルチレベルインバータ(10)に含まれるスイッチング素子の耐圧低下及びスイッチング速度の向上を実現でき、電力変換装置(1)の高効率化、小型化に貢献する。
[項目4]
前記マルチレベルインバータ(10)は、
前記第1電圧線と前記中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、
前記第2電圧線と前記中性線間に、+1/2E、+1/4E、0、-1/4E、-1/2Eのいずれかを出力し、
前記第1電圧線と前記第2電圧線間に、+E、+1/2E、0、-1/2E、-Eのいずれかを出力することを特徴とする項目3に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、5レベル出力のマルチレベルインバータ(10)を用いることにより、スイッチング素子の数を抑えつつ、電力変換装置(1)の高効率化、小型化を実現できる。
[項目5]
前記電力変換装置(1)は系統連系モードと自立運転モードを有し、
前記自立運転モードにおいて、
前記第1電圧線と前記中性線間に接続される負荷(R1)の消費電力と、前記第2電圧線と前記中性線間に接続される負荷(R2)の消費電力が異なる場合、前記第1電圧線に流れる電流と前記第2電圧線に流れる電流の差分電流が、前記中性線を経由して前記マルチレベルインバータ(10)と前記バランス回路(20)に流れることを特徴とする項目3又は4に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、単相3線式の系統連系モードと、単相3線式の自立運転モードの切替を実現できる。
[項目6]
前記マルチレベルインバータ(10)は、複数のスイッチング素子(Q1-Q8)を含む第1レグと、複数のスイッチング素子(Q9-Q16)を含む第2レグを有し、
前記自立運転モードにおいて、
前記制御部(30)は、前記第1電圧線と前記中性線間の電圧が前記第1電圧線と前記第2電圧線間の電圧に対して1/2になるように、前記第1レグに含まれる複数のスイッチング素子(Q1-Q8)を制御し、
前記第2電圧線と前記中性線間の電圧が前記第1電圧線と前記第2電圧線間の電圧に対して1/2になるように、前記第2レグに含まれる複数のスイッチング素子(Q9-Q16)を制御することを特徴とする項目5に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、第1電圧線と中性線間に接続される負荷と、第2電圧線と中性線間に接続される負荷がアンバランスになっても、それぞれの負荷に安定した電圧を供給できる。
[項目7]
前記系統連系モードにおいて、
前記制御部(30)は、前記電力変換装置(1)の出力電流が目標電流値を維持するように、前記マルチレベルインバータ(10)に含まれる複数のスイッチング素子(Q1-Q24)を制御することを特徴とする項目5又は6に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、電力系統に安定した電力を逆潮流させることができる。
[項目8]
前記自立運転モードにおいて、
前記制御部(30)は、前記マルチレベルインバータ(10)の中点の電圧が、前記直流電源(2)の電圧の1/2になるように、前記バランス回路(20)に含まれる前記第1スイッチ部(SW1)及び前記第2スイッチ部(SW2)を制御し、
前記系統連系モードにおいて、
前記制御部(30)は、前記第1スイッチ部(SW1)及び前記第2スイッチ部(SW2)の動作を停止させることを特徴とする項目5から7のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、自立運転モードにおいて、負荷に安定した電圧を供給できるとともに、系統連系モードにおいて、バランス回路(20)における無駄な損失を低減できる。
【符号の説明】
【0106】
1 電力変換装置、 2 直流電源、 3 電力系統、 10 マルチレベルインバータ、 11-14 フライングキャパシタ回路、 15-16 出力回路、 17 Hブリッジ回路、 20 バランス回路、 30 制御部、 41-43 電圧センサ、 51-55 電流センサ、 R1-R3 負荷、 Q1-Q24 スイッチング素子、 C1-C8 コンデンサ、 L1-L3 リアクトル、 SW1-SW2 スイッチ部、 RY1-RY2 リレー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15